―ごめんなさい―
大切なものを、俺は落としてしまいました。
―もうしません―
それは、とても大切なもの。
―ごめんなさい―
あなたが大切にしていたものを、俺は無くしてしまいました。
―許してください―
たった、それだけで変わってしまうと思わなかったから、
―お願いだから―
俺は、大切に扱わなかった、
―どうか、もう一度―
あなたにとって、それがどれだけ大切なものなのか、
―最後にもう一度だけ―
無くした今、気がつきました。
―俺を―
今更ながらに気がつきました。
―「好き」だと言って下さい―
もう、遅いということに、今更ながら気がつきました。。
―父さん―
『落し物』
「シンちゃん!」
ガンマ団本部の廊下を歩いていると、グンマの少し甲高い声が後ろから聞こえた。
仕方なく振り返ると、腰に手をあてながらも荒い息で仁王立ちしているグンマがそこにいた。
「お父様から聞いたよ!」
眉間に皺をよせ、すっごく怒っているという感情を表情に出している。
その青い瞳が、何をいいたいのか分かって欲しいと、懸命に訴えてきている。
「ここを出て行くって聞いたよ!全部終わって、やっと皆で新しい思い出を作ろうって、この前お父様と約束したばかりでしょ?今更、なんでそんなこというの!」
やはりあのことかと小さく溜息をつき、俺は再び歩みを進めるためグンマに背を向け、歩き始めた。
「シンちゃん!」
俺の歩みを止めようと声を張り上げるが、そこを動いて俺を止めようとはしないグンマに、バレバレだと呟くような口調で伝える。
「!」
少し空気が張るのが分かった。
先ほどのあれは、ただの演技にしか過ぎない。
グンマが生きていくうえで、生まれながらに自然と身に着けた『弱い自分』という仮面。
実際それを見破ったのは、今まででパプワただ一人。
長年一緒に居る俺も、パプワからそれを聞かされる日まで気がつかなかった。
「何を言っているの?」
ああ、声が少し震えている。
今まで、指摘されたことがないんだ。
「さあな」
親父や高松でさえ見破れなかったその迫真の演技を、俺が見破ったことに驚いているといった雰囲気が、背中からひしひしと伝わってくる。
「シンちゃん、僕ぜんぜん意味がわかんないよ・・・」
最後まで嘘を吐き通そうとするその態度に、俺はつい苦笑を漏らした。
やはり、柔軟性にかける。
「ひとつだけお前に伝えることがある」
「え?」
俺は、グンマに一つ忠告するために歩みをとめ再び振り返り、焦りと怯えが感じられる瞳を見つめながら、ゆっくりとその頭でも分かるように言葉を紡いだ。
「そんなに、赤の他人が青の後継者として、ガンマ団に君臨するのが憎くかったか?
血のつながる自分よりも、血のつながらない相手が愛されていることが悔しかったか?
マジックの正統後継者は自分だというのに、俺がその場所にいることが許せれないか?」
違うか?と訊ねると、グンマは細い肩を小さく震わせながら真っ青な顔で俺を凝視している。
図星をつかれ、何も言葉が出ないといった表情だ。
「だから、この俺をあの人の心から殺したかったんだろ?」
「し・・・・シンちゃん?」
自虐的な笑みを浮かべる俺に怯えるグンマ。
お前が望んだことだろう?
「出て行くよ。もう、お前にも、あの人にも会うことねえだろうな」
「そんな、お父様がおこ・・・・・・あ、ダメだよ。シンちゃん!でてっちゃダメ!」
そしてグンマは、己のつむぎだした言葉にあることに気がついた。
唯一、あの人をなだめることができた存在の俺。
それを今、遠くにやってしまえばどんなことが起きるのか、あの4年前の惨事を思い出したのだろう。
今回は自分がやってしまったことが原因で、俺を遠くにやってしまう。
ならば、今度の惨事は自分の命でさえ危ういのではないかと、そういう考えに到ったようだ。
その想像もつかないだろう惨事に対する恐怖に、グンマでさえ俺がいなくなることに反対だと、己の心の中と正反対の回答に戸惑いを隠せない色を宿した瞳で俺を見つめる。
ああ、演技は恐怖に打ち勝てなかったのか。
すぐに態度に出てしまい分かってしまう。
「安心しろ。あの人は俺を欲さない」
「え?」
そんな筈は無いと、また表情に出る。
「ジャンがいる」
「ジャンさんが?何故?」
よく分からないと、首を傾げるその態度はもう仮面など一切見当たらない。
「あの人は、『欠陥の模造品』より『オリジナル』を欲する」
その言葉に、俺がいなくなっても惨事は起きないという確証を得た為か、それとも安心からなのか、グンマはすぐ頬を紅く染め幸せそうな笑みを浮かべた。
それにつられ、俺の自虐的な笑みももっと深いものになる。
「ああ、安心しろ。お前が、毎日のように俺に投与したあの薬が効いたみたいだ」
ガンマ団の基地を後にした俺は、延々と続く道をひたすら徒歩で歩いていた。
門を潜ってから、街中を歩いていたが1時間ほどしてドコまでも続く広い草原に辿りついた。
グンマの薬は、俺のあるものを奪っていった。
先のとがった毛先が、頬にちくちく当たって少しかゆみを感じる。
あれだけ長い時をかけ、腰ぐらいまで伸ばしていた自慢の髪は、今は肩より少し上の長さになっている。
「頭軽くなったな・・・」
独り言を呟いても、いつものようにそれに対する声は一切投げかけられることが無かった。
あれだけ五月蝿く、俺の周りを付きまとっていた声は、今は何も聞こえない。
それが恋しくて、悲しくて自然と目を閉じた。
暗くなった視界は、視覚からの情報を全て遮断し、聴覚が状況を把握するべく働きを強めるのだが、草木のざわめく音など一切入ってくることはなく、今はあのふざけた声が聞こえてくる。
『もったいないな~』
それは幻聴。
『私は、シンちゃんの髪、好きだよ』
これも、いつも言われていた言葉をただ繰り返し再生しているだけの、幻聴。
あの人は、いつも俺の髪を好きだといった。
それが何を指しているのか知った時でも、俺はあの人が好きだといった黒髪が好きだった。
髪に口付けをされるのも好きだった。
この髪があるからこそ、あの人から無償の愛を受けることができていたのに。
今視界に映る自分の髪は、色が無くなっている。
太陽の光を浴びて、光っているその髪が恨めしかった。
風が悪戯に髪を揺らし、俺の頬をなでる。
それを手で少し摘み、太陽の光に透かし遊びながら思い出す。
2月ほど前から、グンマがココアを俺に作るようになった。
最初のうちは、疑うことなくありがたく頂いていた。
だが、体に現れる変化に戸惑い、悩み、隠しながら生活を通した1月の間。
裏切らないだろうと信じていた元従兄弟からの、薬物投与が原因だと確信を持ったのは、自慢の黒髪が全て白髪に変わってしまったとき。
グンマはそれを見て、「綺麗だね」と嬉しそうに笑っていた。
キンタローは、俺の体調の変化に驚き精密検査を俺に分からないように何度も行った。
心労からきていると言って、俺に休養を与えたりもした。
あの人は、どこか寂しそうな眼を一度向けたっきり、俺を避け続けた。
ハーレムは、年を取ったと笑っていた。
サービスおじさんは、銀髪だと褒めた。
コタローは、銀髪のほうが目立つから自分にくれと、ダダをこねた。
体に大きく現れたのは、その白髪と、グンマさえ予見できなかった副作用。
あいつにとって、俺の髪が黒ではなく白になればいいだけであって、モルモットの実験も簡単にしか調査しなかったのだろう。
結果、その副作用のほうが俺にとって、苦しいものになったことはグンマにとって大きな産物だっただろう。
『シンちゃん、ココアもって来たよ』
『おう、そこに置いて・・・・っぐ!!』
『し、シンちゃん!?』
真っ赤な軍服に、大きな黒い染みができたとき、俺は残された時間が残り少ないものになっていると、そう感じた。
『お前に行った、血液検査の結果のことだが・・・・』
『んだよ、言ってみろ。答えは分かっているから』
『染色体の、異常ともいえる速度での崩壊により、白髪になったと考えられる。あと、体についての病名だが急性白血病だ。1月前までそんな影さえなきあったのに・・・・。悪いが、回復の見込みは無い』
『余命は?』
あのときの、キンタローの悲痛な表情はとても忘れることのできないものだった。
やっと出た検査結果が、俺の体の症状に対する全ての答えを出していた。
ただ、あの時精密検査に立ち会ったのが高松だったためか、グンマが作り出した薬物が俺の体内から検出されることは無かった。
『1月だ』
それからの行動は早かった。
早々に、コタローに政権交代を宣言し、己は南の島で静かに暮らしたいと団員の前でそんな我侭を宣言した。
中途半端な人間だと、批判の声も上がった。
だが、急に変わってしまった髪の色のお陰なのか、影で色々な憶測が生まれ反発の声も日に日に減っていった。
秘書達の反対を押し切って、強硬姿勢を崩すことなく俺はそのまま椅子をコタローに譲り、自分を除籍処分とした。
その時、秘書から相談を受けていたあの人は、俺のほうを一切見ることなく「好きにしなさい」とだけ言い、それ以外は何も言わなかった。
すでに、キンタローの報告で親族達は真相を知っていた。
あの人とグンマを除いて全ての人が、最後までここであの人と一緒に居るように俺に説得をしてきた。
あの人が切れたら、俺以外止めることができなかったと知っていたからだ。
自分の保身のための説得なんて、欲しくなかった。
本当に欲しかったのは、
あの人の言葉だけ。
たった一言、「好きだよ」と言って欲しかった。
-第1章 完-
大切なものを、俺は落としてしまいました。
―もうしません―
それは、とても大切なもの。
―ごめんなさい―
あなたが大切にしていたものを、俺は無くしてしまいました。
―許してください―
たった、それだけで変わってしまうと思わなかったから、
―お願いだから―
俺は、大切に扱わなかった、
―どうか、もう一度―
あなたにとって、それがどれだけ大切なものなのか、
―最後にもう一度だけ―
無くした今、気がつきました。
―俺を―
今更ながらに気がつきました。
―「好き」だと言って下さい―
もう、遅いということに、今更ながら気がつきました。。
―父さん―
『落し物』
「シンちゃん!」
ガンマ団本部の廊下を歩いていると、グンマの少し甲高い声が後ろから聞こえた。
仕方なく振り返ると、腰に手をあてながらも荒い息で仁王立ちしているグンマがそこにいた。
「お父様から聞いたよ!」
眉間に皺をよせ、すっごく怒っているという感情を表情に出している。
その青い瞳が、何をいいたいのか分かって欲しいと、懸命に訴えてきている。
「ここを出て行くって聞いたよ!全部終わって、やっと皆で新しい思い出を作ろうって、この前お父様と約束したばかりでしょ?今更、なんでそんなこというの!」
やはりあのことかと小さく溜息をつき、俺は再び歩みを進めるためグンマに背を向け、歩き始めた。
「シンちゃん!」
俺の歩みを止めようと声を張り上げるが、そこを動いて俺を止めようとはしないグンマに、バレバレだと呟くような口調で伝える。
「!」
少し空気が張るのが分かった。
先ほどのあれは、ただの演技にしか過ぎない。
グンマが生きていくうえで、生まれながらに自然と身に着けた『弱い自分』という仮面。
実際それを見破ったのは、今まででパプワただ一人。
長年一緒に居る俺も、パプワからそれを聞かされる日まで気がつかなかった。
「何を言っているの?」
ああ、声が少し震えている。
今まで、指摘されたことがないんだ。
「さあな」
親父や高松でさえ見破れなかったその迫真の演技を、俺が見破ったことに驚いているといった雰囲気が、背中からひしひしと伝わってくる。
「シンちゃん、僕ぜんぜん意味がわかんないよ・・・」
最後まで嘘を吐き通そうとするその態度に、俺はつい苦笑を漏らした。
やはり、柔軟性にかける。
「ひとつだけお前に伝えることがある」
「え?」
俺は、グンマに一つ忠告するために歩みをとめ再び振り返り、焦りと怯えが感じられる瞳を見つめながら、ゆっくりとその頭でも分かるように言葉を紡いだ。
「そんなに、赤の他人が青の後継者として、ガンマ団に君臨するのが憎くかったか?
血のつながる自分よりも、血のつながらない相手が愛されていることが悔しかったか?
マジックの正統後継者は自分だというのに、俺がその場所にいることが許せれないか?」
違うか?と訊ねると、グンマは細い肩を小さく震わせながら真っ青な顔で俺を凝視している。
図星をつかれ、何も言葉が出ないといった表情だ。
「だから、この俺をあの人の心から殺したかったんだろ?」
「し・・・・シンちゃん?」
自虐的な笑みを浮かべる俺に怯えるグンマ。
お前が望んだことだろう?
「出て行くよ。もう、お前にも、あの人にも会うことねえだろうな」
「そんな、お父様がおこ・・・・・・あ、ダメだよ。シンちゃん!でてっちゃダメ!」
そしてグンマは、己のつむぎだした言葉にあることに気がついた。
唯一、あの人をなだめることができた存在の俺。
それを今、遠くにやってしまえばどんなことが起きるのか、あの4年前の惨事を思い出したのだろう。
今回は自分がやってしまったことが原因で、俺を遠くにやってしまう。
ならば、今度の惨事は自分の命でさえ危ういのではないかと、そういう考えに到ったようだ。
その想像もつかないだろう惨事に対する恐怖に、グンマでさえ俺がいなくなることに反対だと、己の心の中と正反対の回答に戸惑いを隠せない色を宿した瞳で俺を見つめる。
ああ、演技は恐怖に打ち勝てなかったのか。
すぐに態度に出てしまい分かってしまう。
「安心しろ。あの人は俺を欲さない」
「え?」
そんな筈は無いと、また表情に出る。
「ジャンがいる」
「ジャンさんが?何故?」
よく分からないと、首を傾げるその態度はもう仮面など一切見当たらない。
「あの人は、『欠陥の模造品』より『オリジナル』を欲する」
その言葉に、俺がいなくなっても惨事は起きないという確証を得た為か、それとも安心からなのか、グンマはすぐ頬を紅く染め幸せそうな笑みを浮かべた。
それにつられ、俺の自虐的な笑みももっと深いものになる。
「ああ、安心しろ。お前が、毎日のように俺に投与したあの薬が効いたみたいだ」
ガンマ団の基地を後にした俺は、延々と続く道をひたすら徒歩で歩いていた。
門を潜ってから、街中を歩いていたが1時間ほどしてドコまでも続く広い草原に辿りついた。
グンマの薬は、俺のあるものを奪っていった。
先のとがった毛先が、頬にちくちく当たって少しかゆみを感じる。
あれだけ長い時をかけ、腰ぐらいまで伸ばしていた自慢の髪は、今は肩より少し上の長さになっている。
「頭軽くなったな・・・」
独り言を呟いても、いつものようにそれに対する声は一切投げかけられることが無かった。
あれだけ五月蝿く、俺の周りを付きまとっていた声は、今は何も聞こえない。
それが恋しくて、悲しくて自然と目を閉じた。
暗くなった視界は、視覚からの情報を全て遮断し、聴覚が状況を把握するべく働きを強めるのだが、草木のざわめく音など一切入ってくることはなく、今はあのふざけた声が聞こえてくる。
『もったいないな~』
それは幻聴。
『私は、シンちゃんの髪、好きだよ』
これも、いつも言われていた言葉をただ繰り返し再生しているだけの、幻聴。
あの人は、いつも俺の髪を好きだといった。
それが何を指しているのか知った時でも、俺はあの人が好きだといった黒髪が好きだった。
髪に口付けをされるのも好きだった。
この髪があるからこそ、あの人から無償の愛を受けることができていたのに。
今視界に映る自分の髪は、色が無くなっている。
太陽の光を浴びて、光っているその髪が恨めしかった。
風が悪戯に髪を揺らし、俺の頬をなでる。
それを手で少し摘み、太陽の光に透かし遊びながら思い出す。
2月ほど前から、グンマがココアを俺に作るようになった。
最初のうちは、疑うことなくありがたく頂いていた。
だが、体に現れる変化に戸惑い、悩み、隠しながら生活を通した1月の間。
裏切らないだろうと信じていた元従兄弟からの、薬物投与が原因だと確信を持ったのは、自慢の黒髪が全て白髪に変わってしまったとき。
グンマはそれを見て、「綺麗だね」と嬉しそうに笑っていた。
キンタローは、俺の体調の変化に驚き精密検査を俺に分からないように何度も行った。
心労からきていると言って、俺に休養を与えたりもした。
あの人は、どこか寂しそうな眼を一度向けたっきり、俺を避け続けた。
ハーレムは、年を取ったと笑っていた。
サービスおじさんは、銀髪だと褒めた。
コタローは、銀髪のほうが目立つから自分にくれと、ダダをこねた。
体に大きく現れたのは、その白髪と、グンマさえ予見できなかった副作用。
あいつにとって、俺の髪が黒ではなく白になればいいだけであって、モルモットの実験も簡単にしか調査しなかったのだろう。
結果、その副作用のほうが俺にとって、苦しいものになったことはグンマにとって大きな産物だっただろう。
『シンちゃん、ココアもって来たよ』
『おう、そこに置いて・・・・っぐ!!』
『し、シンちゃん!?』
真っ赤な軍服に、大きな黒い染みができたとき、俺は残された時間が残り少ないものになっていると、そう感じた。
『お前に行った、血液検査の結果のことだが・・・・』
『んだよ、言ってみろ。答えは分かっているから』
『染色体の、異常ともいえる速度での崩壊により、白髪になったと考えられる。あと、体についての病名だが急性白血病だ。1月前までそんな影さえなきあったのに・・・・。悪いが、回復の見込みは無い』
『余命は?』
あのときの、キンタローの悲痛な表情はとても忘れることのできないものだった。
やっと出た検査結果が、俺の体の症状に対する全ての答えを出していた。
ただ、あの時精密検査に立ち会ったのが高松だったためか、グンマが作り出した薬物が俺の体内から検出されることは無かった。
『1月だ』
それからの行動は早かった。
早々に、コタローに政権交代を宣言し、己は南の島で静かに暮らしたいと団員の前でそんな我侭を宣言した。
中途半端な人間だと、批判の声も上がった。
だが、急に変わってしまった髪の色のお陰なのか、影で色々な憶測が生まれ反発の声も日に日に減っていった。
秘書達の反対を押し切って、強硬姿勢を崩すことなく俺はそのまま椅子をコタローに譲り、自分を除籍処分とした。
その時、秘書から相談を受けていたあの人は、俺のほうを一切見ることなく「好きにしなさい」とだけ言い、それ以外は何も言わなかった。
すでに、キンタローの報告で親族達は真相を知っていた。
あの人とグンマを除いて全ての人が、最後までここであの人と一緒に居るように俺に説得をしてきた。
あの人が切れたら、俺以外止めることができなかったと知っていたからだ。
自分の保身のための説得なんて、欲しくなかった。
本当に欲しかったのは、
あの人の言葉だけ。
たった一言、「好きだよ」と言って欲しかった。
-第1章 完-
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