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「ねぇねぇキンちゃん。さっき、コタローちゃん位の男の子が居たんだけど。」
キョロキョロと辺りを見渡すグンマ。
手には自分の大好きなお菓子をにぎりしめている。
「男の子?ここは化学室だぞ?いいか、化学室とはな、グンマ…」
その隣には、グンマと同じ金髪碧眼の従兄弟キンタロー。
白衣の下から除かせるスーツもビシッ!と決まっている。

話が長くなりそうな事を悟ったグンマは、難しい話も嫌いなので、話を中断させよう。
この、華奢ではあるが、青の一族であるグンマも、こうゆう時は俺様性質、もとい、我が儘を発揮する。
「もぉ~!!そんな事はわかってるよぉ~!そうじゃなくって、本当に男の子が居たんだよぉ~!」
ぷぅっと頬を膨らませ、腕を腰に翳し、怒った顔をするが、キンタローは無反応。
それにますます怒ってみたものの、自分にはどうすることもできないと諦めて、グンマは軽いため息を吐いた。










「た、高松め!」
少し高いトーンの声。
10代前半、少年特有の華奢な体。
金髪碧眼で、クラッシックな白いブラウスに、サスペンダー付きの黒いタンパンを身に纏う美少年が、ドクターに悪態をつきながら、一目を避けながら自室へと向かっている。
ちなみにココは一族の自室が揃っているフロア。
美少年は、一目散に自室へ向かう。
たどり着いた先は、真っ赤なゴージャスドア。
ポケットからカードを取り出しロックを解除した後、二段重ねの網膜のロックも解除する。
“警備を解除しました”というアナウンスと同時に、プシュンという機械音が鳴り、ドアが開いた。
美少年は、トタトタと部屋に入り、又鍵をかけた。

「どうしよう…。」

部屋に着いた途端、美少年は、うなだれるようにベッドに倒れ込んだ。
そして、おもむろに自分の掌を眺める。
小さい艶の良い手がそこにあって。
美少年は、はぁ~、と、重い溜息をついた。
そして、シーツに顔を埋める。
グズグズと、鼻を啜る音がして、シーツに涙をこすりつける。

「こんな姿、シンちゃんに見せられないよ…。」

美少年の正体は、マジックだった。
マジックは、先程自分の身に起きた不幸を思い出す。あれは、高松が植物の細胞を活性化させ、より長く花が咲き誇れるという薬を作ったという報告を受けた時に至る。


自室に、もう殆ど使われていない、軍用の電話回線。
今、この電話回線を使いマジックに電話をかけてくる人間は3人。
そのうちの2人は、マジックが総帥時代からの秘書であり、自伝書を書いたにあたって、ファンクラブを切り盛りしてくれているティラミスと、チョコレートロマンス。
そして最後の1人は、末っ子の悪友、実子の育ての親、マッドサイエンティスト、ドクター高松である。
『マジック様!長年研究していた花の寿命を延ばす研究の事なんですが、ついに完成致しました!!これでノーベル賞もいただきですよ…ふ、ふふ』
そんな研究していたんだ。と、マジックは他人事のように思った。
シンタロー以外余り興味のないマジックは、どーでもいいらしく、高松の話は右から左。
しばらく、余程嬉しかったのか長い高松の話をうんうんと聞いてやっていると。
『そういえば、シンタロー総帥が指令室に花が欲しいって言ってたと、以前グンマ様と、キンタロー様が言っておりました。』
ピクン!
マジックの耳が“シンタロー”に反応を示す。

シンちゃんてばそーなんだ。言ってくれれば、パパいっぱいいっぱいいーっぱい、そりゃもう毎日お花をお前の元に持って行くのに。シンちゃんの好きなお花パパ知ってるし、それともパパの好きなお花でもいいしね。

『もしもし、もしもぉし、マジック様?』
『高松、今から暇だし行ってみるよ。』
『え?あ、ハイ解りました。』
チン!と、電話を切る。
その長い間咲くバイオフラワーを貰ってシンタローの部屋や、指令室に持っていこう。
シンタローの顔を24時間見つめていたいマジックは、少しでもシンタローの側に居たくてウズウズしている。
そこにでてきた朗報に思わず飛び付く。
ルンタッタと、足取りも軽く、軽やかに、鼻歌なんぞ歌いながら、マジックは自室を出た。











「マジック様、さぁさぁこちらですよ!」
高松の研究室へ着くと、鼻息も荒く高松がいきなり現れて、マジックはちょっと引いた。
彼の研究熱心さは学生の頃からで、すぐ下の次男、ルーザーも、彼の事を褒めていた事を思い出す。
中へ入ると、むせ返るばかりの甘ったるい匂いと、美しい華々。

一つの品種だけでなく、花ならどんな品種でも使えるんです。

後ろから高松がそう説明する。
マジックは、とりあえずシンタローに似合いそうな花を選んだ。


やっぱり、シンちゃんって言ったら赤だよネ。黒い花なんてないしネ。白もいいなぁ捨て難い。汚れを知らない無垢な感じで…。
赤だとすると、薔薇かスイートピーかチューリップだなぁ。花言葉が永遠の愛って所がイイよね。…やっぱり薔薇かな。白でベビーブレス付けて…無難だけど。

「ドクター、このバイオフラワーを貰えるかい?」
クルリと振り向いてそう尋ねると、高松は、ただ今、と言って、花切りハサミを取り出した。
「蕾も入れますか?」
「そうだね、その方が見栄えがいい。」
パチン、パチンと、花を切っている高松。
花を切る事は彼に任せて、マジックはせっかくだからということで室内をぐるりと、回ってみた。
そこに気になる物を発見!
綺麗なビー玉のような色をした液体が、バイオフラワーの中心部分に置いてある。
恐らくそれが研究の結果の完成品なのだろう。
マジックがそれに手を出した時、高松がマジックを呼ぶ声がした。
ひょいと見ると、今、正にマジックが自分の作った完成品を触ろうとしている所で。
「マジック様危ない!!」
咄嗟に叫んだが、マジックはその瞬間驚いて、液体をもろに被ってしまった。
ガッチャーン!!と透明の器の割れる音と共に、白い煙りがもくもくと舞い上がる。
「げほ、げほっ!高松ッッ!!何なんだこれは!」
中から甲高い少年特有の声。
白い煙りが納まり、高松が目にしたのは、愛くるしい美少年。
「…マジック様…?」
高松は呆然とその光景を見た後、歓喜に震えた。
「すっっ素晴らしい!!この薬品は、被れば人間を若返らせる事が可能なのか!これこそノーベル賞は戴きですね!!」
ぱああ!と、未来が開けた顔をして、さっさと作業に取り掛かる。
マジックが元に戻る薬はあるのかと聞くが、まったくもって耳に入らない様子。
タボダボのスーツを引きずりながら、マジックは取り敢えず服を探そうとした。
「マジック様、私の机の一番下の引き出しにグンマ様の昔来ていた服がありますのでどうぞ。」
さっきまで人の話を聞いていなかったくせに、そんなどうでもよい事は気が回るらしい。
「どうも。」
ふて腐れたように返事だけをして、グンマのお古の服を着た。

そして、現在に至る。

高松は、今、キンタローや、グンマと一緒の研究室ではない。
高松の口から二人にばれて、シンタローの耳に入る事はないだろう。

だがしかし。
シンタローにばれるのも時間の問題である。
「あああ…。」
マジックは、本日二度目の溜息をついた。
彼の心境は、かなり複雑である。
シンタローに会いたい事は会いたい。
でも、受け入れてくれなかったら?
シンタローに拒絶されるのが何よりマジックは、怖かった。
「シンちゃぁん…」
子供に戻ったせいか、涙腺が緩い。
ぐしぐしとマジックは、シーツで涙を拭った。









「ホントなんだよぉ、シンちゃん!コタローちゃんと同じ位の男の子が居たんだってばぁ!」
総帥室に用があったグンマとキンタロー。
グンマは先程見た男の子の話をする。
「座敷童じゃないのか?」「そーか、座敷童か。そんなん出たら、ウチは安泰だナ。」
「んもう!シンちゃんもキンちゃんも僕の話信じないんだからぁ!」
ぷくーっとふくれてみせるが、誰一人としてグンマの話を真剣に聞かない。
「…でも、ホントーに座敷童だったらどうしよぉ~!怖くて眠れないよぉ~…。」
グンマがべそをかきはじめた。
そして、チラチラと、シンタローとキンタローを交互に見る。
どうやら一人で寝られないので、誰かと一緒に寝ようと考えたらしい。
「ねー、シンちゃ…」
「嫌だ。」
間髪入れずシンタローが即答する。
また涙目になるグンマ。
「キンちゃん。」
「何だ!」
「今日、一緒に寝ようよぉ~」
「別にかま…」
「オイ!キンタロー!!あんまりグンマを甘やかすなヨ!モォ、コイツだって俺達と同じ28なんだぞ。グンマの為にも良くない!」
キンタローが肯定しようとした所、またもや間髪入れずシンタローが止めた。
グンマはグシグシと泣いて、
「シンちゃんだって、昔は怖がって一緒に寝たじゃない…」
と、悔し紛れに小声で言った。
「昔は昔!今は今!!つーか、そんなガキの時の話、今もちだすなヨ!」
ゴチン!
ゲンコツでグンマの頭を叩く。
「びぇえぇん!!シンちゃんがぶったぁ~!!」
昔と変わらないやり取り。
キンタローはヤレヤレと、この、二人の従兄弟に溜息をついたのだった。
「ふんだ!シンちゃんのおこりんぼ!お化けなんか僕の所じゃなくて、シンちゃんの所に出るからね!!」
負け惜しみとも取れるグンマの言い分に、シンタローは、フン!と、鼻息を吐く。
「バーカ!もし出たら捕まえて見世物にしてやらぁ!!」
イーダ!と、シンタローは口に手を突っ込んで歯を見せる。


それを見たグンマは、悔しくて何かを言い返したいが、何を言い返したら良いか頭の中で整理がつかなくて、結局おっきな瞳に涙を溜めて、傍若無人のシンタローの扱いに黙って耐えるしかなかった。
「時にシンタロー。今日は帰ってこれるのか?」
そんな空気の中、所構わず我が道を行くキンタローは、話をいきなり反らした。
彼はこの二人のやり取りがただじゃれているだけだということが解っている。
その為、さっさと自分の用件を済まそうと考えた。
「ああ。今日は特に用事がねぇからナ。あそこの書類に目を通したら終わりだ。」
親指で、自分のディスクに乗っている書類を指す。
量はそこそこあるが、シンタローの仕事のできを見ればすぐに終わる量だ。
「おとーさま、きっと、すっっごく喜ぶよぉ!」
さっきまで泣いていたくせに、もう笑顔でシンタローに話し掛けるグンマ。
なんだかんだ言って、グンマはシンタローが大好きなのだ。
今日は寝る前にシンタローが見れると思ったら、嬉しくなったのだろう。
馬鹿は開き容量が少ないからさっきの事は忘れてんだなとか、シンタローはグンマに対してかなり失礼な事を心の中で思った。











「シンちゃん、今日は早く帰ってきちゃうのかなー。」
一方のマジックは、ベッドから既に立ち上がり、自室をウロウロしていた。
涙は既に止まっていて、顎に手を当てて考えている。
先程から何度も鏡を見たが、幼い時の自分の顔しか写らない。
ウロウロしながら、紅茶を注いで飲んでみる。
落ち着こうとしているのだが、落ち着かない。
「ふー…紅茶は、ローズヒップティーに限る。ダイエットにも最適☆」
………しーん。
明るく振る舞おうとすればするほど、奈落に落ちていく感じがした。
「とりあえず、半ズボンは良くないヨネ、お腹冷えるし…コタローの服あったかな…。」
ガサガサと、クローゼットの奥の方を捜す。
きらびやか、豪華絢爛のスーツの奥のほうに、小さな服発見!
グイッ!と、両手で引っ張りあげる。
出てきたのはコタローの服ではなく、シンタローの小さい時の服。
しかも、自分の趣味でタンパンしか穿かせていなかった為、長いズボンはない。
ガックリうなだれるマジック。
こうなれば、もう、頼みの綱は高松しか居ない。
マジックは高松に電話をかけてみた。


トゥルルル、トゥルルル…。
出ない。
「何をやっているんだ高松!!」
焦りのせいか、語尾がやけにキツイ。

早くしなきゃ、シンちゃんが帰ってきちゃうよ!むしろ、帰ってきたシンちゃんに会えないじゃないか!これは死活問題だよ!!

何度目かの呼び鈴で、マジックは諦め、受話器を乱暴に置いた。
すっかり冷めてしまった紅茶と、カップを片付けて豪華な椅子に座る。
そして、机の上につっぷすのだった。











「ふぃー!終わったァ!!」
椅子に座ったまま伸びをし、シンタローはトントンと、肩を叩く。
やっぱり自分にはディスクワークには向かないナとしみじみ思う。
こんな事より前線で、体を動かした方がイイと、いつも思う。
だが、総帥という立場に着いたのだから、我が儘も言っていられない。
ガタンと立ち上がり、少し早めにキリ上がった為、グンマとキンタローを迎えに研究室へと向かおうと、足を延ばした時、
「シンちゃん、終わったぁ?」
グッドタイミングでグンマとキンタローが入ってきた。
「おぉ。今終わった所だ。」
「そっかぁ、良かった!」
ニコニコとシンタローに笑いかける。
キンタローも少しだけ表情を緩ませた。

「今日の夕ご飯何だろうね~?」

三人で肩を並べて歩いていく。
すれ違う人々は恐れ、時には崇拝し、三人に敬礼、又はお辞儀をした。
一族の人間が三人も居れば、かなり爽快だろう。
「俺は何でも構わない。伯父貴の作る料理は何でも旨いからな。」
「アハハ、そぉだね~。」
一族専用のフロアへと続く為に作ったエレベーターに乗り、三人は食堂へと足を運ばせた。
シンタローも口には出さないが、マジックの作る手料理は大好きで。
今日の夕食も楽しみにしていた。

あー、このドア開けたらゼーッタイ親父が居て、ウザイんだろーナ。

プシュン、と機会音がし、食堂に入るが、マジックの気配はない。
むしろ、料理の形跡もない。
楽しみにしていたのに、それが裏切られて、三人は少々うなだれた。
「あンの馬鹿親父!暇人の癖に、なーんにもやってねーのかよ!!」
少しムッとしながら、シンタローはキッチンへと入って行った。
「シンちゃ~ん…。」
「シンタロー…。」
お腹が空いたよ、と、言わんばかりに二人に見つめられて、シンタローは上着を脱ぎ、冷蔵庫を開ける。
「わーったわーった!今作るからそれまで少し待ってろ!」

「ワーイ!僕、シンちゃんの作るご飯もだ~い好きだよぉ~!」
「ウム。俺も好きだ。」
そう。料理が趣味なだけあって、シンタローはかなり料理が上手い。
もう、プロ顔負けなのである。
「腹減ってるし、パエリアでいっか。」
そう言って、パエリア用のプレートを出し、火を点ける。
プレートがあったまるまでニンニクをみじん切りにしておく。
そして、ツマミではないが、野菜を切って、オリーブオイル、醤油、胡椒、大根おろしでドレッシングを作り、上からノリをハサミで切ってまぶし、サラダを作った。
「出来上がるまでコレ食ってろ。」
マジックの分は、少し取っておいて、残りを従兄弟に渡す。
「ワーイ!いただきまーす!」
「いただこう。」
フォークを持って万歳するグンマと、手を合わせるキンタロー。
小皿にサラダを乗っけて二人で仲良く食べていた。
そんな二人をほほえましく思いながら、シンタローは、パエリアを作り始めた。
熱くなったプレートの上にオリーブオイルを入れ、その後、焦がさないようにニンニクを炒める。
香ばしい匂いが食欲をそそる。
そして、生米を入れて、お湯で溶かしたブイヨンを入れて、先ほど冷蔵庫にあった海老やイカ等の海鮮類とパプリカを綺麗に並べた。

「ねぇ、キンちゃん、シンちゃん、おとーさまが居なくて、結構焦ってるね。」
あくまでシンタローに聞こえないようにポソポソしゃべる。
「そうだな。時間短縮めいた事を言いながら、何故時間のかかるパエリアを選んだのかが一番ひっかかるしな。」
だよねぇ、と、従兄弟二人は二人で、シンタローをほほえましく思ったのだった。









30分後。
ようやくパエリアが完成し、従兄弟三人仲良く食す。
二人ともシンタローの料理を褒め、シンタローも満更でもなさそうに笑う。
「シンちゃん、後片付けは僕達がやるから、シンちゃんはおとーさまにご飯持って行ってあげて。」
片付けようと思った所、グンマにそう言われて、シンタローは止まった。
余計な心配しなくてもいいのにとも思ったが、この優しい従兄弟達は心から自分を大切にしてくれていると知っていたので、少々の悪態はついたが、素直に夕飯を持っていく事にした。
お盆に食事を乗せ、マジックの部屋に行く。
トントンとノックするが、中からは何も音がしない。
不審に思いながらもインターホンをビーッ!と鳴らすが出る気配がない。



「チッ!」
シンタローは舌打ちをして、自室に戻った。
目的はマジックの部屋の鍵である。

飯だけでも置いといてやらねーとナ。

そう思い、スタスタと隣の自室へ入って行った。

中にいたマジックは、ドキドキしていた。
まさかこんなに早くシンタローが戻ってくるとは思わなかったし、何よりシンタローにばれてしまうということが恐ろしかった。

どこかに隠れよう。

そう思った矢先、プシュンという機械音と共に、シンタローが黒い髪をなびかせ入って来た。
「親父ィー!具合でも悪いのか?」
心配されると、こんな状況でも、胸がきゅんきゅんする。
そして、とてもいい匂い。
そういえば昼から何も食べていなかった事を思い出す。

ぐうぅうう

マジックの腹の音が鳴ってしまった。
「親父ー…ッッ!?」

呆気なく見つかった。
シンタローは、愕然とした顔で自分を見ている。

拒絶された。

そう思うと思ったより悲しくなってきて、涙が出そうになる。
つん、とした鼻を押さえて、涙だけは流すまいと耐え忍ぶ。
「ざ、座敷童…!」
ペタンと尻餅をつく。
それでもお盆をテーブルに置いたらって所が流石といえる。
マジックは、ヒョッコリと物影から出て来てみた。
マジックを月明かりが照らし、金色の髪がキラキラ光る。
「わぁ…。」
シンタローは、感嘆の声を上げた。
自分の大好きな金髪碧眼。そして、整った顔に、すらっと延びた生足。
どこをどう見積もっても美少年という単語しか出てこない。
その少年は、眼を赤く腫らして自分を見ている。

ぶーーっっ!!

シンタローは鼻血を噴射した。
「シンちゃん、大丈夫!?」
ボーイソプラノで慌てたように駆け寄る少年。
良く見ると、この顔どっかで見た事ある。
「ああぁあ!!アンタまさか親父!?」

そーだ!この顔、親父の長男用アルバムで見た顔だ!

指を指して叫ぶと、少年は少し困った顔をしてコクリと頷き肯定の意を示した。
かっカワイイじゃねーか!

シンタローは駆け寄って来た少年マジックに触ってみた。
すると、眼にいっぱい涙を貯めて、マジックはシンタローに抱き着く。
「わーん!シンちゃんどーしよー!!パパちみたんになっちゃったよー!!」
シンタローの胸にぐりぐりと顔を押し付け、タガが外れたように泣き出した。
いつもなら眼魔胞なのだが、今は美少年なので許す。

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なみだに弱い




トゥルルル

「はい。高松ですが、どうかなさいましたか?」

「たかまつぅ…」

「!?…シンタロー様?」

「パパがね、たいへんなの。シンタローとおふろ入ってたらね、血を流して倒れちゃったの。」

「総帥が!?わかりました。今すぐ参りますからそこにいてくださいね。」

「うん。」


















「………なんとか一命は取り留めました。」

「……そうか。」

「サービスおじさん、パパはだいじょうぶ?」

「もう大丈夫だよ。シンタロー。でもよく高松に連絡したね。」

「まえにぼくがお熱したときパパがそうしてたんだよ。」

「……シンタロー。これからは一人で風呂に入りなさい。」

「えぇ~?どうして?」

「お前ももう6歳だ。これくらいになったのなら一人でお風呂にはいるものなのさ。」

「うん!わかった。明日からそうするね。」

「いいこだ。じゃあお前はもう寝なさい。パパはおじさんが看てるから。」

「うん。おやすみなさい、おじさん、高松。」

「おやすみ。」

「おやすみなさい。」


パタン。





















「……兄さんが倒れた原因はやはり?」

「ええ、先ほどは突発な血管破裂による出血多量なんていいましたけど。」

「……要するに鼻血か。」

「……恐ろしいことです。私も気を付けなければ…」




サービスはそのとき、もし兄と友人が鼻血なんかで死んだらもうガンマ団には一生帰ってくるものか。と思いました。







2004/



BACK

mmm




「シーーンちゃん☆パパだよーーーーー♪」





;プレゼント





ここはガンマ団総帥執務室。
一般団員はおろか、トップクラスの者でも、限られたものしか入室は許可されない。

しかし、そんな部屋だということもお構いなしに、今日だけでもすでに6回は訪れている人物がいた。

「・・・・・・・いい加減にしろよ、親父ィ・・・。」

そう、現総帥シンタローの父親でもあり、ガンマ団前総帥のマジックである。

「てめえ、今日だけで何回この部屋に来てんだ、あああああん!?人の仕事の邪魔するのもたいがいにしやがれ!!!!!!」

「これで7回目だよ、シンちゃん☆そんなにカリカリしてたら、お仕事の能率が下がるよ?」

律儀に質問に答えながら、マジックはにっこりと最愛の息子に笑いかけた。

「お前がその能率をさげとんじゃ、ボケーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「こらこら、そんなに大声でさけんじゃダメだよ、シンちゃん♪」

自分の度重なる出現が、息子の仕事の能率を下げている最たる原因であるとはあくまでも認めないようである。

「だいたいなあ、何しに来たんだよ!!さっきから何回も来て、
用件も言わずにニヤニヤしただけで帰っていきやがって!!!!今度こそ用件を言え、用件を!!!」

「うふふ、知りたい?知りたい?でもきっとシンちゃんもう知ってるもんなー☆」

「お前の考えてる事なんか知るか。さっさと言え!!!」

いいかげん、シンタローもイライラしてきた。
それもそうだ、これで過去6回は答えをはぐらかされて、思わせぶりのまま帰って行かれたのだから。
今度こそは眼魔砲ぶっ放しても聞き出してやる!!!
そんなオーラがシンタローのまわりに出ていた。

しかし、そんな殺気じみたオーラも、マジックの目からすれば、
『焦らさないで早く教えてよ、パパ☆』
といったほのぼのオーラに見えてしまうらしい。
恐るべきは愛の力か。

「実はねー、パパ、明日誕生日なんだよvvv」

ま、シンちゃん知ってただろうけどvvv
ニコニコ続けるマジックとは裏腹に、シンタローは思わず眼魔砲を撃とうとした動きを止めた。

「え、そうなの?」

ピシリ。
とたん、部屋の空気が摂氏3度は下がった。

いやー、そういえばアンタ今月誕生日だったなー。すっかり忘れてたぜ。
などと続けるシンタローだったが、対してマジックはショックのあまりに固まっていた。
「・・・いよ、シンちゃん・・・・・・。」

「あ?なんか言ったか親父?」

「非道いよシンちゃーーーーーーーーん!!!!!(号泣)」

そう言って、マジックはシンタローの机に両手をバンッと叩きつけた。
両目からは涙が滝のように流れている。
「パパ、シンちゃんからの誕生日プレゼント楽しみにしてたんだよーーーー!!??」

「あ・・・悪ぃ・・・。」

流石に、その迫力と勢いに押され、普段かまってやってない分の良心も痛んだのだろう。
シンタローも少し、ばつの悪そうな顔をした。
そして、しばらく考えて、

「んじゃ、今日の分の仕事は終わり!!!!」

「総帥!?」

「シンちゃん?」

急に思い立ったようにシンタローが言い放った。
しかし、シンタローの目の前には書類の山が未だ鎮座している。
もちろんそれを見逃す秘書ではない。

「総帥!しかしまだこれらの書類が・・・!!」

「特に急いでるって訳でもねえだろ。明日にまわせ。」

「しかし・・・!」

「うっせーな、総帥命令だ。わかったな。」

シンタローは有無を言わさない態度で席を立った。

「シンちゃん、一体どうしたんだい?」

あまりの豹変ぶりに、マジックも心配して声をかける。

「んあ?まだ12日になるまで時間あるからな。気分転換も兼ねて、テメーの誕生日プレゼント買ってきてやらあ。」

すでに時計は夜の9時をまわっている。

「今はどこもクリスマス商戦の時期だからな。11時ぐらいまでなら店も開いてるだろ。」

そう言って、シンタローは着替える為に自分の部屋に戻ろうとしていた。

「シンちゃん・・・、そこまでパパのことを・・・!!」

マジックは、先ほどとは違った涙をまたしても滝のように流している。

「ただし!!!プレゼントやるだけだからな!明日テメーの為に割く時間は1秒たりともねえ!!!
ただでさえ年末で忙しいんだからな!!」

ビシィッとマジックを指差して宣言したシンタローだったが、マジックはそんな事どうでも良かった。
わざわざこんな時間に、自分の誕生日に間に合うようにプレゼントを買ってきてくれると言っているのだ。
これ以上の幸せはない。

「それでは、お車の準備を・・・」

「いや、俺が運転していくからいいわ。車だけ用意しといてくれ。運転手は無しな。」

秘書の声をさえぎってシンタローは言った。
なにか続けたそうな秘書に、そのままシンタローが続けた。

「気分転換も兼ねてって言ったろ?久しぶりに夜のドライブってもの悪くないよな。」

そう言って、シンタローは笑った。

「シンちゃん。」

「ん?なんだよ?なんかリクエストあんのか?」

「いや・・・、気をつけて行っておいで。」

「おう。」

「それと・・・、ありがとう。」

マジックの優しく微笑んだ顔にシンタローは一瞬きょとんとした表情を見せたが、すぐに笑いながらこう返した。

「そりゃ普通プレゼント貰ってから言うセリフだろ~?もうモウロクしたのかよ、親父。」

そう言って、シンタローは自室へと戻っていった。

そしてそれから約15分後、シンタローを見送る為にマジックと数名の団員が裏口に集まっていた。
シンタローはガンマ団現総帥。本来ならば、このような外出は許されないのだが、本人の強い希望と、
急に決定したスケジュールの為、外部にも漏れていないだろうという諜報部の判断により、シンタロー1人での車での外出となった。
しかし、一応用心の為、裏口からの外出である。

「いってらっしゃい、シンちゃん。遅くなるようだったら連絡入れるんだよ?」

「んーだよ、ガキじゃねーんだから、それぐらい分かってるって。」

「総帥、お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

「おう!日付が変わる前には帰っから。んじゃ、いってきます!」

そう言って、シンタローは冬の夜へと車を走らせた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



おかしい。

マジックがそう思い始めたのは、時計が12時をまわり日付が変わる頃だった。

シンタローは確かに、日付が変わる前には戻ると言った。
遅くなるなら連絡も入れると。
ガンマ団の総帥として、それぐらいの責任感は持ち合わせている息子である。

ひょっとしたらもう下の駐車場に着いているかもしれない。
きっともうすぐそこまで来ているのだ。

そう思ってはみるものの、やはり不安はぬぐいきれない。
それに、なにやら感じるのだ。
父親としての勘なのだろうか。
『嫌な予感』
というものが先ほどからマジックを襲っていた。

そして、当たって欲しくない時ほど、それは的中するものである。

マジックの自室の内線がけたたましく鳴った。
緊急事態専用の呼び出し音である。

緊急事態こそ落ち着いて行動しなさい。

そう自らの息子に教え込んだが、内線の呼び出し音を聞いたマジックの心臓は早鐘のように打っていた。
落ち着け、落ち着け。
まだ決まったわけじゃない。

そう自分に言い聞かせながらマジックは内線のボタンを押した。

「どうした。」

以外にも自分の声は落ち着いている。
そう思うマジックの心は、どこか別のところにあった。

「こんな時間に申し訳ありません!緊急事態です!!」

「何があった、報告しろ。」

「シンタロー総帥が乗った車が敵襲を受け炎上、そのまま海へと転落した模様です!!」

・・・・・・・・!!!!なんという事だろう!!!!!

マジックの予感は当たってしまったのだ。
ざわざわと騒ぎ出す心に、マジックは報告に返事をするのも忘れていた。

「現在、総帥の安否の確認は取れていません。すでに救出隊及び諜報部が出動しています。」

「・・・・・・・そうか。」

マジックは声を絞り出すように言った。

「正確な安否の確認が取れるまで、このことは外部に悟られるな。」

「はッ!了解しました!!」

「現在、指揮は誰が取っている。」

「キンタロー様が率先して部隊をまとめ、現地にもすでに赴かれました。」

「そうか、そのまま指揮権はキンタローに委ねよう。なにかあれば、随時報告を頼む。」

そう言って、マジックは内線を切った。



『テメーの誕生日プレゼント買ってきてやらあ。』

ああ・・・・・・・・

『なんかリクエストあんのか?』

あああ・・・・・・・・

『んじゃ、いってきます!』

ああああ・・・・・・・・・!!!!!



マジックは深く椅子にすわり、そのまま天井を仰ぎ見た。

そのまま目を瞑り、深く息を吸い込んだ。

そして息をゆっくり、ゆっくりと吐き出し・・・、

ダンッ!!!!!

力の限り、机を叩いた。

彼の閉じられた目からはとどめなく涙があふれていた。

私が、あの子に言ったから・・・
私があの子に誕生日プレゼントなんて強請ったから・・・・・・!!
私があんな下らない我侭を言わなければ、あの子は・・・・・・・!!

襲ってくるのは強い自責の念ばかり。

自分の為の誕生日プレゼントなんていらない。
そんな物はいらないから、どうか、どうか・・・・・・・!!!!!

「なーんて顔してんだ、親父。」

!!!!!!!!!

マジックが顔を上げれば、自室の入り口に立っていた。
生きている、最愛の息子、シンタローが。
椅子を倒すようにして立ち上がったマジックは、そのまま机をも飛び越えて息子のもとに走り寄った。
そしてそのまま、外傷がないか確かめて、抱きしめた。
その存在を確かめるかのように、強く、強く。

「・・・・・・っ良かった・・・・!!!」

マジックの目からは新たな涙が流れていた。
これは、歓喜の涙。
愛する息子が無事だったことに感謝する涙。

「っちょ、親父、苦しいって!!」

あまりにも強く抱きしめていたのだろう。
シンタローが腕の中で息苦しさを訴えた。
あわてて抱きしめた腕を緩めたマジックだったが、その時初めてシンタローがずぶ濡れである事に気がついた。
その視線に気付いたシンタローが続けた。

「ああ、これな?報告入ってねえ?なんか敵襲受けて、車ごと海に落っこっちまってよー。
んで、水圧でドアが開かなくなっちまったんだけど、眼魔砲ぶっ放して出てきた。」

いやー、俺あの時ほど眼魔砲使えて良かったって思った事なかったぜーvv
まるで軽口をたたくかのように言うシンタローを、改めて優しく抱きしめるマジック。
だが、シンタローの胸の辺りでごそごそ動く何かを感じ、一度体を離してみる。

「あーー、こいつな、店の近くで捨てられてたんだよ。酷くねえ?こんな冬の寒い時にさー。
んで、車から脱出する時に、包んで服の中に入れといたんだけど、良かった。生きてるみてーだな。」

そういってシンタローは胸元からビニール袋を取り出し、さらにその中から丸まったセーターを出し、さらにその中からは・・・

みぁぁう。

「子猫??」

なんとも可愛らしい子猫が出てきた。
多少汚れてはいるが、洗ってあげれば綺麗になるだろう。
先ほどまで、息子の命を心配していたのに、新たに可愛い命の存在を目の前に見て、マジックの顔が自然とほころぶ。

「あ。」

急に、しまった!といった感じでシンタローが声をあげた。

「悪ぃ親父、このセーター、プレゼントだったんだけど、汚れちまったな・・・。」

セーターは子猫を守るために使ったせいか、少し海水に濡れ、子猫がひっかいてしまったのだろう。すっかりボロボロになっていた。

少しうつむいてしまったシンタローの頬に優しく手を沿え、マジックは言った。

「シンちゃん・・・、シンちゃんが無事に生きてくれてる事が何よりの誕生日プレゼントだよ・・・。」

マジックは、シンタローの目を見て、ふわりと微笑んだ。
こんなに心穏やかになった事が最近あっただろうか。
最愛の息子を前に、マジックはあふれる程の幸せを感じていた。

「ありがとう、シンタロー。最高の誕生日プレゼントだよ。」

「・・・父さん・・・。」

そしてそのままマジックの顔がシンタローに近づいていき、シンタローもまた、素直に目を閉じた。

みぁぁう。

子猫さえも、マジックの誕生日を祝い、二人を祝福しているかのようだった。



―――――――Happy Birthday Magic...

End.


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ほみうとこ。様より頂きました!
素敵マジシン小説を12/12にくださり有難うございます~~~vvv
最後ラブラブですね!ラブラブは大好物ですよ!(愛)
そしてやっぱりシンタローの『父さん』は必殺技ですなァ・・・(しみじみ)
【from K♪】
gda
-Obstinate☆Love-



「くそ・・・っ!!あっ!まただ・・・あぁ~・・・・・・・・・止めだ止め!!」
耳障りなエラーを知らせる機械音に、シンタローは目の前の液晶のモニターを睨みつけると、持っていた書類と資料を机の上に投げ出し、その上にドカリと両足を投げ出した。
イライラと髪を掻きあげながら、頭の後ろで手を組み合わせて、壁にかけてある時計を見れば針は零時を指している。
どうにも仕事が進まない、出来たと思えばくだらない凡ミスをティラミスに指摘され・・・それが済んだと思えば、くだらない連中が騒ぎを起こす。
そして、今もシステムのエラー音が響く始末・・・。
やらなきゃいけないことは、山ずみなのに、一向に進まない。今日終わる予定の半分も終わってない。
どうにも気が散漫で・・・集中できない。
そんな自分が腹立たしくてしょうがないのに、そんなイライラを増幅させるかのような、親父の行動。
「なんだって言うんだ・・・」
腹から沸きたつような苛立ちに、投げ出した片方を上に振り上げると机に向かって、垂直に振り落とした。
にぶい音が静まり返った室内に響く。それと同時に正面のドアが開くと見知った人物が、やや呆れた表情で入ってきた。
「いい加減、物に当たるな。貴様のおかげでここ最近、備品代が跳ね上がってる。いくつ買い換えれば気が済むんだ」
しようがないやつだと、肩をすくめて溜息なんぞつく姿の雰囲気や仕草は・・・まさに瓜二つ。

嫌でも親父が思い出されて、それを忘却するかのようにシンタローは左右に顔を振った。
「うっせ・・・。ほっとけ」
ふんっと一つ鼻をならすと、頭の後ろで組んでいた手を離し、右肘を机の上に置いて頬杖をついくと、キンタローから顔を背けた。
その様子に苦笑すると、持っていた書類でシンタローの頭を軽く小突く。
「ここ2週間・・・随分、イライラしてるみたいじゃないか?」
そんなことねぇよ。とぶすっと言い放ち、頭の上に置かれた書類をキンタローからひったくると、ジロリと一瞥して再び頬杖をついた。
「原因は・・・あの子がマジック伯父貴のお付きになったからか?」
乱暴に書類をひったくられて、やれやれとため息をつくと、キンタローは手持ちぶさになった手をそのまま、自身の白衣のポケットに差し入れた。
「っ・・・・・・、くだらねぇ。そんな事が原因だと思ってるなら、お前の頭も大したことねぇな」
いきなり核心をつかれて、シンタローは言葉を詰まらせる。
どうにか内心の動揺を押し殺し、頬杖はそのままに無理矢理、不適に笑みを浮かべて言葉を続けるキンタローを睨みつけるも。
そんな喧嘩口調のシンタローに慣れっこなのか、それが核心を得ての強がりと思ったのか、別段気にすることもないようだ。

「そんなに気に入らないのか?確かに、伯父貴は気に入っているようだがな・・・。どこへ行くのも連れまわしてる。その証拠に通常、秘書は2人つけるのを彼1人だけっていうぐらいだからな」
相当な、お気に入りだな・・・。とキンタローは言葉を付け足すと、シンタローの机の書類に埋もれて、端が見え隠れする団員名簿に目を光らせた。
「ただ、ティラミスたちが急がしいからの臨時にすぎねぇよ。別にお付なら、行動をともにしてもおかしな事じゃない」
シンタローはキンタローが持ってきた書類に視線を向けたまま、不機嫌さを隠そうともせずに、口をひらいた。、
そんなシンタローを見やり、「そうだな」と多少口元を緩めながらシンタローに気づかれないように、名簿の端を掴むと上の書類たちが崩れないように、慎重に引っ張った。

書類に埋もれた不自然な写真入りの名簿を片手に持つと、キンタローは興味深気にそれを見つめながら・・・。
頬杖をついた指の爪をカシカシと噛み、イライラを紛らわそうそしている目の前の男をチラリと見やって、思わず苦笑を禁じえなかった。

その名簿には、話の話題にあがっている。新しく元総帥のお付になった団員がしっかりと写っていて
・・・こんな名簿まで取り寄せて、随分と気にしてるじゃないか。それも分厚い名簿の中から、わざわざこの青年が載っている一枚だけとは・・・・・・
素直に気になるといえばいいものを、全く素直じゃないな。
ま、こいつらしい・・・・・・か。

このシンタローの険悪な状態は、団の環境に良くない。
いつものマジックに対するイライラならば、ただのじゃれあいの延長線だと流せる。が、今回は一味違うようだ。
ただでせさえ多忙な中、総帥がこんな調子では周りに伝染する。
それに、マジックがお付をつけてから、シンタローの様子がおかしくなったのは周知の事。
総帥が公私混同では、下の者に示しがつかない。
彼はこの団を統べる総帥なのだから、自覚してもらわねば・・・。
いや・・・自覚はあるのだろうが、自分でもどうしようもない。っといったトコロか・・・。
これでは、周りもシンタローが気がかりで仕事にならない。
早く機嫌を直してもらわないことには、業務にも差し障りがある。
だからといって、何をどう出来るものでもないいが、このまま見過ごす事も出来ない。
あまりのシンタローの荒れように、キンタローは打開策をみつけるべく記憶をたぐりよせた。

シンタローの機嫌が悪くなり始めたのは、2週間前。ちょうど遠征から帰って来た日の翌日だ。
戻ってきた日に、伯父が嬉しそうにシンタローにまとわりついていたのが、記憶に新しい。となるとその夜にひと悶着あったか。
確か・・・新しくマジック付きになった彼が来たのも・・・・・・2週間前。喧嘩してからすぐか。
となると、彼が配属された原因はシンタローの線が濃い。
そして、シンタローがここまで荒れ始めたのが、1週間前。時期を同じくして伯父は、新しいお付の彼と2人で本の宣伝を兼ねた講演にでている。
そして、未だ戻って来ない。

となると・・・機嫌の悪さの全貌が見えてきた。

元総帥がどういう意図で、こういう行動にでたのかは分かりかねるが・・・原因は目の前の男にあるに違いない。
そして、この状態は伯父の思惑通りと・・・いった所だろうか?

仕方が無い、ここは人肌脱ぐか。
いつから自分はこんなに人が良くなったのか。
自分の人の良さに疑問を持ちつつも、このままにしては、団の為にならない。
困ったもんだ。とため息を一つくと口を開いた。否・・・口ぶりとは裏腹に、目を微かに輝かせながら口を開く。
楽しんでいるとしか思えない。

「そういや、最近・・・マジック・・・伯父の姿を見ないが、どこへ行ったんだ?」
白々しいとは思いつつ、名簿に目を通しながらシンタローに尋ねると、その名前にピクっと微かに身体が反応を示すだけで答えがない。
「あ~・・・確か、本の出版記念の宣伝とサイン会を兼ねての、出張だったか。いつから行ってるんだ?坊やも連れていってるのだろう」
「・・・・・・・・・1週間前からだ・・・」
ボソッとそれだけ応えると・・・動揺を押しとどめようと、ますます眉間に皺をよせているのが分かる。
「二人でか・・・ほぉ・・・二人でね・・・一週間なら、あの方のことだ・・・・・・・・・」
キンタローが全てをいい終わる前に、シンタローがすごい勢いでそれを遮った。

「ありえねぇ!?」
やや声を荒げるシンタローを気にするでもなく淡々と言葉を続ける。
「何がだ?オレは何も言ってないぞ。 なんだ2人ナニかしているんじゃないかと、不安なのか?そうだな・・・2人で一週間か、手は出してるな・・・今頃、ヤってるに―――」
「ねぇよ!!」
シンタローが遮るように言葉をつなげても、それを「何故だと」逆に理由を問われると、確固たる理由は出るわけでもなく。
「ばっ・・・あいつは、・・・・・・」
『いつも俺にべったりの親父が、他に手なんかだすかよ。』とは自分の口からいう事など、うぬぼれている様で言えるはずも無く、うやむやに言葉を濁した。
が、そんなシンタローにキンタローから追い討ちをかけるように、「あいつは?」っと鸚鵡返しに尋ねられると、口をつぐんでしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・いつも自分にべったりだから、団員に手をつけるなんてお手軽なことはしない。・・・か」
どこか小ばかにしたような口ぶりが、癇に障る。が、キンタローの言葉はその通りで、言葉が無い。
「・・・・・・・・・・・・・・・ッ」
(そりゃ、一般的にはもてるだろうよ。あくまで一般的にな。確かに顔は・・・悪くない。一般的にな!! スタイルだって悪くねぇ・・・金だってあるし、知名度だって良くも悪くもある・・・。どんなに頭がイカレテたって、猫かぶって笑ってりゃあ騙されるさ!!なんせナイスミドルNO,1なんてふざけたタイトル持ってるぐらいだ・・・普通ならコロっといくだろうよ。それでも、あの親父が・・・いい歳して息子の等身大ぬいぐるみを持ち歩く奴が・・・鼻血ばかり垂らしてヘラヘラしてるやつを誰が相手にするっていうんだッ。)
バカバカしいっと笑い飛ばせばいい。普段ならできたことだ、関係ないと一笑できた。が、今は笑い飛ばすことができない・・・・・・
まるで、小骨が喉に刺さっているように、気になって暗く影を落とす理由があるからだ。

(あんなこと、いつものことじゃねぇかよ・・・・・・・・・それを――――)

ムキになっている自分がバカバカしくて、振り回され続けている自分に嫌気ださす。それに、したり顔で話す目の前の男にも。
八つ当たりだと重々わかっているが・・・どうにも抑制がきかない。
シンタローは苛立ちをぶつけるかのように、キンタローに向かって声をあらげた。
「あんな奴、関係ねぇよッ!! だいたい、さっきから何が言いたい」
伏せていた目を上げると、きついまなざしでキンタローを睨みあげる。
「まあ、そう睨むな。こんなもんなまで引っ張り出して相当気にしてるようだから、お前の気持ちを代弁してやってるだけだ」
シンタローの目の前に、手に持っていた名簿をちらつかせる。と、カっとしたように顔を真っ赤にしたシンタローが、キンタローの手元からそれを奪い取った。
そのまま、ぐしゃぐしゃに丸めるとゴミ箱に突っ込む。
「気になんてなってない。あいつが、どうしようが俺には一切関係のないこだ」
気持ちを落ち着けるように、一つ深く呼吸するとキンタローが持ってきた書類に乱暴にサインを済ませて、それをキンタローに突きつけた。
「用件がそれなら、お前と話すことは何にも無い。悪いが俺も暇じゃない、これを持ってとっとと戻れ」
「全く、素直じゃないやつだな。少しは・・・あの坊やの素直さを見習った方がいいんじゃないか」
ふっと苦笑すると、これ以上の八つ当たりは勘弁しろとばかりに、受け取った書類の束を脇に抱えてシンタローに背を向けるとドアに向かう。
キンタローは背中を向けていて、見ることが出来なかったが、その言葉に過剰なほど反応し、苦虫を潰した様なシンタローの顔があった。

「見習ったほうがいい・・・か・・・。全く行動だけじゃなくて、似たようなこといいやがる」
ドアが閉まる音と同時ぐらいに、小さく呟くようにシンタローの口から零れた。


******************


常日頃の睡眠不足と慢性的な疲労からくる重い体を引きづりながら、自室に戻ってきた頃には午前1時をゆうに過ぎていた。
終わらないから、自然と帰りは遅くなる。遅くはなるが、そんなに集中力が持つはずもなく・・・効率が悪い。
ましてや、別のことに気をとられてるから、集中しようにもなかなか思うようにいかず・・・。胸のムカムカも溜まる一報だ。

『全く、素直じゃないやつだな。少しは素直さを見習った方がいいんじゃないか』

上着も脱がずにソファーにぐったりと身体を預けながら、瞳をつぶると・・・眼の奥からズンっと重い感覚とともにキンタローの言葉が頭に浮かぶ。
「素直って・・・なんだよ。関係ねぇよ・・・・・・あんなやつ」
根が生えたように、頭から離れないその言葉。・・・確かにキンタローの言うとおり、1週間前から重苦しいものが離れない。
今となっては喧嘩の原因など忘れてしまうほどに・・・それほどに、くだらない内容だった。
俺にとって日常茶飯事な他愛無いのないことで・・・ただ、その時に親父の少し自嘲的に笑った顔が、印象的だった。

そして、目を閉じると・・・2週間前、遠征から帰ってきたその日のことが巡ってくる。
2週間前の夜遅くに・・・今頃の時間に帰ってきた。
俺は疲れていた。久々にゆっくりと自室のベットで眠りたいと思うほどに疲れていた。
それなのに、あのバカ親父ときたら、こっちの事など考えずに、ちゃんと食事はとっていたかとか、風呂に入れとか・・・俺にべったりで全く気の休まる瞬間がない。
それでも、心配してくれてるんだろう・・・っと100歩譲って「俺も大人になったなぁ」などと思うぐらいはできたが、それにしてもしつこく・・・一緒に風呂に入ろうとしたりして
おまけに、いいマッサージがあるからと、口実を作って圧し掛かってきたものだから、頭にきて、
『そんなに、やりたきゃその辺の奴らとやってろ!!』
と声を荒げた俺の言葉に、マジックはやや目を見開くと、急に真顔になって『パパがやりたいだけの男だと、思ってるのかい』とかなんとか言ってたっけ。
今思うと、親父のあの意外そうな顔からして・・・俺のことを本当に心配してくれたのかもな。
なんて想いがよぎらないでもないが・・・。
あの時の俺にはそんな余裕は微塵もなくて、その言葉に『事実じゃねぇか・・・溜まってんなら適当に処理しろよ』っと言い放つと、寂しそうに顔をゆがめて・・・
『じゃあ、パパが団員の子に手を出しても・・・シンちゃんはいいって言うんだね』とやや低いトーンで返ってきた。あの時の寂しげに笑った顔は記憶に濃く残っている。
一瞬、なんと言葉を返していいか分からず目を泳がせたが、その頃には親父のやりとりよりも、どうにかして1分でも早く横になりたいという思いが強く・・・
その後は売り言葉に買い言葉、『勝手にしろよ。まぁ、親父みたいなのを相手にしてくれる奴がいたらの話だけどな』っと鼻で笑って、親父を部屋から追い出した。
しばらく、扉の前に親父の気配がしたが、俺はいつの間にか引きずられるように眠りに落ちていた。

問題は次の日からで・・・さっそく親父が、当てつけるように新しい自分のお側付をつれてきやがった。

そいつは、今年仕官学校を卒業したとかいう奴で・・・背は170センチも無いぐらいの小柄で、黒髪とクルっとしたやや大きな黒い瞳が印象的だった。
・・・なぜか初めて会う気がしなくて・・・どこかで会ったことがあるんじゃないかという思いに間違いはなく・・・。
それも、当然といえば当然。
俺の幼い頃の面影を残しているからだ。丁度・・・親父に対して反発が強まる前の、士官学校に入学したての頃に近い。
もちろんそっくりっという訳ではないが、パーツパーツが似ているような感じがする。俺がそう思うのだから、親父もそう感じてるはず。
まさにあてつけには、ピッタリの相手。
どうせそれを見た、俺の反応をみて楽しもうって腹だろう。
図としては、こうだ。
きっと二人の様子に、俺がキレて親父のところに乗り込む。→丸め込んで、親父はうまい事、コトに及ぶ。→作戦成功☆
そんな親父の浅はかな考えなんて、手にとるように分かる。
誰がそんな手に乗るかよっ!!どうせ俺が折れなければ、思い通りに事が運ばず焦れた親父が、俺のところに乗り込んでくるはずだ。
そうなるに決まってる。
そんな確信があった・・・ただ計算外だったのはそいつの性格。これが普通のやつなら何の感情も沸かないが・・・。
俺と似たような顔をして、
『マジック様』・『マジック様』っとうっとりした顔で親父にくっついては、媚を売るときているから、全くもって手に負えない。
どうやら強烈な!!心底、親父のファンらしい・・・似た顔にそんな事をされた日には、まるで俺がそれをしているような気になって、気持ちが乱されて仕方が無い。
親父は親父で・・・大変お気に入りらしく、ニヤけた顔で笑いかけながら「可愛い、可愛い」を連発して、到底部下に対する態度の度を越した行動を繰り返していた。
そんなことが1週間続いても、そんなお遊び・・・すぐに飽きるだろうっとタカをくくっていたから、親父のニヤケ面を小ばかにしたように眺めていたし、そいつの言動も大して気にならなかった。
たとえ、それを、毎日、毎日、狙ったように俺の目の前でやりやがってもだ。
が、
1週間前・・・ちょうと公演旅行の前日・・・

あの晩―――――――――――

俺が自室で、寝そべっても全く問題無しっというぐらい、ゆったりとした大きさのソファーに寛いで、酒をチビリチビリ口に運びながら書類に目を通していると、突然ノックも無しにドアが開き親父が入って来た。
「シ~ンちゃん。 パパに言うことな~い?」
親父が部屋に入って来たのは、喧嘩した以来だったから、とうとう痺れを切らしたのかと、内心の笑みを隠して冷たく親父を見やった。
そんな俺に親父は、ソファーの肘掛に背をもたれかからせ、足を伸ばしている俺の脚を床に下ろすと、空いたスペースに座り、俺の顔を覗き込む。
「なにか用?」
俺が冷たくいうと、「ふ~ん。反省の色無しなんだ」っと小ばかにしたように俺を見て、「パパ明日から、公演や握手会で1週間ぐらい空けちゃうんだけどなぁ」っと言葉を続けた。
「だから? 悪いけどすっごい、邪魔」
親父の顔を一瞥してすぐに書類に顔を戻しながら、床についた足を元の位置に戻そうと、座っている親父の腿の辺りを足で押し出そうとして、突然足首の辺りを掴まれた。
「謝るなら、今ってこと。意地っ張りなシンちゃんに、チャンスをあげる」
そう言って、掴んだ足を親父の方向へ引っ張られて、肘掛から背が滑り落ち・・・頭がかろうじて肘掛に乗った状態になった。
突然の親父の行動にぎょっとしている俺に、「本当、パパってシンちゃんには甘ちゃんだよね~。そう思わない?」
ソファーの背に手を置いて、唇が触れるほど顔を近づけると、「ごめん。って言ったら、許してあげる。 そうしたら・・・ね」
そうしたら、あの似た顔の奴とは、公演旅行にはいかない。と言いたいのだろう、そんな事を思いながらあまりにも近すぎる距離に、思わずゴクリと唾を飲むと唇を噛み締めた。

確かに、似た顔で素直に・・・バカがつくほど素直に、親父のことが『大好き~』っという隠しもしない態度を見て、腹が立たないかと言ったら嘘になる。

面白くなくて、心がザワザワする・・・お側付から移動させてくれたら、どんなにいいかと・・・
思わなかったっと言ったら嘘になる。が、俺は別に悪いことを言ったとは思っていない。もしろ、そう思われる親父の言動に責任がある。
そう思うと謝る気も起きないし、まるでまんまと作戦にひっかかったようで、納得いかない。
そんな気持ちが顔に出ていたのだろう、親父の蒼い瞳が意地悪く光ると同時に、身体を起こした。

「全く、素直じゃない。うちの子みたいに素直なっだたら可愛いのにね~。男の子にも可愛げは必要だよ。シンちゃんも見習って欲しいもんだね」
誰に呟くわけでも無く、それでも独り言にしては大きな声でそう溢して、チラリと俺の顔を見ると立ち上がった。
どうみても、俺に投げられたその言葉にチクリと胸痛んだ。
知らずに眉を顰めて、無言で立ち上がった親父の背を見つめると、ドアの方向へ歩を進めながら、親父が言葉を続ける。
「シンちゃんがいつまでも、そういう態度にでるなら、パパにも考えがあるよ。 幸いに明日から二人っきりで旅行だしね~」
「何がだよ」
そのいかにも楽しみでしょうがない。っと浮かれた声に、わざとやってると頭の隅ではわかっていても、ソファーの背に手をついてやや身体を起こしながら、思わずイライラとした言葉が口をついだ。
そんな俺の声に、おやっと歩を止めて、顔だけを俺のほうへ向けると、ワザとらしく片眉をあげる。
「ん?独り言だよ。 シンちゃんはパパのこと気にならないんだろう」
「・・・・・・手、出すのかよ?」
ピリピリと神経を逆撫でされるような、親父のゆっくりとした口調に、自分でも驚くほど低い、搾り出すような声がでた。声が震えているようで、掴んだソファーの生地に爪を立てる。
「おかしな事をいう子だね~、やりたきゃ適当にやれって言ったのはシンちゃんじゃないか。忘れたの? 幸い、据え膳状態だもの・・・。シンちゃんが謝らないなら、パパも行動を改めるつもりはないよ」
「あてつけかよ!!」
ほら、謝るなら今のうちだよ。っとニヤニヤと口元を緩める親父が腹立たしい。「恥ずかしくないのかよ」っと言葉を投げつければ、
「なんとでも」
と顔を戻して、ヒラヒラと手だけを振りながら、扉に向かって歩きだした。
そんな親父の背に、なんと言葉を続けていいか分からず、無言で唇を噛み締めて睨みつけていると、扉に向かって歩いていたはずの親父が急に踵を返して、ソファーで固まっている俺の所まで戻り、着ていた上着を脱いだ。
「なんだよ」
ぶすっと不機嫌を隠そうとしない俺の声が気にならないのか、そのまま、来ていた薄い桃色のジャケットを、俺の膝にかける。
「いくら、空調が設定されているからと言っても、薄着では風邪をひくよ」
それだけ言うと、俺に背を向けて再び歩き出した。
膝にかけられたジャケットを眺めていると、無償に腹立たしくて、それを膝の上からひったくるようにして掴むと、掴んだを手を振り上げた。
「勝手なことするな」
そのまま振り上げた手を振り下ろして投げたが、それは目的物に届くはずも無く・・・俺の足元からややいったところに、パサリと音も無く落ちた。

しばらくすると、扉が閉まった音がして・・・俺は、残されたジャケットを、ただ眺めていた。


――――――――・・・・・・。


「俺が何したって言うんだよ・・・寄ってたかって素直じゃない。とか言いやがって」
俺だって、昔は超素直なガキだっつーの。キンタローのせいで、思い出さなくてもいい事、思い出しちまった。

シンタローは軽く頭を左右に振ると、着ていたジャケットをソファーに放り出して、持ってきたビールのプルタブを開けて一気に煽った。
冷たい炭酸が喉を通る感覚に、少し気が落ち着いてきた。
それでも、今まで極力考えないようにしていた事が思い出されると、どうしても・・・次に浮かぶ事は、
・・・・・・今頃何をしてるのかということ。

「関係ねぇ~よ」
どうせ、帰ってきたら一番に俺の所に来るに決まってる。・・・決まってる。
そう小さく呟いて缶の残りを飲み干して、グシャリと握りつぶすと、新しい缶に手をつけた。
冷えたビールに口をつけながら、ソファーの背に片手を伸ばすと、自分のジャケットとは違う質感の生地が指先を掠める。
なんだ?っジャケットは肘掛に投げた筈と、指先の方向に顔を向けると、そこにはいつかの親父の薄い桃色のジャケットが置いてあった。
・・・なんとなくそれを胸元へ手繰り寄せる。

片手に持ったビールの缶の水滴がしっとりと指を濡らし、指を伝ってソファーに染みを作った。
手繰り寄せたスーツからは、親父の残り香がシンタローの鼻腔をくすぐり・・・1週間ぶりのその香りにジーンと鼻の奥が痛くなる。
それと同時に、胸の鼓動が急に跳ね上がり、カーっと体温が上昇しはじめた。

「・・・―――――ッ!!」

一気にビールを喉に流し込む。液体が喉を通らなくなると、缶を強く押し付けるような形でテーブルに投げ捨てた。
「っ・・・マジかよ・・・」
急な身体の変化についていけずに、平静を保とうと紛らわすように親父のスーツを両手で掴んだが、それは逆効果だった。
「オヤジくせぇ・・・」
微かに残る匂いに誘われるようにして、顔を埋めてしまうと匂いが強くなって、胸の鼓動がうるさいほどにがなりたてる。
そして・・・下半身からは這い上がるような速度で、よく知った淫らな衝動が重く圧し掛かってきて。
身体の異変にそろそろと、片手でズボン越しに自身に触れば・・・それはすっかり硬くなって自己主張していて・・・。
「くそっ、どうしたって言うんだよ!! これじゃ・・・まるで・・・――――」
・・・親父に欲情してるみたいじゃないか。
いくら舌を打って、悪態をついても鼻についてしまった匂いが消えることも、熱が治まることもなくて・・・、まるでその匂いに包まれているような錯覚さえ覚える。
そう、そこに親父がいるような錯覚に――――
ジャケットに顔を埋めたまま目ぶたを閉じれば、憎たらしい持ち主の顔が浮かび上がって・・・。

『シンタロー・・・・・・』

低い絶対的な命令口調の声が、頭に駆け巡る。
耳もとで囁かれているような、頭の中の声にビクリと手の内にある自身が質量を増して、窮屈だっと訴えてくる。
「ちくしょう~っ!! なんだって・・・こんなこと・・・ぁ・・・・・・ッ」
すきっ腹にアルコールを流し込んだからだ、それに最近忙しかったら・・・溜まってるだけだ!!
そうに決まってる。
いくら否定しても、一度ついてしまった欲望の火は消えそうにない。
悪態をつくシンタローの言葉でさえ、微かに震えて悩ましい。
最後に処理したのって・・・っと思い出そうとすると、あの時の親父の言葉が思い出される。
「本気なのかよ・・・親父っ」
本気で手を出すつもりなのか!?っそう思うと、押さえることのできない衝動が突き抜ける。それと供に、決して認めたくないと思っていた、胸の中のドス黒い正体を思い知らされて・・・
・・・---嫉妬。
俺はあいつに嫉妬してる。認めたくない言葉に頭がガンガンと痛み、どうにかなってしまいそうだ。

こんな事で思い知らされたくないのに、淫らな欲望の炎は消えることなく・・・。
逸る胸の高鳴りにせかさせるように、シンタローの指がもどかしい手つきながら、勝手にベルトを緩めて、チャックを乱暴に下ろした。
「・・・あっ・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・」
手を滑り込ませると、シンタローのモノはすっかりと出来上がっていて、ドクドクと脈をうちジットリと湿り気さえ帯びていた。
足を包みこんでいるズボンと下着が、ひどくうざったい。
ズボンを下着ごと脱ぎ捨てると、外気に触れてひやりとした感覚とともに、ゾクリと肌が粟立つ。

『シンちゃんのかわいい坊やが泣き出しているよ』

いつもされるような親父の指の動きを真似して、右手で親指と一指し指で輪を作って、シンタローは擦りあげる。
自分自身を・・・・・・。

「はぁ・・・・・・あ・・・・・・あ、はぁ・・・・・・ん」
部屋には自分しかいないと思うと、自然と素直な声をあげてしまう。
酷い罪悪感があるのに、手はそれを裏切って走り出す。
「ちっ・・・くしょ・・・ぁ、 はっ・・・んんっ」
ソファーにまともに座っていることができず、横向きにソファーに倒れこむと親父のジャケットが頭部の下敷きになった。
呼吸をする度に嫌でも、親父の匂いが存在を知らしめる。
こんな時でさえ、本当むかつく奴だ・・・
それなのに親父の匂いが鼻腔を掠めると、そこに親父がいるような錯覚さえ覚えて・・・シンタローの身体はますます追い詰められていく。

『ふふ・・・、ちゃんと握って擦ってほしい?』

おまけに、いるはずもない親父の声が頭の中を響きわたる。
自分の手なのに、親父の愛撫を真似ると自分じゃないような気がしてくる・・・。
足りない・・・もっとちゃんと触って欲しい。親指と一指し指の愛撫では、擦る面積が少なくて物足りない。不自然に腰が動いてしまう。
「もっと・・・っ、んぁ・・・・・・あ・・・・・・あ、はぁ・・・ん」
右手の指全体で握りこんでゆっくりと抜きあげると、すぐに粘着質な音と切なげな吐息が、室内中を満たす。
「あっ・・・、・・・おや・・・じぃ」

『シンちゃんのすごい・・・滴ってる。・・・パパの手ヌルヌルだよ』

「る・・・っせ!! ぁ・・・あぁ・・・はぁ・・・ぁ・・・・・・んぁ!!」
亀頭からの先走りの液体が、竿をつたって指を濡らす。その滑りを利用して手の全体で亀頭をもこねくり回すと、鋭い快感が背筋を走りぬけた。
空いた左手が無意識にシャツの上から乳首のあたりを彷徨い・・・一指し指の腹で押すと、それは押し返すほどに硬く立ち上がっている。

『シンちゃん、ココ好きだよね。弄るとすぐに濡れてくるもんね』

「は、あぁ・・・・・・ふ、んぅ・・・・・・」
指の腹で何度かこねくり回すと、いつもされるように爪で弾く。繊維が敏感な皮膚と擦れると、ビクリと身体が震えてしまうのに・・・もっと乱暴に弄くり回されたい。とさえ思ってしまう。
いつものように、乱暴なくらいに爪を立てられて、指と指で擦るようにクリクリと乳首を捏ねくりまわされたい。

その欲望をシンタローは、我慢することができなかった。

「っはぁ・・・・・・親父・・・ぃ」
シャツのボタンを外さずに裾から入れると、直に乳首に手を伸ばして、知らずに親父の名を呼んでいた。
親指と中指で、乳首を摘むと強いぐらいに、力をこめて捻る。鋭い痛みとともに、その刺激に自身のペニスからの液が、手を濡らしソファーに更なる染みを作った。
「ぁっ・・・んっ、ああ」
コリコリと乳首を指の腹で擦り合わせて、人差し指で先端を弾きあげると、快感がシンタローの身体を駆け抜けて、欲望は吐き出そうと一気に階段を駆け上がるのに・・・
もどかしくてじれったい。
だめだ・・・違う。どんなに親父を思い浮かべても、物足りない。もっと、
もっとして欲しい。いつものように、意地の悪いその手と唇で・・・。乳首を吸われて痛いほどに歯を立てられたい。
ペニスを扱う手を、乳首を弄ぶ指を親父に置き換えて、シンタローは自慰に耽った。

『ほら、イキたいんだろう。いいんだよ、イって』

「・・・あん・・・はぁん、・・・あ、・・・あぁっ・・・親父っ」
激しくそれを上下に抜きあげて、乳首に爪をたてると目の前が白くなって、シンタローは声を抑えることもできずに、マジックの名を呼んで、精液をソファーに撒き散らした。

「はぁ・・・はぁ・・・・・・はっ・・・・・・」
髪の毛が額にかかって汗で張り付いているのを、払うのも面倒で、シンタローは絶頂の余韻に浸りながら、そのままの姿勢で荒く呼吸を繰り返す。
静かな部屋にはシンタローの荒い呼吸が響き、マジックの残り香はシンタローの精液の匂いに変わっていた。

瞳をあけると、潰れたビールの缶が転がっている、テーブルが目にうつる。
テーブルの角には白濁とした点々が広がり・・・ぼんやりとそれを目で追うと床やソファー、握り締めていたマジックのジャケットにも精液が飛び散っていた。
それを見とめて、一気に波が引くように、シンタローの熱が冷めた。
「何やってんだろ、俺・・・・・・」
だからといって、指を動かすのさえ億劫な、脱力感はぬぐえない。シンタローは、で自身を握り締めたままの格好で、力無く呟いた。
欲望の熱の後に押し寄せてきたのは、後悔という名の羞恥心。
いくらんなでも、恥ずかしすぎるだろ、こんなの。・・・何やってんだか・・・・・・。
こんな所で、それもマジックのジャケットの残り香で、自慰するなんて。信じられない。
もっと信じられないのは、吐き出したというのに足りないと思っていることだ・・・。シンタローの身体の一部からは、疼きが起こりそうで・・・。
これ以上、考えるとよくない方向に進んでしまいそうな自分に、否定するように首をふるとため息をついて、起き上がると力なくソファーに身をもたらせた。
すっかり汗をかいて、ぬるくなったビールに手を伸ばすとブルタブを押し上げて、紛らわすようにゴクゴクと喉を鳴らして胃におさめる。
ぬるくなったビールはけっして美味しいものではなかったが、飲まずにはいられない。こんなこと・・・信じられるはずがなかった・・・。
「こんな・・・欲求不満みたいじゃね~かよ」
そう呟いた瞬間、パタンという扉が閉まる音が、部屋に響いた。

はっとして、着崩れた衣服を整えもせずに、ましてやズボンを履くことも忘れて、シンタローが音がした方を向くと、そこにはココにいる筈のない男が立っていた。
それは勿論・・・・・・。
「お・・・お、親父!!?」
無遠慮に部屋に入り込むことのできる男。そして、シンタローの腕の中にあるジャケットの持ち主。
マジックは無言で、ソファーにいるシンタローと回りの状況を見回しながら、シンタローの近くまでくるとその格好を見とめて、ようやく口を開いた。
「なにをしてたのかな。シンちゃん」
ビクッとシンタローの肩が揺れる。
ナニをしていたかなど、一目瞭然なのに、シンタローの横のソファーに片手を置くと片眉だけを軽く上げて、無表情のままシンタローを見つめると、シンタローはこれ以上ないくらいに赤くなり、咄嗟に腕のなかのジャケットを膝元にかけたが、刺さるような視線に居たたまれず俯くのが精一杯だ。
それでも、床に転々と残る白濁とした液体と、室内に残る独特の匂いは隠しようもなく、益々顔を赤くして、顔を横に逸らした。

着崩れた上半身に、ジャケットを羽織っただけの下半身・・・自分の格好がひどくみっともなくて、情けない。
消えてしまいと切に願わずには、いられなかった。

そんな、指が白くなるほどにジャケットを握り締めるシンタローと、視線を合わせるようにマジックは屈むとジャケットを掴む手の甲に自分の手を重ね合わせて
「パパのジャケットに残る、この染みは何かな?」
「・・・・・・っ」
マジックの言葉に、唇を噛むシンタローを尻目にシンタローからジャケットを剥ぎ取ると、そのままワザとらしくジャケットに顔に寄せて・・・
「シンちゃんの匂いがするね・・・」
そういって意地悪く口元をゆがめて、シンタローを見やった。

「寂しくて一人でしちゃったんだ」
クスクスと喉を震わせて笑いながら、用済みとばかりにジャケットを床に投げ捨てると、手の甲に重ねていた手をシンタロー自身で濡れそぼった腿に滑らせてた。
久々のマジックの手の感触に、シンタローは小さく声を漏らして、ビクリと身体を更に硬直させる。
「・・・・・・ぁっ」
腿に置いた人差し指で、腿から中心に向かってゆっくりとなぞりあげると、露になっているシンタロー自身がピクリと微かに反応を示す。
「弄ったのはココだけ?」
根元から先端に向かって、濡れた幹に指を這わせたると、シンタローが恥ずかしさを紛らわすように声をあげて、自身を滑るマジックの手を掴んだ。
「なんで、いるんだよ・・・帰ってくるなんて聞いてないっ」
「そろそろシンちゃんが寂しがる頃かな。っと思って私だけ帰ってきたんだよ。反省してるかと思ったら、まさか・・・パパの指を浮かべてシテたなんて・・・ね」
いけない子だっと言葉を続けるマジックのその言葉に、シンタローは弾けたようにマジックを見つめて、言葉を詰まらせた。

「・・・・・・・・・おや・・・じ・・・」
やっぱり、聞かれてたのか。
何をしていたかというのは一目瞭然。
だが、親父の名を呼びながら達したのがバレるとなると、話は別だ。
驚愕に開かれるシンタローの瞳を見つめながら、驚きで自分の腕を掴む力が緩んだ隙に、マジックは指を先端まで走らせた。
「あっ・・・ふぅ・・・・・・!!」
一度達したばかりで、赤く敏感になっている部分を、指先でグリグリと押されると、自然と腰が引けてしまう。咄嗟に両手でマジックの手首を再び、掴み押さえこんだ。
それでも、久しぶりの親父の指先に身体の内からはいいようのない、感覚が湧き上がってくるのが・・・こんな状況だというのによく分かる。
恨めしい自分自身に、悔やんでも悔やみきれない。

「あいつは・・・どうしたんだ」
両手の手で押さえているというのに、悪戯に動く男の指先にギリギリと歯を食いしばりながら、シンタローは口を開いた。
「そんなに、あの子の事・・・気になる?」
「・・・・・・・・・・・・別にっ」
ココまで来ても、フンっと鼻を鳴らして顔を背ける我が子の姿に、口元を綻ばせると、震えるシンタローの耳元に唇を寄せて「嘘つき」と囁いた。
「・・・・・・・・・っ!!」
耳まで真っ赤に染めるシンタローに笑みを浮かべると、羞恥心で赤く染まる耳たぶを舌で弄る。
「放っておかれたから寂しくなって、嫉妬して一人で処理したくせに・・・聞こえてたよ。『親父っ』っていいながらココから沢山白いの出したよね」
「いっっ!!」
一指し指の爪を、先端に食い込ませると、痛みにシンタローが呻いた。それでも、痛みに萎縮するどころか、新たな液体がマジックの指を濡らす。
「いけない坊やだ。またこんなにして・・・・・・。さっきイッたばかりだろう?」
「っ・・・・・・かよ・・・・・・・・・」
身体を小刻みに震わせながら、聞こえるか聞こえないかと言うほどに、小さくシンタローが呟くと、そんな息子に「何?」っとマジックは小首を傾げて、口元に顔を移動させて次の言葉を待った。

「悪いかよ!!いい歳して嫉妬して悪いかよっ。どうせ素直じゃねぇよ!!」
今までの鬱憤を晴らすかのように、シンタローは大声を上げてマジックの身体を押しやると立ち上がった。
至近距離でのまさかのシンタローの声にマジックは眉を潜めて眼を見開くが、すぐに平静を装うと、立ち上がったまま俯くシンタローの足元に方膝を着いて、両手を握り締めた。

「・・・嫉妬してる」
マジックの不可解な言葉に、疑問を持ちつつも、まさかの自分の行動に居た堪れず、握られた手をふり解こうとシンタローは躍起になって抗った。
もう一分一秒たりとも、居たくない。笑いたければ笑うがいい。そんな心境のシンタローにマジックが言葉を続けると、ピタリとシンタローの動きが止まる。
「私は、シンちゃんの周りのもの、全てに嫉妬してるよ」
「シンちゃんが、握り締めた空き缶や、私のジャケット・・・シンちゃんが触れるもの、見るもの全てに嫉妬してる」
なんと言っていいから分からず、俯く息子の姿に優しく笑みを深めながら、シンタローの片手の甲に軽く啄ばむように唇を落とした。


(・・・少し、否・・・だいぶ嫉妬してくれたみたいだね。思いかけず目の保養になったしね。しばらくは・・・自慰をネタに自由させてもらおうかな。ね、シンちゃん・・・)甲に口付けながら、そう決めると、マジックは笑みを深めて、握って指に力をこめた。


@おわり@


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ご来読ありがとうございました。
前HP携帯サイトでの20000打、チッチさまリクエストでございます。
マジックの浮気疑惑に、やきもきしちゃうシンちゃんということでした。
う、浮気疑惑?・・・こう読み返すと、浮気疑惑ではないのかも(汗)
メルマガにて連載しておりまして、メルマガでは前と先にちょこっとついておりましたが、あまりの長さにこちらでは
カットさせて頂きました。Hさま、色々とご鞭撻ありがとうございました。さすが、師匠~。
おんぶに抱っこでは!っと奮起しまして、自力で修正しました(笑)
・・・すっきりした☆と思ってます。いえ、思いたい。
けっこう、文面も弄りましただので、これはこれで、別ものとして楽しめると思います。
でも、こっそり師匠になおしてもらったものもUPします。いやーさすがです!!
そちらでは、もう少し進んだ内容までで終わる予定です(笑)

それにしても、調子にのってシンちゃんに、なんてことをさせてしまったのでしょうか・・・。
でも、楽しかったですー。パパの台詞が気に入ってます♪
毎回、濡場になると引かれないかなぁーっと心配になります。(今更ですね・・・)

チッチさま、素敵なリクをありがとうございました。
    *2005/08/01-UP*


dfs
迷探偵シンちゃん



それは、いつもの日常の朝にやってきた。

事件勃発の朝。

-AM7時-自室にて

「あぁ~。もう朝か、あっという間だなぁ」
いつもの通り、ベッドの上で身体を伸ばすと、起き上がり、床に足をつけた。が、
なんか、いつもと目線が違う?

風景の違いに首を傾げながらも、足を踏み出すと、大きくつまづいた。
「うぉっ!なな、なんだっ!!」
なんで詰まづいたか分からない。
フローリングに顔からぶつかり、赤くなった鼻をさすりながら、足元をみれば…。
あれ?パジャマこんなでかかったか?
裾が大岡越前なみに長くなっていた為、足を取られたらしい。
ん…?
裾の問題じゃない。袖だってぶかぶかで…。手をみれば、
骨ばった、ごつごつとした男の手から、ぷにぷにとした紅葉のような手で…。
ぺたぺたと顔を触れば…。

………。

…………ιι

鏡のある洗面所まで、でかいゆるゆるのズボンのウエスト引揚げ、なんとか引きずって歩いていたがラチがあかない。その場でパジャマの下を脱ぎ捨てたが、下着のボクサーパンツまでウエストがブカブカで下がってくる。面倒だとそれも脱ぐと、パジャマの上が膝まできて、大事な部分は優に隠してくれている。
そのまま格好で洗面所へ向かった。
いつもなら、すぐにいける洗面所も、今日はやけに道のりが長く感じる。軽く息を見出しながら、洗面所の鏡をみれば…

顔映らないじゃん!

いままで当たり前だと思っていたことが、普通にできない。目線は蛇口で、頑張っても髪の毛が鏡に映るかどうかという程度だ。
持ち前の運動神経をもってしても、それまでもが子供の体力になっているらしく、ぴょんぴょんっとジャンプしても、顔までは移らない。
近くを見回し、手頃の台を見つけて、踏台がわりにして鏡を覗きこめば、
小学生ぐらいか?10歳ぐらいの子供が鏡に映し出されているではないが…。

長い髪も、短くなり襟足がすっきりとしている。
「オレ?…か?ってオレしか映ってないし…」
突っ込みをいれたところで、むなしいだけ…この顔、写真でみたことある。
親父があの時の素直なオレを!!っと嫌味かお前!!というような、写真の数々を部屋に飾っていたのを思い出した。
確か、こんな顔のやつが親父の隣りで、満面の笑みを浮かべたり、大泣きしている写真があったような…。

でもと…チラリと鏡をみれば…吊りあがったきつい眼差しも、幼さが加わって和らいでいる。が形のいい漆黒の瞳に、ぷっくりとした唇…愛らしい顔立ちだな~。
「やっぱオレって、昔から可愛かったんだなぁ~」などどいう余裕も出てきた。
なんせ、最近ネコになったばっかりだしな。さすがになれてくるぜ。
さて、どうしたもんかな。
踏み台から、ぴょんっと飛び降りると、腕を組んだ。

原因は分かってる。
今回も親父に間違いない!! 問題はそれをどうするかだ…。
この前と同じく、親父の知らないうちに解決しようとしても、見つかるに決まってる。ましてや子供の自分になにが出来るのか。
子供…。―――そうだ子供だ!!

…子供なら子供の特権てやつを精一杯使うしかない。

虎穴にいらずんば虎児を得ず!! ここは乗り込むしかねぇだろ!!
見かけは、ちょっと…かなり!!生意気そうだが、可愛らしいちみっ子が一丁前に腕を組むと、ニヤリと唇の端をあげて笑みを浮かべた。

―AM7時30分―行動開始

まずは…このパジャパから着替えないとな…。っと子シンタローが思案していると。(以下シンタロー)ノックも無しにドアが開く音がする。

きたっ!!

本当はこっちから乗り込むつもりだったが、大方…うまくいったか様子を見に着たというところだろう。

戦闘開始だ。

深く息を吸い込むと、ゆっくりと息を吐く。そうして気持ちを落ち着かせると、表情も小生意気な子供の顔から、愛くるしい従順そうな表情へと一変させた。
シンタローの予想通り、迷わずに寝室にむかってくる足音が聞こえてくる。
そして、
「パパっっ!!!!」
とマジックの姿が見えるやいなやシンタローが、マジックに向かって飛びついた。
「し、シンちゃん!?………」
まさか飛びつくとは思ってなかったのか、マジックの腕が小さな身体の背中に手を回さずに固まっている。
「起きたら、パパがいなかったから…ボク…ボク…っ」
マジックのピンクのスーツのジャケットに顔を擦りつけると、グスグスとえづいた。
(どうだ・・・!!俺の演技も捨てたもんじゃねぇな)
精一杯、ジャケットに額をグリグリを押し付けながら、眼を見開いて瞳を充血させる。
そして、目の前がうっすらと涙でぼやけてきた所で顔をあげて、上目遣いにマジックを見つめると、マジックが柄にもなくうろたえているのが分かる。
(おもしれ~~!!)
本当なら、床を叩くほど笑い転げたい!!が、そうしたらバレてしまう。
口がひくひくと、引きつってしまいそうなのを歯を食い縛って耐えると、自然によってしまった眉間に皺を悩ましげな眼差しに変えて、顔でマジックを見つめる。
「シンちゃん…子供になっちゃったの? 今、いくつか分かるかな?」
シンタローの目線まで腰をおとすと、シンタローの涙で(充血して)潤んだ瞳を心配そうに、見つめる。
少しうつむいて、指を折って数えると控えめに「10歳?」とだけ応えた瞬間、自分の身体をぎゅっと抱きしめると同時に、小さくマジックが「おかしいな…」っと呟くのをシンタローは聞き逃さなかった。
(やっぱり!!)
たぶん、親父がドクターに頼んだのは身体だけが子供になる薬だ。いくらなんでも、記憶も子供の俺に手出しはしないはず。
親父と初めて関係を持ったのが、中学の後半だから…外見だけでなく中身も子供の俺には、手出しはできないに決まってる。
シンタローを抱きしめたまま、どこか考え込んでいるようなマジックに、シンタローが恐る恐る話しかけた。
「パパ?…どうしたの?」
「ううん、なんでもないんだよ。…それより、シンちゃんなんでズボンはいてないのかな?パンツもあんなところに脱ぎ散らかして…」
(ギクっ…!!やばい…どう誤魔化すか…)
自然とマジックの袖をギュっと掴むと、考えをめぐらせた。
「…分かんない。 トイレにいこうとして、脱いじゃった」と言い終えると、添えるように小首を傾げてマジックを見つめる。
都合が悪いときには、コレに限る!!

子供の特権だよな~。それに子供って訳わからんような行動するしなvvと心の中で思ってるとは思えない、愛くるしい表情で…。
「そっか~v分かんないよね~」
などと、マジックもつられるように、シンタローと同じ方向に首をかしげて、笑みを浮かべた。そして、改めてシンタローの頭からつま先までを目で追った。
ぶかぶかのパジャマ一枚を着込んでいる姿は、子供とはいえ…そこはかとない色香が漂っている。パジャマの上着から伸びる白いスラットした華奢な足。
どこもかしこも柔らかそうで、軽く歯を立ててしまいそうなほど魅惑的だった。
チラリズムは男の浪漫!!と、マジックが思ったが分からないか、シンタローの子供姿を懐かしむように凝視するマジックに「パパ……・・・」と子供特有の高い声で呼び止められる。
「…鼻血……でてる」
多少怯えを含んだ瞳とシンタローの声に、マジックは我に返ると、鼻血など気にならないのかシンタローを抱き上げると歩きだした。
「さ、ここじゃ不便だろう。パパの部屋にシンちゃんのお洋服用意してあるからね」


―AM8時15分―敵地進入(マジックの部屋)

けっこう、簡単だったな・・・。
きっとこの部屋のどこかに、大人に戻す薬があるはずだ。ぐるりと部屋の中を見回して、
…しっかし……あのアーパー親父は…ιι
用意された洋服を目の前にして、シンタローは一つため息を漏らした。
その洋服とは…赤い総帥服の子供バージョンで、ただ違うのはズボンが半ズボンだということだろうか。上のジャケットは2パターンあり、袖がるものとノースリーブで…。
子供に戻して何する気なんだか、こんな服まで用意して…バレバレじゃねぇか。 まっ、親父が犯人だとこれで決まったようなもんだ。
後はこの部屋のどこかにある薬を、俺の中身が大人のシンタローだとバレる前に見つければ…――――。
「シンちゃん。着替え終わった?」
ドアのノックとともに入ってきたマジックに対して、小さく舌を打つとクルリと振り向いて笑顔を振りまいた。
「ううん…迷っちゃって…。なんで、この服なの?いつもは普通のシャツだよね?」
「だって、前にシンちゃん。パパみたいな赤い服が着たいって駄々こねてたでしょ」
そう言われれば、ぐうの音も出ない。「そうっだったかな?」と笑顔で乗り切り、露出度の少ない袖まであるジャケットを手にとった。
マジックのあからさまな視線を感じながら、袖を通し全て着終わったところで、後ろからはしゃぐ声がする。
「シンちゃん、かわいい!!はやく、前向いて!!ほらほら」
しぶしぶ振り向けば、マジックには恥らってるように見えるらしく「照れなくていいよ!!似合ってる~」などと嬉しくもない励ましの言葉とカメラのフラッシュが飛んでくる。
「ほら、スマイル、スマイル!!」
バカ親父!!殺す!!絶対殺す!!っと心の中では思っていても口に出してはいけない…。なんせ昔の俺は親父大好きな素直なガキだったらしいからな。
口に出せなくても、親父にやり返す方法はいくらでもある。なんとかして、親父を部屋の外へ出さなくていけない。

さて、どうしたもんか…―――。

マジックへひきつったような、笑みを浮かべながら、次の作戦を考えた。

―AM9時―同じく、敵地マジックの部屋

丈が膝ほどある黒のブーツを履き、赤の半ズボンに、同じく赤のジャケット、シャツは白・・・子供にしてはやや開襟すぎやしませんか?との突っ込みをいれたい・・・。
あつらえた様にぴったりのサイズにも・・・。
が、ここは黙認するに限る。
そして姿見を見て、やっぱ俺って最高!!と親父の「シンちゃん最高!!」っという言葉に酔いしれそうな自分を叱咤すると、任務に戻る。

シャッター音と、次に控えられている洋服の数々に終わることのなさそうな写真撮影に頭を抱え・・・ふぅ~っとため息をつくと、それを疲れたと察したマジックがシンタローに声をかけた。
「うん、お腹空いちゃった…」
マジックの言葉に便乗すると、お腹のあたりを押さえて瞳を伏せた。
「ごめんね!!もうこんな時間…すぐにご飯にするからね。何が食べたい?」
いそいそと赤い布地にマジックっとプリントされたエプロンを身に着けると、キッチンへと向かう。そんなマジックの後姿にオムライスとプリンをリクエストすると、マジックは困ったような顔をして振り返った。
「う~ん…プリンはちょっと…すぐには出来ないよ」出来合いのものじゃ嫌だろう?と困ったように眉を寄せて訊ねるマジックに、「嫌だ!!プッ●ンプリンとかじゃなくて、パパの手作りが食べたい!!出来るまでは何にも口にしないし、パパとも会いたくない」っとどこかのちみっ子のような口ぶりに手足を振り回して駄々をこねる。とマジックは了解っと肩をすくめて、キッチンへと姿を消した。
よしっ!!プリンの生地が固まるまで、少なくとも2時間以上はかかる。それまでに、探検と称して調べまくってやる。

どこに用意していたのか、虫眼鏡のようなものを片手に持つと、気分は名探偵。
作戦開始!!とばかりにまずは書斎へと足を踏み入れた。


―AM10時10分―マジックの書斎

とはいえ、疑わしい文献は出てこない。何か手がかりがあればっと思ったが、あるのは小難しい本から、自身の著書ばかり・・・。不便ながら小さい体を使って、はしごに上り隅々まで探したが、何も手がかりは得られなかった。仕方がない、次の部屋にいくかと、はしごを降りようと片足をかけたところで、遠くで自分を呼ぶ声がするではないか…。
夢中になって気付かなかったが、そんなに時間がたってるのか!?キョロキョロと周りを見回して時計を探す。
と再び、名前を呼ぶ声がする。
「は~い!!今、行く~」
おざなりに返事をして、仕方なく虫眼鏡をポケットにしまうと、はしごからひょいっと飛び降りる。そして、余計な詮索をされて怪しまれないようにそそくさと、マジックの声がするキッチンへと向かった。
キッチンにはエプソン姿のマジックが、出来たばかりのオムライスがのっていると思しき皿を片手に持っていた。
「先に、これだけでも食べてなさい。お腹すいちゃったでしょ?」
「パパ~っ」
そいう言って振り向いたマジックの懐に向かって、体当たり・・・じゃない。抱きついた。
片手に皿を持つという不安定さと、不意打ちにマジックの身体が微かにだがバランスを崩しているのを見計らって、強くエプソンにしがみつく。
「こら、こら。シンちゃん危ないよ。お皿落っことしてしまうよ」

落とせよ。てめぇっ!!っとばかりにグイグイ体を押し付けても、所詮はチミっ子。マジックの身体は最初はふらついたにしても、すぐにビクともしない。

それどころか自分の身体を片手で抱きかかえた。

「チっ・・・」

抱きかかえられながら、思わずギラリっと睨みつけた、瞬間…マジックと視線がぶつかり、すぐに笑みを浮かべると可愛らしく首を傾けた。

…落として時間を稼ごうと思ったのに…作戦失敗か。っと心中は穏やかではないが…。


―AM10時10分―ダイニングテーブルに連れてこられる

「ほら、あんまりおいたしちゃダメだよ」

そのまま、片手で抱き上げたまま、テーブルに座らせるが、何分背が小さくなってるため、普通なら差支えがないが…

「パパ…テーブルが高いみたい」

大人用のイスに座ると目線がテーブルをやや超えるぐらいで、前に置かれたオムライスの皿とお見合いするような形だ。これじゃ、満足に食べることは難しい。

「おや…困ったね。子供用の置くイスはないし…クッションじゃ、不安定だよね」
顎に手をやってしばらく考えこむと、いい案でも浮かんだのかポンっと手を打った。
…なんだか、すっげー嫌な予感がする。親父が口を開く前に、イスから飛びおりた。
「いいや…お腹そんな空いてないし、プリンが出来たら呼んでね」
クルリとイスに背を向けると、キッチンから離れるべく足を踏み出したが…気付けばイスに逆戻りしていた。
「ふぇ…?」
違っているのは、今度はオムライスの皿が見下ろせるって事と…座ってるクッションがいやに人肌というか…背もたれもいやにがっしりと硬く暖かいのは気のせい…―――じゃない!!
こ、これって…膝に座ってるって!!!
いきなりの展開と、まさかの格好に思わず、「ふざけんなっ」っと罵倒する言葉が飛び出そうになったとき、親父の嬉しそうな声が後ろから聞こえてきた。
「ほら、これなら丁度いいだろう」という言葉とともに、両手がしっかりと前で組まれていて、抜け出せそうにない。

バカ親父…。

いかん、いかん。俺は素直な可愛い俺を演じなければいけないんだ。
はぁ~…。
一つこっそりとため息をつくと、仕方がないとばかりに渋々スプーンを手にとり、オムライスを眺めて眩暈を起こしそうになった。
美味しそうだからじゃない…否、旨そうはうまそうだが…本当、俺の趣味を分かってる。卵は半熟だし、食欲をそそる匂いにゴクリと喉がなる…
が、オムライスの上のハート型とその真ん中の日の丸の旗…その下に「パパ大好き」というケチャップで書かれたかものを除けばだ。
しばらく、その文字とハートを見つめていると、またもや浮ついた声で、「パパが食べさせてあげようか?」とスプーンに手が添えられて、大丈夫だからと首をふるとスプーンの裏で文字を消してから、一口に運んだ。
「うまい…」
思わず、ポツリと呟いた。が、「うまい?」というやや疑問の声にハッと我に返った。
やばい、やばい…。えっ…と、素直な可愛い俺なんだから「うまい」はダメだよな。

「とっても美味しいよ、パパ」
エヘっと後ろをむくと、「パパも食べる?」っとスプーンに一口のせてマジックに向かって差し出した。
「ダメだよ、そんな悪い口のきき方したら」
メっと軽く睨むと、すぐに顔をにやけさせてシンタローが差し出したオムライスを食べた。
「ごめんね、パパ」
申し訳なさそうに、瞳を潤ませればこっちのもの。
いや~楽じゃねぇ?これ。
使えるな、うん。
この調子で薬頂戴っていったらくれねぇかな?
いや、ダメだよな。そんなことしたらバレちまう。今は10歳の(本当に10歳かは分からないが…)子供なんだから、記憶があるってことがバレちまうからな。
なんとかして、親父をこの部屋から長時間離れてもらわねぇと。
今後の作戦を立てながら、黙々とオムライスを食べ続けた。そして、食べ終わる頃「そろそろ出来たかな?」っと俺をいったんイスから下ろしてキッチンへ向かうと、親父はプリンをもって帰ってきた。
また、膝の上で食べされちゃ~かなわねぇ。なんとかして、逃れるべく咄嗟に親父にねだった。
「ね~、ソファーで食べてもいい?いいでしょ~?」
親父のズボンを摘んで引っ張ると、上目遣いに思いっきり甘えた声を出して駄々をこねる。
う…気持ち悪い!!辛抱だ、辛抱だ、俺!!
自分で言っておきながら、自らの声色に込上げてきそうな吐き気を抑えながら、おねだりすると「お行儀が悪いよ」とごねていたマジックも、承諾してくれた。
ソファーに座りながら、プリン…プリンアラモード(さすがだ。ただのプリンだったら、あれこれ文句をいうつもりだが、文句のつけようもない、見事なデザートだ)にパクついていると、内線がなる。
「おや、無粋だねぇ…ちょっと待っててね」
そういって、うっとりと俺を見ていた親父が、短く舌を打ってコードレス電話の内線をとると、リビングから自室に行ってしまった。
マジックが自室に入ったのを確認して、急いでソファーの前のテーブルに皿をおき、会話を盗み聞きすべく後を追うとドアにピッタリと顔をつけ、耳をそばだてた。
「そうか…分かった。すぐにいく」
誰と話していたかは分からなかったが、親父は短くそういうと、電話を切ったらしかった。
それを確認して、急いで元いたソファーまで走ると、何食わぬ顔でスプーンを握る俺に、申し訳なさそうな顔した親父が戻ってきた。
「ごめんね、パパちょっといかなきゃいけないから、ここでお留守番してられるかな?」
シンタローの隣に腰をおろすと、背中に手を通して肩を抱くように手をおいた。
こんなに好都合な事は無い。二つ返事でOKすると、マジックがチラチラとこっちを見ている。
なんだ?バレたか…ここは寂しいそぶりをするべきだったのか?ギクリとスプーンを握る手にも力が入り、じんわりと手が汗ばんでいるのが分かる。そんなシンタローにマジックが声をかけた。
「シンちゃん…」
「…………なに?」
ゴクリとプリンを飲み次の言葉を待った。つるんとした食感のハズなのに、喉のあたりでつかえるような、硬い固形物のようだ。
「いつものやつを言ってくれないかな?」
「え……」っと言葉を詰まらせるシンタローに、ほらほらいつもの「パパ大好き」ってやつ。っとシンタローの柔らかい頬を突っついた。
いつもそんな事言ってたかぁ?そんな記憶はさすがに、これっぽちもない!!だが、親父がいうのならばそうなのだろう。早く早くと急かす様な、マジックの視線に覚悟を決めると、
「パパ…だ~い好き!!」
マジックにもたれかかると、上目遣いにマジックを見上げる。「シンちゃんっ!!パパも愛してるよ~」っと頬にスリスリと顔をよせ、名残惜しそうにぎゅうっと抱きしめるとため息をついて離れた。
「じゃあ、たぶん一時間ぐらいで戻ってこれると思うから」
はぁ~っと更にため息をつくと、「いい子してるんだよ」と言い残し出て行った。
プリンを食べ終えて、マジックの去ったのを確認すると、ドアに内鍵をかけて作戦再開!!とばかりに腕をまくった。


―AM11時45分―作戦再開、マジックのプライベートルーム

再度、書斎をぐるりと見回して、キッチンの戸棚などあらゆるところを調べてみた。もしかしてと思い、バスルームも覗いたが、薬らしき粉末もネコの時のような液体もでてこない。
残すはこの、プライベートルームと寝室のみ―――。
絶対あるはずだっ!!あの親父が薬を用意していないハズはない!!…もしかしたら、持ち歩いているのでは?という不安もよぎるが、その時はその時だ。出来る限りのことをしなければ納得できない。
へたれそうな自分を叱咤すると、引出しに手をかけた。すると
「ん?何だこれ?」
小さい茶封筒が、引出しの奥に転がっている。その中には、5粒ほどの錠剤とメモ書きが入っていた。
「もしかして!!」やった!!と小躍りしてしまいそうだ…手が緊張で震えている。ドキドキと胸の鼓動を抑えるとその走り書きを読んだ。
『解毒剤は3錠をそのまま噛み砕いて飲み込むか、水かぬるま湯で飲ませて下さい。10分程度でもとの大きさに戻ります…高松。』
元の…大きさって!!しばらく考えこんで、確認をもつと、これだ―――!!グッと拳を握りその場でガッツポーズした。逸る気持ちを抑えながら、その錠剤をまずは一つ口に放り込んで歯をたてた。
ガリっと噛み砕くと、口の中に甘い知ったような味が広がった。なんだ…?不思議に思いながらもう一つ口に含むと、甘いのと酸味の効いた味がする。
「これって…ラムネ?」
疑いたくは無いが、どうみてもラムネの味がする、更に一つ口の中に含みながら茶封筒の中を調べてみると、奥に紙が四つ折になっている。
訝しげにその紙を開くとその紙の真ん中には、デカデカと手書きで…
「は、ハズレ~っ!!」ふざけやがって、どういうつもりだと、紙をぐしゃぐしゃと丸めると、後ろに放りなげた。すると、
「残念だったね~」っと笑いを押し殺した声がするではないか。
ハッとして振り向けば、マジックが紙を拾い上げて丸まった紙をのばしていた。
「お、親…、パパ…っ」

引きつった笑みを浮かべて親父を見上げると、傍までよってきてシンタローの身体を抱き上げた。そして、同じ目線にすると、「もう、お芝居はいいんだよ。イヤ~うっかり騙されるところだったよ」と笑みを浮かべているが、今後のことを考えるとその笑みが空恐ろしい。
「可笑しいと思ったんだよ。パパはね、身体だけを元に戻す薬を頼んだのに、お前ときたら記憶までもが戻ってるじゃないか?ドクターが失敗したのかと思ったけど、どうにも昔のシンちゃんとも違う行動が節々にあったから、ドクターに確認をとってもらってたんだよ」
「………なんでこんなこと…」
こうなったら大人しくするしかない…、そして隙をみて逃げ出してやる。っと強く心に念じるが、それは叶うことはない。
「なんでだろう?子供のシンちゃんが見たかったからかな」
しれっとしたマジックの口調に、シンタローは呆れた声をやっとの思いで、搾り出すことしかできなかった。そんなシンタローに、急に顔を引き締めて、マジックは寂しげに呟いた。
「子供の時はよかったよ、お前は私の手の中にいて…でも、今はどんどん立派になって、私のことなんか必要ないぐらいだもんね」
ちょっと、昔にもどってみたかっただけだよ…。またどこかへ行ってしまうんではないかと、不安になる時もある。蒼い瞳を伏目がちに閉じて、そう言葉を続けると、言葉がでなくて…
「親父……」
と呟くことしか出来なかった。

「私にはそんな感情は皆無なものだと、そう思ってた?」
その言葉に、ためらいがちに頷くと「そうだろうね」とマジックが一人ごちた。
なんと声をかけていいか、分からなくてチラリとマジックの顔を盗み見ると・・・。
「なんてねvvだって、退屈だったんだもん」
手の平を返したような、マジックの態度に唖然…絶句という方がいいかもしれない。
「さ~て、パパを騙して薬を盗もうとした、悪い子にはなんだと思う?」
さっきの、雰囲気はどこえやら、ニヤリといやらしく口元を緩めて歩を進めるその方向は…………―――。
「ショタコン野郎!!こういうの、幼児虐待っていうんだぞ」
ばたばたと手足を動かして、マジックの髪の毛を引っ張ってみても、効果なし。その足は寝室へと止まることなく進んでいる。
「パパのことをショタコンなんて、いう子にはお仕置きだよね」
そのまま、シンタローの罵声を聞きながら、寝室に着くとベットに腰をおろし、その膝の上にシンタローを腹ばいにさせる。膝の上にちょうどお腹がくるような格好だ。
まさか…この格好って…ιιι全身の毛穴という毛穴から汗が噴出さんばかりの緊張で、心臓が波を打っている。
「ふざけんな!!くそ親父!! 離せ、離しやがれ」
マジックの膝の上で、ジタバタと身体を動かしても、「素直なシンちゃんもいいけど…。やっぱりそうこなくっちゃ、シンちゃんじゃないよね」とよけいにマジックを歓ばせるだけで終わった。
それでも、ばたばたと諦めの悪いシンタローに、マジックの振り上げた手がシンタローのお尻に向かって振り落とされ、パンっと乾いた音が室内に響くのと同時に、
「いっ…てぇ!!、痛い、痛いってば、ふざけろ!!いくつだと思ってんだ」
とシンタローの悲鳴にも似た、悲痛な声が漏れる。
いい歳して…外見は置いてといて、実際は大の大人がお尻ぺんぺんというのは、屈辱という言葉以外ない。そんなシンタローに対してもマジックは
「え、10歳なんでしょ?子供を叱っているだけだよ」と全く取り付く暇もない。
どれくらい続いたか、うっすらと涙が滲み、抵抗が止んだ頃…やっとそれは終わりをつげた。
「痛いだろう?でもシンちゃんがいけないんだよ」っと何度も刷り込むように耳もとで囁くと、ズボンを脱がせる。
ズボンの上からだったにもかかわらず、桜色の柔肌はマジックによって痛々しく赤みをおびていた。それを優しく撫で上げて、一つ唇を落とすと、そのままベットに仰向けに寝かせて、
「あの頃は、まだパパとこういう関係になってなかったもんね。昔のシンちゃんがどんなだったか教えてね」

そう言って、子供に戻った時から味わいたいと思っていた、真っ白な2本のほっそりとした足に手を伸ばした。
「…っ、な、なに!?」
あとを引く痛みのせいで、ぼんやりとなすがままになっていたシンタローは、足元からくる味わったことのない感覚に、ひりつく尻を押さえながら身体を起こして、身をこわばらせた。
いつのまにか、ブーツは脱がされ床へと転がっていた。
そして、気付けばマジックが、シンタローの左足の踵を両手で捧げ持ち、親指を口に含んでいたからだ。
マジックはシンタローの指を口に含んでおいてから、舌の先端で、親指と人差し指の間の部分を何度もゆっくりと舐め回す。
「ひゃっ、やだぁ!! ぁぁっ」
まさか、そんなところを口に含まれるとは思わなくて、必死に支えた腕に力をこめると、足を引っ込めようとするが、マジックは踵をつかみ逆にグット引っ張ると、ぴちゃぴちゃと音をたてながら人差し指と中指の間に舌を走らせる。
「あ――っ、やめろ!!」

指を舐められているだけというのに、ゾクゾクとしたものが全身を貫いていく。

顔を仰け反らせて、天井を見上げると目を強く閉じて、なんとか自分の足をマジックの口から離そう力をこめるが、両の手でしっかりと固定されて、薬指と小指の間の部分をも舐め回された。
「思ったとおり、柔らかくて…噛り付いてしまいたいほどだよ」
そう言って、左足の指を口から離すと足の甲に唇を落として、吸い上げた。白い柔肌はすぐにマジックの所有の証とでもいうような赤い痕を残す。
そして、左足をシーツの上にゆっくりとおろすと、右足を包み込むように持ち上げる。
「さあ、今度は右足だよ」
左足のときと同様に、それよりも激しく音を立てながらむしゃぶりつく。
逆に今度は小指のほうから、飴玉でもしゃぶるように口の中で転がし、ときおり歯をたてながら、指の間の股の部分に舌を這わせる。
「あぁぁっー!やめろ、やめろっ!」
顔を左右に打ち振るって、イヤイヤしながら逃げようとして、シンタローは身体を後方へ傾けた。次の瞬間、シーツの上に膝をたてた状態で、再び仰向けに倒れた。
両足の間の付け根の男性のシンボルが小さいが、ピョコンと天井にむかって立ち上がっているのが見えた。
その眺めに、マジックは身体が高揚していくのを感じる。心の端で、子供だという事実が歯止めをかけていたが、やや舌ったらずで普段のシンタローの声とは違う高音というのも、自分を煽るのは十分だった。
それに、中身が大人だというと、昔は感じることのなかった愛情ではない、欲情を意識せざるおえない。
マジックはしっかりと、右足の踵を掴むと、指の間を走らせる舌に力をこめた。
「やだ、それやだぁ!」
執拗な愛撫を嫌がるように、身体をねじって逃げようとすればするほど、マジックの征服欲が煽られる。それに、身を捩る度に赤いジャケットと白いシャツの間から、チラリチラリと立ちあがったものも垣間見えて…。
その赤と白と色合いに、チラリと見える角度がなんともなまめかしく、マジックの劣情を誘う。
「もう、やだぁ…」
敏感な子供の身体には、マジックの愛撫は酷だったのか感じすぎて、ひっくひっくとえづき、喉を震わせてマジックに哀願するシンタローの顔はぐっしょりと涙で濡れている。
「足の指が感じるなんて、思わなかった?」
身体を起こして、肩を震わせているシンタローのこめかみの辺りに、ちゅっと唇を落とすと、「それだけじゃないんだよ」と笑みを浮かべて、シンタローの右足を掴むとぺロリと足の裏を舐め上げる。
「ん、ふっくぅ…っ」
くすぐったいのか、ピクリとシンタローの身体が吊り上げられた魚のように背をしならせる。それでもかまわずに、吸い上げたりチロチロと舐めあげて、反応のいいところを探し出す。
ひとしきり舐め回すと、舌を踵の部分に走らせてアキレス腱から、ふくろはぎと膝の裏を経由して太もものあたりまで、ゆっくりと舌の全体を使って舐めると、シンタローは全身をくねらせて、マジックを楽しませた。
そして、そのまま足の付け根に向かって、ツツーっと舌先端を走らせると、「あぁ―――っん!」と甘えたような声をシンタローが漏らす。
そしてこちらも、右足を舐めつくすと、左足に移る。
なおも舐めあげると、嬌声を通り越したような、荒い息づかいを繰り返して喘いだ。
「小さくても、ちゃんと濡れるんだね、シンちゃんの」
腿に向けていた視線を少しそらすと、やや布を押し上げて立ち上がっている部分の先端からぷっくりと蜜を滴らせている。
「この、時はもう精通あったの?」
そう言って、指でピンっとはじくと、面白いように腰がはねた。執拗に、質問を繰り返し片手でおさまるシンタローのモノを掴んで、ゆるゆると揉みしだくと、途切れ途切れに否定する。
「そう…この時はまだだったんだね~。でも濡れてるよ…シンちゃんたら、可愛い顔してこの時から淫乱だったんだね」
マジックがわざと追い詰めるような言葉を使うと、シンタローは両手で顔を覆って、イヤイヤというように肩を揺らした。
「どうせなら、試してみようか」
シンタローの足首を掴むと手前に引き寄せて、大きく開く。目線がちょうと閉じられた蕾の前になるようにすると、顔を近づけて舌の先端を突き出す。
やすやすと挿れない抵抗感はあるが、舌を2センチほと蕾に埋め込んだ。
「さすがに、まだまだ青いって感じかな」
「やだ、やだー!!」
なおも、顔を振ってシンタローは羞恥心に耐えている。自分の身体であっても、感覚もなにもかもが、まるで他人の身体のようで、素直な身体に心がついていかない。
「さっきから、ヤダヤダばかりだね」
ふ~。っと困った子だとばかりに、マジックがため息をつくと、自然とその息が蕾にふりかかり、シンタローは嬌声をあげて小さい身体全体で仰け反る。
「身体はこんなにも素直なのに…ね」
「あ、あっ!やだぁ、やっ―――-!!!!」
面白がるように、何度も息とふきかけては、嬌声と身体を跳ね上がらせる。すると、徐々にだが硬かった蕾がピクピクと収縮を繰り返す。それを見計らって、舌を奥まで突きたてて粘膜をなぞるように舐めまわすと、手の中にあったものが、ピンと硬くなり先から微量だがサラっとした液状のものが飛び出して、マジックの頬を濡らす。
「これも顔射というのかな?」
おやおやと顔をあげて、全身を弛緩させ快感の余韻に振るえるシンタローを見つめると、見せ付けるように頬に手をやって精液を拭き取った。
「ちがっ…はぁ…こんなの…」
荒く全身で息をつくと、マジックの頬にうっすらと残る白い液体を目に止めて、顔をそらした。
「何が違うの?薄いけど、シンちゃんの味がするみたいだけど…」
クスクスと喉で笑うと、手についたものを舌で舐めとって笑みを浮かべる。
「さ~、次はどこを可愛がってあげようか?」そういって、ジャケケットに手を伸ばすと、ボタンを外して、白い解禁のシャツごと脱がすと床へ放りなげた。
途中、シンタローが手足をばたつかせたり、マジックの袖を掴んだが、子供の抵抗など無いに久しい、ベットの上には子供の身体のシンタローが全裸で仰向けてになっている。
好色そうな笑みを浮かべて、シンタローに腕を伸ばすと、抱きしめた。

「う~ん、パパの腕の中にすっぽり入っちゃうねvv」
ベットの上で胡坐をかいて、シンタローを抱き上げるとすりすりとシンタローの柔らかい頬に頬をよせた。が、なんだが肌が固くなっているような…。
気のせいかっと首を傾げて、背中に回した手に力をいれたが…やっぱり先ほどよりも骨ばっている気が…。
まぁ…いいっかvv
と軽くながすと、抱きしめたままシンタローをベットに押し倒した。
するすると、可愛いウィンナーをもう一度いじっちゃおうかなvと手をシンタローの下肢へ伸ばしたところで、手首をがっしり掴まれた。
さすがに、異変に気付いたのか顔をシンタローへ向けようとして、鼓膜に声変わりがすんだ男の声が響く。

「よぉ~。 パパ…」
唇の端をややあげて、冷ややかかに見つめる漆黒の瞳がマジックをとらえた。
まじまじとシンタローの姿をみれば…
さきほどの愛らしいものではなく、キリリと切れ上がった眼に変化し、ぽてっとした柔らかみのある唇は、情が深さそうなやや厚みのある唇となっている。
そしてなにより、短かった髪が肩を越すほどの長さに変わっていた。

「し、しっ…シンちゃん!!」
幼かったシンタローが、すっかり骨格もがっちりとした男へと変貌しているではないか!!
これにはさすがのマジックも驚きを隠せない。

なぜなら、ドクターからは薬を飲まなければ戻ることはない。と聞いていたからだ、そして。
先ほどシンタローが飲んだのは間違いに決まっている。本物は自分の内側のポケットに入っている。

念の為それを確かめて、もう一度手首を握っている手から、視線を移してシンタローをまじまじと観察した。
まだ、完全というわけではない…やや幼さが残るその顔立ちは士官学校を卒業したあたりという所だろうか、
「どうやら…一定時間を過ぎると自動で戻るみてえだな」
じょじょに、元の大きさに戻る自身の骨格を確認しながら、余裕たっぷり…なおかつ、地を這うような声がする。

(あんなに素直で、可愛かったシンちゃんが~~~っっっっ!!!!!!)
言葉にならない声を、飲み込みながら、後ずらろうとしても、がっちりと手首を掴まれてままならない。

お、怒ってる。怒ってるね。完全に怒ってるね~!!!

シンタローの顔は見たい、が、怖い。でも、シンちゃんの顔をみたい!!

いくら見ていたって飽きないんだから!!それに普段ならこんな至近距離で、シンタローから腕を掴まれるシチュエーションなんて、早々無い。
こんなに喜ばしいことは無いのに、今はその顔を見るのが恐ろしい。が、でもなんとかなるかもvv

といつものように、なし崩しでこのまま押せば…大丈夫!!いけいけドンドンだ。
と、どこからその自信が沸いてくるのか…マジックはチロリと上目づかいにシンタローの顔を見て、即座に顔を伏せた。

前言撤回!!!!!!

怒りを通り越したのか、冷ややかな侮蔑を含んだ瞳でじっとりと自分を睨みつけるシンタローと目があった。
そして、その顔の横には、そんな大きなの至近距離でくらったら、さすがのパパもあの世行きだよ…
と思うような特大の眼魔砲が…控えていて。


「―――ッッッッ!!!!!!!? ……」

後には爆音だけが残ったとか。


**********


「たっく、ろくなことしねぇんだから」
瓦礫の下敷きになっている父親の、その瓦礫の上に腰をかけて足をくむと組んだ足に肘をつき、頬杖をついた。
一つため息をつくと、どこか思い当たる節があるのか、しばらく考えた後、

「どこにもいかねぇよ…」

とだけ小さく呟いた。
それがマジックの耳に届いたかどうかは分からないが…。


今回はネコのリベンジになったのか!?
少しは成長したのか?
何故途中で戻ったか!?謎はお蔵入りのまま、今日もいく迷探偵シンタロー!!
頑張れ新総帥!!君の未来は明るいぞ!!

@おわり@
あれ…ιιι終わってない??

ということで、ご来読ありがとうございましたm(__)m
アヤさま、10000番キリリク。シンちゃん幼児化!!パパに悪戯されちゃいました。
こんなんでよかったのか!? 
はぁ、はぁっと息もあがります。
なんせ、初のショタ。いえ、2回目ですが前回はエロはなかったので…。
ショタは難しいですね…なんせ筋肉フェチなので、子供のムチっぽっちゃっとした、柔らかさを出すのは
想像が非凡なので、いつも以上にゴロゴロのたうってました。
甥っ子をジーっと観察したりと…怪しい伯母さんです。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
ありがとうございました。

幸央__〆(=・ェ・。=)




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