焼きたてクッキーおひとつどうぞ♪
宇宙船を作るー!と張り切っているジャン。それに手伝わされているのはグンマとキンタローだ。
高松は色々な事を想像して止めにかかったが、グンマは
「面白そーv」
とヤル気満々。少々今までの研究にマンネリを感じていたところだったのだ。
キンタローは別に乗り気ではなかったのだが、それは何に対してもであって、グンマがしつこく
「キンちゃんもやろー。ねー、やろーよーぉ」
と誘うのでまあいいかと。
同い年とは言え、どうもキンタローにはグンマが手のかかる弟のような存在に感じていたので、
心配な兄弟心もあって同意したのだが。
「あれ・・・、これ何の研究レポートだろう?知ってる?キンちゃん」
「俺よりお前の方がこの施設に居るのは長いだろう」
呆れたような視線を送られるとグッと詰まってしまう。
ちなみに二人が居るのは昔高松が使っていた第三研究所。
ジャンやキンタローまで科学の道に進むという事で研究室の増築が決定された。
それでまだ科学者としては未熟ながら期待あるジャン、キンタローにも研究室が一室ずつ支給され、
三人が宇宙船“ノア”を作ると決定した時、新たにこの第三研究室も与えられた。
ちなみにグンマは既に科学研究には浸かっていたのでちゃんと元から研究室(第六研究室)がある。
「あれ・・・」
「どうした?」
「こんなレポートあったっけ?」
グンマは一番小さいディスクの上に置き去りにされている埃臭い紙の束を見つけた。
ホチキスで止められたとても古いのだろう、かなり保存状態の悪い六ページ分のレポートである。
ここはジャン、キンタローそしてグンマしか使っていない筈。少なくとも自分のレポートではない。
キンタローに問うと知らないと首を左右に振る。とりあえずぱらぱらと中身を捲ってみる。
どうやら何かの薬の作り方らしい。となると、“ノア”作りに夢中のジャンのでもなさそうだ。
興味深げに読みにくいレポート内容を読んでいたグンマだったが、
満足したようにレポートを胸に抱えてキンタローに向き直った。
「よし、これ作ってみようv」
「即決だな。大丈夫か?」
「まっかせて!一度新薬って作ってみたかったし!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
聞いたのはそういう意味ではなく、ちゃんと薬を作れるのかという事だったのだが。
しかし(グンマに対しては)あまり深く追求しない性質なので、まあいいかとその場は流した・・・・・・・・・・・・のが全ての始まりだった・・・・・・。
「どうしたんだ、グンマ。ちっとも“ノア”作りに参加してくれてないけど」
ジャンが不思議そうに問う。白衣姿が意外と様になっている。
キンタローも白衣姿で、カルテらしきものに目を向けたまま答える。
「ああ、何でも『新薬を作る練習するんだー♪』とか言って自分の研究室に篭りっきりだ」
「ふー・・・ん・・・(何か、今のグンマの物真似・・・めちゃくちゃ似てて怖い;)」
「で、何を作っているんだグンマは」
「うっわ!!サービス!」
そこには見目麗しきグンマ&キンタローの叔父が、まるでずっと居たように佇んでいた。
「何でここに・・・」
「ちょっとジャンに用があったんだ。で、グンマは何を作っているのだ、キンタロー」
「知らん」
即答。
「そうか」
「ってオイ!何あっさり納得してんだよ!何か危ない薬でも作ってたらどうすんだよ!?」
「大丈夫だろう。多分な」
マイペースな親友にガックリと肩を落す。付き合いは長いが未だに分からないところだらけな男である。
「そんな事よりジャンに用とは何だ」
“そんな事”と片付けてもいいのかキンタロー。
そう気にするのはジャンだけで、相も変わらず美貌の叔父様は顔色一つ変えず用件を切り出す。
「ジャンに今朝言い忘れた事があってな」
「何?」
「昨晩うっかりお前の背中にキスマークを付けてしまってな。だから人前で服を脱がない方が良いと思」
「うわあああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!
こ、子どもの前でその話すんなよぉ――――――――/////////////////!!!!」
ムッとして子どもではないと主張するキンタローは何故かサービスの爆弾発言を全く気にしていなかった。
どうやらこの二人仲はガンマ団では公認らしい。
ちなみにいつもは美貌の叔父様は薄着を好むジャンが嫌がる為、キスマークはつけないで上げているらしい。
(テクニシャンだねv)
一方、こちらは第115研究室ではやっぱり白衣を纏ったグンマが先程のレポートを元に、
『クッキー』を焼いていた。
「出~来たv『若返りの薬入りクッキー!』。かなり時間掛かっちゃったケド」
若返り薬入りクッキーは、それはもう見た目も美味しそうに焼きあがっていた。
グンマは満足そうに天使な笑顔で恐ろしい事を呟く。
「え~~と、誰に試食してもらおうかなー?」
やっぱり高松の教え子である。立派に師匠?と同じく、何のためらいもなく人様を実験台にしようとしている。
可愛く(若返りの薬入り)クッキーをラッピングしながら誰が適任か思案していた。
「滅多な事では死ななそうな人と言えば・・・」
う~~~~~んと唸っていたのは極僅かな時間。ポンッと手を叩き、にぱっvと邪気のない笑顔で微笑む。
「シンちゃんにあげようv」
・・・今回の生贄もやっぱりシンタローだった。
ここは総帥室。日がな一日、新総帥のシンタローはここでデスクワークを行なう。
まだ総帥職務に慣れなく、今も今とて書類処理にスッタモンダ中である。
しかしまだ戦闘の感は失ってはいない。間違いなく遠くからだがこちらに向かってくる足音が耳に響いてくるのをキャッチした。こういうパターンなら息子ラブvのマジックだが、この気配はマジックに似ていて全く違うもの。
ドタドタドタ・・・
子供のように廊下を走ってきた青年は確かに総帥室に向かっていた。
バッタ~~~~~~~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!!!
勢いよく総帥室の扉が開かれ、やけに上機嫌なボーイソプラノが響いた。
驚く事もなくシンタローは声の主に視線を向ける。
「シンちゃん♪」
「グンマ、どうした?」
「あのねvクッキー作ったから食べて欲しいんだ♪もうすぐおやつの時間でしょ?」
「・・・もう【おやつの時間】を設ける歳でもないんだが・・・それに俺あんまり甘いものは・・・」
28にもなってなって【おやつの時間】を設けているのはお前だけだ。とシンタローは思った。
「大丈夫♪甘さ控えめだし。いっぱい作っちゃったから食べてねv」
そうまで言われて断れるはずもない。まあ、控えめなら甘いものも好きだし丁度小腹も空いてきたところだ。
「んじゃイタダキマス」
「どうぞv」
一口含む。あの『若返り』入りのクッキーを・・・。
どうなるかなー♪とワクワクしながら目の前の男を楽しそうに観察するグンマの瞳には、全く邪気はなかった。
しかしやってる事は邪悪そのものである。
「結構美味いな」
素直な感想だ。何だかんだ言いながら次々と口に運んでいく。それを聞いてグンマは嬉しそうに返答した。
「でしょ~v隠し味に若返りの薬入れたしv」
「ふ~~~ん・・・若返りの薬入りの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って・・・・・・・何だって・・・?
若返りの薬・・・?」
「うんvシンちゃんに実験台になってもらおうと思ってvv」
「・・・・・・・・・・・――――!!??」
ガタンッ!!
いきなり立ち上がったシンタローは真っ青な顔で洗面所へ走っていった。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダジャ――――――――――
その後聞こえた水音。
「どうしんだろ。吐いちゃった?」
「グ~~~~~ン~~~~~マ~~~~~~~」
ごしごしと力なくタオルで口元を拭うシンタローの声色はかなり低い。要するに怒ってまぁ~~すという雰囲気が漂っていた。
ぐいっ
「わぁ!」
「俺の歳を減らしてどないっすーんじゃ~~~~~~~~!!」
グンマの胸倉を掴んでガクガクと揺さぶり尋問する。頭にはデカデカと怒りマークが浮かんでいた。
流石のグンマも引き気味で答える。揺さぶられながら。
答えようにも上手く喋れなく、途切れ途切れに何とか返答する。
「実、け・・・んだ・・・に、シンちゃ・・・がいっ、かなぁ・・・ぁって思っ・・・だけ・・・よぉ~」
「何が『いいかな~』だ!従兄を弟実験台に使おうとか思ってんじゃねーよ!!」
「く・・・苦しいよぉ・・・」
そろそろ離してあげないとグンマの顔がどんどん青くなっていきます。しかしとりあえず若返り薬入りクッキーは吐き出したといえ(吐いたんかい)、そんな薬盛られてたシンタローは気にせず怒りまくる。
「第一なぁ!――――――――――う!?」
「わっ!」
ドスン!
「~~~・・・・・・痛い~~~~~!」
シンタローは突然苦しそな声を出し、グンマから手を離した。
当の本人は揺さぶり+ちょっと首絞めから解放されたがそのまま重力にしたがって後方に身体が崩れ、
強く尻餅をつく。
身体が疼き、熱くなる。身体が変化していくのが分かる。
「うぐっ!!」
ボンッ
「うわぁ!!」
「シンちゃん!?」
煙が立ち、シンタローを乳白色の煙が包む。
―――若返り!!??今若返ったらどうなるんだ!?
未だ苦しい意識の中、嫌な事ばかりが頭を過ぎる。次第にシンタローを包み込んでいた煙が晴れていく。
「けほっけほっ」
シンタローのものだろうが、やけに高い声(咳)。次第に明確に現れるシンタローの姿にグンマは目を丸くした。
一瞬分からなかったがどうやら実験は、
「あ、失敗しちゃったみたい」
あっけらかんとした感想。しかしその手にはノートと思しきものが。それに研究結果を書いている。
流石高松の背を見て育っただけあって同じ事をしている。あくまでマイペースなグンちゃん。
「こぉおおおらぁぁ!!!呑気に研究結果書いてんじゃねー!!――――――――・・・ん?何か俺の声・・・」
「若返りのは失敗しちゃったケド」
はい、と手渡された手鏡で己の姿を繁々と見つめる。少なくとも若返ってはいないが、これは―――――。
「何だよこりゃ~~~~~!!!???」
己の変わり果てた?姿を見て絶叫するシンタローは見事におチビちゃんになってしまって―――はいない。
よく通る声はボーイソプラノではなくアルト。余裕のできた総帥服の上からでは分かり難いが、顔がやや特有の丸みを帯びている。そして決定的に今までと違うのは、見事なまでの胸の膨らみ・・・・・・だった。
「うわあぁぁああああああぁああっ!!!!!!!!!」
「シンちゃん、女の人になっちゃったみたい」
「誰の所為でこうなったと思ってるんだよ!!」
その前にシンタローに使用したのは『若返りの薬』ではなかったか・・・。
と、いう訳でマジックに相談するのは色んな意味で怖いので信頼を置けるサービスに相談した。
グンマに元に戻る薬を作らせようとしたが、
「解毒剤?まだ作ってないよ?これからv」
一発頭のてっぺんをグーで殴った。・・・ってか毒だったんかい。
サービスの部屋には部屋の主以外には、当たり前のようにいるジャン、被害者シンタロー、タンコブが出来て
ピーピー泣いている容疑者(笑)・グンマ、呆れたような瞳で泣いている従兄弟を見やるキンタロー、
そして科学のことなら(本人曰く)おまかせな高松の計六名。
「そう言えば昔もこんな事があったな」
「え?」
あの時の事は思い出したくないと言う高松を無視してサービスが話すには、
シンタローが六歳の頃誤って高松特製『歳増やしの薬』を飲んでしまい、
その解毒剤を作らせ飲んだが副作用なのか女体化した事があると言うのだ。(『薬でドキドキ!!』参照)
ちなみにグンマもシンタローも忘れていて記憶に留めてはいないらしい。
グンマの見つけた『若返りの薬』レポートは、
その時失敗して出来た『女体化の薬』が書き記されているものであった。
「ドクターの所為かぁ!!!!!!!」
「うわっ!落ち着いて下さいシンタローちゃん!」
「ちゃんて何だ!ちゃんって!」
「・・・とりあえず落ち着け、シンタロー」
ぐいっ
「うわっ!」
いきなりキンタローの腕の中に抱きこまれた。
「なっ・・・」
「落ち着いたか?」
「!!??何すんだよ突然!」
離れようと身を思いっきり捩るが筋力が著しく低下した為ビクともしない。
「と、とにかく離せ/////!!」
「離した途端暴れるだろ」
「暴れんから離してくれ//////!!」
気のせいか名残惜しげに手を離すキンタロー。
何故だか妙にドキドキしている鼓動を沈めようと努めるシンタロー。
―――女の身体だとなんかな・・・意識しちまうってゆーか・・・。って!俺にはソッチの趣味はねーけど・・・。
色んな意味で深ぁ~~~い溜息が出てしまう。
「よーするに俺が女体化したのは今回が初めてって事じゃないって事かよ・・・」
ガックリと項垂れるシンタロー。
どうしようか相談に来たのに嫌な過去を掘り起こされてしまい、余計落ち込んだ。
しかし不幸は不幸なヤツのところにやってくるというもので、一難去らずにまた難はやってくる・・・・・・。
バンッ!
ノックもせずに入室してくるサービスの双子の兄。
「サービスあのよぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う・・・?」
最初こそ最愛の弟に向けられた視線だが、
語尾ら辺は真っ赤なブレザーを余裕そうに着込んだ女性に向けられた。
がしっ
「へ?」
小脇に抱えられたシンタローが間抜けな声を出す。
「この姉ちゃん頂いてくぜ!」
「「「「待て」」」」
全員(―シンタロー)の声が見事にハモる。
いきなり抱えられたシンタローは状況把握が出来なかったので反応が遅れた。
「勝手に持っていくんじゃない。ハーレム」
「んだよ。サービスにはジャンがいるだろ」
正直ハーレムとジャンの仲がいいのはかなり気に喰わないが、幾ら言っても無駄。
近頃は内心穏やかとは言い難いが諦めている。サービスが顔色一つ変えずに双子の兄に注意する。
「彼女は・・・・・・・信じられないかもしれないが・・・・・・・・シンタローなんだよ」
「ほー、どおりでそっくりだな」
じぃ~~~~~~~~~~・・・
暫し目踏みでもするかのように女体化シンタローを凝視する。
「まあいいか、とりあえず貰ってくぜ」
「ふっざけんな!降ろせ離せ―――!!」
ジタバタ暴れるが、先程キンタローに抱き込まれたと同じ、ビクともしない。
「いかんなァ、女性がそんな言葉使いしたらぁ」
「うっせー!」
「兄貴がお前のこ~んな姿見たらどう思うかねぇ~~~」
「う゛っ!!」
ピタリ途端石化。
「だから一時かくまってやろってんじゃねーか。俺ってば親切v」
「嘘付け!」
「お前、いつまでもそんなブカブカな服着てる訳にもいかねーだろ。服用意してやるから黙って来い!」
確かに自分を嫌っている(と、シンタローは思っている)ハーレムが自分を襲う訳ないかと思案する。
言葉に嘘はなさそうだし。
確かにこの総帥服のみならず他の普段着でもぶかぶかであろう。当たり前だが女物の服など持っていないし。
何故に自分に対して親切心を起こしたのか知れないがマジックに見つかるよりはマシだろう。
見つかったなら最後、とんでもない服を着せられそうだ。まさか犬猿の仲の二人なのに、シンタローがハーレムの部屋に居るとは考えないだろうし。貸しを作るのは嫌だが、結局シンタローの身柄はハーレムへと渡された。
サービスとハーレムの部屋はそう離れていないのでマジックや重幹部には見つからずに済んだ。
さっき総帥室からサービスのいる部屋まではかなりの距離だったので、
今となってはよく見つからなかったものだと冷や冷やする。
ハーレムの部屋はサービスの部屋より少々成金趣味っぽい部屋だったが、
それでもマジックの私室よりは数段落ち着いている。
―――そう言えばハーレムの部屋って初めて入ったよなぁ・・・。
仲があまり良くなかった所為だろう。サービスの部屋には小さな頃から出入りしていたが。
きょろきょろと物珍しそうに室内に目をやっていた所為だろう。イキナリ投げ寄こされた服に気付かなかった。
ばさっ
「うわっっぷ!」
「それ着ろ」
ぶっきらぼうな口調で投げ寄こされた服を顔から剥がす。
「悪いな」
「いいからさっさと脱衣所で着替えて来い」
頷いて脱衣所の方へ早足でかけて行った。
その背中を見たハーレムの笑みは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かなり邪悪に満ち溢れていた。
―――甘いな。ぱっと見分からねえがその服は・・・。
やっぱりハーレムはハーレムだったと言う事か。
数分後。
「何だ・・・・・この服・・・・・・」
脱衣所から着替えて出てきたシンタローの顔は恨めしげに叔父を見据えていた。
握り拳がわなわな震えていて今にも殴りかからんとでもしそうである。
「女性総帥服」
「こんなに露出度高いのかよ!!」
びしっ!と自分の胸を指差す。ベージュを基本色としたハーレム曰く“女性総帥服”はスリットがかなり深く
襟元からは胸が大きく開いている、露出度がおもいっきり高い服であった。
「ジャージ系でいい!」
身体は女になろうとも心は男なのだ、まさに気分は女装。そんな趣味はシンタローには更々ない。
「折角俺様が用意してやったんだぞ!!!それを礼はともかく出てくる言葉が文句かよ」
「~~~~~~~~~~~・・・・!!??・・・そう言えば何で女になった俺の体型が分かったんだよ」
「グンマと女になったテメエがコソコソサービスの部屋に向かっているを見たんだよ。
一目見りゃぁ大体分かるぜ」
「!!??」
ドサッ・・・
そう言うが早いか、ハーレムはシンタローをベッドへと押し倒した。
二人分の体重を受けてスプリンクラーが鳴る。
実はもう少し言えば、
グンマが見つけた『若返りの薬』の作り方が記されていたレポートを第三研究室に置いたのはこの男。
シンタローが六歳の頃、
青年化したり女体化したりした事はその頃マジックやサービスから聞いていて知っていた。
当時は特に興味のある話題でもなかったが、今回偶然高松に用があって訪れた研究室で見つけた当時の
レポートを発見し、これをグンマやキンタロー、ジャンなどがよく出入りする第三研究室にでも置いておけば、
そのうちの誰かが興味を持って作るかもしれない。
そしたら毒見として選ばれるのはまずシンタロー。
本当にグンマが作っている事を知り、どうなる事かと見ていたが、
見事『若返りの薬』は女体化の効果をシンタローに発揮。
サービスの所へコソコソの身を寄せようとしているシンタロー(+たんこぶつくって泣きべそかいてるグンマ)を
見、まるでサービスに用があるかの如く何食わぬ顔をし、女体化してしまったシンタロー目的でサービスの
部屋へ。そして自分の部屋へ誘導する。つまり確信犯だったのである。
当初の予想通り、女性になったシンタローはハーレム好みのイイ女だった。
脂肪など元々付かず、引き締まった筋肉は薄れ丸みを帯びながらもほっそりした肢体、すらっと伸びた手足、女性特有の色気に満ち、そして男の時には無かった柔らかい豊満な胸。
それをハーレムが突然鷲掴みした。
途端漏れる声。
「うぁ・・・っ」
「ふぅむ・・・・・・。感度はなかなか・・・」
「やめろっ」
抵抗するがやはりハーレムにはノーダメージだ。暴れれば暴れるほど男の加虐心を高めるだけ。
ニヤニヤとした笑いを濃くし、唇を耳の裏に寄せて囁く。
「こんな状況になってやめられると思うか?折角女になったんだ。覚悟決めな」
「出来るか!―――ふぅ、んっ」
どんなに吼えても妖しい指使いに息が荒くなり、それ以上言葉を紡げなくなる。
―――嘘だろおおぉぉおおおっっ!!!???サービス叔父さん!グンマ!キンタロー!ジャン!
誰でもいいから誰か!!ヘルプ・ミー!!!!!!!!!!!!
このままではハーレムに犯される!心の中でシンタローは大泣きして助けを求めた。
その切なる願いが聞き届けられたのであろうか。
どっか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっっっ
「そこまでだよ、ハーレム」
「兄貴ぃ!!??」
「親父!!??」
眼魔砲ぶっ放し、ヤレヤレとした口調で男女が濃厚に絡み合っているベッドに歩み寄ってくるマジック。
「サービスから連絡が入ってね。まさかと思って来てみれば・・・、サービスの言った通り、グラマーな美人さんvになったシンちゃんを攫おうとしている実の弟の姿が目の前に、か・・・」
軽い口調に笑顔だが、目と声色は怒ってまぁ~~~~すと言う事をしっかりと伝えていた。
「覚悟はいいね?ハーレムv」
「オイ!兄貴!!何だその構えは!やめんかー!」
「大丈夫vシンちゃんには当たらないようにするからvv」
「全然大丈夫じゃねぇえええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
獅子舞の必死の咆哮虚しく、ハーレムは慢心の力が込められた眼魔砲をプレゼントされた。
ちなみにシンタローはと言えば、無傷で済んでめでたしめでたしv
「ちっともめでたくねぇええぇぇええっっっ!!!!!!」
「シンちゃぁ~~~んvv今夜は寝かせないぞv」
マジックに見事拉致られたとかなんとか。
END♪
★あとがき★
ひさか様より頂きましたWシンちゃんの女体化イラストの返礼小説です♪とは言え、また妖のツボを突きまくりのイラストを7枚も頂いてしましまいましたが(笑)大感謝でございますぅ!!ひそか様(*^0^*)/一時裏行きになりそうになりましたよ(またか)。攻キャラは特に指定なしだったので、総受にしましたvええと、CPとしてはハレシンとマジシン。それから実はキンシンもちこっと・・・。これは賛否激しそうですが。普通キングンが多いですから。でも好きなんですよ~vこのCPもvv
あ、サビジャンが入ったのは妖の趣味です(笑)
(2003・5・3)
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くのいちDebut マンスリーマンション 中途採用 SEO対策
宇宙船を作るー!と張り切っているジャン。それに手伝わされているのはグンマとキンタローだ。
高松は色々な事を想像して止めにかかったが、グンマは
「面白そーv」
とヤル気満々。少々今までの研究にマンネリを感じていたところだったのだ。
キンタローは別に乗り気ではなかったのだが、それは何に対してもであって、グンマがしつこく
「キンちゃんもやろー。ねー、やろーよーぉ」
と誘うのでまあいいかと。
同い年とは言え、どうもキンタローにはグンマが手のかかる弟のような存在に感じていたので、
心配な兄弟心もあって同意したのだが。
「あれ・・・、これ何の研究レポートだろう?知ってる?キンちゃん」
「俺よりお前の方がこの施設に居るのは長いだろう」
呆れたような視線を送られるとグッと詰まってしまう。
ちなみに二人が居るのは昔高松が使っていた第三研究所。
ジャンやキンタローまで科学の道に進むという事で研究室の増築が決定された。
それでまだ科学者としては未熟ながら期待あるジャン、キンタローにも研究室が一室ずつ支給され、
三人が宇宙船“ノア”を作ると決定した時、新たにこの第三研究室も与えられた。
ちなみにグンマは既に科学研究には浸かっていたのでちゃんと元から研究室(第六研究室)がある。
「あれ・・・」
「どうした?」
「こんなレポートあったっけ?」
グンマは一番小さいディスクの上に置き去りにされている埃臭い紙の束を見つけた。
ホチキスで止められたとても古いのだろう、かなり保存状態の悪い六ページ分のレポートである。
ここはジャン、キンタローそしてグンマしか使っていない筈。少なくとも自分のレポートではない。
キンタローに問うと知らないと首を左右に振る。とりあえずぱらぱらと中身を捲ってみる。
どうやら何かの薬の作り方らしい。となると、“ノア”作りに夢中のジャンのでもなさそうだ。
興味深げに読みにくいレポート内容を読んでいたグンマだったが、
満足したようにレポートを胸に抱えてキンタローに向き直った。
「よし、これ作ってみようv」
「即決だな。大丈夫か?」
「まっかせて!一度新薬って作ってみたかったし!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
聞いたのはそういう意味ではなく、ちゃんと薬を作れるのかという事だったのだが。
しかし(グンマに対しては)あまり深く追求しない性質なので、まあいいかとその場は流した・・・・・・・・・・・・のが全ての始まりだった・・・・・・。
「どうしたんだ、グンマ。ちっとも“ノア”作りに参加してくれてないけど」
ジャンが不思議そうに問う。白衣姿が意外と様になっている。
キンタローも白衣姿で、カルテらしきものに目を向けたまま答える。
「ああ、何でも『新薬を作る練習するんだー♪』とか言って自分の研究室に篭りっきりだ」
「ふー・・・ん・・・(何か、今のグンマの物真似・・・めちゃくちゃ似てて怖い;)」
「で、何を作っているんだグンマは」
「うっわ!!サービス!」
そこには見目麗しきグンマ&キンタローの叔父が、まるでずっと居たように佇んでいた。
「何でここに・・・」
「ちょっとジャンに用があったんだ。で、グンマは何を作っているのだ、キンタロー」
「知らん」
即答。
「そうか」
「ってオイ!何あっさり納得してんだよ!何か危ない薬でも作ってたらどうすんだよ!?」
「大丈夫だろう。多分な」
マイペースな親友にガックリと肩を落す。付き合いは長いが未だに分からないところだらけな男である。
「そんな事よりジャンに用とは何だ」
“そんな事”と片付けてもいいのかキンタロー。
そう気にするのはジャンだけで、相も変わらず美貌の叔父様は顔色一つ変えず用件を切り出す。
「ジャンに今朝言い忘れた事があってな」
「何?」
「昨晩うっかりお前の背中にキスマークを付けてしまってな。だから人前で服を脱がない方が良いと思」
「うわあああああああああああぁぁぁ!!!!!!!!
こ、子どもの前でその話すんなよぉ――――――――/////////////////!!!!」
ムッとして子どもではないと主張するキンタローは何故かサービスの爆弾発言を全く気にしていなかった。
どうやらこの二人仲はガンマ団では公認らしい。
ちなみにいつもは美貌の叔父様は薄着を好むジャンが嫌がる為、キスマークはつけないで上げているらしい。
(テクニシャンだねv)
一方、こちらは第115研究室ではやっぱり白衣を纏ったグンマが先程のレポートを元に、
『クッキー』を焼いていた。
「出~来たv『若返りの薬入りクッキー!』。かなり時間掛かっちゃったケド」
若返り薬入りクッキーは、それはもう見た目も美味しそうに焼きあがっていた。
グンマは満足そうに天使な笑顔で恐ろしい事を呟く。
「え~~と、誰に試食してもらおうかなー?」
やっぱり高松の教え子である。立派に師匠?と同じく、何のためらいもなく人様を実験台にしようとしている。
可愛く(若返りの薬入り)クッキーをラッピングしながら誰が適任か思案していた。
「滅多な事では死ななそうな人と言えば・・・」
う~~~~~んと唸っていたのは極僅かな時間。ポンッと手を叩き、にぱっvと邪気のない笑顔で微笑む。
「シンちゃんにあげようv」
・・・今回の生贄もやっぱりシンタローだった。
ここは総帥室。日がな一日、新総帥のシンタローはここでデスクワークを行なう。
まだ総帥職務に慣れなく、今も今とて書類処理にスッタモンダ中である。
しかしまだ戦闘の感は失ってはいない。間違いなく遠くからだがこちらに向かってくる足音が耳に響いてくるのをキャッチした。こういうパターンなら息子ラブvのマジックだが、この気配はマジックに似ていて全く違うもの。
ドタドタドタ・・・
子供のように廊下を走ってきた青年は確かに総帥室に向かっていた。
バッタ~~~~~~~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!!!
勢いよく総帥室の扉が開かれ、やけに上機嫌なボーイソプラノが響いた。
驚く事もなくシンタローは声の主に視線を向ける。
「シンちゃん♪」
「グンマ、どうした?」
「あのねvクッキー作ったから食べて欲しいんだ♪もうすぐおやつの時間でしょ?」
「・・・もう【おやつの時間】を設ける歳でもないんだが・・・それに俺あんまり甘いものは・・・」
28にもなってなって【おやつの時間】を設けているのはお前だけだ。とシンタローは思った。
「大丈夫♪甘さ控えめだし。いっぱい作っちゃったから食べてねv」
そうまで言われて断れるはずもない。まあ、控えめなら甘いものも好きだし丁度小腹も空いてきたところだ。
「んじゃイタダキマス」
「どうぞv」
一口含む。あの『若返り』入りのクッキーを・・・。
どうなるかなー♪とワクワクしながら目の前の男を楽しそうに観察するグンマの瞳には、全く邪気はなかった。
しかしやってる事は邪悪そのものである。
「結構美味いな」
素直な感想だ。何だかんだ言いながら次々と口に運んでいく。それを聞いてグンマは嬉しそうに返答した。
「でしょ~v隠し味に若返りの薬入れたしv」
「ふ~~~ん・・・若返りの薬入りの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って・・・・・・・何だって・・・?
若返りの薬・・・?」
「うんvシンちゃんに実験台になってもらおうと思ってvv」
「・・・・・・・・・・・――――!!??」
ガタンッ!!
いきなり立ち上がったシンタローは真っ青な顔で洗面所へ走っていった。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダジャ――――――――――
その後聞こえた水音。
「どうしんだろ。吐いちゃった?」
「グ~~~~~ン~~~~~マ~~~~~~~」
ごしごしと力なくタオルで口元を拭うシンタローの声色はかなり低い。要するに怒ってまぁ~~すという雰囲気が漂っていた。
ぐいっ
「わぁ!」
「俺の歳を減らしてどないっすーんじゃ~~~~~~~~!!」
グンマの胸倉を掴んでガクガクと揺さぶり尋問する。頭にはデカデカと怒りマークが浮かんでいた。
流石のグンマも引き気味で答える。揺さぶられながら。
答えようにも上手く喋れなく、途切れ途切れに何とか返答する。
「実、け・・・んだ・・・に、シンちゃ・・・がいっ、かなぁ・・・ぁって思っ・・・だけ・・・よぉ~」
「何が『いいかな~』だ!従兄を弟実験台に使おうとか思ってんじゃねーよ!!」
「く・・・苦しいよぉ・・・」
そろそろ離してあげないとグンマの顔がどんどん青くなっていきます。しかしとりあえず若返り薬入りクッキーは吐き出したといえ(吐いたんかい)、そんな薬盛られてたシンタローは気にせず怒りまくる。
「第一なぁ!――――――――――う!?」
「わっ!」
ドスン!
「~~~・・・・・・痛い~~~~~!」
シンタローは突然苦しそな声を出し、グンマから手を離した。
当の本人は揺さぶり+ちょっと首絞めから解放されたがそのまま重力にしたがって後方に身体が崩れ、
強く尻餅をつく。
身体が疼き、熱くなる。身体が変化していくのが分かる。
「うぐっ!!」
ボンッ
「うわぁ!!」
「シンちゃん!?」
煙が立ち、シンタローを乳白色の煙が包む。
―――若返り!!??今若返ったらどうなるんだ!?
未だ苦しい意識の中、嫌な事ばかりが頭を過ぎる。次第にシンタローを包み込んでいた煙が晴れていく。
「けほっけほっ」
シンタローのものだろうが、やけに高い声(咳)。次第に明確に現れるシンタローの姿にグンマは目を丸くした。
一瞬分からなかったがどうやら実験は、
「あ、失敗しちゃったみたい」
あっけらかんとした感想。しかしその手にはノートと思しきものが。それに研究結果を書いている。
流石高松の背を見て育っただけあって同じ事をしている。あくまでマイペースなグンちゃん。
「こぉおおおらぁぁ!!!呑気に研究結果書いてんじゃねー!!――――――――・・・ん?何か俺の声・・・」
「若返りのは失敗しちゃったケド」
はい、と手渡された手鏡で己の姿を繁々と見つめる。少なくとも若返ってはいないが、これは―――――。
「何だよこりゃ~~~~~!!!???」
己の変わり果てた?姿を見て絶叫するシンタローは見事におチビちゃんになってしまって―――はいない。
よく通る声はボーイソプラノではなくアルト。余裕のできた総帥服の上からでは分かり難いが、顔がやや特有の丸みを帯びている。そして決定的に今までと違うのは、見事なまでの胸の膨らみ・・・・・・だった。
「うわあぁぁああああああぁああっ!!!!!!!!!」
「シンちゃん、女の人になっちゃったみたい」
「誰の所為でこうなったと思ってるんだよ!!」
その前にシンタローに使用したのは『若返りの薬』ではなかったか・・・。
と、いう訳でマジックに相談するのは色んな意味で怖いので信頼を置けるサービスに相談した。
グンマに元に戻る薬を作らせようとしたが、
「解毒剤?まだ作ってないよ?これからv」
一発頭のてっぺんをグーで殴った。・・・ってか毒だったんかい。
サービスの部屋には部屋の主以外には、当たり前のようにいるジャン、被害者シンタロー、タンコブが出来て
ピーピー泣いている容疑者(笑)・グンマ、呆れたような瞳で泣いている従兄弟を見やるキンタロー、
そして科学のことなら(本人曰く)おまかせな高松の計六名。
「そう言えば昔もこんな事があったな」
「え?」
あの時の事は思い出したくないと言う高松を無視してサービスが話すには、
シンタローが六歳の頃誤って高松特製『歳増やしの薬』を飲んでしまい、
その解毒剤を作らせ飲んだが副作用なのか女体化した事があると言うのだ。(『薬でドキドキ!!』参照)
ちなみにグンマもシンタローも忘れていて記憶に留めてはいないらしい。
グンマの見つけた『若返りの薬』レポートは、
その時失敗して出来た『女体化の薬』が書き記されているものであった。
「ドクターの所為かぁ!!!!!!!」
「うわっ!落ち着いて下さいシンタローちゃん!」
「ちゃんて何だ!ちゃんって!」
「・・・とりあえず落ち着け、シンタロー」
ぐいっ
「うわっ!」
いきなりキンタローの腕の中に抱きこまれた。
「なっ・・・」
「落ち着いたか?」
「!!??何すんだよ突然!」
離れようと身を思いっきり捩るが筋力が著しく低下した為ビクともしない。
「と、とにかく離せ/////!!」
「離した途端暴れるだろ」
「暴れんから離してくれ//////!!」
気のせいか名残惜しげに手を離すキンタロー。
何故だか妙にドキドキしている鼓動を沈めようと努めるシンタロー。
―――女の身体だとなんかな・・・意識しちまうってゆーか・・・。って!俺にはソッチの趣味はねーけど・・・。
色んな意味で深ぁ~~~い溜息が出てしまう。
「よーするに俺が女体化したのは今回が初めてって事じゃないって事かよ・・・」
ガックリと項垂れるシンタロー。
どうしようか相談に来たのに嫌な過去を掘り起こされてしまい、余計落ち込んだ。
しかし不幸は不幸なヤツのところにやってくるというもので、一難去らずにまた難はやってくる・・・・・・。
バンッ!
ノックもせずに入室してくるサービスの双子の兄。
「サービスあのよぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う・・・?」
最初こそ最愛の弟に向けられた視線だが、
語尾ら辺は真っ赤なブレザーを余裕そうに着込んだ女性に向けられた。
がしっ
「へ?」
小脇に抱えられたシンタローが間抜けな声を出す。
「この姉ちゃん頂いてくぜ!」
「「「「待て」」」」
全員(―シンタロー)の声が見事にハモる。
いきなり抱えられたシンタローは状況把握が出来なかったので反応が遅れた。
「勝手に持っていくんじゃない。ハーレム」
「んだよ。サービスにはジャンがいるだろ」
正直ハーレムとジャンの仲がいいのはかなり気に喰わないが、幾ら言っても無駄。
近頃は内心穏やかとは言い難いが諦めている。サービスが顔色一つ変えずに双子の兄に注意する。
「彼女は・・・・・・・信じられないかもしれないが・・・・・・・・シンタローなんだよ」
「ほー、どおりでそっくりだな」
じぃ~~~~~~~~~~・・・
暫し目踏みでもするかのように女体化シンタローを凝視する。
「まあいいか、とりあえず貰ってくぜ」
「ふっざけんな!降ろせ離せ―――!!」
ジタバタ暴れるが、先程キンタローに抱き込まれたと同じ、ビクともしない。
「いかんなァ、女性がそんな言葉使いしたらぁ」
「うっせー!」
「兄貴がお前のこ~んな姿見たらどう思うかねぇ~~~」
「う゛っ!!」
ピタリ途端石化。
「だから一時かくまってやろってんじゃねーか。俺ってば親切v」
「嘘付け!」
「お前、いつまでもそんなブカブカな服着てる訳にもいかねーだろ。服用意してやるから黙って来い!」
確かに自分を嫌っている(と、シンタローは思っている)ハーレムが自分を襲う訳ないかと思案する。
言葉に嘘はなさそうだし。
確かにこの総帥服のみならず他の普段着でもぶかぶかであろう。当たり前だが女物の服など持っていないし。
何故に自分に対して親切心を起こしたのか知れないがマジックに見つかるよりはマシだろう。
見つかったなら最後、とんでもない服を着せられそうだ。まさか犬猿の仲の二人なのに、シンタローがハーレムの部屋に居るとは考えないだろうし。貸しを作るのは嫌だが、結局シンタローの身柄はハーレムへと渡された。
サービスとハーレムの部屋はそう離れていないのでマジックや重幹部には見つからずに済んだ。
さっき総帥室からサービスのいる部屋まではかなりの距離だったので、
今となってはよく見つからなかったものだと冷や冷やする。
ハーレムの部屋はサービスの部屋より少々成金趣味っぽい部屋だったが、
それでもマジックの私室よりは数段落ち着いている。
―――そう言えばハーレムの部屋って初めて入ったよなぁ・・・。
仲があまり良くなかった所為だろう。サービスの部屋には小さな頃から出入りしていたが。
きょろきょろと物珍しそうに室内に目をやっていた所為だろう。イキナリ投げ寄こされた服に気付かなかった。
ばさっ
「うわっっぷ!」
「それ着ろ」
ぶっきらぼうな口調で投げ寄こされた服を顔から剥がす。
「悪いな」
「いいからさっさと脱衣所で着替えて来い」
頷いて脱衣所の方へ早足でかけて行った。
その背中を見たハーレムの笑みは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かなり邪悪に満ち溢れていた。
―――甘いな。ぱっと見分からねえがその服は・・・。
やっぱりハーレムはハーレムだったと言う事か。
数分後。
「何だ・・・・・この服・・・・・・」
脱衣所から着替えて出てきたシンタローの顔は恨めしげに叔父を見据えていた。
握り拳がわなわな震えていて今にも殴りかからんとでもしそうである。
「女性総帥服」
「こんなに露出度高いのかよ!!」
びしっ!と自分の胸を指差す。ベージュを基本色としたハーレム曰く“女性総帥服”はスリットがかなり深く
襟元からは胸が大きく開いている、露出度がおもいっきり高い服であった。
「ジャージ系でいい!」
身体は女になろうとも心は男なのだ、まさに気分は女装。そんな趣味はシンタローには更々ない。
「折角俺様が用意してやったんだぞ!!!それを礼はともかく出てくる言葉が文句かよ」
「~~~~~~~~~~~・・・・!!??・・・そう言えば何で女になった俺の体型が分かったんだよ」
「グンマと女になったテメエがコソコソサービスの部屋に向かっているを見たんだよ。
一目見りゃぁ大体分かるぜ」
「!!??」
ドサッ・・・
そう言うが早いか、ハーレムはシンタローをベッドへと押し倒した。
二人分の体重を受けてスプリンクラーが鳴る。
実はもう少し言えば、
グンマが見つけた『若返りの薬』の作り方が記されていたレポートを第三研究室に置いたのはこの男。
シンタローが六歳の頃、
青年化したり女体化したりした事はその頃マジックやサービスから聞いていて知っていた。
当時は特に興味のある話題でもなかったが、今回偶然高松に用があって訪れた研究室で見つけた当時の
レポートを発見し、これをグンマやキンタロー、ジャンなどがよく出入りする第三研究室にでも置いておけば、
そのうちの誰かが興味を持って作るかもしれない。
そしたら毒見として選ばれるのはまずシンタロー。
本当にグンマが作っている事を知り、どうなる事かと見ていたが、
見事『若返りの薬』は女体化の効果をシンタローに発揮。
サービスの所へコソコソの身を寄せようとしているシンタロー(+たんこぶつくって泣きべそかいてるグンマ)を
見、まるでサービスに用があるかの如く何食わぬ顔をし、女体化してしまったシンタロー目的でサービスの
部屋へ。そして自分の部屋へ誘導する。つまり確信犯だったのである。
当初の予想通り、女性になったシンタローはハーレム好みのイイ女だった。
脂肪など元々付かず、引き締まった筋肉は薄れ丸みを帯びながらもほっそりした肢体、すらっと伸びた手足、女性特有の色気に満ち、そして男の時には無かった柔らかい豊満な胸。
それをハーレムが突然鷲掴みした。
途端漏れる声。
「うぁ・・・っ」
「ふぅむ・・・・・・。感度はなかなか・・・」
「やめろっ」
抵抗するがやはりハーレムにはノーダメージだ。暴れれば暴れるほど男の加虐心を高めるだけ。
ニヤニヤとした笑いを濃くし、唇を耳の裏に寄せて囁く。
「こんな状況になってやめられると思うか?折角女になったんだ。覚悟決めな」
「出来るか!―――ふぅ、んっ」
どんなに吼えても妖しい指使いに息が荒くなり、それ以上言葉を紡げなくなる。
―――嘘だろおおぉぉおおおっっ!!!???サービス叔父さん!グンマ!キンタロー!ジャン!
誰でもいいから誰か!!ヘルプ・ミー!!!!!!!!!!!!
このままではハーレムに犯される!心の中でシンタローは大泣きして助けを求めた。
その切なる願いが聞き届けられたのであろうか。
どっか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~んっっっ
「そこまでだよ、ハーレム」
「兄貴ぃ!!??」
「親父!!??」
眼魔砲ぶっ放し、ヤレヤレとした口調で男女が濃厚に絡み合っているベッドに歩み寄ってくるマジック。
「サービスから連絡が入ってね。まさかと思って来てみれば・・・、サービスの言った通り、グラマーな美人さんvになったシンちゃんを攫おうとしている実の弟の姿が目の前に、か・・・」
軽い口調に笑顔だが、目と声色は怒ってまぁ~~~~すと言う事をしっかりと伝えていた。
「覚悟はいいね?ハーレムv」
「オイ!兄貴!!何だその構えは!やめんかー!」
「大丈夫vシンちゃんには当たらないようにするからvv」
「全然大丈夫じゃねぇえええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
獅子舞の必死の咆哮虚しく、ハーレムは慢心の力が込められた眼魔砲をプレゼントされた。
ちなみにシンタローはと言えば、無傷で済んでめでたしめでたしv
「ちっともめでたくねぇええぇぇええっっっ!!!!!!」
「シンちゃぁ~~~んvv今夜は寝かせないぞv」
マジックに見事拉致られたとかなんとか。
END♪
★あとがき★
ひさか様より頂きましたWシンちゃんの女体化イラストの返礼小説です♪とは言え、また妖のツボを突きまくりのイラストを7枚も頂いてしましまいましたが(笑)大感謝でございますぅ!!ひそか様(*^0^*)/一時裏行きになりそうになりましたよ(またか)。攻キャラは特に指定なしだったので、総受にしましたvええと、CPとしてはハレシンとマジシン。それから実はキンシンもちこっと・・・。これは賛否激しそうですが。普通キングンが多いですから。でも好きなんですよ~vこのCPもvv
あ、サビジャンが入ったのは妖の趣味です(笑)
(2003・5・3)
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薬でドキドキ!!
(挿入イラスト:ひそか様)
肩まで伸びた黒髪に同色の瞳は青の一族とは明らかに異端。
で、ありながらその幼子がすくすくと伸びやかな感性で育っているのは、
幼子――シンタロ―の父、マジックの並々ならぬ息子溺愛ぶりからか、
はたまたシンタロ―の持つ、人を引きつけてやまぬ無意識なる力なのか。
どちらにせよ、そんな事は今のシンタロ―には大した問題ではなかった。問題なのは――。
「ふぅ・・・」
一つ溜息。
「パパはお仕事行っちゃったし、(サ―ビス)叔父さんはいっつもいないし・・・」
周りに散らばったおもちゃの数々。少し間を置いて、
「退屈だあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
部屋いっぱいに叫ぶ。遊び盛りのシンタロ―(6歳)は今、どうしようもなく暇で暇でしょうがなかった。
「シンちゃ~んv遊ぼ~ぉ」
聞きなれた声の主がシンタロ―の居る自室へと足を踏み入れた。
「グンマ!」
シンタロ―と従兄弟のやはり青の一族の少年。それを象徴するかのように栄える黄金の髪と秘石眼。
見た目、シンタロ―より幾分幼く見えるこちらも遊びたい盛りの6歳。
「高松は?」
いつも(鼻血を垂らしながら)グンマの傍に控えているマッドサイエンティストの姿が見えない。
「学会に行っちゃった。でね、最初工具とか使って遊んでたんだけど飽きちゃった。だからシンちゃん!遊ぼv」
「ふ~ん。退屈だったから丁度いいや!遊ぼう!何がいい?」
「ん~とね~・・・かくれんぼは?」
「よ~し!じゃんけんぽん!!」
グンマはパ―でシンタロ―はチョキ。
実はいっつもグンマは最初にパ―ばかり出すのをシンタロ―は知っている。
「あ~、負けちゃった」
「向こう向いてて。じゃあ50数えたら探しに来いよ」
そう言うが早いかシンタロ―はイキオイよく部屋から飛び出した。
「ん~と・・・い~ち、に~い、さ~ん」
大きな窓に顔を寄せて目を隠し、ゆっくりと数を数える。
シンタロ―は全速力で迷路のような廊下を走り、地下にある一室へと身を隠した。
まさかこれがとんでもない事態を引き起こすキッカケになろうとは、
幼い二人には予想すらつかなかったのだ・・・・・・。
「あ~んシンちゃ~あああん」
グンマはもはや半泣き状態になって探し回っていた。
なにせこんなに途方もなく広いガンマ団施設。まだ足を踏み入れた事のない場所だって沢山ある。
「くすん。どこまでかエリア決めとけばよかった・・・」
後悔先に立たず。幼いながらも身に染みて感じるグンマであった。
一方シンタロ―はと言えば、ちらりと部屋の壁に掛けられている時計を見て盛大なため息をイライラと共に吐き出した。
「全然見つけにこないな~グンマ。折角見つけやすいようにグンマもよく知ってる筈のこの部屋に隠れたのに」
シンタロ―の言う『この部屋』とは、カ―テンが閉じられている所為も抜かしても陰険な空気を漂わせている場所。
ビ―カ―やらフラスコ、人体模型などは勿論の事、
何やらシンタロ―には???な、とてもじゃないが表現するのもおぞましいものが、意外にもきちんと並べられている。
例えて言うなら理科の実験室と呪いの儀式室を足して2で割ったような部屋、である。
それでもって6歳のグンマもよく知ってる部屋、なのである。
「喉渇いたな~」
向かう先は小さめな冷蔵庫。
クリップでとめてある夥しい枚数のグンマの写真が(鼻血付き)ひしめき合って飾られているが敢えて無視。
「でもここの飲み物ってかなり妖しい感じがするし・・・」
確かに。
開けてみれば普通の子どもなら(いや、大人でも)見た瞬間に失神、失禁、発狂しそうな程おぞましいものが詰め込まれていた。
「あれ?これは大丈夫みたいだ」
そう言って手に取ったのは子どものおやつによく出すヤ●ルト。
色もおかしくないし、匂いを嗅いでも確かにヤク●トの匂いそのもの。
蓋もちゃんと剥がした後もなくぴったりとはりついていた。
ぺりっ
「いっただきま~す♪」
ごくごくごく
ちなみに味もちゃんとヤクル●であった。シンちゃん。勝手に人様のものを飲んではいけません。
「まだかな~グンマ・・・」
殻になった●クルトをきちんとごみ箱に捨て、椅子に座り暫く足をブラブラさせていたが、
「ふわぁ~・・・眠い」
小さな欠伸をして、いつの間にか小さな寝息が聞こえてきた。
数十分後・・・。やっとグンマもシンタロ―が隠れている地下にやってきた。
「クスン。シンちゃんどこ~?」
ずっと泣いた為か、目が赤くなっている。
「ここかな~。でも高松が一緒じゃないと入っちゃいけないって言ってたし・・・」
グンマが入るべきか入らざるべきかうんうん悩む部屋こそシンタロ―が隠れている部屋。
意を決して扉の取っ手に手をかける。
「シンちゃあああん居るの~ぉ???居るなら居るって言ってよぉ~」
大きな瞳に涙をいっぱい溜めて、怖々室内を覗いてみる。
「シンちゃんってばぁ~。居ないなら居ないって言ってよ~。グスン」
無茶な台詞だが恐怖にかられている幼子なので仕方がない。
恐る恐る足を踏み入れていくと足元に何かが当たった。
「ひっっ!!」
一瞬にしてその場から大泣きして飛び退くグンマだったが、
「あっ!シンちゃん」
それはすっかりと熟睡しているシンタロ―だった。ほっとするのと同時に徐々に今までの恐怖が怒りに変わる。
「も~!シンちゃんてばこの部屋は高松の研究室で、
危ないのがいっぱいあるから勝手に入っちゃいけないって言われてたのに~」
相変わらずすやすやと穏やかな寝息をたてている従兄弟に説教してみるが起きる様子もない。
小さくため息をついて肩に触れた。
「シンちゃん起きて!シンちゃんてばぁ!」
少し強めに揺すってみる。
「ん・・・グンマ・・・?」
反応あり。まだ寝ぼけているようだけれど。
徐々に眠りの世界から覚醒した少年は目を擦り擦り辺りをきょろきょろ。
目の前にはほっぺを膨らませている従兄弟の姿。
「もう!やっと起きた」
「ん~・・・俺、いつの間にか眠っちゃったんだ」
大きな欠伸をしながら伸びをする。
「グンマ・・・今何時?」
「ん~とねえ・・・4時みたい」
壁にかかった時計を指差して答える。
「そっかあ・・・それそろパパが帰ってくるかも」
「高松もね―――――――ってシンちゃん!ここは入っちゃダメって高松が言ってたじゃない!!」
「でもグンマが探しやすいようにこの部屋に隠れたんだけど」
嘘じゃない。
「でも入っちゃダメだよ?」
「うん。分かった」
「戻ろ。シンちゃん」
「うん・・・・・・・・あ・・・れ・・・?」
ドアの取っ手に手をかけたグンマが振り返る。
「どうしたの?」
「何か身体が・・・変・・・うっ、うう」
みるみるうちに顔色が青ざめる。
身体が異常に熱い!
シンタロ―は自分の身体の中で何かが膨れ上がるような感覚に堪え切れず、その場に倒れてしまった。
「シンちゃん!!」
「熱い・・・・・・・・・はぁ・・・うぅっ!」
苦しみだした従兄弟にただオロオロするしかないグンマ。
「ええ!?どうしたのシンちゃん!ねえ大丈夫!?」
誰か呼んで来るべきか、しかしシンタロ―をこのまま一人にしておくのも心配だ。
「わ~ん!!どうしよう~!!!」
苦しんでいる本人異常にパニック状態になるグンマ。と、次の瞬間!!
ボンッ!!!
「わあっ!!!!!!」
いきなりの爆発音。
辺りは白い煙で覆われている。害臭ではないのか煙を吸い込んでしまっても息苦しさなどは感じない。
とりあえず滅多に開けられない窓を全部開いて煙を逃がす。
程なくして煙は視界から消え去り、目の前には“従兄弟のシンちゃんがいる―――――――――――――筈なのだ。
しかしそこにいるのはグンマの従兄弟であるシンタロ―ではない。
何故かびりびりに破けまくった服を申し訳程度に纏い、
流れるように長い漆黒の髪と同色の瞳が今の現状を理解していない事を示してぱちくりさせている。
幼げな部分を持ちながらも目に前に居るのは6歳のシンタロ―ではなく、
均衡の取れた肉体を持つ精悍な青年だった。
しばしの沈黙を恐る恐るグンマが紐解く。
「え・・・お兄ちゃん、誰?」
「何言ってるんだよ。頭でも打ったのか?」
「シンちゃん・・・なの?」
「当り前だろ?どうしたんだグンマ」
ふと小首を捻った。
「グンマ何か小さくなってない?」
呆然としたまま目の前の青年を震える指で指す。
「違うよ。シンちゃんが大きくなっちゃったんだよ・・・」
「・・・と、いう訳なんだけど」
困った視線を立った今帰還したばかりの男に向ける。
「シンタロ―君、これを飲みましたね?」
肩まで無造作に伸びた黒髪に笑い黒子。
白衣を着るのもそこそこにこの部屋の所有者(責任者)高松が数時間前に飲んだヤ●ルトをため息混じりに見せる。
「だって喉渇いたし・・・」
「僕だって喉乾いたよ!シンちゃんいつまで経っても見つからないんだもん!」
いつもなら「ああ、喉が渇いても必死にシンタロ―君を探そうとする健気な貴方!!!(鼻血ブ~~~~!!!)」
だの「それならば私がグンマ様の為に買ってきました、冬季限定ミルクセ―キをご賞味下さいvvvvv」だの
口を出す高松だが、(実際冬季限定ミルクセ―キをお土産にしっかりと大量に買ってきてたりするし)
今はそれどころではない。
世界が恐れる世界最強の殺し屋集団の総帥、マジックの愛しい愛しい愛し過ぎて「ちょっとそれは・・・」という程の
一身に愛を注がれている一人息子、シンタロ―が、かったるい学会から帰ってきたと思ったら
泣きついてきた愛しい愛しい愛し過ぎて鼻血ブ~~~~!!!なグンマが言うには
「シンちゃんが突然目の前で大きくなっちゃったよ~!!!!」と言うのだから。
しかもその原因に心当たりもあった。
それがあのヤク●トである。
「これはですね。まだ試作段階のある方から頼まれて作っている最中の『成長する薬』なんですよ」
「ええ~!!ドクタ―そんなの作れるのぉ!?」
「あのねえ、シンタロ―君。今実際に成長しちゃったのは誰ですか?」
「ん~?僕」
はい。と良い子なお返事をする中身6歳体は青年シンタロ―に流石のドクタ―も肩を落とす。
ちなみにシンタロ―の今の格好だが、大きくなってしまった為ビリビリに破けてしまった服の変わりに、
研究室に常備されていた白衣を纏い、黒の腰紐で纏めている。ポイント:どうしても見えちゃう生足vv
「でもさあ高松戻って来てくれたんだからもう大丈夫だよねv」
期待の目で高松見つめるグンマは、高松から見れば天使そのもの。
吹き出る鼻血を必死に押さえながら一言。
「勿論。そういう薬には解毒剤(←毒なのか?)を作ります」
「「わあああいvv」」
元に戻れると単純に喜ぶシンタロ―とグンマ。次の一言さえなければ。
「ですが先程も申し上げましたがあの薬はまだ試作段階。
人体実験もまだです。
よって解毒剤はありません」
やけにキッパリと言い放つ高松。
数秒後、地下の一室から、幼子の泣き声が聞こえたとか何とか・・・・・・・・・。
その前にドクタ―。
あんた誰かに人体実験しようとしてたんかい。
それからまた数時間後。
一機のヘリがガンマ団へと帰還した。
ヘリのドアが重々しく開き、控えていた兵士達が一斉に地に足をつけた男に敬礼する。
「お帰りなさいませ、マジック総帥」
兵士達へ視線を送る時間さえ惜しいように、
マジックは愛する息子が自分を待っているであろう息子の部屋へとマッハで駆け抜けていった。
バンッ
ノックもそこそこにマジックは顔をマイホ~ムvパパに切り替え一気に喋り始めた。
「ああシンちゃん!パパが居なくてさぞかし心細かっただろうねえ!!
パパもすご~くすご~く寂しかったよ~ぉ?
でもね、このシンちゃん人形を肌身離さず持ってたから少しは絶えられたんだよvvv
まあ、やっぱり本物のシンちゃんが一番だから、
パパ張り切ってやっつけたんだけど相手軍もなかなかしぶとくてねえ、約束した時間よりずっと遅れちゃったよ。
ゴメンねシンちゃん!!!その代わり今夜は一緒に寝――――――――ん?」
そこまで喋り捲ってやっと気付いた。
愛息子の姿がこの部屋には居ないという事に。
「おかしいなあ。シンちゃんどこへ行っちゃったのかな」
ず~~~~~~~~~と戦線でも肌身離さず持ち歩いていた自作のシンちゃん人形を片手に、
マジックは愛する息子を探しに部屋を出た。
同刻、地下の高松専用の研究室では―――――。
「ねえまだ出来ないの??」
体は青年になってしまったとはいえまだ中身は6歳のままであるシンタローは、
さっきまではグンマとこの研究室内で遊んでいたが、所詮ここは研究室。
遊ぶ物などないに等しいので子どもの発想力で様々な遊びを展開していたがネタ切れのようで何とも退屈そうだ。
「そう簡単に出来るモノじゃありませんよ。言ったでしょう?まだ試作段階だって。
勝手に飲んでしまったシンタロ―君?」
視線は何とも妖しげな色を称えた液体入りのフラスコを軽く振りながら、
少々・・・いや、結構な皮肉を込めて言葉を返す高松に、ぶぅ~~~~~と膨れっ面を見せるがそれ以上は何も言ってこない。
自分が悪いという事は自覚あるようだ。
「ねえシンちゃん」
「何?」
「何か声が聞こえない?」
「え・・・?あ~、聞こえる!この声はパ」
「さあさ!!!!!!!シンタロ―君はこの中に入って下さい!!」
「えっ!うわあっ!!何するんだよぉ!?」
「高松!?」
いきなり奥の蓋付きの木箱に押し込められるシンタロ―は訳が分からず必死で暴れる。
実際は6歳の幼子とはいえ、身体は成人。高松よりも体格は良くなっていて力も強く高松も苦戦する。
「マジック総帥が帰ってきたんですよ!もしシンタロ―君のこの姿を見たら・・・」
「泣いちゃう?叔父様」
「・・・・・・ええ色々な意味で泣くと思いますよ」
一瞬、シンタロ―を木箱に押し込めようとした手がピタリと止まる。
「色々って?」
「まあ・・・何と言いますか―――――――って!!早くこの中に入って下さい!!!いいですか!?
絶対声や音を出しちゃいけませんよ!!グンマ様もシンタロ―君の事は黙っていて下さいね!?」
「う、うん」
こんなに必死な形相をした高松を見るのは初めてなグンマは固まって、とにかくコクコクと頷いた。
パタン
木箱の蓋が完全にシンタロ―を隠した。と、同時に。
コンコン
「高松?いるかい?」
「はい、開いてますからどうぞお入りになって下さい。マジック総帥」
微笑を称えて応対する高松の顔には、先ほどまでの焦り色はまったく見受けられない。
見事なまでの変わり身にほえ~と妙な関心をするグンマだった。
「おや、グンちゃんも居たのかい」
にっこりと笑みを称えて優しく甥の頭を撫でる。
「こんばんは叔父様♪」
「ところで高松。私の可愛いvシンちゃんは見かけなかったかい?」
「いいえ。私も今、学会から戻ったばかりですので」
この時グンマは初めて(or改めて)高松はスゴイ!と思った。核心を突いた質問に動じることなく、
間を余りおかずかと言って瞬時に答えるでもなく丁度良い1.5秒での回答。
冷や汗一つもかいていない。
「でもこの部屋からシンちゃんの匂いがするんだよねぇ・・・」
「は!?」「え?」―――僕の匂い?
見事に全員ハモった。(シンタロ―は言葉には出さなかったが)
「叔父様、シンちゃんの匂いって?」
「ん~~~v?私にはシンちゃんの匂いが分かるんだよvv」
「え~!叔父様すごぉ~い!!」
「愛の力ですな」
そういう高松だってグンマの匂いを当てそうだが。
「本題に戻そうか。この部屋にシンちゃんがいると思うんだけど?」
「さて、どこにいらっしゃるのやら・・・」
あくまでシラを切る高松。
だがグンマはビクビクで、冷や汗まで浮かべている。
元々嘘は苦手なタイプである。
それを見逃すようではガンマ団総帥等到底務まりはしない。
それに確かにこの部屋から息子の気配がするのだ。
いかにもわざとらしい声で、
まるでシンタロ―がここにいる事を知らぬかのようにあさっての方向を見ながらぽつりと一言。
「今日はシンちゃんのだ~い好きな特製カレ―なんだけどなあ・・・」
がたんっ
「え!カレ―vvvvvv」
「シンちゃぁああん!!」
「あちゃ~ぁ」
わたわたと大慌てするグンマと額を押さえる高松。
そして・・・。
「シ・・・シンタロ―?なのかい・・・・・・?」
「え?―――――あぁ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
変わり果てた息子の姿に目を見張る、マジックの驚きも無理はない。
いきなり大きめの木箱の中から飛び出した青年は確かに彼の愛息子・シンタロ―なのだろう・・・・・・・・・が、
今は高松の薬で青年姿になってしまっているのだ。普通、信じろ!という方が無理だ。
「シンちゃんが・・・ちょっと見ないうちにこんなに大きくなって!!」
何故か感激の涙を流している。
「という事はアノ薬ができたんだね!高松」
「えぇ・・・・・・まぁ・・・」
どこか瞳が遠い。
この会話から行って、この父親が薬の依頼者という訳だ。
しかし一体何故。
敵軍に送り込んで敵さん達をちみたんにさせて一気に攻め落とす・・・とかの戦略だろうか。
それはともかく、さっきから視線が泳いでいる高松に何やら、総帥の勘というものであろうか。
疑念というものが沸いてくる。
「まさか元に戻す薬がない訳じゃないよね」
「うわ~~~vさっすが叔父様!」
大当たりだよ~♪と何故か万歳しているグンマ。顔面蒼白になる高松。その表情を見て核心を
持ってにこぉぉりvと満面の笑みを浮かべて高松に振り返るマジック。
「「???」」
無邪気な子ども二人にもはっきりと分かるくらい微笑みはそのままに、
その背後にしょっている凍りつくようなオ―ラが高松へと向けられている。
グンマとシンタロ―を自分の背後に押して、片手を前に―――――。
この日、特大の爆発音が地下から響いたのを何千人、何万人という団員が聞いていた。
グンマも誘ってカレ―を食べた後、
グンマは家?に帰してマジックとシンタロ―は二人きり、マジックの自室にて夕食後のくつろぎタイムをとっている。
いつもならソファにマジックが先に座り、シンタロ―が膝の上で絵本を読んでいたりするのだが、なにせこの体格。
(いつものように)シンちゃん観賞v中の父親の膝に寝転がって自分の伸びた髪をいじって遊んでいる。
ふと、シンタロ―が少し顔を持ち上げ、父親を見る。
「パパ、僕もう戻れないの?」
「不安かい?」
息子の長くなった黒髪を指に絡めながら少し心配そうに聞いてみる。
実際心配ではある。
確かにアノ薬を作るよう命じたのは他でもない自分だ。
シンちゃんが大きくなったらどうなるのかな~vvと、その心中にかなり邪な欲望を含んでの
好奇心からだったのだが。
しかし元に戻れないとなると・・・。
珍しくちこっとだけ罪悪感を感じているマジックに、シンタロ―はにこvと微笑みを向けた。
「ううん!僕、嬉しいの!!」
「え・・・?それは一体何で・・・」
「だって!パパに抱っこしてもらわなくても、ちょっと顔上げるだけでパパの顔見れるんだもん♪」
意外な答えに驚いたが、何にせよ天にも昇る程嬉しい告白。
そのままガバッと押し倒そうな勢いで抱きつこうとした・・・のだが、満面の笑顔だったシンタロ―が、
突然少し寂しそうに俯いてしまったのが気になった。
「でも・・・大好きなパパのお膝に乗れなくなっちゃったのは少し残念かなぁ~・・・」
「何言っているんだい!大きくなってもパパのお膝はシンちゃんのものだよvvv」
ハ―ト撒き散らして、今度こそギュッと抱きしめる。
いつもなら、「パパぁ~、あんまりギュ~~ってすると痛いよぉ~~~」と苦しげな反応を見せるが、
この体格だからか、わぁあ~~いvと父親に抱きつく。
頭を撫でつつ、それにしても・・・・・・とマジックは息子を改めて見る。
長く艶やかに伸びた黒髪、引き締まった筋肉、精悍な顔つきの中にも、引き込まれる幼い笑顔。
何より、こうしてある程度は加減しているとは言え、力いっぱい抱きしめても特に苦しそうな反応もしない。
・・・・・・・・・いけないと思いつつも、つい邪の欲望が湧きあがってくる。
身体は成人していても中身は6歳児。
『精神幼児性的虐待』・・・・・・そんな言葉が浮かんできた。
何だかんだで8時を過ぎると、瞼が重くなってきてついうとうと。
「シンちゃん、寝る前にお風呂入ろうね?」
「うん」
遠征でいない時以外は、必ずマジックとシンタロ―は一緒にお風呂に入る。
マジックの部屋には超特大サイズの風呂が設置されていた。
「おっ風呂♪おっ風呂♪♪」と歌を歌いながら警戒心0で(そりゃそ―だ)
一気に全裸になる息子に対して、マジックの今の心境。
―――持ってくれ!私の理性!!(持ってくれ!妖の多分あるかもしんない良心!!)
しかし暫く一緒に湯船に浸かっていて、ほんのり赤くなったシンタロ―がのぼせ、マジックに
ふにゃ~~~と寄りかかって甘えてきた時マジックの何とか保っていた理性が切れた。
―――もう限界だよ!!!!シンちゃぁぁああああぁあん!!!!!!!!!!!!
我慢出来ずに我子に抱きついた。
がばっ
「シンちゃぁぁあああぁあんvvvvvvvvvv」
「わぁああ!!何!?パパぁ~~~~!!!???」
「眼魔砲!」
ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ
マジックに容赦なく青の一族の必殺技を放った、
氷の彫刻のように美麗な男は、実の兄がその実の息子を風呂場で襲っているのを目にし至って冷静にタメなし必殺技を放った。
ちなみにマジックだけを狙ったのでシンタロ―は無傷であった。
「事情を聞いて危険を感じて来てみれば・・・。身体は成人していても中身六歳の実の息子を襲わないで下さい。兄さん」
「サ・・・サ―・・・ビス・・・ゥゥ・・・イキナリ眼魔砲撃つなんて・・・」
がくり
そこでマジックの意識は途絶えた。
イキナリの事が次々と起こって目を白黒させていたが、大好きな叔父の姿を確認すると、
父親ほおっておいて(コラコラ)完全に叔父へと意識を向けた。
「サ―ビス叔父さん・・・どうしたの?」
「高松がお前を元に戻す薬を完成させたんだよ」
「本当!?」
「ああ、これを飲めば元に戻れる」
手にしっかりと持っていた、かなり妖しげなピンク色の薬を手渡す。
「ありがとうv叔父さん!!」
ごくんっ
数日後、集中治療室から出てきたマジックが見た息子は・・・・・・。
「パパ~おはようv」
「ああ、シンちゃん・・・vおは・・・!?――――グハァァッッッ!!!!!!」
ぶぼぉっっ!!
「わああああああぁぁぁ!!パパが鼻血出して倒れちゃったぁ!!!」
「それはそうだろうな」
サ―ビスはどこか遠くを見つめる瞳で言葉を紡いだ。
「今度は“女体化”してしまったのだから」
どうやらあの、元の姿に戻る薬は失敗しちゃったっぽい・・・。
★あとがき★
長ッ!まさかこんなに長くなるとは思わんかったよ・・・。
マジ、裏行きになるところでしたのおっとっと☆な、初のパプワくんでマジシン。
結構さくさくスム―ズに進んでいたんですが、何故かパパンが登場してからめっちゃ苦戦を
強いられました。マジシンなのに、「どこが!?」とかツッコミは入りそうですね~~あうぅ・・・。
ってか元に戻れてないじゃん。
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(挿入イラスト:ひそか様)
肩まで伸びた黒髪に同色の瞳は青の一族とは明らかに異端。
で、ありながらその幼子がすくすくと伸びやかな感性で育っているのは、
幼子――シンタロ―の父、マジックの並々ならぬ息子溺愛ぶりからか、
はたまたシンタロ―の持つ、人を引きつけてやまぬ無意識なる力なのか。
どちらにせよ、そんな事は今のシンタロ―には大した問題ではなかった。問題なのは――。
「ふぅ・・・」
一つ溜息。
「パパはお仕事行っちゃったし、(サ―ビス)叔父さんはいっつもいないし・・・」
周りに散らばったおもちゃの数々。少し間を置いて、
「退屈だあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
部屋いっぱいに叫ぶ。遊び盛りのシンタロ―(6歳)は今、どうしようもなく暇で暇でしょうがなかった。
「シンちゃ~んv遊ぼ~ぉ」
聞きなれた声の主がシンタロ―の居る自室へと足を踏み入れた。
「グンマ!」
シンタロ―と従兄弟のやはり青の一族の少年。それを象徴するかのように栄える黄金の髪と秘石眼。
見た目、シンタロ―より幾分幼く見えるこちらも遊びたい盛りの6歳。
「高松は?」
いつも(鼻血を垂らしながら)グンマの傍に控えているマッドサイエンティストの姿が見えない。
「学会に行っちゃった。でね、最初工具とか使って遊んでたんだけど飽きちゃった。だからシンちゃん!遊ぼv」
「ふ~ん。退屈だったから丁度いいや!遊ぼう!何がいい?」
「ん~とね~・・・かくれんぼは?」
「よ~し!じゃんけんぽん!!」
グンマはパ―でシンタロ―はチョキ。
実はいっつもグンマは最初にパ―ばかり出すのをシンタロ―は知っている。
「あ~、負けちゃった」
「向こう向いてて。じゃあ50数えたら探しに来いよ」
そう言うが早いかシンタロ―はイキオイよく部屋から飛び出した。
「ん~と・・・い~ち、に~い、さ~ん」
大きな窓に顔を寄せて目を隠し、ゆっくりと数を数える。
シンタロ―は全速力で迷路のような廊下を走り、地下にある一室へと身を隠した。
まさかこれがとんでもない事態を引き起こすキッカケになろうとは、
幼い二人には予想すらつかなかったのだ・・・・・・。
「あ~んシンちゃ~あああん」
グンマはもはや半泣き状態になって探し回っていた。
なにせこんなに途方もなく広いガンマ団施設。まだ足を踏み入れた事のない場所だって沢山ある。
「くすん。どこまでかエリア決めとけばよかった・・・」
後悔先に立たず。幼いながらも身に染みて感じるグンマであった。
一方シンタロ―はと言えば、ちらりと部屋の壁に掛けられている時計を見て盛大なため息をイライラと共に吐き出した。
「全然見つけにこないな~グンマ。折角見つけやすいようにグンマもよく知ってる筈のこの部屋に隠れたのに」
シンタロ―の言う『この部屋』とは、カ―テンが閉じられている所為も抜かしても陰険な空気を漂わせている場所。
ビ―カ―やらフラスコ、人体模型などは勿論の事、
何やらシンタロ―には???な、とてもじゃないが表現するのもおぞましいものが、意外にもきちんと並べられている。
例えて言うなら理科の実験室と呪いの儀式室を足して2で割ったような部屋、である。
それでもって6歳のグンマもよく知ってる部屋、なのである。
「喉渇いたな~」
向かう先は小さめな冷蔵庫。
クリップでとめてある夥しい枚数のグンマの写真が(鼻血付き)ひしめき合って飾られているが敢えて無視。
「でもここの飲み物ってかなり妖しい感じがするし・・・」
確かに。
開けてみれば普通の子どもなら(いや、大人でも)見た瞬間に失神、失禁、発狂しそうな程おぞましいものが詰め込まれていた。
「あれ?これは大丈夫みたいだ」
そう言って手に取ったのは子どものおやつによく出すヤ●ルト。
色もおかしくないし、匂いを嗅いでも確かにヤク●トの匂いそのもの。
蓋もちゃんと剥がした後もなくぴったりとはりついていた。
ぺりっ
「いっただきま~す♪」
ごくごくごく
ちなみに味もちゃんとヤクル●であった。シンちゃん。勝手に人様のものを飲んではいけません。
「まだかな~グンマ・・・」
殻になった●クルトをきちんとごみ箱に捨て、椅子に座り暫く足をブラブラさせていたが、
「ふわぁ~・・・眠い」
小さな欠伸をして、いつの間にか小さな寝息が聞こえてきた。
数十分後・・・。やっとグンマもシンタロ―が隠れている地下にやってきた。
「クスン。シンちゃんどこ~?」
ずっと泣いた為か、目が赤くなっている。
「ここかな~。でも高松が一緒じゃないと入っちゃいけないって言ってたし・・・」
グンマが入るべきか入らざるべきかうんうん悩む部屋こそシンタロ―が隠れている部屋。
意を決して扉の取っ手に手をかける。
「シンちゃあああん居るの~ぉ???居るなら居るって言ってよぉ~」
大きな瞳に涙をいっぱい溜めて、怖々室内を覗いてみる。
「シンちゃんってばぁ~。居ないなら居ないって言ってよ~。グスン」
無茶な台詞だが恐怖にかられている幼子なので仕方がない。
恐る恐る足を踏み入れていくと足元に何かが当たった。
「ひっっ!!」
一瞬にしてその場から大泣きして飛び退くグンマだったが、
「あっ!シンちゃん」
それはすっかりと熟睡しているシンタロ―だった。ほっとするのと同時に徐々に今までの恐怖が怒りに変わる。
「も~!シンちゃんてばこの部屋は高松の研究室で、
危ないのがいっぱいあるから勝手に入っちゃいけないって言われてたのに~」
相変わらずすやすやと穏やかな寝息をたてている従兄弟に説教してみるが起きる様子もない。
小さくため息をついて肩に触れた。
「シンちゃん起きて!シンちゃんてばぁ!」
少し強めに揺すってみる。
「ん・・・グンマ・・・?」
反応あり。まだ寝ぼけているようだけれど。
徐々に眠りの世界から覚醒した少年は目を擦り擦り辺りをきょろきょろ。
目の前にはほっぺを膨らませている従兄弟の姿。
「もう!やっと起きた」
「ん~・・・俺、いつの間にか眠っちゃったんだ」
大きな欠伸をしながら伸びをする。
「グンマ・・・今何時?」
「ん~とねえ・・・4時みたい」
壁にかかった時計を指差して答える。
「そっかあ・・・それそろパパが帰ってくるかも」
「高松もね―――――――ってシンちゃん!ここは入っちゃダメって高松が言ってたじゃない!!」
「でもグンマが探しやすいようにこの部屋に隠れたんだけど」
嘘じゃない。
「でも入っちゃダメだよ?」
「うん。分かった」
「戻ろ。シンちゃん」
「うん・・・・・・・・あ・・・れ・・・?」
ドアの取っ手に手をかけたグンマが振り返る。
「どうしたの?」
「何か身体が・・・変・・・うっ、うう」
みるみるうちに顔色が青ざめる。
身体が異常に熱い!
シンタロ―は自分の身体の中で何かが膨れ上がるような感覚に堪え切れず、その場に倒れてしまった。
「シンちゃん!!」
「熱い・・・・・・・・・はぁ・・・うぅっ!」
苦しみだした従兄弟にただオロオロするしかないグンマ。
「ええ!?どうしたのシンちゃん!ねえ大丈夫!?」
誰か呼んで来るべきか、しかしシンタロ―をこのまま一人にしておくのも心配だ。
「わ~ん!!どうしよう~!!!」
苦しんでいる本人異常にパニック状態になるグンマ。と、次の瞬間!!
ボンッ!!!
「わあっ!!!!!!」
いきなりの爆発音。
辺りは白い煙で覆われている。害臭ではないのか煙を吸い込んでしまっても息苦しさなどは感じない。
とりあえず滅多に開けられない窓を全部開いて煙を逃がす。
程なくして煙は視界から消え去り、目の前には“従兄弟のシンちゃんがいる―――――――――――――筈なのだ。
しかしそこにいるのはグンマの従兄弟であるシンタロ―ではない。
何故かびりびりに破けまくった服を申し訳程度に纏い、
流れるように長い漆黒の髪と同色の瞳が今の現状を理解していない事を示してぱちくりさせている。
幼げな部分を持ちながらも目に前に居るのは6歳のシンタロ―ではなく、
均衡の取れた肉体を持つ精悍な青年だった。
しばしの沈黙を恐る恐るグンマが紐解く。
「え・・・お兄ちゃん、誰?」
「何言ってるんだよ。頭でも打ったのか?」
「シンちゃん・・・なの?」
「当り前だろ?どうしたんだグンマ」
ふと小首を捻った。
「グンマ何か小さくなってない?」
呆然としたまま目の前の青年を震える指で指す。
「違うよ。シンちゃんが大きくなっちゃったんだよ・・・」
「・・・と、いう訳なんだけど」
困った視線を立った今帰還したばかりの男に向ける。
「シンタロ―君、これを飲みましたね?」
肩まで無造作に伸びた黒髪に笑い黒子。
白衣を着るのもそこそこにこの部屋の所有者(責任者)高松が数時間前に飲んだヤ●ルトをため息混じりに見せる。
「だって喉渇いたし・・・」
「僕だって喉乾いたよ!シンちゃんいつまで経っても見つからないんだもん!」
いつもなら「ああ、喉が渇いても必死にシンタロ―君を探そうとする健気な貴方!!!(鼻血ブ~~~~!!!)」
だの「それならば私がグンマ様の為に買ってきました、冬季限定ミルクセ―キをご賞味下さいvvvvv」だの
口を出す高松だが、(実際冬季限定ミルクセ―キをお土産にしっかりと大量に買ってきてたりするし)
今はそれどころではない。
世界が恐れる世界最強の殺し屋集団の総帥、マジックの愛しい愛しい愛し過ぎて「ちょっとそれは・・・」という程の
一身に愛を注がれている一人息子、シンタロ―が、かったるい学会から帰ってきたと思ったら
泣きついてきた愛しい愛しい愛し過ぎて鼻血ブ~~~~!!!なグンマが言うには
「シンちゃんが突然目の前で大きくなっちゃったよ~!!!!」と言うのだから。
しかもその原因に心当たりもあった。
それがあのヤク●トである。
「これはですね。まだ試作段階のある方から頼まれて作っている最中の『成長する薬』なんですよ」
「ええ~!!ドクタ―そんなの作れるのぉ!?」
「あのねえ、シンタロ―君。今実際に成長しちゃったのは誰ですか?」
「ん~?僕」
はい。と良い子なお返事をする中身6歳体は青年シンタロ―に流石のドクタ―も肩を落とす。
ちなみにシンタロ―の今の格好だが、大きくなってしまった為ビリビリに破けてしまった服の変わりに、
研究室に常備されていた白衣を纏い、黒の腰紐で纏めている。ポイント:どうしても見えちゃう生足vv
「でもさあ高松戻って来てくれたんだからもう大丈夫だよねv」
期待の目で高松見つめるグンマは、高松から見れば天使そのもの。
吹き出る鼻血を必死に押さえながら一言。
「勿論。そういう薬には解毒剤(←毒なのか?)を作ります」
「「わあああいvv」」
元に戻れると単純に喜ぶシンタロ―とグンマ。次の一言さえなければ。
「ですが先程も申し上げましたがあの薬はまだ試作段階。
人体実験もまだです。
よって解毒剤はありません」
やけにキッパリと言い放つ高松。
数秒後、地下の一室から、幼子の泣き声が聞こえたとか何とか・・・・・・・・・。
その前にドクタ―。
あんた誰かに人体実験しようとしてたんかい。
それからまた数時間後。
一機のヘリがガンマ団へと帰還した。
ヘリのドアが重々しく開き、控えていた兵士達が一斉に地に足をつけた男に敬礼する。
「お帰りなさいませ、マジック総帥」
兵士達へ視線を送る時間さえ惜しいように、
マジックは愛する息子が自分を待っているであろう息子の部屋へとマッハで駆け抜けていった。
バンッ
ノックもそこそこにマジックは顔をマイホ~ムvパパに切り替え一気に喋り始めた。
「ああシンちゃん!パパが居なくてさぞかし心細かっただろうねえ!!
パパもすご~くすご~く寂しかったよ~ぉ?
でもね、このシンちゃん人形を肌身離さず持ってたから少しは絶えられたんだよvvv
まあ、やっぱり本物のシンちゃんが一番だから、
パパ張り切ってやっつけたんだけど相手軍もなかなかしぶとくてねえ、約束した時間よりずっと遅れちゃったよ。
ゴメンねシンちゃん!!!その代わり今夜は一緒に寝――――――――ん?」
そこまで喋り捲ってやっと気付いた。
愛息子の姿がこの部屋には居ないという事に。
「おかしいなあ。シンちゃんどこへ行っちゃったのかな」
ず~~~~~~~~~と戦線でも肌身離さず持ち歩いていた自作のシンちゃん人形を片手に、
マジックは愛する息子を探しに部屋を出た。
同刻、地下の高松専用の研究室では―――――。
「ねえまだ出来ないの??」
体は青年になってしまったとはいえまだ中身は6歳のままであるシンタローは、
さっきまではグンマとこの研究室内で遊んでいたが、所詮ここは研究室。
遊ぶ物などないに等しいので子どもの発想力で様々な遊びを展開していたがネタ切れのようで何とも退屈そうだ。
「そう簡単に出来るモノじゃありませんよ。言ったでしょう?まだ試作段階だって。
勝手に飲んでしまったシンタロ―君?」
視線は何とも妖しげな色を称えた液体入りのフラスコを軽く振りながら、
少々・・・いや、結構な皮肉を込めて言葉を返す高松に、ぶぅ~~~~~と膨れっ面を見せるがそれ以上は何も言ってこない。
自分が悪いという事は自覚あるようだ。
「ねえシンちゃん」
「何?」
「何か声が聞こえない?」
「え・・・?あ~、聞こえる!この声はパ」
「さあさ!!!!!!!シンタロ―君はこの中に入って下さい!!」
「えっ!うわあっ!!何するんだよぉ!?」
「高松!?」
いきなり奥の蓋付きの木箱に押し込められるシンタロ―は訳が分からず必死で暴れる。
実際は6歳の幼子とはいえ、身体は成人。高松よりも体格は良くなっていて力も強く高松も苦戦する。
「マジック総帥が帰ってきたんですよ!もしシンタロ―君のこの姿を見たら・・・」
「泣いちゃう?叔父様」
「・・・・・・ええ色々な意味で泣くと思いますよ」
一瞬、シンタロ―を木箱に押し込めようとした手がピタリと止まる。
「色々って?」
「まあ・・・何と言いますか―――――――って!!早くこの中に入って下さい!!!いいですか!?
絶対声や音を出しちゃいけませんよ!!グンマ様もシンタロ―君の事は黙っていて下さいね!?」
「う、うん」
こんなに必死な形相をした高松を見るのは初めてなグンマは固まって、とにかくコクコクと頷いた。
パタン
木箱の蓋が完全にシンタロ―を隠した。と、同時に。
コンコン
「高松?いるかい?」
「はい、開いてますからどうぞお入りになって下さい。マジック総帥」
微笑を称えて応対する高松の顔には、先ほどまでの焦り色はまったく見受けられない。
見事なまでの変わり身にほえ~と妙な関心をするグンマだった。
「おや、グンちゃんも居たのかい」
にっこりと笑みを称えて優しく甥の頭を撫でる。
「こんばんは叔父様♪」
「ところで高松。私の可愛いvシンちゃんは見かけなかったかい?」
「いいえ。私も今、学会から戻ったばかりですので」
この時グンマは初めて(or改めて)高松はスゴイ!と思った。核心を突いた質問に動じることなく、
間を余りおかずかと言って瞬時に答えるでもなく丁度良い1.5秒での回答。
冷や汗一つもかいていない。
「でもこの部屋からシンちゃんの匂いがするんだよねぇ・・・」
「は!?」「え?」―――僕の匂い?
見事に全員ハモった。(シンタロ―は言葉には出さなかったが)
「叔父様、シンちゃんの匂いって?」
「ん~~~v?私にはシンちゃんの匂いが分かるんだよvv」
「え~!叔父様すごぉ~い!!」
「愛の力ですな」
そういう高松だってグンマの匂いを当てそうだが。
「本題に戻そうか。この部屋にシンちゃんがいると思うんだけど?」
「さて、どこにいらっしゃるのやら・・・」
あくまでシラを切る高松。
だがグンマはビクビクで、冷や汗まで浮かべている。
元々嘘は苦手なタイプである。
それを見逃すようではガンマ団総帥等到底務まりはしない。
それに確かにこの部屋から息子の気配がするのだ。
いかにもわざとらしい声で、
まるでシンタロ―がここにいる事を知らぬかのようにあさっての方向を見ながらぽつりと一言。
「今日はシンちゃんのだ~い好きな特製カレ―なんだけどなあ・・・」
がたんっ
「え!カレ―vvvvvv」
「シンちゃぁああん!!」
「あちゃ~ぁ」
わたわたと大慌てするグンマと額を押さえる高松。
そして・・・。
「シ・・・シンタロ―?なのかい・・・・・・?」
「え?―――――あぁ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
変わり果てた息子の姿に目を見張る、マジックの驚きも無理はない。
いきなり大きめの木箱の中から飛び出した青年は確かに彼の愛息子・シンタロ―なのだろう・・・・・・・・・が、
今は高松の薬で青年姿になってしまっているのだ。普通、信じろ!という方が無理だ。
「シンちゃんが・・・ちょっと見ないうちにこんなに大きくなって!!」
何故か感激の涙を流している。
「という事はアノ薬ができたんだね!高松」
「えぇ・・・・・・まぁ・・・」
どこか瞳が遠い。
この会話から行って、この父親が薬の依頼者という訳だ。
しかし一体何故。
敵軍に送り込んで敵さん達をちみたんにさせて一気に攻め落とす・・・とかの戦略だろうか。
それはともかく、さっきから視線が泳いでいる高松に何やら、総帥の勘というものであろうか。
疑念というものが沸いてくる。
「まさか元に戻す薬がない訳じゃないよね」
「うわ~~~vさっすが叔父様!」
大当たりだよ~♪と何故か万歳しているグンマ。顔面蒼白になる高松。その表情を見て核心を
持ってにこぉぉりvと満面の笑みを浮かべて高松に振り返るマジック。
「「???」」
無邪気な子ども二人にもはっきりと分かるくらい微笑みはそのままに、
その背後にしょっている凍りつくようなオ―ラが高松へと向けられている。
グンマとシンタロ―を自分の背後に押して、片手を前に―――――。
この日、特大の爆発音が地下から響いたのを何千人、何万人という団員が聞いていた。
グンマも誘ってカレ―を食べた後、
グンマは家?に帰してマジックとシンタロ―は二人きり、マジックの自室にて夕食後のくつろぎタイムをとっている。
いつもならソファにマジックが先に座り、シンタロ―が膝の上で絵本を読んでいたりするのだが、なにせこの体格。
(いつものように)シンちゃん観賞v中の父親の膝に寝転がって自分の伸びた髪をいじって遊んでいる。
ふと、シンタロ―が少し顔を持ち上げ、父親を見る。
「パパ、僕もう戻れないの?」
「不安かい?」
息子の長くなった黒髪を指に絡めながら少し心配そうに聞いてみる。
実際心配ではある。
確かにアノ薬を作るよう命じたのは他でもない自分だ。
シンちゃんが大きくなったらどうなるのかな~vvと、その心中にかなり邪な欲望を含んでの
好奇心からだったのだが。
しかし元に戻れないとなると・・・。
珍しくちこっとだけ罪悪感を感じているマジックに、シンタロ―はにこvと微笑みを向けた。
「ううん!僕、嬉しいの!!」
「え・・・?それは一体何で・・・」
「だって!パパに抱っこしてもらわなくても、ちょっと顔上げるだけでパパの顔見れるんだもん♪」
意外な答えに驚いたが、何にせよ天にも昇る程嬉しい告白。
そのままガバッと押し倒そうな勢いで抱きつこうとした・・・のだが、満面の笑顔だったシンタロ―が、
突然少し寂しそうに俯いてしまったのが気になった。
「でも・・・大好きなパパのお膝に乗れなくなっちゃったのは少し残念かなぁ~・・・」
「何言っているんだい!大きくなってもパパのお膝はシンちゃんのものだよvvv」
ハ―ト撒き散らして、今度こそギュッと抱きしめる。
いつもなら、「パパぁ~、あんまりギュ~~ってすると痛いよぉ~~~」と苦しげな反応を見せるが、
この体格だからか、わぁあ~~いvと父親に抱きつく。
頭を撫でつつ、それにしても・・・・・・とマジックは息子を改めて見る。
長く艶やかに伸びた黒髪、引き締まった筋肉、精悍な顔つきの中にも、引き込まれる幼い笑顔。
何より、こうしてある程度は加減しているとは言え、力いっぱい抱きしめても特に苦しそうな反応もしない。
・・・・・・・・・いけないと思いつつも、つい邪の欲望が湧きあがってくる。
身体は成人していても中身は6歳児。
『精神幼児性的虐待』・・・・・・そんな言葉が浮かんできた。
何だかんだで8時を過ぎると、瞼が重くなってきてついうとうと。
「シンちゃん、寝る前にお風呂入ろうね?」
「うん」
遠征でいない時以外は、必ずマジックとシンタロ―は一緒にお風呂に入る。
マジックの部屋には超特大サイズの風呂が設置されていた。
「おっ風呂♪おっ風呂♪♪」と歌を歌いながら警戒心0で(そりゃそ―だ)
一気に全裸になる息子に対して、マジックの今の心境。
―――持ってくれ!私の理性!!(持ってくれ!妖の多分あるかもしんない良心!!)
しかし暫く一緒に湯船に浸かっていて、ほんのり赤くなったシンタロ―がのぼせ、マジックに
ふにゃ~~~と寄りかかって甘えてきた時マジックの何とか保っていた理性が切れた。
―――もう限界だよ!!!!シンちゃぁぁああああぁあん!!!!!!!!!!!!
我慢出来ずに我子に抱きついた。
がばっ
「シンちゃぁぁあああぁあんvvvvvvvvvv」
「わぁああ!!何!?パパぁ~~~~!!!???」
「眼魔砲!」
ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ
マジックに容赦なく青の一族の必殺技を放った、
氷の彫刻のように美麗な男は、実の兄がその実の息子を風呂場で襲っているのを目にし至って冷静にタメなし必殺技を放った。
ちなみにマジックだけを狙ったのでシンタロ―は無傷であった。
「事情を聞いて危険を感じて来てみれば・・・。身体は成人していても中身六歳の実の息子を襲わないで下さい。兄さん」
「サ・・・サ―・・・ビス・・・ゥゥ・・・イキナリ眼魔砲撃つなんて・・・」
がくり
そこでマジックの意識は途絶えた。
イキナリの事が次々と起こって目を白黒させていたが、大好きな叔父の姿を確認すると、
父親ほおっておいて(コラコラ)完全に叔父へと意識を向けた。
「サ―ビス叔父さん・・・どうしたの?」
「高松がお前を元に戻す薬を完成させたんだよ」
「本当!?」
「ああ、これを飲めば元に戻れる」
手にしっかりと持っていた、かなり妖しげなピンク色の薬を手渡す。
「ありがとうv叔父さん!!」
ごくんっ
数日後、集中治療室から出てきたマジックが見た息子は・・・・・・。
「パパ~おはようv」
「ああ、シンちゃん・・・vおは・・・!?――――グハァァッッッ!!!!!!」
ぶぼぉっっ!!
「わああああああぁぁぁ!!パパが鼻血出して倒れちゃったぁ!!!」
「それはそうだろうな」
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「今度は“女体化”してしまったのだから」
どうやらあの、元の姿に戻る薬は失敗しちゃったっぽい・・・。
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世界最強といわれる戦闘集団ガンマ団。
数年前まで世界を手中に収めんとその勢力を急速に拡大してきたが、突然の世代交代を機にその体質が90度ほど転換し、世界中を驚かせた。世界を屈服しえるほどの力を、当時の総帥はあっさり放棄し、若い世代に未来を譲り渡したのだ。
前総帥の退任直後はいろいろな憶測が飛び交い、団内も周囲もかなりの混乱に陥ったが、今現在はかなり安定した状態になっている。
だが。ガンマ団の脅威が薄れたわけではない。力による『世界最強』の文字は相変わらすであるし、最近は産業界においてもその頭角を表し始めている。IC関連はもとより、農産分野、機械工学、エネルギー事業など、特に医療分野においては世界の最先端を行っているといってもいい。
そのガンマ団総本部内の中央エリアにある一室に。電話の呼出音が鳴り響いた。
ぷるる、ぷるる。ぷるる、ぷるる。
マジックの自室にあるアンティーク調の電話機が、団員からの内戦呼び出しを告げる。
「こんな朝早くから一体誰なんだ?」
お手製の純日本式の朝ご飯を椅子掛けのテーブルで食べ終わり、英字新聞を半分まで目を通した時だった。
電話本体に控えめに取り付けられた小さなディスプレイが、総帥秘書室のナンバーを示している。ついでに時刻は午前8時半をを少し過ぎた頃。
めずらしい、とマジックは思った。秘書室からということは現総帥に関わる事か、もしくは前総帥の自分に関わる事。しかし、昔に関わる事柄はほとんどカタをつけたので、今更自分に組織に関わるなんとやらとかはないだろうと思いながら受話器を取る。
「私だ」
『秘書室です。朝早くから申し訳ごさいません』
若い男の声。総帥の秘書の一人からだった。
「いや。かまわないよ。起きてたし」
長年の習慣と言うものは恐ろしい。隠居はしたが、生活サイクルがまるで変わっていないのだ。現役時代、遅くても朝9時には執務に就いていたせいか、この時間にはしっかり目が覚めてしまっている。
「で、どうしだんだい?」
『はい、あの、その・・・』
?
『・・・シンタロー総帥が、まだお見えにならないんです』
「マジック様!」
総帥の自室前に2.3人の若者が立っていた。皆、『は、速いっ!』と、驚いた顔を見せて慌てて会釈する。
電話の内容は『時間を過ぎても姿を見せない総帥と連絡が取れない』だった。
自室への電話連絡はもちろんのこと、携帯、総本部の監視カメラまでチェックしたが、彼の姿を捉えることが出来なかったらしい。この建物のすべての出入り口もチェックしたがダメだった。
結果、総帥は自室にいるということだが、電話に出ないということは倒れているんではないかとマジックに連絡を入れたのだ。
それからわずか30秒後にマジックは目的地に到着していた。自分の部屋が地上11階で総帥の部屋が10階。彼はエレベーターも使わずにダッシュでここまで来たのだ。しかしそれでも息切れしていないところが恐ろしい。
マジックはとりあえず扉の横にあるベルを押す。ついでにマイクに向かって呼びかける。
「シンちゃん?いるのかな?朝だよ?」
返答なし。
「しかたない」
小さくため息をついて、手にしていたカードキーを扉の暗証番号入力スキャン式のセキュリティに差し込む。
「はいるよ。シンちゃん」
この言葉が声紋パターン確認とキーワード。次に10桁に及ぶ暗証番号を入力し、指紋照合、網膜パターンをスキャンさせる。部屋の主なら指紋照合と網膜パターンのチェックだけだが、それ以外の人物はこんな複雑な手順を踏まなくてはならない。しかしそれすらもほんの少しの人物のみ。
カチリ、と施錠が解除される。
マジックが見た目はウッド調の防護扉を少し開けてから、背後の人物たちに告げる。
「私が中を見てくるから。君達は入ってきちゃダメたよ?まあ、中からカギ掛けるケド」
音もなく開いたドアが、マジックを中に招き入れ、パタリと閉じられた。
部屋のリビングは薄暗かった。照明が動いていない。カーテン越しの薄い光で、ここに誰もいないことを確認する。洗面所も人の気配がない。
まずリビングの明かりを灯し、部屋の中を一つずつ確認しながら意外に冷静な自分に苦笑するマジック。本来なら『シンちゃん、シンちゃん!どうしたんだい!?体がどこかおかしいのかい!!』とここに駆け込んでいるはずなのだ。
「不思議と切羽詰った感じがしないんだよねぇ・・・」
切羽詰った危機を感じない。
この部屋にいるであろう人物に関して、この手の勘が外れたことがないのだ。何かあったにしろ、命に関わるほどの事が起こっているとは思えないのだ。
多分、相当に疲れているのだろう。この部屋の主は。電話の音にすら、反応できないほどに。
そう、マジックは思っていた。
加えてマジックにも過去、このような経験があったから落ちついていられるのかもしれない。ピークに達した疲労が一昼夜にも及ぶ深遠の眠りへと自分を誘い、弟たちを心配させてしまった遠い昔の出来事。
時期も似ている。組織を引き継ぎ、統治が安定し始めた、しかし最もその力量が問われる厳しい時。
ただ、普通『極度の疲労』は十分命に関わる事態だが、つい先日の定期検診が『疲労ぐらいではくだばらない丈夫な体』という、いつもどおりの結果だったと聞いている。ちなみにマジックも似たり寄ったりの検診結果だったりする。
「しかも組織改革なんて荒業しちゃったからきついよねぇ・・・」
朝食を取った形跡のないキッチンを後にして。
最後に残るは寝室のみ。最初からココにいるであろうことは想像がついていたが、念の為と一番最後にしておいた。
コンコン。
「シンちゃん?起きてる?パパだよ」
返事がない。しかし。
「中にいるから、パパ入るよ」
扉の向こうに『人』の気配。馴染み深い、彼の。
静かに扉が開かれる。
そしてこれが、運命の悪戯が見せた、夢の、始まり。
寝室入り口のドアから線状に伸びるリビングの光。厚手地のカーテンから透ける薄い太陽光。広い寝室を照らすには頼りない、わずかな明かり。
マジックは静かに扉を閉めて、部屋の中央に設えたキングサイズのベッドに足を進める。扉を閉めた時点でこの部屋は真っ暗こ限りなく近いのだが、この暗がりの中彼は危なげなく歩いている。新月の闇の中でも不自由しない彼にとって、ここは昼間の屋外に近い感覚なのだろう。
足音を立てないようにベッドに近づいて、布団にもぐりこんだまま微動だにしない息子に優しく囁く。
「シンちゃん?起きてる?」
返事は、ない。しかし。
布団の塊が僅かに動く。どうやら起きていたらしいし、苦しそうな様子もない。
「どうしたんだい?めずらしい。こんな時間まで狸寝入りなんて、初めてじゃないかい?」
そう言いながら布団越しにポンポンと息子を軽くなでる。
その途端に大きな反応。まるで怯えているような。
・・・あれ?
唐突に違和感を憶えるマジック。
・ ・・私のシンちゃんは、こんなに小さかったかな?
今更ながら寝室を明るくしなければとサイドテーブルを見る。水差しにコップ、プラスティックのケース、開きっぱなしのファイルとホールペン。探し物のリモコンが一番ベッドに近い位置に置いてあった。ボタンを押して照明を点ける。最初は暗いが徐々に明るさを増す特殊な照明だが、完全に点けは普通の照明と全く変わらない明るさになる。
完全に明るくなってから改めて布団の塊を見る。・・・丸まっているにしても、一回りほど小さい気がする。いや、実際小さいかも。
「シンちゃん?」
相変わらずだんまりのままで。
仕方がないので・・・実力行使。
マジックが布団をめくりあげようと手を掛けた時、そこから声が上がった。
「いやだっ!開けんな!」
涼やかなバリトンと思いきや、耳に入ってきたのはソプラノに近い柔らかなアルトの声。
マジックの動作が一時停止する。どう聞いても女性の声。それも年若い、20歳代前後の。
マジックが思わず手を離してしまったのを幸いと、その声の主は更にきつく布団を身に寄せる。
その拍子に頭髪のみが掛け布団から顔を出してしまった。
艶のある、長い黒髪。不思議と重い印象を受けない、マジックに馴染み深い黒檀の・・・。
たっぷり10秒は石化していたマジックだが、それでもなんとか復活し、再度その黒髪に視線を移す。そして一つの確信を持って再びマジックが布団に手を伸ばし、抵抗を軽くあしらってその人物をさらけ出す。
「やっ・・・!」
そこに現れたのは消え入りそうなほどの小さな抗議の声と。
自分自身を抱きしめている、艶やかな長い黒髪と黒曜石の瞳を持つ、大輪の花の蕾を連想させる女性。
黒絹の髪が真っ白なシーツに映えていて。やや切れ長の、しかし丸みのある瞳とそれを縁取る長い睫。鼻梁はやわらかく曲線を描いて通っていて。弾力感のある唇はまるでプリンセスローズの花弁の様で。
大き目のパジャマから零れるように晒された手足はやや筋肉がついているが、それでも女性的な丸みをおびていて、健康的な瑞々しさに満ちていた。
まるで開花直前の朝露を纏ったクィーンローズ。
数秒間の沈黙。
耐え切れないように女性が両腕で顔を覆う。パジャマの胸元に二つの、大きすぎない丸みが現れて。
それでも、最初に言葉を発したのは山あり谷ありの豊富な人生経験を持つマジックだった。
「・・・わたしのシンちゃんは、自室に女性を連れこむような趣味はなかったハズなんだけど・・・」
「誰が『わたし』のだっ!それに俺はココにオンナ連れこむことはしねえよっ!」
すぐさま反論が返ってきた。丸く寝転がっていた体を瞬時に起こして上目遣いに睨み付ける、シンタローと言われた女性。・・・その容姿に不釣合いな乱暴な言葉遣い付きで。
「あ、やっぱり私のシンちゃんだ♪」
そう言いながらにっこりと微笑んで、なぜか女性になってしまった息子を抱きしめるマジック。自分を睨み付ける真っ直ぐな視線とその反応が、大切な息子のシンタローにしか見えなかった。どこからどう見ても女性にしか見えなくても、声が全く違っても。
驚いたのはシンタローの方だ。
「おい・・・。アンタ、俺が『シンタロー』だと、何で確信できるんだ?」
いつもなら即効ぶっ飛ばしている状況だが、そのいつもと変わらない父親の腕に安堵を憶えるシンタロー。すがりつきたくなるその温もりに身を任せてしまいそうになる。
昨日とは違う容姿。声。自分でもいまだ認めたくない現実を、なぜこの父親はあっさりと受け入れられるのか?
「だって、シンちゃんはシンちゃんだし。見た目が変わったって、性別が変わったって、大事な息子・・・この場合は娘か。どっちにして大事な子供には変わりないんだし。それに」
「それに?」
「普通じゃないのはお互い様だし♪」
がっくりと肩を落とすシンタロー。
「ふ、フツーじゃねえって・・・。今の俺はともかく自分のことをそう言うか?」
たしかにこの父親はいろんな意味で普通ではない。それは事実だ。長年息子をやっている自分がよく知っているとシンタローは思う。
そしてマジックはあっけらかんと『普通ではない父親』ぶりを発揮する。
「え?だってパパ、男のシンちゃんもいいけど、女の子のシンちゃんもいいなあって思っちゃってるし」
言いながら腕の中に収まったままの息子(?)の額に唇を落とす。
直後、鈍い音が寝室に響き渡る。
「なにすんだ、てめえっ!」
至近距離からのアッパーカットがマジックの顎に炸裂した。女性の(?)力とはいえ、これは痛い。
見事に後頭部と床のランデブーを果たしたマジックは、それでもすぐに復活する。
「痛いよシンちゃん。暴力はいけないよ、暴力は」
「だったら俺が、んなコトせんような行動を取れ!」
「え?パパなんかした?」
誰かこいつをどうにかしてくれとシンタローは心底思った。肩が怒りとあきれで震えている。
「・・・いつも言っていることだが、もういいかげん諦めはいっちまいそうだが、大の大人の息子にいきなりキスなんぞすんなっ!」
「でも今のシンちゃん、女の子だから問題・・・」
「却下。」
冷たくシンタローが言い放つ。おまけに目が据わっている。しかしそれでも可愛いなぁと思ってしまうマジックである。もちろん口にはしないが。(殴られるから)
そして唐突にマジックが小さく笑う。
「なんだよ。その笑いは」
「いや。シンちゃんいつもの調子に戻ったなあって」
ハッとするシンタロー。ひた、と赤くなった顎をさすっている父親を見る。
マジックは自分を見上げる愛しい息子(?)の頭を数回撫でて言う。
「まあ、とりあえず、原因究明といこうか」
やっぱりこの人にはかなわないとシンタローは心の中で降参する。もちろん言葉になんかしてやらないが。
「そうだな」
シンタローが不適に微笑んだ。
数年前まで世界を手中に収めんとその勢力を急速に拡大してきたが、突然の世代交代を機にその体質が90度ほど転換し、世界中を驚かせた。世界を屈服しえるほどの力を、当時の総帥はあっさり放棄し、若い世代に未来を譲り渡したのだ。
前総帥の退任直後はいろいろな憶測が飛び交い、団内も周囲もかなりの混乱に陥ったが、今現在はかなり安定した状態になっている。
だが。ガンマ団の脅威が薄れたわけではない。力による『世界最強』の文字は相変わらすであるし、最近は産業界においてもその頭角を表し始めている。IC関連はもとより、農産分野、機械工学、エネルギー事業など、特に医療分野においては世界の最先端を行っているといってもいい。
そのガンマ団総本部内の中央エリアにある一室に。電話の呼出音が鳴り響いた。
ぷるる、ぷるる。ぷるる、ぷるる。
マジックの自室にあるアンティーク調の電話機が、団員からの内戦呼び出しを告げる。
「こんな朝早くから一体誰なんだ?」
お手製の純日本式の朝ご飯を椅子掛けのテーブルで食べ終わり、英字新聞を半分まで目を通した時だった。
電話本体に控えめに取り付けられた小さなディスプレイが、総帥秘書室のナンバーを示している。ついでに時刻は午前8時半をを少し過ぎた頃。
めずらしい、とマジックは思った。秘書室からということは現総帥に関わる事か、もしくは前総帥の自分に関わる事。しかし、昔に関わる事柄はほとんどカタをつけたので、今更自分に組織に関わるなんとやらとかはないだろうと思いながら受話器を取る。
「私だ」
『秘書室です。朝早くから申し訳ごさいません』
若い男の声。総帥の秘書の一人からだった。
「いや。かまわないよ。起きてたし」
長年の習慣と言うものは恐ろしい。隠居はしたが、生活サイクルがまるで変わっていないのだ。現役時代、遅くても朝9時には執務に就いていたせいか、この時間にはしっかり目が覚めてしまっている。
「で、どうしだんだい?」
『はい、あの、その・・・』
?
『・・・シンタロー総帥が、まだお見えにならないんです』
「マジック様!」
総帥の自室前に2.3人の若者が立っていた。皆、『は、速いっ!』と、驚いた顔を見せて慌てて会釈する。
電話の内容は『時間を過ぎても姿を見せない総帥と連絡が取れない』だった。
自室への電話連絡はもちろんのこと、携帯、総本部の監視カメラまでチェックしたが、彼の姿を捉えることが出来なかったらしい。この建物のすべての出入り口もチェックしたがダメだった。
結果、総帥は自室にいるということだが、電話に出ないということは倒れているんではないかとマジックに連絡を入れたのだ。
それからわずか30秒後にマジックは目的地に到着していた。自分の部屋が地上11階で総帥の部屋が10階。彼はエレベーターも使わずにダッシュでここまで来たのだ。しかしそれでも息切れしていないところが恐ろしい。
マジックはとりあえず扉の横にあるベルを押す。ついでにマイクに向かって呼びかける。
「シンちゃん?いるのかな?朝だよ?」
返答なし。
「しかたない」
小さくため息をついて、手にしていたカードキーを扉の暗証番号入力スキャン式のセキュリティに差し込む。
「はいるよ。シンちゃん」
この言葉が声紋パターン確認とキーワード。次に10桁に及ぶ暗証番号を入力し、指紋照合、網膜パターンをスキャンさせる。部屋の主なら指紋照合と網膜パターンのチェックだけだが、それ以外の人物はこんな複雑な手順を踏まなくてはならない。しかしそれすらもほんの少しの人物のみ。
カチリ、と施錠が解除される。
マジックが見た目はウッド調の防護扉を少し開けてから、背後の人物たちに告げる。
「私が中を見てくるから。君達は入ってきちゃダメたよ?まあ、中からカギ掛けるケド」
音もなく開いたドアが、マジックを中に招き入れ、パタリと閉じられた。
部屋のリビングは薄暗かった。照明が動いていない。カーテン越しの薄い光で、ここに誰もいないことを確認する。洗面所も人の気配がない。
まずリビングの明かりを灯し、部屋の中を一つずつ確認しながら意外に冷静な自分に苦笑するマジック。本来なら『シンちゃん、シンちゃん!どうしたんだい!?体がどこかおかしいのかい!!』とここに駆け込んでいるはずなのだ。
「不思議と切羽詰った感じがしないんだよねぇ・・・」
切羽詰った危機を感じない。
この部屋にいるであろう人物に関して、この手の勘が外れたことがないのだ。何かあったにしろ、命に関わるほどの事が起こっているとは思えないのだ。
多分、相当に疲れているのだろう。この部屋の主は。電話の音にすら、反応できないほどに。
そう、マジックは思っていた。
加えてマジックにも過去、このような経験があったから落ちついていられるのかもしれない。ピークに達した疲労が一昼夜にも及ぶ深遠の眠りへと自分を誘い、弟たちを心配させてしまった遠い昔の出来事。
時期も似ている。組織を引き継ぎ、統治が安定し始めた、しかし最もその力量が問われる厳しい時。
ただ、普通『極度の疲労』は十分命に関わる事態だが、つい先日の定期検診が『疲労ぐらいではくだばらない丈夫な体』という、いつもどおりの結果だったと聞いている。ちなみにマジックも似たり寄ったりの検診結果だったりする。
「しかも組織改革なんて荒業しちゃったからきついよねぇ・・・」
朝食を取った形跡のないキッチンを後にして。
最後に残るは寝室のみ。最初からココにいるであろうことは想像がついていたが、念の為と一番最後にしておいた。
コンコン。
「シンちゃん?起きてる?パパだよ」
返事がない。しかし。
「中にいるから、パパ入るよ」
扉の向こうに『人』の気配。馴染み深い、彼の。
静かに扉が開かれる。
そしてこれが、運命の悪戯が見せた、夢の、始まり。
寝室入り口のドアから線状に伸びるリビングの光。厚手地のカーテンから透ける薄い太陽光。広い寝室を照らすには頼りない、わずかな明かり。
マジックは静かに扉を閉めて、部屋の中央に設えたキングサイズのベッドに足を進める。扉を閉めた時点でこの部屋は真っ暗こ限りなく近いのだが、この暗がりの中彼は危なげなく歩いている。新月の闇の中でも不自由しない彼にとって、ここは昼間の屋外に近い感覚なのだろう。
足音を立てないようにベッドに近づいて、布団にもぐりこんだまま微動だにしない息子に優しく囁く。
「シンちゃん?起きてる?」
返事は、ない。しかし。
布団の塊が僅かに動く。どうやら起きていたらしいし、苦しそうな様子もない。
「どうしたんだい?めずらしい。こんな時間まで狸寝入りなんて、初めてじゃないかい?」
そう言いながら布団越しにポンポンと息子を軽くなでる。
その途端に大きな反応。まるで怯えているような。
・・・あれ?
唐突に違和感を憶えるマジック。
・ ・・私のシンちゃんは、こんなに小さかったかな?
今更ながら寝室を明るくしなければとサイドテーブルを見る。水差しにコップ、プラスティックのケース、開きっぱなしのファイルとホールペン。探し物のリモコンが一番ベッドに近い位置に置いてあった。ボタンを押して照明を点ける。最初は暗いが徐々に明るさを増す特殊な照明だが、完全に点けは普通の照明と全く変わらない明るさになる。
完全に明るくなってから改めて布団の塊を見る。・・・丸まっているにしても、一回りほど小さい気がする。いや、実際小さいかも。
「シンちゃん?」
相変わらずだんまりのままで。
仕方がないので・・・実力行使。
マジックが布団をめくりあげようと手を掛けた時、そこから声が上がった。
「いやだっ!開けんな!」
涼やかなバリトンと思いきや、耳に入ってきたのはソプラノに近い柔らかなアルトの声。
マジックの動作が一時停止する。どう聞いても女性の声。それも年若い、20歳代前後の。
マジックが思わず手を離してしまったのを幸いと、その声の主は更にきつく布団を身に寄せる。
その拍子に頭髪のみが掛け布団から顔を出してしまった。
艶のある、長い黒髪。不思議と重い印象を受けない、マジックに馴染み深い黒檀の・・・。
たっぷり10秒は石化していたマジックだが、それでもなんとか復活し、再度その黒髪に視線を移す。そして一つの確信を持って再びマジックが布団に手を伸ばし、抵抗を軽くあしらってその人物をさらけ出す。
「やっ・・・!」
そこに現れたのは消え入りそうなほどの小さな抗議の声と。
自分自身を抱きしめている、艶やかな長い黒髪と黒曜石の瞳を持つ、大輪の花の蕾を連想させる女性。
黒絹の髪が真っ白なシーツに映えていて。やや切れ長の、しかし丸みのある瞳とそれを縁取る長い睫。鼻梁はやわらかく曲線を描いて通っていて。弾力感のある唇はまるでプリンセスローズの花弁の様で。
大き目のパジャマから零れるように晒された手足はやや筋肉がついているが、それでも女性的な丸みをおびていて、健康的な瑞々しさに満ちていた。
まるで開花直前の朝露を纏ったクィーンローズ。
数秒間の沈黙。
耐え切れないように女性が両腕で顔を覆う。パジャマの胸元に二つの、大きすぎない丸みが現れて。
それでも、最初に言葉を発したのは山あり谷ありの豊富な人生経験を持つマジックだった。
「・・・わたしのシンちゃんは、自室に女性を連れこむような趣味はなかったハズなんだけど・・・」
「誰が『わたし』のだっ!それに俺はココにオンナ連れこむことはしねえよっ!」
すぐさま反論が返ってきた。丸く寝転がっていた体を瞬時に起こして上目遣いに睨み付ける、シンタローと言われた女性。・・・その容姿に不釣合いな乱暴な言葉遣い付きで。
「あ、やっぱり私のシンちゃんだ♪」
そう言いながらにっこりと微笑んで、なぜか女性になってしまった息子を抱きしめるマジック。自分を睨み付ける真っ直ぐな視線とその反応が、大切な息子のシンタローにしか見えなかった。どこからどう見ても女性にしか見えなくても、声が全く違っても。
驚いたのはシンタローの方だ。
「おい・・・。アンタ、俺が『シンタロー』だと、何で確信できるんだ?」
いつもなら即効ぶっ飛ばしている状況だが、そのいつもと変わらない父親の腕に安堵を憶えるシンタロー。すがりつきたくなるその温もりに身を任せてしまいそうになる。
昨日とは違う容姿。声。自分でもいまだ認めたくない現実を、なぜこの父親はあっさりと受け入れられるのか?
「だって、シンちゃんはシンちゃんだし。見た目が変わったって、性別が変わったって、大事な息子・・・この場合は娘か。どっちにして大事な子供には変わりないんだし。それに」
「それに?」
「普通じゃないのはお互い様だし♪」
がっくりと肩を落とすシンタロー。
「ふ、フツーじゃねえって・・・。今の俺はともかく自分のことをそう言うか?」
たしかにこの父親はいろんな意味で普通ではない。それは事実だ。長年息子をやっている自分がよく知っているとシンタローは思う。
そしてマジックはあっけらかんと『普通ではない父親』ぶりを発揮する。
「え?だってパパ、男のシンちゃんもいいけど、女の子のシンちゃんもいいなあって思っちゃってるし」
言いながら腕の中に収まったままの息子(?)の額に唇を落とす。
直後、鈍い音が寝室に響き渡る。
「なにすんだ、てめえっ!」
至近距離からのアッパーカットがマジックの顎に炸裂した。女性の(?)力とはいえ、これは痛い。
見事に後頭部と床のランデブーを果たしたマジックは、それでもすぐに復活する。
「痛いよシンちゃん。暴力はいけないよ、暴力は」
「だったら俺が、んなコトせんような行動を取れ!」
「え?パパなんかした?」
誰かこいつをどうにかしてくれとシンタローは心底思った。肩が怒りとあきれで震えている。
「・・・いつも言っていることだが、もういいかげん諦めはいっちまいそうだが、大の大人の息子にいきなりキスなんぞすんなっ!」
「でも今のシンちゃん、女の子だから問題・・・」
「却下。」
冷たくシンタローが言い放つ。おまけに目が据わっている。しかしそれでも可愛いなぁと思ってしまうマジックである。もちろん口にはしないが。(殴られるから)
そして唐突にマジックが小さく笑う。
「なんだよ。その笑いは」
「いや。シンちゃんいつもの調子に戻ったなあって」
ハッとするシンタロー。ひた、と赤くなった顎をさすっている父親を見る。
マジックは自分を見上げる愛しい息子(?)の頭を数回撫でて言う。
「まあ、とりあえず、原因究明といこうか」
やっぱりこの人にはかなわないとシンタローは心の中で降参する。もちろん言葉になんかしてやらないが。
「そうだな」
シンタローが不適に微笑んだ。
ぐずる双子を宥めて何とか寝かしつけてから、すぐ下の弟の様子を見に行くと、こちらはソファにもたれ掛って目を閉じていた。
開いたままの本が絨毯の上に落ちて、鈍い音を立てる。少年が慌てて本を拾い上げてから弟を見ると、安らかな表情のまま規則正しく胸が上下していた。
年齢の割りに大人びた表情の少年は、起こさずにすんだことにいくらかほっとしながら、眠る弟の上にブランケットをかけると、そろそろと部屋を出た。
父親の帰宅を待ちわびて、昨夜は兄弟そろって夜更けまで起きていた。そのせいか、普段昼寝をしない弟までが今日は眠ってしまっている。
少年もいくらか眠そうだが、幼いながらも兄弟の一番上と言う責任のある立場からか、他の兄弟と一緒に昼寝をすることなく、父の帰りを待っている。
少年は自分達の環境が些か特殊だと言うことを理解していた。そのため父が仕事で家を留守にするたびに、かすかな不安を抱いていた。
兄としてその不安を弟達に悟られるわけにもいかず、父の部下から状況を聞き出しても、実際に無事な姿を見るまではそわそわと落ち着かない。
少年が弟達のいる部屋を出て、当てもなく歩き回っていると秘書官と出くわした。ちょうど良かったとばかりに勢い込んで聞いてみる。
上司の長子とは言え、まだ幼い子供にどこまで話して良いのか図りかねた秘書官は、経過を端折って「つい先ほど帰還されました」とだけ少年に伝えた。少年は詳しいことを教えてくれなかったことに対して少々不満そうな顔したが、つい先ほど、と言う単語にぱっと表情を明るくして走り出した。
紅い軍服を着た父親が、自分のほうに駆けてくる子供に気が付いて、遠目でも判るくらい相好を崩した。腰をかがめて、走り寄ってきた少年を抱き止める。
ただいま、と言う父の言葉に、おかえりなさい、と返して、少々照れくさそうに少年は父親の軍服に顔を埋める。生地の表面がかすかに湿って、雨の匂いがした。
雨?と顔を埋めたまま尋ねると、降って来たよ、と頭上から穏やかな声が返ってきて、ようやく少年は父親から身体を離し、当たり前のように差し出された手を握りしめた。
少年は父親と手をつなぎ、弟達の元へと歩き出した。
今にも降り出しそうな曇天が広がっているのにも気付かずに、男は黙々と書類に目を通していた。
緊張感漂う空気は、総帥室と言う場所柄だけでなく、男自身から発散されているようにも思えた。時折秘書を呼びつけ、何事かを伝えては下がらせる。淡々と書類仕事を片付けていく時でも隙を見せない様子は、さすがと言うべきだろう。
唐突に、その静謐な空気が破られた。秘書に扉を支えられながら、子供が男に向かって駆け寄って来る。
男は一瞬にして父親の表情になった。破顔して息子を抱きしめる。
頭をなでると、子供特有の細い髪はかすかに湿気を帯びていた。黒髪に指を絡めつつ、どうしたの、と訊いてみると、グンマとお外で遊んでたんだけど雨が降ってきたから帰ってきたの、と腕の中から返事が聞こえた。
雨の日は何となく心細いのかもしれない。
男は自分の幼少の頃を思い出しながら、抱きしめる腕に力を込めた。
息子を抱き締めたまま、秘書官の方へ顔を向けると、長年仕えている部下としては心得たもので、急いでこれからのスケジュールを確認し、重要な会議などが入っていないことを男に告げた。
男は目顔でひとつ頷くと、腕の中の子供に、パパとお部屋で遊ぼうか、と優しく告げた。子供はぱっと顔を上げ、嬉しそうに笑う。
男は立ち上がり子供の手をとった。すっぽりと収まる小さな手のひらも、伝わってくるあたたかい体温も、この子の全てが愛おしくてならない。
男は子供と手をつなぎ、総帥室を後にした。
「だからね、私は雨の日が嫌いじゃないんだ」
そう締め括って微笑う父親を、彼は意外そうに眺めていた。
眠り続ける弟の部屋の大きな窓からは、雨曇りの空が見て取れて、あまり好ましくない空模様だった。
嫌な天気だな、と彼が漏らすと、弟のベッドを挟んで向かい合った父親が、そうでもないよ、と言ったのがきっかけだった。
思いもよらない昔語りに、目を丸くしながら相槌を打つ。彼にとっては祖父にあたる人物のことは、父親から折に触れては聞かされていたが、何度聞いても飽きることはない。会った事もない祖父だったが、どことなく親近感を覚えていた。
祖父の話は良いのだが、彼自身の子供時代の話をされると、どうも気恥ずかしい。嬉々としてして話す父親を前にしては、いっそう居心地が悪い。
「覚えてねぇな」
「何でもない日だったから。覚えてないのも無理はないよ」
彼がぼそっと言うと、父親はやはりにこやかに笑ってベッドの上の華奢な手を握りなおした。だいぶ成長したとは言え、弟の手は父親の手に隠れてしまうほど小さい。
「シンちゃん、こっちの手が空いてるよ」
彼の視線に気付いた父親が、ひらひらともう片方の手を振っている。
それを無視して窓の方に目をやると、霧のような細い雨が静かにガラスを叩いていた。
部屋では、親子が手をつないでいる。
一つの真実
世界で一番カッコイイ人形。そう、僕の名前はシンタロー。
っていっても、本物のシンタローはちゃんといるよ?
僕を作ったのはシンタローのパパで、裁縫が得意な変態なんだって。(シンタローが前に言ってた)
僕は人形だから喋れないし、シンタローとパパの’確執’なんてよく分かんないけど。
僕、一つだけ知ってることがあるんだよ。
それはね。パパを愛せるのはシンタローだけなんだってこと。
一つの真実
今日はシンタローの誕生日。一年で一番家が壊れる日。
毎年パパがシンタローにまとわりついて眼魔砲が連発されるから。
でも。今年はそんなこと一つも起きなくて。
というよりパパが朝から家にいなくて。
静かに一日が終わりを迎えようとしている。
「ねーねーシンちゃん。おとーさま帰ってこなかったね。」
「・・・そうだな。」
「人形も置いてどこいったんだろ。今日はシンちゃんの誕生日だったのに!」
「・・・別にいいって。静かに過ごせたんだからよ。それよりグンマ、あんま人形さわんじゃねーよ。警報鳴っちまうだろ!」
「・・・はーい。・・・ねーシンちゃん。この人形さー、いつも思うんだけどフツーじゃないよねー。」
グンちゃんは僕を腕に抱きながらしみじみと言った。
そんなに僕って変?っていうか僕が変なんじゃなくて、作ったパパが変なんじゃないの??
「おい、そりゃ人形が変なんじゃなくて親父が変なんだよ!細工なんかしやがって・・・!!」
「えー?細工したのはシンちゃんでしょ?おとーさまが人形にいたずらして涎たらしてるのが寒気がする!って言って、変なとこ触ったらサイレンが鳴るようにしてその上どこにいるか分かるようにGPSまでつけさせたじゃん。」
「うっ・・・。」
そう、グンちゃんが言うとおり僕には色々細工がしてある。
最初はサイレンだけだったけど、パパが暴漢にあったとか言ってシンタローを何回も僕を使って呼び出すから、終いにはGPSと高性能小型内蔵マイクまでついてる。
だから僕をいつも肌身離さず持っているパパの居場所はすぐ分かるし、僕を通じて会話もできるんだ。
・・・ああ、自分で説明しててなんか悲しくなってきたよ・・・。
「あ、ティラミスからメールだ。えーと、『マジック様は先々代のお墓参りに行っていらっしゃるようです。』だって、シンちゃん。」
「グンマっ、また余計なことしやがって!!あんな奴放っておけばいいんだよ!!」
シンタローが怒鳴ると、何かを堪えているかの様にグンちゃんはそっと呟いた。
「シンちゃん、お父様と向き合わずに逃げてばっかりでいいの?それでいいの?」
シンタローの肩がびくっと揺れる。
「シンちゃんが意地っ張りだなんてよく知ってるし、心で思ってるコトはあんまり口にしないのも分かってるよ?
でも、お父様には」
「もういい」
バンッッ!!
グンちゃんが言い終わらないうちにシンタローは、僕をつかんで外に飛び出した。
シンタローが思ってるコトを口にしないように、パパも本心をあまり口にしない。
シンタローはパパが思ってる以上にパパのことで悩んでいるみたいだし、パパも誰にも見せない悩みを抱えている。
でもね、シンタロー。パパはいつか僕に言ったよ。
『シンタロー、おまえは私が嫌いかい?どんなに強請っても、おまえは私の望む言葉を言ってくれないね。
シンタロー、おまえは呆れているかい?おまえがなにを思って私を見ているのか知っているよ。
でも、こんな弱い私を見せられないでいる。全てを知りたいと思うおまえに、何もかも話せるとどんなにいいか!
しかし私はいつまでたっても臆病者なんだ。ああ、こんなにもおまえを愛しているのに、おまえの愛を信じられないでいる。
私の発した言葉が風に乗って、波の泡に’今’が溶けて、かき消され遠くなっていくけれど。
それでも伝えたい思いがあるから。いつまでも紡いでいくよ。
愛されたい、愛されたい、おまえに・・・。』
赤と紫の混じった涙が出そうなくらい綺麗な夕焼けを背にして、パパはほんの少しだけ、心の欠片をはき出した。
その日は晴れていたのに、なぜか降るはずのない雨がパパの瞼から溢れるのを僕は見た。
だからシンタロー、パパの傍にいてあげて。
二人には幸せになってほしいんだよ・・・。
僕がシンタローの腕に抱かれながらそんなことを考えている間に、墓地についたみたいだ。
シンタローはゆっくりと墓石の前に屈み込んでいるパパに近づいていく。
「・・・おい、アンタなにやってんだよ。」
「ああ、おまえか・・・。」
そういってパパは立ち上がった。
「・・この人形、忘れ物だろ。」
「いや、忘れたわけじゃないさ。置いていったんだから。わざわざ届けにきてくれたのかい?」
「・・・・・。」
シンタローは無言で僕をパパに差し出し、パパはぼくを腕に抱く。
「何してたんだよ、お、俺今日誕生日で・・・!」
「おまえは知らなくていい事だ。」
「・・・・っ!」
パパの拒絶の言葉に、空気が重くなった。
「・・・なんで!なんでアンタはいつもそうなんだよっ!
俺のことは知ろうとするくせに、なんで俺がアンタの事知りたがるとそーやって壁作るんだよっ!!
俺はっ、俺はっ、いつもアンタの事っ・・・・!!!」
「・・・すまない、シンタロー。」
僕を地面に置いて、パパはシンタローをかき抱いた。
二人の姿が暗闇に溶ける。
「言葉が悪かったよ、すまない。私は、私はいつもおまえに強請ってばかりで、おまえの誕生日ぐらい大人しくしていようとふと思ったものだから。
それが逆に不安にさせてしまったね・・・。
ああ、私はおまえの事となると失敗ばかりだ。どうしてだろう。」
「・・・父さん。」
「シンタロー・・・。子供は枯れない花というけれど、おまえはまるでヒマワリだ。まっすぐに太陽に向かって一生懸命に背を伸ばして。
私はそんなおまえの太陽にいつかなれるのだろうか。」
シンタローは返事の代わりにパパに回した腕にぎゅっと力を入れた。
「さあ、帰ろうか。シンタロー。遅い時間にすまなかったね。パパ、おまえにプレゼントをまだ渡していないから。日が変わる前に帰らないと。」
「・・・ん。」
パパは僕を右腕に抱いて、左手でシンタローの手を握る。
シンタローも心なしか力をいれてパパの手を握った。
二人の距離が縮まった。ほんのちょっとだけど縮まった。これから二人はゆっくりと歩み寄っていくんだろう。
こんな素晴らしい日に僕はここに居ることが出来て、とても嬉しい。
僕はいつまでも見守っているから。幸せを願っているから・・・。今度は僕とシンタローとパパの三人で、ゆっくりお昼寝でもしよう?
僕は世界で一番カッコイイ人形。そう、僕の名前はシンタロー。
っていっても、本物のシンタローはちゃんといるよ?
僕を作ったのはシンタローのパパで、裁縫が得意な変態なんだって。(シンタローが前に言ってた)
僕は人形だから喋れないし、シンタローとパパの’確執’なんてよく分かんないけど。
僕、一つだけ知ってることがあるんだよ。
それはね。パパとシンタローがいつまでも愛し合って生きてくってこと。
世界で一番カッコイイ人形。そう、僕の名前はシンタロー。
っていっても、本物のシンタローはちゃんといるよ?
僕を作ったのはシンタローのパパで、裁縫が得意な変態なんだって。(シンタローが前に言ってた)
僕は人形だから喋れないし、シンタローとパパの’確執’なんてよく分かんないけど。
僕、一つだけ知ってることがあるんだよ。
それはね。パパを愛せるのはシンタローだけなんだってこと。
一つの真実
今日はシンタローの誕生日。一年で一番家が壊れる日。
毎年パパがシンタローにまとわりついて眼魔砲が連発されるから。
でも。今年はそんなこと一つも起きなくて。
というよりパパが朝から家にいなくて。
静かに一日が終わりを迎えようとしている。
「ねーねーシンちゃん。おとーさま帰ってこなかったね。」
「・・・そうだな。」
「人形も置いてどこいったんだろ。今日はシンちゃんの誕生日だったのに!」
「・・・別にいいって。静かに過ごせたんだからよ。それよりグンマ、あんま人形さわんじゃねーよ。警報鳴っちまうだろ!」
「・・・はーい。・・・ねーシンちゃん。この人形さー、いつも思うんだけどフツーじゃないよねー。」
グンちゃんは僕を腕に抱きながらしみじみと言った。
そんなに僕って変?っていうか僕が変なんじゃなくて、作ったパパが変なんじゃないの??
「おい、そりゃ人形が変なんじゃなくて親父が変なんだよ!細工なんかしやがって・・・!!」
「えー?細工したのはシンちゃんでしょ?おとーさまが人形にいたずらして涎たらしてるのが寒気がする!って言って、変なとこ触ったらサイレンが鳴るようにしてその上どこにいるか分かるようにGPSまでつけさせたじゃん。」
「うっ・・・。」
そう、グンちゃんが言うとおり僕には色々細工がしてある。
最初はサイレンだけだったけど、パパが暴漢にあったとか言ってシンタローを何回も僕を使って呼び出すから、終いにはGPSと高性能小型内蔵マイクまでついてる。
だから僕をいつも肌身離さず持っているパパの居場所はすぐ分かるし、僕を通じて会話もできるんだ。
・・・ああ、自分で説明しててなんか悲しくなってきたよ・・・。
「あ、ティラミスからメールだ。えーと、『マジック様は先々代のお墓参りに行っていらっしゃるようです。』だって、シンちゃん。」
「グンマっ、また余計なことしやがって!!あんな奴放っておけばいいんだよ!!」
シンタローが怒鳴ると、何かを堪えているかの様にグンちゃんはそっと呟いた。
「シンちゃん、お父様と向き合わずに逃げてばっかりでいいの?それでいいの?」
シンタローの肩がびくっと揺れる。
「シンちゃんが意地っ張りだなんてよく知ってるし、心で思ってるコトはあんまり口にしないのも分かってるよ?
でも、お父様には」
「もういい」
バンッッ!!
グンちゃんが言い終わらないうちにシンタローは、僕をつかんで外に飛び出した。
シンタローが思ってるコトを口にしないように、パパも本心をあまり口にしない。
シンタローはパパが思ってる以上にパパのことで悩んでいるみたいだし、パパも誰にも見せない悩みを抱えている。
でもね、シンタロー。パパはいつか僕に言ったよ。
『シンタロー、おまえは私が嫌いかい?どんなに強請っても、おまえは私の望む言葉を言ってくれないね。
シンタロー、おまえは呆れているかい?おまえがなにを思って私を見ているのか知っているよ。
でも、こんな弱い私を見せられないでいる。全てを知りたいと思うおまえに、何もかも話せるとどんなにいいか!
しかし私はいつまでたっても臆病者なんだ。ああ、こんなにもおまえを愛しているのに、おまえの愛を信じられないでいる。
私の発した言葉が風に乗って、波の泡に’今’が溶けて、かき消され遠くなっていくけれど。
それでも伝えたい思いがあるから。いつまでも紡いでいくよ。
愛されたい、愛されたい、おまえに・・・。』
赤と紫の混じった涙が出そうなくらい綺麗な夕焼けを背にして、パパはほんの少しだけ、心の欠片をはき出した。
その日は晴れていたのに、なぜか降るはずのない雨がパパの瞼から溢れるのを僕は見た。
だからシンタロー、パパの傍にいてあげて。
二人には幸せになってほしいんだよ・・・。
僕がシンタローの腕に抱かれながらそんなことを考えている間に、墓地についたみたいだ。
シンタローはゆっくりと墓石の前に屈み込んでいるパパに近づいていく。
「・・・おい、アンタなにやってんだよ。」
「ああ、おまえか・・・。」
そういってパパは立ち上がった。
「・・この人形、忘れ物だろ。」
「いや、忘れたわけじゃないさ。置いていったんだから。わざわざ届けにきてくれたのかい?」
「・・・・・。」
シンタローは無言で僕をパパに差し出し、パパはぼくを腕に抱く。
「何してたんだよ、お、俺今日誕生日で・・・!」
「おまえは知らなくていい事だ。」
「・・・・っ!」
パパの拒絶の言葉に、空気が重くなった。
「・・・なんで!なんでアンタはいつもそうなんだよっ!
俺のことは知ろうとするくせに、なんで俺がアンタの事知りたがるとそーやって壁作るんだよっ!!
俺はっ、俺はっ、いつもアンタの事っ・・・・!!!」
「・・・すまない、シンタロー。」
僕を地面に置いて、パパはシンタローをかき抱いた。
二人の姿が暗闇に溶ける。
「言葉が悪かったよ、すまない。私は、私はいつもおまえに強請ってばかりで、おまえの誕生日ぐらい大人しくしていようとふと思ったものだから。
それが逆に不安にさせてしまったね・・・。
ああ、私はおまえの事となると失敗ばかりだ。どうしてだろう。」
「・・・父さん。」
「シンタロー・・・。子供は枯れない花というけれど、おまえはまるでヒマワリだ。まっすぐに太陽に向かって一生懸命に背を伸ばして。
私はそんなおまえの太陽にいつかなれるのだろうか。」
シンタローは返事の代わりにパパに回した腕にぎゅっと力を入れた。
「さあ、帰ろうか。シンタロー。遅い時間にすまなかったね。パパ、おまえにプレゼントをまだ渡していないから。日が変わる前に帰らないと。」
「・・・ん。」
パパは僕を右腕に抱いて、左手でシンタローの手を握る。
シンタローも心なしか力をいれてパパの手を握った。
二人の距離が縮まった。ほんのちょっとだけど縮まった。これから二人はゆっくりと歩み寄っていくんだろう。
こんな素晴らしい日に僕はここに居ることが出来て、とても嬉しい。
僕はいつまでも見守っているから。幸せを願っているから・・・。今度は僕とシンタローとパパの三人で、ゆっくりお昼寝でもしよう?
僕は世界で一番カッコイイ人形。そう、僕の名前はシンタロー。
っていっても、本物のシンタローはちゃんといるよ?
僕を作ったのはシンタローのパパで、裁縫が得意な変態なんだって。(シンタローが前に言ってた)
僕は人形だから喋れないし、シンタローとパパの’確執’なんてよく分かんないけど。
僕、一つだけ知ってることがあるんだよ。
それはね。パパとシンタローがいつまでも愛し合って生きてくってこと。