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h

「なぁなぁ、シンちゃん」

人の膝を枕にしている男が話し掛けてくる。
動こうにも動けず、落とそうにも落とせず。
少し不機嫌になる。

「んだよ、おっさん」

見下ろして答える。
苦笑したハーレムが

「…返答に愛がねぇなぁ」

当たり前だ。
今の時間仕事しているはずの俺がココにいるのは、なぜだ?
答えは、拉致られたからだ。

「うるせぇ、拉致られた人間が拉致った相手に愛込めて話してたら変だろ」

その体勢もどうかと思います。
遠くから小声で聞こえる。
聞こえないふりをした。

「俺じゃないだろ。つーか、愛しの叔父様にちょっとは愛情見せんかい」

確かに、俺を拉致ったのはハーレムじゃない。
ハーレムの部下だ。
部屋の隅でこっちを見ている三人だ。
でも、命令したのはあんただろ?

「愛情欲しければ拉致るな。キンタローは最近ハーレム見るだけで警戒するようになったぞ」

甥に警戒される叔父なんてあんたくらいだ。
あぁ、帰ったらまたキンタローに怒られる。

「警戒してもさらわれるようじゃまだまだだな」

楽しそうに笑って。
はぁ、とわざとらしくため息を吐く。
もちろん、ハーレムはそんなの気にしない。

「俺の今日の仕事、どうしてくれんの?」

今日もたくさんの書類を処理するはずだったのに。
予定は未定って奴だろうか。

「良いんじゃねぇ?一日くらいさぼっても。お前は急ぎすぎ、頑張り過ぎなんだよ。焦らずゆっくりで良いんだ」

喋り方の割に、優しい言葉。
結局あんた、俺を心配してくれてたわけ?
嬉しくて、ちょと笑う。

「…何、笑ってんだよ」

少し眉を寄せたハーレムが聞いてくる。
下から伸びてきた手が俺の頬に触れる。

「別に~?」

笑いながら答える。
その後しばらく、くだらない言い合いを続けた。



なぁ、ハーレム。
心配掛けてごめん。
そんで、ありがとう。
おまけで、…愛してる。

調子に乗るから、全部絶対言葉にはしないけど。





「何で、あぁもキレイに俺たちの存在消せるわけ?」
「仕方あるまい。俺たちが移動するしかないだろ」
「…仲が良くて、良い事だ」
「…俺たち、本当にお人好し」

三つのため息が響いた。


END


まわりを見ないカップル。

ハレ様は本当はすごい優しい人なんだけど、その優しさが不器用で。
シンちゃんはもう、性格が不器用。

いや、もうよくわからん。

06.4/9
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hs
「シンタロー」

久しぶりの休みを寛いでいたところだった。





シンタローは、休みを過ごす場所としてハーレムの部屋を選んだ。
まぁ、恋人と過ごす休日も良いし、つぅか過ごしたいし。
ハーレムの部屋のソファーに座り、雑誌をペラペラ捲っていた。
その間ハーレムは起きたばかりで頭が正常に働かないらしくボーっとテレビを見ていた。
シンタローの横に座っているのに起きてんだか寝てんだかよくわからない。
何を話すわけでもないのにお互いがリラックスして過ごせる時間というのは貴重である。
シンタローはそんな時間が好きだった。
そんでそんな時間を過ごせる相手が大好きだった。
調子に乗るからあまり言ってはやらないが。
そのまま少し時間が過ぎた頃、ハーレムに名を呼ばれた(冒頭)。
何?と雑誌を読みながら返事を返す。
ハーレムは気にする様子も見せず、

「今やりたい事あんだけどよ、協力しろ」

やりたい事?ハーレムに顔を向ければハーレムはすでにシンタローを見ていた。
予想以上に真剣な目をしている。
やりたい事が何なのかは知らないが、大事な事なのだろうと思い、

「俺にできて、なおかつ金がかからないなら」

金をちゃんと出しておく辺りが細かい。
ハーレムは

「金は一円もかからないうえにお前にしかできない」

キッパリと言い切った。
じゃあ、協力してやろうと、何するんだ?と雑誌をテーブルに置き尋ねる。
真剣な顔のまま、ハーレムは予想外の事を言いだした。


「いちゃつきてぇ」


は?と言う事も出来ずにしばし呆然。
真剣な顔と真剣な目で。
やりたい事がいちゃつきたい?

「おっさん、早く夢の世界から出てこい」

頬をペチペチ叩く。
叩いてくるシンタローの手を握り、

「起きてる。真面目」

なお質が悪い。
寝起き故のぼけなのか、はたまたハーレム自身がこうゆうキャラなのか。
頭痛を覚える頭で考える。

「何だよ、光栄に思えよ、シンタロー。俺といちゃつけんのはお前だけって言ってんだぜ?」

…確かにそうだ。
呆気にとられていた感情が恥ずかしいような嬉しいような。
とりあえず手を放してもらいたいと感じるのは逃げ出したいと感じるが故なのだろうか。

「…何したいんだよ」

近づいてくる顔から引きながら尋ねる。
真剣な顔はどこに行ったのか悪戯好きの顔のハーレム。

「だーかーら、いちゃつき」

掴んだ手を一気にひっぱる。
引っ張られるままに抵抗する間もなく簡単に腕の中。
離れようとするが後頭部は大きな手が押さえている。

「にがさねぇぞ~、やるって言っただろ」

あぁ、逃げられない、絶対に。
発言一つで確証した。
逃げれたとしても追われる。
所構わず人構わず思いを実行するに決まってる。
なら二人だけしかいないこの空間で叶えてやった方が安全だ。
シンタローにとって。
諦めて抵抗をやめる。
自らハーレムの背に腕を回す。
おっ。と嬉しそうな呟きが聞こえた。

「人間素直が一番だよなぁ、シンちゃん♪」

あまりにも嬉しそうで幸せそうで。
休日だし。
好きだし。
それで良いか、と頷く。
素直になったというより、諦めた、の方が言葉的にはしっくりくるが。
ハーレムが満足気なのでどうでもよくなる。

「愛してるぜ、シンタロー」

額にキスをしながらいわれ、顔が熱くなる。
大きな手がシンタローの髪を優しく梳く。
気持ち良く感じ目を閉じる。
ネコが甘えるように身を寄せる。
嬉しそうな顔の後に渋い顔。

「…やりにくい」

シンタローを抱き締めていた腕を放す。
不思議に思いながらもシンタローも放す。
ハーレムは立ち上がりテーブルをずらす。
今までテーブルがあった場所に足を伸ばし、ソファーを背もたれにして座る。
ソファーに座ったままのシンタローを見て、自分の太股を叩く。

「お前の特等席」

キッパリとあっさりと。
はい?と目を白黒させる。
ほーら。と手を引っ張られる。
ソファーから立ち、座るハーレムを見つめて呆然。

「座れと?」
「またいで座れよ」

呼吸置かずに言われた。
どんなプレイだっ!と叫びたくなるがハーレムは至って真面目だ。
恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
またいで座る、むかい合わせで?
ぐるぐると考え込む。
いつまでもたっていて座らないシンタローの手をクイクイと引く。
早く、と目で訴えられている。
逃げたい気持ちを必死で耐える。




真っ赤な顔でシンタローは座った。

「よしよし、いい眺めだ」

赤い顔で睨み付けられても可愛いだけで、ハーレムの顔には笑みが浮かぶ。
真っ赤な頬に唇を寄せて、そのまま唇も掠め取る。
片手は髪に、もう一方は腰に回して引き寄せる。
シンタローは赤い顔のまま、ハーレムの肩に手を置いている。
自分ばかり赤くなっていて悔しいのか、少し口を尖らせている。
それもハーレムは可愛くて仕方ないと言った顔で見ている。

「…いつまでやってんの、これ?」

早くやめたい思いをこめるが無駄そうだ。
ハーレムに止める気などない。
シンタローの髪に口付けながら、飽きるまで。と一言。
わざとらしくため息をつくが気にする様子もない。
むぅと唇を尖らしたまま額に唇を押しつける。
瞬きを繰り返すハーレムを見て満足したのか、少し笑みを浮かべる。
首に腕を回し、


「愛してるよ、ハーレム」


耳元で囁き、そのまま顔をうめた。
シンタローの体を抱き締めて、ハーレムはこれ以上無い程の笑顔を浮かべていた。





愛しい人との甘い休日。
何するわけでもなくて、ただ甘え合うのも悪くないでしょ?


END


拍手にラブラブな二人をお願いします。的な事を書いてくれた方が居たんで書いてみました。
どうなのかは微妙だけど。
いちゃついてますか、これ?

06.3/4


hs
現在、2月13日午後11:30.
シンタローは部屋のベッドの上で寝返りを繰り返していた。
明日は、ヴァレンタインデーだ。
そして、…誕生日だ。
けれど、シンタローは明日も仕事だ。
ここの所もずっと仕事で。
ぶっちゃけ、大事な人の誕生日のプレゼントも。
ヴァレンタインのチョコレートも。
何もない。

「…そもそも、おっさんはどこにいんだよ」

独り言。
ハーレムはと言えば現在どこにいるのかすら不明。
結構まめに連絡をくれていたのに、2月になってからは連絡がない。
最近は忙しかったので、連絡がなくても(さびしかったが)気にする余裕がなかった。
なんとなく見たカレンダーに、印がついていて、あぁ、そんな季節か。と実感。
ごろごろベッドの上を寝返りをしながらつらつらと考え事をしていた。
徐々に眠くなる。
時計の針が、12時をさした。
日付が進み、2月14日になった。
うとうととまぶたが重くなる。
あと少しで、眠る。
そのとき、

バタンッ!!

大きい音がして、驚いたシンタローが跳ね起きる。
何が起こった!?
ベッドの上でなぜか正座をしてきょろきょろとあたりを見渡す。

ドカッ!

再び大きな音がした。
そしてシンタローの寝室のドアが飛んでった。
驚いて、飛んでいったドアを見つめる。
どかどかと入ってきた一人の男。

「な~に正座してんだ、お前」

眩しいほどの金髪。
楽しそうな顔をしたハーレムが立っていた。
シンタローは呆然と目の前の男を見詰める。
顔を見るのは一月半ぶり。
声を聞くのは二週間ぶり。
全く行動の読めない手のかかる叔父。
大切で大事で大好きな恋人。
けど、この訪問は、何?
何を言ったら良いのか全く分からない。
そもそもドアを壊す(飛ばす)必要がわからない。
何からいって良いのか分からず、ただただハーレムを見ていた。

「シンタロー、今日は何の日だ?」

ベッドの近くまでやって来たハーレムが腰を曲げてシンタローの顔を見る。
今日?シンタローが繰り返すと、おぉ、と言いながら頷く。
ハーレムを指差して、誕生日。といったシンタロー。
そうだなぁ。と笑いながらよしよしと頭を撫でる。
後は?と続いて聞かれ、ヴァレンタイン。と答える。

「よしよし、わかってんじゃねぇか」

嬉しそうなハーレム。
わけが分からず首を傾げるシンタロー。
長い髪がさらりと揺れる。
曲げていた腰を伸ばし、ハーレムはあたりを見渡す。
ベッドの近くに置いてあるメモ帳とペンを持ち何か書いている。
わけが分からないシンタローはじっとハーレムを見つめる。
次第に、眠気が復活してくる。
うとうとと舟をこぎ始める。

「…んだ、シンタロー。ねみぃのか?」

何か書き終えたらしいハーレムが近づいてくる。
ベッドの正座したまま舟をこいでいるシンタローに苦笑している。
たりめぇだ、アホ。今何時だと思ってんだ。
言いたいのに外に出ていない。
むにゃむにゃとシンタローが言っている。

「ほれ、ちゃんと寝ろ」

ベッドに押されて、横になる。
ハーレムはベッドの端に座っている。
ぽんぽんとシンタローを寝かしつけるように叩く。
なんだろう、何を考えてるんだろう。
シンタローはぼんやりとした頭で考える。
けれど、眠くて頭はさっぱり働かない。
働いていたとしても、行動が読めない。
さっさと寝ろとでも言うように、手で眼が隠される。
視界が暗くなると、よりいっそう眠くて堪らない。
…ね、むい。
声にならない声でそう言い、シンタローの意識はなくなった。


「寝た、な」


ニヤリと、悪戯っ子のような顔で笑ったハーレムを見たものは、いない。




シンタローが次に眼を覚ましたのは明らかに自分の部屋ではなかった。
ぼーっとしばらく考え込む。
けれど結論は出ない。

「…なんで?」

寝ていた部屋には見覚えがある。
けれど、そこにいる理由が分からない。
自分はソコに行っていない。
行った覚えがない。

「お、起きたな」

ガシガシと頭を拭きながらハーレムが現れた。
部屋に、見覚えがあった。
そう、シンタローはこの部屋を知っている。
昔から、よく知っている。
ハーレムは朝からシャワーを浴びていたらしい。

「…どーいうことだ、おっさん」

睨みつける。
ハーレムはなんてことなさそうな顔で近づいてくる。
上半身は裸で、ジーンズを穿いて、頭を拭きながら。

「今日は何の日だ?」

寝る前にされた会話と同じ。
首をかしげながら、

「誕生日、とヴァレンタイン」

そうそう。
また笑いながら頭を撫でられる。
ソレを払って、睨みつける。
何で、俺はココにいるんだよ。
とでも言いたげ(おそらく言いたい)に。
ココは、ハーレムの飛行船の中のハーレムの部屋だ。
シンタローは自分で歩いてきていない。
では、どうして?

「俺が連れてきたからに決まってんだろ」

あっさりと。
さらりと。
何が不満だ?といいたげな顔で。

「だー!!何で、つれてきてんだよ!!」

俺は今日も仕事なんだよ!!
叫ぶシンタロー。
不満げな顔になるハーレム。
よいしょ。と言いながらシンタローを抱きしめる。

「おっさん!誤魔化すなよ!!」

抱きしめられてキスされて。
いつも流されてばかりいる。
それじゃ、駄目だ!
今日のシンタローはそう思っているらしい。

「…特別な日だぜ?」
「は?」
「今日は特別な日だぜ?」

シンタローの事を抱きしめて。
子供がすねているような口調で言うハーレム。
確かに、特別な日だ。
ソレは間違っていない。
顔が見えないから、顔を見ようと思って体を動かす。
けれど、ソレを拒否するように力が込められる。
シンタローがハーレムの顔を見るのは不可能のようだ。

「ハーレム?」
「今日くらい…」

ん?
ぼそぼそとしゃべるハーレム。
いつもの威風堂々とした態度ではなくて。
不思議そうにシンタローは待っていた。
ふかーく、息を吐いて。


「今日くらい、お前を独占しても良いだろ」


すねた様な口調。
照れたような口調。
抱きしめられたまま硬直しているシンタロー。
はっきり言って、恥ずかしい事この上ない。
でも、嬉しいと思ってしまうのはきっと、自分がこいつを愛してるから。
何も言わない(言えない?)シンタロー。

「心配すんな、書置きは残してきてやった」

堂々と自信を持って言い放つハーレム。
問題はソコじゃない。
とも思ったが、なんだか結局は許してしまうシンタローなのだ。
甘やかしてるかなぁ…。なんて思うが、仕方ない。

「…しょうがねぇおっさんだな、ハーレムは」

はぁ、と息を吐いて、笑ってやる。
もとより笑みは、自然と浮かんでしまったものなのだが。
仕事がある。
きっとキンタローは怒ってる。
それでも、愛しい人と一緒にいたいと思うのは当然だろ?


「誕生日おめでとう、ハーレム」


背中に手を回して、笑って。
最愛の人に祝福の言葉を。









「甘い監禁だよな」
「…あぁ」
特戦の残り三人はため息をつく。
ヴァレンタインだと言うのに、一日中空の上。
可愛い女の子をナンパにもいけやしない。
それよりなにより、
「今年はシンタロー様からチョコもらえねぇんだな」
「おいしいから楽しみだったのだがな」
「…仕方ないな」
甘い束縛と言う名の監禁。
ついでに言えば、ガンマ団総帥の誘拐だ。
すごい事をやらかしている。
けれど、それでも。
「俺らってお人よしだよな」
「そうだな」
「仕方ないだろう」
手のかかるラブラブな上司二人が好きなのだから仕方ない。
おそらく本部からの無線が入っているだろう。
場所を知られないために先ほど連絡を絶ったので本当の所は分からない。
自分たちにもお咎めが来るかもしれない。
「ま、誕生日だし」
「この苦労はプレゼントと言う事にしよう」
「…しかし」
「言うな」
どこに行ったら良いのだろう。
ガンマ団の支部がないところ。
二人の邪魔が入らないところ。
「ま、邪魔が入りそうだったら」
「俺たちで排除」
「するしかないな」

上司の独占欲で苦労する部下三人。
けれど、彼らは笑った。


誕生日おめでとうございます、隊長。








「…キンタロー?シンタローはどうしたんだい?」

ガンマ団本部、総帥シンタローの部屋。
サービスがシンタローの部屋を訪れていた。
けれど中にいたのはキンタローで。
寝室のドアは壊れていて、紙を握ったキンタローが立っていた。
わなわなと震えている。

「…叔父貴」

持っていた紙をサービスに渡し、キンタローは走っていく。
様子からして、シンタローはいないらしい。
そして、紙に書かれた文字を見て納得する。
おそらく向かったのは無線室。
無線をかけるのは特戦の飛行船。
けれどおそらく繋がらないだろうな。

「やってくれたね、ハーレム」

せっかくシンタローに会いに帰ってきたと言うのに。
双子の兄に先を越されてしまった。
しかも、こっちの行動が珍しく読まれていた事が憎らしい。




『シンタローつれてく
 そのうち返す

 ざまぁみやがれ、サービス』



END


はい。
2006年隊長の誕生日&ヴァレンタインです。
ねぇ、どうなのかしら、コレ。
まぁ、いつも通りの駄文。
ま、ハーレムとシンタローはイチャイチャしてると思いますよ。
ガンマ団本部では総帥にチョコを渡したかった奴らが大騒ぎ。
渡されたかった奴らも大騒ぎ。
グンちゃんあたりは
「ま、チョコは長持ちするしね」
とかいってしまってるかもしれませんね。

題名に意味はありません。
甘い幸せ?
捺樹は英語は赤点を取った女ですからね。
単語を繰り返すくらいしか出来ません。

06.2/13


hh
シンタローは、どうしようもなく強がりで。
意地っ張りで、その上わがままで。
そのくせ、誰よりも泣き虫な弱い奴。
それでも人一倍、無駄に我慢強い。
そして、誰よりも強い心を持っている、そんな奴。

きっと誰もがシンタローを愛して。
誰もが泣いて欲しくないと願ってしまう。
だから、シンタローはいつも泣かない。
いつも、泣けない。
一人で全てを抱え込む。
一人で我慢して、我慢して我慢して。
表情を殺して、辛さや悲しみが過ぎるのを待つ。


俺は、泣いているシンタローを見るよりも、そっちの方が辛いと感じる。







団員が死んだのだと知らせを聞いた。
いつもは聞き流すそんな情報。
ただ、死んだ団員の名前に、俺は覚えがあった。

『その人、俺を特別扱いしなくてさ。その人はいつも普通に接してくれる人なんだ』

数年前、まだ団員だったシンタローがそう笑って話した奴だった。
そいつが死んだと、知らせが入った。
誰が死のうと俺には関係ねぇし。
そいつとだって会って話をした事があるわけでもない。
けれど、シンタローが今、悲しみの中にいるのだと思うといてもたってもいられなくなった。
おそらくアイツは涙一つこぼさず、いつもと同じように仕事をしてるだろう。
多くの者がシンタローの異変に気づかないかもしれない。
近しい人間は気がつくかもしれない。
けど、気づいたとしても何も言わないかもしれない。
言ったとしてもシンタローは大丈夫だと笑うだろう。
周りの人間を安心させるためだけに。
ただその辛さを隠して笑う。

「…大馬鹿だな」

廊下を早足で歩きながら呟いた。
辛いなら、辛いと泣けば良いのに。
悲しいなら、悲しいと叫べば良いのに。
無理をして、一人で立つ必要など無いのに。








「ハーレム様…」

総帥室へ向かう廊下を歩いていた。
ティラミスが秘書室から声をかけてきた。
足を止めて奴を見る。

「シンタロー様は総帥室にいらっしゃいますので」
「どうにかしていただけますか?」

ティラミスの横からチョコレートロマンスが顔を出す。
こいつらは、シンタローの異変に気がついているらしい。

「俺たちには、無理するので」
「今日は仕事をしていなくても大丈夫ですから」

おまけに手回しも早い。
優秀な奴らだ。
手をひらひら振って総帥室へ向かって歩き出した。








「邪魔するぜ」

机に向かって黙々と仕事をするシンタローが眼に入った。
思わずため息をつく。

「シンタロー」

名前を呼ぶと顔を上げるシンタロー。
いつもと変わらない顔。
なんら様子の変わらないシンタロー。
隠しているつもりだろうな。
一目見ただけなら何の変化も普通はわからないだろう。
残念ながらシンタローの嘘は俺にはきかない。


「…隠してるつもりなら無駄だぜ」


分かってんだろ?
お前の事なら何でもお見通しなんだよ。
シンタローは視線を下に向ける。
ゆっくりとシンタローへ近づく。
シンタローの横に移動して、ひざを着く。
下から覗き込んだシンタローの顔は今にも泣き出しそうで。
それでも、必死に泣かないように耐えている。
その耐えている顔を見るのが辛くて立ち上がった。
黒い髪に手を伸ばして、ゆっくりと梳く。


「泣けよ。…泣いて良いんだ、シンタロー」


シンタローが俺を見上げる。
今にも泣き出しそうな顔。
シンタローを抱き上げて歩き出す。
しがみつく様に腕が首に回る。
俺の肩に顔を押し付けて、小さく肩を揺らす。








仮眠室のベッドの上にシンタローを抱いたまま座る。
小さな泣き声を聞きながらシンタローの頭を撫でる。

「…我慢、してたのに」

小さくシンタローが呟く。
肩に目を押し付けて、それでもいつもと変わらないように振舞って。
俺は、その対応の仕方に傷つく。

「俺は、そんなの頼りないか?」

シンタローの肩がぴくりと反応する。
シンタローの髪を撫でながら、俺は苦笑する。
困らせるかもしれない。
でも、言ってしまったのだから仕方ない。


「お前が泣きたいと思った時に、俺は頼れないのか?」


シンタローが顔を上げる。
眼を赤くしたシンタロー。
目元に唇を落として。


「泣きたい時には泣けよ。俺の傍では、我慢するな」


両の目元に唇を落として。
まだ流れる涙をなめて。
再びしがみ付いてくるシンタローの背を撫でて。


「一人で立つのが辛いなら、俺が支えてやるから」


お前が望むなら、誰もがそうするのだから。
俺だけじゃなくて、多くの人間がお前に支えられて生きている。
だから。
お前が辛いときくらい、お前を支えてやりたいと思う。
お前のためなら、なんでもする。
死んでも良いとも思うが、なるべくは死にたくない。
お前が俺の為に泣くのは、耐えられない。
泣くお前を支える事もできやしない。







「…ありがとう」

腕が離れていって、顔が見える。
泣き腫らした眼。
それでも笑う。
無理をした笑みではなく普通の笑み。
その笑顔が好きだけど。

「俺、お前の泣き顔も好きだぜ?」

誰もが嫌うお前の泣き顔。
誰もがお前が泣かない事を望む。
泣かないにこした事は無いが、俺はその顔が嫌いだと思った事は無い。
不思議そうなシンタローに、口付けて


「泣くのは、生きてる証拠だからな」


生きているから、泣いたり笑ったりするんだ。
だから、俺はお前の泣き顔も好きだぜ。

「俺の前では、我慢するなよ」

もう一度口付けて。
強く強く抱きしめる。
俺は、お前が泣く事よりも。
一人で耐えている時の顔の方が嫌いだ。


「…ハーレムの前で我慢しても、無駄だもんな」


そう、無駄だからな。
お前が無理してるのは、俺にはすぐ分かる。
お前の事なら、分かる自信がある。







辛いなら辛いと言えば良い。
悲しいなら悲しいと言えば良い。

お前が望むなら、いつでも泣く場所を与えてやるよ。
お前が泣くのなら、いつでも傍にいてやるよ。

無理して1人で立つな。
俺はいつでもお前を支えてやるから。
だから、俺の前で他の奴らと同じように我慢なんかしやがったら許さねぇ。

俺にだけは、お前の全てを見せろ。
俺には、隠すな。
俺の前では我慢をするな。







「愛してるぜ、シンタロー」

きつくきつく抱きしめて。
シンタローの耳元で低く呟く。
ぎゅっとしがみついて、

「…俺も、愛してるよ」

耳を赤くさせて、シンタローが呟いた。
愛しくて愛しくて、俺の顔には笑みが浮かぶ。





お前の泣き顔よりも何よりも。
お前が俺の前で我慢する事が、嫌いだ。



END


突然思い浮かびました。
『シンタロー泣かせてぇ』
『ハーレムはいい男だよなぁ』
この思いからできた作品です。
それでもこんな風にしか書けません。
Don’t take chances.
無理するなよ。

06.1/21
hs
赤と緑がクリスマスカラー。
と,言う事は…。



「隊長、今日、明日って何か予定入ってます?」
携帯のスケジュールを開いて問い掛ける。
隊長はタバコの煙を吐き出しながら、

「一族恒例クリスマスパーティー」

今年も二日間やるのか。
隊長の返答にそう思った。
「…去年はシンタロー様いませんでしたよね?」
確か去年シンタロー様は仕事に追われてパーティーに出れなかった。
「あぁ、そういやぁ、そうだな」
で、シンタロー様がいないと分かると隊長もいなくなったけど。
全く、大の大人が可愛らしい恋愛しちゃって。
うらやましいなぁ…。
俺もそんな恋愛したいなぁ…。



今年はどうなるのかなぁと思い、様子を見に行く途中、
「…ロッドか。今行っても会話はできんぞ」
廊下であったキンタロー様に暗い声で言われた。
今年も無理そうって事かな?
シンタロー様がいないと皆テンション下がるんだよなぁ。
まぁ、その方がらしいけど。



とりあえず会って行こうと総帥室に顔を出した。
書類の山とクリスマスカードの山。
そして大量の電報が置いてあり、シンタロー様はいた。
書類に目を通し、印を押しているシンタロー様。
書類だけならパーティーには終わりそうだが、カードまでは手がまわらなそうだ。
「パーティー」
無理そうですね。
言い切る前に、
「俺欠席」
即答された。
恐らくキンタロー様も言われたんだろう。
「パーティーの時間もここにいるんですか?」
俺の問いに短く、あぁ。と返された。
でもそれじゃあ、せっかくのクリスマスなのに…。
「じゃあ、シンタロー様」
俺はここで、考えていた案をシンタロー様に出した。



パーティーの時間。
俺たち特戦も参加させてもらう。
つぅか、親しい人達参加可能。
宴会騒ぎの様なものが好きな一族だからこそだろう。
俺は隊長よりもマーカー、Gよりも早く会場に向かう。
派手に飾り付けられた会場には、種類豊富な料理が並べられてある。
シンタロー様に出した案を実行するためにあたりを見渡す。

「早いんだね?」

グンマ様が誰よりも早く来ていた。
まだ飾り足らないのか、手にはリボンを二種類持っている。
クリスマスカラーの緑と赤のリボン。
俺に気がついたグンマ様は俺の傍までやってきて、
「今年もシンちゃんは欠席。寂しいよねぇ」
しゅんとしたグンマ様はそう言った。
けれどすぐに笑顔を浮かべ、

「でも、楽しまないとね。シンちゃんが責任感じないようにね」

にこりと笑うグンマ様に、そうですね。と同意して、手に持っているリボンを分けてもらう。
どうして?不思議そうに聞いてくるグンマ様に訳を話すと、
「ずるーい。…でも、いい案だね。がんばってね」
笑顔でそう良い、飾り付けをしようと元いた場所に戻っていった。



「あ、隊長」
隊長の軍服を持って、会場に向かう途中で隊長を見つけた。
「…何やってんだ、お前」
不思議そうに言われる。
隊長の隊服とリボン。
そりゃ不思議か。
「隊長、手、貸してください」
隊長はなかなか素直に右手を差し出してくれた。
その右手に赤いリボンを結ぶ。
ますます不思議そうな隊長に隊服を着てもらい、
「会場変わったんですよ、案内します」
そう言って歩き出すと、隊長はしばらく考えて、ついてきてくれた。
俺が向かうのは特別会場。




「ここです」
「ここって…」
隊長ににらまれる。
そりゃそうかもしれない。
だってここは、団の開いてる一室でしかない。
「まぁまぁ、入ってくださいよ」
きっと、隊長の喜ぶものがありますから。
ニコニコ笑って、ドアを開け、隊長を押す。
あぁ?
不思議そうな隊長だがとりあえず言われるがままに中に入ってくれた。
ここで拒否されたらどうしようもない。



「…よ」
赤い総帥服のシンタロー様が、中にはいる。
隊長が驚いたのがよく分かった。
「……なんで、いんだよ」
俺はこっそりと笑う。
だって、隊長が驚いてるんだぜ?
しかも俺の作戦で。
嬉いったらないね。
「…プレゼント、らしいぜ?」
ロッドからの。
シンタロー様が俺を指差して言う。
隊長が振り向く。

「シンタロー様は隊長に、隊長はシンタロー様に」

にっこりと笑う。
隊長は、もしかしてコレか?と右手を出す。
そうですvと笑うと、叩かれた。
いてぇ!と叫んだが、あまり痛くない。
隊長はシンタロー様に近づいて、右手をつかむ。
シンタロー様の右手には緑のリボンが結んである。
「ま、そんなわけなんで、今日はお二人でごゆっくりどうぞ」
俺は一人ドアに向かう。

だってさ、二人ともお互いが大好きなくせに、我慢するんだもん。
少しは素直になったら良いのに。
だから、素直になれない分は俺がプレゼントって事でホロー。
後は、二人だけにしてあげればラブラブなクリスマスを迎えられるだろう。

「それじゃ、メリークリスマス☆」
出て行くときにそう言って手を振ると、
「…メリークリスマス」
とシンタロー様が返してくれる。
シンタロー様は明日お仕事忙しいけど、そこは、我慢してもらおう。
「…今月はちゃんと給料払ってやる」
と、隊長が!
マジですか!?
「早く行け」
はーい。



どうやら二人とも気に入ってくれたらしい。
よかったよかった。

クリスマスカラーは緑と赤。
残念なことに俺は、じゃあ、隊長とシンタロー様の日か。
なんて思ってしまった。
隊長の隊服とシンタロー様の総帥服。
緑と、赤。
真っ先に、思い浮かんだそれ。
そう思ったら、二人で会わしてあげたいなぁ…って。
思った事は即実行。
で、こんなことができたわけ。
隊長以外の皆には我慢してもらって、今日という一日を二人にプレゼント。

だって俺は、隊長とシンタロー様が大好きだからね☆


END


ロッドいいこだなぁ。
一足早いんですが、書きました。
ついでに言えばパソコンで入力したので2ページですみましたよ。
画期的です。

05.12/22



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