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約束の証












ささやかながら、高松とサービスとグンマで準備した誕生日パーティー。
そんな中、高松は早いなぁ、と感慨深げに主役を眺めていたら不思議そうな顔をされた。

「なんだその顔」
「どんな顔してます?」
「なんていうか、遠い目をしてたぞ」
「まぁ、ちょっと・・・もう20年もたったのかと・・」

というか、自分がもうそんな年なんだな、という。
己が年齢を顧みて気が遠くなったというか。
そう素直に言えばシンタローに苦笑された。

「仕方ないでしょう」
「ま、そうかもな」

俺も早いなぁって思うよ。
なぁ、コタロー。
とこんな日でも腕の中には愛しい弟君の姿。

「あ、そうだ、高松」
「なんでしょうシンタローさん」

いつもならそのままコタローに話しかけ続けるシンタローが顔を上げた。

「コタロー寝かせたら部屋行くから」
「ええ。分かりました」

このやり取りはいつからだったか。
あえて見ない振りをして避けていた大人に真っ向勝負を仕掛けてきた子供。
その子供のぬくもりを振り払うどころか逆に腕の中に閉じ込めてしまった。
そんな自分の愚かさが分かっていても最早、手放すことなどできはしない。
ただただ愛おしくて       、 仕方がない



















ドン、とテーブルに置かれたのはウィスキーのボトル。
ラベルを見るからに年代物。そのうえシンタローと同じ年齢。

「どうされたんですか?」

そう問えば高松の正面に座ったシンタローは口の端を上げた。

「なんとナマハゲから」
「へぇ。ハーレムが、ですか?」
「ハタチのキネンだってさ。ようやくおおっぴらに酒を飲ませられるって」
「いままでも飲ませてたくせにねぇ。で、これをどうしろと?」

飲むんですか?

「飲まない。預かってて」
「預かる、ですか?」
「明日から遠征だから」
「存じ上げております。それも、激戦区だとお聞きしましたが」
「まぁな。でも、俺なら戻ってこれる」

言い切ったシンタローの眼差しに少しの揺らぎもない。
高松はその力強い瞳を見返しうなづいた。

「ええ。それは私も確信しております。貴方でしたら戻ってこれるでしょう。ただ」
「ただ?」
「帰ったら、必ず私の元へくるように」
「もう耳タコだ」
「それでも言い聞かせておきたいのです」
「不安か」
「いつでも」
「そうか。俺もだ」

高松が素直に認めるとシンタローもあっさりと弱さを見せた。
あの、力強い眼差しのまま。

「シンタローさん」
「だから、高松。これを預かっていてくれ」

そっと、酒のビンに触れ、僅かにこちらへ押し出した。

「取りに戻るから」
「はい」
「んで、一緒に飲もう」
「わかりました。でも怪我をして戻ったら治るまでお預けですよ?」
「わかってるよ。主治医の言うことには逆らいません」
「よろしい」
「じゃあ、それだけ」

そういって立ち上がったシンタローに分かっていながらも高松は問いかけた。

「泊まってゆかれないのですか」
「明日から遠征なので」

おどけて言うシンタローに苦笑して高松も見送るために立ち上がる。

「では、それも帰ってきてから、ですね」
「そうだな。今は、これだけで」

一瞬見つめい、そっと重なるだけのキスを交わした。

「じゃあ、おやすみ」
「ええ。おやすみなさい」

いつものように分かれて、ドアは閉められた。
そうしていつものように「ただいま」とドアは開けられるのだろう。
高松はそう確信しながら2人で飲むための酒を大切にしまった。










FIN




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石と花





それは小さな小さな石ころ。だが悪意を持って投げられたソレはなによりも痛みを与えるものだろう。
それも、小さな幼子から投げられれば。その幼子が、憎悪と嫌悪と悲しみの入り混じる瞳で見ていれば。

「よしなさい!」

母親が止めるがその母親の目も同じだ。母親もまだ十にも満たないほどの少女もシンタローを憎んでいる。
総帥を紅い服を纏った者をガンマ団を軍を軍人を戦争を力を。人殺しを。
キンタローにしてみれば幼子よりも何よりもシンタローが大事だった。
あわててその石から彼を守ろうとしたがそれを共にいたコージによって阻まれた。

「よせ」
「邪魔をするな」
「よせゆっとるじゃろう?アイツの望みを間違えるな」

キンタローはまっすぐ立ったままのシンタローを見た。
傷ついているだろう。辛くてその場で崩れ落ちそうだろう。
けれども彼は感情を見せないままただ黙って歩き出した。




シンタローはそれに対して何も言わなかった。だが一言コージに礼を告げた。
キンタローは不満だった。何故、と。その話を聞いたアラシヤマも不服そうだった。
アラシヤマはコージを捕まえキンタローはたまたま顔を合わせたトットリに文句を言った。

「いったいどういうつもりどすか?コージはん」
「どがぁもこがぁもないじゃろう?シンタローの望みをかなえただけじゃ」
「望み?」
「ありゃぁ、憎しみを受け止めることを望んどる」
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希望の鐘の音






シンタローは上を見上げる。高いところにかすかに星が見えた。

「シンタロー」
「なんだ?キンタロー。説教は聞かねぇぞ」
「しかしだな・・」
「きかねぇ。コージ!どうだ?」
「大丈夫じゃ。安心しろ」

コージの後ろに見え隠れするそれにシンタローは笑みを浮かべた。

「よし!いくぞ!」




「約束してくれる?」

街中で戦闘中に助けた少女に頼まれた。

「毎年、いつも、ちゃんと聴いてたの。でももう三年も聴いてない」
「・・そうか」
「約束、してくれる?」
「もちろん」

小さな指に己の指を絡めた。少女が不思議そうな顔をしたので「ゆびきり」を教えてあげた。
少女はうれしそうに笑ってシンタローとゆびきりをした。




「なんとかなりそうだ」

塔の頂上でシンタローは息を吐く。白い息が流れていく。
下からはコージを先頭に部下が大きな物体を運んできている。
キンタローはまだ心配そうだ。気持ちは分かる。
まだ残党がうろついていないとは言い切れない。
それをこんな目立つ場所に総帥がいるなんて。

「悪いな。俺は、約束は必ず守るって決めてるんだ」
「・・知っている」

キンタローもため息をついてコージを手伝うように先を促した。
シンタローはあたりを注視し神経を研ぎ澄ます。
ここで失敗するわけにはいかない。

「約束だからな」





テントの中央で椅子に座り下をうつむいたままの少女の肩をトットリがたたく。

「そんなに心配しなくても大丈夫だっちゃ」
「でも・・」
「戦いの音はもうしまへんやろ?なら待っとればいずれ聞こえてきますやろ」

少女は新たに現れたアラシヤマに驚いたがその声に満ちた信頼に力を得た。

「あの人は約束を必ず守りはるお人どす。安心しいよし」

その言葉に少女は安心したのか微笑んだ。その時だった。
澄んだ音に少女ははじかれたように顔を上げ外に飛び出した。
聴きなれた、聴きたかった音がまたひびく。

「・・・あぁ!」

涙があふれた。





「新年に鐘の音、か。日本と同じだな」
「ちぃと違う音じゃがな」

西洋の鐘の音は高く町に響き渡る。
それを鳴らすのはシンタローだった。

「意味合いも違うの。ありゃぁいっちゃんケツの音じゃ。煩悩をはらいまっさらな自分で新年を迎えるための鐘の音じゃ。
じゃがこりゃぁはじまりの鐘の音じゃ。新たな年を告げる音じゃ。希望に満ちた、鐘の音じゃ」
「・・シンタローが鳴らすにふさわしいな」
「そうじゃのぉ」

コージとキンタローはそう笑いあいながらもあたりを気にしていた。
だが同時に分かっていた。敵も味方も、この国を憂いた者たちだ。
この鐘の音を邪魔することはないだろう。
そして敵も味方も、この音を自分たちが奪ってしまっていたことに気がつくだろう。
「いい音じゃ」





「言いましたやろ?」
「・・うん」
「さっすがシンタローだっちゃ!」
「・・ありがとう!お兄ちゃんたち!」
「それは、鐘をならしている人にこそ言うべき言葉どすえ」
「うん!でも、言いたいの!」

少女は大きな声で、周りのテントにいるすべての者たちに聞こえるように叫んだ。


「ありがとう!!」



FIN
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花の幸せ






知恵を得たことが罪だなんて昔の人はうまいこと言ったもんだと思う。
知る、とういうことを、知りたいということを知らないままであれば人間はもっと幸せであったろうに。





「昔々、でもそんなに昔じゃないころ。ある家の大きな庭に青い花が咲いてました。
 そんな青い花の中に一厘だけ赤い花が咲いてました。
 赤い花はそれをとても哀しく思っていましたが青い花たちは皆赤い花が好きでした。
 ある日赤い花はひょんな拍子に庭の外を見てしまいました。
 そこには赤い花と同じ真っ赤でとても美しい花が一面に咲いていました。
 そのとき赤い花ははじめて自分が野に咲く花だったことを知りました。
 でも可哀想なことに赤い花は自分では動くことができません。
 赤い花は青い花に囲まれながら大きな庭で赤い花の咲く外を想い続けました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんてね」

グンマはどさり、と日記を手にしたままベッドに倒れこむ。
現実には赤い花はこの庭から出て行くことができるのだ。

「可哀想な青い花。赤い花を知ることがなければどんなに幸せだったろうに」





「可哀想なシンちゃん」
「・・・なんだ突然」

いぶかげに眉をひそめる青年の瞳は黒。けれども時折その瞳に赤を見る。

「野に咲く花と庭に咲く花どっちが幸せだと思う?」
「質問に質問を返すなよ」
「何も知らないままなら幸せだったろうにね」
「グンマ~?俺をおいてくな~」

置いていくのは貴方でしょう?
そんな笑みが一瞬だけグンマに浮かぶ。

「あの島を知ってしまったのにこっちにいなきゃいけないなんてさ」
「あん?」

分かってはいる。青年のあるべき場所はいまどこにいるか分からない。
けれどもいつまでも青い空を愛しそうに見上げる青年を見ていたくはないだけなのだ。
自分が、見ていたくないだけなのだ。

「あの島へ還りたいでしょう?」
「?表現間違ってねぇか?俺が帰るのはここだろう?」
「でもシンちゃんの生まれた場所はあの島でしょう?」
「それを言ったら青の一族だって似たようなもんだろ」
「僕らはそんな帰省本能うすれちゃってるもん」
「ていうか何が言いたいお前は」
「パプワ島を知らなかったらシンちゃんは幸せだったろうね、って話」
「・・・ああ、そういうことかあの質問は」

野に咲く花と庭に咲く花。

「それってどっちも幸せなんだろ?野に咲く花は野に咲く花しか知らないし。
庭に咲く花は庭に咲く花しか知らないから。禅問答みたいな奴だろ?」
「でももし野に咲く花が庭に咲く花を知り庭に咲く花が野に咲く花を知ったら?」

南の人は北の人を知らなければきっと幸せだったろう。
北の人は南の人を知らなければきっと幸せだったろう。
西の人は東の人を知らなければきっと幸せだったろう。
東の人は西の人を知らなければきっと幸せだったろう。

「・・・知っても、結局生まれた場所が幸せだったって気づくんじゃないのか?」
「・・・だろうね」

だから、貴方はあの島へ還るのでしょう?
グンマはいつものように微笑んで青年を見上げる。
そんなグンマの頭に青年は手を置く。

「だから俺はここにいるんだろ?」
「・・・シンちゃん」
「それになぁ」

グンマの頭を乱暴になでくりまわすと青年は照れくさそうに笑った。

「俺あっちにいってこっちのこといっぱい思い出したよ」
「・・・コタローちゃんのこと?」
「お前のこと」

グンマは驚きに目を見開いた。

「パプワと遊んでたら子供の頃のこといっぱい思い出した。お前と遊んだことを思い出した。
だからやっぱり俺はここで生まれてここで育ったんだよ。マジックの息子シンタローとして。
パプワ島は懐かしいけど、楽しいし好きだけど・・思い出すしまた行きたいと思うけど・・・ただいまを、言える場所だけど・・」

そこで青年はグンマを見据え言い切った。

「ここが俺の帰る場所だ」
「・・シンちゃん」

青年はグンマににっと笑った。グンマもつられるように本当の笑みを見せた。

「シンちゃん!」
「なんだ?」
「おかえりなさい!」

満面の笑みで言われてシンタローは一瞬驚いたがすぐに笑った。

「おう!ただいま!」






グンマは夜、日記を開く。

「赤い花はある日種になって風と共に外へ出ました。
 そして赤い花たちの中に降りるとそこで花を咲かせました。
 赤い花はそのときやっと気がつきました。
 赤い花と青い花は色が違うだけであとは同じでした。
 赤い花は庭の花たちを思い出してほんの少し涙を流しました。
 家族と言ってくれた青い花を思いだして少し涙を流しました。
 そして次の年、赤い花は種となって再び庭へと戻りました。
 赤い花たちはみな微笑んで「いってらっしゃい」と送り出してくれました。
 またここへおいで。遊びにおいで。そのときは「おかえり」と迎えてあげるから。
 赤い花は種の姿でまた涙を流しました。
 赤い花の種は庭に戻り花を咲かせました。そうして小さな声で「ただいま」といいました。
 赤い花が小さな声でそう言うと青い花は何一つ変わりなく微笑みました。
 そうして皆で声をそろえて赤い花に「おかえり」を言いました。



と」

グンマはそこまで書くと日記を閉じた。
続きはまた今度。赤い花が赤い花達に「ただいま」を言いに行ったら。

「ハッピーエンドになればいいけどどうだろうなぁ」

ああお願いだよ。
どうか僕らも「いってらっしゃい」と送り出すから。
どうか「おかえり」を言わせてほしい。
ここが自分の場所だと言ってくれたその言葉を信じさせてほしい。

「シンちゃん。僕も知らないままなら幸せだったよ」

貴方がいる幸せを。貴方のうれしい言葉の数々を。
それでもそれらを知らないままでいたいなんて思えないんだ。
野に咲く幸せを知っても庭に咲く幸せを捨てられない。
庭に咲く幸せを知っても野に咲く幸せを捨てられない。

「さてと」

グンマは日記をとじてベッドに横になった。
思い浮かべるのは一輪の赤い花。

「・・おやすみなさいシンちゃん」

そうささやくと目を閉じた。





END
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声をかけるとそれがふわり、と後をついてくる。

「高松?」
「珍しい、というかやはり、というべきか」
「俺が温室にいちゃおかしい?」

高松は静かに微笑む。
シンタローは熱帯の植物の集まる温室に一人たたずんでいた。

「懐かしいだけだ。どこにもいきゃしない」
「その言葉は私ではなくキンタロー様やグンマ様へ。私は先刻承知、ですよ」
「そうだな。あんたはわかっているな」
「ただ――」

しっかりと後ろで結ばれた黒髪。
白いTシャツに黒のジーパン。

「その格好はいただけませんね」
「たまたまあるのを着たらこういう組み合わせになっただけだろ?」
「もう少しあの子達の気持ちを考えておあげなさい」
「これ以上執着しないようにするにはいいんじゃないのか?」
「あれは青の一族の性質ですよ。本能のようなものです。どうにもできない」
「じゃああんたは何故?俺はルーザーの息子じゃないぜ?」

ふわり、とシンタローが振り向く。
一つに結ばれた髪が後をつづく。

「・・・・愚問ですね」

手を伸ばしその存在を腕の中に閉じ込める。

「愛、ってやつですよ」
「そうでしたっけ?」

笑い声が腕の中で響く。

「だからね。私だって嫌なんですよ。頭で理解していても心のほうはそうはいかないんです」

髪紐をとくと艶やかな髪が背中を覆う。
たかがそれだけのことなのに。
それだけのことに安心する。

「安心させてくださいよ」

あなたが永遠を生きるというのなら私もそれにつきあいますから。
腕の中の愛しい人はその言葉にくしゃり、と顔をゆがめて。

「しょうがねぇなぁ」

そう照れくさそうに、泣きそうに、笑って。

「しょうがねぇから安心させてやるよ」

腕が伸ばされ引き寄せられ触れるだけのキス。
ふっと笑ってこちらからキスをした。

「それだけじゃあ安心できませんよ」

触れるだけではない、もっと貴方を感じさせてくれるキスを。
そう願えば薄い唇は僅かに開きこちらを誘う。
誘われるまま首の後ろに手を回し深く口付ける。

ああ、どうかお願いです。
聖域を思い出させる場所で、私だけを感じていてください。


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