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たぶんこれからはじまっていく



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 ガキの頃欲しかったものは、今になって思えば大概手に入っていた気がする。
 親からの愛情だとか、恥ずかしながら惜しみなく与えられていたから。
 今、俺が欲しいものは、足掻いても足掻いても手が届かない。




 家は珍しく静かだった。
 ちみっ子達はあの人を連れ立って遊びに行っている。
 何となく嫉妬を感じるがそれはそれとして。
 最近気付いてしまった。

 これって恋デスカ神様?!

 ……スンマセン神様……、ロクでもない事で呼び出しました。
 だってもう、そうとしか考えられないだろ?
 認めたくないけど……。
 言葉に振り回されたり、ドキドキすんのとか、あまつ、触れたいだなんて……っ!!
 いくらこの島に女がいない(例外を除く)からって……。
 何が悲しゅうて恋愛対象が男やねん。
 何で関西弁かな。俺。落ち着け俺。
 ……アホか俺は。
 けど、そうなっちまったもんは仕方ないだろ?
 うん。仕方ない。
 仕方ない……ってことにしてくれ。

 でも……あの人にとって俺って何だろう。

 すぐ家事の事でいびるし、なんか敵対視されてるし、ヤンキー嫌いだし……。
 ……俺、嫌われてる?
 たまに優しいけどさ。
「はぁ……」
 馬鹿みてぇ……。
 なんでこんなことになったんだ。
 繰り返し繰り返し、馬鹿みたいだって何度も思う。
 それでも想いが否定できないのは、きっと。
 いとおしいと思ってしまったから。
 彼を傷つけたくないから、
 今の関係を壊したくないから、
 言えはしない。
 違うか。
 本当は言う勇気がない。
 でも、自覚するくらい、いいですよね?

 ……あなたが好きです。


「シンタローさん」







END





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後書き

やっちまった……ついに自覚させた上、名前を出しちまったyo…!!
名前出すと恥ずかしさ倍増。
乙女家政夫見参。

つか自分で書いてて引いた。2㎞ほど。

2004(April)


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言葉では



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 何故、いつも彼は、人のことを睨んでいるか、寝ているかしかないんだろう。
 ちみっこ達といるときならばいざ知らず、青年が見る時、彼は大体その二つの顔でしかない。
 それはもう両極端な。
「寝ちゃってます……?」
 そして今は、その目つきの悪い目を閉じて、深く眠りの底にいるらしく、反応は皆無。
 朝方出かけていくのを見かけたきり見なかったが、まさかこんなトコでも寝ていたとは……。
 その辺からナマモノでも飛び出してきそうな、うっそうとしたジャングルのど真ん中。
 変鯛とか雌雄同体とかに襲われないのだろうか?
 それとも家で寝るのが嫌なのか……?
 青年の頭を『俺は嫌われているのでは』という考えがよぎったが、それはかなりショックなので、すぐに思考の隅に追いやった。
 (事実嫌われてはいるが、それほどまでとは思いたくない。)
「……ぁにやってんだ、てめぇ」
「お、起きてたんですか?!!」
 何の気配もなく起きた彼に驚いて、青年は三歩ほど後ろに飛んだ。
 いくらなんでも驚きすぎだろう。
 目の前の人物は眉根を寄せて訝しがる。
「ん……ああ、寝てたのか……」
 たった今、自覚したかのように伸びをする。
 大樹に背を預けていた彼は、その態勢が辛かったのか、コキリと一度首を鳴らして、息をついた。
「それで?」
「は?」
 聞かれた意味が分からずに、馬鹿みたいに聞き返すと、軽く頭を小突かれた。
「だから、お前は何しに来たんだよ」
「あ、ああ、いえ、その……」
 姿が見えないのが心配で探してました、とは言えず、適当な言い訳を探すように視線を宙に飛ばす。
「ちょっとヤボ用で……」
 結局、何も思い浮かばずに曖昧な言葉になって出てきてしまった。
「ふぅん。」
 通じてしまうところは、彼も甘いというかなんと言うか……。
 一方、青年の方は張り付いた笑顔ままで固まっていた。
 当初の目的は果たせたのだから、立ち去っても良いのだが、ここで去るのも何となく後味が悪い。
 互いに一言も発さぬままに、間が開く。
 ほんの少しの沈黙が降りてきて、草木がざわざわと鳴るのが心地良い。
 いつも通りに天気が良くて、いつも通りに風が吹いている。
「っふぁ……」
 彼の口から短く欠伸が漏れる。
 どうやらまだ眠いらしく、目をこすりながら、人払いをするように手を前後へとひらひらさせる。
「俺もう少し寝るわ。用済んだら帰れよ」
 座りなおして、もう一度その背を大樹に預けた彼に、青年はまた眠ってしまわれては、と慌てて話し掛けた。
「あ、あの……!」
「ぁん?」
 恐る恐るというような青年の口調と、眠りに入るのを邪魔されたことに少々イラつきながらも、彼は答える。
「隣っ……いいっスか?」
「いいわけねぇだろ、このエセヤンキー」
 おそらく勇気を振り絞ったであろう一言を、彼は瞬時に一蹴した。
「……ですよねぇ~……」
 わかってましたと言わんばかりに、さめざめと泣きながら、渾身の言葉を即時に跳ね返されて尚、笑顔の青年。
 その姿があまりに哀れだったのか、彼は『しょうがねぇなぁ』とため息をついて、少し横へと移動した。
「……まあ、その辺で寝るならてめぇの勝手だけどな」
 ぼそりとそう言われて、青年は先ほどまで地面を相手にいじけていたとは思えないほど、本当に嬉しそうに頷いた。
「はいっ!!」

 その顔が、あまりに子供っぽかったからか……。
 彼の口元がわずかに綻んだのを、青年は見逃さなかった。
 彼が自分だけに見せてくれる初めての笑い顔。
 いつも通りに天気が良くて、いつも通りに風が吹いている。
 いつもと違ったのは彼が笑ってくれたこと。


 それはなんと言えばいいのか、

 たぶん。

 『思慕』だとか『憧憬』だとか、

 そんな言葉が似合うのだろうけど。

 けれど。


 それだけではない。




 ああ。それは、言葉だけでは足りなくて―――。







END





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後書き

乙女街道驀進中。
リキッドが…リキッドが…!

2004(April)


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Feel on you



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 昼頃隊長が来た。
 いや、隊長っつっても俺、特戦部隊辞めてるわけだから『元』隊長。
 未だに頭上がらないけど。
 獅子舞とかナマハゲとか、色々呼び名のある人。(もちろん当人にはいえないが)
 で、その隊長が来て、散々騒いでいった挙句についさっき元同僚引き取られていった。
 山ほど一升瓶持ってきて、散らかし放題散らかしていって……。
 そんで……。
「……うぅ……」
 俺はかなりグロッキー状態で床に伏せってた。
 ああ! 横に立ってる人の視線が痛いっ!
 かなりの量の酒を呑まされてもう動けない。
 スンマセン。起きたら謝りますからっ!! 眼魔砲だけはっ!!
 もう一滴も残っちゃいないのに、酒臭さで酔いが深みにはまって行く。
 うわっ、不思議の国に出てくる白ウサギが走ってる。
 夢か幻覚。どっちだ?
 ……どっちでもいいか。
「……あはは~夢の国だ~。待って~うさぎさ~ん……」
 ウサギを追いかけて草原を走る。
 あれ? いつから草原……?
「オラ、邪魔だ。隅っこ行ってろ」
 やけに遠い所からそんな声がして、背中を追い立てられる。
 振り返ると獅子ま……もとい隊長が閻魔帳(給料査定ノート) を広げながら仁王立ちしていた。
「ぐぁ! スンマセンっ!」
 何故か反射的に謝った。
 下っ端街道驀進中!
 ……泣きたい。
「ディズニー坊やはマイナスだぞー?」
 隊長の舌が蛇っぽくシューシュー音を立てながら、閻魔帳にはマイナス棒が引かれていく。
「スンマセン隊長っ! 査定は……! マイナス査定だけは……!!」
 少ない給料これ以上減らさないで下さいっ!!
「はっはっは~」
 隊長は涼しげな風と共に去っていった。
 もちろんマイナス棒を引きながら。
 グッバイ俺の給料。
 風と共に去りぬ……。
 と思ったら何かひんやりしたものが額に置かれた。
 それが気持ちよくて、目を閉じると、段々何も考えられなくなる。
 ただひたすら、体が熱い。
「んっ……」
 あまりの熱さにゆっくりと目を開いた。
 さっきも声を出していたはずなのに、喉が張り付いたように震える。
「……ぁ?……」
 体を起こすと足元に湿ったタオルが落ちた。
 ああ。これか。
「いつまで寝惚けてんだ。馬鹿」
 今度は目の前にあの人がいて……、でも介抱なんかしてくれるわけないし、これも夢か幻覚なんだろう。
「…………」
 どうせ夢なら、夢なら文句も言われないだろうから。
 あなたに……――――。
「…………」

 ――――ぴとっ。

 頬に触れた。
「…………」
 やっぱ夢だ。
 じゃなきゃ、こんなことしたら即眼魔砲だろ。
 ああ。人肌ってこんなに冷たいっけか?
「冷たい……」
 違うか。俺が熱いんだ……。
 また酔いが回ってきてんのかも……。
「冷たくて、気持ちいいっス……」
 言った瞬間に、手がそこにいたはずの人をすり抜けた。
 ほら、やっぱり夢だ。

 遠くの方で喋るねずみが手招きしながら笑っていた。
「ん……待てよ~ミ○キ~……」
 走っていくそれを追いかけて俺も笑い声のするほうへ……。
「…………」

 ――――ゴンッ。

「いだっ!」

 目が覚めたら、何でかコブが出来ていた。







END





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後書き

触れていたいと思うから。
それだけで充分なんだ。

異例の速さ。一日で両方上げた私って何?

2004(April)


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Feel on me



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 昼頃叔父が来た。
 いや、そもそもこの酒漬けオヤジを叔父だと思ったことはないな。
 俺があのクソ親父の息子だというのも怪しいが、(実際違ったし、まあ、それはそれ)
 この人が『あの』叔父さん(こっちは正真正銘叔父だと思う。)と双子というのもかなり怪しい。
 獅子舞とかナマハゲとか、おっさんで充分だろう。
 で、そのおっさんが来て、散々騒いでいった挙句についさっき部下に引き取られていった。
 はた迷惑な親戚だ。
 同情するぜ、特戦部隊。
 言ってやらねぇけど。
 山ほど一升瓶持ってきやがって、散らかし放題散らかしたのまでは……まあ許そう。
 しかし……。
「……うぅ……」
 おっさんの元部下……現在島の番人兼家政夫は、青い顔ですっかり使い物にならなくなっていた。
 かなりの量の酒を呑まされたらしい。
 俺一人で片付けろと……、あの酒まみれオヤジめ。新手の嫌がらせか?
 そろそろ半世紀は生きてんだから大人になれよ。
 うぇ、酒臭ェ。
 ここは子供も住んでるんだぞ? オイ。
「……夢の国……待って~うさぎさ~ん……」
 ……コイツはコイツで使えねぇばかりか、むしろ邪魔だ。
 つーか何の夢見てんだ、何の!
「オラ、邪魔だ。隅っこ行ってろ」
 部屋のど真ん中で寝ようとする背中を蹴りながら端に追いやって、瓶を片付ける。
 あーあ、換気しねぇと匂い消えねぇなこりゃ。
「ぐぁ……すみ、ませ……」
 夢の国から戻ってきたらしく、謝ろうとしたんだろうが、言葉は途切れ途切れだった。
 ったく、いちいち手間かけんなよ。
「黙ってろよ。あと吐くなら絶対外行け」
「すみませ……タイチョ……」
 そっちかよ!
「査定は! マイナス査定だけは……!!」
 だから何の夢なんだ。何の。
「……はぁ」
 ため息が大きい。
 酔っ払い一名と二人きりのこの部屋は相変わらず酒臭くて、俺まで酔っちまいそうだ。
 とりあえず、あらかた片付けた空き瓶を台所の横に押しやって、ドアと窓を全開にする。
 風が心地いい。
 まだ日が暮れるまでには時間があるな。
 水でぬらしたタオルを酔っ払いの額に置いて、横に座り込む。
 何で俺が介抱までしてんだ。
 でもまあ、することも無いしな。
 隣でボーっと、今日は晩飯どうしようとか考えてた。
「んっ……」
 かすかに声がした。
 瞼がニ、三度動いて酔いつぶれはようやく目を覚ましたらしい。
「……ぁ? ……」
 ゆっくりと体を起こしながら首を回らす。
 足元に湿ったタオルが落ちた。
「いつまで寝惚けてんだ。馬鹿」
「……」
 ぜってぇ起きてねぇ。まだ寝惚けてんなコイツは。
 ここは一発眼魔砲でも、と構えを取った瞬間―――。
「……」

 ――――ぴとっ。

「……」
 何だこれ。
「冷たい……」
 頬が熱い……。
 いや、頬じゃねぇか。
 頬に触れたこいつの手。
「冷たくて、気持ちいいっス……」
 そのままずるりと滑って、人の肩にもたれてまた寝やがった。
「オイっ」
 もう反応がない。
 寝るのが早ぇんだよ! ガキかお前。
「ん……待てよ~ミ○キ~……」
「……」
 とりあえず。

 ――――ゴンッ。

「いだっ!」
 一発殴っておいた。







END





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後書き

触れられるのははじめてではないのだけれど。

Feelニ作は対です。
なんで隊長様やら特戦部隊がいるのかは謎。

2004(April)


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水の満ちた箱



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 それは鉄で出来ていて、とてもとても硬くて重い……。



 家事があらかた終わって、部屋の方に振り返ったら、その人は座ったまま寝ていた。
 珍しく天気はあんま良くないし、外は少し暗いから眠くなったのかもしれない。
「あの……?」
 声をかけても起きそうになかった。
 それなら寝かせておいた方がいいよな。
 起こすと機嫌悪くなるかもしれないし。
 ……この間それでどつかれたし。
 俺って……。
 もぉ、泣けるよホント。
「…………」
 ……しっかし。

 ……綺麗な顔してるよな。

「……って違う!」
 そうじゃなくて!
 つーか、何だそれ!!
 馬鹿か俺は!!
  ……そうじゃなくて……。
「……俺は……」
 この間の夜の事。
 今でも引っかかってる。
 顔を苦しそうに歪めて、笑おうとして叶わなかったこの人は、とても遠い所にいる気がした。
 こんなに近いのに。
「俺なら聞けるのに……」
 絶対、他人に……俺に、弱いところなんて見せないんだろう。
「言ってくれないんですもん」
 だから分からないんだ。
 鉄で出来た、水の満ちた箱の中で溺れてる。
 溺れているのに声を出さない、手を伸ばさないから――。
 けど気付いちまった。
 だから俺は耳を澄まして、手を伸ばして……。
 なのに払われて――。
「俺じゃ、だめですか?」
 しゃがみ込んで顔を覗き込む。
 寝てるからこんな近くにいれるんだ。
 起きてる内は……あー……だめだ、やっぱ怖ぇって。
 何となく、髪に触れる。
 この人の髪、滑らかで心地良いから。
「……だめなんっスか?」
 肩から滑り落ちた黒髪に一瞬ドキッとした。
 ってなんで『ドキッ』なんだよ!
 ときめくなよ俺!!
 ったく、どうしちまったんだか……。
 『頼りない』って言われて沈んだり、『褒めてやる』って言われて舞い上がったり。
 全く、女々しい限りだろ?
 昔の自分に笑われちまうよ。
 ……それでも。
「……いつか」
 今は……耳を澄ませて、手を伸ばすだけだけど。
「いつか、俺が箱を壊せる日は来ますか?」
 溺れる前にあなたが声を出して、自ら手を伸ばしてくれるように。

 それは鉄で出来ていて、とてもとても硬くて重い……。


 けれど、壊せるだけの力があれば――。


 鉄が朽ちるのを待つのではなく……。







END





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後書き

手を払われたならいっそ箱ごと。
堅く閉ざされているそれが、壊れていくのを待つか、それとも壊すか。

つーか起きろよ総帥。

2004(April)


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