草木も眠る丑三つ時、世界最強の殺し屋集団を一代にして制裁集団に変えたカリスマ総帥の寝所に忍び寄る黒い影…
「んっふっふ~今夜は絶好の夜這い日和だねぇ。」
ときめき☆midnight
夜に日和はどうかと思うのもそっちのけでこれから始まるであろう息子とのめくるめく時間におピンク妄想を繰り広げるスーツもピンクなマジック元総帥。
音も立てずにスキップでようやく目的の寝室に入った。視線の先にはキングサイズのベッドとシーツの膨らみ。
(こういうシチュエーションもそそるねぇ…)
寝顔をじっくり見ようといそいそとベッドに近づき、シーツに埋もれた髪を手にとる。
「…フフフ。パパの大好きなこの黒い……」
あれ?
「黒…くなくて…これは…金髪?」
そんなはずは!と、頭までかかったシーツをはぎ取るとそこにいたのは
(キッ、キンタロ─────!!)
そう、そこにはシンタローではなく従兄弟のキンタローがすぴすぴと眠っていたのだった。
(…どういうことだ?シンちゃんはいったいどこに?)
落ちついてよく見るとキンタローの横、マジックのいる方とは反対側に艶やかな黒髪を散らした愛しのシンタローがキンタローに寄り添うように寝ていた。
しかもシーツからのぞく肌は何も身につけてない。
「……もしかして、私はとんでもない現場に遭遇してる?」
ワナワナと震える体を抑え、目を凝らしてよくみればキンタローもシーツからみえる上半身に何も身につけていない。
これって…
これって……!!
「おのれキンタロォォォォ!!!私の可愛いシンタローに何をしたぁぁぁぁぁぁ!!」
マジックのあまりの怒りに秘石眼が煌めき、部屋が激しく揺れた。
「……ん…なんだ?…何が起きた?」
その衝撃で目を覚ましたキンタローをマジックが恐ろしい目付きで睨みつける。
「きぃ~ん~たぁ~ろぉ~そうか…お前が私の最大の敵だったのか……」
なんだかどこかで聞いたことがあるような言ったことがあるような台詞に眉をひそめながらも、どうしてそんなに怒っているのかとか、そもそもなんでマジック伯父貴がここにいるのかとか、とにかくいろいろなことが一気に押し寄せてキンタローは困惑した。が、なんとか言葉を絞り出す。
「…何をそんなに怒っているんだ?」
「この後に及んでまだとぼける気か…いい度胸だな。」
両眼にに凶々しい青い光を秘めながらドス黒いオーラを纏ってマジックが近づいてくる。流石にマズイと思ったところで隣りで眠るシンタローがようやく起き出した。
「…なんだ…うっせぇな……………親父…?」
「シンタロー…どいていなさい。お前とは後でゆっくりと話をしようじゃないか。」
そう言うマジックの顔は笑っているが目が完全に据わっている。なんだなんだなんなんだ!マジックの尋常でない様子に一気に目が醒める。とにかく止めなければ血みどろの争いになりかねない。シンタローはベッドから飛び起きて上半身を起こしただけのキンタローとマジックの間に立ちはだかる
「……………」
「………なんだよ。一体どうしたってんだよ。」
「………シンちゃん…パンツはいてるの?」
「はぁ?!」
確かにシンタローはいつものバジャマ代わりの黒いボクサーパンツを穿いている。
ベッドから這いでてきたキンタローもよくみれば下はパジャマを着ている。
「……………ひょっとして…パパの勘違い?」
「なにがだよ!!!」
「いっやぁ~パパったらお前とキンタローが一つのベッドに枕が二つで寝てるもんだからパパの知らないうちに破廉恥な行為に及んだのかと思っちゃった☆」
「はぁぁぁぁぁ?」
「しかしどうしてキンちゃんがここにいるんだい?そんなだからパパ誤解しちゃったよ。」
そんなマジックの疑問に今まで黙って二人のやりとりを見ていたキンタローが口を開いた。
「怖ろしい夢をみたんだ。」
「俺が研究棟の仮眠室で寝ていると高松が寝顔を見にやってきて鼻血を大放出するんだ。そして余りに大量の鼻血はそのまま仮眠室を埋め尽くし、しまいには研究棟すべてが鼻血によって浸水し、沢山の死傷者を出す大惨事になる。そんな夢をみた。俺はその夢が余りにも現実に起こりそうだったので怖くなって本邸のシンタローの部屋で寝ることにした。」
「屋敷にあるキンタローの部屋はすでに3日前に鼻血まみれになって今使えねぇだろ?だからだよ。」
「なぁんだそうだったのか☆ハッハッハ。まぁこんな誤解もたまにはあるよね~」
「ね~」なんてかわいらしく首をかしげても、この乾いた雰囲気はどうにもならない。
「………今度はこっちが質問なんだけどよォ。なんであんたが俺の部屋にいるわけ?」
「それは勿論シンちゃんの可愛い寝顔を見て、ついでに襲っちゃおうかな~なんて…」
「ほぉぉ~……」
「あれ?シンちゃんもキンちゃんもどうしたんだい?そんな怖い顔して─────」
「「Wガンマ砲───────────!!」」
夜空に新たな星が生まれたのを確認するとシンタローは無惨に穴のあいた自室を見回した。
「ったく、しょうがねぇなあ~この部屋も駄目になっちまったじゃねえか。」
「グンマの処にいくか?」
「…そうすっか。」
そうして夜は更けてゆく。
しかしこの時マジックは不覚にも気がつかなかった。
いくらなんでも野郎二人が肌を寄せ合うかとか、
「この俺が、いいかこの俺ともあろうものがマジック伯父貴にバレるような場所で犯るとでも思うのか?」と呟いていたことに。
2004/
BACK
PR