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2005年 バレンタインデー小説 マジック×シンタロー

************************************************


去年はシンちゃんから手作りのチョコレートをもらった。
なんでもキンちゃんから渡せとせかされたらしい。
今年はどうなるのだろうと心弾ませていたら、キンちゃんから思いもよらない言葉を聞いた。

「今年は、去年以上に余裕がない」

・・・・・・うわぉう。

シンタローとは毎日食事で顔をあわせるし、
職場=家のようなものだから何かにつけて会いに行ったりするが、
最近どうにも仕事がうまくいっていないようだ。
いや、国境を越えたテロリスト達に、
同じく国境を持たない我々が対抗している。という点においては成果を挙げている。
世界平和を無視した軍事政策を執っている国に対しての制裁も同様。
ただ、なるべく身内に・・・あるいは敵にも被害を出したくない。そういうコンセプトの基に建てられる計画は、
兵を大量投入した大規模な軍事作戦ではなく、少数精鋭で敵の頭を叩く。そういうものになっているのだ。
その少数精鋭に、総帥自らが含まれる事も多々ある。
シンタローが自分から参加しているのだが。
そして敵国から凱旋して来たシンタローを迎えるのは、
たった今時分がしてきた事を書類にまとめ、広報部に報告する作業。
一体いつ休んでいるのやら。
・・・・・・・・・・私もあのくらいのときはそうだったろうか?

説明が長引いたな。
つまり、毎日食事で顔をあわせるたびに、シンちゃんの顔に疲れがたまっているのが分るのだ。
やれやれ。私だってまだまだ現役なのだから、シンちゃんの代わりに戦場へ行ったっていいのに。
・・・・・・いっそのことガンマ団に新兵として入団試験受けちゃおうかなー。

「ごちそうさまでした。」
『ごちそうさまでした。』
せめてシンちゃんの励ましになれば良いとたくさんの具を煮込んだカレーを作る。
食べ応えもあり栄養満点。
今夜のカレーはちょっぴり甘め。
グンちゃん以外は辛いほうが好みだが、胃を荒らしても困るので、おなかに優しく作ったのだ。

「んじゃ、俺は部屋に戻ってソッコー寝る。」
「おやすみー」
「おやすみなさーい♪」
「おやすみ」
シンちゃんはあぁ言ったけれど、実際はそうじゃない。
この後も部屋に持ち込んだ仕事を片付けるのだ。
・・・・・・なんで知っているのかって?
・・・ふ。理由は詳しくいえないが、ヒントを出すとしたら
『シンちゃんのベッドの下や、机の引き出しの陰、ソレとすべてのコンセント差込口を調べてみると良い』
───といったところか。

何はともあれ、シンタローは今日も寝るのが明日になりそうだ。

・・・・・・うーん・・・



2月14日 23:30
シンタローの部屋の前。
ココアとチョコケーキを持って中の様子を窺う・・・
手にしたグンちゃん特製『ペン型受信機』で。
30秒ほど窺っていたが、ときおり「くそっ」とか「うっし」とか聞こえるということは、
まだまだ仕事の真っ最中なのだろう。
しかしここでじっとしているわけにもいかない。
廊下は寒いからココアが冷めちゃう。
コンコンコンッ
「シンちゃん? 起きてるんだろう?」
『起きてるけど・・・何かあったのか?』
入れとは言われてないが、すぐに返事が返ってきたので、ドアを開けて顔を覗かせる。
「お夜食の差し入れだよv
 チョコレートケーキとミルクココアv 」
どちらも2人前♪
「チョコケーキとココア・・・か?」
うーん。ソコだけ聞くとなんとも凶悪な組み合わせだねぇ。
「ケーキはブランデーをたっぷり使いつつほろ苦い大人の味だよ。 
 ココアは甘いけどね。さ。召し上がれw」
パソコンラックから椅子を借りてシンちゃんの横に座る。
「チョコづくめってコトは・・・バレンタインデーか?」
「その通り! いつもパパがもらっているからね。
 男同士は女役があげなきゃいけないって不文律があるけれど、
 あくまで不文律でしかなんぶっ!」
「そーゆー事は思ってても言うんじゃねぇ・・・」
ティッシュボックスを人に向かって投げるんじゃありません。
至近距離だったにもかかわらず、悦に入っていてかわせなかった私も私だけど。

「仕事しながらで良いから一緒に食べようね♪
 はいwあーん♪」
「・・・自分で食える。」
そう言うと思ったよ。
「いいの。シンちゃんはお仕事していなさい。ギリギリなんだろう?」
だったら持ってくるなといつものシンちゃんなら言い返しているだろう。
そう言って来ないということは、やはり小腹がすいていたようだ。
では改めて。
「はいあーんv」
「・・・んあ」
しばらくの逡巡の後、可愛らしい唇が開かれ(マジック美ジョン)差し出したケーキを口に含む。
・・・・・・・・・・・・幸せ・・・。
「どう?」
「悪くはないな」
つまり美味しいということらしい。

シンちゃんがお仕事している横で私が待機。
飲み込むのを見計らって一口サイズにきったケーキを差し出す。
噛んでいる最中、カップに手を伸ばしたら、ココアを一口飲んでから。の合図。
ふ。戦闘で鍛えた観察眼がこんな所で役に立つとは思わなかったよ。

気がついたらシンちゃんの分のケーキは終わっていた。
「もっと食べられるかい?」
そう聞くと、シンちゃんの顔がこちらを向く。
私のは食べる暇がなかったから、まだ口をつけないまま残っているのだ。
「こっちも食べられるかな?」
「・・・それアンタのだろ?」
「そうだけど、シンちゃんのために作ったんだからね。
 君が満足できるのが一番だよ。
 それに、1ホール作ったんだし、まだ残ってるから。」
だから私の分は気にしなくていいよ。と言うと、シンちゃんは少し考えた後、
「じゃぁ・・・お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「はい。たーんとめしあがれv」
ココアのお代わりもあるよ。

2月15日 0:45
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでしたv」
食べている間にもシンちゃんの手は安まず動き、
パソコンの中身は正面からじゃないと見えないよう保護フィルムが貼ってあるから、
私にはどうなっているのか分からないけれど、
プリンターが動いたということは、何かの仕事がひと段落ついたという所だろう。
サイバーテロというか、ハッカー対策のため、
本当に重要な書類はサーバーや個人のパソコンなどを含むコンピューターの中には長期間保存しないようにしている。
印刷した後封筒にまとめて金庫の中に保存しておくのだ。不要になったら燃やして処分。
この時代には原始的だが、だからこそ確実なのだ。


「まだケーキあるけど?」
あと1ホールの6分の4ほど残っている。
「いや、いい。これ以上食ったら眠くなる。」
「そう? でもポットは一応置いておくよ。まだ入ってるから」
「あんがとよ。
 ・・・アンタはまだ寝ないのか?」
できることならずっとシンちゃんの横で見ていたいけれど、そういうわけにもいかないだろう。
「いや、これを片付けたら寝るよ」
「のこしときゃ俺洗っとくぜ?」
忙しい人にソコまで任せられるわけないだろう?
「大丈夫。そんな暇があったら君はゆっくり休むことだ
 ───それじゃ、おやすみ」
「おやすみ」
椅子から立ち上がると、シンちゃんも立ちかけたが、それを制して肩に手を置く。
「見送りは結構。
 体を壊さない程度に頑張るんだよ?」
シンタローの額に軽く唇を落として立ち上がる。
「ホワイトデーのお返し楽しみにしているからね~♪」
真っ赤になっているシンタローを残して、私は部屋から出て行った。
・・・久々のスキンシップだったからなぁ。
私も妙に気分が高まっている。
・・・・・・・・・・・・・・・暴走しないでよかった。
今暴走したらシンちゃんの体を壊す上にキンちゃんに怒られるからね。


************************************************

3月13日───
「シンタロー。まだ礼の品が決まらないのか?」
「るっせーな! 今までとは勝手が違うから困ってんだよ!!」
「他の女の子達と同じでいいんじゃないかな?」
「いやだ!」
「なんで?」
「ここで既製品を買ってみろ!
 俺の負けだろうが!」
「・・・・・・そうなのかなぁ?」
「さぁな」
「畜生手作りの飴ってベッコウ飴か!?
 アイツがチョコケーキだったからキャンディケーキか!?」
「・・・僕そんなの聞いたことないよ?」
「こうなったら鍋いっぱいのベッコウ飴作って俺の気持ちだと送りつけてやろうか。」
「それって感謝の気持ちのほかに対抗心とか色々混ざってるよね
 ───あ、僕いいコト考えた♪」
「・・・期待はしてねーが一応言ってみろ」
「水あめと一緒にリボン巻いたシンちゃんをプレゼントw」
「なるほど。「かけて食べろ」か? 楽だな」
「うん!」
スパーンッ! ばしぃ!
「・・・なんで俺まで」
「やかましい」
「お父様一番喜んでくれると思うんだけどなぁ。」
「俺がうれしくねーよ!」


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2003/12/12 マジックパパお誕生日おめでとう小説

************************************************

コンコンッ
『シンタロー。ちょっと良いか?』
「あん? どした? ――――いや。先に入ってくれ。」
音も立てずにドアが開く。
もうすぐ夕方という時間帯、今夜のイベントのため、シンタローが必死で書類と格闘しているのは知っているはず。
片腕であり、秘書のような役割も担っているのだから。
「大した用事じゃない。
 ただ――――」



コンコン
『おとーさま? ちょっといい?』
「うん? グンちゃん? どうしたんだい?
 まぁとにかく中に入って……」
廊下には息子の姿。
にこにこと嬉しそうな笑みだが、何だか、子供がイタズラをするときのそれに似ている。
グンマは小瓶を取り出し、
「あのね。コレ、高松が作ったメイドさん薬なの」
「……どんなんだい?」
流石に薬品名だけでは分からなかったのか詳しく聞いてみる。
「あのね、コレを飲んだ人は、自分が好きな人に尽くそうって気になるの。」
「へぇ?」
「だから……シンちゃんに飲ませれば……なんでもお願いし放題!!」
「本当に?」
う゛いサインをぐぐっと突き出す息子に、こちらもわくわくした表情で聞く。
「すでにトットリさんで実験済みだよ!
 もちろん今日のパーティで、シンちゃんが使うグラスに塗っておいたから……」



「おとー様!」
にっこり笑顔のグンマ。
「マジック伯父貴」
いつもどーりの顔のキンタロー
「兄さん」
うっすらとほほえみを浮かべたサービス
「……お義兄さん」
何故かこっそり頬を赤らめてどさくさ紛れにとんでもないことを言うジャン。
「……………………親父」
仏頂面のシンタロー。」
『おたんじょーうび!!
 おめでとぉおおおお!!!』
パンパンパンッッ
火薬音が響く。
色とりどりの細いテープと紙吹雪が飛び出す。
十人十色の祝福を受け、マジックはにっこりと微笑み「ありがとう」と言った。
「ささ。火消して消して!!」
「や。大きなケーキだねぇ。」
「シンちゃんが昨日一生懸命作ってたんだよ!!」
「バッカ黙ってろグンマッ!!」
「もぉシンちゃんったら……
 素直じゃないなぁ。
 あ。ちなみにボクとキンちゃんは部屋の飾り付けね。」
「ありがとうみんな。嬉しいよv」
息子に負けないほどのにこやかな笑みで、マジックは心の底から礼を言った。

「うん! おいしい!
 シンちゃんケーキ作り上手くなったね!!」
「本当だ! 自分で材料とかまで選んでたもんね!」
「おかげで業務にだいぶ支障が出たが……そのくらいの価値はあるな。」
「最高の調味料は愛情かぁ……分かるなぁ……v
 なぁサービスv」
「ジャンがこの前作ったチーズケーキとは比べ物にもならないな。」
「……………………(涙)」
口々に褒めちぎる身内達。
対してシンタローはそっぽを向いて
「ふ……ふんっ!
 このくらいのケーキオレにかかればどうってことねーんだよ!」
「照れるな」
「照れてねぇ!!」
決して顔をこちらに向けないところを見ると、どうやらキンタローの言うとおりのようである。

「プレゼントたーいむ!!」
グンマが叫ぶと同時に、全員がさっと綺麗にラッピングされた包みを取り出した。
「じゃぁまずはオレから。」
恥ずかしいことは早い内に終わりにしたいのか、
ずいッとマジックに純白の包装紙に真っ赤なリボンを巻いた包みを渡す。
「開けてもいいかい?」
期待に満ち満ちた瞳でシンタローを見つめる父親。
「……ダメだっつっても開けるんだろ」
その言葉には返事を返さず、にっこりと笑ってテープに指をかける。
中に入っていたのはフワフワの白いマフラーだった。
ソレを大事そうに手に取り、
「あぁ……シンちゃんの愛が暖かいよ……v
 触り心地も良いし……シンちゃんみたいんぶっ」
後頭部から手を振り下ろし、ケーキの上に顔面ダイビング。
「くだらねーこと言ってねぇで次のヤツの受け取れ……!」
「照れるな。」
「照れてねぇ!!」
キンタローのつっこみは、当を得ていたのか得ていなかったのか……今度は判断しづらかった。

キンタローからはスポーツドリンク3ヶ月分
「……お前コレ親父に与えてどうしろってんだよ……」
「仕事が休みの時に、一気にいってもらおうと思ってな。」
「うーん。私は出来るだけ多くシンちゃんを愛したいんだけど……
 まぁそっちが大変なら……」
「アンタも真に受けるな!!」

サービスとジャンからは首輪と、それに付けるロープ。
「お……叔父さん?」
「提案したのはジャンだからな」
「テメェジャン何考えてやがるっっ!!!」
「ぼ……ぼーりょくはんたぃいいいっっ!!ギャース!!」

「じゃぁ次は……グンマの番だな。」
コンコンっ
息を切らして促すシンタロー。グンマが動く前に、ドアをノックする音が響いた。
「マジック様? 申し訳ございませんが、お届け物でございます」
「? 私に?」
立ち上がって、ドアを開ける……。
「うわ……ッ!」
廊下に立っていたティラミスが持っていたのは、大量のバラの花束だった。
感情の起伏が少ないティラミスにしては珍しく、ほほえみを浮かべて、
「ハーレム様からお届け物です。
 住所は書いてありませんでしたが。
 メッセージも預かっております」
「どれどれ。」
花とカードを受け取り、読み上げる。
「『たんじょーびおめでとさん。
 コレでアンタもとうとう五十路だな。』」
「素直じゃねーな。」
すかさず冷やかすシンタロー。
「シンタロー。お前が言うな。」
即座に突っ込むキンタロー。
「ぐっ!」
じ~~んと感動しているマジックの背後で、そんなやりとりがかわされていた。

「じゃぁ今度こそグンマだな。」
促すシンタローに、グンマはにっこりとイタズラめいた笑いを浮かべ、
「あ。ボクは既に渡してあるの。」
「あぁ。事前にね。ありがとうグンちゃん。」
と話を合わす。
「は? 渡したって一体何をだよ」
眉をひそめてシンタローが問うが、グンマは「まぁまぁ」としか言わなかった。

宴もたけなわ。
お酒に弱いグンマも沢山飲んで顔を真っ赤に染め、キンタローに言い寄ったり、
サービスにせっせとワインをつぐジャンが何だか哀れで笑えたり、
どさくさ紛れにシンタローに抱きつこうとしたマジックが顔面パンチを食らったり(※マジック主役です)
色々あったりしたが、グンマがすやすやとキンタローにもたれて眠ってしまい、自然、そろそろお開きにしようかという話になった。
「じゃぁ後片づけを……」
立ち上がろうとしたマジックを制し、
「親父はもう寝ろよ。片づけはオレとキンタローとジャンでやっておく」
なぜか床に不時着しているケーキの一部分を見て、流石に他の団員に片づけさせるのは気が引けたのか、
シンタローはそう言った。
「寝ちゃったグンマは良いとして……何でオレがしっかりカウントに入ってるんだ?」
「あん? 叔父さんにやらせるわけにはいかねーだろ。
 それともアンタ1人で片づけるか?」
「……ごめんなさい」
「いや。シンタロー。お前はマジック伯父貴の所に行ってやれ。」
いきなり言いだしたキンタローに、シンタローは怪訝な顔をしながら「何でだよ」と聞き返す。
「……お前が一番よく知っているだろう。
 マジック伯父気を喜ばす方法なんてのは。」
――――あのなぁ!!
そう反論する前に、
「じゃぁ早速最高のプレゼントは頂いていくね~~v」と引っ張られていったのだった。


*****************************************


ずるずると最初は廊下を引っ張っていったのだが、
そのうちシンちゃんも大人しく私に引かれるままに歩き出した。
自室のドアを開け、シンちゃんを促す。

部屋の中に入りしっかりと鍵を閉め、後ろから抱きすくめると、
シンちゃんの体は一瞬固くなったが、直ぐに力が抜けた。
……グンちゃんが言っていた薬が効いているのかな?
だとしたら……
まずシンちゃんには何をやってもらおうかな~~v
そうだ!
せっかくもらったのだから……
「ねぇねぇシンちゃん。」
「あんだよ」
「さっきもらった首輪試してみたいんだけど~~。
 ね?」
「ねって……アンタ……オレが付けるのか?」
「……ダメ?」
おや……いつもなら首輪とか言った時点で眼魔砲食らうんだけど……
ジッと見ていると、シンちゃんは少し顔を赤らめて、手を差し出してきた。
「貸せ。自分で付ける。」
コレは……本当に効いているのかッ!!?
「い……いや。いやいや。
 私が付けるよ。おいで。」
「ん……」

「ほら。できた」
「ああ。」
シンちゃんは短くそう答え、顔を上げる。
黒い髪に真っ赤な首輪がよく映え……真っ赤な。
「うああああぁぁあっ!!
 親父ぃいいいいっ!!」
効果音;ぶしゅーっ。


DEAD END


―――― 一瞬。そんな文字がちらついたが。
ココで死ぬわけに行かない!
せっかくあれもこれも出来そうな状況なんだ!!
死んでたまるかぁあああ!!
「ふ……心配させちゃったようだね。」
「あぁ。有りとあらゆる意味で心配したぞ」
真面目な顔になって心配してくれるけど……矢っ張り首輪がまぶしい……。
生還もしたことだし、ココは強請りに強請ってみようか。
「ねえシンちゃん。」
「あん?」
「キスしてv」
「な……ッ!」
シンちゃん絶句。
一歩後ろにたたらを踏むが……
先に手首を掴んでグイッと引き寄せる。
「別に構わないだろう?
 いつもやっていることじゃないかv」
自然と笑みがこぼれる。
シンちゃんは所在なさげにちらちらとこちらを見たり、全く関係ない方向を見たりと、視線が落ち着かなかったが、
やがて決心したように……
「わかった。じゃぁ目を閉じて……」
「やだ。」
「……っ!」
「ね。いいだろう?」
頬に手を当て、こーゆー時専用の声(どんなだ)で囁くと、シンちゃんは顔を赤らめながら私の頬を両手で包んできた。

シンちゃんの顔が近づいてくる。
目を閉じて、少し緊張しているのか、頬に触れている手が僅かに強張っているような気がする。
段々と近づいてきて……
シンちゃんの柔らかい唇が触れた。
………………はぅ…………幸せ……v(←色々かみしめているらしい)
すかさず腰に手を回し、しっかりちゃっかり抱きしめる。
「んっ……」
ぺろりと舐めると、直ぐに唇が離れてしまった。
「シンちゃん……」
咎めるように囁くと、ふいッと顔を逸らしてしまった。

しかしまぁ……本当に薬は効いているみたいだし……
コレは……行けるか!!?
言ってみるか!!!???

よし!!
「シンちゃん!」
「な、なんだ?」
「コレを着るんだっ!!」

バッと懐から(どうやってか)とりだしたのは!
こんな時のためにととっておいた

ネコミミメイド服!!(ピンク)


ぶちぃっっ!!

……ぶち?

「がんまほぉおおおおおお!!!!!!」

ちゅっどおぉおおおおんっっ!!!!

そんなぁあああ!!
お薬もうきれちゃったのかぁああああ!!!???
お空へと飛んでいきながら、私はそんなことを考えいていた。

*****************************************

そーれから。

*****************************************


「じゃぁシンちゃんお薬聞いていなかったのぉ!!?」
「ったく。アノオヤジ人がちょっと優しくしてやろうと思えばすぐ図に乗りやがって!!!」
シンタローの総帥室に呼ばれるなり、いきなりはたかれたグンマ。
ぶぅぶぅ言いながら訳を問うと、「高松と組んで訳のわかんねぇ薬作ってんじゃねぇ!」とのことだった。
「お前と高松がそんなことを話していてな。
 慌てて高松の所から資料を借りて、解毒剤を作ったんだ。」
「キンちゃん何でそんなこと……」
ぷぅとふくれっ面で睨まれても、あまり怖くはない。
本人としては必死ですごんでいるつもりなのだろうが。
「昨日一日開けるだけでも大変だったからな。
 無理させて今日の業務に響かせるわけには行かなかったんだ。」
「それでもさぁ!せっかくのお誕生日だったんだよ!!?」
少しはお父様の願い事きかせてあげたっていいじゃない!と反論するが、
「オレ1人が犠牲になってどうする!」
「マジック伯父貴が何をお強請りしたのかは知らないが、
 本人が正気の時にこそ言うべきだろう」
「もぅ!! せっかく高松に作ってもらったのにぃ!!」
「へへ~ん残念だったな。」
グンマとは正反対に安心した口調で言うシンタロー。
「そうだな……」
そんな2人を見ながら、キンタローは提案した。
「年が明けたら多少自由になる時間が出来るだろう。
 その時に使えばいい」
ぱっと表情が明るくなるグンマと、
なにぃ! という顔つきで睨み付けてくるシンタロー。
「ちょっと待てキンタロー!オレにだって事情という物が……」
「とりあえずキスはしてやったんだ。
 その以上やってやったって問題はないだろう」
「ありまくりだぁああ!!」
「じゃぁなんでキスはしてやったんだ?」
「う゛っ」
「そーだよ! シンちゃんだっておとーさまのコト好きなんだから!!
 いい加減素直になってあげなよ!!」
「何でそこまで話が飛ぶんだよ!!」
「じゃぁシンちゃんおとーさまもてあそんでるの!!?
 げどー!! ひきょーもの! みすたーきらー(マダムキラーと言いたいらしい)!!」
「あほか!」

ぎゃぁぎゃぁと口げんかが始まった横で、キンタローは今年のクリスマス前後の予定をチェックしていた。
「まったく。
 年末はコレだからめんどくさい」

************************************************
あとがき。
2日間で書いたので、何かそれらしくへろへろですね。
フルスピードで書いたので、ボツ原稿はナシです。

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――――ということで、100000ヒット記念小説 『マジック×シンタロー』お楽しみ下さいませv

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寒い。
いくら冬とは言え、布団をかぶっているのに寒い。
汗は出ているのに寒い。
つまるところこれは、


「38度5分。
 完全に熱だねぇ。」
「……そうか。」
体温計の表示を見ている親父は何故か白衣だ。
聴診器も付いている。


友人が言うには、『医者は患者には優しいが、身内の病気には冷静だ』らしい。
そりゃたしかに。
レストランのマスターが『自宅の分まで料理作り何かやってられるか!』となるように、医者だって、例え身内といえど病気には見慣れているだろう。
ましてや身内ともなれば、多少冷たくしたところで、そうそう簡単に縁が切れるわけでもない。
だから、友人のこの台詞には大いに納得した物だ。


つまり、身内の病気に真摯な態度で接してくれるこの父親は、ある意味珍しいのかもしれない。
んが。
物事には限度という物がある。

「何でいきなり白衣なんだよ」
「患者を診るときの礼儀だろう?」
「……そうか。」
色々言いたいことはあったが、諦めてオレは力を抜いた。
「シンちゃん起きあがれる?」
背中に手を当てられながらゆっくりと上半身を起こす。
「じゃぁちょっと失礼。」
パジャマの裾がめくられる。
胸部を露わにされたが、暖房が効いているので寒くはない。
冷たい聴診器が当てられ、僅かに身じろいだが、親父はそんなこと気にせず聴診器を胸の上で滑らせていく。
……何で医者というのは、どんな性格の人でも、診察中は無言になるんだろう。
まぁ聴診器を当てられながら『ありゃ?』とか言われるよりは良いが。
心音を聞いてるときの親父の顔はずいぶんと真剣で、何を考えているのか全く見当も付かない。
普段見せるおちゃらけた表情とは違うため、オレは少し緊張していた。
無言のまま聴診器を外し、腹の上を軽く指で押してくる。
何か……空気が持たない。気まずい?
「はい、あーん」
「んぁ」
胸ポケットからビニール入りの木べらを取り出し、口の中を検診される。
「うーん……ちょっと喉も荒れてるなぁ……
 あまり刺激的な物は食べられないか……」
「はぁ……」
「ま、ただの風邪みたいだから、今日一日ゆっくり過ごすことだね。」
ぽんっと肩を軽く叩かれ、そこで診察は終わった。
「……オレが風邪引いたのは半分以上アンタの所為だと思うんだが?」
「まぁまぁ。あ、そうだ。」
「あ?」
「解熱剤は飲んだし、もうすぐ眠くなるだろうけど、
 熱が出たときはなるべく体全体は暖めて、部分部分は冷やした方が良いんだ。」
そう言って親父は、なにやら巾着を3つ取り出した。
「氷をビニール袋に入れて、冷たくなりすぎないように包んだんだよ。
 脇の下とかに入れて、体を冷やすんだ。」
「そうか……」
ボーっとした頭で親父の動作を見つめる。
布団をめくり、脇の下に氷の入った袋をおく。
んー……気持ちいいかも……
残りの一袋を持ち、更に布団をめくって……
「ちょっと待て。」
「え?」
「……それをどこに置く気だ」
「……………………あのねシンちゃん。
 精子は40度以上の熱でダメになっちゃうから、
 男の子は熱が出たときにココを冷やすんだよ?」
「……40度もねえだろが!」
「でてからじゃ遅いだろう!!?」
「やかましいわ!くぉのセクハラドクハラ親父!」
慌てて体を起こし……
「あぅう……」
そのまま力無く布団に沈む。
「はい。残念でした。
 ココは医者の私に任せてv
 生兵法はケガの元。」
「くっそぉおおお……」


うー…………
下半身が冷える……
いや、ぶっちゃけヒンヤリしてちょっとはいいんだがな!?
こう精神的な物というか何というか……
まぁタオルにくるまれてるから冷たすぎるということもないし……
ずちゅーと親父が持ってきたスポーツドリンクをすすりながら、オレはだるい体を持て余していた。
(熱が出たときは汗をかくので、大量の水分接種を!水よりスポーツドリンクの方が良いです。)
喉は渇いていないと思ったが、気が付いたら500mlペットボトルが一本空になっていた。
あー……だりぃ……
ペットボトルを適当に、ベッドの脇にでも置き、再び体を横にして、目を閉じた。



目が覚めたのは、外は真っ暗という時間。
キンタローとグンマ、ついでに親父がいた。
「起こしたか。」
「まったく。だからここに来ちゃいけないよって言ったじゃないか。」
「ごめんなさいお父様。
 でもどうしても心配だったの……」
「どうせ貴様が原因なんだろう?」
バレバレじゃねーかよ……親父。
や、まて。
丁度良かった。キンタローに聞きたいことが。
「キンタロー……あのさ……」
「文化祭のことなら、オレ達のクラスは喫茶店だ。
 お前はウェイターでも厨房でもどっちでも問題はないだろうが、一部の要望によりウェイターだ。
 オレとグンマもな。」
「そうか……あ。ソレと」
「社会学のプリントは受け取って置いた。
 英語の発表は来週に持ち越しだな。
 それと、数学はグンマにノートを写させてもらえ。
 今回はミニテストはなかったな。」
「……………………どうもよ」
「……以心伝心だねぇ君たち……」
「双子だからな。」
「……2卵生なのに!!」
「それでも十月十日分だけ貴様よりも長く一緒にいる。」
「ふ……ふんだっ! だったら私だって夜の分だけシンちゃんと一緒んべっ!」
全身の力を込め(それでも普段の力に及ばないが)オレは枕を投げ飛ばした。
「よけいなことを言うな……」
「大丈夫だよシンちゃん! 僕たちみんな知ってるからさ!!」
「今さら隠すことでもない。気にするな。」
気にしろ……
ってかソレはフォローになっちゃいねぇ。
「ッてことは2人ともいつも覗いているのかい!?」
流石に慌てたような声に、
「あぁ!シンちゃんのあんな姿が私以外の人間に見られるなんて……!
 いくら身内といえど、……いや!身内だからこそちょっと苦しいかもしれなかったりなんかしちゃったりして!」
……語尾についてはいちいちつっこまんが、
何か微妙にポイントがずれているような気がするのは何故だ!?
「声が時折漏れてる。
 ……しっかりドア締めろ。」
何ですと――――!!?
「あ、なんだ。覗いてたわけじゃないのか。」
「そうだよ。僕たちだってお父さんと兄弟のベッドシーンなんて見たくないもん。」
グンマ正論。
って声がって……
「そう言えば……シンちゃんの部屋に入ったりすると嬉しくてついつい戸締まりなんか気にしなくなっちゃうな。」
気にしろ!!
そう突っ込みたかったが、兄弟にまで知られていた、あまつさえ聞かれていたと言う事実に、オレの思考回路はショート寸前。

「お父様、ところでお腹空かない?」
人が人生最大のショックを受けているのにメシの心配かグンマ……。
「そうだね……そう言えばもうそんな時間か……」
「オレいらねぇ……」
半分ふてくされてそう言う。
「えー!? ちゃんと食べないと治る物も治らないよー!?」
「そうだけど……気分が悪くて食えそうにねぇんだよ」
「参ったなぁ……そんなに調子悪いのかい?」
う……ソコまで心配されると……
「い……いらねぇって。
 どうせ明日には今日の分も沢山食うんだから、気にすんなって」
「でも……」
渋るグンマ。
「わかった。じゃぁ私達は適当に何かするから、シンちゃんはしっかり寝ているんだよ?」
「お父様!?」
……簡単に頷きやがったな。
「本人が食べたくないと言っているんだ。仕方ないだろう」
「キンちゃんまで……!」
心配そうにこっちを見てくるグンマとは対照的に、マジックとキンタローはさっさと部屋を出ていってしまった。
……………………別に良いけどな。


目はさえてしまったが、瞼を下ろし、文化祭のことを考える。
そうか……オレ達のクラスは喫茶店か……
どんなメニューになるんだろう……
まさか飲み物だけってコトはねぇよな。
サンドイッチとかの軽食は大丈夫だろうけど……
ラーメンやカレーがギリギリってトコロか。
……だったらその辺のヤツじゃなくて、俺に任せてもらいたいもんだな……
オレがウェイターか……
ったく……接客は苦手だっつーのに。

はぁ……
腹減ったな。


くっそぉおお……
何で病人なのにこんなひもじい思いせなあかんのじゃ!

ソレというのもアノ親父が夜遅くまで人をさんざん良いようにするから悪いんだ!
アンタの所為でオレは熱が出たんだぁあ!
腹が減ってるのはアンタのせいなんだぁあああああ!!

……元気になったら覚えてろよ……!
1週間くらいお預けしてやる!!


……ぐ~~~……

あうぅ……

布団の中で丸まって枕を抱きしめつつ無理矢理寝入ろうとする。
が、さっきさんざん寝た所為であんまり眠くない。
あぁもぅ……


ドアに背を向けた状態で、必死でオレは目を瞑った。


コンコンコンっ
『シンちゃん? 寝ちゃったかな?』
…………親父の声がしたのは、それから少しして。
「勝手に失礼するよ?」
ドアが開いて親父の声が壁越しではなく聞こえる。
と、同時に良い香り。

そちらを振り向くと、なにやらお盆を持った親父がいた。
「食べやすい物をって思ってシチューにしたんだよv
 野菜とか溶けるほど煮込んでいたから遅くなっちゃったね。ごめんね?」
確かにこの香りはクリームシチュー。
「あ……でも…………」
「ん?」
「グンマ達と食事してたんじゃないのか?」
「あぁ、グンちゃん達は適当に外で食べてくるように言ったんだよ。
 シンちゃんはいらないって言ったけど、何か食べた方がイイに決まってるからね。」
「今まで作ってたのか?」
「まぁね」
もしも『作るよ』なんて言ったら、俺はますますごねただろうし、
キンタローも同じ事を考えていたのだろう。だからあっさり引いた。
でも……
「……あんた食事は?」
「シンちゃんが食べ終わった後頂くよ。
 まずは君からだ。」
「…………でも」
ベッドの脇にワゴンを置き、その上のシチューは美味しそうに自己主張している。
が、色々……本当に色々悪いような気がして素直に食べるのを渋る。
「食べられそうにないかい?」
スプーンの上には煮込みまくって小さくなったタマネギとシチュー。

ぐぅ

タイミング悪く腹がなった。

「はいvあーんvv」
くすりと笑い、スプーンを口の前に持ってくる。
「…………」
多少ばつが悪いながらも、オレは口を開けた。

「おいしい?」
「…………うん。」
「うわぁ可愛いよこの表情!! そんなちょっと照れくさそうに『うんv』なんて言われちゃったら!!
 あぁその辺指摘したいけどそんなことやったらまず間違いなく照れ隠しで暴れるのは目に見えているし。
 いや、照れ隠しで暴れるのは可愛いからソレはソレで良いんだけど、シンちゃん今病人だから無理はしない方がイイに決まってるか。
 仕方ない。せっかくシンちゃんが素直になってくれているんだからココはしっかりと楽しませてもらっちゃわないと。
 調子に乗りすぎないように注意しながらね。
 そうよかったv
 食べられるくらい元気になれば大丈夫だね。」
「あ……あぁ。」
見づらい文字が気になるが。
今日くらいは暴れずに置きたい。
ココは素直に食べさせてもらうことにする。
……食べさせてもら…………
「じ……自分で食べるからいい。」
正気に戻りスプーンを受け取ろうとすると、ひょいとかわされてしまった。
「だーめ。
 今日くらい甘えてくれたって良いだろう?」
「こ……コレは『甘えている』というのとは違うだろうが。」
「どうしてもダメかい?」
「う……」
卑怯モン。
人が病気でちょっと気が弱くなってるの知ってこーゆーこと言いやがるからな……
「じゃ……じゃぁ食べさせてもらおうかな……」
「よろこんでv はいあ~んv」
「あーん」
もーどうにでもなれと思い、諦めて親父の言うとおり食べさせてもらう。

たまねぎにんじんじゃがいも……その他諸々の野菜をたっぷり煮込んだシチューは本当に美味しくて、
気が付いたらもう無くなっていた。
「御馳走様でした。」
「お粗末様でしたv
 沢山食べたね。食欲が出たなら大丈夫だよv
 よかったよかった。」
「アンタのシチューが美味しかったんだよ」
……このくらいなら言っても問題ないだろう。
「シンちゃん……
 うわぁいやっぱり今日は妙に素直だよ。いつもの勝ち気でオレ様なシンちゃんも良いけど、 たまにこういう風に素直に可愛く返答してくれるのも新鮮で良いかもしれない。あぁもっとも私のシンちゃんはいつも可愛くてついついいじめたくなったり押し倒したくなるくらいだけど。押し倒すと言えばグンちゃん達に聞かれていたのか。流石にソレはちょっと恥ずかしいかもしれないな。いや、私のシンちゃんを自慢出来る良い機会だとも言えるけど、身内に自慢してもあんまり意味がないって言うか、やっぱりあぁ言うシンちゃんは私が独占していたいし、何よりあの2人が妙に触発されて変な関係になっちゃったら…………まぁそれはソレで家族仲が良くて良いんだけど。病院の跡継ぎは、入院中だけどコタローがいるし。
 そう言ってもらえると嬉しいな。」
「さっきから気になっていたんだがその間の見にくい文字は何なんだ?」
「気にしちゃダメ。
 ――――この分なら明日は学校行けそうだね。」
「あぁ。」
「文化祭喫茶店なんだろう?
 楽しみにしているからね。」
「オレの休みと時間が合えば中案内してやるよ。」
「……シンちゃん……(じ~~~ん……)」
「きょ……ッ今日のお礼だからなッ!!」
そう言って、熱の所為ではナシに赤くなっている顔を悟られないように、オレはぼふッと布団をかぶった。
「ふふ……ありがとうねv」 
「けっ……」
サラリと髪を撫でる感触がする。
あー……この感覚……
ガキの頃いっつもこうやッて撫でられてたなー……
「シンちゃん髪の毛伸びたねー……
 こうやって触っているだけでも気持ちいい……って……
 シンちゃん? もう寝ちゃったのかい?」
その声は……聞こえてはいたんだが……
何だか返事を返す気がなくて、瞼を閉じたままオレは寝
「歯磨きしないとダメだよ?」
「……………………分かった。」


************************************************

何万ヒットだろうが、小説を書くと結構出る物なのです。
ボツ原稿です。

************************************************

朝起きて、何となく嫌な予感がした。
ぼーっとした頭をガシガシとかき、フラフラとした足取りで救急箱の元へ。
歩いているうちに頭もはっきりしてきて、ふと時計を見ると七時ちょっと前だった。
救急箱の中から体温計をとりだし、部屋に向かう。

向かう先はオレの部屋ではなく、マジックの部屋。

ことわりも、ノックもなくドアを開け、ベッドに向かう。
ベッドの上には、素っ裸のシンタローと、バスローブ姿のマジック。
もちろん毛布が掛かっているから、シンタローも下は何かはいているのかもしれない。
いつもそうなのか知らないが、シンタローがマジックに抱きついていた。


「おい……」
シンタローの肩に手を置き、ゆさゆさと揺する。
「んぁ……」
ボーっとした頭で、こちらを見てくるが、目の焦点が合っていない。
口元に体温計をもってくと、のたのたした動作で、はくりと口に銜えた。

「あれ?」
数秒経ってから、オレとシンタローの身体の間から、間抜けな声があがる。
「キンタローじゃないか。どうしたんだい?」
「……体がだるいみたいでな。
 体温計を持ってきた。」
「……珍しいね。だいじょうぶかい?」
「オレじゃない。シンタローだ。」
「へ?」


――――シンちゃんとキンちゃんは二卵性だけど双子で、
以心伝心ってことを何故か強調したかったので、
こういう書き出しにしてみました。
んが。この後が続かなかったのでアウト。


************************************************


「シンちゃぁああんっ!
 シンちゃんが倒れるなんて!!
 これから先私は何を楽しみに生きていけばいいんだいっ!?」
が、中には例外もある物だ。
オレの腹の上で塞ぎ込んでおいおい泣く父親と、鈍い頭を持て余しつつも、必死でオレは叫んだ。
「いやぁましかぁあ!
 人が死んだみてーに騒ぐんじゃねぇっ! げほっげほ……っ」
「ああシンちゃんっ!
 やっぱり昨日お風呂から出た後も遅くまで起きてたからいけなかったんだね……!
 私が調子に乗らないでしっかり服を着せてあげていればっ!!」
……自覚はあるらしい。
だったら……あー……いや、もうイイや。
どうせ言ったところで聞いちゃいないんだろうし。
「だったらアンタにまで移るといけねーからどっか行ってろよ。
 ……今日はもうどうせ休み取ったんだろうけど、看なきゃいけない患者もいるんだろ?
 明日も休んだら大変だろうが。」
「何冷たいことを!
 シンちゃんに移されるならパパは大歓迎だぞ!
 患者は……まぁ私1人が休んだってどうってことないよ。
 なんて言ったって、うちは各病院、診療所から引き抜いてきた精鋭達ばっかりだからね!」
あーそーかい。
誇らしげに胸を張る父親を見て、オレは目を閉じた。
だるいという前に、相手をするのがめんどくさくなったからだ。


と、父親の冷たい手が額に当てられる。
……気持ちいいかも。
「とにかく、今日一日はしっかり休んでおくんだね。
 学校には連絡しておいたから安心して。」
「分かった。」
そう短く返事をして、オレは本格的に睡眠モードに入った。


…………何で没にしたんだろうこの原稿。


m,.






「シンちゃん……シンちゃん……」
「……んぁ?」
自分の名を呼ぶ声に、シンタローは目をうっすらと開いた。
――――なんだ……? 時間は……0時……か。

昨日はマジックにしては珍しく、早くシンタローを解放してくれたので、シンタローは久しぶりにその日の内に眠ることが出来た。
もっとも……こんな早く、その日になったとたんに起こされては意味がないのだが。
「起きたかい?」
「まぁな。」
自分の体を抱きしめ、にっこりと笑う父親。
その笑顔と直接触れる相手の素肌が照れくさくて、シンタローは、まだ眠い振りをして顔を伏せ、表情を隠した。
「何なんだ? こんな時間に……俺はまだ眠い……」
ぶつくさ文句を言うと、マジックはソレを無視してシンタローの頬に口づけた。
「お……おい……ッ」
まさか続きをやる気かと慌てて引く。
流石に今日くらいは体調は万全でいたい。
今日は……
「お誕生日おめでとうv」
「……どうもよ」
そう、今日は5月24日。
29年前の今日、シンタローはこの世に誕生した。
一族の中でも異端とされる黒い髪と眼を持って。

「どうしても君に一番最初に『おめでとう』って言いたくてね。我慢できなかったんだ。
 変な時間に起こして悪かったね。」
「まったくだ。」
あくびをかみ殺しながら言う。
「一応ありがとさん。けど、この年になったらそうめでたい物でもねぇだろ?」
「とんでもない」
やや芝居がかかった口調でマジックは目を見開き、布団の中に入っているシンタローの手を握りしめた。
「??」
ベッドの中でマジックが手を握って来るというのは……少ないというわけではないが、いつもなら腰や肩、背中に手を回す。
マジックは握った手を引っ張り、両手で暖めるように包んだ。
「誕生日プレゼント、すぐ渡したくてね。早く今日にならないかなってずっと起きてたんだよ」
「はぁ……」
寝起きでちょっと頭が回らないせいか、どうもピンとこない。
「昨日は……ぐっすり眠ってたみたいだね」
くすくすと笑いながらマジックは楽しそうに眼を細めた。
「誰のせいだよ」
半眼で呻く。
「手……見てごらん?」
名残惜しそうに手の甲と指を軽くなでてから、重ねていた方の自分の手を離す。
「ん……? あれ?」
包まれていた左手になにやら違和感。
ぱちんと小さな音が響いて電気スタンドが灯る。はなした方の手でマジックがつけたのだが。
「……指輪……?」
「そ。」
シンタローの左手の薬指にはまっていたのは、とろりとした乳白色の石がはまった指輪だった。
石自体はただの球体だが、スタンドの光を受けて波を打ったような不思議な光沢を生み出している。
リングの部分も細い銀糸を複雑に絡み合わせたような凝った作りになっていた。
「ムーンストーン。5月24日の誕生石だ。
 今日になると同時に、寝ている君の指にはめて……」
再びシンタローの手を優しくなでながら、マジックは眼を細めて言葉を紡いでいく。
「本当なら、いつ気づくか、いつ気づくかって楽しみにするはずだったんだけどね、
 どうしても我慢しきれなくて……
 それに、君だってすぐに気づくだろうし、そのとき私がそばにいなかったら、何となく損したような気になる……
 って自分に言い訳をして、今、君を起こしたんだよ。ごめんね。まだ眠たかったろう?」
「冴えたよ」
それだけ返事をして、自分の薬指にはまった小さな指輪を見つめた。
指の角度を変えるたびに、石の表面に筋が浮かんだり、かと思うと石の内側に光が灯ったような幻想的な絵になったりと、コロコロ変わる表情を楽しむように指をじっと見る。
「……俺の薬指にはめたってコトは……」
やっと石から眼を外し、マジックの表情を伺うようにそちらを見やる。
「うん。もちろん私のもあるんだけど……」
何かを期待するような眼でシンタローの眼をじっと見つめた。
「貸せ。はめてやる」
「どうも」
苦笑しながらマジックは枕元から指輪のケースを取り出した。
濃い藍のケースの中に入っていたのは、シルバーリングの作りはシンタローと同じ。
はまっている石は……
「ルビー?」
にしては紫がかかっている。
ちょうどヘリオトロープを薄くしたような、ピンクの石だった。
「私の誕生石。ソフトピンクジルコニア……私には合わないかなーっておもったんだけど……」
「確かに」
この男に会うのは真っ赤なルビーかガーネット。あるいはブルーダイヤだろう。
「ま、いいか。手ぇだしな」
「はい。」
年を感じさせないスラリと伸びた指に健康そのものの爪。
たまに若者の生気を吸ってんじゃないかと思う時がある。
左手を添えて、右手でゆっくりとマジックの薬指にはめていく。
「似合うかい?」
「……アンタの色じゃねーな」
照れ隠しにぽふッと胸に顔をすり寄せて表情を隠した。

「そう言えば……」
ふと思い出したようにシンタローが呟く。
「石にも花みたいに何かメッセージがあるんだよな」
「宝石言葉だね。もちろん調べてあるよ」
「…………」
女ではあるまいし、シンタローはそう言ったことに興味はないのだが、マジックが話したそうにしているので、とりあえず何も言わないで置いた。
「君のムーンストーンは『計画』」
「けいかくぅ? 何かあわねーなー」
「そうかな?」
何か不満そうな顔だが、マジックは何となく納得していた。
青の一族全員を巻き込んだ大事件。
色々ありすぎて、どこがどうだったのか渦中にいた人間ですら混乱してしまったけれど、
――――結局平和な形で……この子が望む形で一応は終わりを告げた。
「君が望んだから、あの事だってもう過去のことになったんだと思うよ?」
「計画なんか立ててねーぞ」
「頭の中で考えるんじゃなくて、君がこうした方がイイのにって思うこと自体が君の立てる計画なんだよ」
「……もっとわかりやすく話してくれ」
「君は計画なんか立ててる気はないんだろうけど、感覚で『こうした方がイイ』って選んだ物が、結局は最良の手段なんだよ。」
「……そうか?」
まだ不満そうな息子の髪をなでながら、マジックは思い出すように一言一言、ゆっくりと言う。
「以前……コタローが私を殺そうとしたとき、君は私をかばってくれただろう?」
「あー……ソレはー……でも結局なんにもならなかったろ?それどころか別に俺がかばわなくてもアンタは避けられただろうし……」
「でも結果的に君は生き返った。
 もしも私がコタローの攻撃を避けるだけだったら、まずキンタローはずっと君の中にいた。
 赤の秘石を探すこともなかった。ジャンに会うこともなければ、サービスもずっと苦しみ続けるだけだった。
 君がとっさに選んだ手段が、最良の手段だったんだよ?」
にっこりと告げると、シンタローは目を伏せ、互いの左手を身ながらポツリと。
「…………かいかぶりすぎだ」
今度はマジックも何もいわずに、ただほほえんでシンタローを抱きしめた。
「そう言えば……アンタのピンク……ジルコン……?だっけか?宝石言葉は何なんだ?」
「ソフトピンク・ジルコニア。宝石言葉は……」
そこで初めて言葉を詰まらせる。
「?どうした?」
「…………………媚薬」
「……………………………………」
「ああ、別に何も言わなくて言いよ言いたいことは大方わかるから
 『何でそんな危険な物を』とかって言いたいんだろう?
 自分でもそう思ったよ。せめて『愛の~~』とか言うのだったら良かったのに」
一気にまくし立てるマジック。
「いや――――」
マジックにとって意外なことに、シンタローは落ち着いた声でマジックの左腕の指を、自分のソレと搦め、体をすり寄せた。
「シンちゃん?」
いつもだったらまずお目にかかれない仕草に逃すまいと戸惑いつつも反射的に抱きしめる。
するとすぐにマジックの唇に柔らかい物が触れた。
世にも珍しいシンタローからのキスは直ぐに終わってしまったけれども。
「アンタにぴったりだと思うぜ?
 俺は……アンタとこーゆーことするのもされるのも嫌いじゃねーし……」
「シンちゃ「TPOさえ考えてくれればな」
「あう」
もちろん、しっかり釘を差すことも忘れない。

「はふ……」
シンタローが欠伸をかみ殺すと、マジックは下がってしまった掛け布団をシンタローの肩まで引っ張って再び体を抱きしめ直す。
「眠いかい?」
「ん……別に大丈夫……」
そうは言うがシンタローの眼はとろんとしてきている。
「寝た方がイイよ。明日……今日も早いんだから。起こしてゴメンね」
「……わかった……お休み……」
「お休み……ソレと……」
「?」
「これからも……ずっとよろしく」
「ん……。」
シンタローの口から、静かな寝息が聞こえたのはそれからすぐ。

最後に交わした二人の約束が確かだと言うことは……硬く組み合わされたお互いの左手と、そこで輝く石が証明している。





ありえねぇ……(禁句)

さて、今回の素材は 様から頂いております。

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m.,

結婚式はいつ始まっていつ終わったのか
私は何も覚えいていないよ
思い出だけが走馬燈のように駆けめぐり
私はずっと目を閉じていた

〇歳   女の子だというので少々ガッカリした

二歳   病気がちで苦労させられた

四歳   幼稚園で一番美人だと鼻を高くし

六歳    桜の下の入学式の写真

八歳     ママどうして結婚したのだと聞き

十歳    そろそろ風呂に入れるのがはばかられ

十二歳  男の手紙がみょうにふえてきて

十四歳  男女共学が危険に思われる

十六歳   ミス高校に選ばれて苦労が増え

十八歳  優しさあふれた 女学生

二十歳  「結婚はしません」と口ぐせのように言い

二十二歳  コロリと裏切って結婚してしまう


結婚式はいつ始まっていつ終わったのか
私は何も覚えいていないよ
思い出だけが走馬燈のように駆けめぐり
私はずっと目を閉じていた                 
                               ――――阿久悠作詞 『22才まで』より


「パパぁ……どうしたの? なんでないてるの?」
「うん……この歌聞いててね、ちょっと…………」
「かなしいうたなの?」
「ううん……悲しいんじゃなくて、いつかシンちゃんもパパじゃなくて、
 他の人の所に行っちゃうと思うと寂しくてね……」
「ぼくいかないよ! ずっとパパのそばにいる!」
「本当かい?」
「ぜったいいかない! ヤクソクする!!」
「じゃぁ……約束だよ? シンちゃん……ずっとパパのそばにいてねv」
「うん!」


「――――なーんてことがあってねぇ……」
「……何かつっこみたいところは色々あるが、とりあえず鼻拭け鼻。」
額を押さえつつ、ティッシュを指さすハーレム。
「あ、ども。」
「で――――結局! アンタは何が言いたいんだ?」
「うちの子って優しいだろうv」
「………そーだな。」
「やっぱりぃ?」
でれでれ鼻の下を伸ばしまくって久しぶりに実家を訪れた弟にのろけまくる兄。

――――ったく。大事な話があるって言うのに……こんな話を先に聞かされるとは……
今日の用事が見破られ、先制パンチを食らったような気がしたが、
とりあえず兄のペースに巻き込まれるわけには行かない。
ここで話の腰を折っておかないと。
「ところで兄貴、ちょっと渡したい物があるんだが、しかも大量に」
「ん? 何を?」
「これだっ」
どさっ!
机の上に大量の冊子が置かれる。
「何だいこれ……? 見合い写真?」
そう、銀箔が押された白の表紙に輝く金色の『寿』の文字。
間違えても寿司屋の出前メニューではない。
それが少なく見積もっても30冊。
「身を固める決心でも付いたのか?」
「俺じゃねぇ……シンタローだ。」
「は?」
きょとんと珍しく惚けたような顔をするマジック。
ハーレムはそれを無視して説明を一気にした。
「今回の遠征でふと思ったんだが、シンタローももう28才。
 いい加減身を固めてもいい頃だな。」
「ハーレムだって40過ぎでどk「第一シンタローは現総帥だしな。跡継ぎは必要だろ?
 他の奴らの子供を跡継ぎにしようとしても!
 俺は一人に縛られるつもりはねえし、サービスは忌々しい犬と認めたくないが恋人同士だ!
 グンマは結婚以前に精神的な成長がまだまだだしキンタローとくっつくだろ多分。
 アンタは流石に……2人目を選ぶ気はないようだし
 ……コタローだってこれから先、目覚めるとは限らねぇ。」
「だからといって……」
「養子っつー案は却下! 血がつながっていないと青の一族の力はない。当然だがな
 ――――さて、そうなるとどうするのがいいんだ?
 言って置くがこの組織をつぶすってのはナシだぞ流石に。
 俺達はもちろん、団員を路頭に迷わせるつもりか?」
「………………………………………………」
言葉に詰まるマジック。
じっとハーレムが持ってきた見合い写真をにらんでいるが、力を使って消す気はないようだ。
マジックも悩んでいるのだろう。
「ま、形だけの結婚、ってのもアリだけどな。
 けど、あんたが息子に幸せな結婚してほしいってのなら…………」
「私は…………」
「シンタローだってもう子供じゃねぇ。
 いい加減子離れしたらどうだ?」
「…………………………………………………………」
「ま、その見合い写真は置いておくからな。なかなか粒ぞろいだぞ。
 早めにシンタローに見せとけよ」
言いたいことだけを言って、押し黙ったマジックをそのままにして、ハーレムはマジックの自室から出ていった。


………………シンちゃん……やっぱり……他の人のところに行った方がいいのだろうか?
……私は……シンタローの……じゃまをしているだけなのか?


この日から1週間前後、シンタローはマジックの姿を見ることがなかった。


――――一体どういうつもりなんだ!? あの親父!!
3本目の万年筆を壊した時点で集中が完全に切れ、シンタローは父親に毒づいた。
最近マジックが総帥室に訪れなくなったのだ。
以前は毎日、決まった時間に仕事中の総帥室を訪れさんざん邪魔して帰っていったのだが。
――――いきなり来なくなったせいで休みを取る時間がわかんなくなっちまったじゃねーか!
マジックが総帥室を訪れるとき、必ずと言っていいほどおやつと一緒だった。
餌付けされているわけではないが、父親が作るオヤツは美味い。
無駄にしちゃダメだという口実で『父親が来る=小休止』となっていた。
それがある日突然、はたとなくなった。

最初の日はそれに気づかずに、肩がやけにこったと思ったら、
いつも父親が来る時間を2時間ほど過ぎていて、愕然とした。
父親に何かあったのだろうかとティラミスに聞きに行かせたら
(ちなみに悔しいので自分で行く気はなかった)
「マジック様は元気でいらっしゃいましたが、なんか…………」
そこで言葉を濁されてしまう。

次の日も、その次の日もマジックは来なかった。

病気とかそんなわけはない。もしもそうなら医務室に行っているはずだが、
少なくともここ最近の記録には残っていなかった。

一度、朝イチで食堂に行って、マジックがくるのを待っていたが、来る様子は全くなく、
結局、2時間ほど無駄にしてしまったこともある。
ちなみに、その後の調査で廊下でじっと食堂の様子をうかがうマジックがいたとの報告を受けた。
シンタローが出ていった後、すぐに食堂に行ったという。

夕食はマジックが総帥室に持ってきて、一緒に食べたりしたこともあったのだが、
もちろん、仕事が残ってない日は自室で。
総帥室に差し入れするのは、某レストランのシェフになっていた。
味はこちらの方が上だが、慣れてないせいでどうも胃にもたれる気がする。
慣れていないせいか、はたまた他に原因があるのか考える気はなかったが。

そしてとうとう昨日、いい加減堪忍袋の緒が切れかけてきて、
電話を……自分のだと向こうに名前と電話番号が出て、電話に出てくれないだろうから、ティラミスのケータイを借り、マジックの自室にある電話にかけてみた。
『もしもし? ティラミスか? 何かあっ』
「おれだ」
『シンちゃん!?』
「アンタ最近なn『あゴメンッ! 今カップラーメン作ってるんだ!後でね!』ガチャッ
「ちょっと待てーっっ!
 そんな今時どこのセールスマン撃退法マニュアルにも書いてないような方法で…………」
ツーッツーッ
無情に音が鳴る電話に向かって怒鳴ってみてもどうにかなるわけではないが、そうせずにはいられなかった。

「ったく…俺にどうしてほしいッてんだよ…………」
4本目の万年筆を手に取り、書類にサインする気力もなくクルクルと指の上で回す。
――――いきなりこう来られたら、開き直るか、ずっと我慢し続けるしかねーじゃねーか。



その夜。
マジックの部屋。
――――コレ……どうしようか……?
マジックの目線の先には38冊の見合い写真。
ハーレムの言うとおり、下は18才の幼さの残るお嬢さんから、上は30半ばの妙齢の女性まで。
いずれも見目麗しく、マジックでも『この子ナカナカ……』と頷かざるをえないメンバーだった。
しかし、彼女らのうち誰かに自分が手塩にかけて育てた息子を持って行かれるとなると話は違ってくる。
「はぁ……」
最近……ハーレムが来てからため息が増えた。
弟が言うことにも一理あるからだ。
「跡継ぎ……ねぇ?」
秘石がなくなり、一族だと証明する物はこの秘石眼しかなくなった。
最大にして唯一絶対の証拠である。
秘石眼を持っていることが、力の絶対的な証明となるのであれば、養子を取るなど無理だろう。
「はぁ…………」
――――シンタローと、他の誰かとの間に産まれた子供か……。
確かに、人の親として見てみたい気もするが、
――――他の人にあげたくないしねぇ……
ふと、机の上に視線が行った。
机の上の……電話に。
昨日、愛しの息子からかかってきた電話。
本当はもっと話をしたかった。声を聞きたかった。
大好きだよと、愛していると前のように話せたら。
電話を取り、相手の声色を認識し――――目に入ったのが、見合い写真だった。
気づいたら、自分でも訳の分からない言い訳を口に出し、直ぐにきっていた。
「……………………馬鹿だねぇ……私も」
何度『この部屋に来るな』『人形を作るな』『そばに寄るな』『キスするな』『大ッ嫌いだ!』と言われても、本心じゃないと感じていた。
シンタローも、心の底では自分を好いてくれていると。
そう思っていたし……今も思っている。
お互いに親離れ、子離れしていない親子。
親以上、息子以上の感情を持っている二人。
そう思っていた。
――――ソレが……間違いだったのか?
      私は……シンちゃんのそばにいない方がいいのか?
      私がいない方が……シンちゃんは……シンちゃんにとっては幸せなのか?
自分は子供が出来てとても嬉しかった。
異端だといわれても、出来損ないといわれても、自分が息子を愛しているなら、ソレでいいじゃないかと。そう感じた。
――――自分の息子に、ソレを味わわせてやれないのは……
      ……息子を不幸にしていると同じコトなのか?
「……………………やめよう」
これ以上考えたらどんどんド壷にはまっていく……。
そう判断し、マジックは頭をすっきりさせるためシャワー室に向かった。


「ふーっ。」
だいぶのびた髪の水気を乾かすように、実際には少しでも頭の中を整理するために、軽く頭を降ってみる。
――――最近……老けたかな……
バスルームの鏡を覗き込み、そんなことを考え込む。
――――気は若いつもりだったが……やっぱりシンちゃんに会えないのは堪える……
下着とパジャマを身につけ、しみじみと思ってみたり。
「はぁ……」
――――明日は……どうしようか……
いつもなら朝起きたら、オヤツはどうしようか、晩ご飯は何を持っていこうかと年甲斐もなくうきうきした物だったが。
ソレがなくなると、生活にハリが無くなったように思えてしまう。
――――このままじゃすぐにボケるな……
髪を雑に拭き、櫛で丁寧に解かして部屋の電気を消してベッドに潜り込む。
最近作ったシンちゃん人形1/2サイズをきゅっと抱き留めて。
――――今日は……ちゃんとご飯食べたのかな……
      しっかり寝てるかな……もう……布団に入ったかな……
暗い部屋は、今の自分の心情そのものだった。
オーディオ機器の表示のみが真っ暗闇になるところを寸前で止めている。
それでも、何かを探すとしたら――例えば……電気のスイッチとか……――手探りで足下に注意しつつ探さなくてはいけないだろう。
――――会いたいなぁ……
1週間以上。こんなにつらいとは思ってもいなかった。
真っ暗で、誰もいない部屋。慣れているはずなのに、天井の闇に飲み込まれそうだ。
ソレが……不安に感じさせる。
シンちゃん人形をさらに力込めて抱きしめ、ともすれば泣いてしまいそうな自分にカツを入れる。(おいおいおいッ元殺し屋集団総帥ッ!)

――――コレが……本物のシンちゃんだったら…………
「シンちゃん…………」
「呼んだか?」



不安に押しつぶされそうで、弱々しい声でとうとうぽつりと呼んだその名前。
即座に、来るはずもない返事が返ってきた。
さては目の前の人形かとマジックは目を凝らしてみたが、人形がしゃべる訳などない。
――――なら一体……?
そのとき、ベッドの横で何者かの気配がした。いや、気配どころか、部屋の電子機器のあえかな光を受け、シルエットが闇に浮かび上がる。
スラリとのびた長身に、うっすらと開いた窓から流れ込んでくる風にわずかになびく長い髪。
「シン……ちゃん…………?」
目の前の光景が信じられなくて、混乱していて、呆然とそのシルエットを見やる。
パチン
シルエットが動き、小さな音がして、闇の中に光が浮かび上がった。ベッドの側に置いてあるスタンドライトの光が。
「いよぉ。」
光に照らし出されたのは、見間違えるはずもない、最愛の息子だった。

「…………シンちゃん!? 何でここにっ!?イヤッ! 一体いつからどうしてこんな所にっ!!」
毛布を蹴飛ばし、慌てて上半身を起こす。
「アンタが、風呂入ってる間に、ベッドの下に潜り込んだんだよ。
 って言うか気配で気づけよ。もうろくしたんじゃねーか?」
「…………」
――――確かに、いつもなら気づくはずだ。そんなベッドの下に隠れていれば。
      イヤ、逆に盲点になっていたのかもしれないが。
自分に言い訳をして、マジックは次に質問をした。
「どうやってここに入ったんだい? 鍵はしたはず……」
「原始的な鍵じゃなくって、電子ロックだからな。
 グンマに頼んでセキュリティに進入してもらったんだよ。アンタが風呂入ってる間に」
「お風呂?」
「アンタの風呂場は外に面してるだろ。
 外側の窓に、高性能の盗聴器を取り付けて置いたんだよ。
 ほら、今日窓ガラスの清掃業者が来たはずだぞ。」
「…………あれって……」
「ふ……髪をまとめて一本に縛って帽子の中に入れてサングラスしてマスクして……
 ついでにゴム手袋してりゃぁ、流石のアンタもわかんねーだろーな。」
「何か怪しいと思ってはいたが……」
「ってかその時点で指摘しろよ。まぁ助かったけど……」
「――――で……」
とりあえず質問はなくなったので、重要なことを聞く。
「いったい何でこんなマネ……」
「ソレはこっちのセリフだクソ親父」

がっし

マジックの胸ぐらつかんでぐいっと顔を近づけるっ。
――――あ゛ー近くて嬉しいけど今はやめてぇえっ
心の中で叫ぶマジック。
「昨今のアンタの行動……しっかり説明してもらおうかぁ……え?」
「は……はひ…………」


説明中…………


「つまり――――」
一通り説明し終え、シンタローに例の38冊の見合い写真を渡し、ベッドの上で正座する父親。
ソレを珍しく見下ろし、額に青筋浮かべつつ手に持った写真を冷ややかに見下ろす息子。
「ハーレムの気まぐれを真に受けての行動だったと……」
「パ……パパはシンちゃんのためを思って断腸の思いd「おれはな!?」
「はいっ」
「アンタがよけいなコトしたせいで万年筆は5本無駄にする、飲んでも酔えない、横になっても眠れない、
 おまけにこの春風吹きすさぶ中、壁にへばりついて慣れない作業したんだぞっ!!!」
「こ……後半はシンちゃんの計画が悪かったんじゃ……」
「一応過ぎたことだからまぁいいとしよう!で・だっ!!」
「はい……」
「――――アンタは俺にどうしてほしいんだ?」
「……………………………………………………」
「身を固めてほしいのか? 孫の顔が見たいのか?
 団のことを心配することなく涅槃(ねはん;あの世)に行けるようにしてほしいのか?」
「涅槃……(汗)」
「ど・う・な・ん・だ!?」
「私は………………………………」
――――私は…………
目をつむって、ゆっくりと考えたいのだが、ソレは目の前の息子が許してくれそうにない。
ならば――――
「シンちゃんにはずっと私の息子でいてほしい。
 他の誰にも……たとえソレがシンちゃんが認めた人であっても、渡したくない……。」
シンタローの眼を真っ向から見つめていった言葉。
前は簡単にいえたはずだが、何故かここまで追いつめられないと言えなくなってしまっていた。
「ふん。最初ッからそういえば良かったんだよ」
軽く息を吐き、くるりときびすを返すシンタロー。
「あ……シンちゃんは?」
帰りかけた息子を慌てて引き留める。
「俺が好きなのはたくましい奴だ。少なくとも、息子のぬいぐるみ抱いて泣いてるような奴じゃない。」
「泣いていた訳じゃないんだけどね。」
ぽりょぽりょと頬を書きつつ苦笑い。
「前のアンタみたいな奴ならな……別に嫌いじゃねぇぜ」
「どうも。じゃぁ……また明日ッから今まで通り」
「イチゴソースたっぷりのミルフィーユで手ぇうってやる。」
「了解。じゃぁ明日の昼に……」
「ああ。…………おやすみ」
「おやすみ」



「――――で、どうだった? 何か気に入った奴はいたのか?」
さらに2日して、ハーレムがやってきた。
数日前見た時と比べて、やたら肌がツルツルすべすべになっている兄をいぶかしく思いながら、写真の感想を聞こうとする。
「イヤ……いいよ。やっぱり私もまだまだ子離れできないみたいだし……する気もないし。」
「おい……」
「跡継ぎに関しては……とりあえず、コタローに携わっている医療メンバーを増やして、研究設備も充実させるということで。
 何とかなると思うよ」
「おいおいおい…………」
「いざとなったら、体外受精でハーレムと誰かの」
「ちょっと待てぇいっっ!」
「ソレがイヤなら、ジャンを薬かなんかで女性にでもしてもらって、後はサービスにがんばってもらおう」
「鬼だなアンタ……」
「はっはっはv」

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後書き;
本当はもっと痛すぎる話になる予定でした。
しかし、パソコンで打ち込んでいると
「そんなシリアス誰が面白がって読む~
 貴様に似合うのはギャグじゃぁ……ギャグを書けぇええ……」
と、天の声が聞こえまして。(ちなみに私はクリスマスも祝えば初詣にも行く典型的日本人です)
とりあえずこうなってみました。





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