忍者ブログ
* admin *
[36]  [37]  [38]  [39]  [40]  [41]  [42]  [43]  [44]  [45]  [46
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

sms
















朱の丘














「御子息」



草一本生えていない岩丘に一人佇む少年。


幼い背中に、義務によって声を掛けた。



「・・・マーカー」

「陣にお戻りを」



面倒。



それの、一言に限る。


何故に第一線を駆ける自分達が、自分が。

上司の、兄の。

総帥の愛息子の世話を焼かなくてはならないのか。



人の内面を少年は当然知る事なく、ゆっくりと振り向いた。

自分や馬鹿弟子の様に黒い髪が風に流れる。



「悪い。面倒をかけた」



   まったくだ。



しかしそれを口にも顔にも出す事はせず、無言で少し小高くなっている場から降りてくるよう促す。

反抗する事なく丘を下る子息に別段満足を抱く事はなく、ぼんやりとその近づく姿を眺めていた。




そしてふと気付く。







その未だ頼りない手に握られた白刃、その銀光に被さる朱。









そのあまりに見慣れた色は彼の頬にも付着しており、考える事なくソレが何か理解する。






しかし、どうやら今度は迂闊な事に思考が表情に直結していたらしい。

自分より先に少年が声を発した。



「一人、敵兵が入り込んでた。

一通り見ておいたけど、俺まだ研修生みたいなモンだからさ、一応アンタ達でもう一度見回っておいて

くれないか」












         彼が戦場に立つのは、今回が初めてと聞いた。




今まで時機を見ていたが、養成所に入り、同年代の微温湯に浸かる前に死を感じさせる事が一族の大人

達で決定されたらしい。


そして選ばれたこの戦場。


此処は所謂激戦区と呼ばれる。








通常なら、まず有り得ない。



訓練も何も受けていないような少年が、自分達特戦部隊が投入される程の戦場に後方支援ではなく前線

部隊として立つという。




そして。




団の防衛線を掻い潜れる程度に力量を持った敵兵を、一対一とはいえ我々に気付かせる事なく抹消した。



相手は歴戦の戦士だっただろうに。




   

「      御意」






肌が粟立った。




今まで大切に守られてきた子息は、恐らく初めて人間を殺めただろうに。


          
彼は表情一つ変えず瞳に怯えの欠片も見せず、まるで買い物の使いを頼むような様子で指示を出した。







粟立ちがやがて震えへと変っていく。





それは強者への畏怖。


それは何れ彼が自分を支配するという歓喜。




初めの彼を侮っていた感情は霧散していた。



「シンタロー様」



初めて呼んだ名前。


シンタロー様も気付いたのか、目と口を真円に開いていた。

支配者然としていた先程とのギャップに、頬が些か緩む。



「陣営に戻る前に血を洗い流しましょう。隊長が心配されます」

「あの獅子舞が俺の心配なんかするかあ?」



胡散臭い。

その感情を前面に押し出している少年は年相応、下手すればより幼く見えた。



「ああ見えて叔父馬鹿ですからね」

「・・・・ふー・・・ん?」



信じきれないままのあやふやな返事。


無理もないだろう、あの人の愛情表現は子供のように拙いのだから。



くつくつと喉を鳴らしていると、突然、微か前を歩いていたシンタロー様が振り向いた。



  
振り向いた彼の、その姿にまた。



「だけど血はまだ落とさねェ」

「それは・・・何故かお訊きしても?」


つとその丸みを多分に残す双眸が見下ろした先の、昏さを帯び始めた朱色。



染まった両手を開き、零すまいとまた握りしめた。





「覚えておく。

刃が頭蓋を砕いて脳を裂く感触を。

断末魔も憎しみの目も血の温かさも色も」





団内でも複数見る事が出来る黒眼は、青ではなくてもあまりに強さを秘めていた。




「人を殺す事、全部」




目を閉ざした。



強い少年だ。

自分達や馬鹿弟子のような、『こちら側』の者は触れる事すらかなわない強さ。



唐突に理解する。




彼ら一族がある種異常な程シンタロー様を慈しむのは、手が届かないからだ。



だから焦がれる。



憧れる。






このような戦場に出したのも、彼に何ら害は無いと解っていたから。









目を開けた先のシンタロー様は、暗朱を拭わぬままの顔を照れたように歪めていた。








「俺、まだ全部覚え切れてねっからさ」

「・・・・そうですか」








再び歩きだした背は細く、成長途中の危うさの陰を負っていた。


けれど歩む路は覇道になるだろう。





「なあマーカー。親父は世界の何が欲しいんだろうな」




















しかしその時霞み掛かる思考の中で、現総帥とは覇道といえど違う路行を行きそうだと予感した。





















しかし私は期待を抱き続けるだろう。































彼の支配に。






























































桜華 椿様、12121踏み抜き申告有難う御座います!

お持ち帰りは椿さんのみで。

「崎シンかマカシン」との事でしたので、マカシンで行かせていただきました。

・・・・・・・・・・・。これ、カップリングか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?

ええと、マーカーさん短時間に感情がコロコロ変わりすぎですよ。

思春期乙女か。

あ、あと補足ですが。


シンタローが異様に強いのは親族に鍛えられていた為。(身を守る術は何でも教えてそうだ)

あと陣に戻った後、シンタローはハーレムに拳骨喰らいます。「一人でフラフラしてんじゃねーよ!」みたいな。


こんな文章でよかったら貰ってやって下さい、椿さん!




SEO 不安な老後、違います!現役バリバリ収入得ています 花 無料レンタルサーバー ブログ SEO

PR
sma









「うあーっ!あっちいんだよチクショウ!!」






蝉の求愛の声


風鈴が風と交わる音


日差しを受けて輝く草木と清流



夏の風物詩。






そして夏と云えば当たり前の様に付属してくる、熔けるようなこの暑さ。













ある時ある季節ある場所で。














この時間帯、丁度日陰になっている縁側で。


俺、シンタローは柱に凭れながらダレていた。



親父とグンマに半ば無理矢理に着せられた浴衣は涼しい。

前をかなり寛げているから尚更に。

が、それは普段の服から考えるとであって。



暑いもんはやっぱり暑い。



ので、さっきから必死に団扇で煽ぎまくっている。
          
一雨くれば、もう涼しくなるんだがなあ・・・・。



「シンタロー様」

「っ、・・・・・マーカーか」



足音一つ立てずに現れたのは、俺の直属である変態の師。

そして獅子舞な方の伯父の部下だった。

一応俺の部下でもあるが、マーカーの所属する特戦部隊は独立した特殊な位置にあるので、絶対的な決

定権は無い。



「お前、こんな処でも気配消して歩くなよ」

「すみませんね、職業病の一種とでも思って下さい。

・・・大分、暑さにやられているようですね?」

「ああ・・・・最近、クーラーの効いてる部屋に篭りっぱなしだったからな。

すっかり耐性が無くなってやがる。他の奴等は?」

「酒盛の真っ最中ですよ。絡み酒が多いので早々に逃げて来てしまいましたよ」



・・・・こーんな真昼間から、ナニやってんだよあのオッサン等は。

伊達衆の面々も混ざっているだろう事を考えると、何とも云えない気持ちになる。


考えている事が顔に出ていたのか、隣に立っているマーカーが笑っている声が聞こえた。



「・・・・なんだよ」

「いえいえ、お気に為さらず。

 それより珍しいですね、御髪を紐で括られているとは」

「んぁ?」



首の後ろで結んでいる髪に触れられるのを感じた。

その時に、マーカーのこんな気温の中でも冷たい指先が首の付け根辺りに当たって気持ちが良い。



「それな、アラシヤマが持ってきた水羊羹の箱に付いてた紐」

「・・・・他に無かったのですか?」

「探せば有ったんだろうけどよ、暑くて仕方なかったんだよ。それに良い色だろ?」

「まあ、確かにそうですが。しかし総帥ともあろう御方が菓子折の飾り紐で・・・・。

身に着ける物は、斯様な場でも選ばれませんと」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・良いじゃねえかよ別に」



小舅な言葉に謀らずとも拗ねた響きを持つ声が出た。


ふう、と諦めた様な困った様な溜息が背後から聞こえるのと同時に、髪が首に纏わりつく。



「・・・何、すんだよ。暑ぃ」



体を捻って振り返ると、案の定マーカーが紐を持って笑っている。



「もっと高い位置で纏められた方が涼しいでしょうに。

御髪に触れる許可を下されば、御括り致しますよ」



今度は俺が溜息を吐く番らしい。

体を前に戻して、垂れてきていた髪を雑に後ろに流しながら、言う。



「面倒くせぇ言い回しすんなよな。

・・・・暑ぃから、さっさとやっちまってくれよ」

「ええ、喜んで」



張り付いていた髪が、またゆっくりと離れていく。








触れるマーカーの指はさっきよりも少しだけ湿っていて、こんなトコロでも夏を感じた。




















「なあ」

「はい?」

「後で、残りの水羊羹二人で食っちまおうぜ」

「・・・ええ、喜んで御一緒しますよ」

























2004年暑中見舞いフリーテキストでした。
配布は終了しましたが、もし持ち帰りたいと仰ってくださる方がいたら
管理人までご一報お願いします。



SEO 実績と信頼の在宅ビジネス 花 無料レンタルサーバー ブログ SEO

sjs















こうやって、戯れに髪に触れるたび。

「仕事の邪魔だから触んなよ」

指に絡めた真っ黒なそれが、指を離れていくのを目にするたび。

「だって話しかけても相手してくんねーじゃん?」

ひどく、悲しくなる。

「だから仕事中だって言ってんだろ」

どうしてあのとき、

「仕事中だからこうしておとなしくしてるんじゃん」

どうしてあの場所で、

「……もういい。勝手にしろ」

この男と俺は、

「おう、勝手にする~」

 1つに、なれなかったんだろうかと。










溶け合ってしまえたらいいのに









毛足が長すぎてちゃんと座れているか不安になるような絨毯の上で、男の座る椅子に寄りかかる。

そして上から降ってくる髪を、またくるくると指に絡めた。

部屋に反響しているのは、男がペンを走らせる音と、2人分の息遣いだけ。

2人っきり。

この多くの人間に好かれてしまっている男を、確かに独占しているといえる状況なのに、心は、それに

満足してくれない。

構ってもらえないとか、こっちを向いてほしいとか、そういう理由からではない、それ。
 
理由なんてわかっていて、だから、指に絡まった男の髪を見つめながら、脳はまた同じ過去の再生を始

める。

『シンタロー、俺の中に来い!』

あのときはただ、使命に急かされていただけだった。赤の番人としての役目を果たすため、ただそれだ

けのためにあの男と1つになろうとした。

1つの器の中で2つの魂を重ねあって、混ぜあって、肉体を通しての感覚、剥き出しの魂を通しての記

憶、知識の共有を進めて、果たさねばならないことのために、1つに、と。溶け合ってしまえ、と。

結局それは後でわかった赤と青の反発とか、あのとき自己の放棄を拒んだお前の精神とか、そういうの

に邪魔されて叶わなかったんだけど。

でも、あのときはそれでよかった。混じりあえなかったことを、よかったと思えた。

だってそのおかげで俺はサービスと、ついでに高松ともまた共に過ごす時間を得られた。

失った分の時間を埋め合わせるように、そばに寄り添うことが許された。

そして、面と向かって向き合うことで、シンタローに惹かれることだってできてしまった。

嬉しくて、幸せで、喜んだ。満たされていて、悲しいことなんて何もなかった。

でも今はそのことに、混じりあえなかったことに物足りなさを感じている。

シンタローのことを好きになれたのは嬉しい。それが2つに別れていたが故にできたことだというのも

確かにわかっている。

けれど、好きになれば好きになるほど寂しい。いつか、こうして寄り添い合うこともできなくなったら

と考えてしまって。

これまで生きてきた長い長い人生。その中でも別れはたくさんあった。

親しくしていた者たちは、皆自分より早く死んでいった。

青の一族が島を出ると、唯一同等の時間を生きていた、アスまでもが遠ざかった。

別れは死別であれ離別であれ関係なく、必然として目の前に存在していて、避けることなどできなかっ

た。

だから、怖い。

また、今度はシンタローを失ってしまうのではないかと思えて仕方ない。

元々俺の身体だったシンタローの今の肉体は不老ではあっても不死ではない。

秘石がそばにあればいくら傷つこうが修復してもらえるが、聖地に旅立ってしまった秘石は遠く、復活

も必ずではありえない。

それに別れは死別だけではない。

シンタローが俺を嫌いになる、俺の存在を厭うようになる。その可能性がないと、誰が保証できる?

指に絡んでいた髪がするすると解けていく。まるでそれが未来の暗示であるかのように。

悔しくてさっきより強くその髪を引けば、背後から「痛ぇっ!」という声と苦情が届く。

「あ、悪ぃ悪ぃ」

何を考えていたかなんか読ませないように明るく返事をすれば、「今度は気をつけろよ」と振り返った

シンタローが言った。

やめろ、と言われないのが嬉しくてにこにこと笑っていれば、「アホ面」と罵られる。

でもそれで構わない。相手がシンタローであれば別にいい。

「ちなみにお前も笑えばこの顔だぞ?」

今度はにやりと口端を歪めて見せれば、「知ってるからやめろって言ってんだよ」と上から頭を小突か

れた。少し痛い。

仕事に戻るシンタローを見届けてから、やんわりと掴んだ髪を指に巻きつけてキスをしてみる。

顔が見えないのが惜しい。見えたら絶対にあの顔は真っ赤に染まるから。

『1つになってしまったら、もう2度とシンタローと直接触れ合うことはできないんだぞ?』
 
たった1人、俺の願望を知る男の声が耳に甦ってくる。

1つの身体に2つの魂が共存するという経験を、24年もの間強要されていた男の言葉が。

『俺がシンタローの中に閉じ込められていた状況と、お前とシンタローが1つになる状況とではタイプ

が異なるのだろうが、結論は一緒だ。

1つである限り、触れ合うことは決してできない』

また1つになりたいと、シンタローの中に戻りたいと思うことはないのかと、尋ねたときに返された言

葉だ。

1人の人間として生きる中で受け入れていかねばならないしがらみとか、不意に訪れる苦境とかにぶつ

かったとき、

男は確かにシンタローの中に帰りたいと思うと言い、その後に付け足された言葉。

『あの場所は俺にとって母の胎内のような所だった。自由はないが安全で、確かに守られていると感じ

られる場所だ。

戻りたいと思わないと言えば嘘になる』

だが、と男は言った。

それでも戻りたくはないのだ、と返した。

『あそこにいる限り俺はシンタローに触れることはできない。何もしてやれないし声すらも届かない。

そんな状況はごめんだ。それを幸せだとは、俺には思えない』

男の意見に対する反論などは特になかった。

正論と呼べるものだと確かに感じたし、納得もした。

そのうえで、それでもなお、俺は望んだのだ。

『それでも俺は、シンタローと1つになりたいな』

離別からの永遠の解放。

それが得られるのなら、触れ合えないことなど耐えられる。思いが届かなくても構わない。

そう言ったら、あの男は苦笑した。苦く苦く、だがそれ以上何も言う気はないという顔で。

『そうか』

と一言だけ返事をくれた。

『そうだよ』

とにっこり笑って見せたら、男の顔の苦味が増して、


『可哀想だな』


と呟かれた。

多分相手が他の人間なら、そんな愚かな願望に固執することを馬鹿にされたんだと捉えたと思う。

でも、相手は他の誰でもないあの男で、だから本当の意味を確かに理解して、返した。


『そうだろうな』


好きな相手と1つになるなんてことは、本来なら絶対に叶わない願い。

だから人間は手を繋いだりキスをしたり、もっとそれ以上のことをして相手に近づこうとする。

たいていはそれ以上が不可能だと知っているから、そこでちゃんと満たされて終わるんだけど、俺は違

う。

1つになれることを知ってしまって、しかもそれに失敗してしまった。

だからこんなにも求めてしまう。また1つになりたいと望んでしまう。

不可能ではなく可能だと、知ってしまっているが故に貪欲になってしまう。

可哀想。確かにそうなんだ。

「なあなあ、シンタロー」

くいくいと、痛くはない程度で髪を引く。

「あんだよ」

仕事中だと言いながらもちゃんとシンタローは振り返ってくれるから、笑う。

「好きだぜ。お前のこと」

突拍子もなくありのままの言葉を告げる。

シンタローはやっぱり驚いたけど、次の瞬間にはすぐ背中を向けてしまった。

「勝手に言ってろ」

声はひどく素っ気ない。でも戻り際に見えた頬は赤かった。

髪が、またサラサラと降り注いできた。

『知ってる』

そう言っているみたいに、俺の肩に滑り落ちる。


今の関係に、不満があるわけではない。

この状況で、幸せになれないわけじゃない。


ただ、足りないから。

満たされきることができないから、だから、また髪に触れる。

髪に触れて、馬鹿みたいな願いを胸に抱えて、期待してる。


ああ、このまま1つに溶け合ってしまえたらいいのに。










































『空知らぬ雨』の管理人、椿さんから相互記念で頂きましたー!

うわわわわ、有難う御座いますホントに!ジャンとシンタローなんてドマイナーなもの頼んだのにこの様な素晴らしい作品を・・・!

ジャンが哀れで寂しくてすごく愛しいです。

『大切』を喪う痛みを知っているから、どんな別れも訪れさせないようにと一つになりたいジャン。

外的に触れ合う事が出来なくても、離れるよりはずっと良い。

そんな風に思うジャンが切なくて、でも何処か必死な子供のようで。

満たされなくとも、せめて互いが一番近くに居れる事を願います。


ジャンとキンタローって、ある意味で対極ですね。

一つになって絶対な安心感を得たいジャンと、別たれる事によってそれを失った代わりに、触れる事が出来る両腕を得たキンタロー。

キンタローは最初に一つだったから別で在る事の幸福を知っている。

もしも後にジャンがシンタローと一つになれたとしても、いつか充足感が枯れてしまうのではないかと思います。

一つであるから別れは来ないけれど、二つであるから感情は喚起されるのですから。




何やら訳分からない事ぬかしてすいません。(汗)

椿さん、どうも有難う御座いました!





SEO ★★ 【 残高貧乏  解消!!】 ★★ 花 無料レンタルサーバー ブログ SEO

ss









ずっと訊いてみたかった事がある。



























「なあ、シンタロー」



同じ顔をした彼と向き合うと、鏡を見ているような錯覚に陥る事が多々ある。

初めて会った時から、ずっと、ずっと。

正しくはもう少し前からだけど。



「ンだ、ジャン?アンタにしては珍しくしょぼくれてんな」



だけど違う。



「・・・・また、サービス伯父さんの事思い出してたのか?」



俺はこんな、自分も辛い時に他人を労る笑顔を浮かべる事なんて出来ない。



「違う」

「なら如何したんだ?」



俺はこんな優しい目をする事なんて出来ない。



「訊、きたい事があるんだ」
 
「ん?言ってみろよ」



俺にはこんな泣きたくなるくらいの慈しみなんてない。



「お前、・・・俺の事、恨んでるか?」



髪の長さ以外は、同じ筈なのに。

こんなに違う。



きっと本当は、俺なんかよりシンタローの中にいた金色の彼奴の方がずっと同じで近い。



近くに居るのに遠い、シンタロー。


 
「・・・どれの事だ?腹刺されたのか?それとも最近また妙な薬飲まされたのか?」

「違う。その・・・・」

「なら俺がお前の体に入ってから、歳取らなくなった事か」

「・・・・・・ああ」



出した声は擦れて、思ったよりも小さく響いた。


誰が虚像で、誰が実像なんだろう。

俺達のどちらが。

影だった彼は此処に居て。

本体だった青の番人は居ない。



影でなくなった彼は何になったんだろうか。



「皆、死んだ。殺しても死ななそうなアイツ等も死んだ。

もうあの頃の面影は何処にもない。寂しいし、正直辛くないって事はない」



「だけどな。それはお前の所為じゃねぇ」



肩を強い力で掴まれ、地面を見ていた視線を上げる。

強い光が其所には在った。



「アイツ等は普通の人間だ。命は限られてる」

「ああ・・・」



青でも赤でもない暖かい色。

サービスも、その兄弟も、皆が好きだった色だ。



「それにな、別にその事に関しちゃ恨んでなんかいねーよ」






意識がほんの一瞬途絶えた。






そうであれば良い、とは思っていたけどそれは愚者の望みだから。




「シ、ンタロー?なんで・・・」

「なんだ恨んでほしいのか?」

「違う!そうじゃなくて・・・・・!」



同じだったら、言葉なんて要らなくて、全てが伝わったんだろうか。



「あの時確かに俺とお前は一緒だったんだ」


「パプワを護りたくて、島を護りたくて、同じだったんだよ。

なあジャン、俺がお前を恨まなきゃならねえ理由が一体何処にある?」

「・・・・・・・・っ」



     お前、俺と同じでいいのか?

言いたかった。


     幸せになれないぞ。

言い切れない。





だって今、俺は



「泣くなよ・・・ジャン・・・・」



泣くほど嬉しくて幸せなんだ。


























『でもな、ジャン・・・。俺は多分、そんなに永くは生きられない。

無いって解ってたって、どうしても面影を探しちまうんだ。


そんな俺は何時か必ず潰れる』








あの後、夜と朝の狭間で彼奴はそう言った。

          
今。


此処にはいない。






世界の何処にもいない。



















鏡は破れた。













































ジャンシン・・・・?
ジャン+シン?
どっちにしろジャン→シンです。

C5前の話だったり・・・。
マトモに読んだ事無いですけどね!ははっ!



高松は何処行った。





SEO 非常識な収入を得る非常識な成功法則 花 無料レンタルサーバー ブログ SEO

skg
 忘れかけていた思い出の箱。

 見つけたのは偶然で。
 開いたのは当然で。
 触れたのは必然で。
 
 その思い出を懐かしむ。



「ん?」
 奥の段ボール箱を開いたとたん目に付いたそれに、キンタローは訝しげな表情と共に、それを手に取った。
 随分と昔にシンタローが仕舞い込んだまま、忘れ去られた品物を発掘するための手伝いとして、物置を大捜索中だったキンタローだったが、そのさいに妙なものを発見したのだ。
(なんでこんなものが…?)
 物置といっても、他の部屋と大差ないほどの広さを持つそこである。たった一つのものを探し出すのも容易ではない。あちらこちら手分けをして、奮闘していたのだが、それのおかげで手が止まってしまった。
 透明なプラスチック容器に入れられたそれは大切そうに保管されている。しかし、ここにあるにはちょっと似つかわしくないその品に、首をひねらせ、キンタローはこの物置の主であるシンタローに声をかけた。
「おい。これはなんだ?」
 その声に、別の場所でダンボール箱を開いていたシンタローが振り返る。白いタオルでねじり鉢巻をして、捜索活動に勤しんでいたシンタローだったが、その漆黒の瞳がキンタローの掲げていたものを貫く。とたんにそれに釘付けとなり、そして次の瞬間、弾ける様に笑った。
「おおッ。なんか、すッげぇ懐かしいものが出てきたな」
「ああッ! それって、あれじゃないの? シンちゃん!」
 その声にかぶさるようにして叫んだのは、キンタロー同様シンタローの物置で探査の手伝いをしているグンマだった。すぐさま自分の持ち場を離れると、ぱたぱたとキンタローの元へと駆け寄ったグンマは、キンタローの手にしていたそれを手にとって、頭の上に持ち上げたり、ひっくり返したりと、久しぶりのご対面を味わう。
 どうやらグンマにとっても、それは思い出の品らしい。
 ひとしきり手の中で弄繰り回した後、グンマはそれを胸に、シンタローの方へ振り返った。
「懐かしいね。これ、とってたんだ」
「そっ。だって捨てるのもったいねぇだろ? ま、でも二度と被ることはなかったけどさ」
「それじゃあ、持ってても意味ないじゃない」
「いいんだよ、それで」
 シンタローも懐かしいその品へと近づくと、「はいv」とグンマからそれを手渡される。少しばかりグンマの手にあるそれを眺めてから、手に取った。一応大切にしまっておいたためか、それの痛みは少ない。
 さらりと手にかかる冷たい感触に、シンタローは眼を細めた。
 昔の記憶が脳裏をよぎっていく。それは、かなり昔のもので、それゆえに口元に浮ぶものは、もう笑みしかない。
「馬鹿だったよなぁ。あの時の俺って」
「ん~、でも仕方なかったでしょ? あの時は……」
 事情を知っているグンマは、先ほどまでの笑みを顰め、歯切れ悪く言いよどんだ。
「そうだけどさ」
 二人して、その品に視線を落とす。
 なにやらお互い共通の記憶を分かりあっているからいいのだが、一人蚊帳の外におかれたのはキンタローだった。
「あの時とはなんだ?」
「えっとね。シンちゃんの十才の誕生日が過ぎたちょっと後の頃かな。覚えてない?」
 グンマがくるんと振り返り、キンタローに向かって、ことりと首を傾げてみせる。
 当然キンタローが、その場に存在しているはずがない。それでも、シンタローの中にはいたのである。その目を通してキンタローが見知っていることは数多くあった。
 しかし、その言葉に、キンタローは首を横へと振った。
「いいや。思い当たるような記憶はないな」
 シンタローの目を通し、世界を見ることができたキンタローだが、全てを共有しているわけではなかった。
 意識はキンタローの自身のものである。見たくないものは見なかったし、大概は寝ている時の方が多かった。そうでなければ、まともな精神など持ち得なかっただろう。自分の意思とは反対に動く身体。そこから受ける感情は、ジレンマでしかなく、そのままでは、そのストレスで精神をやられていた可能性が高いのだ。
 だからこそ、自分の興味を引くこと――学術方面等で――それ以外には、意識を向けることはあまりなかった。結果、シンタローの日常的な生活は頭の中にはそれほど残っていない。
 知らないと告げるキンタローに、シンタローは苦い笑いを浮かべつつ、手にもっていたそれを弄ぶようにくるくると回してみせた。
「ま、別にたいしたことじゃねぇよ。―――あの頃の俺は、お前やグンマのような金髪に憧れてたってだけ」
 手の中にあるのは、そんな憧れの金色の髪。天井の光を受けて、キラキラと輝く様は、まさにあの頃、自分が得たいと思っていたものだった。
 自分の父親や叔父達が持つものと同じ色だ。
「それで、お前はそれを手に入れたのか?」
 キンタローは、じっと金髪のカツラに視線を定める。複雑な表情が顔によぎる。
 それを発掘した時、まさかシンタローのものとは思ってみなかった。きっと他の誰かの私物が混ざっていたのだろうと思っていたのだ。
 誰が手にしていても構わない。けれど、シンタローにだけは、その金色カツラは持って欲しくなかったのである。
 けれど、それはまさしくシンタローの私物だった。
「そっ♪ 馬鹿だろ?」
「馬鹿というか………」
 なんと言えばいいのか分からず、困惑する。
 馬鹿と一言で言い切るにはあまりにも軽率すぎる、深い思いがその金髪のカツラの中に宿っている気がするのだ。
 シンタローの日常的なことはほとんど覚えていない。それでも、共に同じ体にいたのである。そこから感じるその金色の髪へ対する、深い羨望と嫉妬の感情は、自分のことのように感じていた。
 それを象徴させるものに、どういう想いを抱けばいいのか、迷ってしまう。
「いいんだよ。馬鹿で―――俺だって、こいつを被った後にそう思ったし」
 手の中で回され続けていたカツラは、ポンッと放り投げられ、シンタローの頭に落ちた。きちんと被っていないそれは、漆黒の髪の上から、金色のペンキを頭にぶちまけたような奇妙な格好になっている。
 その様子を眉間に皺を寄せてみているキンタローの横で、グンマは天真爛漫に笑ってみせる。
「うん。そうだよね。僕もそう思ってたよ♪」
 全っっ然! 似合ってなかったからね。
 と、わざわざ握りこぶしまで作って力を込めて言ってくれる。
「んだとッ! グンマ。てめぇ、そんなこと思ってたのかよ!!!」
「なんだよぉ。シンちゃんだってさっき自分でそう言ってたくせに。それに本当に、すっっーーーーっごく似合わなかったじゃないか。それ!」
 行き成りこぶしを振り上げてきた兄弟に頭を庇うように、グンマは腕を交差させる。そのバッテンの丁度交差点に、シンタローはドンと拳を置いた。もちろん本気ではない。すぐにそれをどけてやり、ふんと鼻息荒く鳴らした。
「うっせぇよ! いいんだよ、似合わなくて。似合ってたら嫌だろうが」
 自分には、まったく不釣合いの金髪のカツラ。
 凄く憧れていて、望んでいて、擬似的だとわかっていても、金色を手に入れて嬉しくて被ってみたのに、けれどそれはあまりにも違和感を感じさせ、すぐに脱いでしまった。
 その後、結局二度と被ることのなかったそれは、苦い苦い思い出とともに封印されたまま、すっかり忘れ去られてしまっていたのである。
「うん、そうだね♪」
 それにグンマも賛成する。
 似合わないからこそ、幸せだった。
 そう気付けるまで随分と時間がかかってしまったけれど、そこまでたどり着く道のりは遠かったけれど、それでもよかったと思えて、笑える日を迎えられた。
 そんな二人の間で、深刻な顔をしたままのキンタローは、重々しい口調で呟いた。
「俺は、お前が黒髪だろうと金髪だろうと愛しているぞ」
 たとえどんな髪の色をしてようが、お前はお前だ。いいか、俺は全然構わないからな。
 行き成り真剣な顔のまま告ってくれた従兄弟に、シンタローは、不恰好に金髪のカツラを被ったまま、頬を膨らませた。
「ぷっ」
 そこから勢いよく空気が漏れ出て、その反動のように腰を折り曲げ、笑いを飛ばした。
「くくくっ………そうかよ。ありがとさん」
 腰が折れたそのとたん、上手く乗ってなかったカツラが滑り落ち、ただの漆黒の髪へと戻ってしまう。それを拾い上げることなく笑い続ける。
「あはははっ。そうだよねぇ、キンちゃん。シンちゃんはシンちゃんだし」
 その横で、金色の髪を持つ兄弟も釣られて笑い出す。
「だから、俺は――」
 笑い転げる従兄弟たちを前に、着いて行きそびれたキンタローは、むくれた様子で、さらに言葉を紡ごうとする。
 だが、それをシンタローは、手を差し出して、塞いだ。
 目の前にいるのは、かつて漆黒の髪を持っていた自分の身体だった。けれど、今は違う。その髪は、昔々渇望していた金色の髪になって、そこにある。だが、それを見ても、羨むことも妬むこともない。
 ただそこに在る存在を愛するだけ。
「それ以上の言葉はいらねぇよ。悪いが、俺は一生このまま――黒髪だからな」
 もう金色の髪は必要ない。
 そんな言葉はもう必要ない。
「だから、黒髪の俺を愛してなって」
 OK?
 こくりと素直に頷く従兄弟にニヤッと笑いかけ、シンタローは、ポンと足元に落ちていたカツラを放り投げてやった。

 十数年の時を経て、新しい空気を吸い込んだそれは、その後再び丁寧に直されて、押入れの片隅に、また眠りにつく。また十数年後取り出され、笑い合う日まで。




 ―――――その時は一緒に笑ってくれるだろ?










BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved