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一つの真実
世界で一番カッコイイ人形。そう、僕の名前はシンタロー。
っていっても、本物のシンタローはちゃんといるよ?
僕を作ったのはシンタローのパパで、裁縫が得意な変態なんだって。(シンタローが前に言ってた)
僕は人形だから喋れないし、シンタローとパパの’確執’なんてよく分かんないけど。
僕、一つだけ知ってることがあるんだよ。
それはね。パパを愛せるのはシンタローだけなんだってこと。









一つの真実









今日はシンタローの誕生日。一年で一番家が壊れる日。
毎年パパがシンタローにまとわりついて眼魔砲が連発されるから。
でも。今年はそんなこと一つも起きなくて。
というよりパパが朝から家にいなくて。
静かに一日が終わりを迎えようとしている。

「ねーねーシンちゃん。おとーさま帰ってこなかったね。」
「・・・そうだな。」
「人形も置いてどこいったんだろ。今日はシンちゃんの誕生日だったのに!」
「・・・別にいいって。静かに過ごせたんだからよ。それよりグンマ、あんま人形さわんじゃねーよ。警報鳴っちまうだろ!」
「・・・はーい。・・・ねーシンちゃん。この人形さー、いつも思うんだけどフツーじゃないよねー。」
グンちゃんは僕を腕に抱きながらしみじみと言った。
そんなに僕って変?っていうか僕が変なんじゃなくて、作ったパパが変なんじゃないの??
「おい、そりゃ人形が変なんじゃなくて親父が変なんだよ!細工なんかしやがって・・・!!」
「えー?細工したのはシンちゃんでしょ?おとーさまが人形にいたずらして涎たらしてるのが寒気がする!って言って、変なとこ触ったらサイレンが鳴るようにしてその上どこにいるか分かるようにGPSまでつけさせたじゃん。」
「うっ・・・。」
そう、グンちゃんが言うとおり僕には色々細工がしてある。
最初はサイレンだけだったけど、パパが暴漢にあったとか言ってシンタローを何回も僕を使って呼び出すから、終いにはGPSと高性能小型内蔵マイクまでついてる。
だから僕をいつも肌身離さず持っているパパの居場所はすぐ分かるし、僕を通じて会話もできるんだ。
・・・ああ、自分で説明しててなんか悲しくなってきたよ・・・。

「あ、ティラミスからメールだ。えーと、『マジック様は先々代のお墓参りに行っていらっしゃるようです。』だって、シンちゃん。」
「グンマっ、また余計なことしやがって!!あんな奴放っておけばいいんだよ!!」
シンタローが怒鳴ると、何かを堪えているかの様にグンちゃんはそっと呟いた。


「シンちゃん、お父様と向き合わずに逃げてばっかりでいいの?それでいいの?」


シンタローの肩がびくっと揺れる。

「シンちゃんが意地っ張りだなんてよく知ってるし、心で思ってるコトはあんまり口にしないのも分かってるよ?
でも、お父様には」
「もういい」
バンッッ!!
グンちゃんが言い終わらないうちにシンタローは、僕をつかんで外に飛び出した。










シンタローが思ってるコトを口にしないように、パパも本心をあまり口にしない。
シンタローはパパが思ってる以上にパパのことで悩んでいるみたいだし、パパも誰にも見せない悩みを抱えている。
でもね、シンタロー。パパはいつか僕に言ったよ。
『シンタロー、おまえは私が嫌いかい?どんなに強請っても、おまえは私の望む言葉を言ってくれないね。
シンタロー、おまえは呆れているかい?おまえがなにを思って私を見ているのか知っているよ。
でも、こんな弱い私を見せられないでいる。全てを知りたいと思うおまえに、何もかも話せるとどんなにいいか!
しかし私はいつまでたっても臆病者なんだ。ああ、こんなにもおまえを愛しているのに、おまえの愛を信じられないでいる。
私の発した言葉が風に乗って、波の泡に’今’が溶けて、かき消され遠くなっていくけれど。
それでも伝えたい思いがあるから。いつまでも紡いでいくよ。
愛されたい、愛されたい、おまえに・・・。』
赤と紫の混じった涙が出そうなくらい綺麗な夕焼けを背にして、パパはほんの少しだけ、心の欠片をはき出した。
その日は晴れていたのに、なぜか降るはずのない雨がパパの瞼から溢れるのを僕は見た。
だからシンタロー、パパの傍にいてあげて。
二人には幸せになってほしいんだよ・・・。






僕がシンタローの腕に抱かれながらそんなことを考えている間に、墓地についたみたいだ。
シンタローはゆっくりと墓石の前に屈み込んでいるパパに近づいていく。

「・・・おい、アンタなにやってんだよ。」
「ああ、おまえか・・・。」
そういってパパは立ち上がった。
「・・この人形、忘れ物だろ。」
「いや、忘れたわけじゃないさ。置いていったんだから。わざわざ届けにきてくれたのかい?」
「・・・・・。」
シンタローは無言で僕をパパに差し出し、パパはぼくを腕に抱く。
「何してたんだよ、お、俺今日誕生日で・・・!」
「おまえは知らなくていい事だ。」
「・・・・っ!」
パパの拒絶の言葉に、空気が重くなった。
「・・・なんで!なんでアンタはいつもそうなんだよっ!
俺のことは知ろうとするくせに、なんで俺がアンタの事知りたがるとそーやって壁作るんだよっ!!
俺はっ、俺はっ、いつもアンタの事っ・・・・!!!」
「・・・すまない、シンタロー。」
僕を地面に置いて、パパはシンタローをかき抱いた。
二人の姿が暗闇に溶ける。
「言葉が悪かったよ、すまない。私は、私はいつもおまえに強請ってばかりで、おまえの誕生日ぐらい大人しくしていようとふと思ったものだから。
それが逆に不安にさせてしまったね・・・。
ああ、私はおまえの事となると失敗ばかりだ。どうしてだろう。」
「・・・父さん。」
「シンタロー・・・。子供は枯れない花というけれど、おまえはまるでヒマワリだ。まっすぐに太陽に向かって一生懸命に背を伸ばして。
私はそんなおまえの太陽にいつかなれるのだろうか。」
シンタローは返事の代わりにパパに回した腕にぎゅっと力を入れた。
「さあ、帰ろうか。シンタロー。遅い時間にすまなかったね。パパ、おまえにプレゼントをまだ渡していないから。日が変わる前に帰らないと。」
「・・・ん。」
パパは僕を右腕に抱いて、左手でシンタローの手を握る。
シンタローも心なしか力をいれてパパの手を握った。

二人の距離が縮まった。ほんのちょっとだけど縮まった。これから二人はゆっくりと歩み寄っていくんだろう。
こんな素晴らしい日に僕はここに居ることが出来て、とても嬉しい。
僕はいつまでも見守っているから。幸せを願っているから・・・。今度は僕とシンタローとパパの三人で、ゆっくりお昼寝でもしよう?










僕は世界で一番カッコイイ人形。そう、僕の名前はシンタロー。
っていっても、本物のシンタローはちゃんといるよ?
僕を作ったのはシンタローのパパで、裁縫が得意な変態なんだって。(シンタローが前に言ってた)
僕は人形だから喋れないし、シンタローとパパの’確執’なんてよく分かんないけど。
僕、一つだけ知ってることがあるんだよ。
それはね。パパとシンタローがいつまでも愛し合って生きてくってこと。










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