寧ろ大歓迎!
泣き付くマジック少年に、シンタローは、ソローっと手を延ばし髪に触れた。
絹糸みたいなサラサラの細い髪が指の間をすりぬける。
抵抗しないと悟と、シンタローは、ギュッ!と抱きしめてみた。
カワイイ!!コイツ、カワイイよ!!
鼻血を垂らしながらマジック少年を抱きしめる。
何時もと立場が逆転だ。
「シンちゃん。パパのこと嫌いになった?」
潤んだ瞳で上眼使いに見つめられる。
きゅーーん!
シンタローの心臓がきゅんきゅん悲鳴をあげる。
きゅんきゅんメーター只今MAX!
「ば!嫌いになんかなるかよ!寧ろ一生そのままでもいい位だぜ!」
「シンちゃん…それはそれで、パパ、複雑な気分だよ…。」
落ち込んだように、しゅんとするマジックを見て、やはり可愛くてぐりぐりしてしまう。
眠っているコタローと同じ位カワイイ顔。
いや、可愛いよりも、綺麗といった表現の方が正しいだろう。
どこと無く、高価で貴重品のような少年。
「で。また高松か?」
マジックをお膝にチョコンと乗せながら、聞く。
「うん…。」
「ったくあの野郎ろくなことしねーナ!!…っと、別に親父の顔が嫌とか言ってるんじゃねーぞ?むしろ、今の方が大歓迎だ!!」
やっぱり複雑なマジックなのでした。
でも、これってラッキーかも…。
常に前向きマジックは、今ある状況は、非常にシンタロー受けがいいことを理解した。
今だったら、一緒にお風呂に入ったり、耳たぶ舐めたり、あまつさえ夜明に熱いコーヒーをペアのストローで飲んだ後、溶けるような事をしても怒られないんじゃないか。
マジックの心に電流が走ったような衝撃が走る。
「シンちゃん。」
見上げると、鼻血を垂らしながら緩みきった表情でマジックを見る。
「ん?」
「パパ、お風呂入りたいんだけど、小さくなっちゃったから怖くってさ…シンちゃん一緒に入ってくれたら心強いな、なんて。」
「別に構わねーぜ。そーだよな、ちみたんになっちまったんだからな。」
ぐりぐり頭を撫でて。
しかし、はっとしたように思い止まる。
「その前に飯食っちまえヨ。」
一瞬自分のヨコシマな考えがばれたかと思ったマジックだったが、ばれてない事がわかり、ホッと胸を撫で下ろす。
シンタローは、椅子に座り、膝にマジックを乗っけて、スプーンですくうとマジックの口元に持ってきた。
マジックが戸惑っていると、
「ホレ、あーん。」
サービス満点…!パパ心臓発作で死んじゃうかも!!
でも、やっぱり口を開いてシンタローに食べさせて貰う。
綺麗に食べ終わった後、食器を持っていこうとするシンタロー。
行ってほしくなくて、後ろから抱きしめる。
身長の都合上、足元にしがみつく形になったのだが。
「シンちゃん、行かないで~!」
ギュッ!と抱きしめれば、シンタローは、やれやれと言う感じで食器をテーブルに置き直した。
ヤッタ!
マジックは、ウキウキした顔をして、シンタローを引っ張り風呂場まで連れてゆく。
「シンちゃんとお風呂、久しぶりだなー」
「そうだナ。」
脱衣所で服を脱ぐ二人。
しかし、このあとマジックに思いも寄らない事が起こった。
と、いうか、考えていなかったのだ。
シンタローと風呂に入る→シンタローは、裸になる→それが見たかった→自分はちみたんだが脳は大人→
…勃っちゃう!!
イケナイ!!このままじゃ、爽やかな感じの夜明の熱いコーヒー計画が!!
策略家マジックは焦った。しかし。
「親父、先入ってるゾ。」
マジックが眼にしたのは、一糸纏わぬ姿の愛しい息子。
マジックの欲望が理性に勝った瞬間だった。
ま、いっか☆気怠い雰囲気の中も悪くないもんね☆
やっぱりポジティブなのでした。
風呂場に入るとシンタローは、シャワーを頭からかけていた。
真っ黒な髪から水滴が滴るそれは、正に妖艶で。
フトモモに流れるお湯を下からそっと撫で上げたい気分にかられた。
シンちゃん!そんな無防備で!!パパ、もんもんしちゃうよ!!
「親父、体洗ってやるからこっち来い。」
そんなマジックの気持ちも知らないで、ちょいちょいとシンタローはマジックを呼んだ。
「ハーイ☆」
鼻血をぶっ放すのを何とか堪えて、マジックはシンタローの元へと移動する。
そして、チョコンと椅子に座ると、シンタローが頭から顔に掛からないようにお湯をかけてくれた。
シャーという音と共に、温かいお湯が地肌に触れる。「頭洗っちまおうナ。」
シャンプーのコックを押して、掌につけた後、初めは軽く洗い、二度目は地肌をマッサージするように洗う。
凄く気持ちが良くて、マジックは思わずうっとりした。
「シンちゃんマッサージ師になれるヨ。」
「親父は何でも誉め過ぎなんだヨ。」
でも、褒められて悪い気はしないシンタローは、気分が良い。
鼻歌混じりでシャンプーを洗い流し、リンスをしてやる。
そのあと自分も頭を洗った。
「ホレ、次は体洗うぞ。」
垢すりにボディソープを付けて、マジックの体を快調に洗う。
泡がフワフワ舞って、シンタローはそれが綺麗だな何て思う。
「親父、前向け。」
そう、ちょっと命令口調で言うのも何だか気分がいい。
さぞ喜ぶかと思いきや、マジックは上気しただけではない赤い顔をして、顔を左右に振った。
「前は自分で…」
「水くせー事言うなヨ。出血大サービスだぜ?」
「でも…。」
中々渋って前を向こうとしない。
いつもなら、シンちゃん前も洗って、背中流しっこしよう、パパにお前の体を洗わせてなどなど。しつこい位なのに。
でも、今のシンタローは、完全に自分が上の立場だと思い込んでいたので、渋るマジックの言い分を聴こうとしない。
むしろ、マジックの嫌がる事をするのが昔から好きだという考えの持ち主なので、嫌がられると益々前を洗いたがった。
「ホラ、いい子だから。」
グイ、と、前を向かせて、シンタローは一瞬時が止まったように動かなくなった。
そして、次におもいっきり赤面する羽目になる。
何故なら、マジックのまだ毛も生えていない雄が、天井に向かって生えていた、つまり、立っていたから。
「――ッッ!!」
バッ!!と、咄嗟に口元を押さえるシンタロー。
驚きと、恥ずかしさの余り声も出ない。
マジックは、下を向いてフルフルと震えていた。
又泣かせてしまうと、シンタローは我に反りマジックの目線に合わせるべく、しゃがみこむ。
「――ぃ」
「え?」
蚊の泣くような声で何かを呟いているマジックに、その声を聴こうと耳を傾ける。
「酷いよッッ酷い酷い酷いよシンちゃんッッ!!ハパ体は今こーんなにちみたんだけど、脳みそは成人男性のままなのッッ大人なのッッ!!そーんな私にそんな!そんなサービス満点の事されたらこーなっちゃうでしょ!!」
ガバッ!と顔を上げ、一気に捲くり上げ、涙ながらに訴える。
シンタローが何も言い返さない、と、いうか、余りの剣幕に言い返せないでいると、マジックは目に涙をいっぱい溜めて
「シンちゃん、責任取って。」
と、事もあろうにそう言い放った。
「ン、くぅ…っ」
今シンタローはマジックのをくわえて上下に動かしている真っ只中。
体はやはり汚れを知らない少年にまでなっていたらしく、シンタローの愛撫にいつもより感じている。
色白の体がほんのりピンク色に染まっているのが何よりの証拠。
まぁ、シンタローも又しかりなのだが。
ぴちゃぴちゃと聞こえる水音がやけにいやらしい。
「ココいいの?」
「ああ…」
何時もと立場が逆転である。
シンタローはやはり優越感に浸っていた。
何時もはマジックに良いようにされて、頭が真っ白になり、何が何だか解らないうちに高みへ連れていかれる。
実際マジックも余裕なんてないのだが、シンタローから見れば余裕しゃくしゃく。
だが、今は違う。
シンタローの頭を握りしめ、快感に体を震わせているのだ。
強く吸ってやれば、なやましい声を上げて体を強張らせる。
口の中で段々大きくなっていくマジックのモノに、シンタローも体が熱くなってきているのを感じた。
「シンちゃん、も、いいよ。」
「あ…。」
マジックがシンタローの口から己のモノを引きずり出すと、シンタローは切なそうな声を上げた。
ちゅ、と、いう音と共に、名残おしそうに銀色の糸を引く。
虚ろな目でマジックを見つめると、勝手知ったようにシンタローを四つん這いにさせる。
しばらくシンタローも、ぼぅっとしていたが、ハッ!と気がついたかのようにグリッと後ろを向く。
「ちょっ!!待てよ親父!!ま、まさか…!」
「?何?シンちゃん。ホラ、よそ見しないで。ね?」
「ャ、ヤダ!」
「此処まで来てそれはないでしょ。」
今のパパのは、そんなに大きくないし、慣らさなくても大丈夫だよね?
質問してるくせに、有無を言わせない圧力感。
シンタローの背中にキスを一つ落とし、一気に貫いた。
「や、やだぁぁあぁ!!!」
ズッ!と、こすりつけるような音。
じゅぷじゅぷとどちらとも言えない体液の音。
シンタローは涙を飲んだ。
違う。こんなはずじゃなかった。確かに今の親父の姿形は俺のストライクゾーンだし、ぶっちゃけ好きだ。だけど、こんな事をしたいとは思わない。何時もの親父とじゃなきゃ…。
嫌だとどんなに叫んでもマジックには届かない。
後ろを向いているせいか、抵抗も上手く出来ない。
「ャ…ダァ…ッッ」
「ッッはぁ…やっぱり…コレじゃ足りない?…シンちゃんは欲張りだなぁ…」
気持ち良いのか、マジックの額には汗が滲み出ていて、少し顔が歪んでいる。
そして、自分の指を二本、シンタローの中に一緒に入れた。
「…―――ッッあ!」
瞳を見開いて、ガクガクする足と腰。
嫌だと思うのに体がゆうことを聞かない。
シンタローが出来る事は、この、可愛い少年マジックが気の済むのをただ、ひたすら待ち続ける事だけだった。
「と…さんン…ャだ…何時ものとぉさんじゃ…なきゃヤダぁ!」
快感に奮えながらも、マジックに聞いてもらえなくても、シンタローは必死で訴える。
シンタローの溢れた涙が、頬をつたってポトリと落ちた。
その時。
青い光がマジックから放たれる。
眼魔砲の光と似てはいるが明らかに異質なもの。
そして、中に入っているモノの圧迫感。
シンタローは苦しそうにマジックの方を向いた。
すると、どうだろう。
徐々にではあるがマジックが段々と成長をしていく。
そして、光が納まる頃には、元のマジックに戻っていた。
「シンちゃん…。」
声も何時ものマジックで、低い。
何時も聞いている声なのに、何年も聞いていないような気がする。
何時ものナイスミドルスマイルをするマジック。
が。
「親父、痛い。抜け。」
感動の再会は出来なかった。
まぁ、こんなことやってる最中だしね。
シンタローはぶっきらぼうにそう言い放つ。
かなり複雑な心境のようだ。
何故なら、もう、あの、ど真ん中ストライクの可愛い少年には会えないのである。
情事をするのに少年マジックは嫌だっただけで、普通に居るならもうちょっと位、美少年を堪能したかった。
悔やまれる。
シンタローは、中々抜こうとしないマジックに舌打ちをし、自分から抜こうとした。
が。
ガッシリと両手で腰を捕まれ、少年マジックならともかく、この、大人のマジックには力では敵わない。
まさか…
何とも言えぬ嫌な予感がシンタローの胸を過ぎった。
「シンちゃん…逃がさないよ…。」
「ああっ!ヤッパリ!!」
肉食動物のようにどんより光る目で見つめられ、獲物であるシンタローは、なすすべなく食べられてしまいました。
風呂場には、シンタローの悲痛な声と、なまめかしい声が響き渡ったとか。
「いやー、良かった良かった。終わり良ければ全て良し!ダネ☆」
ベッドの上でかなり満足気にニコニコ笑いながらそう言うマジック。
そんなマジックとは裏腹に、精も魂も尽き果てたシンタローは、俯せになって、けだるい腰を押さえていた。
チクショー!!
涙目で睨むが、この、幸せいっぱい夢いっぱいのマジックが、ほんのちょこーっと可愛く見えて、シンタローは睨むだけに留めておく。
すると。
ボフン!という白い煙りがマジックを包み込んだ。
「何だァ!?」
上半身を起こしてマジックを見ようと目を懲らす。
すると、中から人影が。
シンタローが安堵のため息を漏らすが、なんかおかしい。
まさか、まさか。
「ゲホ、ゲホ、し、シンちゃぁん…!」
中から出てきたのはあの、少年マジック。
「何で!?元に戻ったんじゃねぇのかヨ!?」
慌ててベッドの近くにある軍用の回線で高松に電話をする。
3回目の呼び出し音で高松が出た。
「オイ、ドクター!!親父が元に戻った!戻ったつーか、子供になってる!!」
『あぁ、そのことでしたら、今解析中です。取り敢えず、実験の結果、薬は青の一族にしか聞かないということしか解っておりません。マジック様を元に戻す薬はもう少し時間がかかりますね。』
つかえねーー!!
シンタローは、結果が解り次第随時教えるように言い、高松との電話を切った。
「シンちゃん…。」
潤んだ瞳で見上げられて、やっぱりシンタローは鼻血を垂らした。
可愛い…。
「パパが戻るにはシンちゃんとエッチしないと駄目なんだよ、きっと。」
可愛くない。
「恐ろしい事を平気な顔で言うナ。」
シンタローは真顔で吐き捨てるが、ふ、と、思い留まる。
高松が薬を完成させるまで、マジックはこのまま愛らしい少年のままなのではないか。
後はもう絶対エッチさせなければいいのだ。
いける!とシンタローは踏んだ。
「元に戻らねぇなら、親父の夢を叶えてやってもイイ。」
「え?」
「ホラホラ親父!セーラー服セーラー服!!」
ピラピラと短いプリーツを持ち上げ回る。
マジックの夢。それは異常に溺愛しているシンタローにコスプレをさせる事。
マジックは先程から余っていたCDROMを片っ端から持ってきてシンタローを鼻血を出しながら撮っている。
他にもバニー、メイド、学ラン、軍服などなどの衣装が、マジックの部屋に並ばれている。
「シンちゃーん!こっち向いて手を振って!!」
「はーいはいはい!」
ちょっとやる気がなさ気な感じだが、マジックの要望には素直に答える。
だって、もう少しだけでもいいから小さいマジックと居たいから。
美少年が好きって事もあるが、自分の知らないマジックを見たいという欲望もある。
「シンちゃんかーわいー!」
「はーいはい、そりゃどーも。」
「ね、次はメイド服着てよー!それでね、それでね、パパに“御主人様”って言って~!!」
ビラリとメイド服を渡す。
一体何処からこの短時間で持ってきたのかと疑問にも思うが、言われた通りメイド服を着る。
そして、
「ゴシュジンサマ」
かなりカタコトだが、マジックは満足したように鼻血を思う存分噴射した。
「パパ、一生このままでもイイ気がしてきたよ…。」
ヨシ!
シンタローは心の中でガッツポーズを取る。
結局マジックは惚れた弱みでシンタローには勝てないのだ。
それから一週間経過して、マジックが小さくなってしまったのは周知の事実となり、高松の他にもキンタローや、グンマもマジックを元に戻す為躍起になっていた。
「シンちゃん、もーすこししたらおとーさまを元に戻す薬が完成しそーだよぉ。」
ニコニコとグンマが総帥室に朗報と言わんばかりにやってきた。
「え…。」
「良かったネ!!シンちゃん!!」
その話を聞いた時、シンタローは少しながらショックを受けた。
もう少しでということは、もう少しであの小さいマジックと離れなければならない。
確かに自分は大きなマジックになると解っているから今のマジックと何の不安もなく平気で遊べる。
でも、小さいマジックと遊べなくなるのがシンタローにはまだ心の準備が整っていなかった。
「嬉しくないの?シンちゃん。」
ぱ、と、見上げると、グンマが少し微笑んでこちらを見ている。
「別にそーゆー訳じゃねーよ。悪かったナ、自分達の開発もあるのにこっち先やってもらって。」
「ううん。僕、シンちゃん大好きだから!だからね…」
グンマはおっきな瞳を俯かせる。
男にしては長い睫毛が瞳を隠すように下がった。
「シンちゃんが、おとーさまを元に戻したくないんだったら、薬の事はおとーさまにはまだ言わないよ。」
エヘヘとはにかむグンマを見て、少し心を打たれる。
グンマは昔からそうだった。
自分の事を恨んでるだの嫌いだの泣き叫びまくるくせに、最後は笑顔でシンタローの事を思いやり全てを許す。
もう、自分だけの父親じゃねーんだ…。
昔はそれで良かったのかもしれない。
マジックは自分とコタローだけの父親だったから、自分の父親に対してシンタローが我が儘を言うのは許される事。
でも、今は違う。
マジックの子供は本当はグンマの方で、自分とは血の繋がりさえない。
そして、弟の忘れ形見、キンタロー。
実の息子二人に、弟の息子一人、そして、番人の影である自分の四人の父親的存在なのだ。
「グンマ。」
「なぁに?シンちゃん。」
「薬、出来上がり次第親父に使って元に戻してやってくれ。」
「…いいの?」
「ああ。」
グンマの言葉に少し間が空いたが、シンタローは間髪入れず肯定した。
「解った。じゃあ、高松とキンちゃんに言っておくから。」
バイバイと手を振って、ドアの開く機械音と共に総帥室から出て行った。
シンタローは椅子に深く座り込み浅いため息を吐いた。
薬が完成したとの知らせが入ったのは、グンマと会話をしてすぐだった。
軍用の電話に出ると相手は高松で、今からマジックと一緒にこちらに向かうそうだ。
ああ、そうか。
シンタローはピンときた。
薬は既にあの時点で完成しており、グンマは自分に了承を得る為に来たのではないか。
心配かけさせたなと、反省する半面、心配してくれたんだなと嬉しくも思う。
少し唇の端を上げて笑うと、プシュンと扉を開く音がして、はっとそちらへ目を向かせる。
「シンちゃ~んν」
「うっわ!!」
ちびっこマジックがここぞとばかりに抱き着いてくる。
自分の可愛さを自覚してるところが彼の暴走に拍車をかけている。
「マジック様からお話は伺いましたよ、シンタロー総帥。セックスしたら元に戻ったそうですね。」
「テメッ!伏せ字を使え!!伏せ字を!!」
「ツッコム所、そこなんですか。」
冷静な高松に、シンタローの眉間にシワが寄った。
「早く本題に入れ。」
ツッコミ所を間違えたせいで、本来ならぶっ飛ばしもののマジックもこの際我慢して、シンタローは話しを進めた。
「ああ。はいはい。」
ゴソゴソと白衣のポケットから小さな小鬢を見せる。
中には透明に、少し黄色い色が混ざっている。
「アナタとマジック様が事を致したから戻ったということは解明できていませんが、私の作ったバイオを解明し、花の花粉が原因とわかりました。なので、毒をもって毒を制す要領で花粉ベースで作りました。」
ちゃぽん、と、中の液体が揺れる。
そして、高松は、小鬢の蓋を外し、中の液体をマジックにかけた。
すると、かけた所から煙りが上気する。
これは、マジックが一時的に元に戻った時と似ている。
やはり、青い発光体が辺りを包み、その後はもちろん…。
「戻った~ν」
そこにいたのは大きいいつものサイズのマジック。
そう。いつものサイズの。
「服は…」
「え?」
ぱ、と下を見るマジック。
少年誌の法則で股間だけはさらけ出す事を免れたが、後は…。
まるでケン●ロウのように服は破け去られていて、正直ヤバイ。
「どーしよーシンちゃん!!パパこのまま廊下出られないよ!!」
「羞恥心あったんですね。」
ビビーッ!!
目からメンチビームを出したマジックのお陰で、高松はアフロになった。
余り動じていない所を見ると、某秘書を思い出す。
「チッ!!」
そんな高松アフロを見事シカトし、シンタローは総帥服の上を脱いでマジックの目の前に翳す。
中は何も着ておらず、地肌が眩しい。
「シンちゃん…ッッ!!」
感動したらしく、涙と鼻血をぶわッと吹出し、あいらぶゅー!!と突進してくるマジックにシンタローは心置きなく眼魔砲を放った。ちゅーどーん!!と爆発音が鳴り響いたが、やっぱりパパは生きていた。
「じゃ、私は失礼しますよ。マジック様、シンタロー総帥。」
巻き添え喰うのはごめんこうむるとばかりに、高松はさっさと総帥室を後に行ってしまった。
ポツンと取り残された形のシンタローとマジック。
二人きりにされてしまい、何を話せばいいのか解らない。
ちみマジックにはあんなに心を開けたのに、大きいマジックにはそれができない。
中身は同じなのに。
シンタローが何かを話しかけようとして、そわそわしていると、
「シンちゃん、有難う。」
マジックから話し掛けてくれた。
「礼ならあいつ等に言ってやれヨ。」
ついぶっきらぼうになってしまう。
マジックから話し掛けて貰ってホッとしてるのに。
大きい何時ものマジックにはこんな言い方しかできない。
嫌になる。
「パパが小さくなってもお前は私を愛してくれた。だから」
有難う。
そう言って自分を抱きしめる。
凄く心地良いのに、自分はまだ嫌な態度。
それでもマジックは無条件で自分を全力で愛してくれていて。
この腕だ。
懐かしい感じと愛しい感じがごちゃまぜになって、仕方ないって顔して抵抗を止める。
「今だけだかンナ。」
「うん。」
そう言って静かに瞳を閉じた。
おわり
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泣き付くマジック少年に、シンタローは、ソローっと手を延ばし髪に触れた。
絹糸みたいなサラサラの細い髪が指の間をすりぬける。
抵抗しないと悟と、シンタローは、ギュッ!と抱きしめてみた。
カワイイ!!コイツ、カワイイよ!!
鼻血を垂らしながらマジック少年を抱きしめる。
何時もと立場が逆転だ。
「シンちゃん。パパのこと嫌いになった?」
潤んだ瞳で上眼使いに見つめられる。
きゅーーん!
シンタローの心臓がきゅんきゅん悲鳴をあげる。
きゅんきゅんメーター只今MAX!
「ば!嫌いになんかなるかよ!寧ろ一生そのままでもいい位だぜ!」
「シンちゃん…それはそれで、パパ、複雑な気分だよ…。」
落ち込んだように、しゅんとするマジックを見て、やはり可愛くてぐりぐりしてしまう。
眠っているコタローと同じ位カワイイ顔。
いや、可愛いよりも、綺麗といった表現の方が正しいだろう。
どこと無く、高価で貴重品のような少年。
「で。また高松か?」
マジックをお膝にチョコンと乗せながら、聞く。
「うん…。」
「ったくあの野郎ろくなことしねーナ!!…っと、別に親父の顔が嫌とか言ってるんじゃねーぞ?むしろ、今の方が大歓迎だ!!」
やっぱり複雑なマジックなのでした。
でも、これってラッキーかも…。
常に前向きマジックは、今ある状況は、非常にシンタロー受けがいいことを理解した。
今だったら、一緒にお風呂に入ったり、耳たぶ舐めたり、あまつさえ夜明に熱いコーヒーをペアのストローで飲んだ後、溶けるような事をしても怒られないんじゃないか。
マジックの心に電流が走ったような衝撃が走る。
「シンちゃん。」
見上げると、鼻血を垂らしながら緩みきった表情でマジックを見る。
「ん?」
「パパ、お風呂入りたいんだけど、小さくなっちゃったから怖くってさ…シンちゃん一緒に入ってくれたら心強いな、なんて。」
「別に構わねーぜ。そーだよな、ちみたんになっちまったんだからな。」
ぐりぐり頭を撫でて。
しかし、はっとしたように思い止まる。
「その前に飯食っちまえヨ。」
一瞬自分のヨコシマな考えがばれたかと思ったマジックだったが、ばれてない事がわかり、ホッと胸を撫で下ろす。
シンタローは、椅子に座り、膝にマジックを乗っけて、スプーンですくうとマジックの口元に持ってきた。
マジックが戸惑っていると、
「ホレ、あーん。」
サービス満点…!パパ心臓発作で死んじゃうかも!!
でも、やっぱり口を開いてシンタローに食べさせて貰う。
綺麗に食べ終わった後、食器を持っていこうとするシンタロー。
行ってほしくなくて、後ろから抱きしめる。
身長の都合上、足元にしがみつく形になったのだが。
「シンちゃん、行かないで~!」
ギュッ!と抱きしめれば、シンタローは、やれやれと言う感じで食器をテーブルに置き直した。
ヤッタ!
マジックは、ウキウキした顔をして、シンタローを引っ張り風呂場まで連れてゆく。
「シンちゃんとお風呂、久しぶりだなー」
「そうだナ。」
脱衣所で服を脱ぐ二人。
しかし、このあとマジックに思いも寄らない事が起こった。
と、いうか、考えていなかったのだ。
シンタローと風呂に入る→シンタローは、裸になる→それが見たかった→自分はちみたんだが脳は大人→
…勃っちゃう!!
イケナイ!!このままじゃ、爽やかな感じの夜明の熱いコーヒー計画が!!
策略家マジックは焦った。しかし。
「親父、先入ってるゾ。」
マジックが眼にしたのは、一糸纏わぬ姿の愛しい息子。
マジックの欲望が理性に勝った瞬間だった。
ま、いっか☆気怠い雰囲気の中も悪くないもんね☆
やっぱりポジティブなのでした。
風呂場に入るとシンタローは、シャワーを頭からかけていた。
真っ黒な髪から水滴が滴るそれは、正に妖艶で。
フトモモに流れるお湯を下からそっと撫で上げたい気分にかられた。
シンちゃん!そんな無防備で!!パパ、もんもんしちゃうよ!!
「親父、体洗ってやるからこっち来い。」
そんなマジックの気持ちも知らないで、ちょいちょいとシンタローはマジックを呼んだ。
「ハーイ☆」
鼻血をぶっ放すのを何とか堪えて、マジックはシンタローの元へと移動する。
そして、チョコンと椅子に座ると、シンタローが頭から顔に掛からないようにお湯をかけてくれた。
シャーという音と共に、温かいお湯が地肌に触れる。「頭洗っちまおうナ。」
シャンプーのコックを押して、掌につけた後、初めは軽く洗い、二度目は地肌をマッサージするように洗う。
凄く気持ちが良くて、マジックは思わずうっとりした。
「シンちゃんマッサージ師になれるヨ。」
「親父は何でも誉め過ぎなんだヨ。」
でも、褒められて悪い気はしないシンタローは、気分が良い。
鼻歌混じりでシャンプーを洗い流し、リンスをしてやる。
そのあと自分も頭を洗った。
「ホレ、次は体洗うぞ。」
垢すりにボディソープを付けて、マジックの体を快調に洗う。
泡がフワフワ舞って、シンタローはそれが綺麗だな何て思う。
「親父、前向け。」
そう、ちょっと命令口調で言うのも何だか気分がいい。
さぞ喜ぶかと思いきや、マジックは上気しただけではない赤い顔をして、顔を左右に振った。
「前は自分で…」
「水くせー事言うなヨ。出血大サービスだぜ?」
「でも…。」
中々渋って前を向こうとしない。
いつもなら、シンちゃん前も洗って、背中流しっこしよう、パパにお前の体を洗わせてなどなど。しつこい位なのに。
でも、今のシンタローは、完全に自分が上の立場だと思い込んでいたので、渋るマジックの言い分を聴こうとしない。
むしろ、マジックの嫌がる事をするのが昔から好きだという考えの持ち主なので、嫌がられると益々前を洗いたがった。
「ホラ、いい子だから。」
グイ、と、前を向かせて、シンタローは一瞬時が止まったように動かなくなった。
そして、次におもいっきり赤面する羽目になる。
何故なら、マジックのまだ毛も生えていない雄が、天井に向かって生えていた、つまり、立っていたから。
「――ッッ!!」
バッ!!と、咄嗟に口元を押さえるシンタロー。
驚きと、恥ずかしさの余り声も出ない。
マジックは、下を向いてフルフルと震えていた。
又泣かせてしまうと、シンタローは我に反りマジックの目線に合わせるべく、しゃがみこむ。
「――ぃ」
「え?」
蚊の泣くような声で何かを呟いているマジックに、その声を聴こうと耳を傾ける。
「酷いよッッ酷い酷い酷いよシンちゃんッッ!!ハパ体は今こーんなにちみたんだけど、脳みそは成人男性のままなのッッ大人なのッッ!!そーんな私にそんな!そんなサービス満点の事されたらこーなっちゃうでしょ!!」
ガバッ!と顔を上げ、一気に捲くり上げ、涙ながらに訴える。
シンタローが何も言い返さない、と、いうか、余りの剣幕に言い返せないでいると、マジックは目に涙をいっぱい溜めて
「シンちゃん、責任取って。」
と、事もあろうにそう言い放った。
「ン、くぅ…っ」
今シンタローはマジックのをくわえて上下に動かしている真っ只中。
体はやはり汚れを知らない少年にまでなっていたらしく、シンタローの愛撫にいつもより感じている。
色白の体がほんのりピンク色に染まっているのが何よりの証拠。
まぁ、シンタローも又しかりなのだが。
ぴちゃぴちゃと聞こえる水音がやけにいやらしい。
「ココいいの?」
「ああ…」
何時もと立場が逆転である。
シンタローはやはり優越感に浸っていた。
何時もはマジックに良いようにされて、頭が真っ白になり、何が何だか解らないうちに高みへ連れていかれる。
実際マジックも余裕なんてないのだが、シンタローから見れば余裕しゃくしゃく。
だが、今は違う。
シンタローの頭を握りしめ、快感に体を震わせているのだ。
強く吸ってやれば、なやましい声を上げて体を強張らせる。
口の中で段々大きくなっていくマジックのモノに、シンタローも体が熱くなってきているのを感じた。
「シンちゃん、も、いいよ。」
「あ…。」
マジックがシンタローの口から己のモノを引きずり出すと、シンタローは切なそうな声を上げた。
ちゅ、と、いう音と共に、名残おしそうに銀色の糸を引く。
虚ろな目でマジックを見つめると、勝手知ったようにシンタローを四つん這いにさせる。
しばらくシンタローも、ぼぅっとしていたが、ハッ!と気がついたかのようにグリッと後ろを向く。
「ちょっ!!待てよ親父!!ま、まさか…!」
「?何?シンちゃん。ホラ、よそ見しないで。ね?」
「ャ、ヤダ!」
「此処まで来てそれはないでしょ。」
今のパパのは、そんなに大きくないし、慣らさなくても大丈夫だよね?
質問してるくせに、有無を言わせない圧力感。
シンタローの背中にキスを一つ落とし、一気に貫いた。
「や、やだぁぁあぁ!!!」
ズッ!と、こすりつけるような音。
じゅぷじゅぷとどちらとも言えない体液の音。
シンタローは涙を飲んだ。
違う。こんなはずじゃなかった。確かに今の親父の姿形は俺のストライクゾーンだし、ぶっちゃけ好きだ。だけど、こんな事をしたいとは思わない。何時もの親父とじゃなきゃ…。
嫌だとどんなに叫んでもマジックには届かない。
後ろを向いているせいか、抵抗も上手く出来ない。
「ャ…ダァ…ッッ」
「ッッはぁ…やっぱり…コレじゃ足りない?…シンちゃんは欲張りだなぁ…」
気持ち良いのか、マジックの額には汗が滲み出ていて、少し顔が歪んでいる。
そして、自分の指を二本、シンタローの中に一緒に入れた。
「…―――ッッあ!」
瞳を見開いて、ガクガクする足と腰。
嫌だと思うのに体がゆうことを聞かない。
シンタローが出来る事は、この、可愛い少年マジックが気の済むのをただ、ひたすら待ち続ける事だけだった。
「と…さんン…ャだ…何時ものとぉさんじゃ…なきゃヤダぁ!」
快感に奮えながらも、マジックに聞いてもらえなくても、シンタローは必死で訴える。
シンタローの溢れた涙が、頬をつたってポトリと落ちた。
その時。
青い光がマジックから放たれる。
眼魔砲の光と似てはいるが明らかに異質なもの。
そして、中に入っているモノの圧迫感。
シンタローは苦しそうにマジックの方を向いた。
すると、どうだろう。
徐々にではあるがマジックが段々と成長をしていく。
そして、光が納まる頃には、元のマジックに戻っていた。
「シンちゃん…。」
声も何時ものマジックで、低い。
何時も聞いている声なのに、何年も聞いていないような気がする。
何時ものナイスミドルスマイルをするマジック。
が。
「親父、痛い。抜け。」
感動の再会は出来なかった。
まぁ、こんなことやってる最中だしね。
シンタローはぶっきらぼうにそう言い放つ。
かなり複雑な心境のようだ。
何故なら、もう、あの、ど真ん中ストライクの可愛い少年には会えないのである。
情事をするのに少年マジックは嫌だっただけで、普通に居るならもうちょっと位、美少年を堪能したかった。
悔やまれる。
シンタローは、中々抜こうとしないマジックに舌打ちをし、自分から抜こうとした。
が。
ガッシリと両手で腰を捕まれ、少年マジックならともかく、この、大人のマジックには力では敵わない。
まさか…
何とも言えぬ嫌な予感がシンタローの胸を過ぎった。
「シンちゃん…逃がさないよ…。」
「ああっ!ヤッパリ!!」
肉食動物のようにどんより光る目で見つめられ、獲物であるシンタローは、なすすべなく食べられてしまいました。
風呂場には、シンタローの悲痛な声と、なまめかしい声が響き渡ったとか。
「いやー、良かった良かった。終わり良ければ全て良し!ダネ☆」
ベッドの上でかなり満足気にニコニコ笑いながらそう言うマジック。
そんなマジックとは裏腹に、精も魂も尽き果てたシンタローは、俯せになって、けだるい腰を押さえていた。
チクショー!!
涙目で睨むが、この、幸せいっぱい夢いっぱいのマジックが、ほんのちょこーっと可愛く見えて、シンタローは睨むだけに留めておく。
すると。
ボフン!という白い煙りがマジックを包み込んだ。
「何だァ!?」
上半身を起こしてマジックを見ようと目を懲らす。
すると、中から人影が。
シンタローが安堵のため息を漏らすが、なんかおかしい。
まさか、まさか。
「ゲホ、ゲホ、し、シンちゃぁん…!」
中から出てきたのはあの、少年マジック。
「何で!?元に戻ったんじゃねぇのかヨ!?」
慌ててベッドの近くにある軍用の回線で高松に電話をする。
3回目の呼び出し音で高松が出た。
「オイ、ドクター!!親父が元に戻った!戻ったつーか、子供になってる!!」
『あぁ、そのことでしたら、今解析中です。取り敢えず、実験の結果、薬は青の一族にしか聞かないということしか解っておりません。マジック様を元に戻す薬はもう少し時間がかかりますね。』
つかえねーー!!
シンタローは、結果が解り次第随時教えるように言い、高松との電話を切った。
「シンちゃん…。」
潤んだ瞳で見上げられて、やっぱりシンタローは鼻血を垂らした。
可愛い…。
「パパが戻るにはシンちゃんとエッチしないと駄目なんだよ、きっと。」
可愛くない。
「恐ろしい事を平気な顔で言うナ。」
シンタローは真顔で吐き捨てるが、ふ、と、思い留まる。
高松が薬を完成させるまで、マジックはこのまま愛らしい少年のままなのではないか。
後はもう絶対エッチさせなければいいのだ。
いける!とシンタローは踏んだ。
「元に戻らねぇなら、親父の夢を叶えてやってもイイ。」
「え?」
「ホラホラ親父!セーラー服セーラー服!!」
ピラピラと短いプリーツを持ち上げ回る。
マジックの夢。それは異常に溺愛しているシンタローにコスプレをさせる事。
マジックは先程から余っていたCDROMを片っ端から持ってきてシンタローを鼻血を出しながら撮っている。
他にもバニー、メイド、学ラン、軍服などなどの衣装が、マジックの部屋に並ばれている。
「シンちゃーん!こっち向いて手を振って!!」
「はーいはいはい!」
ちょっとやる気がなさ気な感じだが、マジックの要望には素直に答える。
だって、もう少しだけでもいいから小さいマジックと居たいから。
美少年が好きって事もあるが、自分の知らないマジックを見たいという欲望もある。
「シンちゃんかーわいー!」
「はーいはい、そりゃどーも。」
「ね、次はメイド服着てよー!それでね、それでね、パパに“御主人様”って言って~!!」
ビラリとメイド服を渡す。
一体何処からこの短時間で持ってきたのかと疑問にも思うが、言われた通りメイド服を着る。
そして、
「ゴシュジンサマ」
かなりカタコトだが、マジックは満足したように鼻血を思う存分噴射した。
「パパ、一生このままでもイイ気がしてきたよ…。」
ヨシ!
シンタローは心の中でガッツポーズを取る。
結局マジックは惚れた弱みでシンタローには勝てないのだ。
それから一週間経過して、マジックが小さくなってしまったのは周知の事実となり、高松の他にもキンタローや、グンマもマジックを元に戻す為躍起になっていた。
「シンちゃん、もーすこししたらおとーさまを元に戻す薬が完成しそーだよぉ。」
ニコニコとグンマが総帥室に朗報と言わんばかりにやってきた。
「え…。」
「良かったネ!!シンちゃん!!」
その話を聞いた時、シンタローは少しながらショックを受けた。
もう少しでということは、もう少しであの小さいマジックと離れなければならない。
確かに自分は大きなマジックになると解っているから今のマジックと何の不安もなく平気で遊べる。
でも、小さいマジックと遊べなくなるのがシンタローにはまだ心の準備が整っていなかった。
「嬉しくないの?シンちゃん。」
ぱ、と、見上げると、グンマが少し微笑んでこちらを見ている。
「別にそーゆー訳じゃねーよ。悪かったナ、自分達の開発もあるのにこっち先やってもらって。」
「ううん。僕、シンちゃん大好きだから!だからね…」
グンマはおっきな瞳を俯かせる。
男にしては長い睫毛が瞳を隠すように下がった。
「シンちゃんが、おとーさまを元に戻したくないんだったら、薬の事はおとーさまにはまだ言わないよ。」
エヘヘとはにかむグンマを見て、少し心を打たれる。
グンマは昔からそうだった。
自分の事を恨んでるだの嫌いだの泣き叫びまくるくせに、最後は笑顔でシンタローの事を思いやり全てを許す。
もう、自分だけの父親じゃねーんだ…。
昔はそれで良かったのかもしれない。
マジックは自分とコタローだけの父親だったから、自分の父親に対してシンタローが我が儘を言うのは許される事。
でも、今は違う。
マジックの子供は本当はグンマの方で、自分とは血の繋がりさえない。
そして、弟の忘れ形見、キンタロー。
実の息子二人に、弟の息子一人、そして、番人の影である自分の四人の父親的存在なのだ。
「グンマ。」
「なぁに?シンちゃん。」
「薬、出来上がり次第親父に使って元に戻してやってくれ。」
「…いいの?」
「ああ。」
グンマの言葉に少し間が空いたが、シンタローは間髪入れず肯定した。
「解った。じゃあ、高松とキンちゃんに言っておくから。」
バイバイと手を振って、ドアの開く機械音と共に総帥室から出て行った。
シンタローは椅子に深く座り込み浅いため息を吐いた。
薬が完成したとの知らせが入ったのは、グンマと会話をしてすぐだった。
軍用の電話に出ると相手は高松で、今からマジックと一緒にこちらに向かうそうだ。
ああ、そうか。
シンタローはピンときた。
薬は既にあの時点で完成しており、グンマは自分に了承を得る為に来たのではないか。
心配かけさせたなと、反省する半面、心配してくれたんだなと嬉しくも思う。
少し唇の端を上げて笑うと、プシュンと扉を開く音がして、はっとそちらへ目を向かせる。
「シンちゃ~んν」
「うっわ!!」
ちびっこマジックがここぞとばかりに抱き着いてくる。
自分の可愛さを自覚してるところが彼の暴走に拍車をかけている。
「マジック様からお話は伺いましたよ、シンタロー総帥。セックスしたら元に戻ったそうですね。」
「テメッ!伏せ字を使え!!伏せ字を!!」
「ツッコム所、そこなんですか。」
冷静な高松に、シンタローの眉間にシワが寄った。
「早く本題に入れ。」
ツッコミ所を間違えたせいで、本来ならぶっ飛ばしもののマジックもこの際我慢して、シンタローは話しを進めた。
「ああ。はいはい。」
ゴソゴソと白衣のポケットから小さな小鬢を見せる。
中には透明に、少し黄色い色が混ざっている。
「アナタとマジック様が事を致したから戻ったということは解明できていませんが、私の作ったバイオを解明し、花の花粉が原因とわかりました。なので、毒をもって毒を制す要領で花粉ベースで作りました。」
ちゃぽん、と、中の液体が揺れる。
そして、高松は、小鬢の蓋を外し、中の液体をマジックにかけた。
すると、かけた所から煙りが上気する。
これは、マジックが一時的に元に戻った時と似ている。
やはり、青い発光体が辺りを包み、その後はもちろん…。
「戻った~ν」
そこにいたのは大きいいつものサイズのマジック。
そう。いつものサイズの。
「服は…」
「え?」
ぱ、と下を見るマジック。
少年誌の法則で股間だけはさらけ出す事を免れたが、後は…。
まるでケン●ロウのように服は破け去られていて、正直ヤバイ。
「どーしよーシンちゃん!!パパこのまま廊下出られないよ!!」
「羞恥心あったんですね。」
ビビーッ!!
目からメンチビームを出したマジックのお陰で、高松はアフロになった。
余り動じていない所を見ると、某秘書を思い出す。
「チッ!!」
そんな高松アフロを見事シカトし、シンタローは総帥服の上を脱いでマジックの目の前に翳す。
中は何も着ておらず、地肌が眩しい。
「シンちゃん…ッッ!!」
感動したらしく、涙と鼻血をぶわッと吹出し、あいらぶゅー!!と突進してくるマジックにシンタローは心置きなく眼魔砲を放った。ちゅーどーん!!と爆発音が鳴り響いたが、やっぱりパパは生きていた。
「じゃ、私は失礼しますよ。マジック様、シンタロー総帥。」
巻き添え喰うのはごめんこうむるとばかりに、高松はさっさと総帥室を後に行ってしまった。
ポツンと取り残された形のシンタローとマジック。
二人きりにされてしまい、何を話せばいいのか解らない。
ちみマジックにはあんなに心を開けたのに、大きいマジックにはそれができない。
中身は同じなのに。
シンタローが何かを話しかけようとして、そわそわしていると、
「シンちゃん、有難う。」
マジックから話し掛けてくれた。
「礼ならあいつ等に言ってやれヨ。」
ついぶっきらぼうになってしまう。
マジックから話し掛けて貰ってホッとしてるのに。
大きい何時ものマジックにはこんな言い方しかできない。
嫌になる。
「パパが小さくなってもお前は私を愛してくれた。だから」
有難う。
そう言って自分を抱きしめる。
凄く心地良いのに、自分はまだ嫌な態度。
それでもマジックは無条件で自分を全力で愛してくれていて。
この腕だ。
懐かしい感じと愛しい感じがごちゃまぜになって、仕方ないって顔して抵抗を止める。
「今だけだかンナ。」
「うん。」
そう言って静かに瞳を閉じた。
おわり
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