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 ある日の夕方、ガンマ団の敷地内の公園を、赤ん坊のコタローを連れたシンタローが散歩していた。
 アラシヤマは、
 「ライバルの動向を把握しておくことも、訓練のうちの1つどすえ!!」
とかいうよく分からない理由で、本日もシンタローをストーキング(・・・)していた。
 シンタローはアラシヤマに見られている事には全く気付かず、コタローを肩に乗せるように前から抱っこして歩いていたが、しばらくすると公園のベンチに座った。
 アラシヤマが木の陰からコッソリと見ていると、シンタローはジタバタと動くコタローを両手で持ち、自分の体から少し離してコタローと視線を合わせた。
 シンタローは溜め息をつき、
 「コタローはこんなに可愛いのに、なんで親父は全然可愛がんねぇのかな。この可愛さが分かんねェなんて、目が腐ってんじゃねぇの?なァ、コタロー?」
 そう言われても、まだ乳児であるコタローに言葉の意味が理解できるはずはなく、コタローは、「アー」とか「ウー」とか言いながら、シンタローの少し伸びかけた髪の毛や耳を触ろうとして小さな手をシンタローの方に伸ばした。
 その仕草に、シンタローは、
 「かっ、可愛い!!」
 と言ってギュッとコタローを抱きしめた。すると、驚いたのかコタローは突然大声で泣き出した。
 ものすごい大音量で泣く赤ん坊に、シンタローはオロオロし、“高い高い”をしたり、“いないいないばぁ”をして苦労してあやしているとコタローは泣き止み、泣き疲れたせいか眠ってしまった。
 シンタローは非常にグッタリした様子で、
 「子育てって大変だゼ・・・」
 と、溜め息をついたが、それでも腕の中で眠っている小さな赤ん坊を見て、
 「・・・母さんは死んじゃったけど、でも、俺が母さんの分までお前のことが大好きだからな。父さんも、忙しいからなかなかお前に会いにこれねぇけど、絶対お前のことが大好きなはずだ。だから、安心して大きくなれヨ」
 と言い、とても優しい笑みを浮かべた。そして、小さい声で子守歌を歌った。
 今までにシンタローのそんな笑顔を見た事がなかったアラシヤマは、非常に衝撃を受け、そのままヨロヨロと寮に戻ってベッドに寝転んだ。
 手を組んだ上に頭をのせ、寝そべって天井をぼーっと見上げながら、アラシヤマは自分が何に対してそんなに衝撃を受けたのか考えてみたが、結局何も分からなかった。
 しばらく考えていると、ふと、
 (そういえば、この前の暗殺任務で入った家の壁に掛かっていた、聖母子像みたいどすな。シンタローは男やし、別に女っぽいわけでもないけど)
 と、なんとなく思った。
 その時何かが分かりかけたような気もしたが、すぐにその感じは拡散し、アラシヤマはいつの間にか眠ってしまった。







仕官学校時代ですがアラがストーカーです。
しかも、“アラシン”と言ってもいいものかどうか・・・。すいません。 
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 コンコン。と、総帥室のドアがノックされ、キンタローとグンマが珍しく揃いで入ってきた。
 しばらく2人は居心地が悪そうにし、お互いの顔を見て何かを押し付けあっているようであったが、結局はグンマの方が口を開いた。
 「シンちゃん、落ち着いて聞いてね。あのね、アラシヤマ君が亡くなったんだ」
 シンタローは、一瞬何を言われたのか分からない顔をし、
 「ハハッ。お前ら、いくらアラシヤマが嫌いだからってナ、そんな冗談はよくないゼ」
 と言った。
 「違うのッツ!冗談じゃないんだよッツ。シンちゃんが信じたくない気持ちはすごくわかるけど、ほんとのことなんだ・・・」
 そう言うと、グンマは下を向きそれっきり何も言わなかった。
 「グンマの言うことは本当だ。遺体の損傷が激しかったので、戦場で荼毘にふされたそうだ」
 キンタローがそう言うと、シンタローは呆然とした顔をし、
 「お前ら、すまねぇけど、もう帰ってくれ」
 と言った。2人はシンタローの気持ちを思いやり、総帥室を後にした。

 翌日、2人が総帥室を訪ねると、シンタローが案外元気そうであったので2人はホッとした。
 「シンちゃん、大丈夫?」
 「へ?何が?」
 「えッツ?何がって、アラシヤマ君のことだよ!?」
 「アラシヤマがどうしたんだよ?そういや、アイツ、遠征が終わったはずなのに報告に来ねェナ。どこで油売ってんだか。来たら締め上げてやろう」
 「何言ってんだよ、シンちゃんッツ!!アラシヤマくんは、」
 グンマが言葉を続けようとすると、キンタローがそれを遮った。
 「どうも、シンタローの様子がおかしい。今は、それ以上何も言うな」
 「だってッツ!」
 「シンタロー、邪魔したな。また来るからあまり総帥業を頑張りすぎるなよ」
 そう言うと、キンタローはグンマを引きずって総帥室を出て行った。
 「おかしなヤツラだな。ったく、一体何だってんだよ」
 そう言ってシンタローは、再び書類に目を落とした。

 グンマとキンタローは、まず高松にシンタローの様子がおかしいということを相談し、高松はマジックやサービスにそのことを伝えた。
 数日後、サービスと高松がシンタローの元を訪れた。
 「アレッ?美貌のおじ様ッvv・・・と、変態ドクター。どうしたんだヨ?2人揃って」
 「何なんですか、変態ドクターって。失敬な」
 「それはどうでもいいけど、シンタロー。少し聞きたいんだが、アラシヤマが亡くなったことは分かっているかい?」
 そうサービスが聞くと、シンタローは良く分からないような顔をし、
 「えッ?アラシヤマって誰だよ?おじさんの知り合い?」
 と言った。
 サービスと高松は顔を見合わせ、
 「何でもないんだよ。もし思い出したようだったら、いつでも私の所にきておくれ」
 そうサービスは言って、高松を促し2人は総帥室を後にした。
 高松とサービスは廊下を歩きながら、
 「高松、どう思う?」
 「やっぱり、ショックが大きすぎて一時的に記憶障害が起こっているんじゃないですかね。この前グンマ様とキンタロー様が行った時にはまだアラシヤマ君のことは覚えていたみたいですから。数日経っても彼が現れないので、脳が防衛反応として辻褄を合わせるために彼の存在を“無かった事”にしたんじゃないでしょうか」
 「・・・それだけ、シンタローにとってアラシヤマの存在は大きかったということか。いずれにせよ、この状態がいい状態だとは思えないな。どうすればいいと思う?」
 「今の彼の逃避行動も、彼にとって意味のあることでしょうしね。無理矢理思い出させないほうがいいんじゃないでしょうか。しばらくは様子を見て、もし彼が安定したようであれば、おいおい思い出させるということで」
 「やはり、そうするしかないのか・・・」
 沈鬱な顔をしたサービスは、ため息をついた。

 さらにその数日後、マーカーがシンタローの元を訪ねてきた。
 マーカーが、総帥室の前まで来ると、ドアの横にはグンマが立っていた。どこか、悲しそうな顔をして俯いていたので思わずマーカーが、
 「どうなされたのですか?」
 と聞くと、
 「・・・確か、マーカーさんはアラシヤマ君の師匠だったよね?シンちゃんが変なんだッツ!僕、死んだ人のことを悪く言うのは嫌だけど、やっぱりアラシヤマ君のことが嫌いだよ。だって、シンちゃんの心を半分連れていっちゃったんだもんッツ!!」
 そう言うと、グンマは廊下を走っていった。
 「?」
 マーカーには、彼が何を伝えたかったのかがよく分からなかったが、とりあえずドアをノックした。
 「ったく、うっせーなぁ。グンマかよ?勝手に入ったらいいだろーが」
 そう言って、シンタローは自らドアを開けたが、マーカーを見ると目を丸くし、思いっきりドアを閉めようとした。
 が、マーカーはそうはさせなかった。
 「お話があるんです。入れてください」
 「俺にはねぇよ。帰ってくれ!!」
 「なら、実力行使でいきますよ?」
 マーカーはそう言うと、思いっきりドアをひき開けた。力負けしたシンタローは、床に尻餅をついた。
 マーカーは、1つため息をつくと、シンタローに手を差し伸べ、シンタローを助け起こした。
 シンタローは、マーカーの手を振り払うと、
 「一体、何なんだよ!?特選部隊のアンタが俺に用事があるなんて、ありえねぇんじゃねぇの?」
 と、語気荒く言ったが、それに対してマーカーは静かに、
 「アラシヤマのことです」
 と、一言だけ言った。
 一瞬、瞳を揺らしたシンタローであったが、すぐに元の表情に戻り、
 「誰だよソレ。何のことだか分かんねぇナ」
 と答えた。
 マーカーは、思いっきりシンタローの頬を殴った。不意に殴られたシンタローは思わず床に座り込んだ。
 「あの馬鹿弟子は、こんな男に惚れ抜いて死んだのか。全く、失望した」
 そう言って、座っているシンタローを見下ろし1つ溜息をつくと、マーカーもしゃがんでシンタローに目線を合わせた。そして、服のポケットから何か封筒のようなものを取り出し、シンタローに渡した。
 「あの馬鹿弟子から、貴方に宛てての手紙です。万が一の時には貴方に渡すように頼まれました」
 そして、もう1つ小さい袋のようなものをシンタローに手渡した。
 「ヤツの遺骨の一部です。これは、ヤツが特に何か言ったわけではありませんが、私が貴方に渡すのが筋かと思って勝手にしたことです」
 シンタローは震える手でそれらを受け取ると、ギュッと胸に抱きしめ、嗚咽し始めた。
 マーカーは立ち上がり、
 「・・・あの馬鹿弟子は、貴方にそんなに思っていただけて、幸せだったと思いますよ。殴ったりしてすみませんでした」
 そう言うと、静かに部屋から出て行った。
 「アラシヤマ、アラシ・・・」
 シンタローは床に座ったまま泣きながら、涙でぼやけた視界で封筒を開けようとした。開けてみると、そこには手紙が入っており、「シンタローはんへ」という言葉から始まっていた。

 「シンタローはんへ
  今、あんさんがこれを読んでいるということは、わてはもうこの世におらへんということでんな。わて、あんさんを置いて先に死ぬつもりは更々なかったんどすが、どうもしくじってしまったみたいどす。ほんまに堪忍してや。わて、今まで生きてきた中で、シンタローはんと過ごせた時間が一番幸せどした。今までちゃんと言葉で言えへんかったけど、意地っ張りで、可愛いあんさんを愛しています。わて、前までは死ぬときはあんさんを道連れにしてでも一緒に死にたいと思ってましたが、今は違います。わてに何があっても、あんさんには生きていてほしいんどす。シンタローはんやったら、わて以上に大事にしてくれる人達が周りにたくさんいるはずどす。あぁー、なんや、書いていて嫌になってきましたわ。やっぱり、わて以上にあんさんを愛している人はいまへんな!これは自信をもって言えることどすえ?でも、死んでしまったら、もうあんさんのことを大切にすることができまへんさかい、やっぱりわてのことをすっぱり忘れておくんなはれ。
  アラシヤマ」

 「何なんだよ!勝手に1人で自己完結してんじゃねぇよ!!俺、オマエに好きとか愛しているとか言ったことなかったダロ?お前ばっかり一方的に言ったまま逝くなんて、そんなのずりィよ!!」
 シンタローは号泣した。









アラシヤマさん&シンタローさん、ほんまにごめんなさい(謝)!私自身、死にネタはあまり好きではないので、 これには続きがあります。よろしければこちらにどうぞ~。→

+

 材料を調達に出かけた際、俺は、アラシヤマが食事をしている場面にたまたま出くわした。
 「あっ、シンタローはーん!!一緒に食べはりません??」
 別にどうでも良かったが、どんなものを食べているのかちょっと見てやろうと思って鍋の中をのぞくと、
 ・・・何とも、得体のしれない嫌な感じの状態になっており、原材料が何なのかさえ分からなかった。
 「・・・アラシヤマ。これ、何だ?」
 「えっ?見てわからしまへんか??もう、シンタローはんはご冗談がお好きどすなぁvvまぁ、そんなところもかわいおすけど。これは、昔山で修行をしてた時に師匠から習った料理どす。“男の手料理”ってやつでっしゃろか。慣れたらなかなかの味どすえ~」
 そう言って、アラシヤマが持っていたお椀をこちらに差し出すので、流れ上仕方なく受け取り、箸を付けてみた。
 「※?@!?#%¥??~!?!?」
 (え、えらくマズイ・・・。コイツよくこんなもの食えるなぁ。しかも、これがなかなかの味!?・・・ありえねェ。コイツって実は、暗殺よりも野戦向きなんじゃねぇの?うーん、育てられた環境って怖いゼ。なんか、コイツのことちょっとだけかわいそうになってきたかも・・・)
 あまりの不味さのせいか、一瞬の間に、シンタローは本当に色々なことを思ってしまった。
 「・・・アラシヤマ。まだ、材料余ってるか?」
 「えっ!?シンタローはんがわてのために料理を作ってくれはりますのん?う、嬉しおす~~vv材料は、そこの籠の中にありますえ~」
 「あまりにもおまえの料理が不味かったから、俺が口直ししたいだけだ。別に、お前のためじゃねェよ」
 「ふふふ・・・。シンタローはんはテレ屋さんどすなぁ」
 「黙ってろ。もう、作ってやらねェぞ」
 「わかりましたえ~。あぁー、わては世界一の幸せもんどす~~vv」
 そう言ってアラシヤマはそれ以降黙ったが、俺の一挙一動をジッと見ているので、どうにもやりにくくて仕方がない。
 「ジロジロ見てんじゃねェよ」
 「あっ、すんまへん。ただ、誰かがわてのためだけに料理を作ってくれるのは初めてなんで、つい、見てしもうて。わて、お母はんのことはあまり覚えてないんどすけど、もしかしたらお母はんってこんな感じかなと思いまして。昔、師匠と修行してたときは交替で作ってましたが、ホラ、師匠はどうも“お母はん”という感じやおまへんやろ?」
 ・・・どうして、俺だと“お母はん”って感じなんだよ!とか、色々ツッコミたい点はあったが、あまりにもアラシヤマが幸せそうだったので、今回は何も言わないでおいた。
 「ホラ、とっとと食え」
 「お、美味しゅうおす~!!さすがはシンタローはん!!」
 そう言って、アラシヤマはガツガツと俺の作った料理を食べていた。コイツは、あの厳しそうな師匠に躾けられたのだろうか、箸の持ち方や食べ方は意外だがきちんとしている。
 ・・・まぁ、美味いといわれて作った方も悪い気はしない。もし、コイツがあんな不味そうな料理を作っているのを見かけたら、また作ってやってもいいかなと少しだけ思ったが、コイツに言うと調子に乗りそうなので言わないでおこう。




+
 あぁ、まただ。ヤツの居る方向からチリチリと焼け付くような視線を感じる。
 今思えば、士官学校時代からヤツの視線を感じていた。
 その頃は、恨みがましいというか、なんと言おうか、「俺の存在に気づけ」というようなもので、俺は、「言いたいことがあるんだったら、テメェで直接言いに来いよ!」と思ったのでキッパリ無視してやったが。
 最近では、以前とは視線に込められたニュアンスが違ってきたように思う。
 愛しむような視線、気遣うような視線、に混じって、時折、肉食動物が獲物を狙うような視線を感じる。
 そんな時、俺はどうしていいのか分からない。
 だから、気づかないフリをする。
 この前、気づかないフリをするのが遅れてヤツと目が合ってしまった。
 俺は、どうしていいのか分からず一瞬固まったが、ヤツの方がすぐに顔を伏せた。
 「シ、シンタローはん。えろうすんまへん。わてのこと嫌わんといて」
 「・・・・」
 謝るくらいなら、最初から見んじゃねぇよ。バーカ。・・・と思ったが、
 「眼魔砲」
 これ位で、今回のところはナシにしてやった。




a

 ある日の夕方、シンタローが書類の束を抱え廊下を歩いていると、
 「うぎゃーッツ!!遅刻だ!遅刻だ~~!!」
 と、遠くから騒々しい声が聞こえ、その直後、シンタローが曲がり角を曲がろうとすると、何かがものすごい勢いで突進してきてシンタローに、ドンッツとぶつかった。
 普段のシンタローなら、もちろん避けることができたはずであるが、あいにく彼は前日寝不足気味に加え、仕事疲れで頭がボーっとしていたので、とっさの判断が遅れたのである。
 お互い弾き飛ばされ、しりもちをつき、辺りには紙類と戦闘飯ごう、戦闘雨具、戦闘水筒などがバラバラと転がった。
 「痛ってー・・・」
 と、シンタローが顔を顰めながら身を起こすと、
 「うわっ、これって、もしかして新総帥じゃん!?」
 と叫ぶ声が聞こえ、
 「す、すみませんでしたー!!」
 と、相手は土下座していた。
 シンタローが、ぶつかってきた相手を見ると、相手は士官学校支給の迷彩柄の戦闘服を着ており、大きい戦闘背のうを背負っていた。どうやら、これから戦闘訓練の演習があり、彼はそれに遅刻しそうになっていたらしい。
 シンタローは、少し仕官学校時代のことを思い出し、懐かしく思った。
 「ったく、気をつけろヨ。それに、いくら遅刻しそうでも廊下は走んじゃねーよ。ホラ、もういいから行けヨ。お前、遅刻しそうなんダロ?」
 シンタローがそう言うと、相手はバッと身を起こし、
 「新総帥にぶつかっておいて、そういうわけにもいかないっす!!」
 と言って周りに散らばっていた書類を拾い集める手伝いをしようとしたが、彼が書類を拾おうと下を向いた時、自分の手首に巻いてた腕時計が目に入った。
 「うわっ!!もうこんな時間!?スッゲー、ヤベぇ・・・」
 と、半泣きになりそうな彼を見て、シンタローは溜め息をつき、
 「戦闘演習の教官ってメチャクチャ厳しいオヤジだろ?いいから、行けって。総帥命令」
 と言った。
 相手は、数秒間葛藤状態であったが、どうやら心を決めたようであり、
 「すみませんッツ!!それではお言葉に甘えさせていただきます!!」
 と言って、彼は自分の戦闘用品をものすごい勢いで拾い集めたが、戦闘背のうを開けたときに、何か思いついたようであり、背のうの中から掌サイズの筒状のものを取り出した。
 「新総帥、御詫びにならないかもしれませんが、もしよろしかったら、コレ、どうぞッツ!!出掛けに友人から貰った貰い物なんですが・・・」
 彼は、シンタローに缶コーヒーを手渡した。それを受け取らないと、彼はその場を動きそうになかったので、シンタローが仕方なく缶コーヒーを受け取ると、
 「それでは、失礼しまッス!!」
 と、彼は敬礼をして、猛ダッシュで駆けていった。
 シンタローは、散らばっている書類を拾い集めながら、
 「今の士官候補生って、もしかしてあんなんばっかりか?―――先が思いやられるゼ」
 と、溜め息をついた。

 シンタローが総帥室に戻り、いつものように仕事をしていると、ふと、壁に掛かった時計が目に入った。
 (今日の分の仕事はほとんど終わりそうだし、そろそろ休憩でもすっか・・・)
 と思い、伸びをすると、机の書類の脇に置いてあった朝貰った缶コーヒーが目に入った。
 (喉が乾いたし、眠気覚ましに貰い物のコーヒーでも飲むか)
 と、プルトップを開け、コーヒーを一気に飲んだ。
 全部飲み干した後に、
 「うわっ!何だコレ?コーヒーと違わなくねぇか!?不味ッツ!!」
 と、シンタローが舌先に残る不快な味に顔を顰めていると、
 不意に視界がブレるような奇妙な感覚がした。
 (えっ?これって、前にも似たことがあったような・・・)
 シンタローの意識はブラックアウトし、彼は気を失った。

 (うーん・・・)
 シンタローが椅子の上で気がつくと、何故か机の引き出しが頭の上方にあった。
 「ニ゛ャーッツ!!(何だこれーッツ!!)」
 と、シンタローが思わず叫ぶと、猫の鳴き声が聞こえた。
 (今、ものすごく近くで猫の声がしなかったか!?)
 シンタローが身を起こすと、肩口から、ブカブカの総帥服が滑り落ち、黒い被毛に包まれた小さな前足が目に入った。
 試しに手を振ってみると、動かしたのと同じ様に黒い猫の手も動く。
 (ってことは、もしかして俺の手!?)
 ―――シンタローは再び意識を失った。

 目が覚めると、シンタローは猛烈に怒りが湧いてきた。
 (こんな変な薬を作るなんて、高松かグンマか奴らしかいねぇよナ。・・・とっとと元に戻って、とっちめてやる!!)
 シンタローは椅子から身軽にトンッと飛び降り、部屋を横切ってドアを開けようとした。
 しかし、ドアノブはわりと高い位置にあり、後ろ足で立ち上がり、前足でドアノブを掴もうとしても全く届かない。もし万が一ドアノブに届いたとしても、レバー式ではなく丸い形であったので、猫の手では回せない可能性があった。
 シンタローは非常にムカついたが、ふと、(窓の鍵なら手が届くかもしれない)と思いついた。
 軽く助走をつけて、窓際の観葉植物の脇に飛び乗ると、ドアの鍵には何とか手が届いた。苦労して前足で鍵を開け、さらに窓を開けて下を見ると、彼は高所恐怖症ではないにもかかわらず、あまりの高さに目が回りそうになった。
 (このままだと、いくらなんでも下に降りられないし・・・。足掛かりになりそうなものは、っと)
 シンタローが辺りを見回すと、少し離れた所に大きな木があり、その枝が総帥室の下の方までうまい具合に伸びていた。人間は無理そうであるが、猫の体重ならなんとか持ちこたえられそうであった。
 シンタローは、窓からヒョイッと枝に飛び降りた。枝は少々しなったが、何とか大丈夫であった。そのままソロソロと枝を伝いながらかなり下のほうまで降りた時、シンタローは不意に足を滑らせた。
 (ヤベェ。俺、こんなんで死ぬのか!?)
 と、シンタローは思わず死を覚悟したが、難無く4つ足での着地に成功した。どうやら、猫であることが幸いしたようである。
 そこは、ガンマ団の敷地内の公園であったので、シンタローは公園を突っ切る形でとりあえず高松の研究室に向かって走った。
 空は、朝から雲行きが怪しく、シンタローが広い公園内を走っているうちに、不意に大粒の雨が降り出した。
 シンタローは猫になったせいか、水に濡れるのがものすごく嫌であったので、とりあえず、雨が当たらない公園のベンチの下に避難した。
 「ミァ・・・(何で俺がこんな目に・・・)」
 シンタローが思わず、溜め息をもらすと、
 「あれ?ガンマ団内に猫がいるなんて、珍しおすな」
 そう言って、誰かがベンチの下をのぞき込んだ。
 それは、コンビニ袋をぶら提げ、一見普通のシャツに見えるが悪趣味なヌード柄が散りばめられたシャツを着た、珍しく私服のアラシヤマであった。
 「ニャー!ニャ――ッツ!!(アラシヤマ!俺だ俺!!)」
 シンタローは必死で、アラシヤマに自分の存在を訴えたが、彼には全く伝わっていない様子であり、
 「?。必死で何やら訴えてはるみたいどすけど、全然わかりまへんな・・・。はっ、もしかして、あんさん、わてのことが好きなんどすか!?なんや、それやったら、わての部屋に連れて帰ってあげますえ~」
 アラシヤマは手を伸ばし、シンタローをヒョイっと抱えあげた。
 「ミギャーッツ!!フギャーッツ!!ニ゛ャァーッツ!!(全然違う!!どうせ連れてくんだったら、高松の研究室まで連れてけ――!!っていうか、降ろせ――!!)」
 「フフフ・・・。照れ屋さんどすなぁ」
 シンタローはジタバタと、ものすごく暴れた。しかし、アラシヤマは動物の扱いに慣れているのか一向に腕の力が揺るむ様子は無く、シンタローは暴れつつもアラシヤマにお持ち帰りされてしまった。

 さて、アラシヤマの部屋である。もちろん、シンタローは何度も来た事があったが、現在、彼は不本意に連れてこられたことと、雨で体がビショビショに濡れてしまったことで、非常に不機嫌であった。
 「あぁ、結局濡れてしまいましたな」
 片腕でコンビニ袋とシンタローを抱え、ドアの鍵を閉めているアラシヤマがシンタローに話しかけたが、シンタローは無視した。
 「とりあえず、濡れてるから乾かさなあきまへんな。うーん、これだけ濡れてたらいっそのこと風呂に入れて温めた方がええんですやろか。ってことで、わてと一緒にお風呂に入りますか?」
 と、アラシヤマがシンタローの顔をのぞき込むと、
 「フギャーッツ!!(ざけんじゃねぇッツ)」
 と、シンタローの猫パンチが飛んできた。
 至近距離であったため、避けきれなかったアラシヤマの頬にはクッキリと3本の赤い筋がついた。
 「い、痛うおす・・・。―――ハイハイ、嫌なんどすな」
 シンタローは、これで風呂に入らなくていいと思い、ホッとした。
 いったん風呂場の方に消えたアラシヤマであるが、タオルを持って戻ってくると、逃げようとしたシンタローを捕まえ、思いっきりタオルでゴシゴシと拭いた。
 「ミギャギャーッツ!!(テメェ、何すんだ!?この野郎!!)」
 とシンタローは暴れつつも必死で抗議したが、結局水気がなくなるまで拭かれ、ドライヤーで乾かされる頃にはグッタリと放心状態であった。
 「ほな、わては風呂に入ってくるから、あんさんはおとなしゅうしといておくんなはれ」
 そう言ってアラシヤマはいなくなったが、シンタローはもう逃げようという気力もおこらず、アラシヤマのベッドの上に飛び乗ると、そのまま丸くなって眠ってしまった。
 シンタローは、ウトウトしていたが、すぐ近くに人の気配を感じ、目を開けた。
 「あぁ、起こしてしまいましたか。すんまへんな」
 アラシヤマはシンタローを持ち上げると、胡坐をかいた上にシンタローを置いた。
 シンタローが振り向きかげんにアラシヤマの顔を見上げると、
 「なんどすか?あぁ、あんさんの目はブルーやなくて灰色なんどすな。猫にしては珍しい色どすなぁ」
 そう言って、アラシヤマはシンタローの頭を撫でた。シンタローは手が暖かくて気持ちよかったので、思わず目を細めた。
 「そういや、あんさんの名前を聞いてませんでしたな。首輪はしてまへんが、毛並みがええから誰かの飼い猫でっしゃろ。本当の名前があるんやろうけど、あんさんがここにいる間はわてがつけた名前で呼んでもええどすか?」
 シンタローは、一応、返事をしといてやるかと思い、
 「ミァ。(おう)」
 と答えた。
 どんな名前がええですやろか、と、アラシヤマはしばらく考えていたが、不意に、
 「―――シンタロー、というのはどうどすか?」
 と、言ったので、シンタローは目を丸くして、アラシヤマの顔をじっと見た。
 「いや、あんさんの目の色が灰色やし、なんとなくそう思っただけどす。人間の方のシンタローはんは、俺様で、凶暴で、超ブラコンどすけど、でも、とても可愛ゆうて、根っこのところで優しいんどすえ?わての一番大切な人なんどす」
 少々照れたように、アラシヤマはそう言った。
 途中まで聞いていたシンタローはアラシヤマを引っ掻いてやろうかと思ったが、最後の言葉を聞き、引っ掻くのを止めた。
 「シンタロー」
 と、アラシヤマが呼ぶと、シンタローは(呼び捨てにすんじゃねーよ。・・・今だけだからな)と思いつつも、
 「ニィ(あんだよ?)」
 と返事をした。
 「あ、納得してくれたみたいどすな。ほな、今からあんさんはシンタローどすえ~」
 アラシヤマは、嬉しそうにそう言った。アラシヤマはシンタローを抱えあげると、ゴロリと寝転がり、胸の上にシンタローを載せた。
 シンタローの背を撫でつつ、
 「あー。人間の方のシンタローはんにも会いとうおますなぁ・・・。今日はわては休みどしたけど、シンタローはんは今頃仕事してますやろなぁ・・・。わてら、なかなか休みが合わへんから、大変なんどすえ?仕事の邪魔したらえろう怒られますしな」
 シンタローは、(そんな事、知ってる)と思いつつも、背中を撫でられているうちに眠くなったので、途中からアラシヤマが何かを言っていたがもう聞いていなかった。
 「シンタロー?あれ、寝てしもうたみたいどすな。猫って暖かいどすなぁ。ついでやし、わても少し寝まひょか。シンタロー、布団に入らな風邪ひきますえー」
 そう言って、アラシヤマはシンタローを抱えたまま起き上がり、モゾモゾと布団に潜り込んだ。
 アラシヤマが、夜中にふと、目が覚めると、何故か隣には全裸のシンタローが眠っていた。
 アラシヤマが寝ぼけた頭で、
 (あれ?さっきまでシンタローが隣にいたのに、何でシンタローはんが此処に居るんやろか?マァ、ええか。どっちも可愛いことには変わりありまへんしな!)
 と、納得し、
 「シンタローはーん、裸でわてのベッドに来るやなんて、もしかして夜のお誘いどすか??嬉しおすけど、今は残念ながら眠うてたまりまへんので、朝になったらお相手しますから、待ってておくれやす~」
 そう言って、アラシヤマはシンタローの隣に潜り込むと、再び眠ってしまった。







す、す、すみません・・・!!
素敵サイト様方の素敵猫シンちゃんを見ていて、わ、私も、1度やってみたかったんですー(土下座)。
あっ、ちなみに、この猫シンちゃんは、完璧な猫です。
このままでは、美味しい状況であるにも関わらず、アラが超へタレですね☆でも、朝になると・・・(死)。
多々ツッコミ所はあると思うのですが、もしかすると後にこっそりと設定などをUPするやもしれません・・・。
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