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「一番テーブル、極上のドイツORGANICビール追加ぁっ!!」

注文を受けた店員が、叫び声にも誓い声で注文をカウンターにいるバーテンダーに伝える。

「了解っ!!」

それに、負けじと大きな声で返すバーテンだは、ケースに臥せておいてあるジョッキを掴み、オーダーを遂行する。

「っつかーっ!!ビールなんて水だ、水っ!!男は、ウォッカを飲むもんさ!!」

客も、店員に負けじとビールを頼んだ男に野次を飛ばし、ラム酒片手に歌いだす。

ここは活気あふれる、ビールバー。

庶民に手の届く範囲でなら、世界中の酒の品揃えと言ったら同じ町の中ではダントツ一位だ。

そのお陰で、平日の夜と言うのに満席で、店先にまでテーブルやら椅子やら、酒樽を出しての宴会騒ぎ。

連日この大賑わいの原因は、客の大半が身に着けているガンマ団の軍服が答えだ。

ガンマ団本部に一番近いこの町の、一番品揃えのいいビールバー。

「兄ちゃんも飲めよ!」

この店のいいところは、店員が客から酒をおごってもらえるところにもある。

そのせいか、どんなに酷い客でも店員は決して不平不満を漏らさず、誰それかまわず公平に対応する。

その点も、この店が人気の理由だ。

他の店で、泥酔してしまい立ち入り禁止を食らってしまうぐらい酷いことをしたとしても、ここはそれを寛容に受け止めてくれる。

無条件なる愛、母の愛。

そんなうたい文句がこの店にはついている。

「じゃ、お言葉に甘えて。ごっちっす~」

四方八方ガンマ団員に囲まれるこの店で、俺は働いていた。

客から貰った、自分が今運んできたビールを一気に飲み干すと、周りから拍手喝采が起きる。

「今日は、俺のおごりだー!!もっと、飲んでくれ!!」

それに気を良くしたのか、俺に酒をくれた客がビールを追加注文。

そして、それが全て俺に来た。

給料日前だと言うのに、そんなに懐を緩めていいのかと、心配する声なんて誰も与えてはくれない。

母の愛をうたい文句にしているここの店員全て、『無情の愛』で見守るため注意なんて一切しない。

下手に注意すれば相手は軍人。

自分が殺されてしまう可能性さえあるのだ。

「兄ちゃん、相変わらずいい飲みっぷりだね!」

ただのアルバイト店員でも、ガンマ団総帥のときと同じように死が隣り合わせだとは、思いもしなかった。

いつ死ぬか分からないと思っているためか、このおごりの一杯は仕事中であろうが、うまい!

人生後の酒になるかも、なんて無意識に思っているのかもしれない。

「さ、もう一杯!」

喉を潤すその独特な喉越しと、口の中に残るホイップのほのかな香りと、麦のにが甘いこの味わい。

勧められるまま、ジョッキを空けていく。

「よし、仕切りなおしで乾杯だ!!」

「おう、何に乾杯だ?」

「この兄ちゃんの、飲みっぷりに!」

グラスのぶつかり合う音が鳴り響気渡る、そんな騒音の中に俺はいた。

「兄ちゃん、おかわりだ!たっぷりなみなみ頼むぜ!」

「了解!」

あれから、一年がたった。

もう、一年。

まだ、一年。

やっと、一年。

ここに、俺は確かにいる。





「おつまみ、追加~」

「了解!」

活気あふれるビールバーで、注文どおりに多種多様なビールを運び、たまにお客と一緒にバカ騒ぎをしては、ここでの生活を謳歌しているつもりだ。

別の奴から見たら、投げやりだと言われるかもしれない。

「・・・・・・・・で、その時びっくりしたぜ。何せ小銃片手によ」

ジョッキを片手に客達が話す内容のほとんどが、女と仕事。

未だにあの人の場所に帰りたいのか、それともあの人のことを知りたいのか、俺はついついお客の会話に耳を傾けていた。

仕事が終わり、自由になる時間をお酒と言う娯楽のため、ここには連日かなりの人数が訪れては、現在のガンマ団の内部について話している。

それが、ありがたいとさえ思ってしまう自分にあきれ返ってしまう。

お酒の力も借りてか、かなりの声量で話すものだから敵国のスパイでも、この店は大層いい商店だろう。

うまくいけば、作戦の計画を知ることができる。

だが、そこはガンマ団員がよく訪れるお店なだけあって、店の半分が防音ガラスで区切らせており、そこに団員達を座らせている。

のこりのスペースと店の外まではみ出して飲むのは、団員といっても傭兵以下の者か町の住民達。

仕切りをつけた理由としては、機密情報漏洩防止と、団員が町民に暴力を振るうことがないよう、あえて区切らせ出入り口も別々にしている。

肩が触れ合っただけでも、下手したら殺されるといわれている為だ。

団員専用スペースでの給仕は、店長に信頼された俺と後は先輩が数名。

ある程度格闘ができるのも、そこの給仕に選ばれた理由だ。

血の気が多いせいか、団員同士での喧嘩も日常茶飯事。

こんなに、ガンマ団員が大勢いるところで仕事をしている俺だが、未だ俺がシンタローだとばれたことは無い。

白髪のままの髪と、ばれないよう眼鏡をかけていたことが功をそうしたのか、誰にも気づかれることなくここで働いている。

それだけ、俺の印象と言うものは薄かったのかな・・・・なんて、暗く考えたりもする。

あれから、一度もはさみを入れていない髪は少し伸びてしまったため、今は後ろであの人の瞳のような青色のリボンで一まとめにしている。

「にーちゃん、おーきゃわりー」

「了解!」

「ぎゃはは、なんだその声はよう!」

「うるしぇー」

結局、ひどい病気なんて一つもなかった。

ちょっとした病気での吐血。

少し安静にし、点滴と薬を飲んで完治してしまった。

あの、キンタローがそんなミスを犯すはずが無い。

考えられるのは、その検査を行ったであろう高松。

あいつは、グンマのしていたことをもしかしたら知っていたのかもしれない。

そして、彼を守るためキンタローの検査を操作し、グンマに非が無いようにしたのだろう。

それを今わかったからと言って、何かが変わるわけでもない。

この髪の色が今すぐ戻るわけでもない。

『返せ』と言ってすぐ返せることのできないものを、俺はなくしてしまった。

「シンタロー総帥がさ・・・」

また、この話だ。

ばれないように小さく溜息をつきながら、空になったジョッキを片付けていく。

最近のガンマ団員お気に入りの話は、ここ最近『髪の色が戻ったシンタロー総帥』についてだ。

最初、その話を耳にしたときは驚きを隠せなかったが、よくよく考えてみるとあの人が『あいつ(オリジナル)』を手元に置くように手回ししたのは予想ができる。

どうやら、俺が早急に進めたコタローを総帥にするといった宣言は、いとも簡単に撤回されたらしい。

シンタロー総帥が静養のため、一年近く職を離れていた間、代行総帥はあの人が勤めたと聞いている。

この場所で、その情報を仕入れた。

「おーい!兄ちゃん、ビール追加」

「はい、ただいま!」


今日も顔を紅く染め、ほろ酔い状態の団員がビールを浴びるように飲んでいる。

酔えば口が軽くなることは、とてもありがたい。

どんなに、あの場所から離れたといっても、俺はあの人のことを知りたかった。

どんな、些細な情報でも今の俺にとっては、とても大きなもの。

だって、俺は未だにあの人を、好きだから。






「おつかれ~」

「お疲れ様です」

仕事が終わり、仲間達と別れ一人で夜道を歩いていた。

向かう先は、一月ほど前から借りている今の自分の部屋に帰るためだ。

石畳でできた古い道の脇には、制服のまま寝こけている奴、座ったまま定まった角度など決まっていないのかふらふらと視線を動かす奴、嘔吐したまま寝ている奴。

仕事で、心身ともに疲れているのが伺える。

暫く歩いていると、建物の隙間からやっと目的のアパートメントハウスが見えた。

少し古風な赤レンガの建物は、この時間帯は闇色に染まり、昼間見せる暖かい表情ではなくどこか恐怖を感じさせる表情に変わっていた。

「お、ビール屋の兄ちゃん」

あと少しで帰り着くというときに、自分にかかった声は酔っ払い特有のイントネーション。

ああ、今日は最悪だ。

「ひゃ、ひー。なあ、なあ、俺の超ぉぉー秘密な内緒話、聞いてくれ~」

肩に腕を回してくる酔っ払い。

やはりこいつも、ガンマ団員の制服を身に着けている。

「お客さん、タクシー呼びましょうか?」
やんわりと断るため、帰ったほうがいいと遠まわしで言ってみたが、酔っ払いには通じなかったようでそいつは「俺に逆らうと、殺すぞ~」と銃を取り出して脅してきた。

確かにここは、ガンマ団本部麓の町。

いたるところに監視カメラが着いている。

誰かが言っていたが、ガンマ団に逆らった住民で殺された奴がいたとか、逆らったら後日監視カメラの映像を証拠に捕まったなど、あまりよくない噂を耳にしていたため目立たないよう今日まで過ごしてきた。

酔っ払いに絡まれることもしばしばで、そうなってしまうと朝まで話し相手として付き合わされる羽目になる。

腕時計を見ると、もうすぐ夜明けの時刻になろうとしている。

話を聞いていたら、ほとんど睡眠時間が取れないまま、仕事をしなければない状態似になってしまうことが簡単に想像できる。

今日は最悪だと心の中で悪態をつき、その酔っ払いの内緒話を聞くことにした。

「俺さ、見ちゃったんだよね。今の総帥、偽者だってとこ~」

その言葉に、心の中で驚きの声をあげていた。

どこからどう見ても、冴えないオッサンがそんなことを知っているという、ありえない現実。

腕章を見ても、あまり階級はそんなに上のほうではない男が、あの機密事項を知っている。

そこまでガンマ団は落ちたはずは無いだろう。

それとも、こいつはスパイか何か?

だが、独特の気配も感じられず、自分をつま先から頭のてっぺんまで観察しているシンタローの視線になど全く気づかず、話続けた。

どうして一族と、一握りの幹部しか知らないことをこいつが知っているのか。

「お客さん、飲みすぎですよ。さ、帰りましょう?」

これ以上話を聞いてはいけないと、頭の中で警告が鳴り響く。

「あんだ、聞けないなら、しけいだ~。きけ~」

ああ、最悪だ。

「聞いちゃったのだよね。マジック様が総帥を『ジャン』って呼んでいたの」

どこか得意げに話すその内容は、本来一般人である俺に話していいはずがない。

もし、ここでカメラに撮られていたらどうなるか。

確実にこのおっさんは、殺される。

「きいていんのか?もう一回言うぜ?今のそーすいは・・・・」

「黙っていろ、おっさん!死にてえのか!?」
とっさに、そいつの口を押さえそれ以上喋らないようにする。

それに嫌な顔をしているが、俺が言っている意味が分かったのだろう、その男は段々顔色が青くなっていく。

「あ、あ、俺が言ったこと誰にも言うな・・・いや、ここで始末して、ああ、だめだ。カメラが、カメラが・・・・」

体を震わせながら、口から出てくる言葉はところどころ切れて聞き取りづらい。

だが、恐怖に怯えていることは明確だ。

ちらりと、カメラのほうに視線をやる。

先ほどまでは、まったく違う方角にむいていたカメラが全てこちらの方にレンズを向けている。

ああ、これではもう監視部隊の方が警備部隊に連絡を入れ、動き始めているだろう。

俺も、このままここにいてはいけない。

泣きじゃくり、震えるオッサンの腕を自分の肩からはずし、近くの路地裏に向かうため俺は走ろうとした。

「ま、まってくれ!俺は、お前に脅された!だから喋った!そうだ、その通りだ!」

「な・・・」

くそ!

自分を守るため俺を陥れようって魂胆だ。

そんなことしたって、助からないことは明確だというのに。

「ようし、反逆者!俺が成敗してやる!」

あのオッサンは、ゆらゆらと揺れながら立ち上がり、そして胸元から小銃震える手で取り出し、その照準を俺の頭に合わせ、にたりと気味の悪い笑みを浮かべた。

「ってめ・・・」

「ひゃはは、反逆者は死ね、死ね、死ね、反逆し―」




― 一瞬、世界が光に包まれた ―









「まったく、無粋だね」

聞き覚えのある声が聞こえ、俺はやっと目の前の光景を認識することができた。

あのおっさんがいたところだけが、ぽっかりと穴が開いており、数メートルのクレーターが出来上がっていた。

「民間人に罪をなすりつけようとしてまで、保身に走るとは・・・・。まったく嘆かわしい。ああ、君、大丈夫かい?」

段々近づいてくる、金髪のあの人がピンクのジャケットに身を包み、俺に笑いかけている。

胸が締め付けられるこの痛み。

「あ・・・・はい、大丈夫です」

あんたには、感じることができないんだろうな。

「そうか、よかった。本当に、こんな無能な部下がいたなんて、信じられないよ。シンちゃんが可愛そうだよ。君も・・・・そう思うだろう?」

いつの間にか、シンタロー人形(16分の1サイズ)を取り出しそれをいじりながら俺に同意を求めてくる。

ここでどう返せというんだ?

「ふふふ、もしかしてびっくりしちゃって声が出ないのかな?それとも、殺されるとでも思ってる?安心して、私は愛しいシンタローに有害なものしか、殺さないから」

君はその対象外だよと、微笑むその顔が胸に突き刺さる。

俺の顔を見ても、誰か分からないそれが、胸に大きな痛みを与える。

ただ、色が違うだけなのに。

「そうですか、ありがとうございます」

小さくお辞儀をすると、あの人は俺に興味がなくなったのか視線を違うところにやり、そして右手を上に上げ左右に振り出した。

いや、これは誰かに意思表示をしている。

視線の方向を辿ると、赤い服が視界に入ってきた。

黒い長髪を風になびかせ、どうどうと歩くその姿はまさしく大軍のトップたる威厳を漂わせていた。

元々猫背のあいつが、あの歩きをマスターするのにために、静養期間が一年近くかかったんだろうな。

「シンちゃん!パパね、頑張って悪い奴をやっつけたよ!」

「ったく、何やってんだよ!こんな街中に大きな穴あけやがって、このクソオヤジ!!」

「ひどい、シンちゃん、酷いよ!ほら、民間人だって助けたんだからパパを褒めて!」

「ああ、さいでっか!おら、とっとと帰るぞ!」

赤い男が、あの人の耳を引っ張りながら引きずるように去っていった。

ただ残されたのは、俺と、そして事故処理に当たるガンマ団の隊員数名。

「マジック様も相変わらずだな」

「ああ、総帥もまんざらでもないみたいだな」

「けどよ、一時髪の毛脱色した総帥が引退宣言したときは驚いたな?」

「まあ、すぐにマジック様が『シンちゃんと喧嘩して、もう、あの子反抗期なのか髪の毛を白にしちゃって・・・』て、親子喧嘩で引退だなんだって大騒ぎしてさ」

団員達の噂話が自然と耳に入る。

もう、何度も聞いてきたその会話。

知っている。

あの人は、あの時を待っていたことを。

なあ、ジャン。

幸せだろ?

だって、あんたもあの人のこと、


 愛していたんだろ?





あの男が消された夜の騒音は、次の日にはニュースにもなってはいたが、何も変哲も無い『ガス爆発によりガンマ団員死者1名』と言う、たまに聞くようなたったそれだけの内容で片付けられた。

俺は何度かガンマ団に呼ばれ、聞いた話がどれだけ真実味の無い嘘であるか、何度も何度もジャンとあの人の仲睦まじい映像を見させられ説明を受けた。

一週間ほどその生活が続き、ノイローゼ気味になりかけていた俺は、命が惜しいから公言しないと約束し誓約書にサインをした後、解放された。

あれから、2週間がたち穴も塞がった。

俺は、なんとか元の生活に戻りつつあった。

「さてと、あとは店長の依頼が残ってんな・・・」

街の中で店の買出しをしていた俺は、店長からの注文であまり利用しない酒屋で上質のワインを買いに向かっていた。

向かう途中の路上で子供達が走り回り、そしてこけてはまた走っていた。

それを遠めで、大人たちが笑いながら眺めている。

誰も急ぎ足で動いていない。

平和な生活だ。

そして、目的の店にたどり着いた。

重厚な樹のドアが、ここのお店のランクを現している。

扉に手をかける前に、中からドアを開けられちょっと驚いた。

「いらっしゃいませ」

上品な声に、優雅なお辞儀をする店員が迎えてくれた。

結構値が張る買い物だなと内心思いながら、店内に会わない服装の俺を嫌な顔一つせず接客をする店員に関心をし、目当てのワインを包装してもらうのをあとは待つだけとなった。

「おや、君は?」

急にかけられた声に、びっくりして体が少し飛んでしまった。

しかも、あの人の声。

恐る恐る振り返ると、この前とは違う淡いブルーのジャケットに身を包み、あの赤い服の男性と一緒に居た。

「元気だったかい?」

今まで店内の客は俺一人だったから気にもしなかったが、あの人がいると自分の服装が気になってしまう。

上質なスーツはこの店内の雰囲気に合っている。

だが、俺は薄汚れたTシャツに破れかけたジーンズ。

場に合わない。

「ええ、おかげさまで」

無難な言葉でその場をやり過ごす。

ちらりと後ろにいる赤い服の男を見ると、つまらなそうに店内のワインを手にとっては棚に戻していた。

「マジック様、お久しぶりです」

店長と思われる男が、人のよさそうな笑みで近づいてきた。

「ああ、久しぶりだね」

俺から興味がその店長のほうに向いたおかげで、俺との会話がそこで終わった。

「あれから、どうですか?」

「残念なことに、あれから1度しか行っていないんだよ」

「それはそれは、是非今度ご一緒に・・・」

優雅さが身についている者同士の会話は、まるで一幅の絵になる美しさを醸し出していた。

俺の接客をしてくれていた店員から品物を受け取り、俺は軽く会釈をして店を出るためにドアのほうに向かって歩き始めた。

「おい、まてよ」

急に呼び止められ、俺は声のした方に顔を向けると、あの赤い服を着た男が腕を組み俺を睨んでいた。

「何か、御用ですか?」

ちょっと怖気づいた振りをしながら、俺はその視線から目をそらすことなく見つめていた。

すると、相手は小さな溜息をつきまだ店長と話をしているあの人のほうをちらりと見ると、また俺のほうに視線を戻した。

「正直に言うぞ?」

それでもいいのかと、向こうには聞こえないほどの小さな声で聞いてきた。

それに、首かしげながら頷いた。




「お前は、いつまで続けるつもりだ?」



空気が僅かだが揺れた。

頬に何かいたいものを感じる。

あの人がこちらを見ているのだろう、視線がすごく痛い。

少しあの人のほうに視線を向けると、店長と会話はしているものの視線だけは俺を捕らえていた。

「何を言っているのか・・・」

視線を戻し、苦笑しながら軽くお辞儀をして再度ドアのほうに体を向けた。

「あの方をこれ以上悲しませるのか?お前はそれでいいのか?」

俺の背にかかる嘘の言葉に、笑みが自然と漏れる。

「ですから、一体何のことを言っているのか分かりません」

それだけを言い残し、俺はその店から出た。


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