希望の鐘の音
シンタローは上を見上げる。高いところにかすかに星が見えた。
「シンタロー」
「なんだ?キンタロー。説教は聞かねぇぞ」
「しかしだな・・」
「きかねぇ。コージ!どうだ?」
「大丈夫じゃ。安心しろ」
コージの後ろに見え隠れするそれにシンタローは笑みを浮かべた。
「よし!いくぞ!」
「約束してくれる?」
街中で戦闘中に助けた少女に頼まれた。
「毎年、いつも、ちゃんと聴いてたの。でももう三年も聴いてない」
「・・そうか」
「約束、してくれる?」
「もちろん」
小さな指に己の指を絡めた。少女が不思議そうな顔をしたので「ゆびきり」を教えてあげた。
少女はうれしそうに笑ってシンタローとゆびきりをした。
「なんとかなりそうだ」
塔の頂上でシンタローは息を吐く。白い息が流れていく。
下からはコージを先頭に部下が大きな物体を運んできている。
キンタローはまだ心配そうだ。気持ちは分かる。
まだ残党がうろついていないとは言い切れない。
それをこんな目立つ場所に総帥がいるなんて。
「悪いな。俺は、約束は必ず守るって決めてるんだ」
「・・知っている」
キンタローもため息をついてコージを手伝うように先を促した。
シンタローはあたりを注視し神経を研ぎ澄ます。
ここで失敗するわけにはいかない。
「約束だからな」
テントの中央で椅子に座り下をうつむいたままの少女の肩をトットリがたたく。
「そんなに心配しなくても大丈夫だっちゃ」
「でも・・」
「戦いの音はもうしまへんやろ?なら待っとればいずれ聞こえてきますやろ」
少女は新たに現れたアラシヤマに驚いたがその声に満ちた信頼に力を得た。
「あの人は約束を必ず守りはるお人どす。安心しいよし」
その言葉に少女は安心したのか微笑んだ。その時だった。
澄んだ音に少女ははじかれたように顔を上げ外に飛び出した。
聴きなれた、聴きたかった音がまたひびく。
「・・・あぁ!」
涙があふれた。
「新年に鐘の音、か。日本と同じだな」
「ちぃと違う音じゃがな」
西洋の鐘の音は高く町に響き渡る。
それを鳴らすのはシンタローだった。
「意味合いも違うの。ありゃぁいっちゃんケツの音じゃ。煩悩をはらいまっさらな自分で新年を迎えるための鐘の音じゃ。
じゃがこりゃぁはじまりの鐘の音じゃ。新たな年を告げる音じゃ。希望に満ちた、鐘の音じゃ」
「・・シンタローが鳴らすにふさわしいな」
「そうじゃのぉ」
コージとキンタローはそう笑いあいながらもあたりを気にしていた。
だが同時に分かっていた。敵も味方も、この国を憂いた者たちだ。
この鐘の音を邪魔することはないだろう。
そして敵も味方も、この音を自分たちが奪ってしまっていたことに気がつくだろう。
「いい音じゃ」
「言いましたやろ?」
「・・うん」
「さっすがシンタローだっちゃ!」
「・・ありがとう!お兄ちゃんたち!」
「それは、鐘をならしている人にこそ言うべき言葉どすえ」
「うん!でも、言いたいの!」
少女は大きな声で、周りのテントにいるすべての者たちに聞こえるように叫んだ。
「ありがとう!!」
FIN
シンタローは上を見上げる。高いところにかすかに星が見えた。
「シンタロー」
「なんだ?キンタロー。説教は聞かねぇぞ」
「しかしだな・・」
「きかねぇ。コージ!どうだ?」
「大丈夫じゃ。安心しろ」
コージの後ろに見え隠れするそれにシンタローは笑みを浮かべた。
「よし!いくぞ!」
「約束してくれる?」
街中で戦闘中に助けた少女に頼まれた。
「毎年、いつも、ちゃんと聴いてたの。でももう三年も聴いてない」
「・・そうか」
「約束、してくれる?」
「もちろん」
小さな指に己の指を絡めた。少女が不思議そうな顔をしたので「ゆびきり」を教えてあげた。
少女はうれしそうに笑ってシンタローとゆびきりをした。
「なんとかなりそうだ」
塔の頂上でシンタローは息を吐く。白い息が流れていく。
下からはコージを先頭に部下が大きな物体を運んできている。
キンタローはまだ心配そうだ。気持ちは分かる。
まだ残党がうろついていないとは言い切れない。
それをこんな目立つ場所に総帥がいるなんて。
「悪いな。俺は、約束は必ず守るって決めてるんだ」
「・・知っている」
キンタローもため息をついてコージを手伝うように先を促した。
シンタローはあたりを注視し神経を研ぎ澄ます。
ここで失敗するわけにはいかない。
「約束だからな」
テントの中央で椅子に座り下をうつむいたままの少女の肩をトットリがたたく。
「そんなに心配しなくても大丈夫だっちゃ」
「でも・・」
「戦いの音はもうしまへんやろ?なら待っとればいずれ聞こえてきますやろ」
少女は新たに現れたアラシヤマに驚いたがその声に満ちた信頼に力を得た。
「あの人は約束を必ず守りはるお人どす。安心しいよし」
その言葉に少女は安心したのか微笑んだ。その時だった。
澄んだ音に少女ははじかれたように顔を上げ外に飛び出した。
聴きなれた、聴きたかった音がまたひびく。
「・・・あぁ!」
涙があふれた。
「新年に鐘の音、か。日本と同じだな」
「ちぃと違う音じゃがな」
西洋の鐘の音は高く町に響き渡る。
それを鳴らすのはシンタローだった。
「意味合いも違うの。ありゃぁいっちゃんケツの音じゃ。煩悩をはらいまっさらな自分で新年を迎えるための鐘の音じゃ。
じゃがこりゃぁはじまりの鐘の音じゃ。新たな年を告げる音じゃ。希望に満ちた、鐘の音じゃ」
「・・シンタローが鳴らすにふさわしいな」
「そうじゃのぉ」
コージとキンタローはそう笑いあいながらもあたりを気にしていた。
だが同時に分かっていた。敵も味方も、この国を憂いた者たちだ。
この鐘の音を邪魔することはないだろう。
そして敵も味方も、この音を自分たちが奪ってしまっていたことに気がつくだろう。
「いい音じゃ」
「言いましたやろ?」
「・・うん」
「さっすがシンタローだっちゃ!」
「・・ありがとう!お兄ちゃんたち!」
「それは、鐘をならしている人にこそ言うべき言葉どすえ」
「うん!でも、言いたいの!」
少女は大きな声で、周りのテントにいるすべての者たちに聞こえるように叫んだ。
「ありがとう!!」
FIN
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