忍者ブログ
* admin *
[488]  [487]  [486]  [485]  [484]  [483]  [482]  [481]  [480]  [479]  [478
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

oas
|メニュー|  |更新記録|  |文もどき|  |雑記|  |リンク|
|単発|  |女体化|  |リキシンお題|  |シン受けお題|  |キンシンお題|
--------------------------------------------------------------------------------

緑の間からモノトーンの服が見える。
いまこの島でその色合いを持つのはただ一人。
それを目に捉えたアラシヤマは反射的に声を掛ける。
「シンタローは~~ん!」
「あん?」
呼ばれたシンタローは立ち止まり、声のする方へと振り返る。
「………」
時が止まる。
いや、止まっているのはアラシヤマだけだ。
子供のように右手を上げ近寄ろうとした姿勢のまま綺麗に固まっていた。
「………。」
二人の間をそよそよと風が通り抜け、さわさわと木がなる。
はっと我に返ったアラシヤマは無言でマジマジと、穴が開くのではないのかと思うほど見つめる。
目線は下へ。また上へ。
どこからどう、控えめに見たって女だ。慎ましくも出るところが出て、引っ込むところが引っ込んでいた。
それでも醸し出す雰囲気や気配はそこまでは変らない。彼を知る人間だったらそう感じるだろう。
「……シンタローはんでっしゃろ?」
「いえ、人違いですよ。」
軽く片手を挙げ間髪いれず否定する。
そのまま爽やか過ぎる笑顔を浮かべ、じゃあと去ろうとする。
「わてが間違える事あらしまへん! 」
「ちっ」
舌打ち一つ。
先ほどの爽やかさは何処かへ消え去り以前と変らぬ、どこか邪険にしたような表情だ。
腕を組みふんぞり返って言う。
「何の用だよ?」
「それが久しぶりにおうた友達に言う言葉でっしゃろか?」
友達、しかも数年ぶりに会ったのならもっと感動して抱きついたりするだろうと
大の大人がだくだくと涙を流して訴える。
アラシヤマは何年経ってもアラシヤマだった。
「………。」
シンタローはそんなアラシヤマを呆れたように見やる。
どうやらまだあのときの言葉を信じているようだ。
アラシヤマは泣いてすっきりしたのか、コロっと話題を変えて訊ねる。
「ところで、どうしてそんな姿になってるんどすか?」
シンタローはこの件について、もう何度目か分からないほどの大きなため息をついた。



「…だから毎回通信が音声だけどしたんか…。 声も違うからおかしいとは思っていましたわ。」
「てゆーか、この島で最初に会った時に普通気づくって。いずれはバレると思ったがよく4年も持ったもんだ。」
そう言うと感慨深く頷く。
きっとアラシヤマ周辺の団員たちは命令していた通り緘口令を厳守していたのだろう。
いや、ただ単にアラシヤマが他の団員たちと仕事に関すること以外は話さなかっただけかもしれない。
とりあえずあちらに帰る事が出来たら、特別報酬でも出そうとシンタローは決める。
そういえば、と考える。アラシヤマの反応が予想とは違う。
大人しくシンタローをじーっと見ているだけだ。
男の時でも愛情か友情かどちらを求めていたのかよく分からない、『友達』に固執するあまり
変態的行為に出ることが多々あったから女になったら絶対、マジックの様に頭がイかれると思っていた。

「わて、その、女性とはいい思い出がありまへんのや…」
どこか遠い目をして呟く。
そんなアラシヤマにシンタローは即座に突っ込む。
「お前、友達もいないくせに何言ってんだよ!」
「何いうてますのん。友達はおらんても、恋人ぐらいいましたがな。」
シンタローの目を見て妙にキッパリと言い切る。
「……………」
じとーっと思いっきり疑いの眼差しを向けるシンタロー。
まともに人間と話す事が出来ないのにそんな事があるのだろうか?
「シンタローはん、信じておませんやろ。………わて顔は良いでっしゃろ?」
「うわー、自分で言ってるー」
棒読みでシンタロー。ついでにさむーい、と南の島で照りつける太陽の下むき出しの両腕を擦る。
しかし一方で納得はする。確かに顔はいい。…顔だけだが。
本人も性格に難ありなのは認めているのか、
「彼女らはきっと顔だけなんどすなぁ。
 …しまいには、『そんな人だとは思わなかった!』って必ず言われるんどす。」
と言う。相変わらずどこを見ているのか分からない。
その時の事を思い出しているのだろうか、いつも背負っている陰が更に暗い。
一方シンタローはうんうんと首を縦に振りその女たちに同意する。
シンタローの場合は出会ったときから、『そんな人』だとは思っていたが。
だいたい気持ちが高ぶると発火する人間なんて危なくて近寄れない。
普通の人間なら出会った瞬間サヨウナラだ。
「シンタローはんは、結局は付き合ってくれますやろ?やさしいどすなぁ。」
「まぁなー。俺は使えそうなものはキープしとけ…、いや、
 博愛がモットーだ。お前との付き合いも長いし。今更切って切れるモンじゃないだろ?
 ………それ以前にお前部下だろーが。」
付き合いが切れたらそれは後味が悪すぎる。
ガンマ団総帥の立場で、直属の部下であるアラシヤマと切れるということはこの世にいないことになる。
考えてみれば士官学校時代からの付き合いなのだ。
積極的に交流を持っていたわけではないが、一応付き合いが長い事には変わりない。

シンタローの言葉を聞いていたのか、いないのか。
何かいいことを思いついたようだ。パァっと珍しく表情が明るくなる。
「そうやわ! シンタローはんならそんのことあらしません! わての友達兼恋人になっておくれやすー!!」
そう叫ぶとそのまま抱きつこうとする。
「結局はどいつもこいつも同じかよ!」
言いつつ両手を広げて向かってくるアラシヤマ。抱きつかれる瞬間。鳩尾に右、左、右、と三連打。
やや前のめりになった所で、最後に膝蹴り。どごんっと綺麗に嵌る。
コレが一般人なら間違いなく意識を失っていただろうが、そこは普段はボケていても総帥直属のガンマ団員。
アラシヤマはぐぅっと息を漏らしたがそこまでのダメージは与えられていないようだ。
以前の威力ならばそのまま撃沈していただろうが、結局はそのまま腕の中。
「あ、シンタローはんの方が小さい…」
妙に感心したように呟く。ついでにシンタローの頭の上に自分の顎を乗せている。
「そらまぁ女だからな。」
と投げやりに答える。
どうやら向こうにいる間、散々からかわれた用だ。
「俺の頭の上に顎なんか乗せんな。俺が小さいみたいでむかつく!」
「『小さいみたい』じゃのうて、実際小さいどす。
 新鮮やわぁ。眼魔砲を撃たれないなんて、わて好かれてるんどすなぁ。」
根暗な割には妙に前向きな所がある。
調子に乗ってそのままきゅーっと力を入れる。
「違うわ、ボケ。」
容赦なくツッコミ。
ついでに右足を軽く上げ、そのままアラシヤマの左足の甲をぐりぐりと踏みつける。
まったく力が緩まない事が癇に障ったのか、更に体重をかけ念入りに踏みつつ怒鳴る。
「威力があがり過ぎちまったんだよっ! この島はこんなくだらねー事で傷つけたくねーんだ!
 だいたいお前頭に血ぃのぼって避けられそうもないし、直撃したら流石に死ぬだろ!!」
足を踏みつけても一向に緩まないので今度は腕を突っ張りアラシヤマから離れようとする。
が、こちらも歯が立たない。純粋な力勝負では全く話にならないようだ。
国一つ簡単に潰せるぐらいの力があっても力を解放する事が出来ないのなら意味がない。
「あの~、それ肉弾戦では意味無いとちがいますのん?」
満足したのか足が痛かったのか、シンタローを解放し少し真面目に訊ねる。
「るせー………殺意のあるヤツになら意味あるんだよ。
 とっさのことだったら力の抑えが余計できないからな。瞬殺。」
秘石も何を考えているんだか、とぼやく。
今は青の秘石と連絡を取れるが、向こうは全くシンタローを元に戻す気は無いようだ。
実力行使も出来ないのでタチが悪い。
「そうどすか…。よく今まで無事どしたなぁ。」
色々な意味で。と心の中で付け加える。
単純に戦闘の事だけを指していると解釈したのか、シンタローは
「俺を誰だと思ってるんだよ。」
と、呼び止められた時と同じようにやはりふんぞり返って答る。女になっても俺様は俺様だった。
女になった分、更に俺様パワーが上がったようにも思われる。
「はぁー、すんません。」
アラシヤマはなんとなく謝った。


『………』
お互い話すことも無くなり微妙な沈黙が訪れる。
「じゃあ、俺帰るから。」
じゃな。と背を向け歩き出す。
「シンタローはん!」
「まだ何か用かよ?」
怪訝そうに振り返る。
「……この島にわてだけ残ったのも何か意味があると思いますのや。」
「単純に忘れられただけじゃねーの?」
ボソッと呟く。
「だからこの島にいる間は、あんさんの背中はわてが守るどす!」
アラシヤマは炎を背負って叫ぶ。
一人勝手に燃え盛るアラシヤマにそっけなく水をかける。
「俺は誰かに守られなきゃいけないほど、弱くねーよ。」
「そんなこと言うてもシンタローはん今女の人でっしゃろ?」
「うっさい。言うな。不愉快だ。」
立て続けに言葉を吐く。
「でも」
と更に言い募ろうとするアラシヤマの言葉を制す。
「あー、分かったよ。勝手にしろ。ただ、俺の邪魔はすんなよ。」
「あんさんを守れれば十分どす。」




こうしてアラシヤマのストーキングが始まった。

H16.10.15
PR
BACK HOME NEXT
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
最新記事
as
(06/27)
p
(02/26)
pp
(02/26)
mm
(02/26)
s2
(02/26)
ブログ内検索
忍者ブログ // [PR]

template ゆきぱんだ  //  Copyright: ふらいんぐ All Rights Reserved