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「やっぱ、あの音がないと安心できないよなぁ?」

「ああ、ここがガンマ団だと認識できるよな」

総帥室に入ろうとドアに手をかけようとしたら、秘書達の話し声が聞こえてきた。

どうやら、今朝のシンちゃんとの痴話喧嘩のことを言っているようだ。

「今日は久々に聞いたから、なんか懐かしくってさぁ。ああ、やっぱりここはガンマ団なんだって、つくづく実感したぜ」

「静かなここは、気味が悪いからな」

なんか、うれしいような、悲しいような複雑だぁ。

まぁ、気を取り直して入るとしよう。

「おはよう」

「総帥!お早ようございますッ!!」

二人の声が綺麗に重なって、私に挨拶をする。

「今日は、何か重要な会議でも入っていたかい?」

私の記憶では、午後からサービスがくる予定だ。それ以外は、何も入っていないはずだ。

「実は、今朝方急に連絡が入りまして…」

歯切れの悪くティラミスが話だした。







「兄さん、いい匂いだね。私の分もついでよ」

予定どおりにサービスがやってきた。

さっきから、私の食べているシンちゃん特製カレーをくれくれとうるさい。

「…お前の分はないよ。これは私の分だけだ」

ケチと小さな声で言われてしまった。

「…ふん。言ってたとおり、シンタローは居ないんだね…」

「時が来れば、戻ってくる」

そう、予定どおりにいけばの話だ。

厄介者が出てきているが、そいつらのうるさい口を止めるため、私はちゃんと考えているよ。

私とシンちゃんのためなら、何でもするよ。

「…兄さん。やっぱそのカレー少し分けてよ」

「ダメだ」

しつこいぞ。

「ケチ」

そんなに、ケチケチ言わなくても。

「―わかった。分ける代わりに、頼みごとがある」

お兄ちゃんが、弟を物で釣るなんてちょっと悪いとは思っているけど、これもシンちゃんと私のため!

「そのために、私を呼んだくせに」

嫌々って、態度をとってからにぃッ!!

落ち着け!

ここで機嫌を損ねると、後々厄介だ。

「6年間ぐらい、コタローを育ててほしい…。実はね今日、イギリスから一族の長老達が来たよ」

気を取り直して話す私の言葉に、サービスの表情が強ばった。

長老。

血の繋がりは僅かにあるが、秘石眼も眼魔砲も打てない一族達が、昔から私たち兄弟家族のことに対して口うるさく命令をしてきた。

そんな言葉に、一々従うはずもないが弟たちにとってはあまりよくない思い出がある。

サービスが秘石眼を失ったときは、生きる資格がないとまで言ってきた。

「…なんで」

「シンタローが生まれたときから、うるさくてね。まぁ、力で黙らせはしたが、コタローが生まれて以来またうるさく騒ぎ初めたんだよ。黙らせるためにシンタローを高松の養子にしたんだが…。今日、コタローを正式な後継者と認めると言い出してきたんだよね」

シンタローが生まれたときなんか、暗殺者なんてものを送ってきたり、あの子自信に出来損ないなんて言うもんだから、本当にあの死に損ないは私の気分を逆撫でするよ。

「兄さん。私は、シンタローのほうが…」

「それには私も、同意見だ。どうも、私はあの子を…コタローを見ると殺してしまいそうになるからね」

「兄さん…」

どこか安心したような、そんな表情を作るサービス。

「どんなに周りが、シンタローの持つことができなかったモノを持つコタローが、正当な後継者と言われようが私は、シンタローを…」

そう、誰にも邪魔はさせない。

「後継者にするよ」

私の言葉に、サービスも深く頷いた。

「義父さん」

「なんですか?」

朝、俺は義父さんにお弁当箱を入れた、巾着袋を手渡した。

「研究が忙しくて、お昼ご飯抜いたりしてるだろ?」

「お弁当ですか…。ありがとう」

俺、義父さんのこの笑顔好きだな。

それを見たいからって、弁当作るのってバレバレか。

「グンマ博士の分も入れてるから。ちゃんと食べなてくれよ」

「ええ。あの方も、喜びますよ」

何気ない朝の会話。

これが、俺の求めていた家庭だ。

マジックなんかに弁当作った日には、2日間ベッドから立ち上がることさえできないだろうな…。

ああ、恐ろしいことを考えるな!

ん?

待てよ。

マジックはカレーを盗んだ。

しかも、俺を散々いいようにして…。

「義父さん!」

「なんですか?」

ありえる。

「お弁当、総帥には絶対渡さないで…」

「シンちゃんッ!!ひどいよッ!!」

どかんと扉が開く音とともに、マジックが涙を流しながら入ってきやがった。

「シンちゃんッ!!ひどすぎるよッ!!パパ、シンちゃんの愛妻弁当食べたいんだよッ!!」

朝からなんで、こんな馬鹿を見ないといけないんだ…。

しかも、前々から盗んでいたようで、本当あんたはウザイよな。

「―眼魔砲ッ!!」

「シンちゃんの馬鹿ぁぁッ!!」

そんな言葉を残して、奴はとんでいった。

「義父さん、今日もいい天気ですね?」

「そうですね」

何事もなかったかのように、俺たちはいつもどおりの朝を迎えていた。









「おッ!!兄貴、美味そうなもの喰ってんな?」

「あげないよ」

「何だよ、2個も持ってんじゃんか。一個くらいくれよ」

「あげない」

「んだよ、ケチ」

「…これは、愛妻弁当だから、お前にあげるわけにはいかないよ」

「愛妻?後妻なんて居たか?」

「…秘密」


その日の午後、俺は総帥室に出頭した。

以前から出していた、配属希望の件で話があるということで呼び出しがあったからだ。

「よく来たね。そこに、座りなさい」

部屋に入ってきた俺にマジックは一瞥し、ソファーに座るように指示をする。

そして、秘書達に退室するように命令をした。

いやな予感がする。

「…さてと」

秘書達が退出したのを確認し、手元にあるスイッチでドアにロックを掛けると、椅子から立ち上がりソファーに座っていた俺のほうに近づいてきた。

「シンちゃん、お弁当すっごく美味しかったよッ!!2個食べちゃったから、パパお腹いっぱいだよッ!!」

ああ、やっぱり食ったのね。

「ふーん、お腹いっぱいねえ…」

「そうだよッ!!」

頬を赤らめて、花が飛び散る笑顔を向けるな。

「じゃ、デザートは入らねえな」

え?デザート?と、首を傾げながら俺の手元を見る。

持ってるのと、俺に目で訴えてくる。

「あるぜ…ここに」

指を指せば、マジックはなるほどと呟いた。

「そうだね。こんなに美味しいデザートを、食べないわけはいかないからね」

そして、デザートに手を掛けた。

「お腹がいっぱいで、入らないんだろ?」

「別腹だよ」

女だけだろと笑うと

「それに、食後のいい運動だ」

と、マジックは言った。

「ん…」

深く口付けを交わしながら、マジックの背に腕を回す。

「…26時間振りの、口付けだね」

小さく囁かれると、そんなに離れていたんだと寂しさが込み上げて、より一層マジックに縋りつく形になる。

「シンちゃん?」

「やっぱ・・・・いや、なんでもねぇ」

あんたにこの気持ちを伝えたとしても、あんたは俺を捨てたんだよな・・・。

惨めな気持ちにはなりたくないから、敢えて俺は言わないけどあんたは気が付いてるんだよな?

「私たちの間に隠し事なんて、必要ないでしょ?」

「・・・・」

言おうか言うまいか。

それよりここはごまかしたほうが良いのか?

「・・・・特戦部隊の件だけどさ」

以前から言っていた配属希望先の話を持ち出して、誤魔化すことにした。

「ああ、あれ?」

まんまと引っかかった馬鹿なおっさん。

「うーん。ハーレムは大喜びなんだけどね。長期遠征とかになるとパパ体がさびしいしなあ」

そんなことで、一団員である俺の配属先を秘書課にしようとしているのかよ。

「秘書のほうが良いよ~。私といつも一緒だし」

能天気な声を無視し。

「俺は、アンタを守れるくらい強くなりたいんだよ」

「シンちゃん・・・・そんなにパパのことを・・・。うん、いいよ。ハーレムにはシンちゃんが傷ひとつでも負う事があろうものなら、ハーレムの体を生きたまま八つ裂きにしてあげるって、釘をさしておいたから」

・・・・・あのおっさん、それでよく大喜びで承諾したな。

酒でも使ったか?

「それより、シンちゃん。デザートをおくれ」

手の動きが本格的になったのを察した俺の体は、自然と息を上げ始めた。



「シンちゃんッ!!」

呼ばれて振り向くと、そこには元従兄のグンマが手を振りながら、俺の方に向かって走ってきていた。

久しぶりに会ったミヤギと別れてすぐ、タイミングを図ったかのように出てきたから、少驚いてしまった。

「グンマ博士、どうしたんだ?」

「はぁはぁ…、グンマ…でいいよ。…シン…ちゃん」

息を切らしながら、手に持っていた何かを俺に渡してきた。
手渡されたのは、白い封筒だった。

「何だ、これ?」

「叔父様から、…頼まれて…ふぇ、…持ってきたの」

こいつが叔父様と呼ぶのは、3人いる。

一人は、美貌を兼ね備えたサービス、現在俺の所属している部隊の隊長ハーレム、そしてこのガンマ団総帥マジック。

ハーレム隊長は、昨晩からヤンキーに新人教育だと称して、拷問をしていた。

先程まで一緒に新人教育をしていたが、ヤンキーがあっけなく昇天してしまったので、意識が戻るまで自由行動。

意識が戻り次第、呼び出しが掛かる予定だが、それもまだ先のことだし、用があるなら館内放送で呼び出しするだろう。

それにハーレム隊長が一々、このグンマ博士に手紙を渡すわけがない。

あの人は、こういうびくびくした人間があまり好きではないからな。

残るはサービスか、マジック総帥か…。

「サンキュウなッ!!」

宛名のない封筒を見ながら、立ち去ろうとすると袖を捕まれた。

何か用かと振り向くと、どこか嬉しそうに笑う顔があった。

「シンちゃん、待ってッ!!あのね、叔父さまから聞いたんだけど、シンちゃんまた一族に戻れるって……っッ!?」

全部聞き終わる前に、捕まれた手を振りほどいた。

「っざけるなッ!!!俺の幸せを奪う一族なんかに、頭を下げたって戻るものかッ!!!」

困った顔、するなよ。

俺は今が、一番幸せなんだ。

家に帰れば義父さんがいて、悩みを相談しあえる友達がいて、どんなに苦しい任務だろうが支えてくれる仲間がいる。

誰にも、奪われたくないんだ。

もう、愛している人に裏切られたくない。

今は、体だけの関係で満足しているんだ。

「シンちゃん…」

「ワリぃ…」

俺はグンマ博士の顔をみることなく、その場を立ち去った。





久しぶりの我が家に戻ると、義父さんはまだ帰っていなかった。
俺が任務から帰る日には、必ず家に居てくれるのに今日はいなかった。

「研究、忙しいのかな?」

仕方ないと一人ごちりながら、自室で先程の手紙を読むことにした。

「?」

久しぶりの自室。何か、ものすごく違和感のある感じがする。

家具やカーテン、お気に入りの寝具など、出掛けたときと変わっていないのに、部屋に足を進み入れて行くたびに、その違和感は薄まるどころか濃いくなっていくばかりだ。

「何が、何が違う?」

部屋に置いてある机に手をついた瞬間、その違和感の正体がわかった。

「この部屋の家具、寝具も、全部、入れ替わってるッ!!?」

もしやと思い、恐る恐るクローゼットの中を見て絶句した。

「………服も、下着も…入れ替わってるッ!!!」

確かに、部屋にあるものや衣服類は同じもの、同じ位置だが、それらすべて新しいものに変わっているのだ。

「誰が…?」

一瞬、ガンマ団総帥の顔が浮かんでしまった。

ありえない、ありえない、と自分に言い聞かせ、少し一息つこうとベッドの上に横になる。

天井を見つめ…?

あそこに、穴なんか空いてたっけ?

「……白蟻か?」

一瞬、嫌な答えが浮かんだが、そんなことありえないと言い聞かせ、気分転換に久しぶりのます掻きしようかと、ベッド下に隠しているおかずを取ろうと手を伸ばしてみる。が、何も手に当たる感触がねぇ。

おかしい。

義父さんは、プライベートを守ると言っているから、俺の留守中にベッド下を掃除するわけがない。

「いったい…どうなってるんだ?」









「兄さん、この部屋どうしたの?」
「……」
「何だよ、このモニター?」
「あ、コラッ!!ハーレム、見るなッ!!!触るなッ!!!」
「この部屋と瓜二つな部屋映して…。兄さん、正直に言ってよ」
「そんなことよりッ!」
「兄さん?」
「あん?」
「今日の午後、あれをやる。ハーレム、サービス、あの子達に伝えておきなさい」
「兄貴、本気なのかッ?今、あいつが抜けたら、特選部隊の戦力、半減するぜッ!?」
「もう、6年前から決めていたことだ。それをいまさら、変えるつもりはない」
「兄さん…」
「シンタロー、コタローに殺しあいをさせる。勝ったほうが、次期総帥だ」


『至急、総帥室まで出頭せよ』

手紙に書いてあったのは、たったそれだけだった。

「誰が出したか、わかんねぇな…。けど、この字は義父さんの字なんだよなぁ」

俺はここ2~3年の間、任務のため遠征に出掛けることが増え、義父さんとのコミュニケーションの時間が減ってしまった。

それを補うため、遠征先から必ず、手紙を出すことを心がけている。

義父さんからも、返事や体を心配してくれる手紙か届いたりしていた。

この手紙の字は、その義父さんの手紙の字そのもの。

誰かに頼まれて、代筆でもしたのだろうか?

後で聞けば分かることだし、考えるよりも先に、
総帥室へ出頭することにした。




これは、何かの嫌がらせか?

総帥室に入ると、総帥秘書のティラミスに隣の部屋で待つようにと案内された。

そこで俺が、今眼にしている光景は…。

「俺の部屋?」

その部屋には、俺の部屋とまったく同じ間取りと、家具。

よくよく見れば、そこにあるもの全てが、自分の部屋からなくなったものばかり。

やはり、犯人はあいつだったんだ。

しかし、何故?

カチャリ

疑問が頭の中をよぎるのと同時に、背後で鍵が閉まる音が聞こえた。

「!?」

嫌な予感がした。

おそる、おそる振り向くと、そこには予想どおりの奴がいた。

「長期任務、ご苦労さま」

「ぇッ??あ…ありがとうございます」

ちょっと拍子抜けしてしまった。

労いの言葉を、あんな風に優しい笑顔で言われると、くすぐったい。

「あの、総帥。俺に何か御用でしょうか?」

だけど、俺とこの人とはとっくの昔に他人になっているんだ。

さっさと用事を済まして、帰ろう。

久しぶりに義父さんに、夕飯作りたいしな。

「ああ、用ね。まあ、日頃頑張っているから、ご褒美をあげようと思ってね」

笑ってる。この笑顔、何かものすごく嫌な予感がする。

「お気持ちだけで、十分です。では、俺はこれで」

「ご褒美はね~」

人の話を聞けよッ!!

「いえ、結構です」

ご褒美と称して、嫌な思いをしたと話によく聞いている。

「それでは、しつれい…」

一礼をして、部屋を出ようと足を動かそうとしたとき。

「一族に戻りなさい。これは命令だよ」

聞きたくないその言葉に、体が固まる。

何だよ、この人は。冗談だろ?

「絶対命令だ」

心でも読んでるのか?
今更なんだよ。

6年前、あんたが言ったんだろうが。

義父さんの養子になれって。

「嫌だと言うのなら、一族に戻りたくないというのなら、譲歩してもいい。ただし、この者を殺してからだ」

一枚の写真を手渡された。

「その子は、ハーレムが遊びで失敗し作ってしまった子だ」

金髪、青目の子供。

「母親が、訴えを起こそうとしている。殺し屋集団である、ガンマ団がそんな事で有名になると、色々と面倒だ…。今この子は、ガンマ団上層階にいる」

上層部?

一族専用のフロアか。

「…」

頭の中で、ガンマ団の見取り図を模索する。

「殺せ」

その言葉を聞くのと同時に、頭のなかに幾つかのシミュレーションが出来上がった。

もっとも最悪なパターンは、この子が秘石眼を操れ、戦闘経験があったとき。

その時は、死を覚悟しよう。

しかし、それはもっとも最悪なパターン。

場数なら、確実に俺のほうが上だろう。

「了解ッ!!」

敬礼をし、マジックの横を通り、部屋から出ようとドアノブに手を掛けて、ノブを回す。

「?」

回らない。

「総帥、ここのドアは引き戸ですか?」

「違うよ」

そうか、違うのか…。それじゃ、反対に回してみるか。

「……」

開かない。

そういえば、鍵の閉まる音とともに、こいつが入ってきたよな…。

「総帥、あの、鍵が」

「おや、閉じ込められちゃったね。それじゃ、シンちゃんとパパ密室事件でもしようか?密室腹情死殺人事件・・・・犯人はシンちゃんだ!ってね?」

「そういう場合は、アンタが犯人になる確率がたけぇだろ!」

嘘だッ!!

「もう一つの、出口があっちにあるから、そちらから出なさい」

言われた方を見ると、確かにドアがあった。

「ぁ…ありがとうございます」

きびすを返し、そちらへ歩いていく。

気のせいか奴も、後ろから付いてくる。

後ろを見ないようにして、ドアノブを握り、ドアを開ける。

「俺?」

目に飛び込んできたのは、俺の人形、肖像画等など…。

そういえば、この部屋、こいつの寝室だ。

小さい頃は、よく行ったりしていたから何となく覚えている。

しかし、あの頃と大きく違うのは人形の山、山、山…。

ガンマ団総帥は、メルヘンチックな男なのかよッ!!

「シンちゃんッ!!」

後ろから、嫌な声が聞こえる…。

俺が開けた扉は、出口ではなく、地獄への入り口だ。

ここは、あの目の前にある扉を開ければ逃げられる、かも。

ダメもとだッ!!

俺は走りだし、その悪夢のような部屋を横切り、その奥にあるドアを開けた。

「!」

開けたその部屋に、あの写真の子供が立っていた。

今からこのドアを、ノックするつもりだったんだろう。

右手が上がっている状態のまま、俺を見つめている。

ターゲットだッ!!

『殺せ』

頭の中で命令が響く。





「あ、おに…」

子供が笑いながら、俺に手を伸ばしてくる。

忘れていた。

眼魔砲の可能性を、シミュレーションしていなかった。

腰に収めていたナイフを引き抜き、その子の両目を切り裂いた。

「え?」

これで最悪なパターン、秘石眼使用の可能性は消えた。

次に右腕を切り落とす。

後は、喉にナイフで線を書くのみ。

「いたぁ…ぁい」

声にならねぇ痛みだろうな。

今、楽にしてやるよ。

「お兄‥ちゃ…ん…」


我ながら、素早い動きだったと一連の動作を振り替える。

「素晴らしいよ、シンタロー」

命令を出していたマジックは、後ろで拍手している。

「総帥、任務終了しました」

振り返り、報告をすると、奴は嬉しそうに笑っていた。

「それでは、俺は失礼しま…」

「ああ、シンタロー。どこにいくんだい?」

腕を捕まれる。

どこに行くって、任務終わったんだ。

自室に帰ってもいいだろ?

「任務が終了したので、俺は…」

「どこに帰るというんだい?」

「え?」

「お前の家はここだよ」

「俺は、貴方の一族では…」

「何を言っているんだい?私の息子は、もうお前一人なんだよ」

「コタロー様は…?」

確か、今6歳になっているはず…。

「ああ、コタローか。今お前の足元で、いき絶えた物のことかい?」

足元?

いき絶えた?

コタロー?

この血まみれの子供が、コタロー?

俺が、任務で殺したこの子供が?

無意識に腕を伸ばして、コタローに触れようとしたが、捕まれた腕をひっぱられ、触れることさえできなかった。

「コタ…」

目の前で扉が閉まる。

嫌だ!

俺、まだコタローをこの腕で抱き締めていないんだッ!!
コタローッ!!


「放せよッ!!」

「ダメだよ」

暴れるシンタローを、寝室に連れ込む。

「だって、だって、コタローがッ!!」

自分がやってしまったことに、少々錯乱状態になってはいるが、その方がすすめやすい。

「シンタロー、分かっているんだろ?」

ベッドに座らせると、少しばかり私の声を聞くようになってきた。

「あ…」

黒炭のような両目から、美しい雫を流しだす。

「確実に息の根を止めたと…」

ああ、そんなに泣かないでいいのに。

「あ、あ…」

お前には、私がいるんだよ。

「大丈夫。誰も、お前を責めないよ」

誰にも、責めさせはしないよ。

「…父さん」

そう、それでいい。

「私がいるから」

お前には私がいる。

「父さん…父さん…」

お前は私だけを、見ればいいんだ。

「そばにいるよ」





ハーレムにお前が、無意識のうちにターゲットを殺せれるようにと命令したのは私だと、お前はいつ気が付くだろうね。



それでいいと、お前も気がつくのはもう少し先の話かも知れない。


この腕で、コタローを抱き締めることができなかった俺は、一族に戻ることになった。

今までのような生活は、できなくなったが、今はそんなのはどうでもいい事だ。

どこで、間違ったんだと思い返せば、コタローが生まれたせい。
だから、コタローがいなくなった今、俺たち親子は元の形に戻った。



そう、それでいいんだ

それが、幸せ

それが、俺たち親子の幸福






「シンちゃん、今日の夕飯は何がいい?」

「ん?カレー」

「OKッ!!」




幸せと思えばいい。

俺はこの人に愛されているのだと。

それを、求めていたのではないか。

俺が求めていたものがやっと手に入ったんだ。



これが、幸福




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