これからがはじまり
今までは殺し屋として君臨していたガンマ団。
サバイバルな男達の群れなそこには女性は殆どいない。
その為か団員には女性との縁がなく、また稀に縁あったとしても相手が『殺し屋』だと知れれば、
たちまち女性は逃げていく。
よって家庭を持つなどと言う者はガンマ団員では非常に小数であったのだが。
しかし今は殺し屋から180度変えた為、相変らず女性職員は少ないものの外で交際が順調にいっている団員が増えたらしく、結婚式の御呼ばれなんかも急激に増えた。
それはそれでとてもめでたい事なのだが、
ここで、どこの企業でも一度は頭を抱えてしまう問題が発生してしまったのだ。
結婚ともなれば次はそう、子どもである。
ベビーブームが到来し、結果、子どもを預かる所謂『託児所』なる場所が出来た。
しかも園長は、
「はいはぁ~~~いvvみずきちゃんはミルク160CCだったよね~~♪」
マジック前総帥その人であった。
総帥の座を息子のシンタロ―に継承した後、はっきり言って彼はかつてない暇を持て余していた。
最初は息子のディスクワ―クなどを手伝おう♪と張り切っていたものだが、当の新総帥本人に、
「この位自分で出来る!!テメエは老後を楽しんできやがれ!!」
と蹴りだされてしまった。シンタローとしてはもっと自分を信用して欲しいのだ。
決してマジックはシンタローの力量を疑っている訳ではなく、むしろその逆なのだが。
可愛い可愛い愛しすぎて困っちゃうvくらい大ッ事な愛息子のお手伝いをして、
少しでも負担を減らしてやりたいなーと思っているだけなのだが。
その後、仕方なしに有り余るほどの書物を読んだりレンタルビデオを借りに行ったり、何やらテレビや新聞、口コミ等で今流行のに手をつけてみたりもしたが、どうもイマイチ楽しめないのだ。
そんな時問題になっていたベビーブームによる育児問題。殺し屋廃業とは言え、
忙しさは変わらない―――いや、180度方向転換をした為以前より更に多忙なのだ。
よって設置された託児所。マジックの提案であった。自ら園長&主任になり結構生きがいを持って
世話をしているらしい。ちなみに殆ど2歳未満の乳児達がこの託児所で過ごしている。
夜も更け、ここ前総帥の寝室ではキングサイズのベッドに二人の男が寄り添って枕を共にしている。
一人はこの部屋の主、もう一人はその息子で現総帥。先程の疲れもあってか、
シンタロ―の瞼は閉じかかっている。マジックは息子の豊かな髪の毛を梳き、背中を宥めるように
摩りながら安眠へと導いていた。ちなみに二人が先程まで何をしていたのかは聞くだけ野暮です(笑)
しかしふと、マジックは思い出したように眠りかけていた息子にある提案をした。
「ねぇ、シンちゃん」
「・・・んだよ」
「シンちゃんもさぁ、数日間託児所で子供達のお世話してみないかい?」
「何でまた」
「シンちゃん今まで託児所に関してはノータッチだったでしょ?」
何事も体験だよvとマジックが畳み込む。それでもどこか渋るような息子に疑問を持つ。
子どもは嫌いじゃない筈―――いや、むしろ子ども好きなシンタロ―だ。渋る理由が見当たらない。
よいせっと身体を起こして溜息をつくシンタロー。
「今、総帥の仕事で手一杯だし・・・」
そうか。納得した。
まだ息子は総帥に就任してから日が浅い。慣れぬディスクワークに四苦八苦しており、ろくに休む時間も取れない。徹夜だって少なくはない。マジックも同じ道を歩んだからこそ十分に分かる。もはや総帥業からは引退したものの、総帥という地位について数十年経っても毎日が目まぐるしく忙しかった。
「だからさ・・・」
無理だと呟くシンタローの額にそっと口付ける。
「くすぐってぇ・・・」
文句を言いながらもクスクスと笑うシンタローにつられるような形でマジックも微笑む。
「大丈夫だよvパパが何とかしてみせるからvv」
「何とかって何だよ」
「シンちゃんは安心してパパに任せてvね?決定v託児所実習vv」
パパが手取り足取り教えてあげるからね~♪と浮かれ気味な父親を見て、シンタローは内心、
―――ただ単に俺と一緒に何かがしたいだけなんだろーけどな、実際。
呆れながらも愛されてると実感するのはこんな時だったりして、
それが妙にくすぐったくて・・・嬉しかったりする。
ばさっ毛布を顔が隠れるくらい被る。トマト顔はあまり見られたくない。
「わぁーった。やるからもう寝るぞ」
「おやすみvシンちゃんvv」
シンタローの毛布を少しはいで、再額に口付ける。
夜明けはまだ遠い・・・。
(シンちゃん一人称)
親父が俺のどっかの短大生のレポートのように溜まりに溜まりまくっている仕事にどう手を回したかは知らんが、託児所実習の日までには結構片付いていた。勿論俺も一生懸命こなしたが、最終日にはまだかなり残ってた筈なんだが・・・。まあいいか、見直してみたけど完璧な出来の書類だったし。
親父に渡されたガンマ団の託児所への地図を片手に歩を進める。総帥だが分からない施設は沢山ある。ここはやたらと広いのだし、建物も殆ど似通っている。
数十分歩いてついた先――――。
「ここが親父のいうガンマ団の施設なんだろうな・・・」
多分・・・・・・いや、絶対。やけに可愛い動物やらお花やらが描かれたその建物は、
周りの無機質さを感じさせる建物とは明らかに異色でかなり浮いているし。
何より【ウエルカムvマジック園】と言うダサ過ぎる園名が入った看板がデカデカと掲げてあるし。
まあ園名はともかく、外見は託児所らしくていいかと、戸に手を掛ける。
「あれ?」
開かないぞ?なんかロックがしているみたいだ。
今日7:45に来る事は親父や働いている職員達は知ってる筈なんだがなー。
ふと見ればインターホン。
「これを押せばいいのか」
さあ押すぞという時に、がちゃっ内側からロックが解除された。
「シンちゃんいらっしゃい♪」
嬉々として現れたのは、黄色を基調とした≪くまのプーさん≫がデカデカとプリントされたプリチ~v
エプロン姿に頭に三角巾を被った育ての父親。片手には小せえ赤ん坊を抱えている。
「ほらカズキ君、シンタローお兄ちゃんにおはようは?ん?」
親父にしっかりと紅葉の手でしがみついている“カズキ君”は暫し俺の顔を物珍しそうに見ていたが、
急に視線を逸らして親父の胸に顔を埋めた。何か泣いてるみたいなんだけど・・・。
俺、そんなに悪人面してっかなぁ・・・。
「嫌われたのかな・・・?」
「ううん、『人見知り』だよ」
「あ、そうか」
そういう時期って幼児期にあるって聴いた事がある。確か前に親父が話したか。
『一歳の頃のシンちゃんはね~、あんまり人見知りはしなかったんだけど、
ハーレムにはいつまで経っても懐かなくって、毎回見た途端に泣き出しちゃって。
あんまりシンちゃんが可哀想だから、暫くの間ハーレムに遠征に行ってもらったんだvv』
と話してたな。(獅子舞が可哀想とは思わないらしい親子)
「ごめんね、シンちゃん。昨日言い忘れてたんだけどいつもドアはロックして、
用がある人はインターホン鳴らさなきゃいけなかったんだ」
「随分と用心深いな」
「大事な預かり者だからねv」
「ふーん」
以前まで人殺しを平気でこなしていた男は、今では育てる側に回ったんだな。
それは俺も同じ事だけど。
てとてととしっかりとした足取りで、二歳近くだと思う女の子が俺の足元に引っ付いてきた。
「だ~~vv」
「この子は俺に人見知りしないんだな」
「そうだね、まだクミコちゃんはあんまり人見知りしないみたいだから」
「ふ~~~ん」
詳しいよな親父。ちょっと以外かもとか思ったが、考えて見なくても納得出来るじゃねぇか。
この男はシンタローとコタロー二人の息子の父親なのだから。
―――って言っても、俺は実子じゃねぇけど。マジックの本当の息子はグンマで・・・・・・。
「シンちゃん?」
「あ、ううん。何でもねぇよ」
「じゃあ早速あそこの部屋―――『観察室』って書いてある部屋が見えるでしょ?
そこの右隣の部屋―――がロッカーあるからそこに荷物置いて着替えてきてね」
着替え終わって(着替えって言っても、親父みたいに三角巾被ってエプロン付けるだけだけど)
うがい手洗い、それから出勤簿に印、と。
「シンちゃ~~~ん。朝会始まるから来てね」
でかい声で遠くから俺を呼ぶな親父!まだ寝てる子どもとかが起きるだろ!
ちなみに俺のエプロンかなり濃いピンクを基調とした≪ハローキティちゃん≫がでっかくプリントされたやつ。言っとくが俺の趣味じゃねえ!昨夜俺が用意したエプロンは薄水色の無印エプロンだった筈・・・・・・・・・・・親父・・・勝手に摩り替えやがったな・・・。
持ってきたリュック開けてみてから気付いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
仕方ねえか、ま、この方が子どもは喜ぶだろうし。
朝会っても、廊下でやるのか。場所的にも子どもが集まってる『歩フク室』ってところで。
そこかの会議室とかでやるんじゃないんだな。
まぁそうか、子どもとかがしっかり視界に入るところに常にいないとなに起こるか分かんねぇし。
朝会内容はかなり細かかった。夜中に預けられる子どもはここで寝泊りで、夜勤者がしっかりと管理してるらしい。寝たらそのまんま起きないで朝まで寝てるって訳じゃねえんだなー。
驚くほど細かく子どものチェックしてる。
朝会終了後からはもう目が回るほど忙しかった!
飯食わせようとすれば逃げるわ泣くわ暴れるわスプーン投げるわ吐き出すわ、
食事だけでもこの調子で、その他もろもろもかなり30人近くの子どもに振り回された。
慣れない手つきで四苦八苦している俺の側には、親父が付きっ切りで、
「離れんか!」
と言ってもニコニコしていて、何がそんなに嬉しいんだか効果なし。
やっと昼寝の時間になって俺達も弁当食い終わった頃、か弱い、
けど・・・何て言うか・・・訴えるような泣き声が聞こえた。
俺は親父の裾を引っぱり泣き声のする部屋を指差す。
「何かあの部屋から独特の泣き声が聞こえんだけど」
「ああ、ミルクの時間か」
『観察室』とプレートが掲げられている一室に眠っているのは真っ赤な顔して泣き叫んでいる、
すっげー小せえ赤ん坊。ホントに顔真っ赤にして泣くんだなー。あ、だから“赤ちゃん”か。
「この子はコウ君、まだ4ヶ月になったばかりなんだよ。まだ首座ってないから気を付けてね」
「なあ、親父。結婚して子どもが出来て、旦那はガンマ団で仕事は分かる。
じゃあ何でこいつらは“ここ”にいるんだ?」
母親がいるだろうが。こんな小さい時期の子どもなら尚更、母親が育ててやるもんじゃねぇのか?何で託児所なんかに預けるのか分からない。まさか育児放棄や捨てられたとかじゃねぇだろーな・・・。
「この子達の“お母さん”達もここで働いてるから」
「はぁ!?」
「シンちゃん・・・総帥なのに知らなかったのかい?」
「う」
「戦闘系じゃないけどね。経理とか事務とかそういう細やかな作業をしてくれてるよ?」
今までは『殺し屋』だったからだろう、女性にはあまり関心の持てないガンマ団だが、心機一転して団員が女性と付き合って、その女性もガンマ団に関心を持ってきて旦那と同じ職場に就職か。
納得したような、でも微妙に複雑な俺の耳に嫌~~な台詞が入ってきた。
「ねえシンちゃん」
「あんだよ」
「こうしてると・・・・・・・・・・・・・・・幸せ家族v育児編vvって感じだよねv」
「死ね。んで、三途の川がホントにあちいか確かめて来い」
「酷いッ!シンちゃんてば」
知るか、アホ。いちいちオーバーリアクションすんじゃねーよ。コウが驚いて哺乳瓶から手ぇ離しちまったじゃねーか。ったく・・・・・・。
「子どもって・・・こんなに世話すんの大変だったのかよぉぉぉ~~~~~~~~;」
いや、以前パプワの世話してた時も大変だったけどな。
ロッカーに手をついてそのままずるずると床に崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。
体力には自信がある俺だが流石に今日一日終わった後はすっげー疲れた。
「ディスクワークばっかで、あんま体動かしてなかった・・・か・・・ら・・・・・・」
・・・・・・あれ?何か引っかかる。
「あっ・・・//////」
・・・体動かしてないっても、親父が夜求めてくると結構動くっていうか体力消耗させられるけど・・・・////////
「何考えてんだよ、俺・・・///////」
やけにリアルに思い出しちまった。やべえ・・・顔が火だる。
「何考えてるのv?」
「何ってナ――――――――――うわああぁぁあああああああああああぁ!!!!!!!!!!!!」
部屋の隅まで後ろ向きですっ飛んだ!!いきなり気配消して超接近するな!親父!!!!!
「見事なほど驚いてくれたね」
「テメエがいきなり現れるからだろ!!!」
「シンちゃん、静かにねv子ども達がびっくりしちゃうし」
ぐぅぅうう・・・。何かすっげー悔しい。正論だが。
「何かシンちゃんが真っ赤になって蹲ってるから、どうしたのかなー?って思ったから、
大丈夫かなーってそっと近付いたんだけど」
「別に何ともねぇよ」
「そうかい?じゃあ帰ろっかvv」
ぱしっ
「何気に俺の肩を引き寄せるな!」
「クスン。シンちゃんってば冷たい・・・」
「うっせえ!」
親父が軽く人差し指を唇に当てる。
「だから静かにってば」
アンタが変な事しなきゃ問題ねえんだよ!!!!(怒)
とにかく今日は疲れた。子ども達は可愛いと思うけど・・・やっぱり第一の感想は『疲れた』だろう。
だってのに!どうしてこのオヤジは元気に求めてくるかな!?今日はゆっくり寝かせろ!
第一アンタだって疲れてるだろうに!!俺以上に子どもの相手やその他こなしてただろ!!
なのに食事と風呂済ませて疲れたから今日は早く寝ようとした瞬間合鍵で扉を開けて、
有無を言わさずアンタの寝室に連れ込まれて!!!はぁ・・・、何されるか分かる事が嫌・・・。
「シンちゃんv“ご飯とデザートは入るところが別腹”って言うの聞いた事ある?」
「それってただ単にもっと食いたいヤツの言い訳だろ」
特に若い?女性が使う(かもしんない)。
「でもね、某B級番組が調べたところによれば、ある女性に胃が満腹なるまで食べてもらったんだけど、デザートを見せた途端に少し胃のスペースが空いたんだよ。
パパもテレビ越しだけど実際見てビックリしちゃった☆★」
「で?それと今俺を押し倒してるっつー状況とどう関係あんだよ」
俺は疲れてるんだ!ヤったらもっと疲れるだろーが。
「つまりね、仕事の疲れとシンちゃんとの愛の行為により生じる疲れは別物vv」
おおぉぉ~~~~~~い!!!!
ふざけんな!!食欲と性欲ごっちゃにしてんじゃねぇー!!!!!!!!!!
「まあ託児所作ったのパパだし、疲れても嫌じゃないんだけどねvシンちゃんは?」
「大変だったけど」
「ケド?」
「全然懐いてくれない子が段々懐いてきてくれたり、抱っこする時乳児とは思えないくらいの力で
ギュって俺にしがみついてくると、頼られてるなって感じて温かい気持ちになるよな・・・」
「そうだね。シンちゃんもあの年の頃パパがいなくなるともう泣きだしっちゃって。で、パパが飛んで
いって抱っこするとピタリと泣き止んで、『もうどこにも行かないでー』って抱きついて」
「STOP!」
「どうしたんだい?」
あんなー、このままアンタの話聞いてたら夜が明けるわ。
俺は早く寝たい。っつー訳で早く自室に帰りたいんだが!?
ぽんっ
???親父の手が俺の両肩に置かれるのは何故だ?
「そうだね。長々と話し込んじゃったらシンちゃんとの熱い夜が明けちゃうよねv」
「だから俺は!んぐっ」
唇塞がれた・・・。
あとは・・・・・・明日起きれっかなー・・・。(現実逃避)
(マジック一人称)
「シンちゃん、起きてる?」
「起きてる・・・」
「あ、何か怒ってる」
「当たり前だ。
明日からまた総帥としての仕事が山のように待ってるってのに無理させやがって・・・」
ブツクサと文句を言う言葉に棘あるなぁ。でも声に張りが無い。
もう精も根も尽きちゃったってやつか。パパなんか、後五か
「STOP」
「え、何が?」
いきなりSTOPって・・・?パパ何も言ってないよ??
「今、物凄くSTOPかけなきゃいけないような気がしたんだよ」
感がいいねぇ・・・シンちゃん。
「そう言えば・・・コタローの事なんだけど・・・」
ぴくっ
あ、やっぱりコタローの事に関しての反応はほかの事よりも敏感に感じるようだ。
「自分でも・・・今までコタローには、随分悲しい想いをさせたと思っている」
シンちゃんは何も言わずに、でも真剣に私の話に耳を傾けてくれていた。
「これからは良い父親になろうと思っている」
「親父・・・」
あ、初めてこっち向いてくれた。――――――――――いかんいかん、今はその話じゃない。
「サービスが・・・コタローには母親が必要じゃないかって言ってね」
「・・・・・・・・・・」
「再婚・・・しようと思うんだ」
困惑した風でもなく、しっかりと私の言葉を受け止めようとする真剣な黒曜石の瞳。
「シンちゃんはどう思うかい?」
「どうって・・・」
「反対?」
「反対はしねーよ。しねーけど・・・」
少し、間が空いた。おずおずとした口調で聞いてくる。
「相手・・・いんのか?」
いるから言ってるんじゃないか。肯定する私にシンちゃんは肩の力を抜いて笑った。
「そっか、おめっとーさん。随分遅い再婚だけどな」
「遅いは余計だよ」
クスクスとベッドで笑い合う。
シンちゃんは頭に手を組んでごろりと枕に頭を預け、天井の薄明かりに目をやる。
「んじゃ、俺も親父に負けてらんねーな。気立てが良くて優しい奥さん見つけねーと」
は?何を言ってるんだ?この子は。
「ちょっと待って!シンちゃん」
「あん?」
「パパの再婚相手はシンちゃんなのに、何でシンちゃんがお嫁さんを探すんだい?」
??????あれ、シンちゃん、まるで鳩が豆鉄砲喰らったような顔してる。
何かおかしな事でも言ったかな。
「ちょ――――――――――――――っと待て!待ってくれよ!!」
「何だいv?」
何かシンちゃんが黒い影背負ってブツブツ言ってる。どうしたのか。
がしっ
まだ暗い顔でシンちゃんが私の肩を掴んできた。どうしたんだろ、さっきから。
あ、もう一回vって言う意思表示vv?(思い込み激しいパパンって若いねv)
「コタローに母親っていう存在が必要なのは分かる!アンタが再婚するのも一向に構わねえ!
で、どうして俺がアンタの嫁になんきゃねんねーんだよ!女にしろ!女!!」
「何でだい?パパはシンちゃんとしか愛せないし・・・」
勿論グンちゃんやコタロー、キンタローは家族の意味で愛してるけど。
「結婚vしようねvv」
「い・や・だ!」
あかんべーするシンちゃんも可愛いなぁ・・・vvでも・・・。
「シンちゃんは私が嫌いかい?」
ここで“パパ”ではなく、“私”というのにはちゃんと意味がある。
だって結婚したらパパじゃなく・・・・・・・・・アレ・・?
「ねえシンちゃん」
「あ?」
「結婚したらパパはシンちゃんの事はシンちゃんのままでいいよね。
でもシンちゃんはパパの事なんて呼べばいいんだろうねぇ」
「知るか!アンタと結婚なんかしねえよ!!」
「じゃあシンちゃんは誰と結婚したいんだい?」
「え・・・・・・」
急にシンちゃんの勢いがぴたりと止まり、絡め合っていた視線が下降する。
口をもごもご小さく動かしているけど、音にならないらしい。
シンちゃん自身どう言いたいのか分かっていないというところだろうか。
しかし、今までシンちゃんは文句を言いながらも私と肌を重ねる事を頑なに拒まなかった。
それは私がシンちゃんを息子として見ているのと同時に、恋人としてみているシンちゃんも私を父親、
そして恋人だと見ていてくれてるのだと、疑う事もなかった。
なのにシンちゃんは違うのかい?私のただの思い過ごしか?幻想夢なのか?シンタロー。
「ほら・・・だってよ!俺もアンタも男だし・・・」
「だから?」
「だからって・・・・・・ええと・・・、ほら!後継者とかどうすんだよ!
俺が結婚してその後を継ぐ子どもとか・・・孫の顔見てぇだろ?」
「後継者は何もシンちゃんの子じゃなくても、いいんじゃないかい?グンちゃんやキンタロー、
コタローだっている。ほら、私の大事な息子は四人もいる。
私は恋愛対象ではシンタローが側にいさえすればそれでいいんだよ」
「・・・・・・・・・・」
そんな思いつめた顔をさせちゃって・・・でも、私ばかりシンちゃんに「好き」「愛してるよ」って
言わせるのはずるくないかい?一度は聞いてみたいじゃないか。結婚願望も勿論本気だよ?
沈黙はどれだけ続いたのだろうか。ようやくシンタローが口を開く、音を紡ぐ。
「俺は・・・」
「うん?」
「・・・・・・・・・・・・わりい・・・もうちょい・・・タンマな・・・」
「分かった。待ってるから・・・もう少しだけ・・・・・・」
ずっと君だけを待ってるよ。
君の心を信じてるよ。
決して私だけの一方通行じゃあないよね?
ねえ・・・シンタロー・・・・・・。
タイムリミットまで・・・あと・・・僅か・・・・・・・・・・・。
END
★あとがき★
ひそか様から頂きました挿絵?四枚のお礼小説マジック×シンタローでした☆★なんか甘いですねー。
ラブラブ書くの苦手なのに・・・。実はこれ、40%くらい実話が入ってます。
妖(あや)は2003年の2月に乳児園に10日間実習に行って来て、この【ウエルカムvマジック園】はそこがモデルです。
実習内容もこんな感じで死にそうでしたよ・・・。
意外と難しかったのはパパンです。口調とか。でもこれでも妖にしたら驚異的なスピードで書き上げました。
(2003・5・2)
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今までは殺し屋として君臨していたガンマ団。
サバイバルな男達の群れなそこには女性は殆どいない。
その為か団員には女性との縁がなく、また稀に縁あったとしても相手が『殺し屋』だと知れれば、
たちまち女性は逃げていく。
よって家庭を持つなどと言う者はガンマ団員では非常に小数であったのだが。
しかし今は殺し屋から180度変えた為、相変らず女性職員は少ないものの外で交際が順調にいっている団員が増えたらしく、結婚式の御呼ばれなんかも急激に増えた。
それはそれでとてもめでたい事なのだが、
ここで、どこの企業でも一度は頭を抱えてしまう問題が発生してしまったのだ。
結婚ともなれば次はそう、子どもである。
ベビーブームが到来し、結果、子どもを預かる所謂『託児所』なる場所が出来た。
しかも園長は、
「はいはぁ~~~いvvみずきちゃんはミルク160CCだったよね~~♪」
マジック前総帥その人であった。
総帥の座を息子のシンタロ―に継承した後、はっきり言って彼はかつてない暇を持て余していた。
最初は息子のディスクワ―クなどを手伝おう♪と張り切っていたものだが、当の新総帥本人に、
「この位自分で出来る!!テメエは老後を楽しんできやがれ!!」
と蹴りだされてしまった。シンタローとしてはもっと自分を信用して欲しいのだ。
決してマジックはシンタローの力量を疑っている訳ではなく、むしろその逆なのだが。
可愛い可愛い愛しすぎて困っちゃうvくらい大ッ事な愛息子のお手伝いをして、
少しでも負担を減らしてやりたいなーと思っているだけなのだが。
その後、仕方なしに有り余るほどの書物を読んだりレンタルビデオを借りに行ったり、何やらテレビや新聞、口コミ等で今流行のに手をつけてみたりもしたが、どうもイマイチ楽しめないのだ。
そんな時問題になっていたベビーブームによる育児問題。殺し屋廃業とは言え、
忙しさは変わらない―――いや、180度方向転換をした為以前より更に多忙なのだ。
よって設置された託児所。マジックの提案であった。自ら園長&主任になり結構生きがいを持って
世話をしているらしい。ちなみに殆ど2歳未満の乳児達がこの託児所で過ごしている。
夜も更け、ここ前総帥の寝室ではキングサイズのベッドに二人の男が寄り添って枕を共にしている。
一人はこの部屋の主、もう一人はその息子で現総帥。先程の疲れもあってか、
シンタロ―の瞼は閉じかかっている。マジックは息子の豊かな髪の毛を梳き、背中を宥めるように
摩りながら安眠へと導いていた。ちなみに二人が先程まで何をしていたのかは聞くだけ野暮です(笑)
しかしふと、マジックは思い出したように眠りかけていた息子にある提案をした。
「ねぇ、シンちゃん」
「・・・んだよ」
「シンちゃんもさぁ、数日間託児所で子供達のお世話してみないかい?」
「何でまた」
「シンちゃん今まで託児所に関してはノータッチだったでしょ?」
何事も体験だよvとマジックが畳み込む。それでもどこか渋るような息子に疑問を持つ。
子どもは嫌いじゃない筈―――いや、むしろ子ども好きなシンタロ―だ。渋る理由が見当たらない。
よいせっと身体を起こして溜息をつくシンタロー。
「今、総帥の仕事で手一杯だし・・・」
そうか。納得した。
まだ息子は総帥に就任してから日が浅い。慣れぬディスクワークに四苦八苦しており、ろくに休む時間も取れない。徹夜だって少なくはない。マジックも同じ道を歩んだからこそ十分に分かる。もはや総帥業からは引退したものの、総帥という地位について数十年経っても毎日が目まぐるしく忙しかった。
「だからさ・・・」
無理だと呟くシンタローの額にそっと口付ける。
「くすぐってぇ・・・」
文句を言いながらもクスクスと笑うシンタローにつられるような形でマジックも微笑む。
「大丈夫だよvパパが何とかしてみせるからvv」
「何とかって何だよ」
「シンちゃんは安心してパパに任せてvね?決定v託児所実習vv」
パパが手取り足取り教えてあげるからね~♪と浮かれ気味な父親を見て、シンタローは内心、
―――ただ単に俺と一緒に何かがしたいだけなんだろーけどな、実際。
呆れながらも愛されてると実感するのはこんな時だったりして、
それが妙にくすぐったくて・・・嬉しかったりする。
ばさっ毛布を顔が隠れるくらい被る。トマト顔はあまり見られたくない。
「わぁーった。やるからもう寝るぞ」
「おやすみvシンちゃんvv」
シンタローの毛布を少しはいで、再額に口付ける。
夜明けはまだ遠い・・・。
(シンちゃん一人称)
親父が俺のどっかの短大生のレポートのように溜まりに溜まりまくっている仕事にどう手を回したかは知らんが、託児所実習の日までには結構片付いていた。勿論俺も一生懸命こなしたが、最終日にはまだかなり残ってた筈なんだが・・・。まあいいか、見直してみたけど完璧な出来の書類だったし。
親父に渡されたガンマ団の託児所への地図を片手に歩を進める。総帥だが分からない施設は沢山ある。ここはやたらと広いのだし、建物も殆ど似通っている。
数十分歩いてついた先――――。
「ここが親父のいうガンマ団の施設なんだろうな・・・」
多分・・・・・・いや、絶対。やけに可愛い動物やらお花やらが描かれたその建物は、
周りの無機質さを感じさせる建物とは明らかに異色でかなり浮いているし。
何より【ウエルカムvマジック園】と言うダサ過ぎる園名が入った看板がデカデカと掲げてあるし。
まあ園名はともかく、外見は託児所らしくていいかと、戸に手を掛ける。
「あれ?」
開かないぞ?なんかロックがしているみたいだ。
今日7:45に来る事は親父や働いている職員達は知ってる筈なんだがなー。
ふと見ればインターホン。
「これを押せばいいのか」
さあ押すぞという時に、がちゃっ内側からロックが解除された。
「シンちゃんいらっしゃい♪」
嬉々として現れたのは、黄色を基調とした≪くまのプーさん≫がデカデカとプリントされたプリチ~v
エプロン姿に頭に三角巾を被った育ての父親。片手には小せえ赤ん坊を抱えている。
「ほらカズキ君、シンタローお兄ちゃんにおはようは?ん?」
親父にしっかりと紅葉の手でしがみついている“カズキ君”は暫し俺の顔を物珍しそうに見ていたが、
急に視線を逸らして親父の胸に顔を埋めた。何か泣いてるみたいなんだけど・・・。
俺、そんなに悪人面してっかなぁ・・・。
「嫌われたのかな・・・?」
「ううん、『人見知り』だよ」
「あ、そうか」
そういう時期って幼児期にあるって聴いた事がある。確か前に親父が話したか。
『一歳の頃のシンちゃんはね~、あんまり人見知りはしなかったんだけど、
ハーレムにはいつまで経っても懐かなくって、毎回見た途端に泣き出しちゃって。
あんまりシンちゃんが可哀想だから、暫くの間ハーレムに遠征に行ってもらったんだvv』
と話してたな。(獅子舞が可哀想とは思わないらしい親子)
「ごめんね、シンちゃん。昨日言い忘れてたんだけどいつもドアはロックして、
用がある人はインターホン鳴らさなきゃいけなかったんだ」
「随分と用心深いな」
「大事な預かり者だからねv」
「ふーん」
以前まで人殺しを平気でこなしていた男は、今では育てる側に回ったんだな。
それは俺も同じ事だけど。
てとてととしっかりとした足取りで、二歳近くだと思う女の子が俺の足元に引っ付いてきた。
「だ~~vv」
「この子は俺に人見知りしないんだな」
「そうだね、まだクミコちゃんはあんまり人見知りしないみたいだから」
「ふ~~~ん」
詳しいよな親父。ちょっと以外かもとか思ったが、考えて見なくても納得出来るじゃねぇか。
この男はシンタローとコタロー二人の息子の父親なのだから。
―――って言っても、俺は実子じゃねぇけど。マジックの本当の息子はグンマで・・・・・・。
「シンちゃん?」
「あ、ううん。何でもねぇよ」
「じゃあ早速あそこの部屋―――『観察室』って書いてある部屋が見えるでしょ?
そこの右隣の部屋―――がロッカーあるからそこに荷物置いて着替えてきてね」
着替え終わって(着替えって言っても、親父みたいに三角巾被ってエプロン付けるだけだけど)
うがい手洗い、それから出勤簿に印、と。
「シンちゃ~~~ん。朝会始まるから来てね」
でかい声で遠くから俺を呼ぶな親父!まだ寝てる子どもとかが起きるだろ!
ちなみに俺のエプロンかなり濃いピンクを基調とした≪ハローキティちゃん≫がでっかくプリントされたやつ。言っとくが俺の趣味じゃねえ!昨夜俺が用意したエプロンは薄水色の無印エプロンだった筈・・・・・・・・・・・親父・・・勝手に摩り替えやがったな・・・。
持ってきたリュック開けてみてから気付いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
仕方ねえか、ま、この方が子どもは喜ぶだろうし。
朝会っても、廊下でやるのか。場所的にも子どもが集まってる『歩フク室』ってところで。
そこかの会議室とかでやるんじゃないんだな。
まぁそうか、子どもとかがしっかり視界に入るところに常にいないとなに起こるか分かんねぇし。
朝会内容はかなり細かかった。夜中に預けられる子どもはここで寝泊りで、夜勤者がしっかりと管理してるらしい。寝たらそのまんま起きないで朝まで寝てるって訳じゃねえんだなー。
驚くほど細かく子どものチェックしてる。
朝会終了後からはもう目が回るほど忙しかった!
飯食わせようとすれば逃げるわ泣くわ暴れるわスプーン投げるわ吐き出すわ、
食事だけでもこの調子で、その他もろもろもかなり30人近くの子どもに振り回された。
慣れない手つきで四苦八苦している俺の側には、親父が付きっ切りで、
「離れんか!」
と言ってもニコニコしていて、何がそんなに嬉しいんだか効果なし。
やっと昼寝の時間になって俺達も弁当食い終わった頃、か弱い、
けど・・・何て言うか・・・訴えるような泣き声が聞こえた。
俺は親父の裾を引っぱり泣き声のする部屋を指差す。
「何かあの部屋から独特の泣き声が聞こえんだけど」
「ああ、ミルクの時間か」
『観察室』とプレートが掲げられている一室に眠っているのは真っ赤な顔して泣き叫んでいる、
すっげー小せえ赤ん坊。ホントに顔真っ赤にして泣くんだなー。あ、だから“赤ちゃん”か。
「この子はコウ君、まだ4ヶ月になったばかりなんだよ。まだ首座ってないから気を付けてね」
「なあ、親父。結婚して子どもが出来て、旦那はガンマ団で仕事は分かる。
じゃあ何でこいつらは“ここ”にいるんだ?」
母親がいるだろうが。こんな小さい時期の子どもなら尚更、母親が育ててやるもんじゃねぇのか?何で託児所なんかに預けるのか分からない。まさか育児放棄や捨てられたとかじゃねぇだろーな・・・。
「この子達の“お母さん”達もここで働いてるから」
「はぁ!?」
「シンちゃん・・・総帥なのに知らなかったのかい?」
「う」
「戦闘系じゃないけどね。経理とか事務とかそういう細やかな作業をしてくれてるよ?」
今までは『殺し屋』だったからだろう、女性にはあまり関心の持てないガンマ団だが、心機一転して団員が女性と付き合って、その女性もガンマ団に関心を持ってきて旦那と同じ職場に就職か。
納得したような、でも微妙に複雑な俺の耳に嫌~~な台詞が入ってきた。
「ねえシンちゃん」
「あんだよ」
「こうしてると・・・・・・・・・・・・・・・幸せ家族v育児編vvって感じだよねv」
「死ね。んで、三途の川がホントにあちいか確かめて来い」
「酷いッ!シンちゃんてば」
知るか、アホ。いちいちオーバーリアクションすんじゃねーよ。コウが驚いて哺乳瓶から手ぇ離しちまったじゃねーか。ったく・・・・・・。
「子どもって・・・こんなに世話すんの大変だったのかよぉぉぉ~~~~~~~~;」
いや、以前パプワの世話してた時も大変だったけどな。
ロッカーに手をついてそのままずるずると床に崩れ落ちるようにしゃがみ込んだ。
体力には自信がある俺だが流石に今日一日終わった後はすっげー疲れた。
「ディスクワークばっかで、あんま体動かしてなかった・・・か・・・ら・・・・・・」
・・・・・・あれ?何か引っかかる。
「あっ・・・//////」
・・・体動かしてないっても、親父が夜求めてくると結構動くっていうか体力消耗させられるけど・・・・////////
「何考えてんだよ、俺・・・///////」
やけにリアルに思い出しちまった。やべえ・・・顔が火だる。
「何考えてるのv?」
「何ってナ――――――――――うわああぁぁあああああああああああぁ!!!!!!!!!!!!」
部屋の隅まで後ろ向きですっ飛んだ!!いきなり気配消して超接近するな!親父!!!!!
「見事なほど驚いてくれたね」
「テメエがいきなり現れるからだろ!!!」
「シンちゃん、静かにねv子ども達がびっくりしちゃうし」
ぐぅぅうう・・・。何かすっげー悔しい。正論だが。
「何かシンちゃんが真っ赤になって蹲ってるから、どうしたのかなー?って思ったから、
大丈夫かなーってそっと近付いたんだけど」
「別に何ともねぇよ」
「そうかい?じゃあ帰ろっかvv」
ぱしっ
「何気に俺の肩を引き寄せるな!」
「クスン。シンちゃんってば冷たい・・・」
「うっせえ!」
親父が軽く人差し指を唇に当てる。
「だから静かにってば」
アンタが変な事しなきゃ問題ねえんだよ!!!!(怒)
とにかく今日は疲れた。子ども達は可愛いと思うけど・・・やっぱり第一の感想は『疲れた』だろう。
だってのに!どうしてこのオヤジは元気に求めてくるかな!?今日はゆっくり寝かせろ!
第一アンタだって疲れてるだろうに!!俺以上に子どもの相手やその他こなしてただろ!!
なのに食事と風呂済ませて疲れたから今日は早く寝ようとした瞬間合鍵で扉を開けて、
有無を言わさずアンタの寝室に連れ込まれて!!!はぁ・・・、何されるか分かる事が嫌・・・。
「シンちゃんv“ご飯とデザートは入るところが別腹”って言うの聞いた事ある?」
「それってただ単にもっと食いたいヤツの言い訳だろ」
特に若い?女性が使う(かもしんない)。
「でもね、某B級番組が調べたところによれば、ある女性に胃が満腹なるまで食べてもらったんだけど、デザートを見せた途端に少し胃のスペースが空いたんだよ。
パパもテレビ越しだけど実際見てビックリしちゃった☆★」
「で?それと今俺を押し倒してるっつー状況とどう関係あんだよ」
俺は疲れてるんだ!ヤったらもっと疲れるだろーが。
「つまりね、仕事の疲れとシンちゃんとの愛の行為により生じる疲れは別物vv」
おおぉぉ~~~~~~い!!!!
ふざけんな!!食欲と性欲ごっちゃにしてんじゃねぇー!!!!!!!!!!
「まあ託児所作ったのパパだし、疲れても嫌じゃないんだけどねvシンちゃんは?」
「大変だったけど」
「ケド?」
「全然懐いてくれない子が段々懐いてきてくれたり、抱っこする時乳児とは思えないくらいの力で
ギュって俺にしがみついてくると、頼られてるなって感じて温かい気持ちになるよな・・・」
「そうだね。シンちゃんもあの年の頃パパがいなくなるともう泣きだしっちゃって。で、パパが飛んで
いって抱っこするとピタリと泣き止んで、『もうどこにも行かないでー』って抱きついて」
「STOP!」
「どうしたんだい?」
あんなー、このままアンタの話聞いてたら夜が明けるわ。
俺は早く寝たい。っつー訳で早く自室に帰りたいんだが!?
ぽんっ
???親父の手が俺の両肩に置かれるのは何故だ?
「そうだね。長々と話し込んじゃったらシンちゃんとの熱い夜が明けちゃうよねv」
「だから俺は!んぐっ」
唇塞がれた・・・。
あとは・・・・・・明日起きれっかなー・・・。(現実逃避)
(マジック一人称)
「シンちゃん、起きてる?」
「起きてる・・・」
「あ、何か怒ってる」
「当たり前だ。
明日からまた総帥としての仕事が山のように待ってるってのに無理させやがって・・・」
ブツクサと文句を言う言葉に棘あるなぁ。でも声に張りが無い。
もう精も根も尽きちゃったってやつか。パパなんか、後五か
「STOP」
「え、何が?」
いきなりSTOPって・・・?パパ何も言ってないよ??
「今、物凄くSTOPかけなきゃいけないような気がしたんだよ」
感がいいねぇ・・・シンちゃん。
「そう言えば・・・コタローの事なんだけど・・・」
ぴくっ
あ、やっぱりコタローの事に関しての反応はほかの事よりも敏感に感じるようだ。
「自分でも・・・今までコタローには、随分悲しい想いをさせたと思っている」
シンちゃんは何も言わずに、でも真剣に私の話に耳を傾けてくれていた。
「これからは良い父親になろうと思っている」
「親父・・・」
あ、初めてこっち向いてくれた。――――――――――いかんいかん、今はその話じゃない。
「サービスが・・・コタローには母親が必要じゃないかって言ってね」
「・・・・・・・・・・」
「再婚・・・しようと思うんだ」
困惑した風でもなく、しっかりと私の言葉を受け止めようとする真剣な黒曜石の瞳。
「シンちゃんはどう思うかい?」
「どうって・・・」
「反対?」
「反対はしねーよ。しねーけど・・・」
少し、間が空いた。おずおずとした口調で聞いてくる。
「相手・・・いんのか?」
いるから言ってるんじゃないか。肯定する私にシンちゃんは肩の力を抜いて笑った。
「そっか、おめっとーさん。随分遅い再婚だけどな」
「遅いは余計だよ」
クスクスとベッドで笑い合う。
シンちゃんは頭に手を組んでごろりと枕に頭を預け、天井の薄明かりに目をやる。
「んじゃ、俺も親父に負けてらんねーな。気立てが良くて優しい奥さん見つけねーと」
は?何を言ってるんだ?この子は。
「ちょっと待って!シンちゃん」
「あん?」
「パパの再婚相手はシンちゃんなのに、何でシンちゃんがお嫁さんを探すんだい?」
??????あれ、シンちゃん、まるで鳩が豆鉄砲喰らったような顔してる。
何かおかしな事でも言ったかな。
「ちょ――――――――――――――っと待て!待ってくれよ!!」
「何だいv?」
何かシンちゃんが黒い影背負ってブツブツ言ってる。どうしたのか。
がしっ
まだ暗い顔でシンちゃんが私の肩を掴んできた。どうしたんだろ、さっきから。
あ、もう一回vって言う意思表示vv?(思い込み激しいパパンって若いねv)
「コタローに母親っていう存在が必要なのは分かる!アンタが再婚するのも一向に構わねえ!
で、どうして俺がアンタの嫁になんきゃねんねーんだよ!女にしろ!女!!」
「何でだい?パパはシンちゃんとしか愛せないし・・・」
勿論グンちゃんやコタロー、キンタローは家族の意味で愛してるけど。
「結婚vしようねvv」
「い・や・だ!」
あかんべーするシンちゃんも可愛いなぁ・・・vvでも・・・。
「シンちゃんは私が嫌いかい?」
ここで“パパ”ではなく、“私”というのにはちゃんと意味がある。
だって結婚したらパパじゃなく・・・・・・・・・アレ・・?
「ねえシンちゃん」
「あ?」
「結婚したらパパはシンちゃんの事はシンちゃんのままでいいよね。
でもシンちゃんはパパの事なんて呼べばいいんだろうねぇ」
「知るか!アンタと結婚なんかしねえよ!!」
「じゃあシンちゃんは誰と結婚したいんだい?」
「え・・・・・・」
急にシンちゃんの勢いがぴたりと止まり、絡め合っていた視線が下降する。
口をもごもご小さく動かしているけど、音にならないらしい。
シンちゃん自身どう言いたいのか分かっていないというところだろうか。
しかし、今までシンちゃんは文句を言いながらも私と肌を重ねる事を頑なに拒まなかった。
それは私がシンちゃんを息子として見ているのと同時に、恋人としてみているシンちゃんも私を父親、
そして恋人だと見ていてくれてるのだと、疑う事もなかった。
なのにシンちゃんは違うのかい?私のただの思い過ごしか?幻想夢なのか?シンタロー。
「ほら・・・だってよ!俺もアンタも男だし・・・」
「だから?」
「だからって・・・・・・ええと・・・、ほら!後継者とかどうすんだよ!
俺が結婚してその後を継ぐ子どもとか・・・孫の顔見てぇだろ?」
「後継者は何もシンちゃんの子じゃなくても、いいんじゃないかい?グンちゃんやキンタロー、
コタローだっている。ほら、私の大事な息子は四人もいる。
私は恋愛対象ではシンタローが側にいさえすればそれでいいんだよ」
「・・・・・・・・・・」
そんな思いつめた顔をさせちゃって・・・でも、私ばかりシンちゃんに「好き」「愛してるよ」って
言わせるのはずるくないかい?一度は聞いてみたいじゃないか。結婚願望も勿論本気だよ?
沈黙はどれだけ続いたのだろうか。ようやくシンタローが口を開く、音を紡ぐ。
「俺は・・・」
「うん?」
「・・・・・・・・・・・・わりい・・・もうちょい・・・タンマな・・・」
「分かった。待ってるから・・・もう少しだけ・・・・・・」
ずっと君だけを待ってるよ。
君の心を信じてるよ。
決して私だけの一方通行じゃあないよね?
ねえ・・・シンタロー・・・・・・。
タイムリミットまで・・・あと・・・僅か・・・・・・・・・・・。
END
★あとがき★
ひそか様から頂きました挿絵?四枚のお礼小説マジック×シンタローでした☆★なんか甘いですねー。
ラブラブ書くの苦手なのに・・・。実はこれ、40%くらい実話が入ってます。
妖(あや)は2003年の2月に乳児園に10日間実習に行って来て、この【ウエルカムvマジック園】はそこがモデルです。
実習内容もこんな感じで死にそうでしたよ・・・。
意外と難しかったのはパパンです。口調とか。でもこれでも妖にしたら驚異的なスピードで書き上げました。
(2003・5・2)
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