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|単発|  |女体化|  |リキシンお題|  |シン受けお題|  |キンシンお題|
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緑の間からモノトーンの服が見える。
いまこの島でその色合いを持つのはただ一人。
それを目に捉えたアラシヤマは反射的に声を掛ける。
「シンタローは~~ん!」
「あん?」
呼ばれたシンタローは立ち止まり、声のする方へと振り返る。
「………」
時が止まる。
いや、止まっているのはアラシヤマだけだ。
子供のように右手を上げ近寄ろうとした姿勢のまま綺麗に固まっていた。
「………。」
二人の間をそよそよと風が通り抜け、さわさわと木がなる。
はっと我に返ったアラシヤマは無言でマジマジと、穴が開くのではないのかと思うほど見つめる。
目線は下へ。また上へ。
どこからどう、控えめに見たって女だ。慎ましくも出るところが出て、引っ込むところが引っ込んでいた。
それでも醸し出す雰囲気や気配はそこまでは変らない。彼を知る人間だったらそう感じるだろう。
「……シンタローはんでっしゃろ?」
「いえ、人違いですよ。」
軽く片手を挙げ間髪いれず否定する。
そのまま爽やか過ぎる笑顔を浮かべ、じゃあと去ろうとする。
「わてが間違える事あらしまへん! 」
「ちっ」
舌打ち一つ。
先ほどの爽やかさは何処かへ消え去り以前と変らぬ、どこか邪険にしたような表情だ。
腕を組みふんぞり返って言う。
「何の用だよ?」
「それが久しぶりにおうた友達に言う言葉でっしゃろか?」
友達、しかも数年ぶりに会ったのならもっと感動して抱きついたりするだろうと
大の大人がだくだくと涙を流して訴える。
アラシヤマは何年経ってもアラシヤマだった。
「………。」
シンタローはそんなアラシヤマを呆れたように見やる。
どうやらまだあのときの言葉を信じているようだ。
アラシヤマは泣いてすっきりしたのか、コロっと話題を変えて訊ねる。
「ところで、どうしてそんな姿になってるんどすか?」
シンタローはこの件について、もう何度目か分からないほどの大きなため息をついた。



「…だから毎回通信が音声だけどしたんか…。 声も違うからおかしいとは思っていましたわ。」
「てゆーか、この島で最初に会った時に普通気づくって。いずれはバレると思ったがよく4年も持ったもんだ。」
そう言うと感慨深く頷く。
きっとアラシヤマ周辺の団員たちは命令していた通り緘口令を厳守していたのだろう。
いや、ただ単にアラシヤマが他の団員たちと仕事に関すること以外は話さなかっただけかもしれない。
とりあえずあちらに帰る事が出来たら、特別報酬でも出そうとシンタローは決める。
そういえば、と考える。アラシヤマの反応が予想とは違う。
大人しくシンタローをじーっと見ているだけだ。
男の時でも愛情か友情かどちらを求めていたのかよく分からない、『友達』に固執するあまり
変態的行為に出ることが多々あったから女になったら絶対、マジックの様に頭がイかれると思っていた。

「わて、その、女性とはいい思い出がありまへんのや…」
どこか遠い目をして呟く。
そんなアラシヤマにシンタローは即座に突っ込む。
「お前、友達もいないくせに何言ってんだよ!」
「何いうてますのん。友達はおらんても、恋人ぐらいいましたがな。」
シンタローの目を見て妙にキッパリと言い切る。
「……………」
じとーっと思いっきり疑いの眼差しを向けるシンタロー。
まともに人間と話す事が出来ないのにそんな事があるのだろうか?
「シンタローはん、信じておませんやろ。………わて顔は良いでっしゃろ?」
「うわー、自分で言ってるー」
棒読みでシンタロー。ついでにさむーい、と南の島で照りつける太陽の下むき出しの両腕を擦る。
しかし一方で納得はする。確かに顔はいい。…顔だけだが。
本人も性格に難ありなのは認めているのか、
「彼女らはきっと顔だけなんどすなぁ。
 …しまいには、『そんな人だとは思わなかった!』って必ず言われるんどす。」
と言う。相変わらずどこを見ているのか分からない。
その時の事を思い出しているのだろうか、いつも背負っている陰が更に暗い。
一方シンタローはうんうんと首を縦に振りその女たちに同意する。
シンタローの場合は出会ったときから、『そんな人』だとは思っていたが。
だいたい気持ちが高ぶると発火する人間なんて危なくて近寄れない。
普通の人間なら出会った瞬間サヨウナラだ。
「シンタローはんは、結局は付き合ってくれますやろ?やさしいどすなぁ。」
「まぁなー。俺は使えそうなものはキープしとけ…、いや、
 博愛がモットーだ。お前との付き合いも長いし。今更切って切れるモンじゃないだろ?
 ………それ以前にお前部下だろーが。」
付き合いが切れたらそれは後味が悪すぎる。
ガンマ団総帥の立場で、直属の部下であるアラシヤマと切れるということはこの世にいないことになる。
考えてみれば士官学校時代からの付き合いなのだ。
積極的に交流を持っていたわけではないが、一応付き合いが長い事には変わりない。

シンタローの言葉を聞いていたのか、いないのか。
何かいいことを思いついたようだ。パァっと珍しく表情が明るくなる。
「そうやわ! シンタローはんならそんのことあらしません! わての友達兼恋人になっておくれやすー!!」
そう叫ぶとそのまま抱きつこうとする。
「結局はどいつもこいつも同じかよ!」
言いつつ両手を広げて向かってくるアラシヤマ。抱きつかれる瞬間。鳩尾に右、左、右、と三連打。
やや前のめりになった所で、最後に膝蹴り。どごんっと綺麗に嵌る。
コレが一般人なら間違いなく意識を失っていただろうが、そこは普段はボケていても総帥直属のガンマ団員。
アラシヤマはぐぅっと息を漏らしたがそこまでのダメージは与えられていないようだ。
以前の威力ならばそのまま撃沈していただろうが、結局はそのまま腕の中。
「あ、シンタローはんの方が小さい…」
妙に感心したように呟く。ついでにシンタローの頭の上に自分の顎を乗せている。
「そらまぁ女だからな。」
と投げやりに答える。
どうやら向こうにいる間、散々からかわれた用だ。
「俺の頭の上に顎なんか乗せんな。俺が小さいみたいでむかつく!」
「『小さいみたい』じゃのうて、実際小さいどす。
 新鮮やわぁ。眼魔砲を撃たれないなんて、わて好かれてるんどすなぁ。」
根暗な割には妙に前向きな所がある。
調子に乗ってそのままきゅーっと力を入れる。
「違うわ、ボケ。」
容赦なくツッコミ。
ついでに右足を軽く上げ、そのままアラシヤマの左足の甲をぐりぐりと踏みつける。
まったく力が緩まない事が癇に障ったのか、更に体重をかけ念入りに踏みつつ怒鳴る。
「威力があがり過ぎちまったんだよっ! この島はこんなくだらねー事で傷つけたくねーんだ!
 だいたいお前頭に血ぃのぼって避けられそうもないし、直撃したら流石に死ぬだろ!!」
足を踏みつけても一向に緩まないので今度は腕を突っ張りアラシヤマから離れようとする。
が、こちらも歯が立たない。純粋な力勝負では全く話にならないようだ。
国一つ簡単に潰せるぐらいの力があっても力を解放する事が出来ないのなら意味がない。
「あの~、それ肉弾戦では意味無いとちがいますのん?」
満足したのか足が痛かったのか、シンタローを解放し少し真面目に訊ねる。
「るせー………殺意のあるヤツになら意味あるんだよ。
 とっさのことだったら力の抑えが余計できないからな。瞬殺。」
秘石も何を考えているんだか、とぼやく。
今は青の秘石と連絡を取れるが、向こうは全くシンタローを元に戻す気は無いようだ。
実力行使も出来ないのでタチが悪い。
「そうどすか…。よく今まで無事どしたなぁ。」
色々な意味で。と心の中で付け加える。
単純に戦闘の事だけを指していると解釈したのか、シンタローは
「俺を誰だと思ってるんだよ。」
と、呼び止められた時と同じようにやはりふんぞり返って答る。女になっても俺様は俺様だった。
女になった分、更に俺様パワーが上がったようにも思われる。
「はぁー、すんません。」
アラシヤマはなんとなく謝った。


『………』
お互い話すことも無くなり微妙な沈黙が訪れる。
「じゃあ、俺帰るから。」
じゃな。と背を向け歩き出す。
「シンタローはん!」
「まだ何か用かよ?」
怪訝そうに振り返る。
「……この島にわてだけ残ったのも何か意味があると思いますのや。」
「単純に忘れられただけじゃねーの?」
ボソッと呟く。
「だからこの島にいる間は、あんさんの背中はわてが守るどす!」
アラシヤマは炎を背負って叫ぶ。
一人勝手に燃え盛るアラシヤマにそっけなく水をかける。
「俺は誰かに守られなきゃいけないほど、弱くねーよ。」
「そんなこと言うてもシンタローはん今女の人でっしゃろ?」
「うっさい。言うな。不愉快だ。」
立て続けに言葉を吐く。
「でも」
と更に言い募ろうとするアラシヤマの言葉を制す。
「あー、分かったよ。勝手にしろ。ただ、俺の邪魔はすんなよ。」
「あんさんを守れれば十分どす。」




こうしてアラシヤマのストーキングが始まった。

H16.10.15
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「んなモン手に持って迫るな!」
シンタローの怒号が響く。
勢いばんっと机に両手を叩きつけ立ち上がる。
シンタローは両者の間をひらひらと飛んでいたソレを奪い取り足元に叩きつける。
心底残念そうに、マジックは無残にも床に叩きつけられたソレを見遣る。
ついでにシンタローは念入りにぐ~りぐりとソレを踏みつけている。
「折角、パパが買って来たのに…」
と、ポツリと漏らす。
「あんたが買いに行ったのかよ!?」
シンタローは驚いて足を止める。
「そうだよ? 他に誰が買うんだい?」
マジックはごくごく当たり前の事のように答えていた。
いい年したオッサンが独りでソレを買いに行く姿を想像してシンタローは軽く眩暈を起こす。
「重力に負けちゃうよ! シンちゃんっ」
そんな様子をものともせずマジックは切実にシンタローに訴える。
すっかり小さくなってしまった息子、いや娘と目線を合わせる為に同じように
机に手を突き膝を曲げる。
それでもシンタローを見下ろすカタチになる。勿論シンタローは上目使いだ。
そういう些細なことでも気に障るようで、シンタローの表情はさらに険しくなる。
一つでも多く、『親父を超える事』が密かな、周りにはバレバレの、目標だったのに
体格の面ではそれは完全に打ち砕かれてしまった。

息子もとい娘の矜持など関係なく、マジックは相変わらず変態行為を繰り広げている。
もうすっかり大人になっていてから止まっていた息子の成長記に新たに娘の成長記が加わった。
身体的には成長しないのに、事あるごとにビデオを回す。
総帥室にも自宅の部屋にも隠しカメラを仕込んでいた。
それに気づいたシンタローは怒り狂って、眼魔砲を乱発し、
本部の最上部・自宅ともにいっそ見事と言う他が無いくらいに全壊してしまった。
マジックといえば必ず抱いている『シンちゃん人形』は娘になったバージョンが加わり
幸せそうに2体の人形をだいている。ただデフォルトされている人形なのであまり代わり映えはしない。
きっとマジックの心の問題なのだろう。そして、それは、今まであった人形が倍に増えた、という事だ。
秘石によって息子が娘になってしまっても、マジックの態度はあまり変らない。
元々脳がイってしまっていたので、変りようが無いだけかもしれない。

その変態行為で目下最もシンタローが困っている事がコレだ。
しつこいぐらい、ここ数日は毎日説得に来る。
「そんな事、俺の知ったこっちゃないっ!!」
「シンちゃんの為を思って――」
「思っていらん!だいたい、俺はつい最近、こんなのが付いたんだよ!
 重力に負けようが、勝とうが関係ねぇ!!」
「ある!あるよ!シンちゃんっ!」
パパが困るんだよ!と両の拳を握り締めて力説する。
「確かに、シンちゃんの胸は小さいかもしれないけど、」
「誰が小さいなんて言った!」
関係ないと言ったわりにはシンタローがすかさず突っ込む。
シンタローの好みは出るトコロは出で、引っ込んでいるところは引っ込んでいる、
女性らしさがほどよく強調されたラインだ。いざそのようになっても動きにくいので困るのだろうが、
スレンダーなのも微妙な気持ちになるのだろう。
いっその事女になったのならば、極めてみたいと思うこともあるのかも知れない。
「でも! せっかく綺麗な形しているんだから! それを崩そうだなんて神を冒涜する行為っ!」
「るっさい、んな恥ずかしい事でかい声で言うな!」
言いつつ、ブンっとマジックに拳を放つ。
マジックはシンタローそっくりの爽やか過ぎる笑いを浮かべながら難なく片手でそれを受け止める。
受け止められた手を振り払いつつ、また怒鳴る。
「だいたいあんた、神なんて信じてないだろうがっ!」
マジックが神のことを持ち出すこと自体が神にたいする冒涜だ。
笑って爽やかに人を殺せる人間がその言葉を持ち出してはいけない。
「だってパパが神だもん。」
「いい年こいて、『だもん』って言うなよ。」
マジックの自己中心的性格は今更なので、その辺りは何も触れていない。
シンタローもマジックの唯我独尊はこれでもかというほど受け継がれていた。
本人たちがそれを自覚しているかどうかは、分からない。
「だからね、それはパパを冒涜する行為なんだよ。」
「だったら尚更結構だ!いらん!俺はあんたを敬う気はカケラも持ってねー!!」
「シンちゃ~~ん」
今度は泣き落としだ。
マジックはダラダラと本気の涙を流す。
シンタローはその気色悪さに思わず、ズサっと2,3歩後ろに下がる。
それに、コレの次にくるのは力ずくだ。経験上必ずそうだ。
シンタローの本能が危険だと告げていた。
更にじりじりと後退する。真正面には存在感バリバリの机。
その向こうにマジック。
更にその奥に唯一の脱出口、扉がある。
机を迂回し、マジックの横を通らねばならない。
机との距離をとったシンタローはそのままマジックに気づかれぬよう注意を払いながら
今度は横へと少しずつ移動する。
マジックはまださめざめと泣いている。
あまり横へと移動するとマジックに逃げる前にばれてしまう。
距離をとらないとマジックが腕を伸ばせば直ぐに捉まってしまう。
しかし、この機会を逃したらシンタローの脱出の可能性は零になってしまう。
シンタローはギリギリ机を迂回できるだけの距離をとって賭けにでた。
そのまま、ぐっと足に力をいれ、一気にマジックの横をすり抜る。
が、マジックの眼がキランっと光った。
素早くかつ優雅に腕を伸ばし、シンタローを捕らえる。
シンタローの勢いと、マジックの引っ張る反動でそのまま腕の中に。
「捕まえたっ」
離さないよ~シンちゃんっと世にも嬉しそうな顔で、娘を抱きしめる。
マジックはいざ知らず、シンタローは至って本気だが、
傍から見ればどこのバカップルだよ、っと突っ込みを入れたくなるようなやり取りだ。
ぎゃーという色気も何も無いシンタローの叫び声がこだましつつ、
そして、バカップルたちは消えた。

H16.10.24
oks
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わざわざ自室に帰るのが面倒で、最近総帥に就任したばかりのシンタローは総帥室から扉続きの仮眠室で休んでいた。
壁にはまだ着慣れていないであろう赤いスーツがかかっている。
仮眠室といっても水廻りまで完備されており普通の部屋と何ら遜色はない。
人の気配を感じ、シンタローは目が醒めた。
いくらガンマ団内とはいえ、殺気混じりの気配を撒き散らす存在がいればたとえどんなに深く眠っていようとも
体が勝手に反応する。体を起こしかけ、その姿を目の端に確認したが相手故に反応が遅れた。
殺気の持ち主にはそのわずかな迷いの時間があれば十分だった。
ベッドまであと数歩だった距離は瞬時になくなり、シンタローは起き上がりかけていた体を突かれ、そのまま倒れる。
間髪つかず、馬乗りにされガッと物凄い力で両腕を押さえつけられる。
この時ほど女にさせられた事を悔しく思ったことは無い。男ならばこうまで簡単には押さえ込まれない。
腕が自由にならないならば足で反撃したいが、両足の間に体を割り込まれ上手く蹴り上げる事が出来ない。
ならばせめてもの反抗と、相手を睨みつける。
が、相手はその青がいっそう冴えたような感情の篭らぬ視線をよこすだけだった。
にらみ合いでは一向に埒が明かないので、仕方なく口を開く。
「で、何がしたいわけ? キンタロー」
「……こんな状況でよくそんな台詞がいえるな」
妙に感心したような声色だ。
「そらまー、俺男だし?体は女だけどさ」
「ふん、男が男に組み敷かれたら屈辱を感じると思うがな」
「そりゃそうだろ」
組み敷かれている当人はまるで人事のようにあっさりと同意した。
だがその余裕には理由があった。純粋な腕力では敵わないが、技が残っている。
恥を晒すようでイヤだったんだがと呟くと右手に意識を集中させる。
ぼうっと青白い光が宿る。それ以前より格段に大きくなっていた。
「ま、この体勢でも打てるからな」
同時に爆音が轟く。手の先、頭上のベッド枠と更にその向こうの壁が崩れさっていた。
総帥室との壁を破りその先にあったはずの重厚な机が跡形もなくなり壁にはぽっかりと大きな穴が開いていた。
夜空が覘いていた。他の施設より一段と高くそびえている為にここ以外に被害はでない。
「威力、スゲーだろ?これでもかなり加減してるんだ。……直ぐに誰かが来るぜ?」
シンタローは後で側近二人に怒鳴られるだろうと頭の端思いながら逃げるなら今のうち、と相も変らず
組み敷かれたまま余裕の口調だ。
「読み違えたな」
すっと目を細める。
適温に保たれていた室内は外からの風が吹き込み肌寒い。スウェットにシャツという薄着に寝起きならば尚のこと。
捕まれた腕は熱いが。
「え?」
「俺がこのまま引き下がるとでも?」
「……。お前が俺の手を離した瞬間、俺はお前に打ち込む」
「お前にそれが出来るのか?」
キンタローはそうできない事を知っているかのような口調だ。シンタローはぐっと言葉に詰まる。
「お前は俺には手出し出来ない」
今度はそう言い放ち、たたみ込んだ。
圧し掛かっている相手を睨み付けていたが、ふっと顔を背ける。
シンタローもまたその言葉を否定しない。自身もよく分かっているからだ。
だがキンタローは言葉でシンタローの動くを封じたが、いつまでたってもその姿勢のまま動こうとはしない。
シンタローは不審に思い正面に向きなおす。
その目はシンタローを見ているようで見ていない。瞳の奥には苦悩が窺えた。
かつてシンタローが、自分を見るたびに嫌でも見慣れたそれが。

先ほどの音で駆けつけてきたのだろう、扉をドンドンと叩き
「シンタロー様、どうなさいました?」
シンタローを確認する。
「なんでもない!ちょっと壁をぶち破っただけだ。他のやつ等にも伝えておけ!」
団員は「はい」と応じるとそのまま扉を開け中を確認するまでもなくおとなしく引き返していく
シンタローがガンマ団の建物の一部を破壊するのは良くあることだ。
大概その原因は息子から娘になって溺愛の度合いが更に増したマジックだ。
さすがにこの状態を見られたらただ事じゃないと騒ぎになるところだったのでマジックもたまには役に立つと
シンタローにとっては非常に不本意なことだが少しだけ感謝した。
だが本当は、青の一族はシンタローが認識している以上に、団員からは日常が非日常と囁かれており
またマジックが引退し、その弟であるサービス・ハーレムが各地を放浪している現在ではシンタローが№1だ。
頭が一番強いのだから護衛する意味はあまりない、と思われいているので団員は形式的に来たと言うのが事実である。
知る由は無いが、彼の感謝は全くの無駄であった。
シンタローはマジックの奇行を思い出し緩んだ意識を引き締め、キンタローに問いかける。
「これが、本当にお前のしたいことなのか?」
先ほどとは違い、挑戦的な態度が消えていた。そのシンタローの意図が分からず、聞き返す。
「何?」
「…お前が心からコレを望んでいるなら俺はもう抵抗しない」
キンタローが揺れる。
「……俺にもわからないんだ…俺自身のことなのに…」
キンタローはそのまま苦しげに言葉を吐き出す。
シンタローの掴んでいる手首をその心の混乱を表すかのように更に力を入れる。
痛みのため微かに眉を寄せるが、そのまま何も言わず見下ろす相手をじっと見つめる。
「お前の所為でも、誰の所為でもないのは分かっている。分かってはいるんだ。
 でもそれでは俺の24年間は?あってあたりまえだったその失われた時間はどうなるんだ?」
「キンタロー…」
「俺はどういたらいいんだ?」
ギリギリと痛いほどの力で押さえつけていた力がふっと抜けそのまますがりつくようにシンタローを見つめる。
シンタローもその答えは持たない。たが、目を逸らすことなく、その青を見つめ続ける。

どのぐらい時間がたっただろうか。
キンタローは急に力を抜きシンタローの上にそのままどさっと圧し掛かった。
不意のことでシンタローは思わずぐっとうめき声をもらしたが、キンタローは何も反応せずシンタローの頭の真横、
肩口に顔を押し付けており表情は伺うことが出来ない。
何の遠慮も無く体の上に乗っかられてはかなり苦しい。これ以上何をするわけでもなく、キンタローは動かない。
自由になる頭を横に動かすが、金色の髪が見えるだけでその表情までは伺えない。
このまま圧死させる気じゃないだろうかと、シンタローが苦しい息の中思い始めたら突然背中にぐっと腕が回り
そのまま体勢がくるっと反転した。
「あ?」
今度は先ほどとは真逆になる。が、シンタローが優位になったわけではない。
両腕ごと腕を回したままであり以前自由には動けない。様子を伺おうと顔を上げようとしたら
頭をぐっと押さえつけられた。それでもキンタローの片腕で両腕を封じされていて
体格差をいやと言うほど見せ付けられ腹が立つ。反抗しないと言っていた手前もある。
暴れればこの体勢ならば抜け出すことも出来るだろうがそれではキンタローから逃げるようでそれもまた気に食わない。
無駄な意地からシンタローは大人しくそのままの体勢でいた。
目線を横に向けても相手の金髪から覗く耳が見えるのみ。
シンタローにはこキンタローが何を考えているのかさっぱり分からなくてつらつらと考える。
――こいつは俺のことが憎くて殺しに来たんじゃないのか?
   なのに何なんだよ、この状況は。憎いのなら眼魔砲をぶっぱなすなり、殴るなりすりゃいいんだよ。
   そうしたら俺だって全力で相手をするのみ。全力とまではいかないか。いやでも全力を出さなければ
   侮っているようで失礼だ。こいつだって力は十分にある。俺だって殴られてもいいし、場合によっては――
そこでいったん思考を切り、もう一度キンタロー伺う。規則正しい呼吸が密着した体から伝わってくる。
「寝てるよ、この馬鹿……。なんなんだよ、一体」
ため息混じりに独りごちる。

壁からは相変わらず冷たい風が吹き込んできているが、寒いのか暖かいのかシンタローには分からなかった。



H17.9.19
ors
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シンタローさんが台所に立っている。
トントンと包丁がまな板を叩く音が静かな室内に響き、いい匂いが漂う。
幸せだ。これを幸せと言わずして何と言おう?
それは夢想していた新婚家庭そのものだ。まるで夢に描いていたような新婚家庭。
綺麗な奥さんが朝から台所立ち、旦那さんのために朝食を作る。
奥さんというのは勿論シンタローさんの事で旦那は俺だ。
以前はまごうことなき立派な、立派すぎる成人男子だったのが何故かこの島に来た時は女性になっていた。
元が男だろうが今は女性だ。しかも美人。この島には女性はいない。いないといったらいないのだ。
そして、その性格はきっとそのままにキツイが美人が長い黒髪を一つに束ね料理する後姿。
それはもうなんともいい難い気持ちが湧き出てくる。
結婚。そう、結婚しかないではないか。パプワとチャッピーという可愛い子供ももう居るのだ。
このパプワ島で俺にとって足りないものはあとは奥さんのみ!
「シンタローさん、俺と素敵な家庭を築きましょう!」
「は?」
くるりん、と振り返る。髪が動きによって流れる。そんな些細な事を目にしても幸せを感じる。
「だから、俺の嫁さんになってください!」
いと言い終わらないうちに熱弾が飛んできた。
腹に衝撃を受けそのままパプワハウスの天井を突きぬけ、空に飛ばされる。が、地球には重力と言うものがある。
そのまま落下。額にぬるっと不快な感触が伝ったが、一瞬後には完治。
ああ、まさか特戦で鍛えた体がこんな所で役立とうとは。
心の底から隊長やイジメもとい鍛えてくれた仲間に感謝した。
ありがとう、みんな。俺、この人と共にいられる体にしてくれて。
すくっと立ち上がり、そのままパプワハウス向けて走る。勢い良く扉を開け、試しに「ただいま!」と叫んでみた。
『おかえりなさい、リキッド』 と言ってくれないかなぁ。儚い期待を抱いたが、
「何を血迷った事言ってるんだよ、このヤンキーは」
返ってきたのはそんな無常な挨拶だった。冷たい。冷た過ぎる。
しかし片手にお玉を持ち仁王立ちになっている姿は迫力に欠ける。あ。痴話げんかってこんな感じ?
「一人でにまにまして気色わりぃな。お前、さっきので頭打った?」
「すんません。ちょっと」
シンタローさんとの痴話げんかを想像していました。
馬鹿正直に言ったら今度はもっと強力な眼魔砲が飛んでくる事間違いなしだ。

どこかの誰かのように挫けない根性は大切だ。
あの人を見ているとつくづくそう思う。何だかんだ言っても結構構ってもらえている。
唯一見習いたいと思ったところだ。あの人に比べれば俺なんかきっとまだまだだ!
うっし。すーっと大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。
「お前何やってんの?」
お玉を左右にふりながら不思議にしている。そりゃそうだろう。
「気合と気を落ち着けているんです。うっし。改めて。シンタローさん、俺の嫁さんになってください!」
「ヤダ」
うっわ、本当に心底嫌そうに顔をゆがめているよ。理由も無けりゃ思いやりも無い。
でもそんな俺様なあなたもステキです。姐さん、一生付いて行きます!
って更に気持ちを揺さぶられるのは何故だろうか?
「な、何でですか? 俺のどこが悪いんすか?」
「いつも言ってるだろ?俺はヤンキーは嫌いなんだよ」
「とうの昔に族、抜けました! ってかあなたの一族の方に拉致さ」
拳を握るのが目に入ったので、慌てて言い直す。
「ともかく、今ではここを預かる立派な主夫です!」
「立派な? ……ほぅ、立派、ねぇ?」
すっと目を細めガンを飛ばされる。
シンタローさんは俺がここでパプワ達と暮らしてくる事にまだ複雑な感情を抱いているようだ。
迂闊な事を言えば、完膚なきまでに叩きのめられるような気がする。
普段でもお姑さんぶりを発揮しているのだ。ひるむ。
「り、立派とは言えないかも知れませんが、心意気は買ってください!」
相変わらず目を細め、睨みつけられていたのだが、ふっと目を閉じる。
無言の圧力が消えた。静かに目を開く。先ほどまでの感情は消えていた。
「立って話すのもなんか間抜けだな。おら、座れよ」
大方の調理は終わったのか火加減を確認するとちゃぶ台の前にどっかりと腰を下ろす。
俺もちまっと座る。勿論正座だ。
「……それによぉ、お前大切な事忘れてるぜ」
「大切な事?シンタローさんの気持ちっすか?」
素でそんな言葉がついて出るのは俺はもう末期なのかもしれない。
シンタローさんはどこか呆れたようにふっと口元を歪めただけだった。
「アホか。お前なんざ一撃で撃沈できるからそーゆー事は関係ねぇよ。俺は、男だ。」
「おとこぉ? 元、でしょ、元」
視線はつい胸やら二の腕やら口元に向ってしまう。どこにこんな男が居ると言うのだろうか。
「元でもなんでも男なんだよ! 一時的に肉体は女になっちまってるけど、男だ!!
 あんの馬鹿秘石が元の姿に戻さねぇんなら見つかり次第赤の秘石に頼むっ。
 それでも戻さねぇんならパプワたちが聖地に行っちまったって追いかけて、直させる!
 そこでなら破壊しても構わねぇだろうしな!! パプワたちが困るし、コタローも悲しむだろうからまだ
 身動きとれねぇアイツに脅しは無理だが、聖地に着いたら見てろよ! 力にモノ言わせてやる。
 奴らが上げた威力は伊達じゃねぇってな。その身をもって思い知れつーんだ。
 大体なんで俺が男と結婚しなきゃならないんだよ!
 どいつもこいつも俺が女になったからって言い寄ってきやがって!
 周りに女が居ないからって手近な俺で済ますな! 女が欲しいなら努力しろ!
 とくにあんの変態は毎日毎日セクハラまがいの事しやがってっ、
 男んときも酷かったが女になったら尚更見境も節操も失くしやがって!!!
 あの馬鹿に感化されたのかキンタローまでおかしなるわ、どうしろってんだよ!!!」
勢い余ってダンっと両手をちゃぶ台に叩きつけ肩ぜーはーと方で息をしている。
あ? 俺、めちゃくちゃ地雷踏んじゃった? しかも忘れ去られてる?
と、とりあえずお水。すっくと立ち上がり水を持ってくる。「シンタローさん?」
そっとグラスを差し出す。
「あ゛?」
うわー、目据わっちゃってるよ。片手に酒瓶持っていたら完璧、と脳裏にそんな姿が。
「……あの~向こうでもそんなに言い寄られているんですか?あ、お水どうぞ」
元男でもモてるのか。俺の場合は4年前にちらっと見ただけで今の姿のほうが馴染み深くなっちゃってるから
何とも思わないけど。さすが、奇人変人集団のガンマ団だ。倍率高い?
…ひょっとして男の時でも同じようにモテていたのか? 男女問わず一部の人に好かれそうな雰囲気を醸し出してはいるし。
「俺、そんな事言ったか?」
ぐいっと一気に水を飲み干すと、はたっと我に返ったのか妙にサッパリとした表情だった。
「ええ」
「ちげーよ。身内の奴らがウザいだけだ。脳の病でもかかったんじゃねーの?」
あ、元からか、とか何とかさらっと酷い事を言っている。
「あのー、じゃあ俺と結婚してください」
「どこをどうしたら 『じゃあ』 なんだよ、このアホ」
「いえ、だって、俺男の頃のシンタローさん殆ど知りませんし、今のあなたにここに居て欲しいと思っているワケだし、
 いまも同居同然っすけど、やっぱり子供の教育上こういう事はしっかりした方がいいと思うんすよね。
 それに俺、あなたの事好きだし。強いし、家事は出来るし、お金持ちだし、パプワやチャッピーもなついているし、
 最近殴られる喜びにめざめそうだし、再婚するならもうこれ以上完璧な人はいないっす。」
「……お前むちゃくちゃな事言ってんなぁー。そもそも再婚ってなんだよ?」
もはや怒りを通り越して呆れまたは諦めの境地に達したのか、シンタローさんからの怒号は無かった。
その代わり値踏みするように、じろじろと見られる。
「お前がおじさんぐらいだったら考えてやらねぇ事もないがな」
にやっと意地の悪そうな笑みを浮かべる。
おじさん? おじさんってハーレム隊長?!
「ハーレム隊長っすか? うわ、シンタローさんあの馬命のキャンブル狂が好みなんすか?!」
「ちがうわい! 美貌のおじさまだ! サービスおじさん!! おじさんという言葉が裸足で逃げるくらいの美貌の持ち主なの!」
「うわー、面食いだったんだ。 ……そ、それなら俺だってっ!」
「アホか?そんなガキくせー顔好みじゃねーよ。それにヤンキー顔じゃねーか」
「顔は生まれ持ったもので、どうしようもないっす!」
「さっきから何度も言ってるだろ。一生、何があってもお前と結婚なんてありえねぇ」
よっし、こうなったら最終手段だ。
「パプワたちに、 『お母さん』 って呼ばれたくないですか?」
卑怯と言う事なかれ。俺が脈ナシならここはすーぱーちみっ子、シンタローさんの特別な存在パプワに登場してもらう。
「なにぃ!おまえ 『お父さん』 って呼ばれた事あるのか!?」
茶ぶだいの上に身を乗り出し、ずりずりと乗り出しすぎて、体を半分以上預け真正面に座っている俺に
顔がぐぐっと近づく。ああ、パプワ効果は絶大だ。
「……いえ、ないっすよ」
「だよなぁ」
ほっと安心したように安堵に息を付く。
「なんでそんなすぐ相槌うつんすか。なんでそんなに安心してるんすか?」
「え? いや、」
「でもちゃんと父の日にはお祝いってか、何ていうか、まぁしてもらいましたよ」
「コタローもか?!」
ブラコンは健在。おねーさま、目が血走っていませんか?
「はい!」
胸張って答えた。ちみっ子たちにお祝いしてもらった事は本当だし。
俺、スッゲーうれしかったし。
思い出してつい、口の端を持ち上げてしまう。
「なんで世の中には 『おにーちゃんの日』 がないんだよ」
呪詛を吐くようにそんなことを俺に言われても。
さっきまでのいつもの様なシンタローさんの俺様っぷりは影を潜め、
がっくりとうなだれるようにちゃぶ台に突っ伏していた。
しかもブツブツと机とお話をしている。ああ、ブラコン総帥はお花畑へと旅立ってしまった。
切れ切れになんでリキッドに、コタローにとっての初めての、俺じゃないんだよ、いや待てよ?
とか想像に容易いブラコンねーさんの呟きが聞えてくる。
「そうだよ、俺が作ればいいんだよ。俺にできない事はなぁーいっ!」
マジ凹みしていたかと思うとすっくと立ち上がリ腰に両手をあてあまり無い胸を強調するかのように
反り返り仁王立ちになって 『がはは』 とそんな擬音が似合うようなしとやかさのかけらも無い笑いを作る。
「あ、あの……?」
「帰ったらさっそく手配してやる! コタローにあーんなことやこーんな事をしてもらんだ! いや、むしろ俺もしたいっ!」
握りこぶしを作り目は闘志に燃えつつも、口元は緩んでいた。なかなかに器用な表情だ。
かんっぺきにあっちの世界へと旅立ってしまったようだ。

ちみっ子を持ち出したものの、結局はシンタローさんの思考は丸ごとそっちに持っていかれてしまった。
しかも、余計ヘコむ。俺がプロポーズした事、覚えているのかこの人?
ああ、既に忘れられていそうだよ……。今日で何度目?
元気な笑いを聞きつつちゃぶ台に突っ伏し、涙した

H17.6.22
ors
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「あ、あのぉ・・・シンタローさん?」
まさに、おそるおそると言う言葉が相応しい態度でちゃぶだいを挟み向かい合って座っているリキッドが
シンタローにお伺いを立てる。
「あ、何だよ?」
俺様、という言葉がこれほど似合う人はそうそういないだろう。実に男らしい。実際には彼女なのだが。
その彼女はででんっと胡坐をかきテーブルに肘をつきながら答える。いっぽうリキッドは慎ましく正座だ。
どちらが男でどちらが女だか分からない。が、その様子から二人の位置関係はよく分かる。
「その~・・・」
「何だよ?」
「いえ、その・・・」
「だから、何だよ?」
シンタローはいい加減イライラしたように答える。
これ以上言いよどんでいると確実に殴られると思ったのだろうか、
リキッドは意を決したようにキッとシンタローをまるで睨みつけるかのように見る。
「やっぱり同じ部屋、というか家はマズイんじゃないっすか?!」
「・・・何言ってんの、お前?」
「いえだから、仮にもその妙齢の女性と同じ屋根の下に暮らすというのは・・・」
と言葉を濁す。
「ああ、そんな事か。」
「そ、そんな事って・・・」
あまりにもアッサリした態度のシンタローに、何故かリキッドの方が焦る。
「ま、気にすんな。」
「気にしますよ!ってか気にして下さいよ!」
「なんで?」
サクっと切り返えされる。
「な、なんでって・・・」
ダメだ、このヒト自分が女って自覚が全く無い・・・とリキッドは項垂れる。
シンタローはそんな様子を不思議そうに見る。
「で、なんで?」
「いい加減ちょっとは自覚してくださいよ。」
リキッドは疲れたような声をだす。
「自覚って何をだよ。」
「・・・女だってことを・・・」
ぼそっと答える。これを言うと殴られるような気がして今までずっと言えなかったようだ。
「あぁ?」
シンタローは声のトーンを落とし、凄む。
リキッドの読みが正しく、今にも殴りそうな勢いだ。
ここまで言ってしまったら、あとは成るようになれ、と半ば自棄に成ったように答える。
「まずはその格好!」
ビシっと指差す。
「そんな薄着で何を考えているんすか!せめてTシャツぐらいにしてくださいよ!」
シンタローは言われて自分の格好を改めて見る。
少々胸の谷間が覘いている。綺麗な形も分かる。完全に見えるより際どいのかもしれない。
本人は何が悪いんだ、という感じで聞いている。
「着替える時はせめて、声掛けてください!」
いきなり服脱ぎ始めるのは勘弁してくださいよ、っと付け足す。
そういえば、マジックにもキンタローにも散々同じような事を言われたような気がする、と今更ながら思い出す。
「パプワたちと風呂に行くとき、俺も誘うの止めてください!」
パプワは子供だから構わないだろうが、リキッドは立派な成人男子だ。
「仮にも家政夫のお前を差し置いてパプワたちと風呂はいんのも一応悪いと思ってよ。」
珍しく人が気ぃ使ってやってるのに、とシンタローはぶちぶち文句を言う。
「そんな気は使わないで下さい!むしろ、要りませんっ!」
普段はありえない位の強気で、一刀両断する。
毎回毎回誘われるのではリキッドも気が持たないのだろう。
「それから!」
「・・・まだあるのかよ・・・」
「ええ。ありますともっ!」
リキッドはすぅっと大きく息を吸い込み、最後の一つを叫ぶ。
「寝るときは、ちゃんと服着て下さいっ!」
もう毎夜毎夜、拷問っす、と鼻息あらく言う。
「あー?だって暑いじゃんかよ。」
「頼むから、暑くてもなんでも服ぐらい着てくださいよ。お願いします」
リキッドは土下座さえしそうだ。
「お前とパプワとチャッピーしか居ないんだからいいじゃないか。」
「・・・・」
どうやら完璧に男として見られていないようだ。
信頼されているのかもしれないが、元々が男なのでそんな事を気にしていないだけなのかもしれない。
「何か間違いでもあったらどーするんすか?」
「間違い?・・・俺とお前で?」
シンタローは鼻で笑い、軽くあしらう。
「ありえない。それにお前俺に勝てないだろ?」
「・・・そんな事いっていていいんすか?」
がっとシンタローの腕を掴む。
ムッとしたように、シンタローはリキッドの腕を払おうとしたが払えない。
「貴女がどんなに強くても、腕力は俺の方が上っすよ?」
リキッドは更に力をいれる。痛いのかシンタローは眉を歪める。
「眼魔砲。」
リキッドに掴まれている腕とは反対の自由になる腕で、前置き無くいきなりぶっ放した。
「ばーか。お前が俺に敵うわけないだろ。」
俺に勝とうなんざ100年早い、とお星様になったであろうリキッドに向けて言葉を放つ。
当然リキッドに聞えるわけもない。
「ふん。まぁ奴の言う事も一理あるか。キンタローたちが迎えに来たときに説教されるのも煩いしな。」
寝るときには服を着るか、と赤くなった腕を擦りながら一人ごちる。
実際にそんな光景を、彼女を過保護にしている青の一族たちに見られたら説教どころでは済まないだろう。
パプワ、チャッピーはともかく、リキッドの命は確実に無い。
既にお星様になってしまったリキッドの正に命を賭した願いはめでたく通じたのだった。


H16.7.22
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