薬でドキドキ!!
(挿入イラスト:ひそか様)
肩まで伸びた黒髪に同色の瞳は青の一族とは明らかに異端。
で、ありながらその幼子がすくすくと伸びやかな感性で育っているのは、
幼子――シンタロ―の父、マジックの並々ならぬ息子溺愛ぶりからか、
はたまたシンタロ―の持つ、人を引きつけてやまぬ無意識なる力なのか。
どちらにせよ、そんな事は今のシンタロ―には大した問題ではなかった。問題なのは――。
「ふぅ・・・」
一つ溜息。
「パパはお仕事行っちゃったし、(サ―ビス)叔父さんはいっつもいないし・・・」
周りに散らばったおもちゃの数々。少し間を置いて、
「退屈だあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
部屋いっぱいに叫ぶ。遊び盛りのシンタロ―(6歳)は今、どうしようもなく暇で暇でしょうがなかった。
「シンちゃ~んv遊ぼ~ぉ」
聞きなれた声の主がシンタロ―の居る自室へと足を踏み入れた。
「グンマ!」
シンタロ―と従兄弟のやはり青の一族の少年。それを象徴するかのように栄える黄金の髪と秘石眼。
見た目、シンタロ―より幾分幼く見えるこちらも遊びたい盛りの6歳。
「高松は?」
いつも(鼻血を垂らしながら)グンマの傍に控えているマッドサイエンティストの姿が見えない。
「学会に行っちゃった。でね、最初工具とか使って遊んでたんだけど飽きちゃった。だからシンちゃん!遊ぼv」
「ふ~ん。退屈だったから丁度いいや!遊ぼう!何がいい?」
「ん~とね~・・・かくれんぼは?」
「よ~し!じゃんけんぽん!!」
グンマはパ―でシンタロ―はチョキ。
実はいっつもグンマは最初にパ―ばかり出すのをシンタロ―は知っている。
「あ~、負けちゃった」
「向こう向いてて。じゃあ50数えたら探しに来いよ」
そう言うが早いかシンタロ―はイキオイよく部屋から飛び出した。
「ん~と・・・い~ち、に~い、さ~ん」
大きな窓に顔を寄せて目を隠し、ゆっくりと数を数える。
シンタロ―は全速力で迷路のような廊下を走り、地下にある一室へと身を隠した。
まさかこれがとんでもない事態を引き起こすキッカケになろうとは、
幼い二人には予想すらつかなかったのだ・・・・・・。
「あ~んシンちゃ~あああん」
グンマはもはや半泣き状態になって探し回っていた。
なにせこんなに途方もなく広いガンマ団施設。まだ足を踏み入れた事のない場所だって沢山ある。
「くすん。どこまでかエリア決めとけばよかった・・・」
後悔先に立たず。幼いながらも身に染みて感じるグンマであった。
一方シンタロ―はと言えば、ちらりと部屋の壁に掛けられている時計を見て盛大なため息をイライラと共に吐き出した。
「全然見つけにこないな~グンマ。折角見つけやすいようにグンマもよく知ってる筈のこの部屋に隠れたのに」
シンタロ―の言う『この部屋』とは、カ―テンが閉じられている所為も抜かしても陰険な空気を漂わせている場所。
ビ―カ―やらフラスコ、人体模型などは勿論の事、
何やらシンタロ―には???な、とてもじゃないが表現するのもおぞましいものが、意外にもきちんと並べられている。
例えて言うなら理科の実験室と呪いの儀式室を足して2で割ったような部屋、である。
それでもって6歳のグンマもよく知ってる部屋、なのである。
「喉渇いたな~」
向かう先は小さめな冷蔵庫。
クリップでとめてある夥しい枚数のグンマの写真が(鼻血付き)ひしめき合って飾られているが敢えて無視。
「でもここの飲み物ってかなり妖しい感じがするし・・・」
確かに。
開けてみれば普通の子どもなら(いや、大人でも)見た瞬間に失神、失禁、発狂しそうな程おぞましいものが詰め込まれていた。
「あれ?これは大丈夫みたいだ」
そう言って手に取ったのは子どものおやつによく出すヤ●ルト。
色もおかしくないし、匂いを嗅いでも確かにヤク●トの匂いそのもの。
蓋もちゃんと剥がした後もなくぴったりとはりついていた。
ぺりっ
「いっただきま~す♪」
ごくごくごく
ちなみに味もちゃんとヤクル●であった。シンちゃん。勝手に人様のものを飲んではいけません。
「まだかな~グンマ・・・」
殻になった●クルトをきちんとごみ箱に捨て、椅子に座り暫く足をブラブラさせていたが、
「ふわぁ~・・・眠い」
小さな欠伸をして、いつの間にか小さな寝息が聞こえてきた。
数十分後・・・。やっとグンマもシンタロ―が隠れている地下にやってきた。
「クスン。シンちゃんどこ~?」
ずっと泣いた為か、目が赤くなっている。
「ここかな~。でも高松が一緒じゃないと入っちゃいけないって言ってたし・・・」
グンマが入るべきか入らざるべきかうんうん悩む部屋こそシンタロ―が隠れている部屋。
意を決して扉の取っ手に手をかける。
「シンちゃあああん居るの~ぉ???居るなら居るって言ってよぉ~」
大きな瞳に涙をいっぱい溜めて、怖々室内を覗いてみる。
「シンちゃんってばぁ~。居ないなら居ないって言ってよ~。グスン」
無茶な台詞だが恐怖にかられている幼子なので仕方がない。
恐る恐る足を踏み入れていくと足元に何かが当たった。
「ひっっ!!」
一瞬にしてその場から大泣きして飛び退くグンマだったが、
「あっ!シンちゃん」
それはすっかりと熟睡しているシンタロ―だった。ほっとするのと同時に徐々に今までの恐怖が怒りに変わる。
「も~!シンちゃんてばこの部屋は高松の研究室で、
危ないのがいっぱいあるから勝手に入っちゃいけないって言われてたのに~」
相変わらずすやすやと穏やかな寝息をたてている従兄弟に説教してみるが起きる様子もない。
小さくため息をついて肩に触れた。
「シンちゃん起きて!シンちゃんてばぁ!」
少し強めに揺すってみる。
「ん・・・グンマ・・・?」
反応あり。まだ寝ぼけているようだけれど。
徐々に眠りの世界から覚醒した少年は目を擦り擦り辺りをきょろきょろ。
目の前にはほっぺを膨らませている従兄弟の姿。
「もう!やっと起きた」
「ん~・・・俺、いつの間にか眠っちゃったんだ」
大きな欠伸をしながら伸びをする。
「グンマ・・・今何時?」
「ん~とねえ・・・4時みたい」
壁にかかった時計を指差して答える。
「そっかあ・・・それそろパパが帰ってくるかも」
「高松もね―――――――ってシンちゃん!ここは入っちゃダメって高松が言ってたじゃない!!」
「でもグンマが探しやすいようにこの部屋に隠れたんだけど」
嘘じゃない。
「でも入っちゃダメだよ?」
「うん。分かった」
「戻ろ。シンちゃん」
「うん・・・・・・・・あ・・・れ・・・?」
ドアの取っ手に手をかけたグンマが振り返る。
「どうしたの?」
「何か身体が・・・変・・・うっ、うう」
みるみるうちに顔色が青ざめる。
身体が異常に熱い!
シンタロ―は自分の身体の中で何かが膨れ上がるような感覚に堪え切れず、その場に倒れてしまった。
「シンちゃん!!」
「熱い・・・・・・・・・はぁ・・・うぅっ!」
苦しみだした従兄弟にただオロオロするしかないグンマ。
「ええ!?どうしたのシンちゃん!ねえ大丈夫!?」
誰か呼んで来るべきか、しかしシンタロ―をこのまま一人にしておくのも心配だ。
「わ~ん!!どうしよう~!!!」
苦しんでいる本人異常にパニック状態になるグンマ。と、次の瞬間!!
ボンッ!!!
「わあっ!!!!!!」
いきなりの爆発音。
辺りは白い煙で覆われている。害臭ではないのか煙を吸い込んでしまっても息苦しさなどは感じない。
とりあえず滅多に開けられない窓を全部開いて煙を逃がす。
程なくして煙は視界から消え去り、目の前には“従兄弟のシンちゃんがいる―――――――――――――筈なのだ。
しかしそこにいるのはグンマの従兄弟であるシンタロ―ではない。
何故かびりびりに破けまくった服を申し訳程度に纏い、
流れるように長い漆黒の髪と同色の瞳が今の現状を理解していない事を示してぱちくりさせている。
幼げな部分を持ちながらも目に前に居るのは6歳のシンタロ―ではなく、
均衡の取れた肉体を持つ精悍な青年だった。
しばしの沈黙を恐る恐るグンマが紐解く。
「え・・・お兄ちゃん、誰?」
「何言ってるんだよ。頭でも打ったのか?」
「シンちゃん・・・なの?」
「当り前だろ?どうしたんだグンマ」
ふと小首を捻った。
「グンマ何か小さくなってない?」
呆然としたまま目の前の青年を震える指で指す。
「違うよ。シンちゃんが大きくなっちゃったんだよ・・・」
「・・・と、いう訳なんだけど」
困った視線を立った今帰還したばかりの男に向ける。
「シンタロ―君、これを飲みましたね?」
肩まで無造作に伸びた黒髪に笑い黒子。
白衣を着るのもそこそこにこの部屋の所有者(責任者)高松が数時間前に飲んだヤ●ルトをため息混じりに見せる。
「だって喉渇いたし・・・」
「僕だって喉乾いたよ!シンちゃんいつまで経っても見つからないんだもん!」
いつもなら「ああ、喉が渇いても必死にシンタロ―君を探そうとする健気な貴方!!!(鼻血ブ~~~~!!!)」
だの「それならば私がグンマ様の為に買ってきました、冬季限定ミルクセ―キをご賞味下さいvvvvv」だの
口を出す高松だが、(実際冬季限定ミルクセ―キをお土産にしっかりと大量に買ってきてたりするし)
今はそれどころではない。
世界が恐れる世界最強の殺し屋集団の総帥、マジックの愛しい愛しい愛し過ぎて「ちょっとそれは・・・」という程の
一身に愛を注がれている一人息子、シンタロ―が、かったるい学会から帰ってきたと思ったら
泣きついてきた愛しい愛しい愛し過ぎて鼻血ブ~~~~!!!なグンマが言うには
「シンちゃんが突然目の前で大きくなっちゃったよ~!!!!」と言うのだから。
しかもその原因に心当たりもあった。
それがあのヤク●トである。
「これはですね。まだ試作段階のある方から頼まれて作っている最中の『成長する薬』なんですよ」
「ええ~!!ドクタ―そんなの作れるのぉ!?」
「あのねえ、シンタロ―君。今実際に成長しちゃったのは誰ですか?」
「ん~?僕」
はい。と良い子なお返事をする中身6歳体は青年シンタロ―に流石のドクタ―も肩を落とす。
ちなみにシンタロ―の今の格好だが、大きくなってしまった為ビリビリに破けてしまった服の変わりに、
研究室に常備されていた白衣を纏い、黒の腰紐で纏めている。ポイント:どうしても見えちゃう生足vv
「でもさあ高松戻って来てくれたんだからもう大丈夫だよねv」
期待の目で高松見つめるグンマは、高松から見れば天使そのもの。
吹き出る鼻血を必死に押さえながら一言。
「勿論。そういう薬には解毒剤(←毒なのか?)を作ります」
「「わあああいvv」」
元に戻れると単純に喜ぶシンタロ―とグンマ。次の一言さえなければ。
「ですが先程も申し上げましたがあの薬はまだ試作段階。
人体実験もまだです。
よって解毒剤はありません」
やけにキッパリと言い放つ高松。
数秒後、地下の一室から、幼子の泣き声が聞こえたとか何とか・・・・・・・・・。
その前にドクタ―。
あんた誰かに人体実験しようとしてたんかい。
それからまた数時間後。
一機のヘリがガンマ団へと帰還した。
ヘリのドアが重々しく開き、控えていた兵士達が一斉に地に足をつけた男に敬礼する。
「お帰りなさいませ、マジック総帥」
兵士達へ視線を送る時間さえ惜しいように、
マジックは愛する息子が自分を待っているであろう息子の部屋へとマッハで駆け抜けていった。
バンッ
ノックもそこそこにマジックは顔をマイホ~ムvパパに切り替え一気に喋り始めた。
「ああシンちゃん!パパが居なくてさぞかし心細かっただろうねえ!!
パパもすご~くすご~く寂しかったよ~ぉ?
でもね、このシンちゃん人形を肌身離さず持ってたから少しは絶えられたんだよvvv
まあ、やっぱり本物のシンちゃんが一番だから、
パパ張り切ってやっつけたんだけど相手軍もなかなかしぶとくてねえ、約束した時間よりずっと遅れちゃったよ。
ゴメンねシンちゃん!!!その代わり今夜は一緒に寝――――――――ん?」
そこまで喋り捲ってやっと気付いた。
愛息子の姿がこの部屋には居ないという事に。
「おかしいなあ。シンちゃんどこへ行っちゃったのかな」
ず~~~~~~~~~と戦線でも肌身離さず持ち歩いていた自作のシンちゃん人形を片手に、
マジックは愛する息子を探しに部屋を出た。
同刻、地下の高松専用の研究室では―――――。
「ねえまだ出来ないの??」
体は青年になってしまったとはいえまだ中身は6歳のままであるシンタローは、
さっきまではグンマとこの研究室内で遊んでいたが、所詮ここは研究室。
遊ぶ物などないに等しいので子どもの発想力で様々な遊びを展開していたがネタ切れのようで何とも退屈そうだ。
「そう簡単に出来るモノじゃありませんよ。言ったでしょう?まだ試作段階だって。
勝手に飲んでしまったシンタロ―君?」
視線は何とも妖しげな色を称えた液体入りのフラスコを軽く振りながら、
少々・・・いや、結構な皮肉を込めて言葉を返す高松に、ぶぅ~~~~~と膨れっ面を見せるがそれ以上は何も言ってこない。
自分が悪いという事は自覚あるようだ。
「ねえシンちゃん」
「何?」
「何か声が聞こえない?」
「え・・・?あ~、聞こえる!この声はパ」
「さあさ!!!!!!!シンタロ―君はこの中に入って下さい!!」
「えっ!うわあっ!!何するんだよぉ!?」
「高松!?」
いきなり奥の蓋付きの木箱に押し込められるシンタロ―は訳が分からず必死で暴れる。
実際は6歳の幼子とはいえ、身体は成人。高松よりも体格は良くなっていて力も強く高松も苦戦する。
「マジック総帥が帰ってきたんですよ!もしシンタロ―君のこの姿を見たら・・・」
「泣いちゃう?叔父様」
「・・・・・・ええ色々な意味で泣くと思いますよ」
一瞬、シンタロ―を木箱に押し込めようとした手がピタリと止まる。
「色々って?」
「まあ・・・何と言いますか―――――――って!!早くこの中に入って下さい!!!いいですか!?
絶対声や音を出しちゃいけませんよ!!グンマ様もシンタロ―君の事は黙っていて下さいね!?」
「う、うん」
こんなに必死な形相をした高松を見るのは初めてなグンマは固まって、とにかくコクコクと頷いた。
パタン
木箱の蓋が完全にシンタロ―を隠した。と、同時に。
コンコン
「高松?いるかい?」
「はい、開いてますからどうぞお入りになって下さい。マジック総帥」
微笑を称えて応対する高松の顔には、先ほどまでの焦り色はまったく見受けられない。
見事なまでの変わり身にほえ~と妙な関心をするグンマだった。
「おや、グンちゃんも居たのかい」
にっこりと笑みを称えて優しく甥の頭を撫でる。
「こんばんは叔父様♪」
「ところで高松。私の可愛いvシンちゃんは見かけなかったかい?」
「いいえ。私も今、学会から戻ったばかりですので」
この時グンマは初めて(or改めて)高松はスゴイ!と思った。核心を突いた質問に動じることなく、
間を余りおかずかと言って瞬時に答えるでもなく丁度良い1.5秒での回答。
冷や汗一つもかいていない。
「でもこの部屋からシンちゃんの匂いがするんだよねぇ・・・」
「は!?」「え?」―――僕の匂い?
見事に全員ハモった。(シンタロ―は言葉には出さなかったが)
「叔父様、シンちゃんの匂いって?」
「ん~~~v?私にはシンちゃんの匂いが分かるんだよvv」
「え~!叔父様すごぉ~い!!」
「愛の力ですな」
そういう高松だってグンマの匂いを当てそうだが。
「本題に戻そうか。この部屋にシンちゃんがいると思うんだけど?」
「さて、どこにいらっしゃるのやら・・・」
あくまでシラを切る高松。
だがグンマはビクビクで、冷や汗まで浮かべている。
元々嘘は苦手なタイプである。
それを見逃すようではガンマ団総帥等到底務まりはしない。
それに確かにこの部屋から息子の気配がするのだ。
いかにもわざとらしい声で、
まるでシンタロ―がここにいる事を知らぬかのようにあさっての方向を見ながらぽつりと一言。
「今日はシンちゃんのだ~い好きな特製カレ―なんだけどなあ・・・」
がたんっ
「え!カレ―vvvvvv」
「シンちゃぁああん!!」
「あちゃ~ぁ」
わたわたと大慌てするグンマと額を押さえる高松。
そして・・・。
「シ・・・シンタロ―?なのかい・・・・・・?」
「え?―――――あぁ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
変わり果てた息子の姿に目を見張る、マジックの驚きも無理はない。
いきなり大きめの木箱の中から飛び出した青年は確かに彼の愛息子・シンタロ―なのだろう・・・・・・・・・が、
今は高松の薬で青年姿になってしまっているのだ。普通、信じろ!という方が無理だ。
「シンちゃんが・・・ちょっと見ないうちにこんなに大きくなって!!」
何故か感激の涙を流している。
「という事はアノ薬ができたんだね!高松」
「えぇ・・・・・・まぁ・・・」
どこか瞳が遠い。
この会話から行って、この父親が薬の依頼者という訳だ。
しかし一体何故。
敵軍に送り込んで敵さん達をちみたんにさせて一気に攻め落とす・・・とかの戦略だろうか。
それはともかく、さっきから視線が泳いでいる高松に何やら、総帥の勘というものであろうか。
疑念というものが沸いてくる。
「まさか元に戻す薬がない訳じゃないよね」
「うわ~~~vさっすが叔父様!」
大当たりだよ~♪と何故か万歳しているグンマ。顔面蒼白になる高松。その表情を見て核心を
持ってにこぉぉりvと満面の笑みを浮かべて高松に振り返るマジック。
「「???」」
無邪気な子ども二人にもはっきりと分かるくらい微笑みはそのままに、
その背後にしょっている凍りつくようなオ―ラが高松へと向けられている。
グンマとシンタロ―を自分の背後に押して、片手を前に―――――。
この日、特大の爆発音が地下から響いたのを何千人、何万人という団員が聞いていた。
グンマも誘ってカレ―を食べた後、
グンマは家?に帰してマジックとシンタロ―は二人きり、マジックの自室にて夕食後のくつろぎタイムをとっている。
いつもならソファにマジックが先に座り、シンタロ―が膝の上で絵本を読んでいたりするのだが、なにせこの体格。
(いつものように)シンちゃん観賞v中の父親の膝に寝転がって自分の伸びた髪をいじって遊んでいる。
ふと、シンタロ―が少し顔を持ち上げ、父親を見る。
「パパ、僕もう戻れないの?」
「不安かい?」
息子の長くなった黒髪を指に絡めながら少し心配そうに聞いてみる。
実際心配ではある。
確かにアノ薬を作るよう命じたのは他でもない自分だ。
シンちゃんが大きくなったらどうなるのかな~vvと、その心中にかなり邪な欲望を含んでの
好奇心からだったのだが。
しかし元に戻れないとなると・・・。
珍しくちこっとだけ罪悪感を感じているマジックに、シンタロ―はにこvと微笑みを向けた。
「ううん!僕、嬉しいの!!」
「え・・・?それは一体何で・・・」
「だって!パパに抱っこしてもらわなくても、ちょっと顔上げるだけでパパの顔見れるんだもん♪」
意外な答えに驚いたが、何にせよ天にも昇る程嬉しい告白。
そのままガバッと押し倒そうな勢いで抱きつこうとした・・・のだが、満面の笑顔だったシンタロ―が、
突然少し寂しそうに俯いてしまったのが気になった。
「でも・・・大好きなパパのお膝に乗れなくなっちゃったのは少し残念かなぁ~・・・」
「何言っているんだい!大きくなってもパパのお膝はシンちゃんのものだよvvv」
ハ―ト撒き散らして、今度こそギュッと抱きしめる。
いつもなら、「パパぁ~、あんまりギュ~~ってすると痛いよぉ~~~」と苦しげな反応を見せるが、
この体格だからか、わぁあ~~いvと父親に抱きつく。
頭を撫でつつ、それにしても・・・・・・とマジックは息子を改めて見る。
長く艶やかに伸びた黒髪、引き締まった筋肉、精悍な顔つきの中にも、引き込まれる幼い笑顔。
何より、こうしてある程度は加減しているとは言え、力いっぱい抱きしめても特に苦しそうな反応もしない。
・・・・・・・・・いけないと思いつつも、つい邪の欲望が湧きあがってくる。
身体は成人していても中身は6歳児。
『精神幼児性的虐待』・・・・・・そんな言葉が浮かんできた。
何だかんだで8時を過ぎると、瞼が重くなってきてついうとうと。
「シンちゃん、寝る前にお風呂入ろうね?」
「うん」
遠征でいない時以外は、必ずマジックとシンタロ―は一緒にお風呂に入る。
マジックの部屋には超特大サイズの風呂が設置されていた。
「おっ風呂♪おっ風呂♪♪」と歌を歌いながら警戒心0で(そりゃそ―だ)
一気に全裸になる息子に対して、マジックの今の心境。
―――持ってくれ!私の理性!!(持ってくれ!妖の多分あるかもしんない良心!!)
しかし暫く一緒に湯船に浸かっていて、ほんのり赤くなったシンタロ―がのぼせ、マジックに
ふにゃ~~~と寄りかかって甘えてきた時マジックの何とか保っていた理性が切れた。
―――もう限界だよ!!!!シンちゃぁぁああああぁあん!!!!!!!!!!!!
我慢出来ずに我子に抱きついた。
がばっ
「シンちゃぁぁあああぁあんvvvvvvvvvv」
「わぁああ!!何!?パパぁ~~~~!!!???」
「眼魔砲!」
ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ
マジックに容赦なく青の一族の必殺技を放った、
氷の彫刻のように美麗な男は、実の兄がその実の息子を風呂場で襲っているのを目にし至って冷静にタメなし必殺技を放った。
ちなみにマジックだけを狙ったのでシンタロ―は無傷であった。
「事情を聞いて危険を感じて来てみれば・・・。身体は成人していても中身六歳の実の息子を襲わないで下さい。兄さん」
「サ・・・サ―・・・ビス・・・ゥゥ・・・イキナリ眼魔砲撃つなんて・・・」
がくり
そこでマジックの意識は途絶えた。
イキナリの事が次々と起こって目を白黒させていたが、大好きな叔父の姿を確認すると、
父親ほおっておいて(コラコラ)完全に叔父へと意識を向けた。
「サ―ビス叔父さん・・・どうしたの?」
「高松がお前を元に戻す薬を完成させたんだよ」
「本当!?」
「ああ、これを飲めば元に戻れる」
手にしっかりと持っていた、かなり妖しげなピンク色の薬を手渡す。
「ありがとうv叔父さん!!」
ごくんっ
数日後、集中治療室から出てきたマジックが見た息子は・・・・・・。
「パパ~おはようv」
「ああ、シンちゃん・・・vおは・・・!?――――グハァァッッッ!!!!!!」
ぶぼぉっっ!!
「わああああああぁぁぁ!!パパが鼻血出して倒れちゃったぁ!!!」
「それはそうだろうな」
サ―ビスはどこか遠くを見つめる瞳で言葉を紡いだ。
「今度は“女体化”してしまったのだから」
どうやらあの、元の姿に戻る薬は失敗しちゃったっぽい・・・。
★あとがき★
長ッ!まさかこんなに長くなるとは思わんかったよ・・・。
マジ、裏行きになるところでしたのおっとっと☆な、初のパプワくんでマジシン。
結構さくさくスム―ズに進んでいたんですが、何故かパパンが登場してからめっちゃ苦戦を
強いられました。マジシンなのに、「どこが!?」とかツッコミは入りそうですね~~あうぅ・・・。
ってか元に戻れてないじゃん。
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(挿入イラスト:ひそか様)
肩まで伸びた黒髪に同色の瞳は青の一族とは明らかに異端。
で、ありながらその幼子がすくすくと伸びやかな感性で育っているのは、
幼子――シンタロ―の父、マジックの並々ならぬ息子溺愛ぶりからか、
はたまたシンタロ―の持つ、人を引きつけてやまぬ無意識なる力なのか。
どちらにせよ、そんな事は今のシンタロ―には大した問題ではなかった。問題なのは――。
「ふぅ・・・」
一つ溜息。
「パパはお仕事行っちゃったし、(サ―ビス)叔父さんはいっつもいないし・・・」
周りに散らばったおもちゃの数々。少し間を置いて、
「退屈だあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
部屋いっぱいに叫ぶ。遊び盛りのシンタロ―(6歳)は今、どうしようもなく暇で暇でしょうがなかった。
「シンちゃ~んv遊ぼ~ぉ」
聞きなれた声の主がシンタロ―の居る自室へと足を踏み入れた。
「グンマ!」
シンタロ―と従兄弟のやはり青の一族の少年。それを象徴するかのように栄える黄金の髪と秘石眼。
見た目、シンタロ―より幾分幼く見えるこちらも遊びたい盛りの6歳。
「高松は?」
いつも(鼻血を垂らしながら)グンマの傍に控えているマッドサイエンティストの姿が見えない。
「学会に行っちゃった。でね、最初工具とか使って遊んでたんだけど飽きちゃった。だからシンちゃん!遊ぼv」
「ふ~ん。退屈だったから丁度いいや!遊ぼう!何がいい?」
「ん~とね~・・・かくれんぼは?」
「よ~し!じゃんけんぽん!!」
グンマはパ―でシンタロ―はチョキ。
実はいっつもグンマは最初にパ―ばかり出すのをシンタロ―は知っている。
「あ~、負けちゃった」
「向こう向いてて。じゃあ50数えたら探しに来いよ」
そう言うが早いかシンタロ―はイキオイよく部屋から飛び出した。
「ん~と・・・い~ち、に~い、さ~ん」
大きな窓に顔を寄せて目を隠し、ゆっくりと数を数える。
シンタロ―は全速力で迷路のような廊下を走り、地下にある一室へと身を隠した。
まさかこれがとんでもない事態を引き起こすキッカケになろうとは、
幼い二人には予想すらつかなかったのだ・・・・・・。
「あ~んシンちゃ~あああん」
グンマはもはや半泣き状態になって探し回っていた。
なにせこんなに途方もなく広いガンマ団施設。まだ足を踏み入れた事のない場所だって沢山ある。
「くすん。どこまでかエリア決めとけばよかった・・・」
後悔先に立たず。幼いながらも身に染みて感じるグンマであった。
一方シンタロ―はと言えば、ちらりと部屋の壁に掛けられている時計を見て盛大なため息をイライラと共に吐き出した。
「全然見つけにこないな~グンマ。折角見つけやすいようにグンマもよく知ってる筈のこの部屋に隠れたのに」
シンタロ―の言う『この部屋』とは、カ―テンが閉じられている所為も抜かしても陰険な空気を漂わせている場所。
ビ―カ―やらフラスコ、人体模型などは勿論の事、
何やらシンタロ―には???な、とてもじゃないが表現するのもおぞましいものが、意外にもきちんと並べられている。
例えて言うなら理科の実験室と呪いの儀式室を足して2で割ったような部屋、である。
それでもって6歳のグンマもよく知ってる部屋、なのである。
「喉渇いたな~」
向かう先は小さめな冷蔵庫。
クリップでとめてある夥しい枚数のグンマの写真が(鼻血付き)ひしめき合って飾られているが敢えて無視。
「でもここの飲み物ってかなり妖しい感じがするし・・・」
確かに。
開けてみれば普通の子どもなら(いや、大人でも)見た瞬間に失神、失禁、発狂しそうな程おぞましいものが詰め込まれていた。
「あれ?これは大丈夫みたいだ」
そう言って手に取ったのは子どものおやつによく出すヤ●ルト。
色もおかしくないし、匂いを嗅いでも確かにヤク●トの匂いそのもの。
蓋もちゃんと剥がした後もなくぴったりとはりついていた。
ぺりっ
「いっただきま~す♪」
ごくごくごく
ちなみに味もちゃんとヤクル●であった。シンちゃん。勝手に人様のものを飲んではいけません。
「まだかな~グンマ・・・」
殻になった●クルトをきちんとごみ箱に捨て、椅子に座り暫く足をブラブラさせていたが、
「ふわぁ~・・・眠い」
小さな欠伸をして、いつの間にか小さな寝息が聞こえてきた。
数十分後・・・。やっとグンマもシンタロ―が隠れている地下にやってきた。
「クスン。シンちゃんどこ~?」
ずっと泣いた為か、目が赤くなっている。
「ここかな~。でも高松が一緒じゃないと入っちゃいけないって言ってたし・・・」
グンマが入るべきか入らざるべきかうんうん悩む部屋こそシンタロ―が隠れている部屋。
意を決して扉の取っ手に手をかける。
「シンちゃあああん居るの~ぉ???居るなら居るって言ってよぉ~」
大きな瞳に涙をいっぱい溜めて、怖々室内を覗いてみる。
「シンちゃんってばぁ~。居ないなら居ないって言ってよ~。グスン」
無茶な台詞だが恐怖にかられている幼子なので仕方がない。
恐る恐る足を踏み入れていくと足元に何かが当たった。
「ひっっ!!」
一瞬にしてその場から大泣きして飛び退くグンマだったが、
「あっ!シンちゃん」
それはすっかりと熟睡しているシンタロ―だった。ほっとするのと同時に徐々に今までの恐怖が怒りに変わる。
「も~!シンちゃんてばこの部屋は高松の研究室で、
危ないのがいっぱいあるから勝手に入っちゃいけないって言われてたのに~」
相変わらずすやすやと穏やかな寝息をたてている従兄弟に説教してみるが起きる様子もない。
小さくため息をついて肩に触れた。
「シンちゃん起きて!シンちゃんてばぁ!」
少し強めに揺すってみる。
「ん・・・グンマ・・・?」
反応あり。まだ寝ぼけているようだけれど。
徐々に眠りの世界から覚醒した少年は目を擦り擦り辺りをきょろきょろ。
目の前にはほっぺを膨らませている従兄弟の姿。
「もう!やっと起きた」
「ん~・・・俺、いつの間にか眠っちゃったんだ」
大きな欠伸をしながら伸びをする。
「グンマ・・・今何時?」
「ん~とねえ・・・4時みたい」
壁にかかった時計を指差して答える。
「そっかあ・・・それそろパパが帰ってくるかも」
「高松もね―――――――ってシンちゃん!ここは入っちゃダメって高松が言ってたじゃない!!」
「でもグンマが探しやすいようにこの部屋に隠れたんだけど」
嘘じゃない。
「でも入っちゃダメだよ?」
「うん。分かった」
「戻ろ。シンちゃん」
「うん・・・・・・・・あ・・・れ・・・?」
ドアの取っ手に手をかけたグンマが振り返る。
「どうしたの?」
「何か身体が・・・変・・・うっ、うう」
みるみるうちに顔色が青ざめる。
身体が異常に熱い!
シンタロ―は自分の身体の中で何かが膨れ上がるような感覚に堪え切れず、その場に倒れてしまった。
「シンちゃん!!」
「熱い・・・・・・・・・はぁ・・・うぅっ!」
苦しみだした従兄弟にただオロオロするしかないグンマ。
「ええ!?どうしたのシンちゃん!ねえ大丈夫!?」
誰か呼んで来るべきか、しかしシンタロ―をこのまま一人にしておくのも心配だ。
「わ~ん!!どうしよう~!!!」
苦しんでいる本人異常にパニック状態になるグンマ。と、次の瞬間!!
ボンッ!!!
「わあっ!!!!!!」
いきなりの爆発音。
辺りは白い煙で覆われている。害臭ではないのか煙を吸い込んでしまっても息苦しさなどは感じない。
とりあえず滅多に開けられない窓を全部開いて煙を逃がす。
程なくして煙は視界から消え去り、目の前には“従兄弟のシンちゃんがいる―――――――――――――筈なのだ。
しかしそこにいるのはグンマの従兄弟であるシンタロ―ではない。
何故かびりびりに破けまくった服を申し訳程度に纏い、
流れるように長い漆黒の髪と同色の瞳が今の現状を理解していない事を示してぱちくりさせている。
幼げな部分を持ちながらも目に前に居るのは6歳のシンタロ―ではなく、
均衡の取れた肉体を持つ精悍な青年だった。
しばしの沈黙を恐る恐るグンマが紐解く。
「え・・・お兄ちゃん、誰?」
「何言ってるんだよ。頭でも打ったのか?」
「シンちゃん・・・なの?」
「当り前だろ?どうしたんだグンマ」
ふと小首を捻った。
「グンマ何か小さくなってない?」
呆然としたまま目の前の青年を震える指で指す。
「違うよ。シンちゃんが大きくなっちゃったんだよ・・・」
「・・・と、いう訳なんだけど」
困った視線を立った今帰還したばかりの男に向ける。
「シンタロ―君、これを飲みましたね?」
肩まで無造作に伸びた黒髪に笑い黒子。
白衣を着るのもそこそこにこの部屋の所有者(責任者)高松が数時間前に飲んだヤ●ルトをため息混じりに見せる。
「だって喉渇いたし・・・」
「僕だって喉乾いたよ!シンちゃんいつまで経っても見つからないんだもん!」
いつもなら「ああ、喉が渇いても必死にシンタロ―君を探そうとする健気な貴方!!!(鼻血ブ~~~~!!!)」
だの「それならば私がグンマ様の為に買ってきました、冬季限定ミルクセ―キをご賞味下さいvvvvv」だの
口を出す高松だが、(実際冬季限定ミルクセ―キをお土産にしっかりと大量に買ってきてたりするし)
今はそれどころではない。
世界が恐れる世界最強の殺し屋集団の総帥、マジックの愛しい愛しい愛し過ぎて「ちょっとそれは・・・」という程の
一身に愛を注がれている一人息子、シンタロ―が、かったるい学会から帰ってきたと思ったら
泣きついてきた愛しい愛しい愛し過ぎて鼻血ブ~~~~!!!なグンマが言うには
「シンちゃんが突然目の前で大きくなっちゃったよ~!!!!」と言うのだから。
しかもその原因に心当たりもあった。
それがあのヤク●トである。
「これはですね。まだ試作段階のある方から頼まれて作っている最中の『成長する薬』なんですよ」
「ええ~!!ドクタ―そんなの作れるのぉ!?」
「あのねえ、シンタロ―君。今実際に成長しちゃったのは誰ですか?」
「ん~?僕」
はい。と良い子なお返事をする中身6歳体は青年シンタロ―に流石のドクタ―も肩を落とす。
ちなみにシンタロ―の今の格好だが、大きくなってしまった為ビリビリに破けてしまった服の変わりに、
研究室に常備されていた白衣を纏い、黒の腰紐で纏めている。ポイント:どうしても見えちゃう生足vv
「でもさあ高松戻って来てくれたんだからもう大丈夫だよねv」
期待の目で高松見つめるグンマは、高松から見れば天使そのもの。
吹き出る鼻血を必死に押さえながら一言。
「勿論。そういう薬には解毒剤(←毒なのか?)を作ります」
「「わあああいvv」」
元に戻れると単純に喜ぶシンタロ―とグンマ。次の一言さえなければ。
「ですが先程も申し上げましたがあの薬はまだ試作段階。
人体実験もまだです。
よって解毒剤はありません」
やけにキッパリと言い放つ高松。
数秒後、地下の一室から、幼子の泣き声が聞こえたとか何とか・・・・・・・・・。
その前にドクタ―。
あんた誰かに人体実験しようとしてたんかい。
それからまた数時間後。
一機のヘリがガンマ団へと帰還した。
ヘリのドアが重々しく開き、控えていた兵士達が一斉に地に足をつけた男に敬礼する。
「お帰りなさいませ、マジック総帥」
兵士達へ視線を送る時間さえ惜しいように、
マジックは愛する息子が自分を待っているであろう息子の部屋へとマッハで駆け抜けていった。
バンッ
ノックもそこそこにマジックは顔をマイホ~ムvパパに切り替え一気に喋り始めた。
「ああシンちゃん!パパが居なくてさぞかし心細かっただろうねえ!!
パパもすご~くすご~く寂しかったよ~ぉ?
でもね、このシンちゃん人形を肌身離さず持ってたから少しは絶えられたんだよvvv
まあ、やっぱり本物のシンちゃんが一番だから、
パパ張り切ってやっつけたんだけど相手軍もなかなかしぶとくてねえ、約束した時間よりずっと遅れちゃったよ。
ゴメンねシンちゃん!!!その代わり今夜は一緒に寝――――――――ん?」
そこまで喋り捲ってやっと気付いた。
愛息子の姿がこの部屋には居ないという事に。
「おかしいなあ。シンちゃんどこへ行っちゃったのかな」
ず~~~~~~~~~と戦線でも肌身離さず持ち歩いていた自作のシンちゃん人形を片手に、
マジックは愛する息子を探しに部屋を出た。
同刻、地下の高松専用の研究室では―――――。
「ねえまだ出来ないの??」
体は青年になってしまったとはいえまだ中身は6歳のままであるシンタローは、
さっきまではグンマとこの研究室内で遊んでいたが、所詮ここは研究室。
遊ぶ物などないに等しいので子どもの発想力で様々な遊びを展開していたがネタ切れのようで何とも退屈そうだ。
「そう簡単に出来るモノじゃありませんよ。言ったでしょう?まだ試作段階だって。
勝手に飲んでしまったシンタロ―君?」
視線は何とも妖しげな色を称えた液体入りのフラスコを軽く振りながら、
少々・・・いや、結構な皮肉を込めて言葉を返す高松に、ぶぅ~~~~~と膨れっ面を見せるがそれ以上は何も言ってこない。
自分が悪いという事は自覚あるようだ。
「ねえシンちゃん」
「何?」
「何か声が聞こえない?」
「え・・・?あ~、聞こえる!この声はパ」
「さあさ!!!!!!!シンタロ―君はこの中に入って下さい!!」
「えっ!うわあっ!!何するんだよぉ!?」
「高松!?」
いきなり奥の蓋付きの木箱に押し込められるシンタロ―は訳が分からず必死で暴れる。
実際は6歳の幼子とはいえ、身体は成人。高松よりも体格は良くなっていて力も強く高松も苦戦する。
「マジック総帥が帰ってきたんですよ!もしシンタロ―君のこの姿を見たら・・・」
「泣いちゃう?叔父様」
「・・・・・・ええ色々な意味で泣くと思いますよ」
一瞬、シンタロ―を木箱に押し込めようとした手がピタリと止まる。
「色々って?」
「まあ・・・何と言いますか―――――――って!!早くこの中に入って下さい!!!いいですか!?
絶対声や音を出しちゃいけませんよ!!グンマ様もシンタロ―君の事は黙っていて下さいね!?」
「う、うん」
こんなに必死な形相をした高松を見るのは初めてなグンマは固まって、とにかくコクコクと頷いた。
パタン
木箱の蓋が完全にシンタロ―を隠した。と、同時に。
コンコン
「高松?いるかい?」
「はい、開いてますからどうぞお入りになって下さい。マジック総帥」
微笑を称えて応対する高松の顔には、先ほどまでの焦り色はまったく見受けられない。
見事なまでの変わり身にほえ~と妙な関心をするグンマだった。
「おや、グンちゃんも居たのかい」
にっこりと笑みを称えて優しく甥の頭を撫でる。
「こんばんは叔父様♪」
「ところで高松。私の可愛いvシンちゃんは見かけなかったかい?」
「いいえ。私も今、学会から戻ったばかりですので」
この時グンマは初めて(or改めて)高松はスゴイ!と思った。核心を突いた質問に動じることなく、
間を余りおかずかと言って瞬時に答えるでもなく丁度良い1.5秒での回答。
冷や汗一つもかいていない。
「でもこの部屋からシンちゃんの匂いがするんだよねぇ・・・」
「は!?」「え?」―――僕の匂い?
見事に全員ハモった。(シンタロ―は言葉には出さなかったが)
「叔父様、シンちゃんの匂いって?」
「ん~~~v?私にはシンちゃんの匂いが分かるんだよvv」
「え~!叔父様すごぉ~い!!」
「愛の力ですな」
そういう高松だってグンマの匂いを当てそうだが。
「本題に戻そうか。この部屋にシンちゃんがいると思うんだけど?」
「さて、どこにいらっしゃるのやら・・・」
あくまでシラを切る高松。
だがグンマはビクビクで、冷や汗まで浮かべている。
元々嘘は苦手なタイプである。
それを見逃すようではガンマ団総帥等到底務まりはしない。
それに確かにこの部屋から息子の気配がするのだ。
いかにもわざとらしい声で、
まるでシンタロ―がここにいる事を知らぬかのようにあさっての方向を見ながらぽつりと一言。
「今日はシンちゃんのだ~い好きな特製カレ―なんだけどなあ・・・」
がたんっ
「え!カレ―vvvvvv」
「シンちゃぁああん!!」
「あちゃ~ぁ」
わたわたと大慌てするグンマと額を押さえる高松。
そして・・・。
「シ・・・シンタロ―?なのかい・・・・・・?」
「え?―――――あぁ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
変わり果てた息子の姿に目を見張る、マジックの驚きも無理はない。
いきなり大きめの木箱の中から飛び出した青年は確かに彼の愛息子・シンタロ―なのだろう・・・・・・・・・が、
今は高松の薬で青年姿になってしまっているのだ。普通、信じろ!という方が無理だ。
「シンちゃんが・・・ちょっと見ないうちにこんなに大きくなって!!」
何故か感激の涙を流している。
「という事はアノ薬ができたんだね!高松」
「えぇ・・・・・・まぁ・・・」
どこか瞳が遠い。
この会話から行って、この父親が薬の依頼者という訳だ。
しかし一体何故。
敵軍に送り込んで敵さん達をちみたんにさせて一気に攻め落とす・・・とかの戦略だろうか。
それはともかく、さっきから視線が泳いでいる高松に何やら、総帥の勘というものであろうか。
疑念というものが沸いてくる。
「まさか元に戻す薬がない訳じゃないよね」
「うわ~~~vさっすが叔父様!」
大当たりだよ~♪と何故か万歳しているグンマ。顔面蒼白になる高松。その表情を見て核心を
持ってにこぉぉりvと満面の笑みを浮かべて高松に振り返るマジック。
「「???」」
無邪気な子ども二人にもはっきりと分かるくらい微笑みはそのままに、
その背後にしょっている凍りつくようなオ―ラが高松へと向けられている。
グンマとシンタロ―を自分の背後に押して、片手を前に―――――。
この日、特大の爆発音が地下から響いたのを何千人、何万人という団員が聞いていた。
グンマも誘ってカレ―を食べた後、
グンマは家?に帰してマジックとシンタロ―は二人きり、マジックの自室にて夕食後のくつろぎタイムをとっている。
いつもならソファにマジックが先に座り、シンタロ―が膝の上で絵本を読んでいたりするのだが、なにせこの体格。
(いつものように)シンちゃん観賞v中の父親の膝に寝転がって自分の伸びた髪をいじって遊んでいる。
ふと、シンタロ―が少し顔を持ち上げ、父親を見る。
「パパ、僕もう戻れないの?」
「不安かい?」
息子の長くなった黒髪を指に絡めながら少し心配そうに聞いてみる。
実際心配ではある。
確かにアノ薬を作るよう命じたのは他でもない自分だ。
シンちゃんが大きくなったらどうなるのかな~vvと、その心中にかなり邪な欲望を含んでの
好奇心からだったのだが。
しかし元に戻れないとなると・・・。
珍しくちこっとだけ罪悪感を感じているマジックに、シンタロ―はにこvと微笑みを向けた。
「ううん!僕、嬉しいの!!」
「え・・・?それは一体何で・・・」
「だって!パパに抱っこしてもらわなくても、ちょっと顔上げるだけでパパの顔見れるんだもん♪」
意外な答えに驚いたが、何にせよ天にも昇る程嬉しい告白。
そのままガバッと押し倒そうな勢いで抱きつこうとした・・・のだが、満面の笑顔だったシンタロ―が、
突然少し寂しそうに俯いてしまったのが気になった。
「でも・・・大好きなパパのお膝に乗れなくなっちゃったのは少し残念かなぁ~・・・」
「何言っているんだい!大きくなってもパパのお膝はシンちゃんのものだよvvv」
ハ―ト撒き散らして、今度こそギュッと抱きしめる。
いつもなら、「パパぁ~、あんまりギュ~~ってすると痛いよぉ~~~」と苦しげな反応を見せるが、
この体格だからか、わぁあ~~いvと父親に抱きつく。
頭を撫でつつ、それにしても・・・・・・とマジックは息子を改めて見る。
長く艶やかに伸びた黒髪、引き締まった筋肉、精悍な顔つきの中にも、引き込まれる幼い笑顔。
何より、こうしてある程度は加減しているとは言え、力いっぱい抱きしめても特に苦しそうな反応もしない。
・・・・・・・・・いけないと思いつつも、つい邪の欲望が湧きあがってくる。
身体は成人していても中身は6歳児。
『精神幼児性的虐待』・・・・・・そんな言葉が浮かんできた。
何だかんだで8時を過ぎると、瞼が重くなってきてついうとうと。
「シンちゃん、寝る前にお風呂入ろうね?」
「うん」
遠征でいない時以外は、必ずマジックとシンタロ―は一緒にお風呂に入る。
マジックの部屋には超特大サイズの風呂が設置されていた。
「おっ風呂♪おっ風呂♪♪」と歌を歌いながら警戒心0で(そりゃそ―だ)
一気に全裸になる息子に対して、マジックの今の心境。
―――持ってくれ!私の理性!!(持ってくれ!妖の多分あるかもしんない良心!!)
しかし暫く一緒に湯船に浸かっていて、ほんのり赤くなったシンタロ―がのぼせ、マジックに
ふにゃ~~~と寄りかかって甘えてきた時マジックの何とか保っていた理性が切れた。
―――もう限界だよ!!!!シンちゃぁぁああああぁあん!!!!!!!!!!!!
我慢出来ずに我子に抱きついた。
がばっ
「シンちゃぁぁあああぁあんvvvvvvvvvv」
「わぁああ!!何!?パパぁ~~~~!!!???」
「眼魔砲!」
ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ
マジックに容赦なく青の一族の必殺技を放った、
氷の彫刻のように美麗な男は、実の兄がその実の息子を風呂場で襲っているのを目にし至って冷静にタメなし必殺技を放った。
ちなみにマジックだけを狙ったのでシンタロ―は無傷であった。
「事情を聞いて危険を感じて来てみれば・・・。身体は成人していても中身六歳の実の息子を襲わないで下さい。兄さん」
「サ・・・サ―・・・ビス・・・ゥゥ・・・イキナリ眼魔砲撃つなんて・・・」
がくり
そこでマジックの意識は途絶えた。
イキナリの事が次々と起こって目を白黒させていたが、大好きな叔父の姿を確認すると、
父親ほおっておいて(コラコラ)完全に叔父へと意識を向けた。
「サ―ビス叔父さん・・・どうしたの?」
「高松がお前を元に戻す薬を完成させたんだよ」
「本当!?」
「ああ、これを飲めば元に戻れる」
手にしっかりと持っていた、かなり妖しげなピンク色の薬を手渡す。
「ありがとうv叔父さん!!」
ごくんっ
数日後、集中治療室から出てきたマジックが見た息子は・・・・・・。
「パパ~おはようv」
「ああ、シンちゃん・・・vおは・・・!?――――グハァァッッッ!!!!!!」
ぶぼぉっっ!!
「わああああああぁぁぁ!!パパが鼻血出して倒れちゃったぁ!!!」
「それはそうだろうな」
サ―ビスはどこか遠くを見つめる瞳で言葉を紡いだ。
「今度は“女体化”してしまったのだから」
どうやらあの、元の姿に戻る薬は失敗しちゃったっぽい・・・。
★あとがき★
長ッ!まさかこんなに長くなるとは思わんかったよ・・・。
マジ、裏行きになるところでしたのおっとっと☆な、初のパプワくんでマジシン。
結構さくさくスム―ズに進んでいたんですが、何故かパパンが登場してからめっちゃ苦戦を
強いられました。マジシンなのに、「どこが!?」とかツッコミは入りそうですね~~あうぅ・・・。
ってか元に戻れてないじゃん。
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