トライアングル
18歳離れた子供。
ともすれば、親子といってもおかしくないような年齢に複雑な感情を抱いていた。
思春期なんぞ当に過ぎているが、否、だからこそ単純に喜べない。
「わ~、漸く起きたね~」
「泣かすんじゃねぞ」
「判ったよぅ。シンちゃんってばそればっかなんだから」
しかし、他の二人の様子を見て、悩んでいるのが自分だけであるということに馬鹿馬鹿さを覚えた。
士官学校を出てから、こうして三人が揃うことは珍しい。
唯一、本部にいることの多いグンマも研究室にこもることが多いし、シンタローも自分も戦場に身を置いている。
グンマとシンタローはメール等でやり取りをよくしているらしいが、キンタローは諜報部という難儀な部署のため、外部との連絡が取れないことが多い。
今回、特別に帰ってこれたのは、母の健康状態が芳しくないからだ。
他の団員だったなら、親が危篤であろうが亡くなろうが戦線を離脱することは出来ないだろうが、そこは総帥の息子。
小康状態であったことも起因して、直ぐに戻ることが出来たのだ。
一方、シンタローは元々休暇だったために、陣痛が始まってからずっと母の傍にいた。
連絡を受けてたグンマも研究室からすぐに向かったのだが、そのときに母体が危険であると聞き、シンタローと共に永遠とも思えるほどの長い時間廊下で待っていた。
そして、弟が生まれてから三日後の今日、キンタローも戻ってきた。
出産直後から、母の様態は芳しくない。
母が弟を抱いたのは一回だけ、それ以降は集中治療室に入ったきりだった。
キンタローが見る限り、シンタローたちの顔色は芳しくない。
けれども自分も似たようなものだと思い直す。
それはきっと、三人に共通の認識があったからだろう。
グンマの母親が亡くなった理由を、直接聞いたことは無かったと思う。
だがしかし青の一族の子を産むことにより母体が危険にさらされるということを知っている以上、もしかしたらという思いが心のどこかにはびこっている。
今も弟を可愛がっているこの雰囲気がどこかから回りしている。
「名前はまだ決まっていないのか?」
小さな手を指で突きながら聞くと、シンタローの顔が少しだけ歪んだ。
「どうか、したのか?」
何か不味いことを聞いてしまったのかと思い、不安に駆られていると不意にグンマが袖を引っ張った。
そこにはやはり僅かに歪んだ――呆れた表情を浮かべているグンマがいた。
「あのね、生まれたときにベットに貼ってあったんだけど…」
「――コタローだよ」
「ぐっ…」
別に悪い名前ではないだろう、きっと。
しかし、シンタロー、キンタロー、コタローとは一体どんなセンスをしているのだとつい問い詰めたくなる名前ではある。
「せめて統一性があればいいんだけどねぇ」
否、きっとタローで統一していると言い張るだろう、あの父親は。
不意打ちのブローにため息をついたが、この弟に罪は無い。
「よろしくな、コタロー」
声を識別できないはずなのに、確かに笑ったと思ったのはきっと欲目だろう。
それから数日後。
意識が戻ることも無く、母が逝った。
まだ40才にも達していなかったはずだ。
キンタローが最後に会ったとき、つわりが終わったと笑っていた。
丈夫ではなかったが、健康そのもので優しいかった母。
過去形であらわさなければならないことが、何よりもつらかった。
「コタローの面倒見てくれないか?」
居間でぼんやりとしていたところに声をかけられた。
振り返れば、シンタローが赤ん坊を抱っこしている。
「どうかしたのか?」
「…いや、ちょっと預かっていてくれないか?」
人見知りといっていいのか、コタローは知らない人が近づくと途端に泣き出す。
今のところ、シンタロー、グンマ、キンタロー、マジックまでは安全なのだが、交代でやってくるベビーシッターには懐いてくれない。
…医者であるから仕方が無いのだが、高松に懐いているのを見たときは末恐ろしかったが。
そんなわけで、二人で交代でコタローを見ている状態なのだ。
ちなみにグンマは除外されている。
コタローが懐いているのは確かだが、不安でおちおちほかのことが出来なくなってしまうからだ。
シンタローの手からコタローを預かるが、空色の瞳がじぃっとキンタローを見ていた。
まだこの頃は眼で識別できるわけではないというが、確かにキンタローを捕らえているみたいでなんだかおかしい。
「まだ懐かないのか?」
「ん~、なんとか近づいても泣かないくらいにはなったみたいだがな」
苦笑するシンタローに無言で頷く。
シンタローにせよ、キンタローにせよこの屋敷に帰ってくることはあまりない。
グンマに預けるなど恐ろしいことが出来ない以上、一刻も早くベビーシッターに懐いて欲しいというのがある。
だがしかし、二人ともコタローの傍にいてやりたいという思いもある。
否、いてやれないことを口惜しいとまで感じているのだ。
「…あ~、絶対ブラコンになる」
「…程ほどにしておけ、異常者は出したくない」
「お前も同じだろ?」
「まぁ、な」
互いに顔を見合わせて苦笑した。
「っと、そういえば何か用事でも出来たのか?」
「ああ、ちょっと辞令が下ったらしくってな」
シンタローは現在休暇扱いを受けていたが、そろそろそれも終わりらしい。
母が亡くなる前から付きっ切りであったことを考えれば、そろそろ復帰しろということなのだろう。
そういいつつも、キンタローも近日中に戻らなければならない。
元々休暇扱いだったシンタローだったが、そこに総帥の娘であるという要素があったからこそ今まで休むことが出来た。
ついでのようにキンタローも休めたのもその影響に過ぎない。
「…そういうわけだから、行って来るぜ」
「ああ、ちゃんと見ておく」
ため息を吐き、踵を返すシンタローの後姿を見送る。
現在、コタローの秘石眼の有無は不明とされている。
それは子供――赤ん坊であるため、力の使い方を知らないかららしい。
秘石眼を使いこなすには、それ相応の訓練をしなければ出来ないのは良く知っている。
それは蛇口を探しているに等しい。最初はどこを捻ればいいかわからないのだが、こつさえ知っていれば目を瞑ったって出来る。
故に、訓練を受けた後のほうが遥かに暴走しやすく、また未熟なままで暴走したとしても周囲にそれほどの影響を与えることは無い。
実際、キンタローが子供の頃に起こした時には、シンタローがよろける程度でしかなかった。
危惧する程ではないのだが、グンマからあることを聞いてしまった。
どこかからハックしたものらしく、公にしないでねと釘を刺されたもの。
…曰く、秘石眼が両目であるか否かが不明であるということだ。
そして、その解明を父であるマジックが急かしているという事も――
ふと、自分の腕の中にある存在に眼をむけた。
かまってもらえなかったのが不満なのか、今にもぐずりそうな顔をしている。
「ああ、悪かったな」
抱っこしている腕を軽く揺らしてやると、途端に笑顔になった。
とても脅威になるようには思えない、そんな笑顔だ。
不安に思わないといえば嘘になる。
キンタローにしても、片目をコントロールするのが手一杯なのだ。
暴走させることは無いだろうが、微調整が難しい。
それが両目ともなれば、想像を絶する力であるに違いない。
しかし、その点を引いても父親の行動は何か不審に感じられた。
確かに危険な存在かもしれないが、それを隠す必要が一体どこにあるのか。
考えるにはあまりにも少ない情報に、再度ため息を吐いた。
グンマは色々知っているようではあったが、まだまだ調査中だと言っていた。
滅多なことは無いと思うけどね、と笑っていたものの、その眼は厳しいものだった。
情報統制ゆえに、何かを嗅ぎ取ったのであろう。
文字通り、ガンマ団における大部分の情報網を握っているグンマが手こずっているのだ、一筋縄ではいかない秘密があるに違いない。
ふと、視線を下ろせば、コタローが大きな眼で見つめていた。
その瞳は鮮やかな青色で、一族の血が流れていることを如実に語っている。
つまりは自分の弟であるという確かな証拠。
「厄介なことになったな」
実質独り言のようだが、コタローに向けて話しかけるにはあまり向かない言葉だ。
それでもコタローは目の前にある顔――キンタローに向けてその手を一杯に伸ばして触れようとしていた。
パタパタと動くその腕があまりにも可愛らしく、微笑むと抱えなおしてその手が届くようにと調整してやる。
「大丈夫だ。例え何があろうと俺達はお前の兄なんだからな」
漸く触れた何かにご満悦なコタローに、諭すようにそっと誓った。
<中書き>
このお話を書くにあたり、ちょっとだけ原作とかけ離れすぎた設定を作ってしまったことにどうしたものかと悩んでいました。
いろんな方に申し訳ないと思ったのですが、こうして発表した以上、最後まで駆け抜けていこうと思います!
原作と違う展開をするところも多々あるとは思いますが、それでも読んでくださる方がいることを願っております。
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暗転した世界
何度もインターフォンを押したが返事がない。
すぐに眉根にしわを寄せてしまうのを変な癖だと笑われたが、あの二人に囲まれていたら自然にそうなってしまったのだ。
どうしたものかと迷ったが、すぐにパスワードを打ち込んだ。
音もなく開いたドアは一見無防備に見えるが、すでにここに来るまでに幾重ものセキュリティが用意されており、容易にここにたどり着くことは出来ない。
しかし足を踏み入れれば、あまりの飾り気のなさにあっけに取られてしまうだろう。
華美を嫌い機能性を好むためか、はたまた貧乏性のせいか、驚くほど必要最低限のものしかない。
調度品も、決して安いものではないが実用性に富んだものが多い。
キンタローが会いにきた、彼女の座るデスクもそうだ。
重量感のある樫で出来たデスクは、滅多な事では使い物にならないということはないだろう。
すべらかな肌触りが心地よく、どこか温かみのあるものだった。
そのデスクを見て目を見張ったのは、別にデスクに異常があったわけではない。
度の過ぎるスキンシップから起こる、ガンマ砲の打ち合いを奇跡的に避けている机には傷ひとつついていない。
そう、問題は緊張感も無くうたた寝している彼女にあった。
長い黒髪が空調の風に合わせて揺れている以外は、シンタローの寝息がかすかに聞こえる程度。
手にペンを持ったまま、気持ちよさそうに眠っている彼女にそっと近づく。
デスクに乗っている大量の書類。
今すぐにでも目を覚まさせ、総てを決済させるべきなのだろう。
そのために、キンタローは手伝いに来たのだから。
けれども寝顔を間近で見た瞬間、手が動いていた。
「ん…」
ゆっくりと体を起こすと、サイドボードの上においてある時計に手を伸ばした。
何度か空振りしたものの、何とか捕まえることに成功し、今の時刻を見る。
「あれ?」
時計の示す時間を見て、違和感を感じた。
明らかにおかしな時間に、ふと寝る直前に何をしていたかを思い出そうとした。
なぜかぼんやりとしか思い出せない。
何時もどおり、業務を終えて屋敷に戻ったはず。
だが、何か腑に落ちないのだ。
そこではた、といろんなことに気がついた。
ここは屋敷ではない、総裁室の奥にあるベットルームだ。
総帥になったころは、あまりの忙しさにここに寝泊りをしたものだが、最近はよほどのことが無い限り、帰る様にしているはずだった。
そして、自分の格好。
上着が脱がされていて、その下に着ているシャツ一枚の格好だ。
さらに言うなら、ブラジャー、ズボンがない。
さっと、顔が青くなった。
いくらなんでもおかしい。
どんなに疲れていても、きちんと着替えて寝ているはずだ。
がば、と身を起こして周りを見回す。
人の気配なんて無い。
よく見ると枕元にズボン、そしてたぶん身に着けていただろうブラジャーが…
見つけた瞬間に、今度は顔が熱くなった。
自分だったらこんな風に畳まない。
脱いだらすぐ、洗濯籠に突っ込むはずだ。
起きぬけの衝撃が覚めやらぬまま、とりあえずのろのろとズボンと、きれいに揃えられている靴を履いた。
そこでようやく部屋の外、いつも自分が陣取っている部屋に何者かの気配を感じた。
今まで気がつかなかったのが不思議なくらいだが、自らの身に起きたことに手一杯で何も考えられなかったというところだろう。
そっと、気配を消して歩き、少しだけドアを開けて様子を窺う。
耳に届く音は、カタカタとキーボードを叩く音のみ。
淡々としたその音にいささか拍子抜けたが、思い切って顔をドアの外へと出してみた。
「…起きたのか?」
真直ぐにこちらを見るその目に、さっきまでのことが嘘だったのではないかと思った。
しかし、彼の座る椅子にかかった深紅のジャケットが全力で忘れようとするシンタローの意識を引き止める。
「いつ、来たんだ?」
それでも一抹の期待を胸に、平常を装ってドアをくぐり彼の元へ、デスクへと近づいていった。
それが現実へと一歩一歩近づいていくと信じて。
「結構前だな」
「そうか」
ちらり、とデスクに広げられている書類に目をやる。
たちまち襲う既視感に胸が騒いだが、何とか抑える。
しかし、現実はシンタローをあざ笑うかのように、するりと伝えられた。
「あまりにも気持ちよさそうだったから、起こさないでおいたんだが、ゆっくり眠れたか?」
「…え?」
キンタローの声が遠くに聞こえる。
代わりに、キンタローの手元にある書類の内容がフラッシュバックする。
確か、昼ごはんを食べた後にあの書類を見ていたのは――自分?
「シンタロー、どうかしたのか?」
突然黙ってしまったシンタローの様子に気がつき、椅子から立ち上がると、その顔に手を伸ばした。
もしかしたら、体調が悪いのかもしれない。
根詰めて仕事をしている姿を見ているからこそ、どうしても心配してしまう。
しかし、伸ばした手はあっけなく振り払われた。
「シンタ…」
「とっとと出て行け~~!」
わけもわからずキンタローが追い出された後。
顔を赤くしたシンタロー一人が部屋に残された。
<後書き>
シンタローのしているブラは肩紐なしのやつです。
(そこからですか)
寝るときにブラを外すものらしいですね。
私はそのまま寝てるんですけど、妹とかがそうしてるのを聞いて書いてみました。
ネタをありがとう、妹(いや、そんな感謝の仕方はどうかと)
なんで脱がしている間に裏向きの話にならないかというと、書いている人間に問題ありです。
後、設定もある程度影響している気がします。
通常設定だったら、キンタローが襲うか、たたき起こして仕事させてそうですけど、この設定だとあくまで兄弟ですから。
付き合っていてもそうでなくても、こんなもんでしょう。
このページにはおまけがあります。すぐに見つかると思うので、頑張ってください。
散歩道
「遅い!」
木々の隙間から漏れる光を浴びて、シンタロー自身が輝いているように見えた。
所々闇の濃い場所もあるというのに、なぜか一人切り取られたかのように見失うことはない。
キンタローよりも先へ進み、時折振り返っては笑いながらせかすのだ。
その足取りは軽やかで、全く体重を感じさせない。
「迷子になるぞ!」
追いかければムキになって、全力で走っていくことは理解しているこそ、少しだけ遅れてついていくが、キンタローも決して引けをとるつもりはない。
遅ければおいていかれるし、かといって隣を走ることもできない、中々難しいところである。
そして、気を抜けば、たがが散歩で道に迷うこともある。
実際、何度も迷ったこともあり、いろんな人に迷惑をかけたものだ。
兄として一応諌めたが、全く聞くつもりはないらしい。
一人、ずんずんと進むその後ろに仕方がなくついていった。
実際のところ、二人の歩いているところは屋敷の敷地内であり、巧妙にカメラが設置されていた。
それは彼らの安全のためであり、また父親のコレクションのためでもあった。
だからこそ、迷ったとしてもすぐに救出させるのである。
注意深く見れば、ところどころ手が加えられていることに気がついただろうが、駆け回ることに夢中で、子供たちが気がつく由もない。
しかし、今日は迷う心配は要らなかったらしい。
どこをどうきたのかはわからないが、いつの間にか庭園にたどり着いていたのだ。
段々と規則正しい木々の並びに最初に気がついたのはキンタローのほうだった。
走ることに夢中になっているシンタローに対し、今度こそはきちんと帰れるようにと気を配っていたからこそ気がつけたのである。
それから少ししてシンタローは足を止めた。
「…戻ってきちまったのかよ」
憮然とした顔に、かける言葉を少しだけ悩んだ。
ここで機嫌を損ねれば、また森の中へと突っ込んでいくことは間違いない。
ぐるりと周りを見渡すが、そこに広がるのは見慣れた庭。
早々に興味を持たせることができなければ、今来た道を戻ることになる。
キンタローはあせりながらも、シンタローの横に並んだ。
同じく何かを探しているようだったが、目新しいものは見つからなかったらしい。
シンタローが振り向き、キンタローに声をかけようとしたそのとき、キンタローの目にあるものが飛び込んできた。
病室という割には、温かみのあるその部屋は、病弱なグンマのために用意されたものだった。
一年の半分ほどをこの部屋で過ごすグンマだが、保護者が敏感になりすぎているともいえなくはない。
その日も例外なく、ベットに横になっていたのだが、思いも寄らない来客に驚き、かつ喜んだ。
「まったく、また風邪かよ」
開口一番、呆れたように言われたが、久しぶりに会うことができて思わず笑顔になった。
ここから屋敷まではそれほど遠いわけではない。
けれども子供だけで来れるほど近くもなければ、安全な場所ではない。
なんといっても、離れているとはいえガンマ団本部の一角なのだから。
とはいえ、グンマの関心は別のところにあった。
「シンちゃん、今日はスカートだ~」
そう、いつもは兄の服を借りているシンタローだが、今日は珍しく“女装”をしていたのである。
シンタローが持っている服は、父であるマジックの趣味で、可愛らしい服が多いのだが、動きにくいという理由で勝手にキンタローの服を拝借しては駆け回ってるのだ。
しかし、今日は先ほど着ていたキンタローの服を脱ぎ、わざわざ着替えたのである。
それは病室に向かうのに、汚れた格好じゃいけないとキンタローが諭したこともあり、朝、マジックを送り出したときに来ていた服に着替えただけなのだが、グンマにしてみればうれしい限りである。
しかもキンタローも一緒である。
シンタローに比べれば、会う機会も多いのだが、こうして三人そろうことは少ない。
何とか体を起こそうとしたが、キンタローによってとめられてしまった。
「無理をするな。治りが遅くなるぞ」
もう一度布団の中に戻され、むぅと膨れた顔をしたが、起き上がった瞬間に、シンタローが後ろに何かを隠しているのが見えた。
「何もってるの?」
体を乗り出そうにも、キンタローに押さえられてしまうのがわかっているので、精一杯首を伸ばしてシンタローの後ろのほうを見ようとする。
その言葉に対して得意げに、両手を前に突き出した。
「すごいだろ?」
そこには色とりどりの花が咲いていた。
庭でキンタローの目に飛び込んできたもの。
それは庭師によって手入れされている花だった。
いつもは当たり前のように見ているだけだったが、グンマが寝込んでいることを思い出し、お見舞いに行こうと提案したのだ。
グンマが屋敷に来るときは、よく庭で遊ぶので、持っていったら喜ぶのではないかと説得したところ、思いのほか簡単に通ったのだ。
シンタローも、最近顔を合わせていない従兄弟が心配だったし、何よりキンタローが考えていることがなんとなくわかってしまった。
「頼んでとってもらったんだ」
「けど、俺たちが選んだんだぜ」
庭師が丹精こめて作った作品を、無断でとるわけにも行かないと、一応断りを入れようとしたところ、花を切ってくれたのである。
「すっごいうれしいよ、ありがとう」
その後、二人だけで来たことがばれて、こってり怒られたりしたが、また訪れようと計画したとかしないとか。
<後書き>
もしもの第一弾です。
シンタローを女の子にした意味が、早くもないような作品に…
おかしいな、最初に思いついたときには、思いっきり萌えな話が出来上がったと思ったのに…
個人的には、本当に苦労性になってしまったキンタローさんがお気に入りです。
これで、大きくなったらなったで、悪い虫やらグンマの黒さに四苦八苦し始めるのですよ。
…キンタローさん苦労日記に変えたほうがいいかしら?
*この設定は、『南国~』が始まる前、と考えてください。
シンタロー(♀) マジックの娘。双子の妹。
士官学校での成績はトップクラス。負けず嫌いな性格上、常に一番でなくては気がすまない。
姉御肌のため、慕うものが多い。ストーカーの類も多いのだが、本人はまったく気にしていない。
かなりの天然。
キンタロー(♂) マジックの息子。双子の兄。(実際はルーザーの息子)
士官学校での成績はトップクラス。卒業後、その能力を買われ、諜報部へ。そのため長期家を空けることもある。
一応、時期総帥。かなりのシスコン。
周りの環境とオールマイティカードであるため、苦労性。というか貧乏くじを引くこと多し。(その分おいしいところあり)
グンマ(♂) ルーザーの息子。シン、キンの従兄弟。(実際はマジックの息子)
幼いころは、キンタローとともに、シンタローの悪口を言ったものに対して嫌がらせを多々行ってきている。
しかし、キンタローと違い、裏工作(笑)が多かったため、彼の悪行を知るものはキンタロー一人のみ。
多分、一番素を見せているのはキンタローではないかと。
他、補足としては取替えっこは行われてます。(キン、グン間で)
基本的にグンマはキンタローもシンタローも大好きです。
シンタローが軸だからこそ、自分と一緒に怒っていたキンタローが好き、みたいな。
でも互いのことを、シスコン、悪魔、と思っていたりします(笑)
そんな、一種仲間のような絆がシンタローにはうらやましかったり。
ほかの人物関係はいじるつもりはありません。
が、もしも付け足すようなことがありましたら、不定期に更新させていただきます。
ではでは、ついてこれる方のみ、お付き合いくださいませ。
シンタロー(♀) マジックの娘。双子の妹。
士官学校での成績はトップクラス。負けず嫌いな性格上、常に一番でなくては気がすまない。
姉御肌のため、慕うものが多い。ストーカーの類も多いのだが、本人はまったく気にしていない。
かなりの天然。
キンタロー(♂) マジックの息子。双子の兄。(実際はルーザーの息子)
士官学校での成績はトップクラス。卒業後、その能力を買われ、諜報部へ。そのため長期家を空けることもある。
一応、時期総帥。かなりのシスコン。
周りの環境とオールマイティカードであるため、苦労性。というか貧乏くじを引くこと多し。(その分おいしいところあり)
グンマ(♂) ルーザーの息子。シン、キンの従兄弟。(実際はマジックの息子)
幼いころは、キンタローとともに、シンタローの悪口を言ったものに対して嫌がらせを多々行ってきている。
しかし、キンタローと違い、裏工作(笑)が多かったため、彼の悪行を知るものはキンタロー一人のみ。
多分、一番素を見せているのはキンタローではないかと。
他、補足としては取替えっこは行われてます。(キン、グン間で)
基本的にグンマはキンタローもシンタローも大好きです。
シンタローが軸だからこそ、自分と一緒に怒っていたキンタローが好き、みたいな。
でも互いのことを、シスコン、悪魔、と思っていたりします(笑)
そんな、一種仲間のような絆がシンタローにはうらやましかったり。
ほかの人物関係はいじるつもりはありません。
が、もしも付け足すようなことがありましたら、不定期に更新させていただきます。
ではでは、ついてこれる方のみ、お付き合いくださいませ。
高松は信用するべからず。
改めて、自分への教訓を胸に刻む。
だけど既に後の祭り、取り返しはつかない。
「シンちゃ」
1人、捕獲。
「シンタ」
2人、捕獲。
「おや、ずいぶんかわいく」
3人、捕獲。
仕事の用件で訪れたグンマ、キンタロー、それに俺が呼び出した高松。
今日はもう、この3人以外と会うわけにはいかない。
「他言無用だぞ、おまえら」
俺を一目見てぴしりと固まった状態のグンマとキンタローに言う。
無理もない、今、俺は外見が著しく変化しているのだ。
平たく言えば、性別がまるきり変わってしまった。
小ぶり(これは救いかもしれない)だが確かに膨らみのある胸。
くびれたウエスト、腰回りから尻にかけての厚い肉。
筋肉の見当たらない細い腕に、それでもある程度のボリュームをもった脚。
どうやら身長も縮んだようだ。
失ったものは男の大事なモノと、あとはプライドか・・。
「それもこれも全部テメーのせいだ高松!マッド科学者!ヤブ医者!!」
「失礼な。あなたがドリンク剤を注文してきたから、新薬を試すことにしたんですよ」
「なんの言い訳にもなっとらんわっ」
そんなわけで、俺のこんな姿を他のやつらに見せるわけにはいかないので。
「とにかく!早く解毒剤を作れ!!」
と、高松を追い出して。
「グンマ、見たことは忘れろ。でも高松がちゃんとまともな薬作るか監視しててくれ」
と、グンマを追い出して。
「悪いけど後のこと頼むな」
と、キンタローも追い出そうと、して、ドアを開けたところで、4人目の目撃者が出てしまった。
しかも、実は1番見られたくなかった、やつ。
「・・・シンタローはん・・・・?」
総帥に提出するためだろう、厚い書類を手に、総帥室のドアの前にちょうどやって来たアラシヤマだ。
ノックをする形に振り上げられた手が、そのまま宙で止まっている。
まさしく、最低最悪の日。
キンタローのやつ、いつの間に立ち去ったんだ。
アラシヤマに抱きすくめられてキスを繰り返されながら、追い出そうとしていたのを棚に上げて、恨み言も言いたくなる。
本来なら俺より背の低いアラシヤマは、今や腰を屈めて俺に身長を合わせていた。
一言で表すなら『気に食わない』。
力を加減されて抱かれるのも、顎が持ち上げられるのも気に食わない。
「・・そない怒った顔、せんでも」
言いながら、手早くベルトごとスーツのパンツが落とされた。
同時に、余った襟刳りから侵入した手のひらが、胸を掴む。
「あ」
「え?」
うわ、息が弾む。
「意外にも手のひらにすっぽりと」
「それ以上言うな」
そして鼻血を拭け。
「・・っあ、や、」
アラシヤマは片手で胸をまさぐりながら、もう片手を太股の間に滑り込ませてきた。
布越しに、未知の場所を指先が触れる。
抗議の声は柔らかく塞がれて、舌が絡み合う音が、部屋に響く。
長い口付けの最中もずっと睨み付けていたというのに、アラシヤマは止まらなかった。
それどころか、熱っぽい視線で俺を犯す、から。
まともに抵抗もできないままに、俺はソファに倒されていた。
普段の半分ほどの力でアラシヤマの身体を押し返してみたって、それはまるで形式的な愛撫のようだ。
大きなシャツの前ボタンはすべて外され、口唇から首、乳房、腹へと舌は伝い下りる。
それこそ意外にもアラシヤマはキスがうまい、というか、たぶん舌使いがうまい。
トランクスの上から女としてのそれを撫で続けるアラシヤマの指は、すっかり濡れていて、粘り気のある水音を立てていた。
「やめ・・っ」
男であろうが女であろうが変わらないらしい、弱い脇腹をやわく噛まれて、たまらずびくりと背を反らす。
と、その拍子に合わせて、アラシヤマの指が直接の刺激を開始した。
用済のトランクスは、軽い音とともに床に落とされてしまった。
女の俺は異物もすんなりと受け入れる。
アラシヤマの骨張った指がずぶずぶと中に沈んでいく様子は、まったくもって奇妙。
それでも内壁を擦られれば、身体は震えて、さらにアラシヤマの指を濡らす。
「ア、ラシ、ヤマ」
腕を伸ばして、裸の肩を引き寄せて。
近寄ってきた口唇は、なんとか避けた。
「抜け、・・指」
「は、ー・・なんで」
「あ!ちょ、動かすな・・ッ」
「気持ちいいでっしゃろ?」
「いいから、もう、ヤバ・・」
「イきます?」
「違・・っ」
要領を得ない会話にいらいらして、齧りつくようにしてアラシヤマの耳に言葉を注ぐ。
恥じらいとか、そんなものじゃない。
実際アラシヤマの言うことも当たっていて、 本当に切羽詰まっていたのだ。
アラシヤマはすぐにきょとんとした顔で俺を見つめ、伝えられた言葉を反復した。
「破れてまう、って」
「処女膜」
俺はこの気に入りのソファを血で汚す気はない。
ついでに言えば男に生まれたのだから、今さら処女を捨てる気もなかった。
渾身の力で上に乗っかっている身体を突き放すと、意外なことにアラシヤマはあっさり退いて。
「アラシヤマ?」
「・・・萎えましたわ。ってシンタローはん、わてと散々ヤってきて処女もなにも」
「女としては初めてだろーが。やだぞ、男も女もおまえに捧げんのは」
本当はまだ身体の奥が疼いて仕方がない、けれど、俺は起き上がって散らばった服を拾った。
いや、正確には、拾おうとした。
トランクスを掴む前に、俺はふわりと持ち上げられたのだ。
肩に担がれるなんて恥ずかしい体勢に驚きすぎて、怒る間もなく、俺を軽々と持ち上げたアラシヤマはベッドルームに向かって歩き出す。
(もしや場所を変えて最後まで?)
幸いにもガンマ砲を放つ直前に、アラシヤマは口を開いた。
俺を、ベッドに丁寧に降ろしながら。
「どうせ今日は仕事にならへんし、今のあんさんは団員の目の毒ですわ。プライベートルームでゆっくりしてはるのが懸命どす」
アラシヤマの言う通りだ。
明日には高松の解毒剤も完成するはずだし、そうすれば俺は男に戻れる。
よし、そうと決まれば。
久々にゆっくり休ませてもらおうと、俺はいそいそとベッドに潜り込んだ。
傍らに立つアラシヤマの微笑みにも気付かずに。
「・・・男に戻ったら、焦らされたぶん覚えておくんなはれ・・」
改めて、自分への教訓を胸に刻む。
だけど既に後の祭り、取り返しはつかない。
「シンちゃ」
1人、捕獲。
「シンタ」
2人、捕獲。
「おや、ずいぶんかわいく」
3人、捕獲。
仕事の用件で訪れたグンマ、キンタロー、それに俺が呼び出した高松。
今日はもう、この3人以外と会うわけにはいかない。
「他言無用だぞ、おまえら」
俺を一目見てぴしりと固まった状態のグンマとキンタローに言う。
無理もない、今、俺は外見が著しく変化しているのだ。
平たく言えば、性別がまるきり変わってしまった。
小ぶり(これは救いかもしれない)だが確かに膨らみのある胸。
くびれたウエスト、腰回りから尻にかけての厚い肉。
筋肉の見当たらない細い腕に、それでもある程度のボリュームをもった脚。
どうやら身長も縮んだようだ。
失ったものは男の大事なモノと、あとはプライドか・・。
「それもこれも全部テメーのせいだ高松!マッド科学者!ヤブ医者!!」
「失礼な。あなたがドリンク剤を注文してきたから、新薬を試すことにしたんですよ」
「なんの言い訳にもなっとらんわっ」
そんなわけで、俺のこんな姿を他のやつらに見せるわけにはいかないので。
「とにかく!早く解毒剤を作れ!!」
と、高松を追い出して。
「グンマ、見たことは忘れろ。でも高松がちゃんとまともな薬作るか監視しててくれ」
と、グンマを追い出して。
「悪いけど後のこと頼むな」
と、キンタローも追い出そうと、して、ドアを開けたところで、4人目の目撃者が出てしまった。
しかも、実は1番見られたくなかった、やつ。
「・・・シンタローはん・・・・?」
総帥に提出するためだろう、厚い書類を手に、総帥室のドアの前にちょうどやって来たアラシヤマだ。
ノックをする形に振り上げられた手が、そのまま宙で止まっている。
まさしく、最低最悪の日。
キンタローのやつ、いつの間に立ち去ったんだ。
アラシヤマに抱きすくめられてキスを繰り返されながら、追い出そうとしていたのを棚に上げて、恨み言も言いたくなる。
本来なら俺より背の低いアラシヤマは、今や腰を屈めて俺に身長を合わせていた。
一言で表すなら『気に食わない』。
力を加減されて抱かれるのも、顎が持ち上げられるのも気に食わない。
「・・そない怒った顔、せんでも」
言いながら、手早くベルトごとスーツのパンツが落とされた。
同時に、余った襟刳りから侵入した手のひらが、胸を掴む。
「あ」
「え?」
うわ、息が弾む。
「意外にも手のひらにすっぽりと」
「それ以上言うな」
そして鼻血を拭け。
「・・っあ、や、」
アラシヤマは片手で胸をまさぐりながら、もう片手を太股の間に滑り込ませてきた。
布越しに、未知の場所を指先が触れる。
抗議の声は柔らかく塞がれて、舌が絡み合う音が、部屋に響く。
長い口付けの最中もずっと睨み付けていたというのに、アラシヤマは止まらなかった。
それどころか、熱っぽい視線で俺を犯す、から。
まともに抵抗もできないままに、俺はソファに倒されていた。
普段の半分ほどの力でアラシヤマの身体を押し返してみたって、それはまるで形式的な愛撫のようだ。
大きなシャツの前ボタンはすべて外され、口唇から首、乳房、腹へと舌は伝い下りる。
それこそ意外にもアラシヤマはキスがうまい、というか、たぶん舌使いがうまい。
トランクスの上から女としてのそれを撫で続けるアラシヤマの指は、すっかり濡れていて、粘り気のある水音を立てていた。
「やめ・・っ」
男であろうが女であろうが変わらないらしい、弱い脇腹をやわく噛まれて、たまらずびくりと背を反らす。
と、その拍子に合わせて、アラシヤマの指が直接の刺激を開始した。
用済のトランクスは、軽い音とともに床に落とされてしまった。
女の俺は異物もすんなりと受け入れる。
アラシヤマの骨張った指がずぶずぶと中に沈んでいく様子は、まったくもって奇妙。
それでも内壁を擦られれば、身体は震えて、さらにアラシヤマの指を濡らす。
「ア、ラシ、ヤマ」
腕を伸ばして、裸の肩を引き寄せて。
近寄ってきた口唇は、なんとか避けた。
「抜け、・・指」
「は、ー・・なんで」
「あ!ちょ、動かすな・・ッ」
「気持ちいいでっしゃろ?」
「いいから、もう、ヤバ・・」
「イきます?」
「違・・っ」
要領を得ない会話にいらいらして、齧りつくようにしてアラシヤマの耳に言葉を注ぐ。
恥じらいとか、そんなものじゃない。
実際アラシヤマの言うことも当たっていて、 本当に切羽詰まっていたのだ。
アラシヤマはすぐにきょとんとした顔で俺を見つめ、伝えられた言葉を反復した。
「破れてまう、って」
「処女膜」
俺はこの気に入りのソファを血で汚す気はない。
ついでに言えば男に生まれたのだから、今さら処女を捨てる気もなかった。
渾身の力で上に乗っかっている身体を突き放すと、意外なことにアラシヤマはあっさり退いて。
「アラシヤマ?」
「・・・萎えましたわ。ってシンタローはん、わてと散々ヤってきて処女もなにも」
「女としては初めてだろーが。やだぞ、男も女もおまえに捧げんのは」
本当はまだ身体の奥が疼いて仕方がない、けれど、俺は起き上がって散らばった服を拾った。
いや、正確には、拾おうとした。
トランクスを掴む前に、俺はふわりと持ち上げられたのだ。
肩に担がれるなんて恥ずかしい体勢に驚きすぎて、怒る間もなく、俺を軽々と持ち上げたアラシヤマはベッドルームに向かって歩き出す。
(もしや場所を変えて最後まで?)
幸いにもガンマ砲を放つ直前に、アラシヤマは口を開いた。
俺を、ベッドに丁寧に降ろしながら。
「どうせ今日は仕事にならへんし、今のあんさんは団員の目の毒ですわ。プライベートルームでゆっくりしてはるのが懸命どす」
アラシヤマの言う通りだ。
明日には高松の解毒剤も完成するはずだし、そうすれば俺は男に戻れる。
よし、そうと決まれば。
久々にゆっくり休ませてもらおうと、俺はいそいそとベッドに潜り込んだ。
傍らに立つアラシヤマの微笑みにも気付かずに。
「・・・男に戻ったら、焦らされたぶん覚えておくんなはれ・・」