ご褒美もらっていいですか、と懇願にも似た響きで訊ねた声は、情けないが上擦っていた。
それでも自分で自分を、その勇気を褒めてやりたい。
眼を丸くして(この人は驚くと普段より少し、若く、失礼だけど幼く見えることを発見。大きな収穫)俺を見つめたシンタローさんは、すぐに憮然とした表情で口元を引き締めて。
息を吐き出して、笑った。
実は子どもとか、動物とか、そういう類のものに弱いのを知っているから、そこにつけ込んでみました。
ごめんなさい神様、ごめんなさいシンタローさん。
でも、後悔なら後でしたほうがずっといい。
「ご褒美、って、何歳だよヤンキー」
その言葉は許可、の、意。
明らかに油断していた肩に手を乗せる。
文句も鉄拳も、今ならうまく回避できるという根拠のない自信があった。
そして冗談みたいに軽い、キス。
それでも自分で自分を、その勇気を褒めてやりたい。
眼を丸くして(この人は驚くと普段より少し、若く、失礼だけど幼く見えることを発見。大きな収穫)俺を見つめたシンタローさんは、すぐに憮然とした表情で口元を引き締めて。
息を吐き出して、笑った。
実は子どもとか、動物とか、そういう類のものに弱いのを知っているから、そこにつけ込んでみました。
ごめんなさい神様、ごめんなさいシンタローさん。
でも、後悔なら後でしたほうがずっといい。
「ご褒美、って、何歳だよヤンキー」
その言葉は許可、の、意。
明らかに油断していた肩に手を乗せる。
文句も鉄拳も、今ならうまく回避できるという根拠のない自信があった。
そして冗談みたいに軽い、キス。
昼食後の片付けをしていると背中に鋭い視線を感じて、それが舅のものだとわかっているから、俺は身体を強張らせる。
へましないように気を付けないと、即、眼魔砲。
振り返ることもできず、とりあえず硬い身体のままで食器洗いを始めた、けれど。
気配が少しでも動くたび、皿を落としてしまったりして、結局、何度も怒鳴られた。
「シンタローさん、お茶どうぞ」
「お、サンキュー。もっと丁寧に皿洗いしろよなな、おまえ」
あんたのせいだろーが、なんてツっこめるわけもなく、緊張の糸が切れた俺は引き攣った笑いを浮かべて、脱力して。
だから、ふいに伸ばされた腕も、避けきれなかった。
「・・金髪」
「え、あ、はい・・っ?」
ももももしかして、いや、もしかしなくてもこの頭に感じる温もりと重みは、シンタローさん、の、手のひらですか。
大いに動転しまくって思わず身体を引こうとするものの、大きな手のひらはそれを許さなかった。
さわさわと無遠慮に髪は掻き回されて、なんだか、頭の中まで乱されていくような。
そんな俺をシンタローさんはまったく気にせず、髪のみを一点集中で見つめている。
つむじに穴あきそう、って、・・さっきのはもしかして、俺の髪を見てたのか?
「本物か?・・だよな」
「い、一応、アメリカ出身ッすから」
あ。
妙に冷めた表情。
「眩しいな、それ」
俺はシンタローさんのことを、詳しく知っているわけじゃない。
でも、一族の中でシンタロ-さんだけが黒い髪を持っていて、シンタローさんだけが秘石眼を持っていないってことくらいなら、知ってる。
「きらいっすか」
唐突な問いかけは、ごく自然に口をついたもので、別に意図があったわけじゃなかった、・・と思う。
少なくとも、シンタローさんを怒らせるつもりなんかなくて、まして。
悲しませるつもりも、なかった、のに。
シンタローさんは一瞬だけ、逡巡するような、この人にしては珍しく曖昧な風に顔を曇らせた。
そして。
「・・いや」
柔らかい、微笑み。
「好きだぜ」
軽いデコピンを最後に、体温は離れていく。
初めて俺に向けられた優しい笑みと声は、そのまま、腹ごなしの散歩から帰って来た1人と1匹の元へ移動された。
そんなことが、とてつもなく寂しく感じられた。
へましないように気を付けないと、即、眼魔砲。
振り返ることもできず、とりあえず硬い身体のままで食器洗いを始めた、けれど。
気配が少しでも動くたび、皿を落としてしまったりして、結局、何度も怒鳴られた。
「シンタローさん、お茶どうぞ」
「お、サンキュー。もっと丁寧に皿洗いしろよなな、おまえ」
あんたのせいだろーが、なんてツっこめるわけもなく、緊張の糸が切れた俺は引き攣った笑いを浮かべて、脱力して。
だから、ふいに伸ばされた腕も、避けきれなかった。
「・・金髪」
「え、あ、はい・・っ?」
ももももしかして、いや、もしかしなくてもこの頭に感じる温もりと重みは、シンタローさん、の、手のひらですか。
大いに動転しまくって思わず身体を引こうとするものの、大きな手のひらはそれを許さなかった。
さわさわと無遠慮に髪は掻き回されて、なんだか、頭の中まで乱されていくような。
そんな俺をシンタローさんはまったく気にせず、髪のみを一点集中で見つめている。
つむじに穴あきそう、って、・・さっきのはもしかして、俺の髪を見てたのか?
「本物か?・・だよな」
「い、一応、アメリカ出身ッすから」
あ。
妙に冷めた表情。
「眩しいな、それ」
俺はシンタローさんのことを、詳しく知っているわけじゃない。
でも、一族の中でシンタロ-さんだけが黒い髪を持っていて、シンタローさんだけが秘石眼を持っていないってことくらいなら、知ってる。
「きらいっすか」
唐突な問いかけは、ごく自然に口をついたもので、別に意図があったわけじゃなかった、・・と思う。
少なくとも、シンタローさんを怒らせるつもりなんかなくて、まして。
悲しませるつもりも、なかった、のに。
シンタローさんは一瞬だけ、逡巡するような、この人にしては珍しく曖昧な風に顔を曇らせた。
そして。
「・・いや」
柔らかい、微笑み。
「好きだぜ」
軽いデコピンを最後に、体温は離れていく。
初めて俺に向けられた優しい笑みと声は、そのまま、腹ごなしの散歩から帰って来た1人と1匹の元へ移動された。
そんなことが、とてつもなく寂しく感じられた。
例えばの話。
触りたいとかキスしたいとか、もっと触りたいとか、もっともっと触りたい、とか、考えるだろ。
(だってこれでも健康な男子ですから)
戦闘能力でも、単純に力比べでも、かなわないと思う、たぶん。
(それは、精神的なものが多大な影響を及ぼして)
好きなのか嫌いなのか問われれば、きっと、そういう問題じゃないと俺は答える。
(赤面した自分が簡単に想像できる)
だけど、恐れる理由はあったって、嫌いになる理由はない、のは、事実。
(好きになる、情が移る理由は、これから次第で大いに有り得る)
というか、むしろ。
むしろ?
(相手は片腕を使えない身なのだから、卑怯と言われてもいい、もう片腕を塞いでしまえばいいだけの話)
想像するだけで精一杯で、とても実行に移すなんて不可能だと、わかってはいるけれど。
触りたいとかキスしたいとか、もっと触りたいとか、もっともっと触りたい、とか、考えるだろ。
(だってこれでも健康な男子ですから)
戦闘能力でも、単純に力比べでも、かなわないと思う、たぶん。
(それは、精神的なものが多大な影響を及ぼして)
好きなのか嫌いなのか問われれば、きっと、そういう問題じゃないと俺は答える。
(赤面した自分が簡単に想像できる)
だけど、恐れる理由はあったって、嫌いになる理由はない、のは、事実。
(好きになる、情が移る理由は、これから次第で大いに有り得る)
というか、むしろ。
むしろ?
(相手は片腕を使えない身なのだから、卑怯と言われてもいい、もう片腕を塞いでしまえばいいだけの話)
想像するだけで精一杯で、とても実行に移すなんて不可能だと、わかってはいるけれど。