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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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4巻のコタローを迎えに行くのを女体化だったらどーなるんだろーなーって妄想。
相変わらず題名思いつかないので無題。
「コタロー、お兄ちゃんだぞー!! 迎えに来た!!」
「『お兄ちゃん』ではなく『お姉ちゃん』の間違いではないのか?」
「るっせ、いいんだよ。 コタローは知らねぇんだからよ。」
「あと、その言葉遣い何とかならないのか?」
「これが俺だ!」
「もう4年も経つのに嘆かわしい。」
「ああ、るせーよ! お前も探せ。 コタロー探すのが先決だろーが! 」
「勿論コタローを探すのが目的だ。 が、その言葉遣いは直してくれ。」
ガンマ団の飛行艦が着陸した浜辺に駆けつけた。
そこには長い黒髪の赤い軍服、上には黒いコート肩に引っ掛けている人間が、
この島には不釣合いなスーツを着た金髪の男性と言い争っていた。
いや、声の高い方の人物が一方的に怒鳴っているのか?
二人とも今は後ろを向いているので顔は見えない。
再び、コタローと名前を叫ぶ声が聞こえる。
「コタロー!!」
ロタローにコタローだと思い出させてはいけないと、気がついたときには頭を蹴っていた。
「でっ!」
俺が蹴った相手は一声上げ、砂浜に顔を突っ込んでいた。
赤い服。よくよく考えたら、ガンマ団で赤い服を着ても良いのはただ一人。
しかも男にしては華奢だ。そういえば、声も男にしては高かった。・・・・まさか女性?
サァーっと血の気が引く。俺、女の人を足蹴にしてしまった!
眩暈を起こしかけたとき、女性が連れていた男性があわてて駆け寄り、腕を引っ張り上て身を起こすのが目に入った。
「大丈夫か?シンタロー。」
言いながら、ポケットから柔らかそうな白いハンカチを取り出し、顔に付いた砂を優しく払っている。
女性はおとなしくされるがままになっている。罪悪感が生まれる。
髪に付いた砂も払い、満足したのか、その男性が、ギンっと睨みつけてくる。
あまりの迫力に体が動かない。
気のせいか、目が薄っすらと青く輝いているように見える。
動いたら殺される。そんな気がした。
俺が固まって動けないでいると、赤い服を着た女性が、
「ああ、いいキンタロー。俺が自分でやるから。」
傍らのキンタローと呼ばれた男性を片腕で制し、俺に向かって歩いてくる。
砂浜の上を歩いていると言うのに、体重を感じさせない動きで一気に目の前に近づく。
がっと乱暴に胸倉を掴まれ、顔をぐぐっと近づけられる。
「え、あの・・・」
あ、好みかも。下から睨みつけられる感じが堪らない、とか場違いなのんきな事を思ってしまう。
久しぶりの女性らしい女性、しかも美人に見つめられ、いや睨まれているのだが、至近距離のため自然顔に熱が集まる。
そんな俺に構わずに、さらに顔を寄せてくる。
先ほどとは違った意味で動けなくなってしまった。
突然にこっと笑うと、女性が手を離しスッすばやく身を引くと同時に、頭部に衝撃。遅れて痛みが走る。
「ああぁ!?イキナリ人を足蹴にして侘びのひとつもねーのかよ。お前の上司はどんな教育をしてたんだ?」
今度は俺が先ほどの叫んでいるこの人のように、砂に頭を突っ込みながら言葉を聞く。
ぽんっと頭に、金貸してくれ~と蛇のような舌をチロチロ出し、たかる元上司が浮かぶ。
ガバっと身を起こし叫ぶ。
「獅子舞には教育されていません!ただ、せびられていただけっす!」
俺のきっと必死になっていた形相に気を殺がれたのだろうか、興味がなさそうに呟く。
「ふん。まあいいけどよ。」
「お前リキッドだよな?この島の新しい番人になったんだってな?」
「ああ、はい。そうっす!でもよく知ってますねー。」
「ウチにはお前が追い出した元赤の番人がいるんだよ。」
心なしか、言葉にとげを感じる。
「んなことより、コタローはどこだ?」
「コタローを連れ戻しに着たんすか?」
「あったり前だろうが。あれから初めて目が覚めたんだぞ!?」
あれとは、4年前のコタローの暴走のことだろう。
コタローの事も大切だが、さっきからひとつ疑問がある。
間違いなく、総帥の子供は男性だったはず。4年前にも直接会っている。
そのまま思っていたことを口にした。
「あの~、つかぬ事を伺いますが、総帥のご子息のシンタローさんっすよね?」
「ああ!?そうだよ。コタローの兄だからな。」
予想していた通りの答えが返ってくる。が、
「・・・あの、どっからどうみても、ご息女なんすけど・・・」
「・・・ああ、そうか。そうだよな。」
はたっと気づいたように、一人で納得している。
一人で納得されても俺にはサッパリわからない。
「あの~」
また同じ事を口にする。
「うん。気にするな。」
にっこりと爽やかに言い切られた。
「はぁ。」
気にするなといわれて気にせずにいられようか。
同一人物なのに、性別が違うのだ。
が、再び訊ねられるような雰囲気ではない。顔は笑っているが目がすわっている。
「キンタロー。」
シンタローさんの後ろに控えていた、紳士に呼びかける。
「何だ?」
「説明する必要ないからな。」
「わかっている。」
相変わらず、睨みつけられている。外見は紳士なのだが、こちらの人物も怖い。
先ほど思いっきり蹴ってしまったのが悪かったのだろう。
あ、まだ謝っていない。
「あ、あの・・・」
謝罪しようと口を開いたが、当の本人に遮られた。
「おい、そこのオッサン!」
今度は、俺の背後に向かい怒鳴る。
「んだよ。」
「覗き見なんかしてねーで、さっさと出てこいよ。」
「はいはい。わーったよ。」
獅子舞が茂みの中から、のそっと現れる。
「よう、久しぶりだな?」
「別に会いたくなんかなかったけどよ。」
「相変わらず口の減らねぇ甥っ子だな?んや姪っ子か?」
言うと獅子舞はニタァと笑う。
あ、この笑いあの時と一緒。金をせびる時とか、いびられる時とか。
もう落ち着いてもいい年をとっくに過ぎているのに。
「んん~、まだ女のままだな?どうよ?人生楽しんでるか?」
人をからかうのが生きがいだものなぁ、この人。
矛先が俺じゃないから、のんびりと傍観できる。
「馬鹿言えっ!楽しいはずないだろっ!」
「そーか。楽しいか。よかったなぁ。叔父さんは嬉しいぞ。」
「どこに耳つけてんだよ、オッサン!」
「どこって、ここ。」
向かい合っていたシンタローさんの横に顔を持っていき、耳たぶをベロっとなめる。
「・・・。死ね。」
シンタローさんが腕を突き出した。が、技を繰り出すより早く、
青く輝くエネルギー体が彼女のギリギリ横をすごい勢いで通り過ぎた。
しかし、ハーレム隊長はシンタローさんのほぼ正面に立っていた為、隊長の洋服をわずかに掠っただけだ。
少し後ろに控えていた紳士が放ったのだろう。問答無用だなぁ。
「おーこわ。」
焦げて穴の開いた腕の部分を見ながら隊長が、笑いながら呟く。
まったく怖がっているようには見えない。
「挨拶が遅くなった。元気か叔父貴。」
一見紳士っぽく見える人が、何事もなかったように隊長に声をかける。
隊長もサラッと応じる。さすがは図太い。
「よお、キンタロー。ご覧のとおり元気だぞ。今お前に殺されかけたがな。」
「外してやったんだ。親族殺しはしたくないからな。」
よく言うわ、と隊長は軽く笑う。
「まあ、二人とも元気そうでなによりだな。」
「アンタもな。」
「何でアンタここにいるの?」
「ちょっとバカンスにな。」
ウソだ。
「ウソ吐け」
心の中のツッコミと被る。なんとなく嬉しく思う。
「まあ、いいわ。」
ふいっと隊長から俺の方を見る。
「おい。」
「は、ハイ。」
青の一族の様子を人事のように眺めていたので反応が遅れた。
「なんすか?」
「コタローのところに連れて行け。」
うわ、命令形。さすがはコタローのお兄さん。いや、お姉さん。
美人だろうが、怖かろうが、ここで素直にハイとは言えない。俺は番人だ。
「・・・駄目っす・・・」
「ああ!?んだとコラ!」
凄まれる。思わず一歩後ろに下がってしまう。
「リキッド、コタローの所に案内してやれや。」
更に隊長までもがシンタローさんの加勢へとまわる。
おまけに、先ほどと同様に、紳士からも睨まれる。
うわぁ、勝ち目なさそう・・・つい弱気になる。
「え、でも・・・」
「ああ!?上司の言うことがきけねぇってのか!?」
「元、っす。元。」
「え~何~?聞こえないなぁ。」
ワザとらしく声を張り上げ、首を締め付けてくる。
ボソッと耳元で真剣な声色で囁かれた。
「心配するな。コタローにとって悪いことはしない。」
「えっ?」
「もう、4年前とは違う。それにアレは究極のブラコンだ。」
「コラ、そこの獅子舞!聞こえってゾ!」
「へっ、本当のことだろうが。ブラコン。」
「うっせ、ブラコンで何が悪い!」
「うわ~、開き直った。」
隊長はあんなんだか、一族のことを誰よりも考えている。
さっきの言葉に嘘はないだろう。心を決める。
「・・・分かりました!行きましょう!」
じゃれている二人と傍観している一人に、気合と共に声を掛けた。
「それでこそ、部下だ。」
「あんたにしては、結構まともな部下だよなぁ」
シミジミとシンタローさんが呟いている。
心の中で、力強く頷いた。
また二人が言い争いを始める。
会うのが久しぶりだから、嬉しいのだろう。そんな雰囲気が伝わってきた。
コタローはたぶんパプワたちと一緒に家で遊んでいるだろう。
3人を引き連れ、家へと向かった。
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続き。
パプワハウスの小さめのちゃぶ台を、6人と1匹が囲む。
シンタロー、コタロー、パプワ、チャッピー、リキッド、ハーレム、キンタローという順だ。
「お、おにいちゃん?えーっと、おにいちゃんだよね?綺麗なおねえさんになっているけど・・・」
自信が無いのか、コタローは首をかしげる。
それはそうだろう。人は生きているうちに外見ごと完璧に性別は変わらない。背も声もすべて変わっているのだ。
その最愛の弟の小首を傾げる可愛さに、思わずうっと鼻を押さえるシンタロー。
コタローはまた不思議そうに訊ねる。
「おにーちゃん?」
そんな二人のほほえましい、とも言えなくも無い様子に外野がヒソヒソと会話をする。
「ホラ、言ったろ。あいつブラコンだから。」
「・・・姉弟になったぶん、危険度が高いな。」
「女の人になってもシンタローはシンタローだな。」
「わぁぅ」
「コタローの前では別人っすね・・・」
全員言いたい放題だ。
キンタローは危ないことをサラっといいのける。青の一族には禁忌は存在しないのかもしれない。
幸いなことに、弟以外に目の行っていないシンタローにはこの声は届いていない。
外野でそんなことを言い合っているうちに二人の会話は進んでいく。
「コタロー、俺の事お兄ちゃんって呼んでくれるのか?」
シンタローにしては珍しく、自信がなさそうに小さな弟へと問いかける。
「あったりまえだよ!僕のおにいちゃんじゃない!」
コタローは何でそんな当たり前の事を訊くのか、と少し怒っているようだ。
が、その後に小さな声で付け加える。
「・・・えっと、でもその姿でおにいちゃんって呼ぶの変だよね? おねえちゃんって呼んでもいい?」
「勿論だ!コタローになら、おにーちゃんなんて呼ばれてもいいぞぉ。」
あのとき以来シンタローとコタローとが会話らしい会話をしたのは初めてだ。
ごく自然に、コタローはシンタローのことを兄、いや、姉と認めた。
それがシンタローには嬉しかったのだろう。特にずっと気に病んでいたことだ。
安心したためか、先程より顔が緩んでいる。目じりはこれでもかと言わんばかりに垂れ下がり、
鼻の下までのばし、せっかくの美貌が台無しだ。
そんな姉の嬉しそうな様子を見て、コタローは微笑む。
「こうして並んでいると、僕ら美人姉妹みたいだね?」
「そうだなぁ。綺麗だぞ~コタロー。おにーちゃん、いやおねーちゃんはコタローの隣に座れて嬉しいゾ!」
確かにコタローは美少女と言っても全く違和感がない。シンタローもコタローとは違うタイプの和的美人だ。
二人とも言っている事は正しいが、微妙に会話が噛み合っていない。
「あ、今『お姉ちゃん』って言いましたよ?」
聞きましたかっと三人と一匹を振り返る。
コクっと一同首を縦に振る。
「俺はこの四年でシンタローが、女だと認めた言葉を聞いたのは初めてだ・・・」
キンタローは心なしか、肩を落としながらつぶやく。
それを耳ざとく聞きつけたハーレムが、ぽんぽんっと慰めるようにキンタローの背中を叩く。
「あきらめろ、キンタロー。シンタローのアレは一種の病気だ。」
「分かってはいるが・・・」
と語尾を濁す。納得は出来ないのだろう。
「ま、気にすんなや。」
「隊長、意外に優しいんすねぇ。」
信じられないようなモノを見たように、リキッドが言う。
「俺は元から優しい。」
お前目腐ってるんじゃねーの?とリキッドの頭を小突く。
客観的に見て、扱いの差があることにハーレム自身は気づいていない様だ。
リキッドの下っ端体質の為か、それともハーレムの一族思いの為か、どちらかは分からない。
こちらの姉弟は相変わらず二人だけの世界を繰り広げている。
「僕、おにいちゃん、信じて待ってたんだからね?!」
ぷく~っと頬を膨らませる。
必ず迎えに行くと約束した。一応は約束は果たされたがあの時は混乱の極致だった。
コタローはハっとした表情を浮かべる。あの時自分がした事を思い出したのだろう。
「・・・あのときはごめんね?」
パプワ島に来てから、コタローは変わった。パプワやパプワ島の皆、あとはコタロー自身の力だろう。
根本的な性格は変わらないようだが。
「気にするな、コタロー。俺が不甲斐無いばかりにマジックを止めることが出来なかった。
むしろ謝らなきゃいけないのは俺だ。すまなかった。」
シンタローはそう言うと神妙に頭を下げる。
コタローはシンタローの頭を下げる姿を驚いて見つめる。
「や、やめてよおにいちゃん。おにいちゃんが頭を下げるなんて似合わないよ!」
止めさせようと、ぐいぐいと腕を引っ張る。
うっすらと記憶に残っている昔の兄の硬い腕とは異なる感触。
「コタロー。」
「なぁに?」
「ありがとう」
「いやだな、おにーちゃん。」
クスクスと楽しそうに笑う。
「謝ったり、お礼を言ったり、大変だね。」
「・・・そうだな・・・」
そんな楽しそうなコタローの様子に、シンタローも笑う。
姉弟の一段落ついた様子を見て、リキッドが声をかける。
「シ、シンタローさん・・・」
「あ!?なんだよ!」
眼光鋭く、ギロっとリキッドを見る。コタローとは天と地ほど差のある態度だ。
折角の弟との穏やかな時間を邪魔されて、余計ぞんざいな態度になっているのだろう。
リキッドは何もしていないのに何故怒られなければいけないのかと、心の中で諾々涙を流す。
勿論それを声に出して言う勇気は無い。が、それとは別にどうしても言いたい事があるようだ。
「やっぱり、連れて帰っちゃうんすよね・・・・」
「ああ。」
「大丈夫なんすか?ここに残った方が・・・」
不安そうに尋ねる。リキッドにとってコタローは家族とも言える関係だ。
以前の境遇を知っているだけに心配なのだろう。
シンタローはリキッドにみなまで言わせない。
「ここにいる方が、コタローは幸せかもしれない。でもそれじゃ駄目なんだよ。
・・・万が一何かあっても今度こそ、コタローの兄としての役目を果たす。」
ハーレムもリキッドの心配を打ち消すように言葉をかける。
「大丈夫だよ。シンタローにキンタロー。この二人がいればな。俺もいるからな。」
その言葉を聞き、驚いたようにシンタローがハーレムを見る。
「んだよ、シンタロー。」
少し不機嫌そうに言う。子供が臍を曲げているよな態度にも見える。
「いや、なんでもない。」
そう答えるシンタローの口元は少し笑っていた。
更に横からコタローも口を挟む。
「家政夫!僕はオマエに心配されるほど落ちちゃいないよ!」
少し考えてから辛うじて聞き取れるかというぐらいの小声で言葉を繋ぐ。
「・・・ありがとうリキッド。」
「コタロー・・・」
素直とは言えないがコタローの精一杯の感謝の気持ちなのだろう。
リキッドはじんわりと胸が温かくなった。
「でも!僕のおにいちゃん、じゃないや、おねえちゃんに気安く話しかけないでよねっ」
コタローもパプワ島に着いた頃に比べると、随分と可愛くなったなぁと浸っていると
水を差すように言葉が飛んでくる。
「えっ?なんで?」
リキッドは気安く話しかけているつもりはない。むしろ常に緊張を伴っているのではないか。
「家政夫。おねえちゃんを見る目がヤダ。」
子供はとても正直だ。ズバッと言い切る。その言葉がリキッドの胸に突き刺さる。
コタローの言葉を聞き、周りの視線もリキッドに突き刺さる。特に一部からの視線がとても痛そうだ。
「ほぉお、リッちゃんにも春が来たんだねぇ。」
「来たと同時に冬だ。常冬だ。」
「うん。僕もそう思うけど。一応ね。」
青の一族はさすが一族だけあって皆気が合うようだ。新しいおもちゃを見つけたようにとても楽しそうだ。
「そ、そんなこと無い!久しぶりに見た人間の女、しかも綺麗だったから
ちょと目がいっちゃうだけじゃないか!あんな怖い人、勘弁っす!」
思わず立ち上がり、拳をつくって叫ぶ。
ごん、と鈍い音が部屋に響く。リキッドが撃沈する。
いつの間にか背後に立っていたシンタローに殴られたようだ。その拳が全てを語っている。
「こっちから願い下げだ、あほ。」
そういい捨てるとまたコタローの隣に腰を落とす。
倒れたリキッドをつんつんとパプワが突付く。
まだ起き上がれないまま、顔だけパプワへと向けるリキッド。
「うん?何だパプワ?」
「リキッド、諦めろ。」
一言、トドメをさした。リキッドは再び地面とお友達になった。
「パプワ。」
シンタローはリキッドのそんな様子はほっとき、改まってパプワに声をかける。
「なんだ?」
家政夫にトドメをさして満足したのだろうか、シンタローの元へとトコトコ歩いていく。
「すまねぇな。兄弟ともども世話になっちまってさ。」
少しムッとした様にパプワが応じる。
「僕はとても楽しかった。友達も増えたしな。友達同士でそんなことを言うなんておかしいぞ。」
「言われてみりゃ、そうだな。じゃあ・・・ありがとう、かな?」
「ああ。」
パプワは今度は素直にシンタローの言葉を受け取った。
「また遊びに来い。僕らはいつまでも友達だからな。」
「そうだな。」
くしゃっとパプワの硬めの髪を掻き回す。
「今日は泊まっていけ。」
「そうだな。そうさせてもらうよ。」
にっこりと応じる。
パプワも嬉しそうにする。チャッピーは久しぶりにシンタローの膝の上へと座る。
チャッピーにはかじられてばかりだがやはり可愛いのだろう、優しい手つきで撫でる。
別れの前の賑やかな夜を向かえそうだ。
H16.6.27
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4巻のコタローを迎えに行くのを女体化だったらどーなるんだろーなーって妄想。
相変わらず題名思いつかないので無題。
「コタロー、お兄ちゃんだぞー!! 迎えに来た!!」
「『お兄ちゃん』ではなく『お姉ちゃん』の間違いではないのか?」
「るっせ、いいんだよ。 コタローは知らねぇんだからよ。」
「あと、その言葉遣い何とかならないのか?」
「これが俺だ!」
「もう4年も経つのに嘆かわしい。」
「ああ、るせーよ! お前も探せ。 コタロー探すのが先決だろーが! 」
「勿論コタローを探すのが目的だ。 が、その言葉遣いは直してくれ。」
ガンマ団の飛行艦が着陸した浜辺に駆けつけた。
そこには長い黒髪の赤い軍服、上には黒いコート肩に引っ掛けている人間が、
この島には不釣合いなスーツを着た金髪の男性と言い争っていた。
いや、声の高い方の人物が一方的に怒鳴っているのか?
二人とも今は後ろを向いているので顔は見えない。
再び、コタローと名前を叫ぶ声が聞こえる。
「コタロー!!」
ロタローにコタローだと思い出させてはいけないと、気がついたときには頭を蹴っていた。
「でっ!」
俺が蹴った相手は一声上げ、砂浜に顔を突っ込んでいた。
赤い服。よくよく考えたら、ガンマ団で赤い服を着ても良いのはただ一人。
しかも男にしては華奢だ。そういえば、声も男にしては高かった。・・・・まさか女性?
サァーっと血の気が引く。俺、女の人を足蹴にしてしまった!
眩暈を起こしかけたとき、女性が連れていた男性があわてて駆け寄り、腕を引っ張り上て身を起こすのが目に入った。
「大丈夫か?シンタロー。」
言いながら、ポケットから柔らかそうな白いハンカチを取り出し、顔に付いた砂を優しく払っている。
女性はおとなしくされるがままになっている。罪悪感が生まれる。
髪に付いた砂も払い、満足したのか、その男性が、ギンっと睨みつけてくる。
あまりの迫力に体が動かない。
気のせいか、目が薄っすらと青く輝いているように見える。
動いたら殺される。そんな気がした。
俺が固まって動けないでいると、赤い服を着た女性が、
「ああ、いいキンタロー。俺が自分でやるから。」
傍らのキンタローと呼ばれた男性を片腕で制し、俺に向かって歩いてくる。
砂浜の上を歩いていると言うのに、体重を感じさせない動きで一気に目の前に近づく。
がっと乱暴に胸倉を掴まれ、顔をぐぐっと近づけられる。
「え、あの・・・」
あ、好みかも。下から睨みつけられる感じが堪らない、とか場違いなのんきな事を思ってしまう。
久しぶりの女性らしい女性、しかも美人に見つめられ、いや睨まれているのだが、至近距離のため自然顔に熱が集まる。
そんな俺に構わずに、さらに顔を寄せてくる。
先ほどとは違った意味で動けなくなってしまった。
突然にこっと笑うと、女性が手を離しスッすばやく身を引くと同時に、頭部に衝撃。遅れて痛みが走る。
「ああぁ!?イキナリ人を足蹴にして侘びのひとつもねーのかよ。お前の上司はどんな教育をしてたんだ?」
今度は俺が先ほどの叫んでいるこの人のように、砂に頭を突っ込みながら言葉を聞く。
ぽんっと頭に、金貸してくれ~と蛇のような舌をチロチロ出し、たかる元上司が浮かぶ。
ガバっと身を起こし叫ぶ。
「獅子舞には教育されていません!ただ、せびられていただけっす!」
俺のきっと必死になっていた形相に気を殺がれたのだろうか、興味がなさそうに呟く。
「ふん。まあいいけどよ。」
「お前リキッドだよな?この島の新しい番人になったんだってな?」
「ああ、はい。そうっす!でもよく知ってますねー。」
「ウチにはお前が追い出した元赤の番人がいるんだよ。」
心なしか、言葉にとげを感じる。
「んなことより、コタローはどこだ?」
「コタローを連れ戻しに着たんすか?」
「あったり前だろうが。あれから初めて目が覚めたんだぞ!?」
あれとは、4年前のコタローの暴走のことだろう。
コタローの事も大切だが、さっきからひとつ疑問がある。
間違いなく、総帥の子供は男性だったはず。4年前にも直接会っている。
そのまま思っていたことを口にした。
「あの~、つかぬ事を伺いますが、総帥のご子息のシンタローさんっすよね?」
「ああ!?そうだよ。コタローの兄だからな。」
予想していた通りの答えが返ってくる。が、
「・・・あの、どっからどうみても、ご息女なんすけど・・・」
「・・・ああ、そうか。そうだよな。」
はたっと気づいたように、一人で納得している。
一人で納得されても俺にはサッパリわからない。
「あの~」
また同じ事を口にする。
「うん。気にするな。」
にっこりと爽やかに言い切られた。
「はぁ。」
気にするなといわれて気にせずにいられようか。
同一人物なのに、性別が違うのだ。
が、再び訊ねられるような雰囲気ではない。顔は笑っているが目がすわっている。
「キンタロー。」
シンタローさんの後ろに控えていた、紳士に呼びかける。
「何だ?」
「説明する必要ないからな。」
「わかっている。」
相変わらず、睨みつけられている。外見は紳士なのだが、こちらの人物も怖い。
先ほど思いっきり蹴ってしまったのが悪かったのだろう。
あ、まだ謝っていない。
「あ、あの・・・」
謝罪しようと口を開いたが、当の本人に遮られた。
「おい、そこのオッサン!」
今度は、俺の背後に向かい怒鳴る。
「んだよ。」
「覗き見なんかしてねーで、さっさと出てこいよ。」
「はいはい。わーったよ。」
獅子舞が茂みの中から、のそっと現れる。
「よう、久しぶりだな?」
「別に会いたくなんかなかったけどよ。」
「相変わらず口の減らねぇ甥っ子だな?んや姪っ子か?」
言うと獅子舞はニタァと笑う。
あ、この笑いあの時と一緒。金をせびる時とか、いびられる時とか。
もう落ち着いてもいい年をとっくに過ぎているのに。
「んん~、まだ女のままだな?どうよ?人生楽しんでるか?」
人をからかうのが生きがいだものなぁ、この人。
矛先が俺じゃないから、のんびりと傍観できる。
「馬鹿言えっ!楽しいはずないだろっ!」
「そーか。楽しいか。よかったなぁ。叔父さんは嬉しいぞ。」
「どこに耳つけてんだよ、オッサン!」
「どこって、ここ。」
向かい合っていたシンタローさんの横に顔を持っていき、耳たぶをベロっとなめる。
「・・・。死ね。」
シンタローさんが腕を突き出した。が、技を繰り出すより早く、
青く輝くエネルギー体が彼女のギリギリ横をすごい勢いで通り過ぎた。
しかし、ハーレム隊長はシンタローさんのほぼ正面に立っていた為、隊長の洋服をわずかに掠っただけだ。
少し後ろに控えていた紳士が放ったのだろう。問答無用だなぁ。
「おーこわ。」
焦げて穴の開いた腕の部分を見ながら隊長が、笑いながら呟く。
まったく怖がっているようには見えない。
「挨拶が遅くなった。元気か叔父貴。」
一見紳士っぽく見える人が、何事もなかったように隊長に声をかける。
隊長もサラッと応じる。さすがは図太い。
「よお、キンタロー。ご覧のとおり元気だぞ。今お前に殺されかけたがな。」
「外してやったんだ。親族殺しはしたくないからな。」
よく言うわ、と隊長は軽く笑う。
「まあ、二人とも元気そうでなによりだな。」
「アンタもな。」
「何でアンタここにいるの?」
「ちょっとバカンスにな。」
ウソだ。
「ウソ吐け」
心の中のツッコミと被る。なんとなく嬉しく思う。
「まあ、いいわ。」
ふいっと隊長から俺の方を見る。
「おい。」
「は、ハイ。」
青の一族の様子を人事のように眺めていたので反応が遅れた。
「なんすか?」
「コタローのところに連れて行け。」
うわ、命令形。さすがはコタローのお兄さん。いや、お姉さん。
美人だろうが、怖かろうが、ここで素直にハイとは言えない。俺は番人だ。
「・・・駄目っす・・・」
「ああ!?んだとコラ!」
凄まれる。思わず一歩後ろに下がってしまう。
「リキッド、コタローの所に案内してやれや。」
更に隊長までもがシンタローさんの加勢へとまわる。
おまけに、先ほどと同様に、紳士からも睨まれる。
うわぁ、勝ち目なさそう・・・つい弱気になる。
「え、でも・・・」
「ああ!?上司の言うことがきけねぇってのか!?」
「元、っす。元。」
「え~何~?聞こえないなぁ。」
ワザとらしく声を張り上げ、首を締め付けてくる。
ボソッと耳元で真剣な声色で囁かれた。
「心配するな。コタローにとって悪いことはしない。」
「えっ?」
「もう、4年前とは違う。それにアレは究極のブラコンだ。」
「コラ、そこの獅子舞!聞こえってゾ!」
「へっ、本当のことだろうが。ブラコン。」
「うっせ、ブラコンで何が悪い!」
「うわ~、開き直った。」
隊長はあんなんだか、一族のことを誰よりも考えている。
さっきの言葉に嘘はないだろう。心を決める。
「・・・分かりました!行きましょう!」
じゃれている二人と傍観している一人に、気合と共に声を掛けた。
「それでこそ、部下だ。」
「あんたにしては、結構まともな部下だよなぁ」
シミジミとシンタローさんが呟いている。
心の中で、力強く頷いた。
また二人が言い争いを始める。
会うのが久しぶりだから、嬉しいのだろう。そんな雰囲気が伝わってきた。
コタローはたぶんパプワたちと一緒に家で遊んでいるだろう。
3人を引き連れ、家へと向かった。
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パプワハウスの小さめのちゃぶ台を、6人と1匹が囲む。
シンタロー、コタロー、パプワ、チャッピー、リキッド、ハーレム、キンタローという順だ。
「お、おにいちゃん?えーっと、おにいちゃんだよね?綺麗なおねえさんになっているけど・・・」
自信が無いのか、コタローは首をかしげる。
それはそうだろう。人は生きているうちに外見ごと完璧に性別は変わらない。背も声もすべて変わっているのだ。
その最愛の弟の小首を傾げる可愛さに、思わずうっと鼻を押さえるシンタロー。
コタローはまた不思議そうに訊ねる。
「おにーちゃん?」
そんな二人のほほえましい、とも言えなくも無い様子に外野がヒソヒソと会話をする。
「ホラ、言ったろ。あいつブラコンだから。」
「・・・姉弟になったぶん、危険度が高いな。」
「女の人になってもシンタローはシンタローだな。」
「わぁぅ」
「コタローの前では別人っすね・・・」
全員言いたい放題だ。
キンタローは危ないことをサラっといいのける。青の一族には禁忌は存在しないのかもしれない。
幸いなことに、弟以外に目の行っていないシンタローにはこの声は届いていない。
外野でそんなことを言い合っているうちに二人の会話は進んでいく。
「コタロー、俺の事お兄ちゃんって呼んでくれるのか?」
シンタローにしては珍しく、自信がなさそうに小さな弟へと問いかける。
「あったりまえだよ!僕のおにいちゃんじゃない!」
コタローは何でそんな当たり前の事を訊くのか、と少し怒っているようだ。
が、その後に小さな声で付け加える。
「・・・えっと、でもその姿でおにいちゃんって呼ぶの変だよね? おねえちゃんって呼んでもいい?」
「勿論だ!コタローになら、おにーちゃんなんて呼ばれてもいいぞぉ。」
あのとき以来シンタローとコタローとが会話らしい会話をしたのは初めてだ。
ごく自然に、コタローはシンタローのことを兄、いや、姉と認めた。
それがシンタローには嬉しかったのだろう。特にずっと気に病んでいたことだ。
安心したためか、先程より顔が緩んでいる。目じりはこれでもかと言わんばかりに垂れ下がり、
鼻の下までのばし、せっかくの美貌が台無しだ。
そんな姉の嬉しそうな様子を見て、コタローは微笑む。
「こうして並んでいると、僕ら美人姉妹みたいだね?」
「そうだなぁ。綺麗だぞ~コタロー。おにーちゃん、いやおねーちゃんはコタローの隣に座れて嬉しいゾ!」
確かにコタローは美少女と言っても全く違和感がない。シンタローもコタローとは違うタイプの和的美人だ。
二人とも言っている事は正しいが、微妙に会話が噛み合っていない。
「あ、今『お姉ちゃん』って言いましたよ?」
聞きましたかっと三人と一匹を振り返る。
コクっと一同首を縦に振る。
「俺はこの四年でシンタローが、女だと認めた言葉を聞いたのは初めてだ・・・」
キンタローは心なしか、肩を落としながらつぶやく。
それを耳ざとく聞きつけたハーレムが、ぽんぽんっと慰めるようにキンタローの背中を叩く。
「あきらめろ、キンタロー。シンタローのアレは一種の病気だ。」
「分かってはいるが・・・」
と語尾を濁す。納得は出来ないのだろう。
「ま、気にすんなや。」
「隊長、意外に優しいんすねぇ。」
信じられないようなモノを見たように、リキッドが言う。
「俺は元から優しい。」
お前目腐ってるんじゃねーの?とリキッドの頭を小突く。
客観的に見て、扱いの差があることにハーレム自身は気づいていない様だ。
リキッドの下っ端体質の為か、それともハーレムの一族思いの為か、どちらかは分からない。
こちらの姉弟は相変わらず二人だけの世界を繰り広げている。
「僕、おにいちゃん、信じて待ってたんだからね?!」
ぷく~っと頬を膨らませる。
必ず迎えに行くと約束した。一応は約束は果たされたがあの時は混乱の極致だった。
コタローはハっとした表情を浮かべる。あの時自分がした事を思い出したのだろう。
「・・・あのときはごめんね?」
パプワ島に来てから、コタローは変わった。パプワやパプワ島の皆、あとはコタロー自身の力だろう。
根本的な性格は変わらないようだが。
「気にするな、コタロー。俺が不甲斐無いばかりにマジックを止めることが出来なかった。
むしろ謝らなきゃいけないのは俺だ。すまなかった。」
シンタローはそう言うと神妙に頭を下げる。
コタローはシンタローの頭を下げる姿を驚いて見つめる。
「や、やめてよおにいちゃん。おにいちゃんが頭を下げるなんて似合わないよ!」
止めさせようと、ぐいぐいと腕を引っ張る。
うっすらと記憶に残っている昔の兄の硬い腕とは異なる感触。
「コタロー。」
「なぁに?」
「ありがとう」
「いやだな、おにーちゃん。」
クスクスと楽しそうに笑う。
「謝ったり、お礼を言ったり、大変だね。」
「・・・そうだな・・・」
そんな楽しそうなコタローの様子に、シンタローも笑う。
姉弟の一段落ついた様子を見て、リキッドが声をかける。
「シ、シンタローさん・・・」
「あ!?なんだよ!」
眼光鋭く、ギロっとリキッドを見る。コタローとは天と地ほど差のある態度だ。
折角の弟との穏やかな時間を邪魔されて、余計ぞんざいな態度になっているのだろう。
リキッドは何もしていないのに何故怒られなければいけないのかと、心の中で諾々涙を流す。
勿論それを声に出して言う勇気は無い。が、それとは別にどうしても言いたい事があるようだ。
「やっぱり、連れて帰っちゃうんすよね・・・・」
「ああ。」
「大丈夫なんすか?ここに残った方が・・・」
不安そうに尋ねる。リキッドにとってコタローは家族とも言える関係だ。
以前の境遇を知っているだけに心配なのだろう。
シンタローはリキッドにみなまで言わせない。
「ここにいる方が、コタローは幸せかもしれない。でもそれじゃ駄目なんだよ。
・・・万が一何かあっても今度こそ、コタローの兄としての役目を果たす。」
ハーレムもリキッドの心配を打ち消すように言葉をかける。
「大丈夫だよ。シンタローにキンタロー。この二人がいればな。俺もいるからな。」
その言葉を聞き、驚いたようにシンタローがハーレムを見る。
「んだよ、シンタロー。」
少し不機嫌そうに言う。子供が臍を曲げているよな態度にも見える。
「いや、なんでもない。」
そう答えるシンタローの口元は少し笑っていた。
更に横からコタローも口を挟む。
「家政夫!僕はオマエに心配されるほど落ちちゃいないよ!」
少し考えてから辛うじて聞き取れるかというぐらいの小声で言葉を繋ぐ。
「・・・ありがとうリキッド。」
「コタロー・・・」
素直とは言えないがコタローの精一杯の感謝の気持ちなのだろう。
リキッドはじんわりと胸が温かくなった。
「でも!僕のおにいちゃん、じゃないや、おねえちゃんに気安く話しかけないでよねっ」
コタローもパプワ島に着いた頃に比べると、随分と可愛くなったなぁと浸っていると
水を差すように言葉が飛んでくる。
「えっ?なんで?」
リキッドは気安く話しかけているつもりはない。むしろ常に緊張を伴っているのではないか。
「家政夫。おねえちゃんを見る目がヤダ。」
子供はとても正直だ。ズバッと言い切る。その言葉がリキッドの胸に突き刺さる。
コタローの言葉を聞き、周りの視線もリキッドに突き刺さる。特に一部からの視線がとても痛そうだ。
「ほぉお、リッちゃんにも春が来たんだねぇ。」
「来たと同時に冬だ。常冬だ。」
「うん。僕もそう思うけど。一応ね。」
青の一族はさすが一族だけあって皆気が合うようだ。新しいおもちゃを見つけたようにとても楽しそうだ。
「そ、そんなこと無い!久しぶりに見た人間の女、しかも綺麗だったから
ちょと目がいっちゃうだけじゃないか!あんな怖い人、勘弁っす!」
思わず立ち上がり、拳をつくって叫ぶ。
ごん、と鈍い音が部屋に響く。リキッドが撃沈する。
いつの間にか背後に立っていたシンタローに殴られたようだ。その拳が全てを語っている。
「こっちから願い下げだ、あほ。」
そういい捨てるとまたコタローの隣に腰を落とす。
倒れたリキッドをつんつんとパプワが突付く。
まだ起き上がれないまま、顔だけパプワへと向けるリキッド。
「うん?何だパプワ?」
「リキッド、諦めろ。」
一言、トドメをさした。リキッドは再び地面とお友達になった。
「パプワ。」
シンタローはリキッドのそんな様子はほっとき、改まってパプワに声をかける。
「なんだ?」
家政夫にトドメをさして満足したのだろうか、シンタローの元へとトコトコ歩いていく。
「すまねぇな。兄弟ともども世話になっちまってさ。」
少しムッとした様にパプワが応じる。
「僕はとても楽しかった。友達も増えたしな。友達同士でそんなことを言うなんておかしいぞ。」
「言われてみりゃ、そうだな。じゃあ・・・ありがとう、かな?」
「ああ。」
パプワは今度は素直にシンタローの言葉を受け取った。
「また遊びに来い。僕らはいつまでも友達だからな。」
「そうだな。」
くしゃっとパプワの硬めの髪を掻き回す。
「今日は泊まっていけ。」
「そうだな。そうさせてもらうよ。」
にっこりと応じる。
パプワも嬉しそうにする。チャッピーは久しぶりにシンタローの膝の上へと座る。
チャッピーにはかじられてばかりだがやはり可愛いのだろう、優しい手つきで撫でる。
別れの前の賑やかな夜を向かえそうだ。
H16.6.27
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