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m1
タイムトラベルという言葉をご存知だろうか。
タイムトラベルとは、よくSF映画に出たり出なかったりする、まぁ、日本語に訳すと、時間旅行。
ただし、多くの場合、時間は指定出来ず、時間の間に吹っ飛ばされる。
今のシンタローもまさにそれで。
今、総帥室を出たはずなのに。
ガンマ団の基地というところは変わってはいないのだが、辺りが何ていうか、微妙に変わっている。
子供の頃、つけた傷や、父と口論になり、眼魔砲をぶっ放し、修復したあの後もない。
妙だ。
辺りを見回しても誰も居る気配がない。
「なんなんだぁ~?」
愕然としていると、カツカツと、靴の音が聞こえた。聞き覚えのある、上に立つ軍人の歩き方。
なんだ、おかしいと思ったのは俺の気のせいか。
その足音に安堵したのもつかの間。
足音の主を見てシンタローは又愕然とせざる得なかった。
そこにいたのは自分の思っていた人物ではなく、金髪の美青年。
「何物だ。何故総帥服を着ている?」
口を開いたのはその人ではなく、隣に居たキンタローに瓜二つの人物。
不審者あつかいされ、シンタローは少し…イヤ、かなり頭にきた。
俺が総帥だ、文句あっか!と叫びたかったが、何故何故どうして叫べない。
だって、そうだろう。
シンタローは二つの仮説を立てる。
①未来に来てしまったパターン。
ここに居る総帥服を着た奴は、実はグンマかコタローの息子で、隣に居る奴はキンタローの息子である。
②過去に来てしまったパターン。
総帥服を着た青年は、父マジックであり、隣に居る奴はルーザーである。
既にタイムトラベルだと信じて疑わない時点で、結構大物だ。
シンタローは思う。
①で頼む!!そうすりゃ自分自身に会って話をすれば全て万々歳なんだ!
そーすりゃ疑惑の眼差しも無くなるってもんだろ!
「あ、俺は、その」
しどろもどろで固まっていると、キンタロー似の少年が何食わぬ顔で淡々と
「殺しますか?マジック兄さん」
と告げた。
②かよ!!
シンタローはその場にがっくりうなだれたのである。まぁ、こんなふざけた事が出来るのも、自分が青の一族の人間だと証拠着けさせるものを持っているから。
そして、二人掛かりならまだしも、一対一なら勝てはしないが相打ちにはできるだろうという思いから。
「待ちなさい、ルーザー。」
そこでマジックが静止の声を出した。

「どうしてその服を着ているんだい?君は…誰なのかな。」
口調は柔らかだが、視線は厳しく、現役総帥の威圧感がいやがおうでもシンタローを襲う。
ビク、と体が強張った。
それは仕方がない事。
シンタローにデレデレのマジックが、自分にこんなに冷たくする事なんて、なかった。
コタローが幽閉され、反抗した時も、自分が赤の一族だと思われた時も、確かに冷たくされたり、酷い事を言われたりした。
でも、こんな他人行儀は初めてで。

なんだよ。

マジックが自分を息子と認識してないと解っていても、悲しくなる。
言い難い苛々と、悲しみに襲われる。
「なんでそんな顔をするのかな?もしかして何処かでお会いした?申し訳ないが、私は覚えていないんだ。名前は何て言うの?」
相当顔が歪んでいたようだ。
名前、なんて。
アンタがつけたんじゃねーか。
ちくしょう。
ギッと、唇を噛み締め一つ呼吸を置いた後、口を開く。

「シンタロー。」

時が止まったようにシンタローには思えた。
一拍あった後、マジックが、口を開く。
「シンタロー君っていうんだね。ああ、でも、やっぱり名前を聞いてもピンと来ないんだ。君は何の用でその服を着てここまで来たのかな?私と君じゃ、外見が掛け離れている。そうは思わなかったのかい?」
どうやらマジックはシンタローが自分に成り切って何かをしようとした工作員だと思っているようで。
でも、シンタローにとってそんな事はたいした事じゃなかった。

外見が掛け離れている。

その言葉に頭からプールいっぱいの水を被されたかのような感覚に陥る。
頭がガンガンする。
自覚なんて勿論していて、だからこそ激しいコンプレックスをずっと抱いていて。
でも、アンタがそんな俺がいいって言うから。そんなの関係ないって言うから。
なのに。
やっぱり心の中、本心では違うと思ってたんだな。
悲しくなって鼻の頭がツンとする。
「兄さん。」
隣に居たルーザーがマジックに耳打ちをする。
内容はシンタローの処分。
マジックはそれでもいいかとは思ったが、この黒髪の青年を何だかとても気になって。
頭を横に降る。
ただの気まぐれ。
そして、自分に処分を任せて欲しいとルーザーに耳打ちをする。
ルーザーは潔く解りましたとだけ告げたのだった。
「シンタロー君、君の処分は私が決める。ついてきなさい。」

聞いた事のない冷たい声。
そして、背を向け歩き始める。
俺なんかが何か攻撃しても怖くねぇって事かよ!
自分を受け入れたわけでは決してないという事は、マジックの出すオーラでわかる。
後ろに目がついているみたいに、明らかにこちらを警戒していて。
ルーザーが、早くしろと言わんばかりの怒りとも取れる瞳でシンタローを見る。
その瞳の奥が妖しく煌めくのは、シンタローが少しでもおかしな行動を取れば秘石眼を発動させようとしているのだろう。
だが、シンタローの性格上、「着いてきなさい」と言われ、ハイ、解りました!と言える性格では決してなく。
シンタローは段々苛々してきた。
なーんでこの俺様が親父ごときにへーこらしなきゃなんねぇんだヨ!
ムカつく!!
だいたいよぉ、俺だって、好き好んでこの時間、この場所に居るわけじゃねぇんだ!
勝手に!そーだよ、勝手に何かが俺をここに飛ばしたんじゃねーか。
美青年だからってチョーシこいてんじゃねーぞ!
見てろよ!クソ親父ッッ!!
シンタローは右手をマジックに向けた。
武器は何も持っていない状態なので、ルーザーも、片眉をピクリと動かす位で特に動かない。
シンタローは溜め無しで、叫ぶ。
「眼魔砲ッッ!!」
右手から青い閃光が飛び出し、マジック目掛けて一直線に飛んでゆく。!
「なに!?」
ルーザーが叫ぶが間に合わない。
これはマジックの後頭部にクリーンヒット!と思いきや、マジックは紙一重で眼魔砲を交わす。
「チッ!!」
シンタローは思わず舌打ちをした。
すぐにルーザーが自分を押さえつけに来るかと思いきや、動かない。
マジックもその場に立ち尽くし、幽霊でも見たかのような驚きの眼差しでシンタローを見る。
「その技は一族のものしか使えないはず。どうして一族じゃない君が使えるんだい?」
彼等にとっては余りに驚く事態だったのだろう。
先程の余裕しゃくしゃくマジックが、少し、ほんの少しだが、温かさを持った声で話し掛ける。
ここで俺はお前の息子だと言えばいいのだが、シンタローは先程の出来事でかなり腹を立てていたので何も核心に触れず、一言。
「テメーにゃ何もカンケーねぇだろ。オラ、来いよ。俺様に命令するなんて後約30年早えぇんだヨ!」
構えて戦闘体制に入る。
すると、マジックがツカツカとこちらに寄ってきて、シンタローの間合いの一歩手前でピタリと止まった。

そして、上から下まで舐めるような視線。
シンタローの額が怒りでピクピク動いた。
何だこの、人を値踏みするみてぇにみやがって!
シンタローが自分から間合いに入ろうと動こうとした瞬間。
「実に興味深いね、君は。」
ニコリと屈託のない笑顔をされ、シンタローはやる気を削がれる形となった。
「黒髪黒眼の青の一族は居なかったと思っていたが、どうやら私の思い込みだったようだ。一族同士の争いは絶対してはいけない事。」
マジックはそこで一旦言葉を止める。
シンタローへ、もっと近付くと、長い黒髪をマジックは持ち上げ、あらわになった耳元に自分の唇を近づけた。
そして、シンタローにしか聞こえない程の大きさで耳打ちをする。

殺す前に気がついて良かったよ。

その言葉を聞いた瞬間、シンタローは背筋が凍るのを感じた。
そんな事を本人に言うなんて、神経がおかしい。
「良かったら一緒に夕食でも。」
悪びれもなく、そう言ってのけるマジック。
嫌だ。
そう思ったものの、彼の鋭いオーラのせいで、シンタローは大人しく首を前に倒すより他なかった。
あれほどまでに自分を処分しようとしていたルーザーも、シンタローが一族の証明ともいうべき眼魔砲を打ってから態度が違う。
同じ同士というように、シンタローを見る。
気まずさと、圧力の中、シンタローはマジックとルーザーに連れられ、ガンマ団基地を後にしたのだった。









「ねぇ、シンタロー君。君は何処から来たの?私達の他にも一族の血を受け継ぐ人は君以外にもいるの?」
先程の事があり、シンタローが大人しくついて来たあたりから、マジックは年相応の顔に戻り、根掘り葉掘り聞いてくる。
自分達以外にも青の一族はいるのかという興味なのか、それとも殺意なのかは解らないが、それでも目を輝かせて聞くもんだからシンタローも答えてやる。
何分美少年には弱いのだ。
彼の場合は美青年なのだが。
「ああ、居るよ。」
「沢山?」
「沢山って程じゃねーけど。」
「ねぇ、どれ位?名前教えてよ!」
「ああ―――。」
ここでシンタローはマジックにアンタが俺の父親なんだ、と言おうとしたが止めた。
もし言ったら、コイツの弟、ルーザーの死も話さなければならなくなるだろう。
自分の弟、ましてや本人を前にしては気が引ける。
「弟のコタロー、兄のグンマ、従兄弟のキンタロー、で、俺の4人だ。」
「君のお父さんは?」
ドキリとした。
アンタだアンタ!!
そう思うが、父親であって父親でないマジックにそんな事は言えない。
しかもその話しをすれば、あの、ややこしい事件の話もしなければならない。
なので、つい、とっさに
「親父は産まれた時から会った事がない。顔も名前も知らない」
と、嘘をついてしまった。
元来シンタローは嘘が下手である。
ちなみに父マジックを騙せた事はただの一度としてなく。
しかし、今のマジックなら…自分より少し年下であろうと思うこのマジックならば!!と、思いついてみた。
案の定マジックは「そうなんだ。」と、やけにあっさり言い放ち、さっさと違う話題に話を反らす。
シンタローはホッと胸を撫で下ろした。
「じゃあ、他の人も君と同じ黒い髪の黒い瞳なのかい?」
その台詞に、先程言われた“外見が掛け離れている”と、言われた事を思い出し、シンタローは又嫌な心拍数が上がる。
カラカラに渇いた喉から、ようやく搾り出した声は「いや…」だけで。
マジックはそれがシンタローにとって自分達ではない青の一族で自分だけが異質な事を気にしているからシンタローが暗くなったとちょっとズレた事を考えた。
まぁ、事情を知らないマジックなのだから仕方のない事なのだが。
「髪の色が異なっていても、目の色が違うものでも、私とシンタロー君は青の一族だ。同士に他ならないんだよ。」
そう言うマジックにシンタローは複雑な顔をした。
マジックの悪意のない握手も、何もかもが気に入らない。
早く元の世界に戻りたい。
「もっと君と話がしたい。」
「や、やっぱ俺…帰る。」
帰る。と口に出したものの何処に帰ればいいのか。
自分の家はガンマ団基地内。しかも次元の違う。
「そんな、ね、もう少しだけ。シンタロー君は私に会いに来てくれたんじゃないのかい?そんな格好までして私に会いに来てくれたんじゃ?違うのかい?」
違うわい!俺は只単にいつもどーり総帥業務を全うして、家に帰ろうと部屋から出ただけだ!勝手になんか知らんがここに飛ばされたんだよッッ!!
黙っていると、調度赤信号らしく、乗っていた車が止まった。
今しかチャンスはないと思い、シンタローはドアを開けて脱走してみせたのだった。
「シンタロー君ッッ!!」
マジックも慌てて車から降りようとするが、
「兄さんッッ!!」
後ろからルーザーが叫んだので、マジックは一瞬留まった。

振り向くとルーザーが神妙な面持ちでこちらを見ていた。
何も言わずマジックが又シンタローの元へと走り出そうとしたとき。
「やっぱり、少しおかしいですよ、兄さん。あの、シンタローという男は。確かに彼は一族でしか撃てない眼魔砲を撃ちました。しかし、青の一族に黒髪は産まれません。黒髪は…」
「ルーザー、その話は後にしよう。直ぐシンタロー君を連れて戻ってくるから、先に弟達の元へ行ってくれ。」
それだけ言うとマジックはシンタローの元へと走り出した。
ルーザーは小さくなる兄の後ろ姿を見つめる。
「黒髪は敵の色だと私に教えたのは兄さんなのに。」
ルーザーの呟きは風と共に消え、ルーザーは運転手に車を出すよう指示を出した。










「ま、待って!シンタロー君!!」
既に遥か彼方にいるシンタローに、マジックは金髪をたなびかせ追い掛ける。
知りたい、もっと知りたい。
マジックにとって、こんな事は初めてだった。
人にこんなに執着したのも、全速力で走っているのに追い付かない人も。
益々興味がそそられる。
既にマジックの興味は一族より、シンタローで。
父親が死んでから、マジックは人の上に立っている。
そのせいか、自分の思い通りにならない事がなくなっていた。
例え思い通りにならなくても、力で捩伏せて。
でも、シンタロー君にはそんな事したくない。
何故かそう思う。
興味があるのだ。彼の事なら何でも知りたいという興味。
「チッ!しつけーな!昔から!」
シンタローは後ろから走ってくるマジックに悪態をついた。
一人にさせてくれ。
頼むから!
俺だって混乱してるんだ。
アンタは俺の痛い所ばっか突きやがる。
アンタの質問に、答えたくねぇ。
シンタローがもう一度後ろを振り向くと、マジックの姿が見当たらない。
ホッとして、速度を緩め歩く。
出てきたものの、シンタローは無一文。
しかも、目立つ真っ赤なスーツ。
たまたま羽織っていたコートが黒で良かったと、シンタローはコートを来て、赤い服が見えないようにした。
「どーすっかな。」
プラプラ歩いて、入り組んだ路地を曲がる。
どっか寝る場所と食い物は確保しねーと。
ブツブツ言いながら路地を下向いて歩いていたので、何かとぶつかった。
バランスを崩し、「悪い」と、言うと、何故か抱きしめられた。
びっくりして上を見上げると、そこにはマジックの姿が。
「つかまえた。」







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mns
恋人である前に親子で、でも、血は繋がらなくて。
しかも敵対する赤の一族の体の俺をあなたは愛してくれた。
でも、何だろう、この虚無感は。
ぐるぐるまわる螺旋の渦の中、ただ一人その空間で何もする事がなくただそこに存在しているのかすら解らないようなそんな感覚。
雪の日にただ一人部屋にいる感覚と似ている。
そんな気分になってしまっている。










「シンタロー…!」
「ッッとぉさ…!」
真っ暗な部屋の中、キンイロの髪だけが月明かりに照らされてキラキラ光る。
自分だけが持っていない色が今でもうらやましい。
色濃く充満する情事の臭いと、空気。
マジックの汗がダイヤモンドみたいにぱたぱたと自分の胸や腹に垂れる。
彼の全てのものは美しいのだけれど、彼にちっとも似ていない自分の全ては醜い。
それでも。
「綺麗だよ」
そう言って貴方が嘘をつくから。
騙されてる振りをしなければならない道化の自分。
「好きだよ、愛している。」
そう貴方が狂言を吐くから。
悲しみを押し殺して偽り続けるしかない自分。
彼の一番激しくも美しい部分に貫かれ、醜く汚い自分はよがって、まるで窓に写る満月のように美しい彼を抱きしめる。
絶頂時のその瞬間だけ、シンタローはマジックに愛されていると思える。
熱い体を抱きしめるマジック。
小さい頃から情事の後のキマリゴト。
「ねぇ、シンちゃん。パパの事好きって言ってよ。」
マジックが覆いかぶさる形で抱きしめあっているから、お互いがお互いの顔は見えない。
マジックがどんな顔をしているか、なんて解らない。
シンタローは無表情のまま。
「調子に乗ンな。」
と呟く。
これ以上惨めにさせないで欲しい。
アンタが抱いているのは俺じゃない知らない想像でできた奴。
小さい時みたいに、もう、アンタの言葉を素直には聞けない。
「なんでなんで!?シンちゃんのケチ!!」
ふーんだ!とか言ってるのに、ぎゅーっと抱きしめる。
お願いだから止めて欲しい。
そうやって俺の心を壊さないで。
痛くて痛くてたまらないんだ。
アンタは遊びなんだろう。マジックの方を向くと、マジックはふて腐れてるらしくシンタローと同じ方向を向いていて。
シンタローはマジックの金髪を見つめる。
肌と肌がくっつきあっているから温かい。
心もそうだったらいいのにと、切に、切に、願う。

それが出来ないのは重々承知の上で。
きっと近いうちに自分はこの男から離れるだろう。
いや、離れなくてはならないのだ。
彼なら一人でも大丈夫。
自分がいなくとも何でもできる。
シンタローは静かに瞼を閉じた。
「シンちゃん、寝ちゃったの?」
マジックの声が近くで聞こえる。
声を発するのも、マジックの顔を見るのも苦しくて嫌なので、シンタローは眠った振りをした。
ねーねーシンちゃん!とか、起きてよつまんなーい!とかマジックが一人言っていたが、一行に何もアクションを取らないシンタローに、マジックは目を細め、愛おしそうにシンタローの髪を撫でた。
サラサラと髪を弄び、シンタローの頬にキスを落として。
「おやすみシンタロー。愛しているよ。」
そう呟いて布団をかける。
マジックの寝息が聞こえてから、シンタローは声を殺して泣いた。










「シーンちゃんっ!今日はパパと一緒にドライブに行こうよ!ねっ!」
総帥室に有無を言わさず勢いよく入ってきて、ウインクをする。
マジックだから様になる行為だ。
「やだ。」
「えっ!シンちゃん結論早くない?たまにはいーじゃないか!ね?」
「なーにが、ね?だ!馬鹿親父!俺はアンタと違って忙しいの!」
マジックは一切見ないで書類をチェックし、秘書達にココにこれを持っていくように手配しろ、これにはサインできないから責任者にもう一度確認してこい等と指示を出す。
「たまにはいーじゃないか!パパと遊ぼうよ!」
「だーめ!」
べっ、と舌を出して書類にサインをしたり、読んだりしていると。
「あああああ!!」
マジックが急に巨大音声で叫んだのでシンタローを含め秘書達も動きが止まりマジックを見た。
「な、何だよ!どーしたんだ!?」
回りをキョロキョロ見るシンタロー。
「今の顔凄くカワイイ!ね、もう一回やってよ!今ハンディカム持ってくるから!」
はぁはぁと興奮しているのだろう。
床には鼻血の血飛沫が噴射されていた。
秘書達はげんなりとし、シンタローの安否を心より心配した。
変態親父で可哀相にと、秘書達の心はいつも一つ。
しかし、シンタローは、この父親の演技に騙されないぞと思うが、騙されたふりをしないと、もうマジックに振り向いて貰えなくなる、と思っていた。
偽りでもいい。彼の愛が欲しい。
渇望するほど。

「親父…キモイ。」
「ガーン!パパ、すっごいショック!」
「ガーンって口で言うな。ムカツク。」
そこまで言われてもマジックはシンタローにイチミリでも近づこうと必死になる。
そうまでして好きなのだ。
何をされても、何をしても愛おしいし、愛していける自信がある。
きっとこの世にシンタローがいなくなってしまったら、この世界になんてこれっぽっちも興味がなくなるだろう。
下手したら彼は自殺をしてしまうかもしれない。
シンタローの元へ行きたくて、シンタローの元へ近づきたくて。
でも、この世が自分とシンタローだけしか残らなかったら。
そう考えると、私はシンタローとアダムとイヴになれる気がするよ!
シンちゃん大好き!!
マジックの脳内の99%はシンタロー。
残りは生活する為の基本的なことだったり。
「一緒にドライブしてくんなきゃ、パパ本気で暴走するよ…。」
「はぁ?!ふざけた事言うな!!壊れた所テメーの金で直せよな!!」
「秘石眼使用にするから、全部立て直すようかもね。」
「おまっ!息子脅してんじゃねーよ!」
でも、やるといったらやるだろう。
それは側に居た秘書達も解っているようで。
真っ青になって少しカタカタと震えている。
シンタローがマジックと違う所は他人も大切にする所。
団員達に戦闘任務でもないのに怪我をさせるわけにはいかない。
しかも相手は世界最強と謳われた覇王・マジックなのである。
「わーったよ!」
仕方なくマジックの誘いを受ける。
情事をする時以外は余り会いたくない。
本当に自分を愛してくれているのかもしれないという淡い期待をしてしまうから。
父親と関係を持ってしまった当時はまだ良かった。
親子同士という関係に葛藤しているだけだったから。
でも、今は…。
愛していると知ってしまったから、もう遅い。
親子での恋愛ができるはずがないし、多分マジックが遊び相手として手っ取り早く遊べる相手が自分だったのだろう。
昔好きだった人に似ているらしいとハーレムに聞いた事がある。
だが、それのせいではないと核心めいた思いがある。
そうじゃない。そうではないのだ。
俺が恐れているのはそんな事じゃなく、マジックに愛されていない事。
アイツの“愛”の感情が、意味が、強さが、思いが、俺の持つ意味と温度と掛け離れているのではないかという不安。


いくら愛してると言われても、嘘だと思ってしまう。
「じゃ、シンちゃん一緒に行こうね!ね、ね、何処行く?あ、そうだ。今度オープンしたフランスのお店凄く美味しいんだって!ねーねーシンちゃん、そこ行こうよ!」
凄く楽しそうにシンタローの腕を掴み、ジェット機に乗せる。
ここでもマジックの好みのように振る舞わなければ。
いつものツンツンした、父親大嫌いの自分を演じなければ。
シンタローは嫌々なようにジェット機に乗り込む。
ふて腐れているようにして、マジックの顔は見ず、ずっと窓の外、下を見下ろす。
「シンちゃん、綺麗な夜景だね。」
ふ、と、時折見せる大人の顔。
思わずぱっ、とみやると、マジックも先程の自分と同じようにジェット機から外を眺めていた。
「シンちゃん、夜景好きなの?」
目が合った。
反らしたいけど反らしたくない。
なんだか反らしたら負けみたいな意味のないプライド。
「別に。」
「あ、でも、これから行くお店もすっごく夜景が綺麗なんだよ。」
「あっそ。」
「シンちゃん。」
「あんだよ。」
「怒ってる?」
「……。」
怒ってなんていない。
でも、怒ったふりをするほうがアンタは好きなんだろ?
だから。アンタの為に今俺は怒って居る俺を演じる。
「当たり前だろー?ったく!仕事に差し支えたらどーしてくれんだ!」
すると困ったように笑うので、どうしていいか解らず俺はまた、目を窓の外へ這わせた。









マジックのオススメの店に着いた。
高い建物の最上階、Vipルームの窓際に腰を降ろす。
客は自分達しか居なく、黒服が数名自分達専用のように居るだけだった。
聞けば貸し切りにしたとの事。
ふぅん、と、シンタローは素っ気なく返事をし、窓の外を見た。
「ね?綺麗だろう?」
「まーな。」
肘をついて、頬に手を置き、さして興味なさそうに努める。
「シンちゃん、機嫌直して?ね?あ、ホラホラ!シンちゃんワイン来たよワイン!」
黒服がワイングラスと、氷の入ったワインを持って来て、グラスをマジックとシンタローの前に置く。
マジックはシンタローのご機嫌取りに必死で。
だってシンタローと二人で居る時の時間はお互い楽しくありたい。
愛してるから。それは当然の事。
「ホラホラ、シンちゃん飲んで飲んで!ね?」
そう言われてシンタローは一気にワインを飲み干した。


喉にアルコールが流れ込むのを感じる。
「もっと!」
そう言って黒服からビンを奪いそのままラッパ。
ゴクゴクと喉が上下に動く。
「俺、焼酎飲みたい焼酎!冷で!!」
「シンちゃん、ココは焼酎ないよ。ワインかシャンパンで我慢して?ね?」
う~…と、シンタローは唸ってマジックを見た。
マジックはヤレヤレと言った様子で黒服にワインの追加を頼む。
「飲めとは言ったけどね、お前はアルコール余り強くはないんだから、ほどほどにしなくちゃダメだよ。」
「ふん!」
鼻息をして、また、そっぽを向いた。
カボチャのポタージュが出てくる頃には、シンタローは既にベロベロに酔っ払っていて。
マジックはアルコールが強くザルなのだがシンタローは弱い方なのだ。
マジックは心配そうにシンタローを見るが、シンタローは我関せずの勢いでポタージュを飲んでみたり、ワインやらシャンパンを飲んだりしていた。
「つーかさぁ、親父わぁ~俺の事遊びなんだろぉ~?」
メインのロブスターをくわえながらシンタローにいきなり言われ、マジックはむせた。
酔っ払った勢いで思いのはけをぶちまけようというシンタローの魂胆だ。
というか、酔っ払っているのでそこまで頭は回らないが。
「なに言ってるんだいシンタロー!遊びの訳ないだろう?」
この子はまた、訳の解らない事を…。
私が遊びで息子を抱く訳がない。
お前だからなのに。何で解ってくれないのか。
「ふぅん、そぉ。」
そう言ってシンタローは料理に手をつけ始める。
デザートまで綺麗に食べ終えたが、それ以降マジックがいくら話し掛けてもシンタローは何も返事をする事なく、ただ、黙々と料理を食べ続ける。
「これウメー!」
「じ、じゃあさ!パパが同じの作ってあげるヨ!」
「このモンブランタルトお代わりー!後5つ追加!!」
こんな感じである。
そして、店から出た途端、ふらりと倒れ、慌てて抱きしめるマジックの胸の中ですかすかと気持ちよさ気な寝息が聞こえ、マジックは安堵のため息をついた。










シンタローが目覚めると、そこは車の中。
マジックが左側で運転をしているのが解る。
一旦目を開けたのだが、眠気には勝てず、シンタローはまた、眠りの中に身をゆだねたのだった。




連れて来られたのは高級ホテル。
シンちゃん起きて、と、何度かマジックが声をかけたが、安眠を貪るかのようにシンタローは起きなかった。
マジックは浅いため息を一つして、シンタローをおぶさりホテルのロビーに入る。
車の中で電話をしておいたらしく、支配人がすぐに来て、Vipルームに案内された。
息子様を連れてゆきますよ、という支配人に、マジックはやんわりと断り、カードキーを受け取って部屋に入った。
薔薇の香の立ち込めたフランス形式の部屋のベッドにシンタローを寝かす。
「う…ん。とぉさん…。」
寝言で自分を呼ぶシンタローに、マジックは酷く欲情をし、赤くなった顔を誰に見られるわけでもないのに口元を手で押さえた。
「シンタロー…。」
愛しい愛しい息子。
そして、居なくてはならない最愛の恋人。
こんなに愛しているのに、何で思いが伝わらないのか。
遊び…本気でシンタローは私がそう思っていると考えているのか。
そんなはずないじゃないか。
どうすれば伝わるんだろうか。
私のお前に対する、張り裂けんばかりの愛情を。
言葉と体と態度しか、私の凡人な脳では解らない。
さらり、と、シンタローの髪をとく。
そして、額にキスを落とそうとした時。
ぱか、と、シンタローの目が開いた。
「て、テメー、今、寝込み襲おうとしたダロ。」
「シ、シンちゃん、おはよー!」
「まだ夜だバーカ!!」
まどろんだ顔で、とろんとした瞳でマジックを見る。
アルコールのせいで、声もいくらか枯れているようだ。
「父さん、抱っこして。スリスリ抱き抱きして。」

!!?

一瞬何が起きたか解らなくなった。
マジックは後ずさり、冷や汗を流す。
このこは言っている意味が分かっているのか、寧ろ、本当にシンタローなのか
一方のシンタローは、やっぱりな、と自笑した。
やはりマジックはこういった素直な自分は嫌いなんだ。
でも、本心ではいつも一緒に居たいと思うよ。
いつも貴方に触れていたいし、触れられていたい。
でも、演技するのはもう疲れた。
貴方に恋焦がれるのも、もう…。
「何でもナイ。俺、明日会議だから帰るわ。親父は休んでから帰れよ。」
ア然としているマジックに悲しそうに笑いかけ、ふらつく足を気力で立たせ部屋を出ようとする。
これでハッキリしたじゃないか。
アイツは俺にベタベタすんのは遊びだから。
こっちが本気を見せれば逃げてゆく。



言ってしまって後悔の気持ちはさらさらない。
本心を知りたかったのは嘘ではないし、疲れてしまったのも事実であることに変わりはないのだから。

「シンタロー、待って。」

なのに。なのに何でこいつは俺を引き止めるのだろうか。
やめて、やめて。
期待している自分が出てくるから。
引き止めないで。そっとしておいて。お願い。
「どうしたの?何時ものお前らしくない。」
そりゃそうだ。俺らしくないだろうよ。
何時もの俺は作ってる俺。アンタに好かれる為に必死になってアンタの好みにしているんだから。
「どうもしねぇよ。」
それだけ言うと、シンタローは又部屋から出ていこうとした。が。
きゅっ。
後ろから温かい温度が伝わる。
抱きしめられているとその時気付いた。
強いけれど優しく。優しいけれど逃れられないように。
「誘ってくれたの?」
「違う。」
そうじゃ、ない。そうだけれど、そうじゃない。
一番重要な要点はそこではないのだ。
「何で泣くの?」
「アンタが!アンタが…っ!」
「私が?」
「アンタが俺の事、本当は好きじゃないから。」
自分で言って苦しくなる。
思っているだけと、口にするのでは重さが違う。
「これが本当の俺なんだよ父さん…。アンタの考えてるシンタローは作りものなんだ。」
さぞやガッカリするだろう。
今まで自分好みに育て、遊びで付き合った最も信頼していた息子に裏切られた心境だろう。
でも、我慢できなかった。
狂ってしまうかと思った。
これ以上もうどうにもならないところにまで来てしまったんだ。
「シンタロー…。」
呼ばれても、顔は見れない。
ただ、マジックの唇から出る息遣いがシンタローの耳を掠め、回されている腕から、まだマジックが自分の側から離れない事を知る。
だが、次の瞬間、マジックの温もりが消えた。

ああ。

やはりな、と、シンタローは思う。
遊びで付き合った手っ取り早い奴。
いきなり本気ですと言われても引くしかないだろう。
わかりきっていた結果だったのに。
何でこんなに涙が溢れるんだろう。
「シンタロー、こっちを向きなさい。」
背後から聞こえる父の声に、シンタローは黙ってマジックの方へ体を向ける。
溢れる涙はどうしても止める事ができなくて。
ポロポロ零れる涙をそのままにしてマジックを見た。
.



ぺろり。
マジックの舌がシンタローの頬に流れる涙を舐めた。
「お前の事をどれほどまで私が愛しているかということをどう表現すればお前は解ってくれるの?」
悲しそうに眉を潜めて、シンタローの視線に立っている父。
ポロポロ涙を零し、信じられない顔でマジックを見る息子。
「うそばっ…かっ!」
「嘘じゃない。」
「じゃあさっき、なん、で…!」
何で誘ったら引いたの?
自分の好きなシンタローはそんなことしないからでしょ?
「さっきは嬉しくてね。お前は本当におかしな子だね。何で私に愛されてないなんて思ったの。私にはお前しか居ないのに。お前が私の全てなんだよ。シンタロー。」
「コ、コタローも、グンマも、キンタローも居るじゃねぇか。何で血の繋がらない俺がアンタの一番だなんて思えるよ!」
「それでも私の一番はお前なんだよ。シンタロー。」
愛しているよとキスをされた。
角度を変え、何度も何度も。
息継ぎの時に壊れたレコードみたいに愛していると囁かれて。
いいの?俺の思い過ごしだったって自惚れていいの?
「っふぁ、父さん…。」
「なんだい?シンタロー。」
「愛してる。」
初めて言われた愛の言葉に、マジックは顔が赤くなるのを感じた。
「私も愛しているよ。」
「ふ、親父、顔真っ赤だぜ?」
「シ、シンちゃん!からかわないの!」
「あははは!」
何だ。すっげー簡単な事じゃん。
愛してるって素直に言えばよかったんだ。
そうすれば早くこーんな珍しい親父の顔が見れたのに。

愛している。

たかが言葉。されど言葉。
言葉の魔法。










終わり
ms
士官学校時代から、シンタローの周りは男ばかりで。
それは変な意味ではなく、友達、クラスメート、教師、血縁者、どれをとっても女性とかかわりあいがない。
隔離された空間の中にシンタローは居た。
シンタローは顔は良い。
自分で自画自賛しちゃうだけはある。
漆黒の長い髪に、オニキスの瞳、すらっと延びた手足、そして体には無駄な贅肉は付いていないしなやかな体。
そんなシンタローだってお年頃、なのである。
同室のアラシヤマ、士官学校で右隣の部屋のミヤギとトットリ、そして左隣のコージがシンタロー達の部屋に集まってする話しといえば…。
そう、怖い話しなんかではなく猥談。
「トットリィ、おめ、まだドーテーなのかぁ?」
「なっ!ミヤギくぅん!そげな事大声で言わんでほしいだっちゃ!!」
恥ずかしいっちゃ!と、ミヤギの口元を押さえるが、ミヤギはただ単に質問しただけなのだからごまかせばいいのに。
そんな事したら“僕はドーテーです”と言ってるようなものなのだが、幸か不幸かその事に気付いていない。
「そーゆーミヤギはどうなんじゃ。」
この中では1番年上のコージが素朴な疑問を投げかける。
「あ、そっか。ミヤギくんもドーテーだっちゃね。」
口を押さえていたトットリがミヤギの代わりににこやかに答えた。
その言葉を言った瞬間、ミヤギの周りが絶対零度に。
ギギギと錆び付いた人形のようにミヤギを見ると鬼の形相とはまさにこの事、なミヤギがトットリを睨み付けている。
あわあわとしながらミヤギの口に当てていた手を離す。
「余計な事は言わなくていいべ、トットリィ~」
「ゴ、ゴメンだっちゃミヤギくぅん!」
この二人の小競り合いにももう慣れているその他3名は、気にせず話を続ける。
しかし、シンタローは、どうもこのテの話は苦手だった。
と、いうより、シンタローもドーテーなのだ。
深く言うと、処女ではない。
もっと言っちゃうと、シンタローは実の父であり、上司でもあるマジックと肉体関係を持っていた。
だからこのテの話になるといやがおうでも思い出さねばならなくなる。
父と自分の情事の事を。
「悪い事したかのぉ。」
「何時もの事なんだから気にする必要ねぇんじゃねぇか?」
心配するコージにそう話し掛けて、この話をここでおしまいにしようとする。
が。
「シンタローさんはどうなんだっちゃか?」

助け船を求めてトットリがシンタローに話を振った事により、話を反らす事不可能。
「あ?」
いきなり振られて目を丸くする。
「おー、気になるべ。どーなんだべか?シンタローさん。」
ミヤギも気になったらしくシンタローに向き直る。
トットリは話を反らす事が出来て胸を撫で下ろした。
「お、俺は最後話すヨ!コージ!オメーはどーなんだ!?」
「ん?わしか?」
シンタローは慌ててコージに話を振る。
振られたコージは特に気にした様子もなくあっけらかんと。
「ドーテーじゃ。わしゃ、学生の頃は野球一筋だったからのう。」
それを聞いて胸を撫で下ろす。
この分じゃ、ドーテーでも馬鹿にはされないだろう。
だってここにはドーテーしかいないのだから。
「なんや、じゃあ経験者はわてとシンタローはんだけなんどすな。」

居たんか!!

存在感というか、気配がないというか、そんなアラシヤマにその他四人の思いが重なる。
しかも、その発言により、シンタローは後戻りが出来なくなった。

アラシヤマめぇ~!余計な事言いやがってッッ!!

心の中でギリギリ歯を軋ませるが、表面では冷静な感じ。
「ま、まぁな!お前らだらしねーゾ!」
アハハーと笑ってみる。
「シンタローさんはともかくよぉ、オメいつしたんだべか?」
しかも、ミヤギにこう言われてしまってはもう逃げ場がない。
ともかくって、やっぱりもう経験者だと思われてたんだなと思うと嬉しいやら悲しいやら。
「こないだの実地の時どす。任務で何度か抱いた事がありますのや。シンタローはんかてそうどっしゃろ?」

任務!?任務でそんなことしてんのかヨ!!知らねーぞ俺は!!俺に回ってくる任務は全部健全だッッ!!

この間約一秒。

シンタローが何も言わないのをじーっと他が見ている。
心配の気持ち半分、どうだったか知りたい好奇の眼差しで。
視線が痛い。
「シンタローさん、初めての時どうだったっちゃか?」

ちきしょー!!

もう逃げられない。
喉がカラカラ渇く。
元々元来シンタローは嘘が苦手なのだ。
そこで気がつく。

親父のやってること言えばいいんじゃん!!
俺ってばアッタマいー!!

そう思えば善は急げ。もといベラベラ喋れる。
何たって子供の頃からの行為なのだ。
自分を女に置き換えて喋ればいい。

「初めての時ィ?モォ大分前過ぎてあんま覚えてねぇんだけどよォ。」
開口一番の台詞で、ドーテー組から「おぉー」と歓声が上がる。
出だしはいい感じ。
後は経験者のアラシヤマにばれない事を祈りつつ話を始める。
「最近でいっか?」
「最近!!」
「最近にしたんだっちゃか!?」
「流石シンタローさんだべな!!」
「ほぉ、あんさんいつの間に。」
皆身を乗り出してシンタローの話を聴き入る体制になる。
なんだかちょっと気分がいい。
「まーな。あん時は風呂でしたナ。」
「「「「風呂!!」」」」
四人の声がはもる。
そして、シンタローは父マジックが自分にした行為を思い出す。
確か無理矢理バスルームに入ってきて、嫌がる自分を押さえ付け、尚且つ浴槽の中でつっこまれた。
中にお湯が入って来て何とも言えない、快感と不快感がごっちゃになったような感覚。
とりあえず、男らしくない所は省いて話そうと、シンタローは気合いを入れる。
「まぁ、二人で風呂に入ってよぉ、シャワー出しっぱなしで後ろから。んで、ココ嘗めて貰ってから浴槽でもう一回。」
ココの所で自分の息子を指す。
ほぉ、と、感嘆の溜息を漏らされて、シンタローは昨晩の情事を必死に思い出す。
しかし、途中で何度か気絶してしまっている所があるので、余り深く突っ込まないで欲しいというのが正直な気持ち。
「そんで?その女子はどーだっただべか?」
「あぁん?そんなの、何度もイッてヨがってたぜ。」

恥ずかしい!

ばつが悪そうに下を向く。
そりゃそうだろう。
何たって、何度もいかされ、よがってたのは外ならぬ自分自身なのだから。
「名前はなんつーんじゃ?その、最近の子の。」
「あぁ、マ…えっと、何だったかな。忘れた。」

あ、危ねーっ!

冷や汗を隠しながらシンタローは軽い溜息を吐いた。
危うくマジックの名前を出す所だった。
しかし、皆は、流石シンタローさん、大人ーだの、いちいち名前なんて覚えないんだな、など良い方に解釈してくれて、本当馬鹿どもで助かったと改めて感謝をする。
「早ければいいってモンじゃねーよ、なぁ、アラシヤマ?」
アハハと渇いた笑いでアラシヤマに振ると、アラシヤマは何時も通りの暗い顔で「そおどすな」と呟いた。
その日はそれでお開きになり、その後一週間位たってから、シンタローはマジックに呼び出された。

「シンタロー。」
すんげぇ暗い面持ちでマジックがシンタローを待ち構えていた。
いつもは無駄にハイテンションで、薔薇をバックにしょってるようなあのマジックが、である。
少し引き気味になってどうしたのか尋ねると、目尻に涙をいっぱい貯めながらシンタローに抱き着いて来たのでぶん殴った。
「痛い!シンちゃん痛いよッッ!!」
「うるせー!変態親父!!」
頬に手を当てながら言うので、シンタローもムキになる。
「やっぱり…シンちゃんパパに飽きちゃったんだね…。」
ぽつり呟いて涙を流す。
「ハァ?何のこ「いいよ!しょうがないモン!!パパよりそのどこぞの馬の骨だか解らない阿婆擦れ女の方が好きなんでしょ!!」」
何の事だと聞く前に、自分の言葉に被せてマジックが叫ぶ。
しょうがないといいながらこの台詞。
全然しょうがないとは思っていない。
「だーかーらー」
「ごまかさなくていいよ!隊員達から聞いたよ!お前はもう童貞じゃないって!しかも名前も知らない女を取っ替え引っ替えらしいじゃないか!パパ、そんなに満足させてない!?」
「あ」
あの時の話を誰かが話したんだろうとシンタローはピーンときた。
しかも噂に尾鰭で取っ替え引っ替えときている。

どうしよう。

素直に話すのが一番なんだろうけど、

言えねぇ!!

まさかドーテーが恥ずかしく、マジックと自分の情事で、自分を女に置き換え、あまつさえマジックの立場でベラベラと自慢垂らしてたなんて知れたら!
恥ずかしいを通り越してただの馬鹿だ。
「あ、って言った!今あ、って言ったよ!!やっぱり心当たりがあるんだ!不潔!シンちゃんのやりちん!!」
「ダァーッ!!息子に欲情しとる奴に不潔と言われる覚えはないわい!!」
酷いシンちゃん!
ヨヨヨと胸元に入っていたレースのハンケチーフを歯で噛み悔しがる様は世界を手にいれようとしている世界一の殺し屋集団の総帥とは思えない。
「かくなる上は…」
ゆらりと陽炎のように立ち上がるマジック。
ふらふらしてはいるが激しいオーラが体中から滲み出ている。
「シンちゃんを殺して私も死ぬーっ!」
「何ーッ!?
つーかさっき、しょーがないって言ってたじゃねーか!!」
「さっきはさっき!今は今!!シンちゃんが他のクズ共に汚されるのを私は我慢…我慢できないんだよぉぉ!!」
「えーい!いい年した男が泣くな!!」


このヤバイ位息子狂いの男にシンタローは深い溜息をついた。
「誤解だよ、親父。俺はアンタ以外に抱かれてねーヨ。」
そう言って前髪をかきあげる。
そして、誠に不本意ながら、どうしてそうなったかのいきさつを話した。









「なぁーんだ!早く言ってくれればいいのにー!パパちょっと取り乱しちゃったじゃないか♪」
ちょっとじゃねーだろ、と心の中で突っ込んで、シンタローはげんなりとした面持ちでマジックを見た。
先程と同一人物とは思えない満面の笑みと、上機嫌な雰囲気。
鼻歌なんぞ歌いながらシンタローに又しても抱き着いてきたので今度は蹴り飛ばした。
「痛いよシンちゃん…お前の愛が痛い…。」
そして、すくっと立ち上がる。
「さて、冗談はさておき、私に心配かける悪い子にはお仕置きだ・よ・ね。」
ニーッコリ笑ってシンタローを押し倒す。
羽交い締めにされ、もう身動きが取れない。

あ゛ーーーッッ!!

なすすべもなく戴かれてしまい、この時シンタローはいつかこの家を出ていってやる!と決心したとかしないとか。
これから数年後、本当に出ていってしまうことになるのだが、それはまだマジックには思いもよらない。









終わり






rrr
「シンタローさん…俺…もぅダメっす…!」
「諦めるな!!ヤンキー頑張れ!!」











今朝、リキッドが風邪を引いたらしい。
らしいというのは、この島に医者がいないから憶測でしかないから。
パプワとチャッピーにゃ移ると大変なので、タンノの家にご厄介させて戴く事になった。
「しゃーねぇ、沙婆斗の森行って薬貰ってきてやるよ。」
「スンマセン、シンタローさん…。」
ズズッと鼻水をすすって、布団を被る。
どうやら起き上がる事もままならないらしい。
シンタローさん、優しいなぁ。なんて思っていた矢先に、自分の貯金箱を叩き壊され有り金全部持って行かれた。

鬼姑ッッ!!

しかし、何も抵抗出来ず、その光景を見ている事しかできないのだった。









シンタローは金を握り閉め、沙婆斗の森まで歩いてゆく。
別段早足でもなんでもなく。
ストーカーにも無事会わず難無く沙婆斗の森に付き、中に入ると、胸キュンアニマルのテヅカ君とタケウチ君がお出迎えしてくれた。『いらっしゃいませ~何をお探しですか?』
「風邪薬探してんだけど。超協力で一発で直るやつ。」
すると、二人はひそひそと話し合い、後ろの棚にある琥珀色の液体を差し出した。
硝子の入れ物に入っているそれをシンタローに手渡す。
『これが超強力風邪薬、風邪なおーる君デス。一発で直る代わりに副作用が出てしまうんですがいいですか?』
「副作用?」
『ハイ。あ、でも、病気になるとか、命に関わるって事はないです。作ったはいいのですが余り売れないので、1280円でいいですよ。消費税もサービスしておきます。』
チーン!とレジの音が鳴る。
強欲な二人にしては随分気前がいいなと思いながらも、自分が飲むわけじゃないので関係ないと思い、そのままお金を払って店を出た。
『ありがとうございます。』
後ろから二人の声を聞き、片手を上げて帰路につく。
パプワの顔見てから帰ろうかとも思ったが、タンノがまたウザイかなとか思って、素直にパプワハウスへと足を運ぶ。
「シンタローはーん!」

うわ、見つけたくないものを見つけてしまった!!

ガサガサと木の影から現れた変態ストーカーアラシヤマ。
右手の平に存在感アリアリのデッサン人形のトージくんも忘れずに。
取り敢えず目線を合わせないよう、スタスタと早足で歩く。

俺は何も見なかった!!

「あぁ~ん、シンタローはんたら、照れ屋なんどすから~ν」
そして、トージくんに頬を擦り寄せる。
回りは友情パワー、アイラブユー。
ハートマークがアラシヤマを取り囲んでいる。
そして、我慢が出来なくなったらしく、おもむろに、かつ、大胆にシンタローに飛び掛かった。
「眼魔砲。」
アラシヤマの方を決して見ずに溜め無しでぶちかます。
ドォン!!と、音がして、アラシヤマにクリーンヒット!
「嗚呼、愛が痛い。」
「じゃかぁしいっ!!埋まってろ!!」
罵声を浴びせた後、乱れた前髪を片手で掻き分け、長い髪をなびかせ、スタスタと歩いて行ってしまう。
「嗚呼ッッ又ロンリー!!」
そう叫んだ後、埋まった首を少し下げると目の前にトージくんが。
以下、アラシヤマの妄想でお送り致します。

☆☆☆☆☆☆☆
『大丈夫?アラシヤマくん。』
「こ、この声はトージくん!!」
『今、友達の僕が助けてあげるよ。』
「嗚呼、トージくん!!やっぱり持つべきものは友達どすなぁ…。」
トージくんの友情、確かに受け取りましたえ。
嗚呼、久しぶりの友情パワーに、わて、わて、涙が滲んで前が見えまへん!!

その時だった。

ピュー、ぽて。

南風が吹いて、トージくんはぱたりと横倒しに。
ぴくりとも動かない。(注:トージくんはデッサン人形です。)
「嗚呼ッットージくん!トージくんッッ!!」
『ゴメンネ、アラシヤマくん。僕、もう駄目みたいだ。』
「そんな!頑張っておくれやす!トージくん!死なんどいて!!」
アラシヤマの悲痛な叫びが児玉したのであった。(再び注:トージくんはあくまでもデッサン人形です。)
☆☆☆☆☆☆☆

そんなことはどうでもいい俺様な姑、シンタローは、アラシヤマの叫び声も無視し、パプワハウスへと歩いてゆく。









「おう、貰ってきたゾ。」
パタンと開けると、リキッドがはいつくばって掃除をしていた。
「あ、シンタローさん、お帰りなさい…」
血の気のない顔と、元気のない声。
それでも頑張ってるリキッドの頭をくしゃくしゃ撫でてやった。
初めは殴られると思ってビビッて目を固く閉じていたリキッドだったが、シンタローが自分の頭を撫でていることがわかると、照れ臭そうに微笑む。
頭から伝わる熱い熱。

「ホラ、薬貰ってきてやったから、取り敢えず布団に入れ。」

「あ、ハイ。」

布団にモゾモゾと入り、取り敢えず目をつぶるリキッド。
シンタローは、水桶から水を少し救い、器に入れて火にかけた。
薬は水よりぬるま湯の方が早く利く。
昔、自分が熱を出した時、父親がそう言ったのを思い出した。
プクプクと気泡が上がったのを見計らって水を火から下ろし、又少し水を入れる。
少し飲んでみたが、きちんとぬるま湯になっていて、流石俺と、自画自賛するシンタロー。
「オラ、ヤンキー、少し起き上がれ。」
「ハイ。」
汗びっしょりになりながらのろのろと起き上がる。
呼吸は浅く、ほてってぼーっとした顔をこちらに向けた。
「タケウチくん所でもらってきた超強力風邪薬だ。」
「スンマセン、シンタローさん。」
コンコンと、咳をした後、シンタローから器と薬を受け取り喉に流し込む。
ぬるまったい水と、苦い薬が流れる感覚。
「今日は掃除、洗濯、料理はしなくていいから、横になってろ。」
「スンマセン、ありがとうございます。」
そう言うや否や、何かタガが外れたように、スースーという寝息が聞こえてきた。
シンタローは、少し顔を綻ばせ、リキッドの為にお粥を作り始めたのだった。












「シンタローさぁん。」
パチパチと燃える火の音と共に掠れ声のリキッドの声が聞こえる。
その声は甘えを含んでいて、いつもならそんな声は出さないのに。
やはり、風邪を引くと淋しくなるんだろうな、なんて思い、シンタローは取り敢えずリキッドの方を向いた。
「どうした。リキッド。」
「なんか体が変なんです…。」
潤んだ瞳でシンタローに訴える。
タケウチくんに貰った超強力風邪薬のおかげか、咳は出ていないようだ。
「汗かいて服が気持ち悪いんじゃねーの?特別サービスで体拭いてやるヨ。」
シンタローが立ち上がり服を取りに行き、リキッドに持っていく。
そして、水をタオルに浸した。
リキッドの布団をあげると、シンタローは見たくないものを見てしまった。
リキッドの中心部が明らかにテントをはっている。
「………。」
シンタローは見なかった事にして、又布団をリキッドの上にかけた。
が。
ガバチョ!とリキッドに押し倒される形となってしまった。
俺様ピンチ!!
「シンタローさん…俺…もぅダメっす…!」
「諦めるな!!ヤンキー頑張れ!!」
はぁはぁ、と、熱い吐息が耳にかかり、シンタローはゾクリと背中を震わせた。

静止の言葉も聞かず、シンタローのタンクトップの中に熱い指が這う。
「ひっ…」
プクリと膨らんだ乳首をリキッドはコロコロ転がした。
「ばっ…やめろ…ッッ!」
「助けて下さい、シンタローさん…ッッ。」
そう言うが早いか、タンクトップを持ち上げて乳首に舌を這わせる。
ペロリと舌先で舐めると、シンタローはヒクヒクと体をわななかせた。
「やぁ…だ、めッッ!」
「嘘ばっかり。シンタローさんのココ、もう立ち上がってますよ。」
「ああん!!」
服の上から中心部を握ると、なまめかしい声を出した。

もしかして、タケウチくんの言ってた副作用ってコレかぁ!?

ぼーっとする意識の中、ふと、そう思う。
いつものリキッドは良く言えば紳士的、悪く言えば奥手である。
そんなリキッドがシンタローに無理矢理紛いの事はしない。
かなり切羽詰まっていることが伺える。
余裕もないのか、顔も辛そうだ。
「シンタローさん…」
「…んぅ」
唇が寄ってきて、舌を絡ませる。
くちゅくちゅと咥内を犯されて、酸素を求めるが中々手に入らず涙が流れる。
シンタローがキスに夢中になっている隙に、リキッドはシンタローのズボンをパンツごと引き下ろした。
「ら、らめ!んぅ!!」
一瞬唇を離して講義の声を出すが、その唇を塞がれて、又咥内を犯される。
そして、リキッドは直にシンタローの中心部をやわやわと上下に擦った。
先端から透明の液体が溢れてくる。
尿道をぐりぐりいじくりまわすと、シンタローは切なそうな声を上げた。
「シンタローさん、スンマセン。」
「あ?あ、あ、ああぁあ!!」
唇を離されたかと思うと、もう片方の手でシンタローの蕾の中に指をつっこむ。一本、二本と増やしていき、バラバラと動かされる。
「いぁ、はぁ!!んん!!リキッ…ドぉ…!」
浅はかにゆらゆらと腰を揺らし、貪欲にリキッドの指を貪る。
「シンタローさん、スッゲー綺麗っすよ。フフ、イヤラシイ体っすね。」
バラバラ動かしていた指を今度は出し入れする。
「あ、ひぃんッッ…!そんな、だ、めぇ!」
布団をにぎりしめて快楽の涙を流す。
「ウソツキ。シンタローさんのココは、もっとって言ってますよ。」
「ひぅう…っ!!」
唇を噛み締めて快感から逃れようとするが、上手くいかない。
だが、リキッドの指が自分の蕾から抜き取られた。
「ンアッッ!!」

浅い息を繰り返し、ほてった体を落ち着かせようとした。
「あああああ!!」
ズズッ!!
濡れた音と共に蕾に圧迫感。

入れられている。
俺は今、この年下の男に犯されている。

その事実だけが脳内に描かれる。
声を押し殺す事も出来ず、快感に足を震わせ、事もあろうにリキッドの背中に腕を回した。
「すげ…気持ちいいっす、シンタローさん、ッッ!」
恍惚とした表情で見下ろされ、それで興奮したのかキュウッと中が閉まった。
「ゃ、あ、あ、そんな…ぅ…動かさ…なぃでぇ…ッッ…!!」
がくんがくんと揺さぶられ、最奥に突っ込まれた時、中に生暖かいものを感じた。

中に出された。

そう理解すると、シンタローは、ポロポロと涙を流す。
痛かったのか、恥ずかしかったからなのか、気持ちよかったからなのかは解らない。
「ふぐ、ふ、ぅぅ…」
そんなシンタローにリキッドは唇を合わせ、涙を舌で救い取る。
「どうしたんすか?シンタローさん。」
悪戯っぽい目でシンタローを見る。
薬の副作用のせいだろう。
シンタローの中で出したのに、リキッドはまだ立ち上がる。
中で大きくなっていくのが手に取るように解った。
「も、やだ…やめろッッ…」
力無く、ぐずぐすと涙を流しながらも気丈に振る舞う。
グイ、と、リキッドを押すが力が入らない。
「まだ、納まりそうにないんです。それに」
「ンアッッ!!やぅ!!」
シンタローの張り裂けんばかりの雄を握り締める。
途端にシンタローの口からイヤラシイ声が漏れた。
「シンタローさん、まだイッてないじゃないっすか。」

だから、イカせてあげますよ。

耳元で囁かれ、シンタローは羞恥のあまり目をつぶった。
又、動きを再開され、今度は口の中に指をつっこまれ、体を反転させられる。
「指、舐めて下さい。」
獣の体制で後ろから遠慮なく奥に前にと動かされる。
「ふぐっ!!んーんーっ!!」
口が閉じられない為、だらし無く唾液が流れるのを止められない。
「スゲッッ…ッハ、シンタローさんの中に俺のが入ってンのまる見えっすよ。」
「ンあ!みな…ぃで…」
訴えても、そう言われる事で感じている浅はかな自分。
膝も、まだガクガク笑っていて、リキッドの片手が腰を掴んでいなかったら落ちているだろう。
チュポン、と、シンタローの口から指を外す。
先ほどよりは酸素が吸える。
そう思った矢先、

両手でガッチリ腰を捕まれ激しいピストン運動をされた。
「あひぁ…ッッ…あ、あ、イッ…いっちゃ…ぁ!!」
虚ろな瞳に涙をいっぱい浮かべて、なすがまま、されるがままに快感を受け入れる。
リキッドがペロリと、耳たぶを嘗めた時、
ピシャァァ!!と、シンタローは精を吐き出した。
びくん、びくん、と体を震わせるシンタロー。
しかし、リキッドの動きはまだ止まらない。
シンタローがイッてから少しして、リキッドはシンタローの腹に己の精をぶちまけたのだった。









「シンタローさん、ヤラシーν蕾から俺の精が垂れ流しっすよ。」
「ンンッッ!!も、しぬ、しんじゃう」
何度も何度も中に出されたり体にかけられたりして、シンタローの体と、中ははドロドロだった。
それでもリキッドは止まらない。
流石20歳!若いだけある!
「次はシンタローさんの、舐めてみよっかなーν綺麗にしてあげますよν」
「やめ、もぅ、勘弁してくれよ…」
気持ち良すぎて足腰の立たないシンタローをいいことにリキッドはかなりヤリタイ放題。
この後、シンタローが気絶するまで事を行ったリキッドが、お姑パンチではなく、眼魔砲をぶっ放されたのは言うまでもない。





寧ろ大歓迎!
泣き付くマジック少年に、シンタローは、ソローっと手を延ばし髪に触れた。
絹糸みたいなサラサラの細い髪が指の間をすりぬける。
抵抗しないと悟と、シンタローは、ギュッ!と抱きしめてみた。

カワイイ!!コイツ、カワイイよ!!

鼻血を垂らしながらマジック少年を抱きしめる。
何時もと立場が逆転だ。
「シンちゃん。パパのこと嫌いになった?」
潤んだ瞳で上眼使いに見つめられる。

きゅーーん!

シンタローの心臓がきゅんきゅん悲鳴をあげる。
きゅんきゅんメーター只今MAX!
「ば!嫌いになんかなるかよ!寧ろ一生そのままでもいい位だぜ!」
「シンちゃん…それはそれで、パパ、複雑な気分だよ…。」
落ち込んだように、しゅんとするマジックを見て、やはり可愛くてぐりぐりしてしまう。
眠っているコタローと同じ位カワイイ顔。
いや、可愛いよりも、綺麗といった表現の方が正しいだろう。
どこと無く、高価で貴重品のような少年。
「で。また高松か?」
マジックをお膝にチョコンと乗せながら、聞く。
「うん…。」
「ったくあの野郎ろくなことしねーナ!!…っと、別に親父の顔が嫌とか言ってるんじゃねーぞ?むしろ、今の方が大歓迎だ!!」
やっぱり複雑なマジックなのでした。

でも、これってラッキーかも…。

常に前向きマジックは、今ある状況は、非常にシンタロー受けがいいことを理解した。
今だったら、一緒にお風呂に入ったり、耳たぶ舐めたり、あまつさえ夜明に熱いコーヒーをペアのストローで飲んだ後、溶けるような事をしても怒られないんじゃないか。
マジックの心に電流が走ったような衝撃が走る。
「シンちゃん。」
見上げると、鼻血を垂らしながら緩みきった表情でマジックを見る。
「ん?」
「パパ、お風呂入りたいんだけど、小さくなっちゃったから怖くってさ…シンちゃん一緒に入ってくれたら心強いな、なんて。」
「別に構わねーぜ。そーだよな、ちみたんになっちまったんだからな。」
ぐりぐり頭を撫でて。
しかし、はっとしたように思い止まる。
「その前に飯食っちまえヨ。」
一瞬自分のヨコシマな考えがばれたかと思ったマジックだったが、ばれてない事がわかり、ホッと胸を撫で下ろす。
シンタローは、椅子に座り、膝にマジックを乗っけて、スプーンですくうとマジックの口元に持ってきた。
マジックが戸惑っていると、
「ホレ、あーん。」


サービス満点…!パパ心臓発作で死んじゃうかも!!

でも、やっぱり口を開いてシンタローに食べさせて貰う。
綺麗に食べ終わった後、食器を持っていこうとするシンタロー。
行ってほしくなくて、後ろから抱きしめる。
身長の都合上、足元にしがみつく形になったのだが。
「シンちゃん、行かないで~!」
ギュッ!と抱きしめれば、シンタローは、やれやれと言う感じで食器をテーブルに置き直した。
ヤッタ!
マジックは、ウキウキした顔をして、シンタローを引っ張り風呂場まで連れてゆく。
「シンちゃんとお風呂、久しぶりだなー」
「そうだナ。」
脱衣所で服を脱ぐ二人。
しかし、このあとマジックに思いも寄らない事が起こった。
と、いうか、考えていなかったのだ。
シンタローと風呂に入る→シンタローは、裸になる→それが見たかった→自分はちみたんだが脳は大人→

…勃っちゃう!!

イケナイ!!このままじゃ、爽やかな感じの夜明の熱いコーヒー計画が!!

策略家マジックは焦った。しかし。
「親父、先入ってるゾ。」
マジックが眼にしたのは、一糸纏わぬ姿の愛しい息子。
マジックの欲望が理性に勝った瞬間だった。

ま、いっか☆気怠い雰囲気の中も悪くないもんね☆

やっぱりポジティブなのでした。

風呂場に入るとシンタローは、シャワーを頭からかけていた。
真っ黒な髪から水滴が滴るそれは、正に妖艶で。
フトモモに流れるお湯を下からそっと撫で上げたい気分にかられた。

シンちゃん!そんな無防備で!!パパ、もんもんしちゃうよ!!

「親父、体洗ってやるからこっち来い。」
そんなマジックの気持ちも知らないで、ちょいちょいとシンタローはマジックを呼んだ。
「ハーイ☆」
鼻血をぶっ放すのを何とか堪えて、マジックはシンタローの元へと移動する。
そして、チョコンと椅子に座ると、シンタローが頭から顔に掛からないようにお湯をかけてくれた。
シャーという音と共に、温かいお湯が地肌に触れる。「頭洗っちまおうナ。」
シャンプーのコックを押して、掌につけた後、初めは軽く洗い、二度目は地肌をマッサージするように洗う。
凄く気持ちが良くて、マジックは思わずうっとりした。
「シンちゃんマッサージ師になれるヨ。」
「親父は何でも誉め過ぎなんだヨ。」
でも、褒められて悪い気はしないシンタローは、気分が良い。

鼻歌混じりでシャンプーを洗い流し、リンスをしてやる。
そのあと自分も頭を洗った。
「ホレ、次は体洗うぞ。」
垢すりにボディソープを付けて、マジックの体を快調に洗う。
泡がフワフワ舞って、シンタローはそれが綺麗だな何て思う。
「親父、前向け。」
そう、ちょっと命令口調で言うのも何だか気分がいい。
さぞ喜ぶかと思いきや、マジックは上気しただけではない赤い顔をして、顔を左右に振った。
「前は自分で…」
「水くせー事言うなヨ。出血大サービスだぜ?」
「でも…。」
中々渋って前を向こうとしない。
いつもなら、シンちゃん前も洗って、背中流しっこしよう、パパにお前の体を洗わせてなどなど。しつこい位なのに。
でも、今のシンタローは、完全に自分が上の立場だと思い込んでいたので、渋るマジックの言い分を聴こうとしない。
むしろ、マジックの嫌がる事をするのが昔から好きだという考えの持ち主なので、嫌がられると益々前を洗いたがった。
「ホラ、いい子だから。」
グイ、と、前を向かせて、シンタローは一瞬時が止まったように動かなくなった。
そして、次におもいっきり赤面する羽目になる。
何故なら、マジックのまだ毛も生えていない雄が、天井に向かって生えていた、つまり、立っていたから。
「――ッッ!!」
バッ!!と、咄嗟に口元を押さえるシンタロー。
驚きと、恥ずかしさの余り声も出ない。
マジックは、下を向いてフルフルと震えていた。
又泣かせてしまうと、シンタローは我に反りマジックの目線に合わせるべく、しゃがみこむ。
「――ぃ」
「え?」
蚊の泣くような声で何かを呟いているマジックに、その声を聴こうと耳を傾ける。

「酷いよッッ酷い酷い酷いよシンちゃんッッ!!ハパ体は今こーんなにちみたんだけど、脳みそは成人男性のままなのッッ大人なのッッ!!そーんな私にそんな!そんなサービス満点の事されたらこーなっちゃうでしょ!!」
ガバッ!と顔を上げ、一気に捲くり上げ、涙ながらに訴える。
シンタローが何も言い返さない、と、いうか、余りの剣幕に言い返せないでいると、マジックは目に涙をいっぱい溜めて

「シンちゃん、責任取って。」

と、事もあろうにそう言い放った。










「ン、くぅ…っ」
今シンタローはマジックのをくわえて上下に動かしている真っ只中。
体はやはり汚れを知らない少年にまでなっていたらしく、シンタローの愛撫にいつもより感じている。
色白の体がほんのりピンク色に染まっているのが何よりの証拠。
まぁ、シンタローも又しかりなのだが。
ぴちゃぴちゃと聞こえる水音がやけにいやらしい。
「ココいいの?」
「ああ…」
何時もと立場が逆転である。
シンタローはやはり優越感に浸っていた。
何時もはマジックに良いようにされて、頭が真っ白になり、何が何だか解らないうちに高みへ連れていかれる。
実際マジックも余裕なんてないのだが、シンタローから見れば余裕しゃくしゃく。
だが、今は違う。
シンタローの頭を握りしめ、快感に体を震わせているのだ。
強く吸ってやれば、なやましい声を上げて体を強張らせる。
口の中で段々大きくなっていくマジックのモノに、シンタローも体が熱くなってきているのを感じた。
「シンちゃん、も、いいよ。」
「あ…。」
マジックがシンタローの口から己のモノを引きずり出すと、シンタローは切なそうな声を上げた。
ちゅ、と、いう音と共に、名残おしそうに銀色の糸を引く。
虚ろな目でマジックを見つめると、勝手知ったようにシンタローを四つん這いにさせる。
しばらくシンタローも、ぼぅっとしていたが、ハッ!と気がついたかのようにグリッと後ろを向く。
「ちょっ!!待てよ親父!!ま、まさか…!」
「?何?シンちゃん。ホラ、よそ見しないで。ね?」
「ャ、ヤダ!」
「此処まで来てそれはないでしょ。」

今のパパのは、そんなに大きくないし、慣らさなくても大丈夫だよね?

質問してるくせに、有無を言わせない圧力感。
シンタローの背中にキスを一つ落とし、一気に貫いた。
「や、やだぁぁあぁ!!!」


ズッ!と、こすりつけるような音。
じゅぷじゅぷとどちらとも言えない体液の音。
シンタローは涙を飲んだ。

違う。こんなはずじゃなかった。確かに今の親父の姿形は俺のストライクゾーンだし、ぶっちゃけ好きだ。だけど、こんな事をしたいとは思わない。何時もの親父とじゃなきゃ…。

嫌だとどんなに叫んでもマジックには届かない。
後ろを向いているせいか、抵抗も上手く出来ない。
「ャ…ダァ…ッッ」
「ッッはぁ…やっぱり…コレじゃ足りない?…シンちゃんは欲張りだなぁ…」
気持ち良いのか、マジックの額には汗が滲み出ていて、少し顔が歪んでいる。
そして、自分の指を二本、シンタローの中に一緒に入れた。
「…―――ッッあ!」
瞳を見開いて、ガクガクする足と腰。
嫌だと思うのに体がゆうことを聞かない。
シンタローが出来る事は、この、可愛い少年マジックが気の済むのをただ、ひたすら待ち続ける事だけだった。
「と…さんン…ャだ…何時ものとぉさんじゃ…なきゃヤダぁ!」
快感に奮えながらも、マジックに聞いてもらえなくても、シンタローは必死で訴える。
シンタローの溢れた涙が、頬をつたってポトリと落ちた。
その時。
青い光がマジックから放たれる。
眼魔砲の光と似てはいるが明らかに異質なもの。
そして、中に入っているモノの圧迫感。
シンタローは苦しそうにマジックの方を向いた。
すると、どうだろう。
徐々にではあるがマジックが段々と成長をしていく。
そして、光が納まる頃には、元のマジックに戻っていた。
「シンちゃん…。」
声も何時ものマジックで、低い。
何時も聞いている声なのに、何年も聞いていないような気がする。
何時ものナイスミドルスマイルをするマジック。
が。
「親父、痛い。抜け。」
感動の再会は出来なかった。
まぁ、こんなことやってる最中だしね。
シンタローはぶっきらぼうにそう言い放つ。
かなり複雑な心境のようだ。
何故なら、もう、あの、ど真ん中ストライクの可愛い少年には会えないのである。
情事をするのに少年マジックは嫌だっただけで、普通に居るならもうちょっと位、美少年を堪能したかった。
悔やまれる。
シンタローは、中々抜こうとしないマジックに舌打ちをし、自分から抜こうとした。
が。
ガッシリと両手で腰を捕まれ、少年マジックならともかく、この、大人のマジックには力では敵わない。


まさか…

何とも言えぬ嫌な予感がシンタローの胸を過ぎった。
「シンちゃん…逃がさないよ…。」

「ああっ!ヤッパリ!!」
肉食動物のようにどんより光る目で見つめられ、獲物であるシンタローは、なすすべなく食べられてしまいました。
風呂場には、シンタローの悲痛な声と、なまめかしい声が響き渡ったとか。











「いやー、良かった良かった。終わり良ければ全て良し!ダネ☆」
ベッドの上でかなり満足気にニコニコ笑いながらそう言うマジック。
そんなマジックとは裏腹に、精も魂も尽き果てたシンタローは、俯せになって、けだるい腰を押さえていた。

チクショー!!

涙目で睨むが、この、幸せいっぱい夢いっぱいのマジックが、ほんのちょこーっと可愛く見えて、シンタローは睨むだけに留めておく。
すると。
ボフン!という白い煙りがマジックを包み込んだ。
「何だァ!?」
上半身を起こしてマジックを見ようと目を懲らす。
すると、中から人影が。
シンタローが安堵のため息を漏らすが、なんかおかしい。
まさか、まさか。
「ゲホ、ゲホ、し、シンちゃぁん…!」
中から出てきたのはあの、少年マジック。
「何で!?元に戻ったんじゃねぇのかヨ!?」
慌ててベッドの近くにある軍用の回線で高松に電話をする。
3回目の呼び出し音で高松が出た。
「オイ、ドクター!!親父が元に戻った!戻ったつーか、子供になってる!!」
『あぁ、そのことでしたら、今解析中です。取り敢えず、実験の結果、薬は青の一族にしか聞かないということしか解っておりません。マジック様を元に戻す薬はもう少し時間がかかりますね。』

つかえねーー!!

シンタローは、結果が解り次第随時教えるように言い、高松との電話を切った。
「シンちゃん…。」
潤んだ瞳で見上げられて、やっぱりシンタローは鼻血を垂らした。

可愛い…。

「パパが戻るにはシンちゃんとエッチしないと駄目なんだよ、きっと。」

可愛くない。

「恐ろしい事を平気な顔で言うナ。」
シンタローは真顔で吐き捨てるが、ふ、と、思い留まる。
高松が薬を完成させるまで、マジックはこのまま愛らしい少年のままなのではないか。
後はもう絶対エッチさせなければいいのだ。
いける!とシンタローは踏んだ。
「元に戻らねぇなら、親父の夢を叶えてやってもイイ。」
「え?」


「ホラホラ親父!セーラー服セーラー服!!」
ピラピラと短いプリーツを持ち上げ回る。
マジックの夢。それは異常に溺愛しているシンタローにコスプレをさせる事。
マジックは先程から余っていたCDROMを片っ端から持ってきてシンタローを鼻血を出しながら撮っている。
他にもバニー、メイド、学ラン、軍服などなどの衣装が、マジックの部屋に並ばれている。
「シンちゃーん!こっち向いて手を振って!!」
「はーいはいはい!」
ちょっとやる気がなさ気な感じだが、マジックの要望には素直に答える。
だって、もう少しだけでもいいから小さいマジックと居たいから。
美少年が好きって事もあるが、自分の知らないマジックを見たいという欲望もある。
「シンちゃんかーわいー!」
「はーいはい、そりゃどーも。」
「ね、次はメイド服着てよー!それでね、それでね、パパに“御主人様”って言って~!!」
ビラリとメイド服を渡す。
一体何処からこの短時間で持ってきたのかと疑問にも思うが、言われた通りメイド服を着る。
そして、
「ゴシュジンサマ」
かなりカタコトだが、マジックは満足したように鼻血を思う存分噴射した。
「パパ、一生このままでもイイ気がしてきたよ…。」

ヨシ!

シンタローは心の中でガッツポーズを取る。
結局マジックは惚れた弱みでシンタローには勝てないのだ。










それから一週間経過して、マジックが小さくなってしまったのは周知の事実となり、高松の他にもキンタローや、グンマもマジックを元に戻す為躍起になっていた。
「シンちゃん、もーすこししたらおとーさまを元に戻す薬が完成しそーだよぉ。」
ニコニコとグンマが総帥室に朗報と言わんばかりにやってきた。
「え…。」
「良かったネ!!シンちゃん!!」
その話を聞いた時、シンタローは少しながらショックを受けた。
もう少しでということは、もう少しであの小さいマジックと離れなければならない。
確かに自分は大きなマジックになると解っているから今のマジックと何の不安もなく平気で遊べる。
でも、小さいマジックと遊べなくなるのがシンタローにはまだ心の準備が整っていなかった。
「嬉しくないの?シンちゃん。」
ぱ、と、見上げると、グンマが少し微笑んでこちらを見ている。
「別にそーゆー訳じゃねーよ。悪かったナ、自分達の開発もあるのにこっち先やってもらって。」
「ううん。僕、シンちゃん大好きだから!だからね…」
グンマはおっきな瞳を俯かせる。
男にしては長い睫毛が瞳を隠すように下がった。
「シンちゃんが、おとーさまを元に戻したくないんだったら、薬の事はおとーさまにはまだ言わないよ。」
エヘヘとはにかむグンマを見て、少し心を打たれる。
グンマは昔からそうだった。
自分の事を恨んでるだの嫌いだの泣き叫びまくるくせに、最後は笑顔でシンタローの事を思いやり全てを許す。

もう、自分だけの父親じゃねーんだ…。

昔はそれで良かったのかもしれない。
マジックは自分とコタローだけの父親だったから、自分の父親に対してシンタローが我が儘を言うのは許される事。
でも、今は違う。
マジックの子供は本当はグンマの方で、自分とは血の繋がりさえない。
そして、弟の忘れ形見、キンタロー。
実の息子二人に、弟の息子一人、そして、番人の影である自分の四人の父親的存在なのだ。
「グンマ。」
「なぁに?シンちゃん。」
「薬、出来上がり次第親父に使って元に戻してやってくれ。」
「…いいの?」
「ああ。」
グンマの言葉に少し間が空いたが、シンタローは間髪入れず肯定した。
「解った。じゃあ、高松とキンちゃんに言っておくから。」
バイバイと手を振って、ドアの開く機械音と共に総帥室から出て行った。
シンタローは椅子に深く座り込み浅いため息を吐いた。










薬が完成したとの知らせが入ったのは、グンマと会話をしてすぐだった。
軍用の電話に出ると相手は高松で、今からマジックと一緒にこちらに向かうそうだ。

ああ、そうか。

シンタローはピンときた。
薬は既にあの時点で完成しており、グンマは自分に了承を得る為に来たのではないか。
心配かけさせたなと、反省する半面、心配してくれたんだなと嬉しくも思う。
少し唇の端を上げて笑うと、プシュンと扉を開く音がして、はっとそちらへ目を向かせる。
「シンちゃ~んν」
「うっわ!!」
ちびっこマジックがここぞとばかりに抱き着いてくる。
自分の可愛さを自覚してるところが彼の暴走に拍車をかけている。
「マジック様からお話は伺いましたよ、シンタロー総帥。セックスしたら元に戻ったそうですね。」
「テメッ!伏せ字を使え!!伏せ字を!!」
「ツッコム所、そこなんですか。」
冷静な高松に、シンタローの眉間にシワが寄った。


「早く本題に入れ。」
ツッコミ所を間違えたせいで、本来ならぶっ飛ばしもののマジックもこの際我慢して、シンタローは話しを進めた。
「ああ。はいはい。」
ゴソゴソと白衣のポケットから小さな小鬢を見せる。
中には透明に、少し黄色い色が混ざっている。
「アナタとマジック様が事を致したから戻ったということは解明できていませんが、私の作ったバイオを解明し、花の花粉が原因とわかりました。なので、毒をもって毒を制す要領で花粉ベースで作りました。」
ちゃぽん、と、中の液体が揺れる。
そして、高松は、小鬢の蓋を外し、中の液体をマジックにかけた。
すると、かけた所から煙りが上気する。
これは、マジックが一時的に元に戻った時と似ている。
やはり、青い発光体が辺りを包み、その後はもちろん…。
「戻った~ν」
そこにいたのは大きいいつものサイズのマジック。
そう。いつものサイズの。
「服は…」
「え?」
ぱ、と下を見るマジック。
少年誌の法則で股間だけはさらけ出す事を免れたが、後は…。
まるでケン●ロウのように服は破け去られていて、正直ヤバイ。
「どーしよーシンちゃん!!パパこのまま廊下出られないよ!!」
「羞恥心あったんですね。」
ビビーッ!!
目からメンチビームを出したマジックのお陰で、高松はアフロになった。
余り動じていない所を見ると、某秘書を思い出す。
「チッ!!」
そんな高松アフロを見事シカトし、シンタローは総帥服の上を脱いでマジックの目の前に翳す。
中は何も着ておらず、地肌が眩しい。
「シンちゃん…ッッ!!」
感動したらしく、涙と鼻血をぶわッと吹出し、あいらぶゅー!!と突進してくるマジックにシンタローは心置きなく眼魔砲を放った。ちゅーどーん!!と爆発音が鳴り響いたが、やっぱりパパは生きていた。
「じゃ、私は失礼しますよ。マジック様、シンタロー総帥。」
巻き添え喰うのはごめんこうむるとばかりに、高松はさっさと総帥室を後に行ってしまった。
ポツンと取り残された形のシンタローとマジック。
二人きりにされてしまい、何を話せばいいのか解らない。
ちみマジックにはあんなに心を開けたのに、大きいマジックにはそれができない。
中身は同じなのに。
シンタローが何かを話しかけようとして、そわそわしていると、
「シンちゃん、有難う。」
マジックから話し掛けてくれた。

「礼ならあいつ等に言ってやれヨ。」
ついぶっきらぼうになってしまう。
マジックから話し掛けて貰ってホッとしてるのに。
大きい何時ものマジックにはこんな言い方しかできない。
嫌になる。
「パパが小さくなってもお前は私を愛してくれた。だから」

有難う。

そう言って自分を抱きしめる。
凄く心地良いのに、自分はまだ嫌な態度。
それでもマジックは無条件で自分を全力で愛してくれていて。

この腕だ。

懐かしい感じと愛しい感じがごちゃまぜになって、仕方ないって顔して抵抗を止める。
「今だけだかンナ。」
「うん。」
そう言って静かに瞳を閉じた。











おわり







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