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生きるために、人を殺すことを覚えた。

生きて、なにをするのかなんて思いつかなかったけれど、むざむざ死にたくもなかった。

命を奪おうとするものすべてに反抗したかったのかもしれない。



急所を一突き。

湿った土に衝撃は緩和され、音もなく男の身体は倒れた。

炎で焼き尽くすか、首を刎ねるか。

真剣に考え始めようとした自分に気付き、どうせ見ている人間などいないのに照れ笑いなど浮かべながら、汚れた後ろ襟を掴み上げる。

「捕虜、1人捕獲」

力の抜けた身体をまさぐって、武器の類いを残らず奪う。

傷付けられるわけには、殺されるわけにはいかない。

少しでも悲しませる可能性のある要因は、確実に潰さなくてはならない。



最初に殺した人間の顔が思い出せなくなった頃には、生への執着心はだいぶ薄れていた。

単純に反抗期を過ぎただけのことと言われれば、それまでで。

皮肉なことに、既に、そう簡単には殺されないだけの力を手に入れていた。

生き残ることを目的にするのではなく、目的のために生きろ、と。

幼い子どもに教えてくれた冷たい声が、意味も理解できないままに、ずっと胸の奥に響いていた。

ようやく理解できた時、あの師匠がずいぶん優しい言葉を選んだものだと笑った。

目的のために死ぬなら今だと思った。

それなのに結局、こうして未だに生きている。

生きていることは幸運に違いないのだから、師匠を見習って前向きに、生まれ変わったのだと思い込むことにした。

第1の人生は、あの人のために死んだ。

第2の人生はあの人のために、なにがあろうと生きてやると、決めた。
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少々開きすぎの胸元から手を差し込んで、汗ばんだ素肌をそろりと撫でる。

一瞬にして耳まで赤く染めた彼の、なにごとか怒鳴ろうと開きかけた口唇、を、もう片手で塞いで。

「しー」

口付けに近い距離まで顔を寄せ、小さく囁く。

「誰かに気付かれて困るんは、シンタローはんどすえ」

ぐっと息を呑む表情が可愛らしくて、悔しい。

いつも近付きたくてしょうがなくて、焦がれて、けれど近付けば近付くほど、互いの距離を思い知らされて、また焦がれる。

その繰り返しをどれだけ続けてきただろう。

(わては世界中の誰に見られたって構へんのに)

と、胸に浮かんだ素直な本音につい笑いながら、しなやかな首筋に顔を埋めた。

真っ赤な布地と、漆黒の髪と、薄く灼けた肌と、彼を構成するすべてに身体も心も急激に高まっていく。

「シンタローはんの匂いがする・・」

ほしいな。

舌の上でそっと転がした言葉が、我ながらおかしい。

(この人が、すごくほしい)

とっくに奪われてしまった己と引き換えに、この人を奪ってしまえればいいのに。

耳を打つ、戸惑いを含んだ声。

それが決して拒否を表していないのをいいことに、自分より幾分高めの体温を手繰り寄せた。
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長い髪に力強く、それでもそっと静かにタオルを押し当てる。

たっぷり水分を吸って、普段よりもさらに黒を深くした髪は、艶やか。

布越しにもしっとりと肌に、馴染む。

「ドライヤー、そこにあるだろ」

温風を当ててさっさと乾かしてしまうのは、少し。

いや、かなり、もったいないことだと思う。

断る理由を言ったら間違いなく殴られるだろうから、断れるはずもないけれど。

(晒されたうなじに噛みついてしまおうか)

一通り水分を受け取ったタオル適当に投げて、衝動のままに指に力を入れる。

絡んだ髪から新たに搾られた水が、手首まで濡らした。

かすかに息を呑む音。

「アラシヤマ」

非難の声色には気付かないふりで、軽く微笑んで。

白々しく、名を呼び返してみたり。

「なんどすか、シンタローはん」

「痛ぇよ」

ようやく交わる視線が嬉しくて、乱暴に口唇を合わせた。
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迂闊なことに、変だと気付いた時には敵意にぐるりと囲まれていた。

暗い森の中の、わずかに開けた空間。

周囲に生い茂った草木に潜む敵の姿は、目に見えないけれど、見えないだけに如実だった。

(少なくとも15、・・20はいるか)

臨戦態勢をとって周囲を探ると、1つ、覚えのある気配に気付く。

たちまち接近してきたそれは、すぐに実体となって、頭上の枝から音もなく降り立った。

「わての獲物どすえ」

「・・連絡の1つもよこさない部下を、いつまでも待ってられるか」

「だからってなにも、総帥が直々に来ることあらしまへん」

「キンタローは反対側を捜索してる」

がつんと肩をぶつけて、目配せを。

背を任せる相手として、少なくとも力量的には不足がない。

お互い、自分の前方180度の端から端まで目を曝しながら、タイミングを計る。

気を抜いているつもりはないが、それでも口元が弛んでしまうのは、圧倒的な余裕のせいだ。

「運が悪いな」

「相手が、ですやろ?」

「当然。あ、あんま炎、広げんじゃねーぞ」

「任せておくんなはれ」

敵中に身を踊らせる瞬間、どちらともなく肩の上で、拳をぶつけた。
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アラシヤマはわずかに震えたような手のひらを伸ばし、静かすぎるほど静かに俺のむき出しの腹に乗せた。

冷静に観察しながら、部屋の照明をすべて落とす。

こいつはまったく妙に人のことを神聖視してやがるのはわかっていたから、ここまでは予想通りだとぼんやり思って、すぐに、予想なんてしていたのか俺は、と羞恥と呆れに顔が赤く染まることを耐えるのは困難になった。

そして急に、些か乱暴に腕を引かれ体を押され口唇を奪われ脚の自由も奪われる。

熱い荒い息。

首の皮膚に柔らかく引き裂くような痛み。

がっつくな、と呟いた言葉は小さすぎて、濃い闇に呑まれて消えた。
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