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p2
とても軽くなった頭。

やはり違和感が残るが、それでもそんなことを微塵も態度に出すことなく、俺は親父の執務室に向かって歩いていた。

いつもの赤いジャケットは脱ぎ、白衣を羽織って。

「あ、ジャン博士」

「おぅ~」

誰もが俺をジャンと思い、声をかけてくる。

「ジャン博士、先日のあのメカ、美観的にどうかと思う意見がありますよ」

「ははははは! あれは、芸術品なんだよ!」

それに、あいつらしいすっごい馬鹿みたいな救いようのない笑顔で応じながら、鳥肌をたてつつ親父の執務室の前まで来た。

「死にそう・・・いや、ちょっと死に掛けた・・・」

涙があふれ出そうになるが、そこは男だから何とか堪える。

「よし」

今日は、ジャンはまだ上る時間ではないので、鉢合わせの可能性はまずないだろう。

それは、さっきグンマにも確認済みだ。

高鳴る心臓を押さえるため、小さく深呼吸をしドアをノックする。

ドアの右に設置されているドーム型の小型カメラが、ぐるりと回転し俺の姿を捕らえると、ロックの解除音と共にドアが自動的に開いた。

「どうしたんだい?」

何度か訪れたことのあるその部屋の窓際に設置されたデスクに、すまし顔で微笑む親父がいた。

いつものピンク色のジャケットに身を包み、大き目の椅子に深々と座り俺を見ている。

そんな姿が様になるのは、悔しいがさまになっている。

「今日は、仕事が早く終わったので」

「ふふふ・・、可愛いことを言う」

そう言うと、椅子から立ち上がり俺のいるところまでゆっくりと歩いてくる。

「愛しい、ジャン。そんなに私を煽らないでおくれ。どこかに押し込めたくなる」

俺の目の前に夏と、前髪を一房つままれ、何をするのか不思議に思いただ無表情にそれを見ていると、段々と顔が近づいてくる。

それをするのが当たり前のように、そこに口付けが落とされた。

「お前だけを、愛しているよ」

正直驚いて、表情に出したかった。

何とか必死に堪えながら、親父を見つめる。

だって、髪に口付けなんてされたことがなかった。

そんなに、熱を帯びた目で見つめられることなんてなかった。

「ジャン、愛してる」

俺は、段々自分が誰だか分からなくなってくる。

その口から、囁かれる他人への始めて聞く感情の篭もった愛の告白。

一瞬自分のことかと錯覚してしまったが、親父の瞳に写っている俺に、否応無しに現実に引き戻される。

それは、どう見てもジャンそのものだった。

「シンタローは、いいんですか?」

微笑みながら、親父の首に両腕を回す。

「おや、妬いているのかい?」

その質問に俺は、なるべく余裕ぶった笑みを浮かべながら、小さく頷く。

「こう見えても、ナイーブなんですよ」

親父は満足そうに笑い、そして俺の腰に腕を回してきた。

「私をた試すのは、やめなさい」

ばれたのかと、思ったがそれは思い違いだった。

「何度もいうが、私はお前そっくりなあの子を、殺したいほど・・・憎い。そして、邪魔な存在だよ」

その言葉に、俺はゆっくりと瞼を閉じた。

「ああ、貴方は本当に・・・・」

暗くなったその世界にあるのは、ただの闇だけだった。



続く



反省
暗いくらい、暗くするのは大好きよ~~






「ジャン、嫌なことを思い出させるね」

その声にゆっくりと瞼を上げると、青い瞳が冷く憎悪でぎらぎらと光る。

「その、ぎらぎらした眼・・・・とてもいいですよ」

その視線の先にあるのは、俺の幻影なのだろう。

どれほど憎んでいるのか、良く分かる。

「憎すぎて、憎すぎてたまらない。殺してしまいたいが、お前と同じ顔だから私の手では殺せない・・・・」

憎くても、最愛の人の顔だから殺せないのだと、その声は甘く囁く。

ジャンの顔だから、今まで殺せなかったその真実に、俺は悲しくはなかった。

「じゃあ、俺が貴方の代わりに『シンタロー』を殺して差し上げます」





グンマが俺に笑って言った。

「お父様は、シンちゃんのことが大好きだね」

キンタローが気難しそうな表情で言った。

「叔父貴は、お前のことしか頭に無いみたいだ」

コタローが呆れ顔で言った。

「パパったら、お兄ちゃんのことばっか」

サービスおじさんが微笑み囁いた。

「兄さんは、お前に出会って変わったよ」

ハーレムが酒の席で酒瓶片手に叫んだ。

「アニキはお前に甘い!!」

高松が小さく溜息をつきながら漏らした。

「マジック様は相変わらず貴方だけですね」

ジャンが余裕たっぷりの笑みで宣言した。

「どうしても、手に入れたかったんだろう」




俺は、ジャンのその言葉の意味を取り違えていたことを、今になってようやく気がついた。

あいつが言っていたのは、俺のことではなく、あいつ自身のことだったなんて。

何故、あのときのあの笑みで気がつかなかったんだ。

息子でなかったとしても、親父の愛情が俺だけのものだと、なんでそんな風に思っていたんだろう。

俺を見るあの瞳は、殺意が篭もっていたなんて、何故気がつかなかったんだ。

みんなが嫌いだと、昔のコタローが言った。

世間も良く知らなかったから、そんなことを言っていたのだと、今は笑って話している。

だがな、今の俺はその通りだと思う。

だって、そうだろう?

今の俺は、皆が嫌いだ。

そして、俺自身も嫌いだ。





続く


反省
1話、1話が短くてスイマセン





お前の言葉に、賛同している俺だけど、コタロー、お前も嫌いなんだ。

俺の求めていたものを生まれてきたときから、持っている。

生まれた当初は、可愛い弟って思ってた。

時がたつにつれ、お前が幽閉されたことを知った時、俺はお前を幽閉した親父を憎んでいたが、それ以上にお前自身に対して嫉妬に狂いそうになった。

お前は苦しい思いをしなくても、親父の子として認められ、そして親父から特別扱いを受けている。

それが許せなかった。

そして、俺自身の秘密を知ってしまって、さらにお前がいやになった。

俺にもあると信じていた、『血族』の称号。

親父からの、愛情。

だから、コタロー。

今の俺は、死ぬほどお前が嫌いんだよ。

だけど、そんな素振りを僅かでも見せれば、親父が俺を嫌いになるかもしれない。

だから、俺はいい子ぶってお前を好きだと言ってあげるよ。

鼻血だって、本当は殺したいほど憎いこの怒りの血潮が、鼻から血液を流すだけ。

「あの人」を真似たこの、方法。

うまく言っていると思わないか?



「シンちゃんは、本当にコタローが好きだね」

「ああ」

「パパのほうを選んでくれたっていいのに…」

「嫌だよ」

「シンちゃんのいけず」

ほら、親父が鼻血を出している。

けどね、それは俺が憎いから。

体中の血液が煮えたぎっているから。

手に入れることができなかった、ジャンを俺と重ねているから。

だから本当は、「あの人」はコタローが大好きなんだよ。

だって、自分と同じものを持った身内だぜ?

血のつながりを大切にする、青の一族だ。

部外者で愛されるのは、ほんとまれなこと。

俺はあの島の一件以来、血のつながりが消え親父のなかでは嫌悪の対象に入っていたことぐらい、本当は分かっていたさ。



「シンちゃん、愛してるよ」



戯言。

皆を騙すための、言葉。

以前のように振舞うため、わざとそんなことを口にする。

嫌っている俺に、囁く言葉。

もう、うんざりだ。

こんなに苦しい思いをしたって、どうしても手に入らないものがあることぐらい俺だって分かっているさ。

だから、あの時の俺は親父に『シンタロー』を殺してやるって、約束したんだ。

まさに、滑稽な話だよな。

俺を俺が殺してやるって、約束するなんて。

あのときの親父の顔ったら、とっても嬉しそうに微笑んで「それなら、是非見学したいね」なんていいやがって。

別に、いいさ。

どうせ、俺の命はあの時にパプワ島で消える運命だったんだ。

だから、今消えたって誰も文句は言わないだろう。


続く


反省
暗い・・・・ってか、精神的に病みすぎな感じが・・・






「シンちゃんは、パパに愛してるって言ってくれないの?」

あれから数日たった夜、親父が俺のベッドの上でいつもの口癖を漏らした。

裸のままそのまま眠りに入ろうかとしていた俺は、身体の疲れに逆らうことなくその話題を早く切り上げるべく、いつものような返事を返そうかと思ったが、ふと思い立って空いていた口を閉じた。

ここで、愛していると答えたら、親父はどんな風になるんだろう。

怒り狂う?

それとも、喜んだふり?

言ってあげようかな。

どんな風になるのか、見てみたい。

だから、言ってあげるよ。

「愛しているよ。父さん」

だって、もう、疲れたんだ。

  「シン・・・・タ・・・・」

そんなに震えなくてもいいのに。

疲れすぎたんだよ。

あなたの本心を知ってもなお、貴方を愛して、そして戯言に振り回される日々が。

  「俺の、返事はそんなに嫌だった?」

あなたの殺気に満ちた瞳に、毎日に睨まれるのが。

疲れたんだ。

  「イヤだな、嬉しいよ・・・」

一生懸命、嘘をつく。

予定外の言葉に、貴方は動揺を隠せないまま。

  「俺のこと嫌いだったのに?」

  「・・・・知っていたのか」

いつの間にか震えていた声は、平静を取り戻していた。

  「知っていたよ」


あなたを愛していると答えたら、

・・・あなたは、俺の感情を殺してくれるから。

終わりにしよう。

このふざけた物語を。

秘石に操られた俺の人生を。


ゆっくりと、頭につけていた鬘をはずし、親父のその冷たい瞳に視線を合わせ笑ってやった。

「あんたにとって俺は、殺したいほど憎く、そして邪魔な存在なんだろ?」

カツラをベッドから床に落とす音と共に、部屋の空気が重たいものに変わっていく。

「でも、俺は愛してるよ」

「ジャンと同じ顔で、違うお前が言うな…」

低い声で否定をする。

   「でも、愛しているんだ」

顔も、髪型もジャンそのもので、でも中身が違うから否定される。

「それを言うな!」

それでも俺は、本当にあなたを愛してしまったから。

「誰よりも、あなただけを愛して・・・」

どんなに貴方が俺を、憎んでいてもこの気持ちは奪えない。

「SILENCE!」

だから、その気持ちまでも否定されたら、俺は存在できないんだ。

「愛してる」

「When not stopping the chattering, I kill you.(そのお喋りを止めないと、私はお前を殺すよ)」

親父の口から出た殺意の篭もったその言葉に、俺は笑いながら首を横に振った。

「ダメだよ。でも、愛していることは否定しないで欲しい」

   「It will kill if wanting to die.」

すごく恐い顔で俺を見ている。

「ダメだ。それじゃ、約束が守れない」

その言葉に、すごい恐い顔だった親父の表情が少しだけ、和らいだ気がした。

   「シンタロー?」

いや、ただ驚いているだけなんだろうけど。

それでも、俺にはそんな風に映ってしまう。

   「約束だから、あんたに俺を殺させない」

あの時、親父に約束をした。

俺が、親父の代わりに『シンタロー』を殺してあげるって。

そう、約束したのを、もう忘れてしまっているのかな。

   「俺、約束だけは守るから」

枕の下に隠し持っていたナイフを取り出し、そして首元に当てた。

   「シンタロー」

一生懸命、俺にできるとびっきりの笑顔を作りながら、それをゆっくり頚動脈のある皮膚に差し込んでいく。

ぶつっと嫌な感触と音が同時に頭の中に響いてくるが、それにかまわず刃を進めていくと、身体が急に熱くなってくる。

   「今まで、生かしてくれて、ありがとう」

一気にその刃を、横に進めれば色んなものが切れて、そして肺に入り込んでくる。

咽たいが、咽ることもできない。

熱くなった身体は、流れ出るものと同時に冷たくなっていく。

一生懸命、笑顔のまま親父を見つめていると、あいつは笑っていた。

   「Good-bye. Eternal sleep.
My hated Mr. vicarious victim」


親父の最後に聞いた声


あんたらしいよ、でもさ、


よかった。


あんたに、看取ってもらえて。


最高の、幸せモノじゃん。


もう、疲れきっていたけどさ、


最後にいいことあった


別れの言葉は、酷かったけど、


もう、苦しまなくていいから


だから、気にしないさ


世界が段々霞んでいって、


真っ赤な世界が広がって、


そして暗くなった。


ああ、俺は死ねたんだ。


そして、俺はやっと“無”に帰れるのか。




続く




反省
元々は、マジックがシンタローを殺すシーンでした。
ってか、自害かよ。

りお様ごめんなさい。

なんか、違う話のように感じてしまうかもしれません。

ゴメンナサイ。
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