「シーーンちゃん☆パパだよーーーーー♪」
;プレゼント
ここはガンマ団総帥執務室。
一般団員はおろか、トップクラスの者でも、限られたものしか入室は許可されない。
しかし、そんな部屋だということもお構いなしに、今日だけでもすでに6回は訪れている人物がいた。
「・・・・・・・いい加減にしろよ、親父ィ・・・。」
そう、現総帥シンタローの父親でもあり、ガンマ団前総帥のマジックである。
「てめえ、今日だけで何回この部屋に来てんだ、あああああん!?人の仕事の邪魔するのもたいがいにしやがれ!!!!!!」
「これで7回目だよ、シンちゃん☆そんなにカリカリしてたら、お仕事の能率が下がるよ?」
律儀に質問に答えながら、マジックはにっこりと最愛の息子に笑いかけた。
「お前がその能率をさげとんじゃ、ボケーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「こらこら、そんなに大声でさけんじゃダメだよ、シンちゃん♪」
自分の度重なる出現が、息子の仕事の能率を下げている最たる原因であるとはあくまでも認めないようである。
「だいたいなあ、何しに来たんだよ!!さっきから何回も来て、
用件も言わずにニヤニヤしただけで帰っていきやがって!!!!今度こそ用件を言え、用件を!!!」
「うふふ、知りたい?知りたい?でもきっとシンちゃんもう知ってるもんなー☆」
「お前の考えてる事なんか知るか。さっさと言え!!!」
いいかげん、シンタローもイライラしてきた。
それもそうだ、これで過去6回は答えをはぐらかされて、思わせぶりのまま帰って行かれたのだから。
今度こそは眼魔砲ぶっ放しても聞き出してやる!!!
そんなオーラがシンタローのまわりに出ていた。
しかし、そんな殺気じみたオーラも、マジックの目からすれば、
『焦らさないで早く教えてよ、パパ☆』
といったほのぼのオーラに見えてしまうらしい。
恐るべきは愛の力か。
「実はねー、パパ、明日誕生日なんだよvvv」
ま、シンちゃん知ってただろうけどvvv
ニコニコ続けるマジックとは裏腹に、シンタローは思わず眼魔砲を撃とうとした動きを止めた。
「え、そうなの?」
ピシリ。
とたん、部屋の空気が摂氏3度は下がった。
いやー、そういえばアンタ今月誕生日だったなー。すっかり忘れてたぜ。
などと続けるシンタローだったが、対してマジックはショックのあまりに固まっていた。
「・・・いよ、シンちゃん・・・・・・。」
「あ?なんか言ったか親父?」
「非道いよシンちゃーーーーーーーーん!!!!!(号泣)」
そう言って、マジックはシンタローの机に両手をバンッと叩きつけた。
両目からは涙が滝のように流れている。
「パパ、シンちゃんからの誕生日プレゼント楽しみにしてたんだよーーーー!!??」
「あ・・・悪ぃ・・・。」
流石に、その迫力と勢いに押され、普段かまってやってない分の良心も痛んだのだろう。
シンタローも少し、ばつの悪そうな顔をした。
そして、しばらく考えて、
「んじゃ、今日の分の仕事は終わり!!!!」
「総帥!?」
「シンちゃん?」
急に思い立ったようにシンタローが言い放った。
しかし、シンタローの目の前には書類の山が未だ鎮座している。
もちろんそれを見逃す秘書ではない。
「総帥!しかしまだこれらの書類が・・・!!」
「特に急いでるって訳でもねえだろ。明日にまわせ。」
「しかし・・・!」
「うっせーな、総帥命令だ。わかったな。」
シンタローは有無を言わさない態度で席を立った。
「シンちゃん、一体どうしたんだい?」
あまりの豹変ぶりに、マジックも心配して声をかける。
「んあ?まだ12日になるまで時間あるからな。気分転換も兼ねて、テメーの誕生日プレゼント買ってきてやらあ。」
すでに時計は夜の9時をまわっている。
「今はどこもクリスマス商戦の時期だからな。11時ぐらいまでなら店も開いてるだろ。」
そう言って、シンタローは着替える為に自分の部屋に戻ろうとしていた。
「シンちゃん・・・、そこまでパパのことを・・・!!」
マジックは、先ほどとは違った涙をまたしても滝のように流している。
「ただし!!!プレゼントやるだけだからな!明日テメーの為に割く時間は1秒たりともねえ!!!
ただでさえ年末で忙しいんだからな!!」
ビシィッとマジックを指差して宣言したシンタローだったが、マジックはそんな事どうでも良かった。
わざわざこんな時間に、自分の誕生日に間に合うようにプレゼントを買ってきてくれると言っているのだ。
これ以上の幸せはない。
「それでは、お車の準備を・・・」
「いや、俺が運転していくからいいわ。車だけ用意しといてくれ。運転手は無しな。」
秘書の声をさえぎってシンタローは言った。
なにか続けたそうな秘書に、そのままシンタローが続けた。
「気分転換も兼ねてって言ったろ?久しぶりに夜のドライブってもの悪くないよな。」
そう言って、シンタローは笑った。
「シンちゃん。」
「ん?なんだよ?なんかリクエストあんのか?」
「いや・・・、気をつけて行っておいで。」
「おう。」
「それと・・・、ありがとう。」
マジックの優しく微笑んだ顔にシンタローは一瞬きょとんとした表情を見せたが、すぐに笑いながらこう返した。
「そりゃ普通プレゼント貰ってから言うセリフだろ~?もうモウロクしたのかよ、親父。」
そう言って、シンタローは自室へと戻っていった。
そしてそれから約15分後、シンタローを見送る為にマジックと数名の団員が裏口に集まっていた。
シンタローはガンマ団現総帥。本来ならば、このような外出は許されないのだが、本人の強い希望と、
急に決定したスケジュールの為、外部にも漏れていないだろうという諜報部の判断により、シンタロー1人での車での外出となった。
しかし、一応用心の為、裏口からの外出である。
「いってらっしゃい、シンちゃん。遅くなるようだったら連絡入れるんだよ?」
「んーだよ、ガキじゃねーんだから、それぐらい分かってるって。」
「総帥、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
「おう!日付が変わる前には帰っから。んじゃ、いってきます!」
そう言って、シンタローは冬の夜へと車を走らせた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おかしい。
マジックがそう思い始めたのは、時計が12時をまわり日付が変わる頃だった。
シンタローは確かに、日付が変わる前には戻ると言った。
遅くなるなら連絡も入れると。
ガンマ団の総帥として、それぐらいの責任感は持ち合わせている息子である。
ひょっとしたらもう下の駐車場に着いているかもしれない。
きっともうすぐそこまで来ているのだ。
そう思ってはみるものの、やはり不安はぬぐいきれない。
それに、なにやら感じるのだ。
父親としての勘なのだろうか。
『嫌な予感』
というものが先ほどからマジックを襲っていた。
そして、当たって欲しくない時ほど、それは的中するものである。
マジックの自室の内線がけたたましく鳴った。
緊急事態専用の呼び出し音である。
緊急事態こそ落ち着いて行動しなさい。
そう自らの息子に教え込んだが、内線の呼び出し音を聞いたマジックの心臓は早鐘のように打っていた。
落ち着け、落ち着け。
まだ決まったわけじゃない。
そう自分に言い聞かせながらマジックは内線のボタンを押した。
「どうした。」
以外にも自分の声は落ち着いている。
そう思うマジックの心は、どこか別のところにあった。
「こんな時間に申し訳ありません!緊急事態です!!」
「何があった、報告しろ。」
「シンタロー総帥が乗った車が敵襲を受け炎上、そのまま海へと転落した模様です!!」
・・・・・・・・!!!!なんという事だろう!!!!!
マジックの予感は当たってしまったのだ。
ざわざわと騒ぎ出す心に、マジックは報告に返事をするのも忘れていた。
「現在、総帥の安否の確認は取れていません。すでに救出隊及び諜報部が出動しています。」
「・・・・・・・そうか。」
マジックは声を絞り出すように言った。
「正確な安否の確認が取れるまで、このことは外部に悟られるな。」
「はッ!了解しました!!」
「現在、指揮は誰が取っている。」
「キンタロー様が率先して部隊をまとめ、現地にもすでに赴かれました。」
「そうか、そのまま指揮権はキンタローに委ねよう。なにかあれば、随時報告を頼む。」
そう言って、マジックは内線を切った。
『テメーの誕生日プレゼント買ってきてやらあ。』
ああ・・・・・・・・
『なんかリクエストあんのか?』
あああ・・・・・・・・
『んじゃ、いってきます!』
ああああ・・・・・・・・・!!!!!
マジックは深く椅子にすわり、そのまま天井を仰ぎ見た。
そのまま目を瞑り、深く息を吸い込んだ。
そして息をゆっくり、ゆっくりと吐き出し・・・、
ダンッ!!!!!
力の限り、机を叩いた。
彼の閉じられた目からはとどめなく涙があふれていた。
私が、あの子に言ったから・・・
私があの子に誕生日プレゼントなんて強請ったから・・・・・・!!
私があんな下らない我侭を言わなければ、あの子は・・・・・・・!!
襲ってくるのは強い自責の念ばかり。
自分の為の誕生日プレゼントなんていらない。
そんな物はいらないから、どうか、どうか・・・・・・・!!!!!
「なーんて顔してんだ、親父。」
!!!!!!!!!
マジックが顔を上げれば、自室の入り口に立っていた。
生きている、最愛の息子、シンタローが。
椅子を倒すようにして立ち上がったマジックは、そのまま机をも飛び越えて息子のもとに走り寄った。
そしてそのまま、外傷がないか確かめて、抱きしめた。
その存在を確かめるかのように、強く、強く。
「・・・・・・っ良かった・・・・!!!」
マジックの目からは新たな涙が流れていた。
これは、歓喜の涙。
愛する息子が無事だったことに感謝する涙。
「っちょ、親父、苦しいって!!」
あまりにも強く抱きしめていたのだろう。
シンタローが腕の中で息苦しさを訴えた。
あわてて抱きしめた腕を緩めたマジックだったが、その時初めてシンタローがずぶ濡れである事に気がついた。
その視線に気付いたシンタローが続けた。
「ああ、これな?報告入ってねえ?なんか敵襲受けて、車ごと海に落っこっちまってよー。
んで、水圧でドアが開かなくなっちまったんだけど、眼魔砲ぶっ放して出てきた。」
いやー、俺あの時ほど眼魔砲使えて良かったって思った事なかったぜーvv
まるで軽口をたたくかのように言うシンタローを、改めて優しく抱きしめるマジック。
だが、シンタローの胸の辺りでごそごそ動く何かを感じ、一度体を離してみる。
「あーー、こいつな、店の近くで捨てられてたんだよ。酷くねえ?こんな冬の寒い時にさー。
んで、車から脱出する時に、包んで服の中に入れといたんだけど、良かった。生きてるみてーだな。」
そういってシンタローは胸元からビニール袋を取り出し、さらにその中から丸まったセーターを出し、さらにその中からは・・・
みぁぁう。
「子猫??」
なんとも可愛らしい子猫が出てきた。
多少汚れてはいるが、洗ってあげれば綺麗になるだろう。
先ほどまで、息子の命を心配していたのに、新たに可愛い命の存在を目の前に見て、マジックの顔が自然とほころぶ。
「あ。」
急に、しまった!といった感じでシンタローが声をあげた。
「悪ぃ親父、このセーター、プレゼントだったんだけど、汚れちまったな・・・。」
セーターは子猫を守るために使ったせいか、少し海水に濡れ、子猫がひっかいてしまったのだろう。すっかりボロボロになっていた。
少しうつむいてしまったシンタローの頬に優しく手を沿え、マジックは言った。
「シンちゃん・・・、シンちゃんが無事に生きてくれてる事が何よりの誕生日プレゼントだよ・・・。」
マジックは、シンタローの目を見て、ふわりと微笑んだ。
こんなに心穏やかになった事が最近あっただろうか。
最愛の息子を前に、マジックはあふれる程の幸せを感じていた。
「ありがとう、シンタロー。最高の誕生日プレゼントだよ。」
「・・・父さん・・・。」
そしてそのままマジックの顔がシンタローに近づいていき、シンタローもまた、素直に目を閉じた。
みぁぁう。
子猫さえも、マジックの誕生日を祝い、二人を祝福しているかのようだった。
―――――――Happy Birthday Magic...
End.
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ほみうとこ。様より頂きました!
素敵マジシン小説を12/12にくださり有難うございます~~~vvv
最後ラブラブですね!ラブラブは大好物ですよ!(愛)
そしてやっぱりシンタローの『父さん』は必殺技ですなァ・・・(しみじみ)
【from K♪】
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