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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
--------------------------------------------------------------------------------
「う~~ん」
寝付けなくて、何度も寝返りを打つ。
パプワハウスは一間のみだ。だから皆で仲良く、とは言えないかもしれないが、布団を並べて就寝する。
距離も近く手を伸ばせば隣で寝ているパプワに手が届く。
大人二人がパプワとチャッピーを挟んで寝ている。もう一人の大人とは当然シンタローさんの事だ。
シンタローさんと一番遠いのは、故意なのか偶然なのかは分からない。
いつの間にか、この並びが決まっていた。
シンタローさんにとっては久しぶりにパプワ、チャッピーと過ごせるのだから
わざわざ俺の隣に寝たいとは思わないだろう。 ……自分の思考にちょっと傷つく。
眠れないから、こんなことを考えてしまうんだ。っとまた寝返りを打った。
くるっとまた寝返りを打つ。寝ようと思うと更に眠れない。
ぼぉっと壁を見ていた。いくら見ても壁は壁で眠気を催すものではない。
そのまま壁を見続けているうちに、突然シンタローさんの寝顔が見たくなった。
思いついたら我慢できなくなってしまった。
夜も深い。きっと気づかれないだろう。…別に他意があるわけではないし。と自分に言い聞かせる。
掛け布団だけもって、そぉっと移動する。
下が床だろうが、地面だろうが寝られる自信はある。伊達に特戦だったわけではない。
隣に寝転がる。
真横にシンタローさん。
心臓がばぐばく煩い。
…違う意味で寝られそうも無かった。
眠りたいのに眠れない状況で頭が沸いてしまったのかもしれない。少し考えれば直ぐに分かる事だったのに。
寝られないからって、更に寝られなくなる行動とってどうするんだよ。俺。
思わず手を伸ばしたくなるが、それはぐっと堪える。
すぅと規則正しい寝息が聞こえる。それほど側にいると思うと、更に緊張してくる。
「う…んっ。……コ…タロ……」
コタローの夢を見ているのだろうか。
な、なんて羨ましいっ。夢の中までもシンタローさんを独占できるなんてっ
コタローの夢を見ているならきっと笑ってるんだろーなぁ。
そう考えると顔をもっと良く見たくなって右肘を突いて左半身を起こす。
あ、やっぱり笑ってる。夢の中でコタローに抱きついているのかなぁ。
今回はイロイロ垂らしていないよーだ。
ホントにこの人28? 可愛いなぁ。
……だ、駄目だ誘惑に勝てそうも無い。その笑顔が俺を誘う。
手が勝手にシンタローさんの方へと伸びていく。
そのままペタっと頬を触る。
シンタローさんの体温が直接手に伝わってくる。
…俺、もう一生手を洗わなくてもいいっっ!!
いえ、寧ろ洗いたくありません!!
心の中でうわぁうわぁと連呼する。感動。俺は今、そうまさに今! 感動を味わっている。
無論手はそのままシンタローさんの頬。
シンタローさんは起きる気配は無い。
…いったん手を離す。そのままむくっと起き上がり今度は正座してみた。
じーっとシンタローさんの顔を見つめるが、やはりシンタローさんは笑顔を浮かべたままだ。
……こんな機会は二度とないだろう。
よっし、と気合を入れて、シンタローさんの腕に直ぐ横に両手をつく。
そのままお辞儀の様な姿勢で、そぉっと顔を近づける。
唇が付く直前、パチン、っとシンタローさんが目を開けた。
黒い瞳とバッチリ目が合った。
ばっと慌てて顔を離す。
ダラダラと冷や汗が背中を伝う。…こ、殺される、俺?
「コタロー? 眠れないのか?」
鉄拳も眼魔砲も飛んでこなかった。
来たのは言葉。寝ぼけてコタローと勘違いしているようだ。
…それでいいのか、ブラコン兄貴。俺、コタローと体格めちゃめちゃ違います。とちょっと突っ込む。
同時に、ほっと息をつく。どうやらバレた様子はない。
「ホラ、横になれよ」
っと手を伸ばし、俺の腕を掴むとそのまま引っ張られる。
ぼすんとシンタローさんの厚い胸板。
一気に顔が熱くなる。顔といわず、全身に熱が回る。
ありがとう、コタロー!
女王様に心の中で嘗て無いほど感謝する。
次会ったとき、何でも言う事ききますっ!
血塗られた朝を迎えるだろう。
俺は後悔しない。この幸せの絶頂の為に命を落とすならそれこそ本望だ。
10.30
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「う~~ん」
寝付けなくて、何度も寝返りを打つ。
パプワハウスは一間のみだ。だから皆で仲良く、とは言えないかもしれないが、布団を並べて就寝する。
距離も近く手を伸ばせば隣で寝ているパプワに手が届く。
大人二人がパプワとチャッピーを挟んで寝ている。もう一人の大人とは当然シンタローさんの事だ。
シンタローさんと一番遠いのは、故意なのか偶然なのかは分からない。
いつの間にか、この並びが決まっていた。
シンタローさんにとっては久しぶりにパプワ、チャッピーと過ごせるのだから
わざわざ俺の隣に寝たいとは思わないだろう。 ……自分の思考にちょっと傷つく。
眠れないから、こんなことを考えてしまうんだ。っとまた寝返りを打った。
くるっとまた寝返りを打つ。寝ようと思うと更に眠れない。
ぼぉっと壁を見ていた。いくら見ても壁は壁で眠気を催すものではない。
そのまま壁を見続けているうちに、突然シンタローさんの寝顔が見たくなった。
思いついたら我慢できなくなってしまった。
夜も深い。きっと気づかれないだろう。…別に他意があるわけではないし。と自分に言い聞かせる。
掛け布団だけもって、そぉっと移動する。
下が床だろうが、地面だろうが寝られる自信はある。伊達に特戦だったわけではない。
隣に寝転がる。
真横にシンタローさん。
心臓がばぐばく煩い。
…違う意味で寝られそうも無かった。
眠りたいのに眠れない状況で頭が沸いてしまったのかもしれない。少し考えれば直ぐに分かる事だったのに。
寝られないからって、更に寝られなくなる行動とってどうするんだよ。俺。
思わず手を伸ばしたくなるが、それはぐっと堪える。
すぅと規則正しい寝息が聞こえる。それほど側にいると思うと、更に緊張してくる。
「う…んっ。……コ…タロ……」
コタローの夢を見ているのだろうか。
な、なんて羨ましいっ。夢の中までもシンタローさんを独占できるなんてっ
コタローの夢を見ているならきっと笑ってるんだろーなぁ。
そう考えると顔をもっと良く見たくなって右肘を突いて左半身を起こす。
あ、やっぱり笑ってる。夢の中でコタローに抱きついているのかなぁ。
今回はイロイロ垂らしていないよーだ。
ホントにこの人28? 可愛いなぁ。
……だ、駄目だ誘惑に勝てそうも無い。その笑顔が俺を誘う。
手が勝手にシンタローさんの方へと伸びていく。
そのままペタっと頬を触る。
シンタローさんの体温が直接手に伝わってくる。
…俺、もう一生手を洗わなくてもいいっっ!!
いえ、寧ろ洗いたくありません!!
心の中でうわぁうわぁと連呼する。感動。俺は今、そうまさに今! 感動を味わっている。
無論手はそのままシンタローさんの頬。
シンタローさんは起きる気配は無い。
…いったん手を離す。そのままむくっと起き上がり今度は正座してみた。
じーっとシンタローさんの顔を見つめるが、やはりシンタローさんは笑顔を浮かべたままだ。
……こんな機会は二度とないだろう。
よっし、と気合を入れて、シンタローさんの腕に直ぐ横に両手をつく。
そのままお辞儀の様な姿勢で、そぉっと顔を近づける。
唇が付く直前、パチン、っとシンタローさんが目を開けた。
黒い瞳とバッチリ目が合った。
ばっと慌てて顔を離す。
ダラダラと冷や汗が背中を伝う。…こ、殺される、俺?
「コタロー? 眠れないのか?」
鉄拳も眼魔砲も飛んでこなかった。
来たのは言葉。寝ぼけてコタローと勘違いしているようだ。
…それでいいのか、ブラコン兄貴。俺、コタローと体格めちゃめちゃ違います。とちょっと突っ込む。
同時に、ほっと息をつく。どうやらバレた様子はない。
「ホラ、横になれよ」
っと手を伸ばし、俺の腕を掴むとそのまま引っ張られる。
ぼすんとシンタローさんの厚い胸板。
一気に顔が熱くなる。顔といわず、全身に熱が回る。
ありがとう、コタロー!
女王様に心の中で嘗て無いほど感謝する。
次会ったとき、何でも言う事ききますっ!
血塗られた朝を迎えるだろう。
俺は後悔しない。この幸せの絶頂の為に命を落とすならそれこそ本望だ。
10.30
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きゅぴーんっ。
今、確実に脳内で音が鳴り響いた。
この人の笑顔は反則の必殺技だ。
しかも、無自覚の時が一番キク。あの下心が見え見えな、爽やかな笑顔ではない。
そう、ごく自然な笑顔だ。パプワがチャッピーと仲良く踊っている時、今のような二人の寝顔を伺っている時。
そんな時によくこの顔を見ることが出来る。
シンタローさんは、パプワ達が眠っている横に腰を落とし、
柔らかく微笑んだまま、すーすーと軽く寝息をたてているパプワの髪を起こさない様に優しく梳いている。
気のせいだろうか、パプワもいつもより穏やかな顔のように見える。
「やっぱり、パプワも子供なんだよなぁ。」
少し離れておいてあるちゃぶ台に頬杖をつきながら、
そんな様子をぼーっと見ていた俺に向かって小声で囁くように言う。
普段はスーパーちみっこぶり、妙に達観している所為かつい忘れがちになるが寝顔だけ見ていると
本当にどこにでもいる子供だ。
「そうっすねぇ。」
俺もパプワ達を起こさないように小声で応じる。
聞いているんだかいないんだか、分からないような、そんな微妙な間を置いてからシンタローさんはまた囁く。
「…パプワはさぁ、あんま自分のことは喋らねーし、何だかんだムチャクチャやっている様に見えても
いつも自分より、他の人間のことを優先させちまうだろ?」
「…ええ。」
言われて振り返ってみればそうかも知れない。
パプワはいつも他人を思いやる。特にコタローは初めての同世代の友達だったためか、それがよく見られた。
「それに、寂しがりやだし。パプワ島には友達はたくさんいるが、それでもやっぱり寂しいんだろーなぁ。」
じっとパプワの穏やかな寝顔を見つめている。
「だから、頼むな。」
何を、とは言わなかった。
シンタローさんは、いつか帰る人だ。今はここで生活を共にしているが、
赤の秘石が見つかり、ガンマ団からの迎えが来たら迷わず帰るだろう。
例え、心はここにあろうとも、だ。
シンタローさんが安心できるように、キッパリと言い切った。
「はい。」
梳いていた手を止めると、パプワの柔らかそうな頬に手を伸ばす。
そのままそっと触れる。
気が済んだのだろうか、またゆっくりと手を離す。
俺の方に向き直るとかつてないほど穏やかな口調。
「ありがとう。」
俺に向けられた、初めての笑顔だった。
9.15
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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きゅぴーんっ。
今、確実に脳内で音が鳴り響いた。
この人の笑顔は反則の必殺技だ。
しかも、無自覚の時が一番キク。あの下心が見え見えな、爽やかな笑顔ではない。
そう、ごく自然な笑顔だ。パプワがチャッピーと仲良く踊っている時、今のような二人の寝顔を伺っている時。
そんな時によくこの顔を見ることが出来る。
シンタローさんは、パプワ達が眠っている横に腰を落とし、
柔らかく微笑んだまま、すーすーと軽く寝息をたてているパプワの髪を起こさない様に優しく梳いている。
気のせいだろうか、パプワもいつもより穏やかな顔のように見える。
「やっぱり、パプワも子供なんだよなぁ。」
少し離れておいてあるちゃぶ台に頬杖をつきながら、
そんな様子をぼーっと見ていた俺に向かって小声で囁くように言う。
普段はスーパーちみっこぶり、妙に達観している所為かつい忘れがちになるが寝顔だけ見ていると
本当にどこにでもいる子供だ。
「そうっすねぇ。」
俺もパプワ達を起こさないように小声で応じる。
聞いているんだかいないんだか、分からないような、そんな微妙な間を置いてからシンタローさんはまた囁く。
「…パプワはさぁ、あんま自分のことは喋らねーし、何だかんだムチャクチャやっている様に見えても
いつも自分より、他の人間のことを優先させちまうだろ?」
「…ええ。」
言われて振り返ってみればそうかも知れない。
パプワはいつも他人を思いやる。特にコタローは初めての同世代の友達だったためか、それがよく見られた。
「それに、寂しがりやだし。パプワ島には友達はたくさんいるが、それでもやっぱり寂しいんだろーなぁ。」
じっとパプワの穏やかな寝顔を見つめている。
「だから、頼むな。」
何を、とは言わなかった。
シンタローさんは、いつか帰る人だ。今はここで生活を共にしているが、
赤の秘石が見つかり、ガンマ団からの迎えが来たら迷わず帰るだろう。
例え、心はここにあろうとも、だ。
シンタローさんが安心できるように、キッパリと言い切った。
「はい。」
梳いていた手を止めると、パプワの柔らかそうな頬に手を伸ばす。
そのままそっと触れる。
気が済んだのだろうか、またゆっくりと手を離す。
俺の方に向き直るとかつてないほど穏やかな口調。
「ありがとう。」
俺に向けられた、初めての笑顔だった。
9.15
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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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長いつややかな髪が彼の動きを追うように揺れる。
この日差しの強いパプワ島では、色の濃い髪は光に反射しまるで太陽のように輝いて見える。
今は背を向けて見えない形のよい切れ長の目は、意志の強さを表し見るものを引き付ける。
身長190cm越え、逞しく隆起した筋肉を持つその人が、
普段からは想像もつかないくらい、家庭的にパンっと洗濯物の皺をのばしながら洗濯物を干していようとも、
見守る彼にとっては可愛らしく見える様だ。
「おい。」
最後のシーツを破きそうな勢いで皺をのばす。
シンタローはこめかみに青筋を立てながら押し殺した様な声を出す。
「気持ち悪いから、やめろ。」
「え?なんすか?」
声をかけられたリキッドは本当に何を言われているのか理解できない、
というようなキョトンとした表情で応じる。
やや逆立った金髪が平和そうに風に吹かれ左右に揺れる。
更に我慢強く、シンタローは怒鳴らないように口を開く。
「その恋する女の子のような目で俺を見ること。」
「そっ」
そんなことは無いと否定しようとしたのだが、しっかりと図星だったので否定できず言葉を切る。
両手を拳にし、口の前当てきょろきょろと視線をさ迷わせる。
視界に入るのは、見慣れたのどかなパプワ島の様子だ。
そんなリキッドの反応を見て、シンタローは更に声をおとす。
「しっかり規格サイズ以上に成長したヤローに見つめられても嬉しくない。」
「いいじゃないっすか!見ているだけなんすから!」
リキッドにしては、強気な態度にでる。
触れることが出来ないのだから、見ることまでも拒否されてしまっては堪らないと思ったのだろう。
シンタローは間髪いれず答える。
「よくない。」
「減るわー」
台詞の途中で思いっきり言おうとした事を否定される。
「減るわけじゃない、とか月並みなことをいうな。減るんだよ。俺のセンサイな神経がな。」
シンタローは、はぁと深いため息をつく。
「お前だってヤだろ?ウマ子にじーっと凝視されたら。」
リキッドは脳裏にその様がありありと浮かぶ。
いつも強制的に絞め殺されそうになっているが、何もされずじっと見られるのも物凄く怖い。
こんな穏やかな気候にもかかわらず、一瞬にしてざぁっと鳥肌が立つ。
思わず、という様子で腕を擦りながら頭を左右に振る。
そんなリキッドの様子にシンタローは、したり、というような顔でうんうんと頭を上下する。
「でも、見るぐらいいいじゃいっすか!?」
「お前、何聞いてたんだよ。んな他意の篭った目で見られるのは嫌なんだよ。
何?お前そんなに俺のこと好きなの?」
俺様道を遺憾なく発揮する。
リキッドはさっと朱のはしった顔を隠すため、慌てて下を向く。
幸いな事にシンタローの方がやや背か高いため、リキッドの顔は見えない。
が、赤く染まった耳は見える。
シンタローは、はぁと本日2度目のため息が漏れる。
「まあ、俺ぐらいかっこいいと惚れたくなるかもしれないけどな。」
「いえ、どちらかといえばかわいいです。」
聞こえたら半殺しでは済まないかもしれないので、心の中で反論する。
「お前、兄弟いないだろ。」
行き成り話が変ったので、リキッドは思わず顔を上げる。
「どうよ?」
シンタローが答えを促す。
「ええ、いないっす。それが?」
「いや、そうだろうなって思っただけ。」
気にするな、というように手をパタパタと振る。
「まあな、この愉快な島に俺みたいな常識人がいたら思わず惚れちまうかもしれないわなー」
「常識人?」
リキッドは思わず呟く。果たしてこの島に適応できる人物を常識人と呼んでよいのだろうか?
そんな反応が気に食わないのだろうか、シンタローが凄む。
「んだよ。何か文句あるのか?」
「い、いえ、そんな事無いっす!」
ここは流した方が良いだろうとリキッドは慌て、不自然なぐらい力強く頭をぶんぶんと左右に振る。
「それは、アレだ。極限状態を一緒に体験すると、相手に惚れちまうってやつ。
つり橋なんか渡るとよくなるそうだ。これと一緒。」
しかめっ面が薄れ、パプワ島は常にある意味極限状態だからなーとどこか嬉しそうに言う。
また唐突に話が元に戻ったので、リキッドは暫らく考えて、言葉を発した。
「じゃあ、その極限状態かどうか、見極めるために今まで通り、見てもいいんっすね?」
「は?今までの話を聞いていてどうしてそーゆー結論に達するんだよ!」
お前は馬鹿かっ、と怒鳴る。
「ええー」
情けなさそうに呟く。眉が垂れている。
「わかった。好きにしろ。」
これ以上何を言っても無駄と思ったのか、それともリキッドのあまりの情けなさそうな表情にほだされたのだろうか、
シンタローはさっさと背を向けパプワハウスへと帰る。
「待ってくださいよー」
と刷り込まれた雛の如く慌ててシンタローの背中を追いかける。
ぴこぴことまるでヒヨコのような金色の頭が後をついて行く。
二人が去った後には、真っ白な洗濯物が平和そうにひらひらと風に吹かれていた。
今日もパプワ島は平和だ。
6.3
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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長いつややかな髪が彼の動きを追うように揺れる。
この日差しの強いパプワ島では、色の濃い髪は光に反射しまるで太陽のように輝いて見える。
今は背を向けて見えない形のよい切れ長の目は、意志の強さを表し見るものを引き付ける。
身長190cm越え、逞しく隆起した筋肉を持つその人が、
普段からは想像もつかないくらい、家庭的にパンっと洗濯物の皺をのばしながら洗濯物を干していようとも、
見守る彼にとっては可愛らしく見える様だ。
「おい。」
最後のシーツを破きそうな勢いで皺をのばす。
シンタローはこめかみに青筋を立てながら押し殺した様な声を出す。
「気持ち悪いから、やめろ。」
「え?なんすか?」
声をかけられたリキッドは本当に何を言われているのか理解できない、
というようなキョトンとした表情で応じる。
やや逆立った金髪が平和そうに風に吹かれ左右に揺れる。
更に我慢強く、シンタローは怒鳴らないように口を開く。
「その恋する女の子のような目で俺を見ること。」
「そっ」
そんなことは無いと否定しようとしたのだが、しっかりと図星だったので否定できず言葉を切る。
両手を拳にし、口の前当てきょろきょろと視線をさ迷わせる。
視界に入るのは、見慣れたのどかなパプワ島の様子だ。
そんなリキッドの反応を見て、シンタローは更に声をおとす。
「しっかり規格サイズ以上に成長したヤローに見つめられても嬉しくない。」
「いいじゃないっすか!見ているだけなんすから!」
リキッドにしては、強気な態度にでる。
触れることが出来ないのだから、見ることまでも拒否されてしまっては堪らないと思ったのだろう。
シンタローは間髪いれず答える。
「よくない。」
「減るわー」
台詞の途中で思いっきり言おうとした事を否定される。
「減るわけじゃない、とか月並みなことをいうな。減るんだよ。俺のセンサイな神経がな。」
シンタローは、はぁと深いため息をつく。
「お前だってヤだろ?ウマ子にじーっと凝視されたら。」
リキッドは脳裏にその様がありありと浮かぶ。
いつも強制的に絞め殺されそうになっているが、何もされずじっと見られるのも物凄く怖い。
こんな穏やかな気候にもかかわらず、一瞬にしてざぁっと鳥肌が立つ。
思わず、という様子で腕を擦りながら頭を左右に振る。
そんなリキッドの様子にシンタローは、したり、というような顔でうんうんと頭を上下する。
「でも、見るぐらいいいじゃいっすか!?」
「お前、何聞いてたんだよ。んな他意の篭った目で見られるのは嫌なんだよ。
何?お前そんなに俺のこと好きなの?」
俺様道を遺憾なく発揮する。
リキッドはさっと朱のはしった顔を隠すため、慌てて下を向く。
幸いな事にシンタローの方がやや背か高いため、リキッドの顔は見えない。
が、赤く染まった耳は見える。
シンタローは、はぁと本日2度目のため息が漏れる。
「まあ、俺ぐらいかっこいいと惚れたくなるかもしれないけどな。」
「いえ、どちらかといえばかわいいです。」
聞こえたら半殺しでは済まないかもしれないので、心の中で反論する。
「お前、兄弟いないだろ。」
行き成り話が変ったので、リキッドは思わず顔を上げる。
「どうよ?」
シンタローが答えを促す。
「ええ、いないっす。それが?」
「いや、そうだろうなって思っただけ。」
気にするな、というように手をパタパタと振る。
「まあな、この愉快な島に俺みたいな常識人がいたら思わず惚れちまうかもしれないわなー」
「常識人?」
リキッドは思わず呟く。果たしてこの島に適応できる人物を常識人と呼んでよいのだろうか?
そんな反応が気に食わないのだろうか、シンタローが凄む。
「んだよ。何か文句あるのか?」
「い、いえ、そんな事無いっす!」
ここは流した方が良いだろうとリキッドは慌て、不自然なぐらい力強く頭をぶんぶんと左右に振る。
「それは、アレだ。極限状態を一緒に体験すると、相手に惚れちまうってやつ。
つり橋なんか渡るとよくなるそうだ。これと一緒。」
しかめっ面が薄れ、パプワ島は常にある意味極限状態だからなーとどこか嬉しそうに言う。
また唐突に話が元に戻ったので、リキッドは暫らく考えて、言葉を発した。
「じゃあ、その極限状態かどうか、見極めるために今まで通り、見てもいいんっすね?」
「は?今までの話を聞いていてどうしてそーゆー結論に達するんだよ!」
お前は馬鹿かっ、と怒鳴る。
「ええー」
情けなさそうに呟く。眉が垂れている。
「わかった。好きにしろ。」
これ以上何を言っても無駄と思ったのか、それともリキッドのあまりの情けなさそうな表情にほだされたのだろうか、
シンタローはさっさと背を向けパプワハウスへと帰る。
「待ってくださいよー」
と刷り込まれた雛の如く慌ててシンタローの背中を追いかける。
ぴこぴことまるでヒヨコのような金色の頭が後をついて行く。
二人が去った後には、真っ白な洗濯物が平和そうにひらひらと風に吹かれていた。
今日もパプワ島は平和だ。
6.3
作・渡井
リキシン好きに20のお題10「我慢の限界」
オムレツ
シンタローさん、知ってますよね。
俺はあんたが死ぬほど好きなんです。
なんて、言えるものならとっくに言っていると思う。
リキッドはクボタくんの卵を入れた籠を背負い、大きく肩を落とした。
この想いを知らないはずはないのに、同じ家に住むお姑は何もなかったかのような顔で、毎日パプワと遊んでいる。時々余計なことを言ってチャッピーに噛まれ、人の顔を見ればあれこれと家事に口を出し、笑ったり怒ったり眼魔砲を撃ったりと忙しそうだ。
いずれは帰ってしまう人だから、この島にいるあいだはパプワやチャッピーと一緒に遊んでいてほしいと思う。
でも遠くから楽しそうな声が聞こえてくると、ちょっとした疎外感に胸が締めつけられたりもする。
「はああ…」
知らずにため息がこぼれ、リキッドは道端に腰を下ろした。早く帰って昼食にしないとまた怒られるのは分かっているが、顔を見たくないのだ。
いや、本当は見たいのだけれど―――どうすればいいのか。
あまりに今までと変わりがないものだから、リキッドの方も普通に接している。けれど内心ではもう我慢の限界なのだ。
好きだと言いたい。
言わせてくれないあたりで、彼の答えは分かっているけれど―――せめてその口から聞けたら、諦められるかもしれない。
ぼんやりと森の景色を見ていたら、ふと一本の木に気づいた。相合傘が彫られている。
近寄って見てみると、刻まれた名前は一方が「シンタローはん」でもう一方が「わて」。
「…削って消したろか」
手塩にかけて育てた弟子があれかと思うと、恐怖の対象だった元同僚がちょっと気の毒になった。
アラシヤマは特別だとしても、と「シンタロー」の文字を指でなぞってため息をついた。
きっとシンタローにはこんな人間がたくさんいるのだろう。
彼のためなら何だってすると誓い、一挙一動に振り回され、気まぐれに口許に浮かぶ笑みや流れる黒髪に魅せられた人々が。
彼にとってリキッドなんてその1人にすぎない。
だけど、と幹に額をつけた。
「言わせてもくれないなんて、ずるいっすよ」
「遅い!!」
案の定、戻ったらパプワとシンタローに声を揃えて怒られた。ついでにチャッピーに噛まれた。
超特急で準備をしようと思えば思うほど気ばかり焦り、あたふたしているのを見かねたのか、シンタローが卵の入ったボウルを取り上げた。
「この卵はどうするんだ」
「あ、オムレツにでもしようかと思って…」
「じゃあそれは俺がやってやるから、お前さっさとメシ炊けよ」
ありがとうアラシヤマ。
思わず心の中で参拝した。奴の落書きに気を取られて道草したおかげで、オムレツを手に入れた。
「うわっ」
パプワとチャッピーのあとで焼いてもらったオムレツは、箸で二つに割るととろりと半熟の卵が溢れてきた。
やっぱりかなわないな、と自分の分を作っているシンタローの背中を見ながら思う。
この人は俺の手の届かない人で、俺のことなんか赤の番人としか思っていない人で、いつかいなくなる人で―――大好きな人。
柔らかいオムレツの甘みに促されるように、リキッドの唇が開く。
「シンタローさん、知ってますよね」
ぴくりとシンタローの背中が強張った。フライパンを持つ手が止まる。
ああ、そんなだから。
「…アラシヤマって最初に来たとき、コタローを誘拐しようとして『男の子の敵』って叫ばれてたっす」
「あんの引きこもり!!」
俺は言えなくなっちまうんですよ。シンタローさん。
「ちょっとシメてくる」
フライパンを片手に青筋を浮かべて家を出たお姑さんに、リキッドは苦笑を堪えた。
言えない自分は逃げていると思う。
でも言われたくないシンタローだって逃げている。
「やっぱずるいよなあ」
開け放たれた扉から、パプワがシットロト踊りをしているのが見えた。
とりあえず今日のところは、何かとうるさい恋敵を潰せたことで満足しよう。さっき感謝したことなどころりと忘れて、リキッドはオムレツの続きに戻った。
自分が作るのより何倍も美味しい。味も見栄えも全然違う。もう一度作ってもらえたら、今度こそ言えそうな気がした。
だってもう、俺もあんたも分かってるんだ。
―――俺はあんたが死ぬほど好きなんです。
予行練習なら、いつだって完璧なのだけれど。
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どこが「次こそは早く」なんだか…。
ごめんねアラシヤマ本当は大好きよ。
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作・渡井
リキシン好きに20のお題09「気付かれた!」
コロッケ
どういう風の吹き回しっすか、なんて訊ねたら、ぎろりと睨まれるのはさすがに学習した。
昼前に「コロッケが食いたい」と言ってみたら、シンタローが作ってくれることになってしまった。下ごしらえは手伝ったが、あとは座ってろと言われて落ち着かない家政夫である。
キッチンに立つ後姿を見ながら、そわそわするのを堪えきれない。
大好きな人が作ってくれるコロッケ。思っただけで幸せ過ぎて、そしてそれをパプワに突っ込まれないか心配で、いてもたってもいられない。
熱い油にコロッケが入る音がして、パプワとチャッピーは踊りながら待っている。シンタローが振り向いた。
「油が飛びそうだな。ヤンキー、エプロン貸せ」
「はっはいっ」
急いで渡したエプロンは白のヒラヒラで、シンタローは心の底から嫌そうだったが、仕方ないといった顔で身につける。
どんな格好でも似合うと思うが、エプロン姿はまた格別だ。思わずうっとりと眺めてしまう自分がおかしくなる。
可愛いものに目がないリキッドが惚れてしまったのは、デカくてゴツくてコワいお姑さんだった。
(何で俺、シンタローさんが好きなんだろうなぁ)
「チャッピー、油が飛ぶからもうちょっとそっち、な?」
顔を上げるとシンタローが思いがけないほど優しくチャッピーに注意している。
(そんなのシンタローさんがめちゃめちゃ可愛いからに決まってるだろ!)
先ほどの自分に、別の自分が突っ込んだ。
(…そうなんだよな)
そして先ほどの自分は納得する。
―――デカくてゴツくてコワくて、可愛いんだよな。この人は。
「出来たぞ! ヤンキー、皿」
「はいっ」
普段はリキッドに対しては笑顔どころか言葉すら出し惜しみするシンタローだけれど、それでもいいと思ってしまったのだから仕方ない。
「わり、エプロンちょっと濡らしちまった」
「干してたらすぐ乾きますよ」
返されたエプロンには、確かに少し水が染みている。
「ちょっと待ってて下さいね」
油ものを作ったから明日ちゃんと洗い直すことにして、とりあえず外に出る。
青空に翻る洗濯物と一緒に干しておこう。
そう思ったのだが。
(俺はシンタローさんが)
エプロンにはまだぬくもりが残っていた。
―――思わず取った行動は、後で考えれば自分でもバカらしくなるくらいで。
冷静になれば気付いただろう。
だが1人のために冷静になれないのが恋だ。まるで気付かなかった。
自分が温かいエプロンを抱きしめていることも、思いのほか時間が経っていることも、不審に思ったシンタローが顔を見せたことも。
「シンタロー、さんが」
「何だ?」
ものすごい勢いで振り向いたリキッドの顔は、いっそ見事なくらい真っ赤だった。
「早くメシにするぞー」
パプワの声がしなければ、ずっと互いに驚いた顔のまま立ち尽くしていたかもしれない。
「あ、ああ、今行く」
うろたえた声でシンタローがきびすを返し、家の中へと駆け込んだ。
「リキッド!」
再び上がったパプワの声に、のろのろと戻ると、先に座っていたシンタローが目を逸らした。
気付いていれば―――気付かれなければ、もう少しこの人を見ていられたかもしれない。
その強い眼差しや、風に流れる髪や、美味しい料理を生み出す手や、太陽のような笑顔を、瞼に焼きつけるほど見ていたかったのに。
「冷めるぞ、早く食べよう」
パプワが落ち着いた声で言った。
あんなに楽しみにしていた彼のコロッケは、どこに入ったかも分からなかった。
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私が気付いたのはひさッッびさのお題更新だということでした。
次こそはもう少し早く…!(希望)
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