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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
--------------------------------------------------------------------------------
薄いピンク色が基調の部屋。
大きな窓にレースのカーテンがゆれる。
ベッドには一人少年が眠る。
目を閉じていてもわかる綺麗な顔立ち。まるで少女のようだ。
枕元には愛らしいぬいぐるみ。
その少年にはぬいぐるみの存在がよくあう。
部屋を見渡せば他にも、まるでお人形遊びで使うかのようなチェストや机が
そのまま大きくなったかのような家具が配置されている。
ただ、それが使われているような気配は無い。
「コタローが眠りについて4年か・・・。」
「ああ。」
コタローと呼ばれた少年の眠るベッド脇に備えてあった椅子にすわる2人の人間。
一人はコタローの金の髪を白いしなやかな手で優しく撫でる。
もう一人は静かにコタローを見つめる。
コタローは相変わらず穏やかな顔のまま目を開く気配は無い。
「俺、不安になるんだよ。もうコタローはこのまま目を覚まさないんじゃないんのかってさ。」
「・・・。」
キンタローは答えない。構わずシンタローは続ける。
「もう4年。色々な方法を試したけど、全部駄目だった。
医者も匙を投げた。あとは自然に目を覚ますのを待つしかないってな。」
シンタローは梳いていた手を止め、動かないコタローをじっと見つめる。
「シンタロー」
キンタローが片割れに呼びかける。
「秘石に会いに行ってはどうか?」
「は?」
思わず聞き返す。
「だから秘石に、だ。俺たち一族の創造主に。」
「会ったところでどうなるってんだ。」
シンタローはこんな体に変えてしまった秘石に思わずハッと悪態を吐く。
「会えば何とかなるのではないか?創造主だしお前を見てもそれだけの力を持っているのはわかる。」
俺は、と言葉を続ける。
「コタローが目を覚まさないのは、コタローの体よりも心に問題があるのかと思っていた。
しかし、4年は長い。寝ている間にもコタローの時間は流れていく。待つ方も限界が近い。」
だから、と。
「でも、どこに行けばいいんだよ?前のパプワ島へは行けないぜ。
パプワも秘石連れてどっか行っちまったしな。」
「お前が居れば問題ない。」
妙に自身をもって言い切るキンタロー。
「あ?俺?」
不思議そうに黒の目をキンタローに向ける。
それを受け理由を話す。
「そう。お前の体は秘石の発するエネルギーと同じ波動だ。だからそれを元に探索機を作れば。」
「そこまで解っていて、何で今まで黙ってたんだよ!」
思わず立ち上がり、声を荒げキンタローの襟を両手で掴む。
自然、キンタローを上から見下ろす形となる。シンタローの長い髪がキンタローの頬へと掛かる。
キンタローは僅かに濃い青をした目を細めただけで払いのけようとはしない。
「お前が躊躇していたからだ。」
キンタローの掴んでいたシンタローの手から力が抜ける。
その手をつかみ、立ったままのシンタローを見上げ、続ける。
「あの島は楽園だったのだろう?
今までの状態であそこ行ったら、楽園へと逃げ込む事になるかもしれない。
大切な場所だからこそ、遠ざけてしまう。」
違うか?と
「・・・。」
「もう行ってもいいのじゃないか。ここでのすることもあるし、あちらへと留まる心配は無いと思う。
コタローの事が解決したら、その体の事も聞けばいい。
俺はどちらでもシンタローには変わらないからいいのだけどな。」
キンタローは掴んだままのシンタローの手を引っ張り椅子に座らせる。
大人しくそれに従うシンタロー。
「・・・行ってもいいだろうか・・・。」
ポツリと言葉が漏れる。
「ああ。誰もお前を咎めない。」
力づけるようにキンタローはシンタローの手をギュッと包み込む。
シンタローは握られた手を見つめしばし考える。
誰よりも理解しているキンタローの言に頷く。
「勿論俺も行くぞ。」
「ああ、分かってる。技術者は必要だ。キンタローなら心強い。それにお前妙に過保護だしな。」
子供じゃないのにな、と苦笑をもらす。
「で、その装置とやらはどのくらいで完成するんだ?」
「案ずるな。実はもう出来ている。」
「はぁ?!出来てる?!」
うむ。とキンタローは頷く。
「完成しているなら、もうちっと早く言ってくれよ。」
シンタローの肩が、疲れたようにがくっと落ちる。
「可能性だけ示しもし完成出来なかったら期待するだけ失望も大きい。
お前やマジック、他のコタローの目が覚めるのを待っている人間に
そんな思いはさせたくなかったからな。」
ひょいっと肩をすくめ続ける。
「いや、実はな。最近思いついてこの間完成したばかりだった。
最初はコタローの脳に直接働きかける機械を作っていたのだがな。
心を閉ざしているかもしれないコタローにはやはりその方法は危険も伴う。
目を覚まさせるのに危険な事は冒せない。他に何か良い方法は無いかと思案していた。
ふと思ったんだ。秘石に直接会えれば。とな。」
「そうか。・・・コタローはどうするんだ?連れて行く必要はあるか?」
キンタローは首を横に振る。
「いや、もし道中何かあったら自分で対処できないコタローは危険過ぎる。
お前のときは夢に現れて、そのまま力が作用したんだ。本部のままで大丈夫だろう。」
「分かった。準備が出来次第出発するぞ。」
シンタローはその準備を思い、思いきり嫌そうな表情を浮かべる。
秀麗な眉目には皺が寄る。
「引退したマジックに借りをつくるのは嫌なんだがな。仕方がないな。コタローのためだ。代行を頼むか。」
「そうすると良いだろう。マジックは尤も適任だ。
コタローの為だし、シンタローの頼みなら絶対に快諾する。」
「コタロー。もう少し待っててくれ。」
シンタローはコタローの子供特有の柔らかな頬を一撫でし、気合をいれ立ち上がる。
「よし、これからの根回しに行くか。」
キンタローも続き立ち上がる。
「分かった。」
去り際にコタローを振り返る。
二人がドアの向こうへと消えた。
コタローは昏々と眠り続ける。
部屋はまた静寂に包まれた。
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緑豊かなその小さな島は透き通った煌めく青に彩られている。
見るもの全てに夢の島ではないだろうかと思わせる力がその島にはある。
基本的に島は熱帯なのだが何故か四季が存在し、更に不思議な事に4つの季節が混在している。
この島の動物は一匹を除き皆喋る。
愛らしい小動物から、毒を吐くが憎めないナマモノまで様々な生き物が住んでいる。
喋る時点で想像付くだろうが、この島には生態系は存在しない。
人間は2人だけだ。
島の主と言ってよい赤の一族の血をもつ超人的な少年パプワ。
この島と喋る動物たちに惚れ込み、新たな番人となった元ガンマ団特戦部隊の軍人リキッド。
島内の殆どが鬱葱と木々が茂る。が一部森が拓けた場所がある。
そこに島で唯一の家、パプワハウスが建っている。
動物の顔を模ったおもちゃの家の様な外観だ。
ここにパプワとリキッドは暮らして居る。
「来た。」
パプワの表情は殆ど変わらない。
4年間一緒に過ごして、リキッドもやっとパプワの微かな表情が読めるようになった。
「ん?何がだ?そんなに嬉しそうに言うなんて珍しいよな?」
どうやらリキッドから見たら、パプワは珍しいくらい嬉しい表情らしい。
リキッドの問いには答えずに、ドアを開け家の外に出る。
「え、パプワ?どこ行くんだよ?」
行き成り外に飛び出したパプワの後を追う。
パプワは空を睨んでいる。
リキッドもパプワに倣い空を見上げる。
空を見渡すと飛行艦が空に浮かんでいる。
先端には円の中に六芒星。その中心に〝G〝の文字。間違いなくガンマ団だ。
そのまま軍艦を目で追い、着陸するであろう海岸を確認する。
「ガンマ団!?なんでこの島に!?」
パプワ、とリキッドは振り返る。
「!?パプワ?」
リキッドが振り返ったときには既にパプワは居なかった。
風圧で穏やかな海が波打ち、木々が音をたてて激しく揺れる。
飛行艦がゆっくりと地面に降り立つ。
風をものともせず、パプワは少し離れたところからそれを見守っていた。
ヴィーと軽い機械音をたて艦のハッチが開く。
赤いスーツに身を包まれた女性と、シックなスーツを着た男性が現れる。
カンカンと階段を下りる音がパプワの耳に聞こえる。
パプワはハッチに向けて走り出す。
女性が砂を踏みしめると同時に抱きついた。
「シンタローっ!」
シンタローと呼ばれた女性も嬉しそうにパプワを抱き上げる。
「パプワ!元気にしてたか?」
「当たり前だ!僕を誰だと思っているんだ?」
子供らしからぬ態度で答える。
シンタローはそんな相変わらずな態度に目を細め嬉しそうにみる。
「変わってねぇなぁ。」
「シンタローはずいぶんと変わったな。綺麗だぞ。」
「パプワにんな事褒められても嬉しかねーよ。」
そんな事を言いつつもシンタローの顔は相変わらず満面の笑みを浮かべている。
「感動の再会はそれまでにして、要件だ。」
後ろに控えていたキンタローが、シンタローのパプワを抱きかかえている腕をぐいっと引っ張る。
キンタローとパプワの目が合う。
キンタローの瞳が青く輝き、パプワの瞳も赤く輝く。
両者ともに『シンタローに触るな』、と威嚇する。
二人の視線をずらすように、抱きかかえていたパプワを地面に下ろす。
「おい、キンタロー子供相手に何してんだよ。」
「別に何もしていない。」
ふっと息を吐く。
「まぁ、いいけどよ・・・」
「さて。パプワ。俺がパプワ島に来た理由なんだが」
シンタローを遮る様にパプワが口を開く。
「分かっている。赤い玉と青い玉に会いに来たんだろう?」
「お?何で分かるんだ?」
「僕が来るように赤い玉にお願いしたからな。そのくらいは分かる。」
「お願いした?どういうことだ?」
「後で分かる。玉のところまで行くぞ。」
ザクザク砂を鳴らして、パプワが二人を先導する。
艦から歩く事しばし。海岸の直ぐ近くの木々の間にそれはあった。
あの時旅立った箱舟。
そのまま内部へと進む。
一番奥の行き止まりには大きな扉がある。
扉の左右の窪みには青・赤の秘石が埋め込まれていた。
「秘石・・・」
キンタローが呟く。
「久しぶりだな、シンタロー。」
「来てくれたのですね。」
赤と青の秘石が輝きシンタローに声を掛ける。
「俺はお前たちになんかもう会いたくなかったけどな。」
パプワがポツリと洩らす。
「どうしても、もう一度シンタローに会いたかったんだ。
だから赤い玉にシンタローに会えるように頼んだんだ。」
赤の秘石が輝く。
「パプワ君の初めてのお願いでしたからね。」
「私は別にどっちでも良かったんだがな。赤の玉がどうしても、というから。」
「だからって、何も女にすることねーだろーが!」
「そうでもしないとお前来なさそうだったし、面白からいいじゃん。」
キンタローが秘石との会話に割り込む。
ヒタっとシンタローの目を見つめ言う。
「シンタローに変わりはないからどちらでも良いとは思っているが、
今のままでいいじゃないか。綺麗だし。柔らかいし。」
「何言ってんだよ、キンタロー!」
オマエはアホか、と怒鳴る。
「ほら、見ろ。お前以外は喜んでいるんだからそのままでいいだろ。
・・・やはり面白い。」
青い秘石からくくっと笑い声が聞こえる。
「面白くなんかねーよ!戻せよ!元の姿に!」
「まあ、そんなことはこっちに置いておいて。」
「置くな!戻せ!」
シンタローの怒りをサラリと受け流す青い秘石。
「それに私もお前に用事がある。」
青の秘石の声のトーンが落ちる。
「コタローの事だ。今までも時々呼びかけていたのだが効果が無かった。」
シンタローの表情が変わる。それを受け秘石も続ける。
「島を破壊するだけの力を放出し続けてしまった。体への付加も大きかったのだろう。
それに心の整理もあっただろうしな。これは私にはわからないがな。」
「最近、反応があった。」
だが、と赤の秘石が青の秘石の続きを引き受ける。
「私たちの力だけではコタローを起こす事は出来ません。無理矢理になら出来ますが、
後がどうなるか分からない事は避けたいのです。」
「パプワ君、あれを渡してあげなさい。」
言われてパプワが何所に持っていたのか一輪の花を差し出す。
花を見驚く。
「これはあのときの花と同じものじゃないか。」
「その花と私たちの力があれば、コタローの目を覚ます事が出来るでしょう。」
「後は今までと同じように、我らもコタローに呼びかける。
その花の助けがあれば、時期目を覚ますだろう。」
パプワから花を受け取る。
「パプワ、ありがとう。」
「これでコタローの目が覚めるといいな。」
「ああ。」
二人を黙ってみていた青の秘石が再び輝く。
「今回は私たちがお前たちを呼んだからここにたどり着く事が出来た。
人が居れば争いが生まれる。この第二の聖地を汚すわけには行かない。
もう今回と同じ力を発することはない。たどり着くのは不可能だ。
だから思い残す事の無いようにな。」
そう言うと、光が消え沈黙が訪れた。
「ここにはもう用は無い。行くぞ。」
着た時と同じようにパプワが二人を連れ、外へと出る。
光が三人に降り注ぐ。
「シンタロー、俺は先に船に戻る。後から来い。」
ちらっとパプワを見、キンタローは飛行艦へと消えた。
その後ろ姿を見送る二人。
何とも言いがたい沈黙が訪れる。
「シンタロー、抱っこしてくれ。」
パプワがその沈黙を破った。
「ああ~?人にモノを頼むときはもうちょっと可愛く言うもんだぞ?」
抱っこなんて始めてのお願いにシンタローの顔が緩み、ホラよ、っと抱き上げる。
4年前と全く変わらず、少年は小さい。が体から溢れんばかりの力を発している。
パプワの子供特有の高い体温・柔らかい感触が手に伝わる。
伝わるぬくもりにシンタローが気を取られていると、
パプワが顔を近づけ桜色の形の良い唇に、ちゅっと可愛らしいキスを贈る。
「パプワ!」
抱いていたシンタローの腕からひらっと飛び降りる。
シンタローは唇を手のひらで押さえ、怒鳴る。
「いいじゃないか、ケチだな。」
ガクっと肩を落とす。
「俺は男なんだよ・・・、いや女だけど・・・」
力なく呟く。
気を取り直しパプワを見<る。
「じゃあな。」
まるでまた明日会えるかの様な言葉を贈る。
パプワも言葉を贈る。
「ああ。」
暫らく無言で見詰め合ったあと、シンタローはパプワに背を向け飛行艦へと歩き出す。
そのまま振り返ることなく、艦の中へと消えた。
大きな音をたて、飛行艦が動き出す。空へと飛び立つ。
パプワはその様子を見守る。
飛行艦が見えなくなってもパプワは見続けていた。
一人眠り続けていた少年の瞼がゆっくりと開く。
微かに口が動く。
「ありがとう・・・」
カーテンがゆれる。
穏やかな風が枕元に一輪飾った花を揺らし、
少年の頬を撫でるように通り過ぎた。
H16.5.8
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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薄いピンク色が基調の部屋。
大きな窓にレースのカーテンがゆれる。
ベッドには一人少年が眠る。
目を閉じていてもわかる綺麗な顔立ち。まるで少女のようだ。
枕元には愛らしいぬいぐるみ。
その少年にはぬいぐるみの存在がよくあう。
部屋を見渡せば他にも、まるでお人形遊びで使うかのようなチェストや机が
そのまま大きくなったかのような家具が配置されている。
ただ、それが使われているような気配は無い。
「コタローが眠りについて4年か・・・。」
「ああ。」
コタローと呼ばれた少年の眠るベッド脇に備えてあった椅子にすわる2人の人間。
一人はコタローの金の髪を白いしなやかな手で優しく撫でる。
もう一人は静かにコタローを見つめる。
コタローは相変わらず穏やかな顔のまま目を開く気配は無い。
「俺、不安になるんだよ。もうコタローはこのまま目を覚まさないんじゃないんのかってさ。」
「・・・。」
キンタローは答えない。構わずシンタローは続ける。
「もう4年。色々な方法を試したけど、全部駄目だった。
医者も匙を投げた。あとは自然に目を覚ますのを待つしかないってな。」
シンタローは梳いていた手を止め、動かないコタローをじっと見つめる。
「シンタロー」
キンタローが片割れに呼びかける。
「秘石に会いに行ってはどうか?」
「は?」
思わず聞き返す。
「だから秘石に、だ。俺たち一族の創造主に。」
「会ったところでどうなるってんだ。」
シンタローはこんな体に変えてしまった秘石に思わずハッと悪態を吐く。
「会えば何とかなるのではないか?創造主だしお前を見てもそれだけの力を持っているのはわかる。」
俺は、と言葉を続ける。
「コタローが目を覚まさないのは、コタローの体よりも心に問題があるのかと思っていた。
しかし、4年は長い。寝ている間にもコタローの時間は流れていく。待つ方も限界が近い。」
だから、と。
「でも、どこに行けばいいんだよ?前のパプワ島へは行けないぜ。
パプワも秘石連れてどっか行っちまったしな。」
「お前が居れば問題ない。」
妙に自身をもって言い切るキンタロー。
「あ?俺?」
不思議そうに黒の目をキンタローに向ける。
それを受け理由を話す。
「そう。お前の体は秘石の発するエネルギーと同じ波動だ。だからそれを元に探索機を作れば。」
「そこまで解っていて、何で今まで黙ってたんだよ!」
思わず立ち上がり、声を荒げキンタローの襟を両手で掴む。
自然、キンタローを上から見下ろす形となる。シンタローの長い髪がキンタローの頬へと掛かる。
キンタローは僅かに濃い青をした目を細めただけで払いのけようとはしない。
「お前が躊躇していたからだ。」
キンタローの掴んでいたシンタローの手から力が抜ける。
その手をつかみ、立ったままのシンタローを見上げ、続ける。
「あの島は楽園だったのだろう?
今までの状態であそこ行ったら、楽園へと逃げ込む事になるかもしれない。
大切な場所だからこそ、遠ざけてしまう。」
違うか?と
「・・・。」
「もう行ってもいいのじゃないか。ここでのすることもあるし、あちらへと留まる心配は無いと思う。
コタローの事が解決したら、その体の事も聞けばいい。
俺はどちらでもシンタローには変わらないからいいのだけどな。」
キンタローは掴んだままのシンタローの手を引っ張り椅子に座らせる。
大人しくそれに従うシンタロー。
「・・・行ってもいいだろうか・・・。」
ポツリと言葉が漏れる。
「ああ。誰もお前を咎めない。」
力づけるようにキンタローはシンタローの手をギュッと包み込む。
シンタローは握られた手を見つめしばし考える。
誰よりも理解しているキンタローの言に頷く。
「勿論俺も行くぞ。」
「ああ、分かってる。技術者は必要だ。キンタローなら心強い。それにお前妙に過保護だしな。」
子供じゃないのにな、と苦笑をもらす。
「で、その装置とやらはどのくらいで完成するんだ?」
「案ずるな。実はもう出来ている。」
「はぁ?!出来てる?!」
うむ。とキンタローは頷く。
「完成しているなら、もうちっと早く言ってくれよ。」
シンタローの肩が、疲れたようにがくっと落ちる。
「可能性だけ示しもし完成出来なかったら期待するだけ失望も大きい。
お前やマジック、他のコタローの目が覚めるのを待っている人間に
そんな思いはさせたくなかったからな。」
ひょいっと肩をすくめ続ける。
「いや、実はな。最近思いついてこの間完成したばかりだった。
最初はコタローの脳に直接働きかける機械を作っていたのだがな。
心を閉ざしているかもしれないコタローにはやはりその方法は危険も伴う。
目を覚まさせるのに危険な事は冒せない。他に何か良い方法は無いかと思案していた。
ふと思ったんだ。秘石に直接会えれば。とな。」
「そうか。・・・コタローはどうするんだ?連れて行く必要はあるか?」
キンタローは首を横に振る。
「いや、もし道中何かあったら自分で対処できないコタローは危険過ぎる。
お前のときは夢に現れて、そのまま力が作用したんだ。本部のままで大丈夫だろう。」
「分かった。準備が出来次第出発するぞ。」
シンタローはその準備を思い、思いきり嫌そうな表情を浮かべる。
秀麗な眉目には皺が寄る。
「引退したマジックに借りをつくるのは嫌なんだがな。仕方がないな。コタローのためだ。代行を頼むか。」
「そうすると良いだろう。マジックは尤も適任だ。
コタローの為だし、シンタローの頼みなら絶対に快諾する。」
「コタロー。もう少し待っててくれ。」
シンタローはコタローの子供特有の柔らかな頬を一撫でし、気合をいれ立ち上がる。
「よし、これからの根回しに行くか。」
キンタローも続き立ち上がる。
「分かった。」
去り際にコタローを振り返る。
二人がドアの向こうへと消えた。
コタローは昏々と眠り続ける。
部屋はまた静寂に包まれた。
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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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緑豊かなその小さな島は透き通った煌めく青に彩られている。
見るもの全てに夢の島ではないだろうかと思わせる力がその島にはある。
基本的に島は熱帯なのだが何故か四季が存在し、更に不思議な事に4つの季節が混在している。
この島の動物は一匹を除き皆喋る。
愛らしい小動物から、毒を吐くが憎めないナマモノまで様々な生き物が住んでいる。
喋る時点で想像付くだろうが、この島には生態系は存在しない。
人間は2人だけだ。
島の主と言ってよい赤の一族の血をもつ超人的な少年パプワ。
この島と喋る動物たちに惚れ込み、新たな番人となった元ガンマ団特戦部隊の軍人リキッド。
島内の殆どが鬱葱と木々が茂る。が一部森が拓けた場所がある。
そこに島で唯一の家、パプワハウスが建っている。
動物の顔を模ったおもちゃの家の様な外観だ。
ここにパプワとリキッドは暮らして居る。
「来た。」
パプワの表情は殆ど変わらない。
4年間一緒に過ごして、リキッドもやっとパプワの微かな表情が読めるようになった。
「ん?何がだ?そんなに嬉しそうに言うなんて珍しいよな?」
どうやらリキッドから見たら、パプワは珍しいくらい嬉しい表情らしい。
リキッドの問いには答えずに、ドアを開け家の外に出る。
「え、パプワ?どこ行くんだよ?」
行き成り外に飛び出したパプワの後を追う。
パプワは空を睨んでいる。
リキッドもパプワに倣い空を見上げる。
空を見渡すと飛行艦が空に浮かんでいる。
先端には円の中に六芒星。その中心に〝G〝の文字。間違いなくガンマ団だ。
そのまま軍艦を目で追い、着陸するであろう海岸を確認する。
「ガンマ団!?なんでこの島に!?」
パプワ、とリキッドは振り返る。
「!?パプワ?」
リキッドが振り返ったときには既にパプワは居なかった。
風圧で穏やかな海が波打ち、木々が音をたてて激しく揺れる。
飛行艦がゆっくりと地面に降り立つ。
風をものともせず、パプワは少し離れたところからそれを見守っていた。
ヴィーと軽い機械音をたて艦のハッチが開く。
赤いスーツに身を包まれた女性と、シックなスーツを着た男性が現れる。
カンカンと階段を下りる音がパプワの耳に聞こえる。
パプワはハッチに向けて走り出す。
女性が砂を踏みしめると同時に抱きついた。
「シンタローっ!」
シンタローと呼ばれた女性も嬉しそうにパプワを抱き上げる。
「パプワ!元気にしてたか?」
「当たり前だ!僕を誰だと思っているんだ?」
子供らしからぬ態度で答える。
シンタローはそんな相変わらずな態度に目を細め嬉しそうにみる。
「変わってねぇなぁ。」
「シンタローはずいぶんと変わったな。綺麗だぞ。」
「パプワにんな事褒められても嬉しかねーよ。」
そんな事を言いつつもシンタローの顔は相変わらず満面の笑みを浮かべている。
「感動の再会はそれまでにして、要件だ。」
後ろに控えていたキンタローが、シンタローのパプワを抱きかかえている腕をぐいっと引っ張る。
キンタローとパプワの目が合う。
キンタローの瞳が青く輝き、パプワの瞳も赤く輝く。
両者ともに『シンタローに触るな』、と威嚇する。
二人の視線をずらすように、抱きかかえていたパプワを地面に下ろす。
「おい、キンタロー子供相手に何してんだよ。」
「別に何もしていない。」
ふっと息を吐く。
「まぁ、いいけどよ・・・」
「さて。パプワ。俺がパプワ島に来た理由なんだが」
シンタローを遮る様にパプワが口を開く。
「分かっている。赤い玉と青い玉に会いに来たんだろう?」
「お?何で分かるんだ?」
「僕が来るように赤い玉にお願いしたからな。そのくらいは分かる。」
「お願いした?どういうことだ?」
「後で分かる。玉のところまで行くぞ。」
ザクザク砂を鳴らして、パプワが二人を先導する。
艦から歩く事しばし。海岸の直ぐ近くの木々の間にそれはあった。
あの時旅立った箱舟。
そのまま内部へと進む。
一番奥の行き止まりには大きな扉がある。
扉の左右の窪みには青・赤の秘石が埋め込まれていた。
「秘石・・・」
キンタローが呟く。
「久しぶりだな、シンタロー。」
「来てくれたのですね。」
赤と青の秘石が輝きシンタローに声を掛ける。
「俺はお前たちになんかもう会いたくなかったけどな。」
パプワがポツリと洩らす。
「どうしても、もう一度シンタローに会いたかったんだ。
だから赤い玉にシンタローに会えるように頼んだんだ。」
赤の秘石が輝く。
「パプワ君の初めてのお願いでしたからね。」
「私は別にどっちでも良かったんだがな。赤の玉がどうしても、というから。」
「だからって、何も女にすることねーだろーが!」
「そうでもしないとお前来なさそうだったし、面白からいいじゃん。」
キンタローが秘石との会話に割り込む。
ヒタっとシンタローの目を見つめ言う。
「シンタローに変わりはないからどちらでも良いとは思っているが、
今のままでいいじゃないか。綺麗だし。柔らかいし。」
「何言ってんだよ、キンタロー!」
オマエはアホか、と怒鳴る。
「ほら、見ろ。お前以外は喜んでいるんだからそのままでいいだろ。
・・・やはり面白い。」
青い秘石からくくっと笑い声が聞こえる。
「面白くなんかねーよ!戻せよ!元の姿に!」
「まあ、そんなことはこっちに置いておいて。」
「置くな!戻せ!」
シンタローの怒りをサラリと受け流す青い秘石。
「それに私もお前に用事がある。」
青の秘石の声のトーンが落ちる。
「コタローの事だ。今までも時々呼びかけていたのだが効果が無かった。」
シンタローの表情が変わる。それを受け秘石も続ける。
「島を破壊するだけの力を放出し続けてしまった。体への付加も大きかったのだろう。
それに心の整理もあっただろうしな。これは私にはわからないがな。」
「最近、反応があった。」
だが、と赤の秘石が青の秘石の続きを引き受ける。
「私たちの力だけではコタローを起こす事は出来ません。無理矢理になら出来ますが、
後がどうなるか分からない事は避けたいのです。」
「パプワ君、あれを渡してあげなさい。」
言われてパプワが何所に持っていたのか一輪の花を差し出す。
花を見驚く。
「これはあのときの花と同じものじゃないか。」
「その花と私たちの力があれば、コタローの目を覚ます事が出来るでしょう。」
「後は今までと同じように、我らもコタローに呼びかける。
その花の助けがあれば、時期目を覚ますだろう。」
パプワから花を受け取る。
「パプワ、ありがとう。」
「これでコタローの目が覚めるといいな。」
「ああ。」
二人を黙ってみていた青の秘石が再び輝く。
「今回は私たちがお前たちを呼んだからここにたどり着く事が出来た。
人が居れば争いが生まれる。この第二の聖地を汚すわけには行かない。
もう今回と同じ力を発することはない。たどり着くのは不可能だ。
だから思い残す事の無いようにな。」
そう言うと、光が消え沈黙が訪れた。
「ここにはもう用は無い。行くぞ。」
着た時と同じようにパプワが二人を連れ、外へと出る。
光が三人に降り注ぐ。
「シンタロー、俺は先に船に戻る。後から来い。」
ちらっとパプワを見、キンタローは飛行艦へと消えた。
その後ろ姿を見送る二人。
何とも言いがたい沈黙が訪れる。
「シンタロー、抱っこしてくれ。」
パプワがその沈黙を破った。
「ああ~?人にモノを頼むときはもうちょっと可愛く言うもんだぞ?」
抱っこなんて始めてのお願いにシンタローの顔が緩み、ホラよ、っと抱き上げる。
4年前と全く変わらず、少年は小さい。が体から溢れんばかりの力を発している。
パプワの子供特有の高い体温・柔らかい感触が手に伝わる。
伝わるぬくもりにシンタローが気を取られていると、
パプワが顔を近づけ桜色の形の良い唇に、ちゅっと可愛らしいキスを贈る。
「パプワ!」
抱いていたシンタローの腕からひらっと飛び降りる。
シンタローは唇を手のひらで押さえ、怒鳴る。
「いいじゃないか、ケチだな。」
ガクっと肩を落とす。
「俺は男なんだよ・・・、いや女だけど・・・」
力なく呟く。
気を取り直しパプワを見<る。
「じゃあな。」
まるでまた明日会えるかの様な言葉を贈る。
パプワも言葉を贈る。
「ああ。」
暫らく無言で見詰め合ったあと、シンタローはパプワに背を向け飛行艦へと歩き出す。
そのまま振り返ることなく、艦の中へと消えた。
大きな音をたて、飛行艦が動き出す。空へと飛び立つ。
パプワはその様子を見守る。
飛行艦が見えなくなってもパプワは見続けていた。
一人眠り続けていた少年の瞼がゆっくりと開く。
微かに口が動く。
「ありがとう・・・」
カーテンがゆれる。
穏やかな風が枕元に一輪飾った花を揺らし、
少年の頬を撫でるように通り過ぎた。
H16.5.8
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