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○月×日
今日もシンちゃんなぐられた。頭にたんこぶができてしまった。
少しふくらんだそこをそーっとさわるとふにふにしていた。
ぼくはその一言を忘れないようにこうして書く。
シンちゃんは『悪りぃ、いつかわびするよ』と言った。
「グンマぁ、入るぞー?」
シンタローがグンマの研究室を訪れる。
グンマはまだ二十歳にも満たないが専用の研究室をガンマ団本部に持っている。
高松に『僕も高松の様な部屋が欲しいな』と何気ない一言を漏らした翌日、グンマ専用のが出来た。
「遅いよー、シンちゃん。僕待ってたんだからね」
スーツの上に白衣を羽織ったグンマが、休憩用の椅子に座って不満そうに文句を言う。
テーブルの上にはすっかり冷めてしまったであろうお茶とお菓子がのっていた。
「いや、悪いな。練習が伸びちまってよ」
「うん。そうだろうな、とは思っていたんだけど」
グンマの長く伸ばした金色の髪と、くりっと大きな青い目から判るように青の一族だ。
いっぽう、グンマに言われる前に勝手に向いに座ったシンタローは一族の特徴と言われるその色を持たない。
黒の髪は訓練着の襟に掛かるかどうかという長さで、切れ長の瞳に輝くのは意思の強そうな髪と同色の黒だ。
本人はそれをとても気にしているようだかそれを表に出している姿をグンマは見たことはない。
「スーツに着られたグンマがこうして研究室に篭っているってのも慣れねーなぁ」
「いいの。僕、自分専用の研究室欲しかったんだから。だからそれに見合うような格好しているんじゃない」
「まぁ、そんなことはいいか。で、用件って何だ?」
シンタローは自分を呼んだ理由をグンマに訊ねた。
「そうそう!僕、別に世間話する為にシンちゃん呼び出したわけじゃないんだよ!」
力んで言う。すっと立ち上がるとそのままスタスタとなにやら色々機材の置いてある机に向う。
ばらばらと雑多に置いてあるものの中から一冊のノートらしきものを取ると、シンタローの元へと戻る。
が、今度は椅子に腰を落とさず、シンタローを威圧するように仁王立ちになり、
持ってきたノートをシンタローに突きつけた。
「何だよ?」
不審そうに何も説明無しにノートを押し付けたグンマに説明を求める。
「その付箋がある箇所開いてみてよ」
グンマがそういうのでシンタローはまずはそのノートの表紙を見ると毛筆で渋く『日記』と書かれていた。
グンマの日記とはすなわちほぼ恨み言だ。
それを重々承知しているシンタローはげんなりした様子でグンマを見上げる。
グンマは何も言わず無言で早く開け、という視線で応じる。
が、シンタローは再び表紙に視線を落としたままいっこうに開こうとしない。
グンマは「もう」と呟くと、ノートを開こうとしないシンタローの手からそれを取り上げ、
テーブルの上にバンッとその問題の日記を広げ、指差していた。
「シンちゃん! 僕、このときのお詫びまだしてもらってないよっ!!」
「…………お前さー、コレ何時の事よ?」
「え?」というと、パタンと日記を閉じ、手に取る。
さん然と輝く『日記』の文字のしたには□年、と書かれていた。
「えーっと、□年だから6年前かな?」
グンマはとしれっと当たり前のように答えた。
「なぁ」
シンタローは深いため息と共に言葉を吐き出す。
「なに?」
お詫びってなにしてくれるのかな?と期待に満ち満ちた目でシンタローを見る。
ご褒美をまっている子犬のようにつぶらな瞳だ。
「なんでお前って、そんなどーでも良さそうなことには細かいワケ?」
『どうでも良い』にかなり力を入れている。
「ひっどーい、シンちゃん!」
どうでも良い事、と言い切られグンマは憤慨する。
「どうでもいいことの分けないでしょ?僕、痛かったんだから!あ、いまでも殴られた所触ると痛い」
きっと殴られた箇所であろうところを指で触って痛いと繰り返す。
「んなわけあるかっ! 6年も前ことだろうがっ!!」
「痛いもんっ!!」
珍しくグンマもシンタローに劣らずの怒鳴り声で応じる。
そしてそのままの勢いで叫んだ。「だから看病して!!」
「はぁ~~?」
思い切り胡散臭そうに返事をする。無論承諾では無い。暗に馬鹿?と含ませている。
「何、シンちゃん。その返事」
グンマは頬をぷっくり膨らませて拗ねる。
青年には似合わない子供のような表情だが、グンマにはよく似合う。
その外見の可愛らしさの為だろうか。
「馬鹿らしい。そんな用事なら俺、帰るわ」
シンタローはグンマのそんな表情など見慣れたものなのだろう、チラッと一瞥すると気にも留めずにそう言い放ち腰をうかしかける。
「待ってよ!シンちゃん!」
慌ててシンタローの背後に回り肩に手をかけ椅子に押し戻そうとする。
が、グンマの力ではシンタローを引き止めることは出来ない。
どうしてもシンタローに看病というか、構ってもらいたいのかグンマは食い下がる。
「じゃあ、こうしようよ。僕の生まれてからのこの『日記』にあるシンちゃんの僕に対する
酷い事したの、全部チャラにしてあげるよ」
「『生まれからの日記』?」
不審そうに呟くとそのままストンと椅子にもう一度座る。
グンマは取り敢えずは聞く体勢に戻ったシンタローにほっと息をつき肩から手を外し、
ごくごく当たり前の事のように答えた。
「そうだよ。0歳からの」
文字どころか感情すら上手くもてなかった赤ちゃんから?
シンタローは、グンマが遂に本当の馬鹿になったのかと思った。
「んなもんあるわけ無いだろうがっ!!」
「あるもん!」
勢いよくビシッと後の本棚を指差す。
そこの一部は日記コーナーになっていた。
シンタローがそちらに目を向けると、確かに、グンマが生まれたその年からの本が並んでいた。
「これ、最近は少しずつデジタル保存しているんだよ」
「……なに、画像読み込んだのか?」
シンタローは聞かずにはいられなかった。
一年は365日ある。1日1ページ、見開きで2日分だと、183ページ。
単純計算で十年で約1830ページ、二十年だとその倍の3660ページ。
それを全部読み込もうというのか、この単純馬鹿な従兄弟は。
その執念深さにあきれ返る。
「違うよ。それじゃあ、検索も出来ないし、容量食うし、見難いじゃない。
画像を読み込んだらね、文字だけ取り込んでちゃんと文字データにしてくれる
読み取り機械作ったんだよ。しかも特定の言葉を予め入れていたらそこだけ色もつくよ
ちなみにキーワードは『シンちゃん』」
シンちゃんという言葉が出てきたら大体僕、苛められた事しかないし
と付け加える。
「…その日記の為だけに?作ったのか?それを?」
「うん」
正真正銘の馬鹿がいた。こいつは頭はいいが馬鹿だ。
シンタローは強く、そう思う。
「そもそもお前が自分でつける前のは誰が書いた?」
「嫌だなぁ、シンちゃん。高松に決まっているじゃない」
「ああ、あの変態。」
グンマ様命と公言して憚らない高松なら、と深く納得する。
「シンちゃん!高松のことそんな風に言わないでよ!」
「変態を変態と言って何がわるい。お前の一挙一動に『グンマ様』って鼻血流してるんだから
立派な変態じゃないか」
「それ言うならおじさまだって変態じゃない。シンちゃんの事見るたびに鼻血だしてるよ
しかもお手製のシンちゃん等身大人形をいつも抱いているし。高松はちょっと出血するだけだけど
おじさまは実の息子をかたどった人形に囲まれて暮らしているんだよ?凄く変だよ」
それで反論したつもりなのか、とシンタローは鼻で笑う。
「ああ。そうだよ。アイツは変態の馬鹿だ」
「シンちゃん」
とグンマは口調を改め真顔で言う。
「高松はね、僕のお父さまのような存在だけど、おじさまはシンちゃんの実のお父さまだよ?」
「いいんだよ。俺はあんなヤツ親父だなんて思っていないからな」
「主観はどーあれ、客観的には立派に血の繋がったお父さまだよ」
「知らん」
一言で切り捨てた。
「あれ?」
グンマは話の流れが違う方向へ行っているのに気がつく。
「シンちゃん!話を逸らそうとしても駄目だからねっ!」
撒けなかったか、というようにちっとシンタローは舌打ちする。
「か・ん・びょ・う」
一字一字強調する。
「お前、元気に話しているじゃん。必要ないだろーが」
「必要なの!して欲しいの!」
シンタローはグンマの真剣に訴える瞳を見つめながら考える。
もし、このまま大人しく言う事を聞いてやれば取り敢えず今までの事は綺麗サッパリ無くなる。
今までの人生の中で、果たしてどれだけグンマに恨みを買っているだろうか?
検討も付かない。本当に些細な事まで書くのだ、コイツは。
ここは一つ、聞いた方が俺の為ではないだろうか?
そう結論づけると観念したように口を開いた。
「わーったよ」
「本当だね?!」
その言葉を聞くと嬉しそうにそう言う。
「で、看病って何すりゃいいんだよ?まさか本当に看病するワケじゃないだろ?
お前元気だしさ。どっか遊びに行くのやら実験やらに付き合えば言い訳?」
お前の作ったロボットとの対戦ぐらいで済むなら安いもんだよ、と。
グンマは至って元気だ。
「うーん。でも本当の看病と似たようなものかな?」
「は?お前本当に具合悪いの?」
健康的なつやつやとした綺麗な肌。先ほども元気に叫んでいた。
とてもそんな風には見えない。
「ううん。別に病気なんかじゃないよ?それよりちょっと待っててね」
そのままロッカーが置いてある奥まで引っ込む。
暫くのち、グンマが「お待たせ~」と戻って来た。手に白いものを携えて。
「はい、シンちゃん、これ」
満面の笑みを湛えシンタローにそれを差し出す。
シンタローは素直にそれを受け取り、取り敢えず何か確認しようと広げる。
「……ナース服?」
「そうだよ。大きいサイズだから手に入れるの苦労したんだから」
「で、お前は何をしたいワケ?」
「看護婦さんと病人ごっこ」
グンマはぴっと人差し指を立て、真顔でのたまった。
「…………」
「この間、おじさまに教えてもらったの~。僕、シンちゃんにどーしてもその格好してもらいたいの。
それで看病してもらいたかったんだ」
本当に嬉しそうに笑う。その筋の人間が見たら一発で陥落するであろうとても綺麗な笑顔だ。
その筋とは違うがグンマ馬鹿に名を連ねる、その筆頭の高松がこの場にいたら
どんな凄惨な事件が起こったのかという惨状になったこと間違い無しだ。
シンタローのそれを纏った姿を想像したのだろうか、グンマの笑顔が更なる輝きを放つ。
それを受け取りぷるぷると震える手で握り締めるその様子に気づかずに。
「新しい思い出が欲しいか、グンマ?」
勢いよくそれを投げ捨てると、グンマによく見えるように拳を固める。
「え?」
見る間にグンマの顔がザァと青ざめる。
過去、眼魔砲を食らったその悪夢が走馬灯の様によぎる。
「シ、シンちゃんの嘘つきーーーっっ」
魂の悲鳴が木霊した。
H17.2.2→H17.4.4
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○月×日
今日もシンちゃんなぐられた。頭にたんこぶができてしまった。
少しふくらんだそこをそーっとさわるとふにふにしていた。
ぼくはその一言を忘れないようにこうして書く。
シンちゃんは『悪りぃ、いつかわびするよ』と言った。
「グンマぁ、入るぞー?」
シンタローがグンマの研究室を訪れる。
グンマはまだ二十歳にも満たないが専用の研究室をガンマ団本部に持っている。
高松に『僕も高松の様な部屋が欲しいな』と何気ない一言を漏らした翌日、グンマ専用のが出来た。
「遅いよー、シンちゃん。僕待ってたんだからね」
スーツの上に白衣を羽織ったグンマが、休憩用の椅子に座って不満そうに文句を言う。
テーブルの上にはすっかり冷めてしまったであろうお茶とお菓子がのっていた。
「いや、悪いな。練習が伸びちまってよ」
「うん。そうだろうな、とは思っていたんだけど」
グンマの長く伸ばした金色の髪と、くりっと大きな青い目から判るように青の一族だ。
いっぽう、グンマに言われる前に勝手に向いに座ったシンタローは一族の特徴と言われるその色を持たない。
黒の髪は訓練着の襟に掛かるかどうかという長さで、切れ長の瞳に輝くのは意思の強そうな髪と同色の黒だ。
本人はそれをとても気にしているようだかそれを表に出している姿をグンマは見たことはない。
「スーツに着られたグンマがこうして研究室に篭っているってのも慣れねーなぁ」
「いいの。僕、自分専用の研究室欲しかったんだから。だからそれに見合うような格好しているんじゃない」
「まぁ、そんなことはいいか。で、用件って何だ?」
シンタローは自分を呼んだ理由をグンマに訊ねた。
「そうそう!僕、別に世間話する為にシンちゃん呼び出したわけじゃないんだよ!」
力んで言う。すっと立ち上がるとそのままスタスタとなにやら色々機材の置いてある机に向う。
ばらばらと雑多に置いてあるものの中から一冊のノートらしきものを取ると、シンタローの元へと戻る。
が、今度は椅子に腰を落とさず、シンタローを威圧するように仁王立ちになり、
持ってきたノートをシンタローに突きつけた。
「何だよ?」
不審そうに何も説明無しにノートを押し付けたグンマに説明を求める。
「その付箋がある箇所開いてみてよ」
グンマがそういうのでシンタローはまずはそのノートの表紙を見ると毛筆で渋く『日記』と書かれていた。
グンマの日記とはすなわちほぼ恨み言だ。
それを重々承知しているシンタローはげんなりした様子でグンマを見上げる。
グンマは何も言わず無言で早く開け、という視線で応じる。
が、シンタローは再び表紙に視線を落としたままいっこうに開こうとしない。
グンマは「もう」と呟くと、ノートを開こうとしないシンタローの手からそれを取り上げ、
テーブルの上にバンッとその問題の日記を広げ、指差していた。
「シンちゃん! 僕、このときのお詫びまだしてもらってないよっ!!」
「…………お前さー、コレ何時の事よ?」
「え?」というと、パタンと日記を閉じ、手に取る。
さん然と輝く『日記』の文字のしたには□年、と書かれていた。
「えーっと、□年だから6年前かな?」
グンマはとしれっと当たり前のように答えた。
「なぁ」
シンタローは深いため息と共に言葉を吐き出す。
「なに?」
お詫びってなにしてくれるのかな?と期待に満ち満ちた目でシンタローを見る。
ご褒美をまっている子犬のようにつぶらな瞳だ。
「なんでお前って、そんなどーでも良さそうなことには細かいワケ?」
『どうでも良い』にかなり力を入れている。
「ひっどーい、シンちゃん!」
どうでも良い事、と言い切られグンマは憤慨する。
「どうでもいいことの分けないでしょ?僕、痛かったんだから!あ、いまでも殴られた所触ると痛い」
きっと殴られた箇所であろうところを指で触って痛いと繰り返す。
「んなわけあるかっ! 6年も前ことだろうがっ!!」
「痛いもんっ!!」
珍しくグンマもシンタローに劣らずの怒鳴り声で応じる。
そしてそのままの勢いで叫んだ。「だから看病して!!」
「はぁ~~?」
思い切り胡散臭そうに返事をする。無論承諾では無い。暗に馬鹿?と含ませている。
「何、シンちゃん。その返事」
グンマは頬をぷっくり膨らませて拗ねる。
青年には似合わない子供のような表情だが、グンマにはよく似合う。
その外見の可愛らしさの為だろうか。
「馬鹿らしい。そんな用事なら俺、帰るわ」
シンタローはグンマのそんな表情など見慣れたものなのだろう、チラッと一瞥すると気にも留めずにそう言い放ち腰をうかしかける。
「待ってよ!シンちゃん!」
慌ててシンタローの背後に回り肩に手をかけ椅子に押し戻そうとする。
が、グンマの力ではシンタローを引き止めることは出来ない。
どうしてもシンタローに看病というか、構ってもらいたいのかグンマは食い下がる。
「じゃあ、こうしようよ。僕の生まれてからのこの『日記』にあるシンちゃんの僕に対する
酷い事したの、全部チャラにしてあげるよ」
「『生まれからの日記』?」
不審そうに呟くとそのままストンと椅子にもう一度座る。
グンマは取り敢えずは聞く体勢に戻ったシンタローにほっと息をつき肩から手を外し、
ごくごく当たり前の事のように答えた。
「そうだよ。0歳からの」
文字どころか感情すら上手くもてなかった赤ちゃんから?
シンタローは、グンマが遂に本当の馬鹿になったのかと思った。
「んなもんあるわけ無いだろうがっ!!」
「あるもん!」
勢いよくビシッと後の本棚を指差す。
そこの一部は日記コーナーになっていた。
シンタローがそちらに目を向けると、確かに、グンマが生まれたその年からの本が並んでいた。
「これ、最近は少しずつデジタル保存しているんだよ」
「……なに、画像読み込んだのか?」
シンタローは聞かずにはいられなかった。
一年は365日ある。1日1ページ、見開きで2日分だと、183ページ。
単純計算で十年で約1830ページ、二十年だとその倍の3660ページ。
それを全部読み込もうというのか、この単純馬鹿な従兄弟は。
その執念深さにあきれ返る。
「違うよ。それじゃあ、検索も出来ないし、容量食うし、見難いじゃない。
画像を読み込んだらね、文字だけ取り込んでちゃんと文字データにしてくれる
読み取り機械作ったんだよ。しかも特定の言葉を予め入れていたらそこだけ色もつくよ
ちなみにキーワードは『シンちゃん』」
シンちゃんという言葉が出てきたら大体僕、苛められた事しかないし
と付け加える。
「…その日記の為だけに?作ったのか?それを?」
「うん」
正真正銘の馬鹿がいた。こいつは頭はいいが馬鹿だ。
シンタローは強く、そう思う。
「そもそもお前が自分でつける前のは誰が書いた?」
「嫌だなぁ、シンちゃん。高松に決まっているじゃない」
「ああ、あの変態。」
グンマ様命と公言して憚らない高松なら、と深く納得する。
「シンちゃん!高松のことそんな風に言わないでよ!」
「変態を変態と言って何がわるい。お前の一挙一動に『グンマ様』って鼻血流してるんだから
立派な変態じゃないか」
「それ言うならおじさまだって変態じゃない。シンちゃんの事見るたびに鼻血だしてるよ
しかもお手製のシンちゃん等身大人形をいつも抱いているし。高松はちょっと出血するだけだけど
おじさまは実の息子をかたどった人形に囲まれて暮らしているんだよ?凄く変だよ」
それで反論したつもりなのか、とシンタローは鼻で笑う。
「ああ。そうだよ。アイツは変態の馬鹿だ」
「シンちゃん」
とグンマは口調を改め真顔で言う。
「高松はね、僕のお父さまのような存在だけど、おじさまはシンちゃんの実のお父さまだよ?」
「いいんだよ。俺はあんなヤツ親父だなんて思っていないからな」
「主観はどーあれ、客観的には立派に血の繋がったお父さまだよ」
「知らん」
一言で切り捨てた。
「あれ?」
グンマは話の流れが違う方向へ行っているのに気がつく。
「シンちゃん!話を逸らそうとしても駄目だからねっ!」
撒けなかったか、というようにちっとシンタローは舌打ちする。
「か・ん・びょ・う」
一字一字強調する。
「お前、元気に話しているじゃん。必要ないだろーが」
「必要なの!して欲しいの!」
シンタローはグンマの真剣に訴える瞳を見つめながら考える。
もし、このまま大人しく言う事を聞いてやれば取り敢えず今までの事は綺麗サッパリ無くなる。
今までの人生の中で、果たしてどれだけグンマに恨みを買っているだろうか?
検討も付かない。本当に些細な事まで書くのだ、コイツは。
ここは一つ、聞いた方が俺の為ではないだろうか?
そう結論づけると観念したように口を開いた。
「わーったよ」
「本当だね?!」
その言葉を聞くと嬉しそうにそう言う。
「で、看病って何すりゃいいんだよ?まさか本当に看病するワケじゃないだろ?
お前元気だしさ。どっか遊びに行くのやら実験やらに付き合えば言い訳?」
お前の作ったロボットとの対戦ぐらいで済むなら安いもんだよ、と。
グンマは至って元気だ。
「うーん。でも本当の看病と似たようなものかな?」
「は?お前本当に具合悪いの?」
健康的なつやつやとした綺麗な肌。先ほども元気に叫んでいた。
とてもそんな風には見えない。
「ううん。別に病気なんかじゃないよ?それよりちょっと待っててね」
そのままロッカーが置いてある奥まで引っ込む。
暫くのち、グンマが「お待たせ~」と戻って来た。手に白いものを携えて。
「はい、シンちゃん、これ」
満面の笑みを湛えシンタローにそれを差し出す。
シンタローは素直にそれを受け取り、取り敢えず何か確認しようと広げる。
「……ナース服?」
「そうだよ。大きいサイズだから手に入れるの苦労したんだから」
「で、お前は何をしたいワケ?」
「看護婦さんと病人ごっこ」
グンマはぴっと人差し指を立て、真顔でのたまった。
「…………」
「この間、おじさまに教えてもらったの~。僕、シンちゃんにどーしてもその格好してもらいたいの。
それで看病してもらいたかったんだ」
本当に嬉しそうに笑う。その筋の人間が見たら一発で陥落するであろうとても綺麗な笑顔だ。
その筋とは違うがグンマ馬鹿に名を連ねる、その筆頭の高松がこの場にいたら
どんな凄惨な事件が起こったのかという惨状になったこと間違い無しだ。
シンタローのそれを纏った姿を想像したのだろうか、グンマの笑顔が更なる輝きを放つ。
それを受け取りぷるぷると震える手で握り締めるその様子に気づかずに。
「新しい思い出が欲しいか、グンマ?」
勢いよくそれを投げ捨てると、グンマによく見えるように拳を固める。
「え?」
見る間にグンマの顔がザァと青ざめる。
過去、眼魔砲を食らったその悪夢が走馬灯の様によぎる。
「シ、シンちゃんの嘘つきーーーっっ」
魂の悲鳴が木霊した。
H17.2.2→H17.4.4
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