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※シンちゃん、かわいそうです。




『シンタロー君。君、本当にマジック様の子供かい?』

入学式の次の日、これから始まる学校生活に大きな期待と、希望と、不安をランドセルに入れ込め真新しいそれを背負い、ウキウキ気分で行った小学校。

すごくドキドキしながら楽しみにしていた最初の授業。

それは、自己紹介。

最初の子が顔を真っ赤にさせながら、その自己紹介は始まった。

自分も上手に自己紹介ができるのか不安になりながらも、順番をまつ。

シンタローの順番が回ってきたのは、それから程なくしての事だった。

心臓がはじけそうなほどドキドキしながら、クラスのみんなの前で自分の名前と父親が誰かを言った時、担任の先生からそんなことを言われた。

僕は、その先生の表情が
イヤだった。

泣きたくなった。

けど、我慢したんだ。

だって、パパの子供だから。

ガンマ団総帥マジックの息子だから。

『似てないね』

言われたくない一言。

それで、僕は学校が嫌いになった。

先生ともう顔を、合わしたくない。

教室のみんなも、いやな表情で僕を見てくるんだ。

嘘つきって、言ってくる。

嘘なんてついてないって言ったら、それが嘘だと言われた。






その日僕は、一人家に帰った。







一緒に帰る友達なんて、できなかった。





僕は嘘つきだから。






部屋に行って、ランドセルを机の上に置く。

教室よりも広い、僕だけの部屋。

自慢の部屋。

だけど、今はそれがすごく淋しかった。

独りぼっち。






「シンちゃん、学校どうだった?」

夕食の時、パパがそんなことを聞いてきた。

食事がうまく喉を通らないのに、そんなこと聞いてこないでよ。

「…もう、行きたくない」

同じテーブルに付いているグンマが、口の周りを真っ白にして「何で?」って聞いてくる。

パパも同じように、聞いてくる。


『似ているね』


同じがイヤだ。


「クソガキ、おまえいじめられたのか?」

今日、たまたま帰ってきた獅子舞も聞いてくる。


『同じだよ』


獅子舞も同じ。

だから、止めてほしかった。

「いじめ…ですか。グンマ様を、入学させなくてよかったです。可愛いグンマ様だったら、いじめの標的になるやもしれませんッ!!」


『ほら、おかしいよ』


おかしい。

すごく。

鼻血を垂らしながら、高松が言う言葉に、僕はたまたまあることに気が付いた。

「パパ…」

「なんだい?」

やさしい笑顔のパパ。


『青い目をした男』


僕と全然、似ていないパパ。

「グンマはなんで、小学校に行かないの?」


『騙されないで』


「高松が、ダメだっていうからね」


『その人は…』


頭のいいパパ。

「何で、グンマはお出かけするときも、遊ぶときも警護がつくの?僕にはつかないよ?」


『嘘つきだから』


「高松が、心配性だからね」

僕が言いたいこと、わかっているよね。

「グンマは何で……」

「シンちゃん、それ以上は言わないでおくれ。グンちゃんは、パパがいないから高松が過保護に…」

すべて、高松のせい?

僕に警護が付かないのも?

僕は、ガンマ団総帥の息子なんだよ。

「高松が可愛がっているから、僕よりも後からお菓子を食べるの?遊具で遊ぶときも、車に乗るときも、家に入るのも…何で僕、グンマより先なの…グンマは何でも、僕よりも後からなのッ!?」

ほら、パパがいつもと同じこと言うよ。

「それは、シンちゃんがパパの息子だから何でも一番に…」

いつも、同じだ。


『息子じゃないのに、息子と言うよ』


「同じ答えばかり、みんな、みんな、いつもッ!!本当は皆して、僕のことパパの子供って思ってないんでしょッ!?ほら見てよッ!!髪の毛は真っ黒で、パパと似ているところなんて一つもないじゃんッ!!僕はパパが、どこかの施設から貰ってきた子供なんでしょ?だったら、その施設に帰してよッ!!本当のパパとママに会わせてよッ!!」

止まらなくなった僕の口を止めたのは、獅子舞だった。

ほっぺたが痛かった。

「お前な、兄貴がどんな思いでお前を育ててきたと、思ってるんだよッ!!一番苦しいのは、お前じゃなくて兄貴なんだぜッ!!」

真っ赤な顔の獅子舞。


『その人は僕を見てくれない人』


パパの方を見ると、冷たい眼で僕を見ている。

知らないパパ。

「シンタロー、この話は止めよう」

否定しないんだ。

「…やっぱ、グンマがパパの本当の子供なんだ?」

「違うよ」

「違わない!だったらなぜ、僕は黒いのッ?パパの子供じゃないんでしょ?だったら、僕なんか施設にでも預けて、グンマを息子にしちゃえばいいじゃんかッ!!グンマ、パパにそっくりだよッ!!」

ナフキンをパパに投げ付け、僕は走って部屋を出た。

誰も、呼び止めなかった。

名前、呼んでくれなかった。







僕はガンマ団を抜け出して、一人で町を歩いていた。

居場所なんて、なかったから。

周りを見れば、親子連れがいっぱいいる。

皆、顔のどこかが似ている。

羨ましい。

『僕はいつも一人』

そう、いつも一人なんだ。

ガンマ団のなかにいても、僕をパパの息子と表面では扱ってくれるけど、僕がいなくなった後、すぐに僕はパパの子供じゃないって噂していることくらい知っている。

だけど、信じていたかった。

パパを。

僕は気が付いたら、古ぼけた教会の前にいた。

確か、教会は身なし子や虐待により親元を離れた子、家出をした子達を保護してくれたはず。

僕も受け入れてくれるかな?

重たいドアを、ゆっくりと開けた。



ここから、僕の新しい人生が始まることを祈って…。



「シンタロー、あなたは本気なのですか?」

その声に振り替えると、俺の育ての親でもある神父様が、荷造りをしている俺を心配そうに見ていた。

「本気です。これ以上、ガンマ団にこの国を壊されたくないんです」

「そうですか」

ここはもともと、小さな、平和な国だった。

ガンマ団支部があっても、この国を占領などしなかった。

しかし、18年前状況が一変した。

今まで占領などする気配がなかったガンマ団は、力のない国民に銃を向けた。

小さな軍事力もないこの国は、その侵略攻撃に半年もせずに降伏宣言をした。

そんな情けない首相に市民は怒り、ゲリラ戦が度々起きていた。

そして、俺は今年24歳になるのを機に、ゲリラ隊に入ることを決めた。

「この国を守りたいんですッ!!」

「‥わかりました。あなたのその情熱は、私の愛するこの国を守りたいと、あなたの愛するこの国を元に戻すための戦いへ赴く兵士としての、ものなのですね」

「はい」

勝つ自信はない。

だけど、ここで俺等が戦わないと、あの金髪の悪魔にこの国民は根絶やしにされてしまう。

「それでは戦場へ行ってしまう貴方の贐に少し、昔の話をしましょうか?」

神父さまのその暖かい心遣いに、胸が熱くなった。

まるで、本当の父親のように旅立つ俺に、小さかった頃の俺の話をしてくれると言うんだ。

「…あなたは、そう、18年前、ここの教会の扉を開いたのです」






小一時間、昔話に俺等は花を咲かせていた。

懐かしかった。

楽しかった。

暖かかった。

昔、俺が暖かさを望んで扉を開いたここには、その暖かさがある。

両親がいない俺が、望んで、恋い焦がれた暖かさ。

「それでは、昔話はこのぐらいでお開きにしましょう」

明日は早いのですから、お休みなさいと、言い残して神父さまは部屋からでていった。


「お休みなさい」


そして、今までありがとうございました。


ゲリラ隊に参加した俺に待っているのは、死のみだけど後悔はしないから。





夢の中で悲鳴が聞こえた。

これは夢だってわかっている俺がいる。

部屋のなかにいるのに、すごく体がふわふわしていた。

ドアを開けて、悲鳴のしたほうに行くと、あの‘G’の腕章を付けた男が俺に気付いて、銃口を向けてくる。

なにか大声で言っているのに、何を言っているのか分からない。

だから、俺は…

「…ぅ、夢?」

目を開けば、見慣れた天井。

「やっぱ、夢か―」

部屋を見回した俺は、我が目を疑った。

「おはようと言うべきかな?」

あの、金髪の悪魔がそこにいた。

「マジックッ!!」

憎しみをこめ睨み付けるが、相手はそんな俺を無視するかのように、近くにいた部下だと思われる男に何か指示を出したあと、品定めをするかのような冷たい視線で俺を見る。

「威勢がいいね」

人を馬鹿にしたようなしゃべり方に腹が立つ。

腕を動かしたいのに、体が思うように動かない。

青い冷たい瞳から、言いようのない圧力が感じられる。

あれが、噂に聞く秘石眼か。

「そんなところは、昔と変わっていないね」

昔?

何を言っているんだこいつは。

俺は、初めて会ったというのに。

「覚えていないという顔だね」

「俺は、あんたなんか知らない!」

青い瞳が怪しく光る。

「知らない?」

「ああ、知らない!」

男の表情から、笑みが消えた。

「お前を探すために、どれだけの人間が犠牲になっていると思っているんだい?」

私もその一人だよと、うなるような低い声で囁き、動くことを忘れた俺の上にのしかかってきた。

「知らないものは、知らない!」

「ほう?」

頭の中で警告音が鳴り響いている。

男が言っていることを何か思い出さないと、やばい。

だけど、思い出すことができない。

「お前を探すために、私は12の国をつぶしたよ。お前と同じような子供をすべて、殺していったよ。お前と同じ、黒い髪の人間を根絶やしにしていったよ。お前が憎いから…。私の元から逃げおおせたお前がね…」

言っている意味がわかんない。

何故、俺のせいで?

この男と俺の接点がわからない。

「憎い憎いと思っていたのに、実際本人に会ってみるとどうしてこう、愛おしいと思えるのか。お前は昔から、私の心をかき乱すんだろうね」

憎いなら、殺せというと、男は笑った。

「殺すはずがないだろう。私の可愛い坊や」


こいつが父親?

接点が、類似点がねえ。

頭が思うようにうごかない。


抵抗する気力を失ったそんな俺を、男はあの笑みを絶やすことなく犯した。

「愛しているよ」

そう、男は俺の耳元で囁いた。

熱い塊が俺の中で暴れながら、そんなことを言うものだから頭のなかがおかしくなっていく。

「あ…、もぅ…むりぃ」

「まだだよ。シンタロー、もっとお前を味合わせておくれ」

動きがだんだんと早くなっていく。

何か、熱いものがこみ上げて、目頭が熱くなる。

「ひゃ・・、いやぁ…」

「何が、嫌なんだい?本当は嬉しいくせに」

あれから、どれくらい時が過ぎたんだろう。

あの教会から連れ出された俺は、ガンマ団本部のこいつの部屋で犯され続けていた。

行為の途中で、神父さまの生首を見せ付けられた。

教会を燃やしたとも聞かされた。

涙があふれて、前が見えなかった。

何故、俺なんだと何度も自問自答した。

答えはこの目の前の悪魔が持っているというのに、聞くことが出来ない。

この男は絶対的権力者の力で、俺をねじ伏せる。

親子だなんてうそだ。

俺にはそんな力なんて無い。

髪の色だって全然違うじゃないか・・・・。

顔だって似てない。

 『本当は、グンマがパパの本当の子供なんだ!』

グンマ?

 『マジック様に似てないね』

似てない?

 『何故、いつも僕ばかりが最初なの?』

いつも?

 『僕はパパの子供なのに、警護の人なんて―』




 思い出した



 俺は、こいつの子供として育てられた・・・・。


 遠い昔に。


「シンタロー・・」

甘い囁きが耳をくすぐる。

思い出してしまったことを、この男に告げてもいいのだろうか。

それとも、告げないほうが俺にとって幸せなのではないだろうか。

「愛してるよ」

こいつの言っていることは、嘘の塊。

信じたら死んでしまう。

「お前だけだ」



 「うそ・・・つ・・・き」


自然ともれた言葉に、男は笑っていた。





「思い出したんだね?」

嬉しそうに笑う、悪魔。

「私がどれだけお前を、愛しているのかわかっただろう?」

「あんたは、うそつきだ!俺はアンタの子供じゃねえ!昔、アンタは俺を影武者として扱ってじゃねえか!それが実子に対するものか?愛してる?いい加減にしろ、俺はあんたなんてただの悪魔にしか思えねえ!」

その悪魔の腕から逃れるため、俺は暴れた。

だが、その腕の力は強く逃げ出すことを許さなかった。

「また、逃げるのかい?」

笑っている。

こいつ、頭おかしい。

「離せ!」

「手を離したらお前はどこかに行ってしまう」

話が通じない。

「それとも、また見つけ出して捕まえて欲しいのかい?」

国を潰して行きながらお前を探し出すよと、耳元で囁かれたとき何故か俺は笑っていた。

「楽しそうだね、シンタロー?」

楽しいのか?

嬉しいのか?

「何か良いことあったのかい?」




 『この世界が、僕とパパだけになってしまえば良いのに』



どこでそれを願ったのかは覚えていない、ただアンタのその言葉が嬉しくて、そして楽しかった。

「また、追いかけっこするか?俺は、逃げるの得意だぜ?」

「ふふふ。私も追いかけるのは得意だよ」

そう、屍を作りながらこの世に俺とアンタだけの世界を作りたい。

「ああ、その前に父さん・・・」

「なんだい?」

「ただいま、そして愛してる」

軽く唇に触れるだけのキスをする。

「ああ、お帰り。私の愛しい人」

そしてアンタは、深い口付けをする。



似ていないなんて、そんなのはどうでもいい。





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