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「シンちゃーん、ぼくー」
オマエはどこの子供だと思わず怒鳴りたくなるような間抜けな声が総帥室の扉の向こうから聞こえた。
大人しくデスクワークに励んでいたシンタローは、ふぅと大きなため息を漏らすと手元のパネルでロック解除を押す。
「おまえなら施設ん中どこでも入れるだろーが。ここだって。いちいち俺に開けさせんなよ」
ペンを放り出し、応接用の椅子にどっかりと腰を下ろす。グンマも当然のようにシンタローの向かいに座った。
「まぁまぁいいじゃない。はい、これ」
すっとノートを差し出した。シンタローは訝しがりながらも受け取る。
シンタローは何か恨み言でも綴っているのかと思ったのだがそれは新品特有の手触りだった。
念のためぱらぱらと捲って確認してみたがどのページも真っ白だ。
ノートから目をあげ、片手に軽く持ち上げ「で、何だ?」
「いやだなぁ、シンちゃんもう忘れちゃったの?」
最近忙しすぎてもうボケ始めちゃったんじゃないのぉ~と青い目に何の邪気もなく、さり気無くひどい事を言いながら説明し始めた。
「こないだキンちゃんと一緒に言ったじゃない。僕らはお互いのことを知らな過ぎるでしょ?
だから親交を深めるために交換日記をしようよって僕が提案したら皆乗り気になってくれたじゃない」
「……こうかんにっき?」
なんだそれは、小学生か俺らは、とシンタローは頭を抱えた。いつ自分がそんな約束を交わしたのだろうか?
「皆でお酒飲んだときだよ」
長い付き合いだ、シンタローの考えていることなど分かるのだろうグンマが記憶を引っ張り出す欠片投げた。
「…………。」
酒、とシンタローは考え込む。
最近はすっかりご無沙汰だった為かちょっとたしなむ程度に舐めただけなのだが翌日ひどい目にあったあの時か。
「俺、お前の考えそうな事なら分かるし、お前だって俺の考えること分かるだろ?」
嫌なのだが分かるものは仕方がない、そんな表情を浮かべながらシンタローは続けた。
「現にさっきだって俺がいつのことだったかと考え始めたらお前が助言しただろ?
なのに今更?男三人でか?しかもこの歳になって?」
恋に恋する年頃の乙女じゃあるまいし、と吐き捨てた。
「シンちゃん、あの時はそんなこと言わなかったじゃない」
グンマはぷーとほっぺたを膨らまして拗ね始めた。
「そりゃ、酔ってたからだろうが!久しぶりに体内にアルコール入れたから肝臓が弱ってたんだよっ。
頭の判断機能も麻痺ってたんだよ!酒の席での約束なんか本気にするなっ!」
「でも、『いいぜ』って言ったじゃないのっ。それってちょこっとはいいかもって思ってくれてないと
いくら酔っていてもOKはしてくれないんじゃないの?シンちゃんは自分の嫌なことはハッキリ言うじゃない。
それに僕たちはキンちゃんの事殆ど知らないんだし!」
「あいつは俺の中にいたんだ」
苦虫を噛んだような渋い顔で反論を始めたシンタローをグンマがそこが違う、と指を左右にふり遮った。
「だから、キンちゃんは僕らのことを一方的に知っているだけでしょ?しかも単に情報として。
キンちゃんが実際に体験したわけじゃないし、それは映画を見ているようなものなんだよ。
ううん、違う。映画は見せることを前提に作っているけどキンちゃんは違うんだよ?第三者、客観的にキンちゃんが思うのと、実際にキンちゃんが手にモノを取って感じたこととは別のことでしょ?
僕は、キンちゃんが『今』をどう思っているのか知りたいし、今まで体験できなかったどんな小さいことも
一緒に感じたいんだよ。シンちゃんだって同じ気持ちでしょ?」
確かにグンマの言う通りなのだろう。
キンタローはその精神が生まれたときからシンタローの中に閉じ込められていたのだから。
いつ、どの用にキンタローが自分という存在を意識し始めたのだろうか。
人は他者が存在して初めて『自分』という自我が生まれるものではないのだろうか。
そしてそのキンタローのあり方がいつ『異常』だと思うようになり、
24年間をどのように感じ、どのように過してきたのだろうか。
シンタローはキンタローの存在を知ったのは『殺す』と言って戦いを挑んできたその時だ。
それ以前の事は全く知らない。異常な状況にいたのに何故今、普通に一族やガンマ団と接することが出来るのだろうか。
シンタローはそう常々疑問に思っていた。だから交換日記などと言うものにも肯定してしまったのだろう。
そしてグンマは純粋にキンタローの心配をしている。
きっとそれは常に己を案じてくれる人物がいたからなのだろうかと思い、
「まるで高松みたいだな……」
シンタローはキンタローの親の様なグンマの口ぶりに諦めたようにポツリと漏らした。
グンマはそれをシンタローなりの了承として受け取り、満足そうに微笑みながら
「僕がおとうさんでシンちゃんがおかあさんだね」
「ばーか。同じ歳ぐらいの息子なんていらねぇよ。それを言うなら俺が兄貴でオマエはキンタローの歳の離れた弟だろ?」
にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべグンマをからかう。
「なんで僕が弟になるの?!しかも『歳の離れた』って何!?僕、キンちゃんよりオトナだよ!」
「いいのかなぁ、そんな事いって?あいつ、頭よさそうだぜ?そんな風にいつまでもボケボケでいるとあっという間に抜かれちまうぜ?」
「あ、そーゆーシンちゃんはいいの?」
「いいの。俺は頭脳労働派じゃないからな。拳で語るから。あいつより強いしねー」
まだ、だけど。とは心の中だけに付け加える。
シンタローのその茶化した様子にグンマはシンタローも何だかんだ言っても結局はキンタローの事を
心配しているんだと嬉しく思う。
「僕ら、キンちゃんのいいおにいちゃんでいようね?そしてコタローちゃんが目を覚ましたら
3人でコタローちゃんの自慢のおにいちゃんになれるといいよね~。
おにいちゃんが3人もいたらコタローちゃん、今度こそ絶対に寂しい思いをさせないで済むから」
家族が増えるっていいよね、とグンマは童顔が更に幼くなるような笑みを浮かべる。
「ああ。そうだな」
シンタローはコタローが目を覚ました時を思い浮かべグンマに負けず劣らずの笑顔を浮かべる。
グンマは天邪鬼なシンタローを知っているだけに『コタロー』の事になると思ったことが直ぐ顔に出る
ブラコンな従兄弟にちょっと呆れたように呟く。
「もう、シンちゃんはコタローちゃんの事になると本当に素直だね」
「ほっとけ。俺は世界一の『コタコン』になるって前に誓ったんだ!
ぐっと握りこぶしをつくりなんか文句でもあんのかよ、と目に書いてグンマを睨みつける。
「ううんー、頑張ってね、シンちゃん……」
コタローちゃん、目を覚ましたらシンちゃんに構い倒されて大変そう、とグンマはコタローの将来に同情した。
「でも交換日記って何を書けばいいんだよ?」
「その日あったこととそれに対してどう思ったかを簡単に書けばいいんじゃないの?
毎日一緒にいるわけじゃないから。ただしキンちゃんにもちゃんと分かるようにね。
僕はシンちゃんが何をしているか大雑把でも分かるけどキンちゃんは分からないと思うよ」
「でもさ、アイツも分かるんじゃないか?今までずっと見てたんだし」
「……じゃあ、何があってそれに対してどう思ったことが大切だよね。キンちゃんが何をどう思っているのか
を第一にしたいし。そっちの方をちゃんと書けば良いんじゃない?僕らがお手本にならなきゃね。
う~ん、……僕だったら今の実験がうまく言って嬉しいとか、高松が今日も出血多量になりすぎて心配したとか、
そんな感じになるけど。
あとはシンちゃんが今日もムリをして何だか顔色が悪いから心配、とかたまには弱音言ってくれもいいんじゃないかなぁとか」
グンマはそう言いながらちろっと上目遣いでシンタローの様子を伺うと
「後半のはいらん」
シンタローは思いっきり機嫌の悪そうな表情で切り捨てた。
「だいたいしょっぱなからそんな、なんつーかディープそうなの盛り込んだら絶対誤解するだろ。
前半の軽めの小学生のようなヤツでよくね?……でもそうすっと直接伝えればいいだろって気がするんだよなぁ、俺」
「う~ん。そうだよねぇ。でも僕、交換日記とか僕らが幼い頃にした事を同じようにしたいんだよねぇ」
「………そうだな。まずは俺らが子供の頃にした事、一つ一つしていくか」
「うん!皆で一つのことをするっていう事が楽しいからねっ!あとはキンちゃんがもっとこうしたいとか
ああしたいとか言ってくれたら、僕らはそれを全力でしようねっ!」
グンマは子供の純粋な気持ちがそのまま丸々残って大人になった、そんな笑顔を浮かべながら言う。
「そーだな」
二人で、キンタローの兄になるのもいいかもな、とシンタローは頷いた。
2007.8.14
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「シンちゃーん、ぼくー」
オマエはどこの子供だと思わず怒鳴りたくなるような間抜けな声が総帥室の扉の向こうから聞こえた。
大人しくデスクワークに励んでいたシンタローは、ふぅと大きなため息を漏らすと手元のパネルでロック解除を押す。
「おまえなら施設ん中どこでも入れるだろーが。ここだって。いちいち俺に開けさせんなよ」
ペンを放り出し、応接用の椅子にどっかりと腰を下ろす。グンマも当然のようにシンタローの向かいに座った。
「まぁまぁいいじゃない。はい、これ」
すっとノートを差し出した。シンタローは訝しがりながらも受け取る。
シンタローは何か恨み言でも綴っているのかと思ったのだがそれは新品特有の手触りだった。
念のためぱらぱらと捲って確認してみたがどのページも真っ白だ。
ノートから目をあげ、片手に軽く持ち上げ「で、何だ?」
「いやだなぁ、シンちゃんもう忘れちゃったの?」
最近忙しすぎてもうボケ始めちゃったんじゃないのぉ~と青い目に何の邪気もなく、さり気無くひどい事を言いながら説明し始めた。
「こないだキンちゃんと一緒に言ったじゃない。僕らはお互いのことを知らな過ぎるでしょ?
だから親交を深めるために交換日記をしようよって僕が提案したら皆乗り気になってくれたじゃない」
「……こうかんにっき?」
なんだそれは、小学生か俺らは、とシンタローは頭を抱えた。いつ自分がそんな約束を交わしたのだろうか?
「皆でお酒飲んだときだよ」
長い付き合いだ、シンタローの考えていることなど分かるのだろうグンマが記憶を引っ張り出す欠片投げた。
「…………。」
酒、とシンタローは考え込む。
最近はすっかりご無沙汰だった為かちょっとたしなむ程度に舐めただけなのだが翌日ひどい目にあったあの時か。
「俺、お前の考えそうな事なら分かるし、お前だって俺の考えること分かるだろ?」
嫌なのだが分かるものは仕方がない、そんな表情を浮かべながらシンタローは続けた。
「現にさっきだって俺がいつのことだったかと考え始めたらお前が助言しただろ?
なのに今更?男三人でか?しかもこの歳になって?」
恋に恋する年頃の乙女じゃあるまいし、と吐き捨てた。
「シンちゃん、あの時はそんなこと言わなかったじゃない」
グンマはぷーとほっぺたを膨らまして拗ね始めた。
「そりゃ、酔ってたからだろうが!久しぶりに体内にアルコール入れたから肝臓が弱ってたんだよっ。
頭の判断機能も麻痺ってたんだよ!酒の席での約束なんか本気にするなっ!」
「でも、『いいぜ』って言ったじゃないのっ。それってちょこっとはいいかもって思ってくれてないと
いくら酔っていてもOKはしてくれないんじゃないの?シンちゃんは自分の嫌なことはハッキリ言うじゃない。
それに僕たちはキンちゃんの事殆ど知らないんだし!」
「あいつは俺の中にいたんだ」
苦虫を噛んだような渋い顔で反論を始めたシンタローをグンマがそこが違う、と指を左右にふり遮った。
「だから、キンちゃんは僕らのことを一方的に知っているだけでしょ?しかも単に情報として。
キンちゃんが実際に体験したわけじゃないし、それは映画を見ているようなものなんだよ。
ううん、違う。映画は見せることを前提に作っているけどキンちゃんは違うんだよ?第三者、客観的にキンちゃんが思うのと、実際にキンちゃんが手にモノを取って感じたこととは別のことでしょ?
僕は、キンちゃんが『今』をどう思っているのか知りたいし、今まで体験できなかったどんな小さいことも
一緒に感じたいんだよ。シンちゃんだって同じ気持ちでしょ?」
確かにグンマの言う通りなのだろう。
キンタローはその精神が生まれたときからシンタローの中に閉じ込められていたのだから。
いつ、どの用にキンタローが自分という存在を意識し始めたのだろうか。
人は他者が存在して初めて『自分』という自我が生まれるものではないのだろうか。
そしてそのキンタローのあり方がいつ『異常』だと思うようになり、
24年間をどのように感じ、どのように過してきたのだろうか。
シンタローはキンタローの存在を知ったのは『殺す』と言って戦いを挑んできたその時だ。
それ以前の事は全く知らない。異常な状況にいたのに何故今、普通に一族やガンマ団と接することが出来るのだろうか。
シンタローはそう常々疑問に思っていた。だから交換日記などと言うものにも肯定してしまったのだろう。
そしてグンマは純粋にキンタローの心配をしている。
きっとそれは常に己を案じてくれる人物がいたからなのだろうかと思い、
「まるで高松みたいだな……」
シンタローはキンタローの親の様なグンマの口ぶりに諦めたようにポツリと漏らした。
グンマはそれをシンタローなりの了承として受け取り、満足そうに微笑みながら
「僕がおとうさんでシンちゃんがおかあさんだね」
「ばーか。同じ歳ぐらいの息子なんていらねぇよ。それを言うなら俺が兄貴でオマエはキンタローの歳の離れた弟だろ?」
にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべグンマをからかう。
「なんで僕が弟になるの?!しかも『歳の離れた』って何!?僕、キンちゃんよりオトナだよ!」
「いいのかなぁ、そんな事いって?あいつ、頭よさそうだぜ?そんな風にいつまでもボケボケでいるとあっという間に抜かれちまうぜ?」
「あ、そーゆーシンちゃんはいいの?」
「いいの。俺は頭脳労働派じゃないからな。拳で語るから。あいつより強いしねー」
まだ、だけど。とは心の中だけに付け加える。
シンタローのその茶化した様子にグンマはシンタローも何だかんだ言っても結局はキンタローの事を
心配しているんだと嬉しく思う。
「僕ら、キンちゃんのいいおにいちゃんでいようね?そしてコタローちゃんが目を覚ましたら
3人でコタローちゃんの自慢のおにいちゃんになれるといいよね~。
おにいちゃんが3人もいたらコタローちゃん、今度こそ絶対に寂しい思いをさせないで済むから」
家族が増えるっていいよね、とグンマは童顔が更に幼くなるような笑みを浮かべる。
「ああ。そうだな」
シンタローはコタローが目を覚ました時を思い浮かべグンマに負けず劣らずの笑顔を浮かべる。
グンマは天邪鬼なシンタローを知っているだけに『コタロー』の事になると思ったことが直ぐ顔に出る
ブラコンな従兄弟にちょっと呆れたように呟く。
「もう、シンちゃんはコタローちゃんの事になると本当に素直だね」
「ほっとけ。俺は世界一の『コタコン』になるって前に誓ったんだ!
ぐっと握りこぶしをつくりなんか文句でもあんのかよ、と目に書いてグンマを睨みつける。
「ううんー、頑張ってね、シンちゃん……」
コタローちゃん、目を覚ましたらシンちゃんに構い倒されて大変そう、とグンマはコタローの将来に同情した。
「でも交換日記って何を書けばいいんだよ?」
「その日あったこととそれに対してどう思ったかを簡単に書けばいいんじゃないの?
毎日一緒にいるわけじゃないから。ただしキンちゃんにもちゃんと分かるようにね。
僕はシンちゃんが何をしているか大雑把でも分かるけどキンちゃんは分からないと思うよ」
「でもさ、アイツも分かるんじゃないか?今までずっと見てたんだし」
「……じゃあ、何があってそれに対してどう思ったことが大切だよね。キンちゃんが何をどう思っているのか
を第一にしたいし。そっちの方をちゃんと書けば良いんじゃない?僕らがお手本にならなきゃね。
う~ん、……僕だったら今の実験がうまく言って嬉しいとか、高松が今日も出血多量になりすぎて心配したとか、
そんな感じになるけど。
あとはシンちゃんが今日もムリをして何だか顔色が悪いから心配、とかたまには弱音言ってくれもいいんじゃないかなぁとか」
グンマはそう言いながらちろっと上目遣いでシンタローの様子を伺うと
「後半のはいらん」
シンタローは思いっきり機嫌の悪そうな表情で切り捨てた。
「だいたいしょっぱなからそんな、なんつーかディープそうなの盛り込んだら絶対誤解するだろ。
前半の軽めの小学生のようなヤツでよくね?……でもそうすっと直接伝えればいいだろって気がするんだよなぁ、俺」
「う~ん。そうだよねぇ。でも僕、交換日記とか僕らが幼い頃にした事を同じようにしたいんだよねぇ」
「………そうだな。まずは俺らが子供の頃にした事、一つ一つしていくか」
「うん!皆で一つのことをするっていう事が楽しいからねっ!あとはキンちゃんがもっとこうしたいとか
ああしたいとか言ってくれたら、僕らはそれを全力でしようねっ!」
グンマは子供の純粋な気持ちがそのまま丸々残って大人になった、そんな笑顔を浮かべながら言う。
「そーだな」
二人で、キンタローの兄になるのもいいかもな、とシンタローは頷いた。
2007.8.14
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