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どんなに考え、悩んでも仕方が無い。

この生活を招いたのは俺自身であり、選んだのも俺自身だ。

暗い考えを吹っ切るように顔を上げるのと同時に、誰かの足音が聞こえた。

あわてて振り向けば、あの人が行った方角とは反対の方向から2人の幹部服に身を包んだ若い男がやってきた。

その顔には見覚えがあった。

懐かしい、顔だ。

「あ、噂のっ!!」

ミヤギとコージが、俺を指差しながら進めてた歩みを止めた。

俺とまで距離は、ほんの2mぐらいだ。

声まで懐かしさを感じるなんて、たった1年という時間は人をそんなに弱くさせてしまうのだろうか。

「なんとなく、シンタローに似とるのう」

コージが腕を組みながら、俺の顔を眉を寄せながら見てくるが2mの距離はそのままだ。

ああ、そうか。

こいつらにとっては、俺は初対面になってしまうんだ。

多分、知らない相手と言うことで、警戒しているんだろう。

「始めまして、シロガネとも――――」

自己紹介のため、改めて二人に向きなおり綺麗な姿勢をつくりお辞儀をしながら、挨拶の言葉を出すと同時に、俺の左側の窓に大きなひびが入った。

「っ!」

何が起きたか状況判断をする間もなく、無意識ながらも体が脳が発した警報に瞬時に動き外から死角になる壁に身を投じた。

そして、状況を確認しようとした時、大きな騒音が響き渡った。

「なんじゃ!?」

コージたちも同じように壁に背をつけ、制服の中から短銃を取り出しながら、次々とやってくる騒音に片耳を塞ぎながら窓に打ち込まれる弾丸に、眉間の皺を深くしていた。

この基地は何かがあってもいいように、全ての窓は防弾ガラスになっているはずだ。

それをも傷をつけてしまう銃弾に、背筋に嫌なものが伝う。

「やっこさんも、考えとるのう。防弾ガラスに対向して、マシンガンを用意してくるとは」

「コージ、どうするっぺ?」

コージとミヤギが打開策を話し始めたが、それでは遅い。

マシンガンを持ち込んでいるということは、ここの窓が防弾ガラスだとしっていることだ。

防弾ガラスだといっても、次々と打ち込まれ弾丸に対して何時まで持つか分からない。

そのうち、窓ガラスが全て砕け散った時、攻撃をしてくる敵はミサイルか、もしくは手榴弾の用意をしている可能性は十分ある。

「銃を貸せっ!」

コージを睨みつけながら、その手に持っている小銃を投げよこすように叫ぶように言うと、ミヤギは鳩が豆鉄砲食らったような表情で俺を見た。

だが、コージは何かを感じ取ったのかニヤリと笑うと、その手にあった銃を床の上に置くと、俺のほうに滑らすようにしてよこしてくれた。

「な、なんで渡したんだべ?」

「何するか、楽しみじゃからのう!」

二人が何かを言い合うのをよそに、俺は久しぶりに手にした銃を握り締め、左手で安全装置を外した。

それと同時に、窓が全て砕け落ちる音が廊下中に響き渡った。

そして、俺はそれを合図に壁から窓のあったそこに立ち、構えた。

少し離れた建物の上に、人影がある。

今まさに、次の武器を用意しているその動きに俺は迷わず引き金を引いた。

軽い音が一回。

武器を用意していた男の右腕に、俺の放った鉛球が直撃した感触が感じられる。

人影は右腕を押さえ、蹲った。

あれで用意しようとしていたであろう、ミサイルもしくは手榴弾での追撃は不可能だろう。

「内部事情しっとる人間だべ」

静かになった廊下に、ミヤギの声がやけに響く。

「ああ、しかもこいつを狙とったのう」

コージの声に、ミヤギが小さく頷いた。

確かにあの攻撃は、どう考えても俺を狙っていた。

俺を殺そうとする考えを持つものは、誰だ?




今俺にある情報だけでは、犯人の特定なんてできない。

これ以上考えても堂々巡りなだけだ。

解決しないことを悩んでも仕方が無かったので、一度頭の中からその問題をシャットアウトさせる。

そして、その時始めて気づいたが俺は未だに、コージの銃を右手に握ったままだった。

「あ、すいません。先ほどは、銃をお貸し頂きどうもありがとうございました」

それをコージに返しながらお礼を言うと、コージは眉間の皺をそのままにして俺の顔をじっと睨みつけてきた。

「あの、何か?」

「なんじゃ、なんじゃ! 辛苦くさい顔じゃのう!」

その言われた言葉に、唖然としながらも銃は出された手のひらの上に乗せた。

「なんとなく、シンタローに似とると思うとったが、全然違う人間じゃのうっ!!」

どこか怒ったような雰囲気で俺の顔を睨んだまま、「そうじゃろ?」と後ろのミヤギにそれを投げかけた。

急に話を振られたミヤギは、目を大きく開けたまま質問の内容を理解していなかった。

「あ、え・・・・・・・・・どういみかわからんっぺ?」

「なんじゃ、いいのは顔だけか?」

天然のボケに突っ込みを入れるコージ。

ああ、懐かしい。

言葉の流れ。

その、リズム。

懐かしい。

仲間で、親友だった男達。

「邪魔が入ってしまいましたが、改めて自己紹介をさせていただきます」

こいつらにとって、俺はただの新人団員。

シロガネとして、昔のような関係に戻れるとは想像できないが、それでもまずは自己紹介しかないだろう。

ただでさえ、襲撃があった後。

何者か分からない男がこんなところにいたら、こいつらは永遠に心を閉ざしたままだ。

「始めまして、シロガネと申します。以後、よろしくお願い申し上げます」

体をそちらに向け、深々と頭を下げ挨拶をする。

胸の奥が、少し痛んだ。

今までこいつらに頭を下げたことなんて、無かった。

友人から、他人になってしまったこの現状はおれ自身が作り上げてしまったもの。

だから、どんなに苦しくてもあの人の傍にいるため我慢をしなければ。

顔を上げれば、急に自己紹介をし始めたことで、二人は狐につままれたようなそんな表情でそこに立っていた。

そして、1分ぐらいたってやっと二人は動き始めた。

「うわ!似た顔で、おっそろしいことぬかしとるべ!!」

「うぬぬぬ・・・、しかし、まったく生気のない顔しとるのう」

何か恐ろしいものでも見るかのように、鳥肌を立てながら二人は俺を指差しながら震えていた。

ちょっと、コージの言葉が気になるがそこは無視しよう。

「顔はにとるが中身が全然違っちょる」

その言葉に、ミヤギも大きく頷いていた。

「そうだべ。シンタローは頭をさげるぐらいなら、相手に土下座を無理やりさせるのが好きな男だべ」

ミヤギの言葉に、今度はコージが大きく頷く。

そこまで言われるほど、昔の俺は酷かったっけ?

こいつらが、勝手に話に色を添えて大きくしているような気もする。

「ああ、シンタローはドSじゃけんのう!」

なんだか、そのやり取りをする二人の光景が、面白くてつい顔の筋肉が緩んでしまった。

「お!なんじゃ、笑えるのか!」

「うん、笑ったほうがええべ。なんか、辛気臭い顔しとったから人形かとおもっとったべ」

先ほどまでは少しピリピリとした空気だったというのに、和やかな空気が緩やかに流れ始めていた。

「はい、ありがと・・・」

二人の言葉に、お礼を言おうとしたその時、後方からなにやら大きな音がものすごいスピードで近づいてきた。

それは大勢の足音のようで、音の数から考えてざっと10人ほど。

もしや拘束されるのではと、危機感を感じながら向かってくる人たちを確認するべく、振り返ってみるとものすごい形相のあの人が10人ほどの部下を引き連れ、こちらに向かってきているところだった。

「マジック様、お帰りなさいませ。お早いお戻りで」

小さくお辞儀をしようとすると、あっという間に目の前に到着したあの人が右手を少し上げ、その行動を制止してきた。

「この惨状を説明したまえっ!!」



足元に散らばるガラスの破片と大量の鉛玉、ガラスの無くなった窓サッシ、そしてコージとミヤギに、俺。

「向かいビルの屋上より、銃弾を打ち込まれました」

あの人は俺から視線を外すと、その向かいのビルの屋上に視線をやった。

「3人ほど、あそこに行け。多分逃げているだろうが、薬莢などは残っているはずだ。徹底的に調べろ」

低く冷たいあの声で、後ろに控えていた部下に指示を出す。

少し体が震える。

「それで、君たちはただ打ち込まれるだけだったのか?」

俺の後ろにいるミヤギ達に、ゆっくりと怪しく光る青い瞳を向ける。

「あ、えっと、その・・・・」

嘘が下手なミヤギが、しどろもどろで状況を説明しようとするが、まさかコージの銃を俺が借りて撃ったなんて、腐っても幹部の立場である以上口が裂けても言えないだろう。

「嘘を言っても、すぐにばれる。シロガネ君、説明をなさい」

その命令に、小さく頷き「私が銃を借り、1発撃ちました」と応えた。

後ろで、「なんで・・・」と小さく叫ぶ声が聞こえたが、今の俺に嘘なんてつくことができない。

俺はすでに、監視体制の中に入っているのだから。

「シロガネ君!君の立場と言うものが、分かっていないのか!」

ものすごい剣幕で言われた言葉に、どんな意味が含まれているのか悟った俺は、己の浅はかな行動を呪った。

信頼を作り上げたいというのに、これでは主のいないところで重要幹部の者と話しているなんて、スパイがするような行動だ。

「申し訳ございませんでした」

深々と頭を下げると、あの人は俺から視線を逸らし近くにいたコージ達に去るように命令をした。

それに対し、何か物言いたげな二人は少しの間何も行動を起こさなかったが、あの人から再度下された命令に敬礼をし、その場を足早に去っていった。


「全く、危機感と言うものが無いのか。幹部と言うのに」

「マジック様、申し訳ございません。私が・・・・」

再度、頭を下げようとしたがそれはあの人の手が俺の肩に置かれたため、できなかった。

「君は、ジャンになんてまったく似ていない。だから、あの二人の言ったことは気にしなくていいよ」

そして、肩に置かれていた手で俺の頭を撫で始めた。

「怪我は、していないようだね」

よかったと、優しい囁きのその声。

「君は、どんなことがあっても私の前だけでは笑っていなさい。あの瓦礫で私達が会話をしたときのように、君は私の・前・だ・け・笑っていなさい。そして、私のそばにずっといるんだよ」

恐る恐る顔を上げると、あの人は笑っていた。

とても暖かい笑みで。

「ただし、他の者の前では一切笑ってはいけないし、私以外の人と会話なんてもってのほかだよ!」

今はシンタローでもなく秘書職の自分が、どんな席で笑おうが会話しても関係ないはず。

交渉に支障をきたす場面など無いはずなのに、何故不用意に笑ってはいけないのか。

それに、どうしてもコミュニケーションなどとるためには会話が必要だ。

「会話だけは許していただけませんか?」

「やだ」

子供みたいに口先を尖らせながら、俺のほうではない明後日の方向に視線をやるあの人。

「君も、わかるだろう?」

その言葉が一体何を意味しているのか、さっぱり分からなかった。



その後、襲撃の犯人は血痕だけを残して消えていたと、あの人へ報告が入った。

横でそれを聞きながら、僅かな血液だけでも現場に残してしまえば、犯人が誰か特定されてしまうことを知っての犯行なのではないだろうか。

ガンマ団内部で襲撃をすると言うことは、並大抵ではない。

死ぬ覚悟が必要だ。

今頃どこかで自害しているのではないかと、そんな考えが頭の中を過ぎる。

「ああ、分かった。高松に血液の鑑定を至急行うように・・・・」

あの人の後ろにいた部下達は、廊下の掃除をしながら鑑識も同時に行っている。

何もすることがなく、ただ立ったままの俺の肩にあの人の手が置かれた。

「さあ、行こうか? ちょっと羽目をはずした愚か者のせいで、大幅に予定が狂ってしまった。まあ、少ししか案内できないがね」

今から内緒の悪戯でもする子供のように笑いながら、ウィンクを投げてくるあの人。

その提案に拒否できるわけもなく、「お願いします」と頭を下げようとしたがまだ肩に置かれていた手が、それを止める。

「お辞儀は、・・・・今しないで欲しいな。できれば、ベッドの上で生まれたての姿で『お願いします』って頭を下げてくれると、すっごくいいんだよね。だから、私に対してのお辞儀はベッドの上だけでしなさい」

いい大人が小首を傾げながら、お願いして欲しくなかった。

「生まれたての姿といわれますが、どのような常識を覆しても生後間もないころに戻ることはできません。付け加えて、ベッドの上で特にお願いする用件もありませんので、それはできかねます」

ぴしゃりと言い切ると、あの人は胸ポケットから白いレースのハンカチを取り出した。

想像はできるが、何をするのか待っていると、さも演技だといわんばかりにそれを目元にあて、おんおんと泣き始めた。

周りにいる部下たちも、仕事の手を止め俺を同情の目で見つめてくる。

その視線が、すっごくイヤだった。

さっさと、この状況を打開しなくては。

「早く案内していただけませんか?それとも、その嘘泣きでお忙しいのでしたらドクターに頼んで、別の日に、ドクターと二人っきりで案内してもらいますが?」

ピクリと肩を揺らしたかと思うと、がばっと、大きな音をたて俺の両肩にその手を置き、あの人は首を大げさにぶんぶんと横に振った。

もろ、演技なんですが?

「ダメダメダメっ!! そんなことしたら、どっかの悪いおじさんが善人そうな笑顔で近づいて色々物をくれて、心許したときにどっかに連れ去られ、24時間監視ビデオの回っている部屋に監禁させられちゃうんだよっ!!そして、セクハラまがいなことを言われ続けて・・・・無理やりキスされて、ベッドに押し倒して・・・・犯されるんだよ!!」

「・・・・・・・」

何も言葉が出なかった。

それ半分は、あんたが今やってんじゃんかっ!?って、叫びたかった。

「さ、分かっただろ。世の中ってとっても恐ろしいんだよ。だから、私と一緒に回ろうね?」

有無言わさず、俺の右手を掴むとスタスタと歩き始めた。

引きずられるようにして、俺はその場所から離れることになった。

哀れみの目で、俺を見送る奴らが嫌だった。



必要最低限の案内が終わると、自室まであの人が送ってくれた。

というより、一緒に入ってきた。

「じゃあ、私はこれから夕食を作るから、君は少し寝てなさい」

今日は疲れただろうと、暖かい笑みが向けられる。

「いえ、マジック様も同じようにお疲れでしょう。私だけ休むなんて・・・・」

「じゃ、二人で少し寝ちゃおうか?」

ウキウキとバックにそんな言葉が見えるほどの笑顔で、俺の腰に腕を回してくる。

「結構です!」

「まあまあ、そう硬くならずに」

力強く引き寄せられた腰に上半身もついてきてしまうものだから、否応無しにあの人に密着してしまう。

「私のここは、もう硬いけどね☆」

下を指差され、ついなんとなく下を向いた俺がバカだった。

お山が一つ・・・・。
                                                                         
「ふふ・・・、見てしまったね?見られたからには、逃がさないよ!」

ドナドナド~ナドオ~ナ~♪

そんな嫌な曲が頭の中を流れていく。

「ちょ・・・・待ってください!」

「イヤだ」

ぴしゃりと言い切られ、俺は何とかこの状況を打破しようと考える。

だが、そんなことをしている間にも段々と寝室のドアが近づいてくる。

「あ、あの、その・・・・貴方には、ジャン様がいらっしゃるじゃないですか!?」

寝室のドアに段々と近づいていたその足が、ぴたりと止まった。

「私に誰がいるって?」

湿度が急に下がり始め、背筋をぞっとさせるほど低くそして冷たい声が耳に届いた。

「ジャン様が・・・・っ!!」

ぐいっと自分の視線が上に向いたことに、驚きながら目を見開いていると、あの人が冷たい瞳で俺を見ていた。

顎にかかる圧迫感に、空いているほうの手で俺の顎を掴んでいることが分かったが、何故そんなに冷たい顔をしているのか分からなかった。

「マジ・・・・」

「誰が、誰を側に置くと君は聞いたんだ? 私は、君を側に置くと言った。ジャンではない、君をだ」

段々とその表情が怒りで歪んでいく。

どうすれば、怒りを静めることができるんだろう?

全くいい打開策なんて浮かぶことなく、俺はただ固まったままだった。

「言葉では覚えられないのかい?なら、体なら・・・・・・」

唇に触れた冷たい感触。

思考は停止したままで、それが何か考えることができない。

「ん・・・・っふんっ!!」

そして、俺の口の中に入ってきた熱いものに、止まっていた俺の思考は一気に動き出した。

懐かしいその感触、そして食いつくほどの激しい口付け。

一体誰が、誰にしているなんて考えないでも分かる。

眉間に皺を寄せ、俺の目をじっと睨みつけたままあの人は俺に口付けをしていた。

何故か俺も、瞼を閉じることができずあの人の目を見つめていた。


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