材料を調達に出かけた際、俺は、アラシヤマが食事をしている場面にたまたま出くわした。
「あっ、シンタローはーん!!一緒に食べはりません??」
別にどうでも良かったが、どんなものを食べているのかちょっと見てやろうと思って鍋の中をのぞくと、
・・・何とも、得体のしれない嫌な感じの状態になっており、原材料が何なのかさえ分からなかった。
「・・・アラシヤマ。これ、何だ?」
「えっ?見てわからしまへんか??もう、シンタローはんはご冗談がお好きどすなぁvvまぁ、そんなところもかわいおすけど。これは、昔山で修行をしてた時に師匠から習った料理どす。“男の手料理”ってやつでっしゃろか。慣れたらなかなかの味どすえ~」
そう言って、アラシヤマが持っていたお椀をこちらに差し出すので、流れ上仕方なく受け取り、箸を付けてみた。
「※?@!?#%¥??~!?!?」
(え、えらくマズイ・・・。コイツよくこんなもの食えるなぁ。しかも、これがなかなかの味!?・・・ありえねェ。コイツって実は、暗殺よりも野戦向きなんじゃねぇの?うーん、育てられた環境って怖いゼ。なんか、コイツのことちょっとだけかわいそうになってきたかも・・・)
あまりの不味さのせいか、一瞬の間に、シンタローは本当に色々なことを思ってしまった。
「・・・アラシヤマ。まだ、材料余ってるか?」
「えっ!?シンタローはんがわてのために料理を作ってくれはりますのん?う、嬉しおす~~vv材料は、そこの籠の中にありますえ~」
「あまりにもおまえの料理が不味かったから、俺が口直ししたいだけだ。別に、お前のためじゃねェよ」
「ふふふ・・・。シンタローはんはテレ屋さんどすなぁ」
「黙ってろ。もう、作ってやらねェぞ」
「わかりましたえ~。あぁー、わては世界一の幸せもんどす~~vv」
そう言ってアラシヤマはそれ以降黙ったが、俺の一挙一動をジッと見ているので、どうにもやりにくくて仕方がない。
「ジロジロ見てんじゃねェよ」
「あっ、すんまへん。ただ、誰かがわてのためだけに料理を作ってくれるのは初めてなんで、つい、見てしもうて。わて、お母はんのことはあまり覚えてないんどすけど、もしかしたらお母はんってこんな感じかなと思いまして。昔、師匠と修行してたときは交替で作ってましたが、ホラ、師匠はどうも“お母はん”という感じやおまへんやろ?」
・・・どうして、俺だと“お母はん”って感じなんだよ!とか、色々ツッコミたい点はあったが、あまりにもアラシヤマが幸せそうだったので、今回は何も言わないでおいた。
「ホラ、とっとと食え」
「お、美味しゅうおす~!!さすがはシンタローはん!!」
そう言って、アラシヤマはガツガツと俺の作った料理を食べていた。コイツは、あの厳しそうな師匠に躾けられたのだろうか、箸の持ち方や食べ方は意外だがきちんとしている。
・・・まぁ、美味いといわれて作った方も悪い気はしない。もし、コイツがあんな不味そうな料理を作っているのを見かけたら、また作ってやってもいいかなと少しだけ思ったが、コイツに言うと調子に乗りそうなので言わないでおこう。
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