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|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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4巻のコタローを迎えに行くのを女体化だったらどーなるんだろーなーって妄想。
相変わらず題名思いつかないので無題。
「コタロー、お兄ちゃんだぞー!! 迎えに来た!!」
「『お兄ちゃん』ではなく『お姉ちゃん』の間違いではないのか?」
「るっせ、いいんだよ。 コタローは知らねぇんだからよ。」
「あと、その言葉遣い何とかならないのか?」
「これが俺だ!」
「もう4年も経つのに嘆かわしい。」
「ああ、るせーよ! お前も探せ。 コタロー探すのが先決だろーが! 」
「勿論コタローを探すのが目的だ。 が、その言葉遣いは直してくれ。」
ガンマ団の飛行艦が着陸した浜辺に駆けつけた。
そこには長い黒髪の赤い軍服、上には黒いコート肩に引っ掛けている人間が、
この島には不釣合いなスーツを着た金髪の男性と言い争っていた。
いや、声の高い方の人物が一方的に怒鳴っているのか?
二人とも今は後ろを向いているので顔は見えない。
再び、コタローと名前を叫ぶ声が聞こえる。
「コタロー!!」
ロタローにコタローだと思い出させてはいけないと、気がついたときには頭を蹴っていた。
「でっ!」
俺が蹴った相手は一声上げ、砂浜に顔を突っ込んでいた。
赤い服。よくよく考えたら、ガンマ団で赤い服を着ても良いのはただ一人。
しかも男にしては華奢だ。そういえば、声も男にしては高かった。・・・・まさか女性?
サァーっと血の気が引く。俺、女の人を足蹴にしてしまった!
眩暈を起こしかけたとき、女性が連れていた男性があわてて駆け寄り、腕を引っ張り上て身を起こすのが目に入った。
「大丈夫か?シンタロー。」
言いながら、ポケットから柔らかそうな白いハンカチを取り出し、顔に付いた砂を優しく払っている。
女性はおとなしくされるがままになっている。罪悪感が生まれる。
髪に付いた砂も払い、満足したのか、その男性が、ギンっと睨みつけてくる。
あまりの迫力に体が動かない。
気のせいか、目が薄っすらと青く輝いているように見える。
動いたら殺される。そんな気がした。
俺が固まって動けないでいると、赤い服を着た女性が、
「ああ、いいキンタロー。俺が自分でやるから。」
傍らのキンタローと呼ばれた男性を片腕で制し、俺に向かって歩いてくる。
砂浜の上を歩いていると言うのに、体重を感じさせない動きで一気に目の前に近づく。
がっと乱暴に胸倉を掴まれ、顔をぐぐっと近づけられる。
「え、あの・・・」
あ、好みかも。下から睨みつけられる感じが堪らない、とか場違いなのんきな事を思ってしまう。
久しぶりの女性らしい女性、しかも美人に見つめられ、いや睨まれているのだが、至近距離のため自然顔に熱が集まる。
そんな俺に構わずに、さらに顔を寄せてくる。
先ほどとは違った意味で動けなくなってしまった。
突然にこっと笑うと、女性が手を離しスッすばやく身を引くと同時に、頭部に衝撃。遅れて痛みが走る。
「ああぁ!?イキナリ人を足蹴にして侘びのひとつもねーのかよ。お前の上司はどんな教育をしてたんだ?」
今度は俺が先ほどの叫んでいるこの人のように、砂に頭を突っ込みながら言葉を聞く。
ぽんっと頭に、金貸してくれ~と蛇のような舌をチロチロ出し、たかる元上司が浮かぶ。
ガバっと身を起こし叫ぶ。
「獅子舞には教育されていません!ただ、せびられていただけっす!」
俺のきっと必死になっていた形相に気を殺がれたのだろうか、興味がなさそうに呟く。
「ふん。まあいいけどよ。」
「お前リキッドだよな?この島の新しい番人になったんだってな?」
「ああ、はい。そうっす!でもよく知ってますねー。」
「ウチにはお前が追い出した元赤の番人がいるんだよ。」
心なしか、言葉にとげを感じる。
「んなことより、コタローはどこだ?」
「コタローを連れ戻しに着たんすか?」
「あったり前だろうが。あれから初めて目が覚めたんだぞ!?」
あれとは、4年前のコタローの暴走のことだろう。
コタローの事も大切だが、さっきからひとつ疑問がある。
間違いなく、総帥の子供は男性だったはず。4年前にも直接会っている。
そのまま思っていたことを口にした。
「あの~、つかぬ事を伺いますが、総帥のご子息のシンタローさんっすよね?」
「ああ!?そうだよ。コタローの兄だからな。」
予想していた通りの答えが返ってくる。が、
「・・・あの、どっからどうみても、ご息女なんすけど・・・」
「・・・ああ、そうか。そうだよな。」
はたっと気づいたように、一人で納得している。
一人で納得されても俺にはサッパリわからない。
「あの~」
また同じ事を口にする。
「うん。気にするな。」
にっこりと爽やかに言い切られた。
「はぁ。」
気にするなといわれて気にせずにいられようか。
同一人物なのに、性別が違うのだ。
が、再び訊ねられるような雰囲気ではない。顔は笑っているが目がすわっている。
「キンタロー。」
シンタローさんの後ろに控えていた、紳士に呼びかける。
「何だ?」
「説明する必要ないからな。」
「わかっている。」
相変わらず、睨みつけられている。外見は紳士なのだが、こちらの人物も怖い。
先ほど思いっきり蹴ってしまったのが悪かったのだろう。
あ、まだ謝っていない。
「あ、あの・・・」
謝罪しようと口を開いたが、当の本人に遮られた。
「おい、そこのオッサン!」
今度は、俺の背後に向かい怒鳴る。
「んだよ。」
「覗き見なんかしてねーで、さっさと出てこいよ。」
「はいはい。わーったよ。」
獅子舞が茂みの中から、のそっと現れる。
「よう、久しぶりだな?」
「別に会いたくなんかなかったけどよ。」
「相変わらず口の減らねぇ甥っ子だな?んや姪っ子か?」
言うと獅子舞はニタァと笑う。
あ、この笑いあの時と一緒。金をせびる時とか、いびられる時とか。
もう落ち着いてもいい年をとっくに過ぎているのに。
「んん~、まだ女のままだな?どうよ?人生楽しんでるか?」
人をからかうのが生きがいだものなぁ、この人。
矛先が俺じゃないから、のんびりと傍観できる。
「馬鹿言えっ!楽しいはずないだろっ!」
「そーか。楽しいか。よかったなぁ。叔父さんは嬉しいぞ。」
「どこに耳つけてんだよ、オッサン!」
「どこって、ここ。」
向かい合っていたシンタローさんの横に顔を持っていき、耳たぶをベロっとなめる。
「・・・。死ね。」
シンタローさんが腕を突き出した。が、技を繰り出すより早く、
青く輝くエネルギー体が彼女のギリギリ横をすごい勢いで通り過ぎた。
しかし、ハーレム隊長はシンタローさんのほぼ正面に立っていた為、隊長の洋服をわずかに掠っただけだ。
少し後ろに控えていた紳士が放ったのだろう。問答無用だなぁ。
「おーこわ。」
焦げて穴の開いた腕の部分を見ながら隊長が、笑いながら呟く。
まったく怖がっているようには見えない。
「挨拶が遅くなった。元気か叔父貴。」
一見紳士っぽく見える人が、何事もなかったように隊長に声をかける。
隊長もサラッと応じる。さすがは図太い。
「よお、キンタロー。ご覧のとおり元気だぞ。今お前に殺されかけたがな。」
「外してやったんだ。親族殺しはしたくないからな。」
よく言うわ、と隊長は軽く笑う。
「まあ、二人とも元気そうでなによりだな。」
「アンタもな。」
「何でアンタここにいるの?」
「ちょっとバカンスにな。」
ウソだ。
「ウソ吐け」
心の中のツッコミと被る。なんとなく嬉しく思う。
「まあ、いいわ。」
ふいっと隊長から俺の方を見る。
「おい。」
「は、ハイ。」
青の一族の様子を人事のように眺めていたので反応が遅れた。
「なんすか?」
「コタローのところに連れて行け。」
うわ、命令形。さすがはコタローのお兄さん。いや、お姉さん。
美人だろうが、怖かろうが、ここで素直にハイとは言えない。俺は番人だ。
「・・・駄目っす・・・」
「ああ!?んだとコラ!」
凄まれる。思わず一歩後ろに下がってしまう。
「リキッド、コタローの所に案内してやれや。」
更に隊長までもがシンタローさんの加勢へとまわる。
おまけに、先ほどと同様に、紳士からも睨まれる。
うわぁ、勝ち目なさそう・・・つい弱気になる。
「え、でも・・・」
「ああ!?上司の言うことがきけねぇってのか!?」
「元、っす。元。」
「え~何~?聞こえないなぁ。」
ワザとらしく声を張り上げ、首を締め付けてくる。
ボソッと耳元で真剣な声色で囁かれた。
「心配するな。コタローにとって悪いことはしない。」
「えっ?」
「もう、4年前とは違う。それにアレは究極のブラコンだ。」
「コラ、そこの獅子舞!聞こえってゾ!」
「へっ、本当のことだろうが。ブラコン。」
「うっせ、ブラコンで何が悪い!」
「うわ~、開き直った。」
隊長はあんなんだか、一族のことを誰よりも考えている。
さっきの言葉に嘘はないだろう。心を決める。
「・・・分かりました!行きましょう!」
じゃれている二人と傍観している一人に、気合と共に声を掛けた。
「それでこそ、部下だ。」
「あんたにしては、結構まともな部下だよなぁ」
シミジミとシンタローさんが呟いている。
心の中で、力強く頷いた。
また二人が言い争いを始める。
会うのが久しぶりだから、嬉しいのだろう。そんな雰囲気が伝わってきた。
コタローはたぶんパプワたちと一緒に家で遊んでいるだろう。
3人を引き連れ、家へと向かった。
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続き。
パプワハウスの小さめのちゃぶ台を、6人と1匹が囲む。
シンタロー、コタロー、パプワ、チャッピー、リキッド、ハーレム、キンタローという順だ。
「お、おにいちゃん?えーっと、おにいちゃんだよね?綺麗なおねえさんになっているけど・・・」
自信が無いのか、コタローは首をかしげる。
それはそうだろう。人は生きているうちに外見ごと完璧に性別は変わらない。背も声もすべて変わっているのだ。
その最愛の弟の小首を傾げる可愛さに、思わずうっと鼻を押さえるシンタロー。
コタローはまた不思議そうに訊ねる。
「おにーちゃん?」
そんな二人のほほえましい、とも言えなくも無い様子に外野がヒソヒソと会話をする。
「ホラ、言ったろ。あいつブラコンだから。」
「・・・姉弟になったぶん、危険度が高いな。」
「女の人になってもシンタローはシンタローだな。」
「わぁぅ」
「コタローの前では別人っすね・・・」
全員言いたい放題だ。
キンタローは危ないことをサラっといいのける。青の一族には禁忌は存在しないのかもしれない。
幸いなことに、弟以外に目の行っていないシンタローにはこの声は届いていない。
外野でそんなことを言い合っているうちに二人の会話は進んでいく。
「コタロー、俺の事お兄ちゃんって呼んでくれるのか?」
シンタローにしては珍しく、自信がなさそうに小さな弟へと問いかける。
「あったりまえだよ!僕のおにいちゃんじゃない!」
コタローは何でそんな当たり前の事を訊くのか、と少し怒っているようだ。
が、その後に小さな声で付け加える。
「・・・えっと、でもその姿でおにいちゃんって呼ぶの変だよね? おねえちゃんって呼んでもいい?」
「勿論だ!コタローになら、おにーちゃんなんて呼ばれてもいいぞぉ。」
あのとき以来シンタローとコタローとが会話らしい会話をしたのは初めてだ。
ごく自然に、コタローはシンタローのことを兄、いや、姉と認めた。
それがシンタローには嬉しかったのだろう。特にずっと気に病んでいたことだ。
安心したためか、先程より顔が緩んでいる。目じりはこれでもかと言わんばかりに垂れ下がり、
鼻の下までのばし、せっかくの美貌が台無しだ。
そんな姉の嬉しそうな様子を見て、コタローは微笑む。
「こうして並んでいると、僕ら美人姉妹みたいだね?」
「そうだなぁ。綺麗だぞ~コタロー。おにーちゃん、いやおねーちゃんはコタローの隣に座れて嬉しいゾ!」
確かにコタローは美少女と言っても全く違和感がない。シンタローもコタローとは違うタイプの和的美人だ。
二人とも言っている事は正しいが、微妙に会話が噛み合っていない。
「あ、今『お姉ちゃん』って言いましたよ?」
聞きましたかっと三人と一匹を振り返る。
コクっと一同首を縦に振る。
「俺はこの四年でシンタローが、女だと認めた言葉を聞いたのは初めてだ・・・」
キンタローは心なしか、肩を落としながらつぶやく。
それを耳ざとく聞きつけたハーレムが、ぽんぽんっと慰めるようにキンタローの背中を叩く。
「あきらめろ、キンタロー。シンタローのアレは一種の病気だ。」
「分かってはいるが・・・」
と語尾を濁す。納得は出来ないのだろう。
「ま、気にすんなや。」
「隊長、意外に優しいんすねぇ。」
信じられないようなモノを見たように、リキッドが言う。
「俺は元から優しい。」
お前目腐ってるんじゃねーの?とリキッドの頭を小突く。
客観的に見て、扱いの差があることにハーレム自身は気づいていない様だ。
リキッドの下っ端体質の為か、それともハーレムの一族思いの為か、どちらかは分からない。
こちらの姉弟は相変わらず二人だけの世界を繰り広げている。
「僕、おにいちゃん、信じて待ってたんだからね?!」
ぷく~っと頬を膨らませる。
必ず迎えに行くと約束した。一応は約束は果たされたがあの時は混乱の極致だった。
コタローはハっとした表情を浮かべる。あの時自分がした事を思い出したのだろう。
「・・・あのときはごめんね?」
パプワ島に来てから、コタローは変わった。パプワやパプワ島の皆、あとはコタロー自身の力だろう。
根本的な性格は変わらないようだが。
「気にするな、コタロー。俺が不甲斐無いばかりにマジックを止めることが出来なかった。
むしろ謝らなきゃいけないのは俺だ。すまなかった。」
シンタローはそう言うと神妙に頭を下げる。
コタローはシンタローの頭を下げる姿を驚いて見つめる。
「や、やめてよおにいちゃん。おにいちゃんが頭を下げるなんて似合わないよ!」
止めさせようと、ぐいぐいと腕を引っ張る。
うっすらと記憶に残っている昔の兄の硬い腕とは異なる感触。
「コタロー。」
「なぁに?」
「ありがとう」
「いやだな、おにーちゃん。」
クスクスと楽しそうに笑う。
「謝ったり、お礼を言ったり、大変だね。」
「・・・そうだな・・・」
そんな楽しそうなコタローの様子に、シンタローも笑う。
姉弟の一段落ついた様子を見て、リキッドが声をかける。
「シ、シンタローさん・・・」
「あ!?なんだよ!」
眼光鋭く、ギロっとリキッドを見る。コタローとは天と地ほど差のある態度だ。
折角の弟との穏やかな時間を邪魔されて、余計ぞんざいな態度になっているのだろう。
リキッドは何もしていないのに何故怒られなければいけないのかと、心の中で諾々涙を流す。
勿論それを声に出して言う勇気は無い。が、それとは別にどうしても言いたい事があるようだ。
「やっぱり、連れて帰っちゃうんすよね・・・・」
「ああ。」
「大丈夫なんすか?ここに残った方が・・・」
不安そうに尋ねる。リキッドにとってコタローは家族とも言える関係だ。
以前の境遇を知っているだけに心配なのだろう。
シンタローはリキッドにみなまで言わせない。
「ここにいる方が、コタローは幸せかもしれない。でもそれじゃ駄目なんだよ。
・・・万が一何かあっても今度こそ、コタローの兄としての役目を果たす。」
ハーレムもリキッドの心配を打ち消すように言葉をかける。
「大丈夫だよ。シンタローにキンタロー。この二人がいればな。俺もいるからな。」
その言葉を聞き、驚いたようにシンタローがハーレムを見る。
「んだよ、シンタロー。」
少し不機嫌そうに言う。子供が臍を曲げているよな態度にも見える。
「いや、なんでもない。」
そう答えるシンタローの口元は少し笑っていた。
更に横からコタローも口を挟む。
「家政夫!僕はオマエに心配されるほど落ちちゃいないよ!」
少し考えてから辛うじて聞き取れるかというぐらいの小声で言葉を繋ぐ。
「・・・ありがとうリキッド。」
「コタロー・・・」
素直とは言えないがコタローの精一杯の感謝の気持ちなのだろう。
リキッドはじんわりと胸が温かくなった。
「でも!僕のおにいちゃん、じゃないや、おねえちゃんに気安く話しかけないでよねっ」
コタローもパプワ島に着いた頃に比べると、随分と可愛くなったなぁと浸っていると
水を差すように言葉が飛んでくる。
「えっ?なんで?」
リキッドは気安く話しかけているつもりはない。むしろ常に緊張を伴っているのではないか。
「家政夫。おねえちゃんを見る目がヤダ。」
子供はとても正直だ。ズバッと言い切る。その言葉がリキッドの胸に突き刺さる。
コタローの言葉を聞き、周りの視線もリキッドに突き刺さる。特に一部からの視線がとても痛そうだ。
「ほぉお、リッちゃんにも春が来たんだねぇ。」
「来たと同時に冬だ。常冬だ。」
「うん。僕もそう思うけど。一応ね。」
青の一族はさすが一族だけあって皆気が合うようだ。新しいおもちゃを見つけたようにとても楽しそうだ。
「そ、そんなこと無い!久しぶりに見た人間の女、しかも綺麗だったから
ちょと目がいっちゃうだけじゃないか!あんな怖い人、勘弁っす!」
思わず立ち上がり、拳をつくって叫ぶ。
ごん、と鈍い音が部屋に響く。リキッドが撃沈する。
いつの間にか背後に立っていたシンタローに殴られたようだ。その拳が全てを語っている。
「こっちから願い下げだ、あほ。」
そういい捨てるとまたコタローの隣に腰を落とす。
倒れたリキッドをつんつんとパプワが突付く。
まだ起き上がれないまま、顔だけパプワへと向けるリキッド。
「うん?何だパプワ?」
「リキッド、諦めろ。」
一言、トドメをさした。リキッドは再び地面とお友達になった。
「パプワ。」
シンタローはリキッドのそんな様子はほっとき、改まってパプワに声をかける。
「なんだ?」
家政夫にトドメをさして満足したのだろうか、シンタローの元へとトコトコ歩いていく。
「すまねぇな。兄弟ともども世話になっちまってさ。」
少しムッとした様にパプワが応じる。
「僕はとても楽しかった。友達も増えたしな。友達同士でそんなことを言うなんておかしいぞ。」
「言われてみりゃ、そうだな。じゃあ・・・ありがとう、かな?」
「ああ。」
パプワは今度は素直にシンタローの言葉を受け取った。
「また遊びに来い。僕らはいつまでも友達だからな。」
「そうだな。」
くしゃっとパプワの硬めの髪を掻き回す。
「今日は泊まっていけ。」
「そうだな。そうさせてもらうよ。」
にっこりと応じる。
パプワも嬉しそうにする。チャッピーは久しぶりにシンタローの膝の上へと座る。
チャッピーにはかじられてばかりだがやはり可愛いのだろう、優しい手つきで撫でる。
別れの前の賑やかな夜を向かえそうだ。
H16.6.27
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4巻のコタローを迎えに行くのを女体化だったらどーなるんだろーなーって妄想。
相変わらず題名思いつかないので無題。
「コタロー、お兄ちゃんだぞー!! 迎えに来た!!」
「『お兄ちゃん』ではなく『お姉ちゃん』の間違いではないのか?」
「るっせ、いいんだよ。 コタローは知らねぇんだからよ。」
「あと、その言葉遣い何とかならないのか?」
「これが俺だ!」
「もう4年も経つのに嘆かわしい。」
「ああ、るせーよ! お前も探せ。 コタロー探すのが先決だろーが! 」
「勿論コタローを探すのが目的だ。 が、その言葉遣いは直してくれ。」
ガンマ団の飛行艦が着陸した浜辺に駆けつけた。
そこには長い黒髪の赤い軍服、上には黒いコート肩に引っ掛けている人間が、
この島には不釣合いなスーツを着た金髪の男性と言い争っていた。
いや、声の高い方の人物が一方的に怒鳴っているのか?
二人とも今は後ろを向いているので顔は見えない。
再び、コタローと名前を叫ぶ声が聞こえる。
「コタロー!!」
ロタローにコタローだと思い出させてはいけないと、気がついたときには頭を蹴っていた。
「でっ!」
俺が蹴った相手は一声上げ、砂浜に顔を突っ込んでいた。
赤い服。よくよく考えたら、ガンマ団で赤い服を着ても良いのはただ一人。
しかも男にしては華奢だ。そういえば、声も男にしては高かった。・・・・まさか女性?
サァーっと血の気が引く。俺、女の人を足蹴にしてしまった!
眩暈を起こしかけたとき、女性が連れていた男性があわてて駆け寄り、腕を引っ張り上て身を起こすのが目に入った。
「大丈夫か?シンタロー。」
言いながら、ポケットから柔らかそうな白いハンカチを取り出し、顔に付いた砂を優しく払っている。
女性はおとなしくされるがままになっている。罪悪感が生まれる。
髪に付いた砂も払い、満足したのか、その男性が、ギンっと睨みつけてくる。
あまりの迫力に体が動かない。
気のせいか、目が薄っすらと青く輝いているように見える。
動いたら殺される。そんな気がした。
俺が固まって動けないでいると、赤い服を着た女性が、
「ああ、いいキンタロー。俺が自分でやるから。」
傍らのキンタローと呼ばれた男性を片腕で制し、俺に向かって歩いてくる。
砂浜の上を歩いていると言うのに、体重を感じさせない動きで一気に目の前に近づく。
がっと乱暴に胸倉を掴まれ、顔をぐぐっと近づけられる。
「え、あの・・・」
あ、好みかも。下から睨みつけられる感じが堪らない、とか場違いなのんきな事を思ってしまう。
久しぶりの女性らしい女性、しかも美人に見つめられ、いや睨まれているのだが、至近距離のため自然顔に熱が集まる。
そんな俺に構わずに、さらに顔を寄せてくる。
先ほどとは違った意味で動けなくなってしまった。
突然にこっと笑うと、女性が手を離しスッすばやく身を引くと同時に、頭部に衝撃。遅れて痛みが走る。
「ああぁ!?イキナリ人を足蹴にして侘びのひとつもねーのかよ。お前の上司はどんな教育をしてたんだ?」
今度は俺が先ほどの叫んでいるこの人のように、砂に頭を突っ込みながら言葉を聞く。
ぽんっと頭に、金貸してくれ~と蛇のような舌をチロチロ出し、たかる元上司が浮かぶ。
ガバっと身を起こし叫ぶ。
「獅子舞には教育されていません!ただ、せびられていただけっす!」
俺のきっと必死になっていた形相に気を殺がれたのだろうか、興味がなさそうに呟く。
「ふん。まあいいけどよ。」
「お前リキッドだよな?この島の新しい番人になったんだってな?」
「ああ、はい。そうっす!でもよく知ってますねー。」
「ウチにはお前が追い出した元赤の番人がいるんだよ。」
心なしか、言葉にとげを感じる。
「んなことより、コタローはどこだ?」
「コタローを連れ戻しに着たんすか?」
「あったり前だろうが。あれから初めて目が覚めたんだぞ!?」
あれとは、4年前のコタローの暴走のことだろう。
コタローの事も大切だが、さっきからひとつ疑問がある。
間違いなく、総帥の子供は男性だったはず。4年前にも直接会っている。
そのまま思っていたことを口にした。
「あの~、つかぬ事を伺いますが、総帥のご子息のシンタローさんっすよね?」
「ああ!?そうだよ。コタローの兄だからな。」
予想していた通りの答えが返ってくる。が、
「・・・あの、どっからどうみても、ご息女なんすけど・・・」
「・・・ああ、そうか。そうだよな。」
はたっと気づいたように、一人で納得している。
一人で納得されても俺にはサッパリわからない。
「あの~」
また同じ事を口にする。
「うん。気にするな。」
にっこりと爽やかに言い切られた。
「はぁ。」
気にするなといわれて気にせずにいられようか。
同一人物なのに、性別が違うのだ。
が、再び訊ねられるような雰囲気ではない。顔は笑っているが目がすわっている。
「キンタロー。」
シンタローさんの後ろに控えていた、紳士に呼びかける。
「何だ?」
「説明する必要ないからな。」
「わかっている。」
相変わらず、睨みつけられている。外見は紳士なのだが、こちらの人物も怖い。
先ほど思いっきり蹴ってしまったのが悪かったのだろう。
あ、まだ謝っていない。
「あ、あの・・・」
謝罪しようと口を開いたが、当の本人に遮られた。
「おい、そこのオッサン!」
今度は、俺の背後に向かい怒鳴る。
「んだよ。」
「覗き見なんかしてねーで、さっさと出てこいよ。」
「はいはい。わーったよ。」
獅子舞が茂みの中から、のそっと現れる。
「よう、久しぶりだな?」
「別に会いたくなんかなかったけどよ。」
「相変わらず口の減らねぇ甥っ子だな?んや姪っ子か?」
言うと獅子舞はニタァと笑う。
あ、この笑いあの時と一緒。金をせびる時とか、いびられる時とか。
もう落ち着いてもいい年をとっくに過ぎているのに。
「んん~、まだ女のままだな?どうよ?人生楽しんでるか?」
人をからかうのが生きがいだものなぁ、この人。
矛先が俺じゃないから、のんびりと傍観できる。
「馬鹿言えっ!楽しいはずないだろっ!」
「そーか。楽しいか。よかったなぁ。叔父さんは嬉しいぞ。」
「どこに耳つけてんだよ、オッサン!」
「どこって、ここ。」
向かい合っていたシンタローさんの横に顔を持っていき、耳たぶをベロっとなめる。
「・・・。死ね。」
シンタローさんが腕を突き出した。が、技を繰り出すより早く、
青く輝くエネルギー体が彼女のギリギリ横をすごい勢いで通り過ぎた。
しかし、ハーレム隊長はシンタローさんのほぼ正面に立っていた為、隊長の洋服をわずかに掠っただけだ。
少し後ろに控えていた紳士が放ったのだろう。問答無用だなぁ。
「おーこわ。」
焦げて穴の開いた腕の部分を見ながら隊長が、笑いながら呟く。
まったく怖がっているようには見えない。
「挨拶が遅くなった。元気か叔父貴。」
一見紳士っぽく見える人が、何事もなかったように隊長に声をかける。
隊長もサラッと応じる。さすがは図太い。
「よお、キンタロー。ご覧のとおり元気だぞ。今お前に殺されかけたがな。」
「外してやったんだ。親族殺しはしたくないからな。」
よく言うわ、と隊長は軽く笑う。
「まあ、二人とも元気そうでなによりだな。」
「アンタもな。」
「何でアンタここにいるの?」
「ちょっとバカンスにな。」
ウソだ。
「ウソ吐け」
心の中のツッコミと被る。なんとなく嬉しく思う。
「まあ、いいわ。」
ふいっと隊長から俺の方を見る。
「おい。」
「は、ハイ。」
青の一族の様子を人事のように眺めていたので反応が遅れた。
「なんすか?」
「コタローのところに連れて行け。」
うわ、命令形。さすがはコタローのお兄さん。いや、お姉さん。
美人だろうが、怖かろうが、ここで素直にハイとは言えない。俺は番人だ。
「・・・駄目っす・・・」
「ああ!?んだとコラ!」
凄まれる。思わず一歩後ろに下がってしまう。
「リキッド、コタローの所に案内してやれや。」
更に隊長までもがシンタローさんの加勢へとまわる。
おまけに、先ほどと同様に、紳士からも睨まれる。
うわぁ、勝ち目なさそう・・・つい弱気になる。
「え、でも・・・」
「ああ!?上司の言うことがきけねぇってのか!?」
「元、っす。元。」
「え~何~?聞こえないなぁ。」
ワザとらしく声を張り上げ、首を締め付けてくる。
ボソッと耳元で真剣な声色で囁かれた。
「心配するな。コタローにとって悪いことはしない。」
「えっ?」
「もう、4年前とは違う。それにアレは究極のブラコンだ。」
「コラ、そこの獅子舞!聞こえってゾ!」
「へっ、本当のことだろうが。ブラコン。」
「うっせ、ブラコンで何が悪い!」
「うわ~、開き直った。」
隊長はあんなんだか、一族のことを誰よりも考えている。
さっきの言葉に嘘はないだろう。心を決める。
「・・・分かりました!行きましょう!」
じゃれている二人と傍観している一人に、気合と共に声を掛けた。
「それでこそ、部下だ。」
「あんたにしては、結構まともな部下だよなぁ」
シミジミとシンタローさんが呟いている。
心の中で、力強く頷いた。
また二人が言い争いを始める。
会うのが久しぶりだから、嬉しいのだろう。そんな雰囲気が伝わってきた。
コタローはたぶんパプワたちと一緒に家で遊んでいるだろう。
3人を引き連れ、家へと向かった。
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パプワハウスの小さめのちゃぶ台を、6人と1匹が囲む。
シンタロー、コタロー、パプワ、チャッピー、リキッド、ハーレム、キンタローという順だ。
「お、おにいちゃん?えーっと、おにいちゃんだよね?綺麗なおねえさんになっているけど・・・」
自信が無いのか、コタローは首をかしげる。
それはそうだろう。人は生きているうちに外見ごと完璧に性別は変わらない。背も声もすべて変わっているのだ。
その最愛の弟の小首を傾げる可愛さに、思わずうっと鼻を押さえるシンタロー。
コタローはまた不思議そうに訊ねる。
「おにーちゃん?」
そんな二人のほほえましい、とも言えなくも無い様子に外野がヒソヒソと会話をする。
「ホラ、言ったろ。あいつブラコンだから。」
「・・・姉弟になったぶん、危険度が高いな。」
「女の人になってもシンタローはシンタローだな。」
「わぁぅ」
「コタローの前では別人っすね・・・」
全員言いたい放題だ。
キンタローは危ないことをサラっといいのける。青の一族には禁忌は存在しないのかもしれない。
幸いなことに、弟以外に目の行っていないシンタローにはこの声は届いていない。
外野でそんなことを言い合っているうちに二人の会話は進んでいく。
「コタロー、俺の事お兄ちゃんって呼んでくれるのか?」
シンタローにしては珍しく、自信がなさそうに小さな弟へと問いかける。
「あったりまえだよ!僕のおにいちゃんじゃない!」
コタローは何でそんな当たり前の事を訊くのか、と少し怒っているようだ。
が、その後に小さな声で付け加える。
「・・・えっと、でもその姿でおにいちゃんって呼ぶの変だよね? おねえちゃんって呼んでもいい?」
「勿論だ!コタローになら、おにーちゃんなんて呼ばれてもいいぞぉ。」
あのとき以来シンタローとコタローとが会話らしい会話をしたのは初めてだ。
ごく自然に、コタローはシンタローのことを兄、いや、姉と認めた。
それがシンタローには嬉しかったのだろう。特にずっと気に病んでいたことだ。
安心したためか、先程より顔が緩んでいる。目じりはこれでもかと言わんばかりに垂れ下がり、
鼻の下までのばし、せっかくの美貌が台無しだ。
そんな姉の嬉しそうな様子を見て、コタローは微笑む。
「こうして並んでいると、僕ら美人姉妹みたいだね?」
「そうだなぁ。綺麗だぞ~コタロー。おにーちゃん、いやおねーちゃんはコタローの隣に座れて嬉しいゾ!」
確かにコタローは美少女と言っても全く違和感がない。シンタローもコタローとは違うタイプの和的美人だ。
二人とも言っている事は正しいが、微妙に会話が噛み合っていない。
「あ、今『お姉ちゃん』って言いましたよ?」
聞きましたかっと三人と一匹を振り返る。
コクっと一同首を縦に振る。
「俺はこの四年でシンタローが、女だと認めた言葉を聞いたのは初めてだ・・・」
キンタローは心なしか、肩を落としながらつぶやく。
それを耳ざとく聞きつけたハーレムが、ぽんぽんっと慰めるようにキンタローの背中を叩く。
「あきらめろ、キンタロー。シンタローのアレは一種の病気だ。」
「分かってはいるが・・・」
と語尾を濁す。納得は出来ないのだろう。
「ま、気にすんなや。」
「隊長、意外に優しいんすねぇ。」
信じられないようなモノを見たように、リキッドが言う。
「俺は元から優しい。」
お前目腐ってるんじゃねーの?とリキッドの頭を小突く。
客観的に見て、扱いの差があることにハーレム自身は気づいていない様だ。
リキッドの下っ端体質の為か、それともハーレムの一族思いの為か、どちらかは分からない。
こちらの姉弟は相変わらず二人だけの世界を繰り広げている。
「僕、おにいちゃん、信じて待ってたんだからね?!」
ぷく~っと頬を膨らませる。
必ず迎えに行くと約束した。一応は約束は果たされたがあの時は混乱の極致だった。
コタローはハっとした表情を浮かべる。あの時自分がした事を思い出したのだろう。
「・・・あのときはごめんね?」
パプワ島に来てから、コタローは変わった。パプワやパプワ島の皆、あとはコタロー自身の力だろう。
根本的な性格は変わらないようだが。
「気にするな、コタロー。俺が不甲斐無いばかりにマジックを止めることが出来なかった。
むしろ謝らなきゃいけないのは俺だ。すまなかった。」
シンタローはそう言うと神妙に頭を下げる。
コタローはシンタローの頭を下げる姿を驚いて見つめる。
「や、やめてよおにいちゃん。おにいちゃんが頭を下げるなんて似合わないよ!」
止めさせようと、ぐいぐいと腕を引っ張る。
うっすらと記憶に残っている昔の兄の硬い腕とは異なる感触。
「コタロー。」
「なぁに?」
「ありがとう」
「いやだな、おにーちゃん。」
クスクスと楽しそうに笑う。
「謝ったり、お礼を言ったり、大変だね。」
「・・・そうだな・・・」
そんな楽しそうなコタローの様子に、シンタローも笑う。
姉弟の一段落ついた様子を見て、リキッドが声をかける。
「シ、シンタローさん・・・」
「あ!?なんだよ!」
眼光鋭く、ギロっとリキッドを見る。コタローとは天と地ほど差のある態度だ。
折角の弟との穏やかな時間を邪魔されて、余計ぞんざいな態度になっているのだろう。
リキッドは何もしていないのに何故怒られなければいけないのかと、心の中で諾々涙を流す。
勿論それを声に出して言う勇気は無い。が、それとは別にどうしても言いたい事があるようだ。
「やっぱり、連れて帰っちゃうんすよね・・・・」
「ああ。」
「大丈夫なんすか?ここに残った方が・・・」
不安そうに尋ねる。リキッドにとってコタローは家族とも言える関係だ。
以前の境遇を知っているだけに心配なのだろう。
シンタローはリキッドにみなまで言わせない。
「ここにいる方が、コタローは幸せかもしれない。でもそれじゃ駄目なんだよ。
・・・万が一何かあっても今度こそ、コタローの兄としての役目を果たす。」
ハーレムもリキッドの心配を打ち消すように言葉をかける。
「大丈夫だよ。シンタローにキンタロー。この二人がいればな。俺もいるからな。」
その言葉を聞き、驚いたようにシンタローがハーレムを見る。
「んだよ、シンタロー。」
少し不機嫌そうに言う。子供が臍を曲げているよな態度にも見える。
「いや、なんでもない。」
そう答えるシンタローの口元は少し笑っていた。
更に横からコタローも口を挟む。
「家政夫!僕はオマエに心配されるほど落ちちゃいないよ!」
少し考えてから辛うじて聞き取れるかというぐらいの小声で言葉を繋ぐ。
「・・・ありがとうリキッド。」
「コタロー・・・」
素直とは言えないがコタローの精一杯の感謝の気持ちなのだろう。
リキッドはじんわりと胸が温かくなった。
「でも!僕のおにいちゃん、じゃないや、おねえちゃんに気安く話しかけないでよねっ」
コタローもパプワ島に着いた頃に比べると、随分と可愛くなったなぁと浸っていると
水を差すように言葉が飛んでくる。
「えっ?なんで?」
リキッドは気安く話しかけているつもりはない。むしろ常に緊張を伴っているのではないか。
「家政夫。おねえちゃんを見る目がヤダ。」
子供はとても正直だ。ズバッと言い切る。その言葉がリキッドの胸に突き刺さる。
コタローの言葉を聞き、周りの視線もリキッドに突き刺さる。特に一部からの視線がとても痛そうだ。
「ほぉお、リッちゃんにも春が来たんだねぇ。」
「来たと同時に冬だ。常冬だ。」
「うん。僕もそう思うけど。一応ね。」
青の一族はさすが一族だけあって皆気が合うようだ。新しいおもちゃを見つけたようにとても楽しそうだ。
「そ、そんなこと無い!久しぶりに見た人間の女、しかも綺麗だったから
ちょと目がいっちゃうだけじゃないか!あんな怖い人、勘弁っす!」
思わず立ち上がり、拳をつくって叫ぶ。
ごん、と鈍い音が部屋に響く。リキッドが撃沈する。
いつの間にか背後に立っていたシンタローに殴られたようだ。その拳が全てを語っている。
「こっちから願い下げだ、あほ。」
そういい捨てるとまたコタローの隣に腰を落とす。
倒れたリキッドをつんつんとパプワが突付く。
まだ起き上がれないまま、顔だけパプワへと向けるリキッド。
「うん?何だパプワ?」
「リキッド、諦めろ。」
一言、トドメをさした。リキッドは再び地面とお友達になった。
「パプワ。」
シンタローはリキッドのそんな様子はほっとき、改まってパプワに声をかける。
「なんだ?」
家政夫にトドメをさして満足したのだろうか、シンタローの元へとトコトコ歩いていく。
「すまねぇな。兄弟ともども世話になっちまってさ。」
少しムッとした様にパプワが応じる。
「僕はとても楽しかった。友達も増えたしな。友達同士でそんなことを言うなんておかしいぞ。」
「言われてみりゃ、そうだな。じゃあ・・・ありがとう、かな?」
「ああ。」
パプワは今度は素直にシンタローの言葉を受け取った。
「また遊びに来い。僕らはいつまでも友達だからな。」
「そうだな。」
くしゃっとパプワの硬めの髪を掻き回す。
「今日は泊まっていけ。」
「そうだな。そうさせてもらうよ。」
にっこりと応じる。
パプワも嬉しそうにする。チャッピーは久しぶりにシンタローの膝の上へと座る。
チャッピーにはかじられてばかりだがやはり可愛いのだろう、優しい手つきで撫でる。
別れの前の賑やかな夜を向かえそうだ。
H16.6.27
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薄いピンク色が基調の部屋。
大きな窓にレースのカーテンがゆれる。
ベッドには一人少年が眠る。
目を閉じていてもわかる綺麗な顔立ち。まるで少女のようだ。
枕元には愛らしいぬいぐるみ。
その少年にはぬいぐるみの存在がよくあう。
部屋を見渡せば他にも、まるでお人形遊びで使うかのようなチェストや机が
そのまま大きくなったかのような家具が配置されている。
ただ、それが使われているような気配は無い。
「コタローが眠りについて4年か・・・。」
「ああ。」
コタローと呼ばれた少年の眠るベッド脇に備えてあった椅子にすわる2人の人間。
一人はコタローの金の髪を白いしなやかな手で優しく撫でる。
もう一人は静かにコタローを見つめる。
コタローは相変わらず穏やかな顔のまま目を開く気配は無い。
「俺、不安になるんだよ。もうコタローはこのまま目を覚まさないんじゃないんのかってさ。」
「・・・。」
キンタローは答えない。構わずシンタローは続ける。
「もう4年。色々な方法を試したけど、全部駄目だった。
医者も匙を投げた。あとは自然に目を覚ますのを待つしかないってな。」
シンタローは梳いていた手を止め、動かないコタローをじっと見つめる。
「シンタロー」
キンタローが片割れに呼びかける。
「秘石に会いに行ってはどうか?」
「は?」
思わず聞き返す。
「だから秘石に、だ。俺たち一族の創造主に。」
「会ったところでどうなるってんだ。」
シンタローはこんな体に変えてしまった秘石に思わずハッと悪態を吐く。
「会えば何とかなるのではないか?創造主だしお前を見てもそれだけの力を持っているのはわかる。」
俺は、と言葉を続ける。
「コタローが目を覚まさないのは、コタローの体よりも心に問題があるのかと思っていた。
しかし、4年は長い。寝ている間にもコタローの時間は流れていく。待つ方も限界が近い。」
だから、と。
「でも、どこに行けばいいんだよ?前のパプワ島へは行けないぜ。
パプワも秘石連れてどっか行っちまったしな。」
「お前が居れば問題ない。」
妙に自身をもって言い切るキンタロー。
「あ?俺?」
不思議そうに黒の目をキンタローに向ける。
それを受け理由を話す。
「そう。お前の体は秘石の発するエネルギーと同じ波動だ。だからそれを元に探索機を作れば。」
「そこまで解っていて、何で今まで黙ってたんだよ!」
思わず立ち上がり、声を荒げキンタローの襟を両手で掴む。
自然、キンタローを上から見下ろす形となる。シンタローの長い髪がキンタローの頬へと掛かる。
キンタローは僅かに濃い青をした目を細めただけで払いのけようとはしない。
「お前が躊躇していたからだ。」
キンタローの掴んでいたシンタローの手から力が抜ける。
その手をつかみ、立ったままのシンタローを見上げ、続ける。
「あの島は楽園だったのだろう?
今までの状態であそこ行ったら、楽園へと逃げ込む事になるかもしれない。
大切な場所だからこそ、遠ざけてしまう。」
違うか?と
「・・・。」
「もう行ってもいいのじゃないか。ここでのすることもあるし、あちらへと留まる心配は無いと思う。
コタローの事が解決したら、その体の事も聞けばいい。
俺はどちらでもシンタローには変わらないからいいのだけどな。」
キンタローは掴んだままのシンタローの手を引っ張り椅子に座らせる。
大人しくそれに従うシンタロー。
「・・・行ってもいいだろうか・・・。」
ポツリと言葉が漏れる。
「ああ。誰もお前を咎めない。」
力づけるようにキンタローはシンタローの手をギュッと包み込む。
シンタローは握られた手を見つめしばし考える。
誰よりも理解しているキンタローの言に頷く。
「勿論俺も行くぞ。」
「ああ、分かってる。技術者は必要だ。キンタローなら心強い。それにお前妙に過保護だしな。」
子供じゃないのにな、と苦笑をもらす。
「で、その装置とやらはどのくらいで完成するんだ?」
「案ずるな。実はもう出来ている。」
「はぁ?!出来てる?!」
うむ。とキンタローは頷く。
「完成しているなら、もうちっと早く言ってくれよ。」
シンタローの肩が、疲れたようにがくっと落ちる。
「可能性だけ示しもし完成出来なかったら期待するだけ失望も大きい。
お前やマジック、他のコタローの目が覚めるのを待っている人間に
そんな思いはさせたくなかったからな。」
ひょいっと肩をすくめ続ける。
「いや、実はな。最近思いついてこの間完成したばかりだった。
最初はコタローの脳に直接働きかける機械を作っていたのだがな。
心を閉ざしているかもしれないコタローにはやはりその方法は危険も伴う。
目を覚まさせるのに危険な事は冒せない。他に何か良い方法は無いかと思案していた。
ふと思ったんだ。秘石に直接会えれば。とな。」
「そうか。・・・コタローはどうするんだ?連れて行く必要はあるか?」
キンタローは首を横に振る。
「いや、もし道中何かあったら自分で対処できないコタローは危険過ぎる。
お前のときは夢に現れて、そのまま力が作用したんだ。本部のままで大丈夫だろう。」
「分かった。準備が出来次第出発するぞ。」
シンタローはその準備を思い、思いきり嫌そうな表情を浮かべる。
秀麗な眉目には皺が寄る。
「引退したマジックに借りをつくるのは嫌なんだがな。仕方がないな。コタローのためだ。代行を頼むか。」
「そうすると良いだろう。マジックは尤も適任だ。
コタローの為だし、シンタローの頼みなら絶対に快諾する。」
「コタロー。もう少し待っててくれ。」
シンタローはコタローの子供特有の柔らかな頬を一撫でし、気合をいれ立ち上がる。
「よし、これからの根回しに行くか。」
キンタローも続き立ち上がる。
「分かった。」
去り際にコタローを振り返る。
二人がドアの向こうへと消えた。
コタローは昏々と眠り続ける。
部屋はまた静寂に包まれた。
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緑豊かなその小さな島は透き通った煌めく青に彩られている。
見るもの全てに夢の島ではないだろうかと思わせる力がその島にはある。
基本的に島は熱帯なのだが何故か四季が存在し、更に不思議な事に4つの季節が混在している。
この島の動物は一匹を除き皆喋る。
愛らしい小動物から、毒を吐くが憎めないナマモノまで様々な生き物が住んでいる。
喋る時点で想像付くだろうが、この島には生態系は存在しない。
人間は2人だけだ。
島の主と言ってよい赤の一族の血をもつ超人的な少年パプワ。
この島と喋る動物たちに惚れ込み、新たな番人となった元ガンマ団特戦部隊の軍人リキッド。
島内の殆どが鬱葱と木々が茂る。が一部森が拓けた場所がある。
そこに島で唯一の家、パプワハウスが建っている。
動物の顔を模ったおもちゃの家の様な外観だ。
ここにパプワとリキッドは暮らして居る。
「来た。」
パプワの表情は殆ど変わらない。
4年間一緒に過ごして、リキッドもやっとパプワの微かな表情が読めるようになった。
「ん?何がだ?そんなに嬉しそうに言うなんて珍しいよな?」
どうやらリキッドから見たら、パプワは珍しいくらい嬉しい表情らしい。
リキッドの問いには答えずに、ドアを開け家の外に出る。
「え、パプワ?どこ行くんだよ?」
行き成り外に飛び出したパプワの後を追う。
パプワは空を睨んでいる。
リキッドもパプワに倣い空を見上げる。
空を見渡すと飛行艦が空に浮かんでいる。
先端には円の中に六芒星。その中心に〝G〝の文字。間違いなくガンマ団だ。
そのまま軍艦を目で追い、着陸するであろう海岸を確認する。
「ガンマ団!?なんでこの島に!?」
パプワ、とリキッドは振り返る。
「!?パプワ?」
リキッドが振り返ったときには既にパプワは居なかった。
風圧で穏やかな海が波打ち、木々が音をたてて激しく揺れる。
飛行艦がゆっくりと地面に降り立つ。
風をものともせず、パプワは少し離れたところからそれを見守っていた。
ヴィーと軽い機械音をたて艦のハッチが開く。
赤いスーツに身を包まれた女性と、シックなスーツを着た男性が現れる。
カンカンと階段を下りる音がパプワの耳に聞こえる。
パプワはハッチに向けて走り出す。
女性が砂を踏みしめると同時に抱きついた。
「シンタローっ!」
シンタローと呼ばれた女性も嬉しそうにパプワを抱き上げる。
「パプワ!元気にしてたか?」
「当たり前だ!僕を誰だと思っているんだ?」
子供らしからぬ態度で答える。
シンタローはそんな相変わらずな態度に目を細め嬉しそうにみる。
「変わってねぇなぁ。」
「シンタローはずいぶんと変わったな。綺麗だぞ。」
「パプワにんな事褒められても嬉しかねーよ。」
そんな事を言いつつもシンタローの顔は相変わらず満面の笑みを浮かべている。
「感動の再会はそれまでにして、要件だ。」
後ろに控えていたキンタローが、シンタローのパプワを抱きかかえている腕をぐいっと引っ張る。
キンタローとパプワの目が合う。
キンタローの瞳が青く輝き、パプワの瞳も赤く輝く。
両者ともに『シンタローに触るな』、と威嚇する。
二人の視線をずらすように、抱きかかえていたパプワを地面に下ろす。
「おい、キンタロー子供相手に何してんだよ。」
「別に何もしていない。」
ふっと息を吐く。
「まぁ、いいけどよ・・・」
「さて。パプワ。俺がパプワ島に来た理由なんだが」
シンタローを遮る様にパプワが口を開く。
「分かっている。赤い玉と青い玉に会いに来たんだろう?」
「お?何で分かるんだ?」
「僕が来るように赤い玉にお願いしたからな。そのくらいは分かる。」
「お願いした?どういうことだ?」
「後で分かる。玉のところまで行くぞ。」
ザクザク砂を鳴らして、パプワが二人を先導する。
艦から歩く事しばし。海岸の直ぐ近くの木々の間にそれはあった。
あの時旅立った箱舟。
そのまま内部へと進む。
一番奥の行き止まりには大きな扉がある。
扉の左右の窪みには青・赤の秘石が埋め込まれていた。
「秘石・・・」
キンタローが呟く。
「久しぶりだな、シンタロー。」
「来てくれたのですね。」
赤と青の秘石が輝きシンタローに声を掛ける。
「俺はお前たちになんかもう会いたくなかったけどな。」
パプワがポツリと洩らす。
「どうしても、もう一度シンタローに会いたかったんだ。
だから赤い玉にシンタローに会えるように頼んだんだ。」
赤の秘石が輝く。
「パプワ君の初めてのお願いでしたからね。」
「私は別にどっちでも良かったんだがな。赤の玉がどうしても、というから。」
「だからって、何も女にすることねーだろーが!」
「そうでもしないとお前来なさそうだったし、面白からいいじゃん。」
キンタローが秘石との会話に割り込む。
ヒタっとシンタローの目を見つめ言う。
「シンタローに変わりはないからどちらでも良いとは思っているが、
今のままでいいじゃないか。綺麗だし。柔らかいし。」
「何言ってんだよ、キンタロー!」
オマエはアホか、と怒鳴る。
「ほら、見ろ。お前以外は喜んでいるんだからそのままでいいだろ。
・・・やはり面白い。」
青い秘石からくくっと笑い声が聞こえる。
「面白くなんかねーよ!戻せよ!元の姿に!」
「まあ、そんなことはこっちに置いておいて。」
「置くな!戻せ!」
シンタローの怒りをサラリと受け流す青い秘石。
「それに私もお前に用事がある。」
青の秘石の声のトーンが落ちる。
「コタローの事だ。今までも時々呼びかけていたのだが効果が無かった。」
シンタローの表情が変わる。それを受け秘石も続ける。
「島を破壊するだけの力を放出し続けてしまった。体への付加も大きかったのだろう。
それに心の整理もあっただろうしな。これは私にはわからないがな。」
「最近、反応があった。」
だが、と赤の秘石が青の秘石の続きを引き受ける。
「私たちの力だけではコタローを起こす事は出来ません。無理矢理になら出来ますが、
後がどうなるか分からない事は避けたいのです。」
「パプワ君、あれを渡してあげなさい。」
言われてパプワが何所に持っていたのか一輪の花を差し出す。
花を見驚く。
「これはあのときの花と同じものじゃないか。」
「その花と私たちの力があれば、コタローの目を覚ます事が出来るでしょう。」
「後は今までと同じように、我らもコタローに呼びかける。
その花の助けがあれば、時期目を覚ますだろう。」
パプワから花を受け取る。
「パプワ、ありがとう。」
「これでコタローの目が覚めるといいな。」
「ああ。」
二人を黙ってみていた青の秘石が再び輝く。
「今回は私たちがお前たちを呼んだからここにたどり着く事が出来た。
人が居れば争いが生まれる。この第二の聖地を汚すわけには行かない。
もう今回と同じ力を発することはない。たどり着くのは不可能だ。
だから思い残す事の無いようにな。」
そう言うと、光が消え沈黙が訪れた。
「ここにはもう用は無い。行くぞ。」
着た時と同じようにパプワが二人を連れ、外へと出る。
光が三人に降り注ぐ。
「シンタロー、俺は先に船に戻る。後から来い。」
ちらっとパプワを見、キンタローは飛行艦へと消えた。
その後ろ姿を見送る二人。
何とも言いがたい沈黙が訪れる。
「シンタロー、抱っこしてくれ。」
パプワがその沈黙を破った。
「ああ~?人にモノを頼むときはもうちょっと可愛く言うもんだぞ?」
抱っこなんて始めてのお願いにシンタローの顔が緩み、ホラよ、っと抱き上げる。
4年前と全く変わらず、少年は小さい。が体から溢れんばかりの力を発している。
パプワの子供特有の高い体温・柔らかい感触が手に伝わる。
伝わるぬくもりにシンタローが気を取られていると、
パプワが顔を近づけ桜色の形の良い唇に、ちゅっと可愛らしいキスを贈る。
「パプワ!」
抱いていたシンタローの腕からひらっと飛び降りる。
シンタローは唇を手のひらで押さえ、怒鳴る。
「いいじゃないか、ケチだな。」
ガクっと肩を落とす。
「俺は男なんだよ・・・、いや女だけど・・・」
力なく呟く。
気を取り直しパプワを見<る。
「じゃあな。」
まるでまた明日会えるかの様な言葉を贈る。
パプワも言葉を贈る。
「ああ。」
暫らく無言で見詰め合ったあと、シンタローはパプワに背を向け飛行艦へと歩き出す。
そのまま振り返ることなく、艦の中へと消えた。
大きな音をたて、飛行艦が動き出す。空へと飛び立つ。
パプワはその様子を見守る。
飛行艦が見えなくなってもパプワは見続けていた。
一人眠り続けていた少年の瞼がゆっくりと開く。
微かに口が動く。
「ありがとう・・・」
カーテンがゆれる。
穏やかな風が枕元に一輪飾った花を揺らし、
少年の頬を撫でるように通り過ぎた。
H16.5.8
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薄いピンク色が基調の部屋。
大きな窓にレースのカーテンがゆれる。
ベッドには一人少年が眠る。
目を閉じていてもわかる綺麗な顔立ち。まるで少女のようだ。
枕元には愛らしいぬいぐるみ。
その少年にはぬいぐるみの存在がよくあう。
部屋を見渡せば他にも、まるでお人形遊びで使うかのようなチェストや机が
そのまま大きくなったかのような家具が配置されている。
ただ、それが使われているような気配は無い。
「コタローが眠りについて4年か・・・。」
「ああ。」
コタローと呼ばれた少年の眠るベッド脇に備えてあった椅子にすわる2人の人間。
一人はコタローの金の髪を白いしなやかな手で優しく撫でる。
もう一人は静かにコタローを見つめる。
コタローは相変わらず穏やかな顔のまま目を開く気配は無い。
「俺、不安になるんだよ。もうコタローはこのまま目を覚まさないんじゃないんのかってさ。」
「・・・。」
キンタローは答えない。構わずシンタローは続ける。
「もう4年。色々な方法を試したけど、全部駄目だった。
医者も匙を投げた。あとは自然に目を覚ますのを待つしかないってな。」
シンタローは梳いていた手を止め、動かないコタローをじっと見つめる。
「シンタロー」
キンタローが片割れに呼びかける。
「秘石に会いに行ってはどうか?」
「は?」
思わず聞き返す。
「だから秘石に、だ。俺たち一族の創造主に。」
「会ったところでどうなるってんだ。」
シンタローはこんな体に変えてしまった秘石に思わずハッと悪態を吐く。
「会えば何とかなるのではないか?創造主だしお前を見てもそれだけの力を持っているのはわかる。」
俺は、と言葉を続ける。
「コタローが目を覚まさないのは、コタローの体よりも心に問題があるのかと思っていた。
しかし、4年は長い。寝ている間にもコタローの時間は流れていく。待つ方も限界が近い。」
だから、と。
「でも、どこに行けばいいんだよ?前のパプワ島へは行けないぜ。
パプワも秘石連れてどっか行っちまったしな。」
「お前が居れば問題ない。」
妙に自身をもって言い切るキンタロー。
「あ?俺?」
不思議そうに黒の目をキンタローに向ける。
それを受け理由を話す。
「そう。お前の体は秘石の発するエネルギーと同じ波動だ。だからそれを元に探索機を作れば。」
「そこまで解っていて、何で今まで黙ってたんだよ!」
思わず立ち上がり、声を荒げキンタローの襟を両手で掴む。
自然、キンタローを上から見下ろす形となる。シンタローの長い髪がキンタローの頬へと掛かる。
キンタローは僅かに濃い青をした目を細めただけで払いのけようとはしない。
「お前が躊躇していたからだ。」
キンタローの掴んでいたシンタローの手から力が抜ける。
その手をつかみ、立ったままのシンタローを見上げ、続ける。
「あの島は楽園だったのだろう?
今までの状態であそこ行ったら、楽園へと逃げ込む事になるかもしれない。
大切な場所だからこそ、遠ざけてしまう。」
違うか?と
「・・・。」
「もう行ってもいいのじゃないか。ここでのすることもあるし、あちらへと留まる心配は無いと思う。
コタローの事が解決したら、その体の事も聞けばいい。
俺はどちらでもシンタローには変わらないからいいのだけどな。」
キンタローは掴んだままのシンタローの手を引っ張り椅子に座らせる。
大人しくそれに従うシンタロー。
「・・・行ってもいいだろうか・・・。」
ポツリと言葉が漏れる。
「ああ。誰もお前を咎めない。」
力づけるようにキンタローはシンタローの手をギュッと包み込む。
シンタローは握られた手を見つめしばし考える。
誰よりも理解しているキンタローの言に頷く。
「勿論俺も行くぞ。」
「ああ、分かってる。技術者は必要だ。キンタローなら心強い。それにお前妙に過保護だしな。」
子供じゃないのにな、と苦笑をもらす。
「で、その装置とやらはどのくらいで完成するんだ?」
「案ずるな。実はもう出来ている。」
「はぁ?!出来てる?!」
うむ。とキンタローは頷く。
「完成しているなら、もうちっと早く言ってくれよ。」
シンタローの肩が、疲れたようにがくっと落ちる。
「可能性だけ示しもし完成出来なかったら期待するだけ失望も大きい。
お前やマジック、他のコタローの目が覚めるのを待っている人間に
そんな思いはさせたくなかったからな。」
ひょいっと肩をすくめ続ける。
「いや、実はな。最近思いついてこの間完成したばかりだった。
最初はコタローの脳に直接働きかける機械を作っていたのだがな。
心を閉ざしているかもしれないコタローにはやはりその方法は危険も伴う。
目を覚まさせるのに危険な事は冒せない。他に何か良い方法は無いかと思案していた。
ふと思ったんだ。秘石に直接会えれば。とな。」
「そうか。・・・コタローはどうするんだ?連れて行く必要はあるか?」
キンタローは首を横に振る。
「いや、もし道中何かあったら自分で対処できないコタローは危険過ぎる。
お前のときは夢に現れて、そのまま力が作用したんだ。本部のままで大丈夫だろう。」
「分かった。準備が出来次第出発するぞ。」
シンタローはその準備を思い、思いきり嫌そうな表情を浮かべる。
秀麗な眉目には皺が寄る。
「引退したマジックに借りをつくるのは嫌なんだがな。仕方がないな。コタローのためだ。代行を頼むか。」
「そうすると良いだろう。マジックは尤も適任だ。
コタローの為だし、シンタローの頼みなら絶対に快諾する。」
「コタロー。もう少し待っててくれ。」
シンタローはコタローの子供特有の柔らかな頬を一撫でし、気合をいれ立ち上がる。
「よし、これからの根回しに行くか。」
キンタローも続き立ち上がる。
「分かった。」
去り際にコタローを振り返る。
二人がドアの向こうへと消えた。
コタローは昏々と眠り続ける。
部屋はまた静寂に包まれた。
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緑豊かなその小さな島は透き通った煌めく青に彩られている。
見るもの全てに夢の島ではないだろうかと思わせる力がその島にはある。
基本的に島は熱帯なのだが何故か四季が存在し、更に不思議な事に4つの季節が混在している。
この島の動物は一匹を除き皆喋る。
愛らしい小動物から、毒を吐くが憎めないナマモノまで様々な生き物が住んでいる。
喋る時点で想像付くだろうが、この島には生態系は存在しない。
人間は2人だけだ。
島の主と言ってよい赤の一族の血をもつ超人的な少年パプワ。
この島と喋る動物たちに惚れ込み、新たな番人となった元ガンマ団特戦部隊の軍人リキッド。
島内の殆どが鬱葱と木々が茂る。が一部森が拓けた場所がある。
そこに島で唯一の家、パプワハウスが建っている。
動物の顔を模ったおもちゃの家の様な外観だ。
ここにパプワとリキッドは暮らして居る。
「来た。」
パプワの表情は殆ど変わらない。
4年間一緒に過ごして、リキッドもやっとパプワの微かな表情が読めるようになった。
「ん?何がだ?そんなに嬉しそうに言うなんて珍しいよな?」
どうやらリキッドから見たら、パプワは珍しいくらい嬉しい表情らしい。
リキッドの問いには答えずに、ドアを開け家の外に出る。
「え、パプワ?どこ行くんだよ?」
行き成り外に飛び出したパプワの後を追う。
パプワは空を睨んでいる。
リキッドもパプワに倣い空を見上げる。
空を見渡すと飛行艦が空に浮かんでいる。
先端には円の中に六芒星。その中心に〝G〝の文字。間違いなくガンマ団だ。
そのまま軍艦を目で追い、着陸するであろう海岸を確認する。
「ガンマ団!?なんでこの島に!?」
パプワ、とリキッドは振り返る。
「!?パプワ?」
リキッドが振り返ったときには既にパプワは居なかった。
風圧で穏やかな海が波打ち、木々が音をたてて激しく揺れる。
飛行艦がゆっくりと地面に降り立つ。
風をものともせず、パプワは少し離れたところからそれを見守っていた。
ヴィーと軽い機械音をたて艦のハッチが開く。
赤いスーツに身を包まれた女性と、シックなスーツを着た男性が現れる。
カンカンと階段を下りる音がパプワの耳に聞こえる。
パプワはハッチに向けて走り出す。
女性が砂を踏みしめると同時に抱きついた。
「シンタローっ!」
シンタローと呼ばれた女性も嬉しそうにパプワを抱き上げる。
「パプワ!元気にしてたか?」
「当たり前だ!僕を誰だと思っているんだ?」
子供らしからぬ態度で答える。
シンタローはそんな相変わらずな態度に目を細め嬉しそうにみる。
「変わってねぇなぁ。」
「シンタローはずいぶんと変わったな。綺麗だぞ。」
「パプワにんな事褒められても嬉しかねーよ。」
そんな事を言いつつもシンタローの顔は相変わらず満面の笑みを浮かべている。
「感動の再会はそれまでにして、要件だ。」
後ろに控えていたキンタローが、シンタローのパプワを抱きかかえている腕をぐいっと引っ張る。
キンタローとパプワの目が合う。
キンタローの瞳が青く輝き、パプワの瞳も赤く輝く。
両者ともに『シンタローに触るな』、と威嚇する。
二人の視線をずらすように、抱きかかえていたパプワを地面に下ろす。
「おい、キンタロー子供相手に何してんだよ。」
「別に何もしていない。」
ふっと息を吐く。
「まぁ、いいけどよ・・・」
「さて。パプワ。俺がパプワ島に来た理由なんだが」
シンタローを遮る様にパプワが口を開く。
「分かっている。赤い玉と青い玉に会いに来たんだろう?」
「お?何で分かるんだ?」
「僕が来るように赤い玉にお願いしたからな。そのくらいは分かる。」
「お願いした?どういうことだ?」
「後で分かる。玉のところまで行くぞ。」
ザクザク砂を鳴らして、パプワが二人を先導する。
艦から歩く事しばし。海岸の直ぐ近くの木々の間にそれはあった。
あの時旅立った箱舟。
そのまま内部へと進む。
一番奥の行き止まりには大きな扉がある。
扉の左右の窪みには青・赤の秘石が埋め込まれていた。
「秘石・・・」
キンタローが呟く。
「久しぶりだな、シンタロー。」
「来てくれたのですね。」
赤と青の秘石が輝きシンタローに声を掛ける。
「俺はお前たちになんかもう会いたくなかったけどな。」
パプワがポツリと洩らす。
「どうしても、もう一度シンタローに会いたかったんだ。
だから赤い玉にシンタローに会えるように頼んだんだ。」
赤の秘石が輝く。
「パプワ君の初めてのお願いでしたからね。」
「私は別にどっちでも良かったんだがな。赤の玉がどうしても、というから。」
「だからって、何も女にすることねーだろーが!」
「そうでもしないとお前来なさそうだったし、面白からいいじゃん。」
キンタローが秘石との会話に割り込む。
ヒタっとシンタローの目を見つめ言う。
「シンタローに変わりはないからどちらでも良いとは思っているが、
今のままでいいじゃないか。綺麗だし。柔らかいし。」
「何言ってんだよ、キンタロー!」
オマエはアホか、と怒鳴る。
「ほら、見ろ。お前以外は喜んでいるんだからそのままでいいだろ。
・・・やはり面白い。」
青い秘石からくくっと笑い声が聞こえる。
「面白くなんかねーよ!戻せよ!元の姿に!」
「まあ、そんなことはこっちに置いておいて。」
「置くな!戻せ!」
シンタローの怒りをサラリと受け流す青い秘石。
「それに私もお前に用事がある。」
青の秘石の声のトーンが落ちる。
「コタローの事だ。今までも時々呼びかけていたのだが効果が無かった。」
シンタローの表情が変わる。それを受け秘石も続ける。
「島を破壊するだけの力を放出し続けてしまった。体への付加も大きかったのだろう。
それに心の整理もあっただろうしな。これは私にはわからないがな。」
「最近、反応があった。」
だが、と赤の秘石が青の秘石の続きを引き受ける。
「私たちの力だけではコタローを起こす事は出来ません。無理矢理になら出来ますが、
後がどうなるか分からない事は避けたいのです。」
「パプワ君、あれを渡してあげなさい。」
言われてパプワが何所に持っていたのか一輪の花を差し出す。
花を見驚く。
「これはあのときの花と同じものじゃないか。」
「その花と私たちの力があれば、コタローの目を覚ます事が出来るでしょう。」
「後は今までと同じように、我らもコタローに呼びかける。
その花の助けがあれば、時期目を覚ますだろう。」
パプワから花を受け取る。
「パプワ、ありがとう。」
「これでコタローの目が覚めるといいな。」
「ああ。」
二人を黙ってみていた青の秘石が再び輝く。
「今回は私たちがお前たちを呼んだからここにたどり着く事が出来た。
人が居れば争いが生まれる。この第二の聖地を汚すわけには行かない。
もう今回と同じ力を発することはない。たどり着くのは不可能だ。
だから思い残す事の無いようにな。」
そう言うと、光が消え沈黙が訪れた。
「ここにはもう用は無い。行くぞ。」
着た時と同じようにパプワが二人を連れ、外へと出る。
光が三人に降り注ぐ。
「シンタロー、俺は先に船に戻る。後から来い。」
ちらっとパプワを見、キンタローは飛行艦へと消えた。
その後ろ姿を見送る二人。
何とも言いがたい沈黙が訪れる。
「シンタロー、抱っこしてくれ。」
パプワがその沈黙を破った。
「ああ~?人にモノを頼むときはもうちょっと可愛く言うもんだぞ?」
抱っこなんて始めてのお願いにシンタローの顔が緩み、ホラよ、っと抱き上げる。
4年前と全く変わらず、少年は小さい。が体から溢れんばかりの力を発している。
パプワの子供特有の高い体温・柔らかい感触が手に伝わる。
伝わるぬくもりにシンタローが気を取られていると、
パプワが顔を近づけ桜色の形の良い唇に、ちゅっと可愛らしいキスを贈る。
「パプワ!」
抱いていたシンタローの腕からひらっと飛び降りる。
シンタローは唇を手のひらで押さえ、怒鳴る。
「いいじゃないか、ケチだな。」
ガクっと肩を落とす。
「俺は男なんだよ・・・、いや女だけど・・・」
力なく呟く。
気を取り直しパプワを見<る。
「じゃあな。」
まるでまた明日会えるかの様な言葉を贈る。
パプワも言葉を贈る。
「ああ。」
暫らく無言で見詰め合ったあと、シンタローはパプワに背を向け飛行艦へと歩き出す。
そのまま振り返ることなく、艦の中へと消えた。
大きな音をたて、飛行艦が動き出す。空へと飛び立つ。
パプワはその様子を見守る。
飛行艦が見えなくなってもパプワは見続けていた。
一人眠り続けていた少年の瞼がゆっくりと開く。
微かに口が動く。
「ありがとう・・・」
カーテンがゆれる。
穏やかな風が枕元に一輪飾った花を揺らし、
少年の頬を撫でるように通り過ぎた。
H16.5.8
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ソファーで寛いでいるシンタローにマジックが声を掛けた。
「シーンちゃーん。これ、これ習ってみない?」
マジックがパンフレットをぴらっとシンタローに差し出しながら、さりげなく隣に座る。
それを気にするでもなく、パンフレットを受け取る。
「あ~~ん?なんだこれ?」
『茶道入門』
シンタローはパンフレットの表紙を見、思わずというように後ろにポイっと投げ捨てる。
「ああ、シンちゃん!何するんだい!」
「なんなんだよ、アンタはっ!この間から!」
そう、ここ数日マジックは色々な稽古事のパンフレットをシンタローに押し付けている。
怒るシンタローに対し、マジックが力説する。
「何を言うんだいシンちゃん!これはとても重要な事だよ。シンちゃんはもう男の子じゃないんだから。
見目麗しい女の子なんだよっ!それに、ガンマ団はもうパパの頃のように殺し屋集団って
呼ばれたくないんでしょ?」
パパはシンちゃんが隣にいて、世界征服だけすれば他のものはどうでもいいんだけど、
とサラリと壮大かつ人でなしの事を言う。
そのまましつこく食い下がるマジック。
「新総帥が女性だからこそ、良いイメージがもたれやすくなるかもよ。
例えばさ、各国のお偉いさんを招いてさシンちゃんがお茶でもてなしたり、踊りを披露したりさ。
友好的な関係が築く事が出来るかもよ。シンちゃんはそんなことしなくても勿論可愛いし、美人だけどねーv」
そのまま、延々に喋り続けそうなマジックをシンタローが指先でこめかみを押さえながらさえぎる。
「だいたいガンマ団の総帥がどの面提げてこんなの習いに行くんだよっ!」
「ああ、なんだシンちゃんそんなこと心配していたの。シンちゃんは恥ずかしがりやさんだなぁ」
そんなところも可愛くて堪らないっとマジックはシンタローに擦り寄る。
「そんなにシンちゃんが嫌なら、パパが教えてあげるよ。大丈夫、パパは何だって出来るからv」
以前の節だった手とは違い、柔らかなシンタローの両手を包み込みながら言う。
「冗談じゃない、アンタに習うぐらいならどっか適当に教師探して、本部に連れてくるっ!」
「本当?じゃあ、連れてくるからねっ。
日本舞踊にしようよ。シンちゃんの舞と艶姿が拝める、一石二鳥。
さらに足腰も鍛えられるし、女らしいしぐさも身につくみたいだよ。ね?」
シンタローから目を離し、どこか遠くを思い浮かべながらマジックは言う。
「それに、パパは大和なでしこの様な女性が好きなんだ。」
マジックのその言葉を聴き、シンタローは亡き母親を思い浮かべる。
マジックは自分の気に入ったもの以外は容赦なくなぎ倒していく。
だがコタローが生まれるまでは、自分の妻と家族だけは大切にしていた。
「ふ~ん」
シンタローはその事を思い出しながら、相槌を打つ。
「ママの着物姿、綺麗だったでしょ?色々な着物を着せてあげたくて、パパ着付けも覚えたんだよ。
ね?着物はパパが着付けるから、踊りだけでも。
来月に予定している就任の挨拶、あのときに何かシンちゃん自ら余興しようよ~」
ねっ、と懇願してくるマジック。
「判ったよっ!やりゃあいいんだろっ」
マジックの理想の女性と母親を思い浮かべた所為だろうか、
シンタローが半ば自棄のように了承の意を示した。
それから1ヵ月後。
ガンマ団本部のホールに団員が集められた。
無論、現場を離れるわけにはいかぬものも居るので全員というわけにはいかない。
それでも八割近い団員と、一族の筆頭である前総帥のマジック、キンタロー、グンマもこの場に構えた。
壇上に真っ赤なパンツスーツを着たシンタローが立つ。
するりとした長い足、少し開いた白いブラウスからは白い肌がのぞいている。
服の上からでもよく分かる明らかに男性とは異なる体躯。
ざわめく会場。
「おい、あれシンタロー新総帥?」
「そうじゃないのか?」
「噂、本当だったんだ。」
「本当に女性になっていたんだなぁ。」
「なんでも、秘石の力だとか」
「相変わらず色々な法則を無視したむちゃくちゃな一族だな」
などという団員の声があちこちでささやかれる。
それをまるで聞こえないかのようにシンタローが口を開く。
「今日から俺がマジックの後を継ぎ、ガンマ団の総帥になる。」
ざわめきが止まる。
シンタローの声が続き、会場に響く。
「ただし、今までのように無益な殺生は一切しない。
この方針に賛同してくれるものだけが、明日からもまた勤務してくれ。」
あと、と僅かに頬が赤くなりシンタローは言う。
「これから30分後に、俺からお前たちに余興を贈る。」
見てくれ。と締めくくり豊かな黒髪を揺らし、壇上を後にする。
シンタローの姿が置くに消えると、幕が下りた。
舞台の様子が隠される。
何が始まるのだろうと、団員たちは体を硬くしたままシンタローの登場を待つ。
再び壇上の幕があがり、白い装束をまっとった女性が現れる。
頭巾をかぶっていて表情が見えない。
女性が歌にあわせ踊りだす。
※妄執の雲晴れやらぬ朧夜の
恋に迷いし わが心
忍山 口舌の種の恋風が
吹けども傘に雪もって 積もる思いは泡雪の
消えて果敢なき恋路とや 思い重なる胸の闇
せめて哀れと夕暮れに ちらちら雪に濡鷺の
しょんぼりと可愛いらし
シンタローが舞台であでやかに舞う。
頭巾が取り払われる。
顔が晒しだされる。
まるで絹のように白くなめらかな肌。
切れ長な瞳ながらどこかたおやかな印象を与える。
頬は桜色にそまり、ふっくらとした形のよい唇は紅い。
まるで穢れをしなぬ白魚のような手が傘を操る。
シンタローの踊りは拙いものだ。
だが、その場の誰しもがシンタローにのまれる。
まるで時間が止まったかのような静寂。
舞台の上で舞うシンタロー以外動くものはいない。
踊りは最後を迎える。
シンタローが扮する白鷺は苦しげにまわり、消えてゆく。
そして、ゆるやかに幕が下りた。
『俺は貴女にそんな思いはさせませんっ』
このとき団員達の心がひとつになった。
「えー、団員諸君。」
幕の前に前総帥であるマジックがマイクを持って登場する。
隣にはマジックと同じ、金の髪と青い目を持つキンタローが控える。
「前総帥である私から挨拶を。」
壇上から見渡し言葉をつむぐ。
「私の頃と同じように、シンタローを支えて欲しい。
無論、最初にシンタローが述べたように強制はしない。
これはシンタローの父親としての言葉だ。」
『マジック様、俺どこまでもシンタロー総帥についていきます!』
と言う声があちこちから上がる。
その声に満足そうにマジックが頷く。
「ありがとう。さて、ここからが本題だ。」
本題?と団員たちが首をかしげる。
「シンちゃんを支えてくれる事は非常に嬉しく思うが、
それ以上の事を望む不埒ものがいたら、まず私とキンタローと手合わせをしてもらう。
全てはそこからだ。」
マジックの隣で、キンタローが深く頷く。
それじゃと片手をあげ、ここに居る全団員には一生かかっても無理な事を言い残し
キンタローを連れ、颯爽と去る。
その後ろ姿を見送る団員たち。彼らの心はみな同じだ。
打倒っマジック&キンタロー。
この翌日から鍛錬強化メニューが大人気になった。
因みにガンマ団の裏名は、シンタロー保護会~あの人に幸せを~になったという。
後書。リク内容:日本かぶれのマジック(着物,日舞,琴,茶道)
キツネコさま、感想とリクをありがとうございました。
今までで一番時間が掛かってしまいました。コレが限界です、スイマセン。宜しかったら貰って下さい・・・
ワタクシ日舞などサッパリわかりませぬ。・・・日舞をご存知の方、ご容赦を~~
一応鷺娘。白鷺が町娘に転じ、恋が恨みへと、最後は地獄の苦しみをあじわい死んでしまう。
てな感じのお話らしいです。あれ、最後って死んじゃう?違うかも・・・
※華翠さん www005.upp.so-net.ne.jp/kasui/op.htm
長唄はこちらのサイトさんの紹介を勝手に抜粋してしまいました。他にも凄い数の歌がありました。
なんだか、物悲しい・悲恋って感じのが多いのですね~
H16.4.25
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ふと書類から目を上げると総帥室の窓から、一隻の軍艦が見えた。側面には"G"の文字がハッキリと確認できる。
連絡もなしに軍艦を使用し自由に飛び回っているのは、獅子を彷彿される様な容姿と雰囲気を持った男だけだ。
最近姿を見せなかったがようやく帰還したのだろう。
それを確認したしばらく後、ノックもなしに勢い良く扉が開かれる。
「よう、シンタロー。報告に来てやったぞ。」
思ったとおり現れたのはハーレムだ。
「・・・・・。」
ハーレムは入ってすぐに立ち尽くし、目を限界まで見開きまじまじと俺を見つめてくる。
「あのさぁ~、アンタ誰?なんでここに居るんだ?」
口を開こうとするとハーレムが遮る。
「あ、シンタローの女か。総帥室に女連れ込むなんてあのお坊っちゃんもやるねぇ。」
口笛さえ吹きそうな勢いで茶化す。
「で、シンタローはどこだ?」
「アホかっ!よく見ろよっ!」
勢い良く立ち上がる。キャスター付きの椅子だったので、そのまま後ろの壁に鈍い音を立ててぶつかった。
そんなことは気にせずに机を回り込みズカズカとハーレムの前に立つ。
うわ、今まで殆ど目線が同じだったのに何か頭一個分ぐらいデカくなっている。
いや、俺が小さくなったのか。
・・・。なんかどっちにしろムカつく。
「ん~~~?」
ハーレムが腰を屈め見つめる。
視線が合わない・・・。ハーレムの目線は顔のやや下にあるようだ。視線を追う。自分の胸を見る。
「小さい。」
ホレ、俺が大きくしてやろう、
言いつつ、胸にでかい手のひらを押し付けぐにぐに触ってくる。
そのあまりの気色悪い感覚に右手をハーレムに突き出す。
何かを感じ取ったのだろうか、それとほぼ同時にハーレムが手を離し横に逃げ俺の右手から距離をとる。
流石は特戦部隊隊長か。が、構わずにそのまま溜め無し眼魔砲を放つ。
「眼魔砲。」
ハーレムの横を青く輝くエネルギー体が通過し、後ろの壁に炸裂する。
ガラガラと素晴らしい音を奏でながら、壁が崩壊していく。
新たに開いた大穴からは小憎らしい程の青空が見えた。
ハーレムは大穴と青空とを一瞥した後怒鳴る。
「あ、アブねー。俺じゃなきゃ当たっていたぞ、コラッ」
怒鳴ってから考え込む。
「なんで、アンタ眼魔砲打てるんだ?」
鈍い。
「いい加減解れ。俺はシンタローだよ。」
「は?」
ハーレムが再び俺を凝視する。今度は口が空いている。
あ、獅子が獅子舞になった。そんなことが頭をよぎる。
獅子舞が喋る。
「オマエが?」
「そう。俺が。」
「シンタロー?」
「シンタローだ。」
重々しくうなずいてやった。
「・・・。オマエはたしか俺の記憶によると生まれた時から最後に会った時まで男だったと思うが・・・」
「ああっ、つい数ヶ月前までは男だったんだよ!生まれて25年間ぐらいはなっ!」
見当違いだとは分かっているが、ついハーレムにきつく当たってしまう。
そんな俺の様子には気にも留めず、尤もな疑問を口にした。
「・・・何で女?」
突然、バンッと扉が開く。
「シンタロー!」
先ほどの眼魔砲を感知したのだろうか、キンタローが部屋に飛び込んできた。
「無事か?何があった?!」
白衣を翻しハーレムの横をスッと通り過ぎ、俺の真正面に立つ。
まるで抱き付かんばかりの勢いだ。
俺のなんともない様子を確認し、安堵しているキンタローにクイっと顎でハーレムの存在を示した。
指した先をキンタローが目で追う。
「・・・ああ。」
それだけの動作で、だいたい何があったか想像出来たようだ。
「ハーレムは知らなかったのか?」
「ああ、本部に寄り付きもしない命令違反ばっかりのヤツにこんな事知らせても仕方ねーと思って。」
「そうか。」
納得するキンタロー。
そんな俺たち二人のやり取りを見ていたハーレムが声を掛けていた。
「おーい。俺を無視するなー。」
再び同じ質問を口にする。
「で、何でシンタローは女になっているんだ。」
ハーレムは俺とキンタローに交互に視線を向ける。
「何度もこんな事説明するの馬鹿らしいし虚しくなるんで、キンタロー、頼むわ。」
「わかった。」
と軽く頷く。
キンタローの説明を聞き終えたハーレムは一言吐き捨てる。
「・・・俺たちのこと何だと思っているんだ・・・」
「まぁ、今更アレのする事に文句言っても仕方ないしな。
どうやら元に戻す気もない様だしそれについてはもう諦めた。妙に喜んでいる奴らもいるし。」
と、隣に立つキンタローを見上げチロっと軽くねめつける。
キンタローは涼しい顔をして受け流す。
「まぁ、今は俺の性別の事はあっちに置いておくとして。」
さあ本題だ、と視線をハーレムに戻す。
「親父の代とは方針を変えた。」
ハーレムは知っていると、頷き口を開く。
「一度動けば、標的地は焦土と化す。それが特戦部隊だ。そんな甘い事には賛同できない。
女になって、心まで女々しくなっちまったのか?元々甘かったがな。」
余計な一言は黙殺する。
「わかっている。だが、その甘い事を実現したい。」
パプワにも約束したし、と心の中で呟く。
「アンタの様な人は、無理にとは思わない。頼んでも絶対に首を縦には振らないだろうからな。」
「よくわかってるじゃねーかよ。」
それに肩をすくめ応える。
「餞別にあの軍艦はくれてやるよ。部下もアンタ以外には従わないだろう。直属だしな。
連れて行ってやってくれ。」
「ハッ、言われなくとも。精々、犬死はしないこったな。」
ハーレムはそう言い捨て、踵を返す。
黙ってその後ろ姿を見送った。
「大丈夫かシンタロー?あれでもあの叔父はオマエの事を心配しているのだと思うぞ。」
「ああ。分かっている。平気だ。」
壁に開いた大穴から一陣の風が吹く。
俺の黒髪とキンタローの金髪が風になびく。
その風を受けてキンタローが一言呟く。
「・・・南風、かな。」
「ああ。」
鮮やかな青い空に真っ白い雲が風に乗って流れる。
小憎らしかった青い空が、今は勇気をくれる。
H16.4.30
→5へ
|単発| |女体化| |リキシンお題| |シン受けお題| |キンシンお題|
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ソファーで寛いでいるシンタローにマジックが声を掛けた。
「シーンちゃーん。これ、これ習ってみない?」
マジックがパンフレットをぴらっとシンタローに差し出しながら、さりげなく隣に座る。
それを気にするでもなく、パンフレットを受け取る。
「あ~~ん?なんだこれ?」
『茶道入門』
シンタローはパンフレットの表紙を見、思わずというように後ろにポイっと投げ捨てる。
「ああ、シンちゃん!何するんだい!」
「なんなんだよ、アンタはっ!この間から!」
そう、ここ数日マジックは色々な稽古事のパンフレットをシンタローに押し付けている。
怒るシンタローに対し、マジックが力説する。
「何を言うんだいシンちゃん!これはとても重要な事だよ。シンちゃんはもう男の子じゃないんだから。
見目麗しい女の子なんだよっ!それに、ガンマ団はもうパパの頃のように殺し屋集団って
呼ばれたくないんでしょ?」
パパはシンちゃんが隣にいて、世界征服だけすれば他のものはどうでもいいんだけど、
とサラリと壮大かつ人でなしの事を言う。
そのまましつこく食い下がるマジック。
「新総帥が女性だからこそ、良いイメージがもたれやすくなるかもよ。
例えばさ、各国のお偉いさんを招いてさシンちゃんがお茶でもてなしたり、踊りを披露したりさ。
友好的な関係が築く事が出来るかもよ。シンちゃんはそんなことしなくても勿論可愛いし、美人だけどねーv」
そのまま、延々に喋り続けそうなマジックをシンタローが指先でこめかみを押さえながらさえぎる。
「だいたいガンマ団の総帥がどの面提げてこんなの習いに行くんだよっ!」
「ああ、なんだシンちゃんそんなこと心配していたの。シンちゃんは恥ずかしがりやさんだなぁ」
そんなところも可愛くて堪らないっとマジックはシンタローに擦り寄る。
「そんなにシンちゃんが嫌なら、パパが教えてあげるよ。大丈夫、パパは何だって出来るからv」
以前の節だった手とは違い、柔らかなシンタローの両手を包み込みながら言う。
「冗談じゃない、アンタに習うぐらいならどっか適当に教師探して、本部に連れてくるっ!」
「本当?じゃあ、連れてくるからねっ。
日本舞踊にしようよ。シンちゃんの舞と艶姿が拝める、一石二鳥。
さらに足腰も鍛えられるし、女らしいしぐさも身につくみたいだよ。ね?」
シンタローから目を離し、どこか遠くを思い浮かべながらマジックは言う。
「それに、パパは大和なでしこの様な女性が好きなんだ。」
マジックのその言葉を聴き、シンタローは亡き母親を思い浮かべる。
マジックは自分の気に入ったもの以外は容赦なくなぎ倒していく。
だがコタローが生まれるまでは、自分の妻と家族だけは大切にしていた。
「ふ~ん」
シンタローはその事を思い出しながら、相槌を打つ。
「ママの着物姿、綺麗だったでしょ?色々な着物を着せてあげたくて、パパ着付けも覚えたんだよ。
ね?着物はパパが着付けるから、踊りだけでも。
来月に予定している就任の挨拶、あのときに何かシンちゃん自ら余興しようよ~」
ねっ、と懇願してくるマジック。
「判ったよっ!やりゃあいいんだろっ」
マジックの理想の女性と母親を思い浮かべた所為だろうか、
シンタローが半ば自棄のように了承の意を示した。
それから1ヵ月後。
ガンマ団本部のホールに団員が集められた。
無論、現場を離れるわけにはいかぬものも居るので全員というわけにはいかない。
それでも八割近い団員と、一族の筆頭である前総帥のマジック、キンタロー、グンマもこの場に構えた。
壇上に真っ赤なパンツスーツを着たシンタローが立つ。
するりとした長い足、少し開いた白いブラウスからは白い肌がのぞいている。
服の上からでもよく分かる明らかに男性とは異なる体躯。
ざわめく会場。
「おい、あれシンタロー新総帥?」
「そうじゃないのか?」
「噂、本当だったんだ。」
「本当に女性になっていたんだなぁ。」
「なんでも、秘石の力だとか」
「相変わらず色々な法則を無視したむちゃくちゃな一族だな」
などという団員の声があちこちでささやかれる。
それをまるで聞こえないかのようにシンタローが口を開く。
「今日から俺がマジックの後を継ぎ、ガンマ団の総帥になる。」
ざわめきが止まる。
シンタローの声が続き、会場に響く。
「ただし、今までのように無益な殺生は一切しない。
この方針に賛同してくれるものだけが、明日からもまた勤務してくれ。」
あと、と僅かに頬が赤くなりシンタローは言う。
「これから30分後に、俺からお前たちに余興を贈る。」
見てくれ。と締めくくり豊かな黒髪を揺らし、壇上を後にする。
シンタローの姿が置くに消えると、幕が下りた。
舞台の様子が隠される。
何が始まるのだろうと、団員たちは体を硬くしたままシンタローの登場を待つ。
再び壇上の幕があがり、白い装束をまっとった女性が現れる。
頭巾をかぶっていて表情が見えない。
女性が歌にあわせ踊りだす。
※妄執の雲晴れやらぬ朧夜の
恋に迷いし わが心
忍山 口舌の種の恋風が
吹けども傘に雪もって 積もる思いは泡雪の
消えて果敢なき恋路とや 思い重なる胸の闇
せめて哀れと夕暮れに ちらちら雪に濡鷺の
しょんぼりと可愛いらし
シンタローが舞台であでやかに舞う。
頭巾が取り払われる。
顔が晒しだされる。
まるで絹のように白くなめらかな肌。
切れ長な瞳ながらどこかたおやかな印象を与える。
頬は桜色にそまり、ふっくらとした形のよい唇は紅い。
まるで穢れをしなぬ白魚のような手が傘を操る。
シンタローの踊りは拙いものだ。
だが、その場の誰しもがシンタローにのまれる。
まるで時間が止まったかのような静寂。
舞台の上で舞うシンタロー以外動くものはいない。
踊りは最後を迎える。
シンタローが扮する白鷺は苦しげにまわり、消えてゆく。
そして、ゆるやかに幕が下りた。
『俺は貴女にそんな思いはさせませんっ』
このとき団員達の心がひとつになった。
「えー、団員諸君。」
幕の前に前総帥であるマジックがマイクを持って登場する。
隣にはマジックと同じ、金の髪と青い目を持つキンタローが控える。
「前総帥である私から挨拶を。」
壇上から見渡し言葉をつむぐ。
「私の頃と同じように、シンタローを支えて欲しい。
無論、最初にシンタローが述べたように強制はしない。
これはシンタローの父親としての言葉だ。」
『マジック様、俺どこまでもシンタロー総帥についていきます!』
と言う声があちこちから上がる。
その声に満足そうにマジックが頷く。
「ありがとう。さて、ここからが本題だ。」
本題?と団員たちが首をかしげる。
「シンちゃんを支えてくれる事は非常に嬉しく思うが、
それ以上の事を望む不埒ものがいたら、まず私とキンタローと手合わせをしてもらう。
全てはそこからだ。」
マジックの隣で、キンタローが深く頷く。
それじゃと片手をあげ、ここに居る全団員には一生かかっても無理な事を言い残し
キンタローを連れ、颯爽と去る。
その後ろ姿を見送る団員たち。彼らの心はみな同じだ。
打倒っマジック&キンタロー。
この翌日から鍛錬強化メニューが大人気になった。
因みにガンマ団の裏名は、シンタロー保護会~あの人に幸せを~になったという。
後書。リク内容:日本かぶれのマジック(着物,日舞,琴,茶道)
キツネコさま、感想とリクをありがとうございました。
今までで一番時間が掛かってしまいました。コレが限界です、スイマセン。宜しかったら貰って下さい・・・
ワタクシ日舞などサッパリわかりませぬ。・・・日舞をご存知の方、ご容赦を~~
一応鷺娘。白鷺が町娘に転じ、恋が恨みへと、最後は地獄の苦しみをあじわい死んでしまう。
てな感じのお話らしいです。あれ、最後って死んじゃう?違うかも・・・
※華翠さん www005.upp.so-net.ne.jp/kasui/op.htm
長唄はこちらのサイトさんの紹介を勝手に抜粋してしまいました。他にも凄い数の歌がありました。
なんだか、物悲しい・悲恋って感じのが多いのですね~
H16.4.25
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ふと書類から目を上げると総帥室の窓から、一隻の軍艦が見えた。側面には"G"の文字がハッキリと確認できる。
連絡もなしに軍艦を使用し自由に飛び回っているのは、獅子を彷彿される様な容姿と雰囲気を持った男だけだ。
最近姿を見せなかったがようやく帰還したのだろう。
それを確認したしばらく後、ノックもなしに勢い良く扉が開かれる。
「よう、シンタロー。報告に来てやったぞ。」
思ったとおり現れたのはハーレムだ。
「・・・・・。」
ハーレムは入ってすぐに立ち尽くし、目を限界まで見開きまじまじと俺を見つめてくる。
「あのさぁ~、アンタ誰?なんでここに居るんだ?」
口を開こうとするとハーレムが遮る。
「あ、シンタローの女か。総帥室に女連れ込むなんてあのお坊っちゃんもやるねぇ。」
口笛さえ吹きそうな勢いで茶化す。
「で、シンタローはどこだ?」
「アホかっ!よく見ろよっ!」
勢い良く立ち上がる。キャスター付きの椅子だったので、そのまま後ろの壁に鈍い音を立ててぶつかった。
そんなことは気にせずに机を回り込みズカズカとハーレムの前に立つ。
うわ、今まで殆ど目線が同じだったのに何か頭一個分ぐらいデカくなっている。
いや、俺が小さくなったのか。
・・・。なんかどっちにしろムカつく。
「ん~~~?」
ハーレムが腰を屈め見つめる。
視線が合わない・・・。ハーレムの目線は顔のやや下にあるようだ。視線を追う。自分の胸を見る。
「小さい。」
ホレ、俺が大きくしてやろう、
言いつつ、胸にでかい手のひらを押し付けぐにぐに触ってくる。
そのあまりの気色悪い感覚に右手をハーレムに突き出す。
何かを感じ取ったのだろうか、それとほぼ同時にハーレムが手を離し横に逃げ俺の右手から距離をとる。
流石は特戦部隊隊長か。が、構わずにそのまま溜め無し眼魔砲を放つ。
「眼魔砲。」
ハーレムの横を青く輝くエネルギー体が通過し、後ろの壁に炸裂する。
ガラガラと素晴らしい音を奏でながら、壁が崩壊していく。
新たに開いた大穴からは小憎らしい程の青空が見えた。
ハーレムは大穴と青空とを一瞥した後怒鳴る。
「あ、アブねー。俺じゃなきゃ当たっていたぞ、コラッ」
怒鳴ってから考え込む。
「なんで、アンタ眼魔砲打てるんだ?」
鈍い。
「いい加減解れ。俺はシンタローだよ。」
「は?」
ハーレムが再び俺を凝視する。今度は口が空いている。
あ、獅子が獅子舞になった。そんなことが頭をよぎる。
獅子舞が喋る。
「オマエが?」
「そう。俺が。」
「シンタロー?」
「シンタローだ。」
重々しくうなずいてやった。
「・・・。オマエはたしか俺の記憶によると生まれた時から最後に会った時まで男だったと思うが・・・」
「ああっ、つい数ヶ月前までは男だったんだよ!生まれて25年間ぐらいはなっ!」
見当違いだとは分かっているが、ついハーレムにきつく当たってしまう。
そんな俺の様子には気にも留めず、尤もな疑問を口にした。
「・・・何で女?」
突然、バンッと扉が開く。
「シンタロー!」
先ほどの眼魔砲を感知したのだろうか、キンタローが部屋に飛び込んできた。
「無事か?何があった?!」
白衣を翻しハーレムの横をスッと通り過ぎ、俺の真正面に立つ。
まるで抱き付かんばかりの勢いだ。
俺のなんともない様子を確認し、安堵しているキンタローにクイっと顎でハーレムの存在を示した。
指した先をキンタローが目で追う。
「・・・ああ。」
それだけの動作で、だいたい何があったか想像出来たようだ。
「ハーレムは知らなかったのか?」
「ああ、本部に寄り付きもしない命令違反ばっかりのヤツにこんな事知らせても仕方ねーと思って。」
「そうか。」
納得するキンタロー。
そんな俺たち二人のやり取りを見ていたハーレムが声を掛けていた。
「おーい。俺を無視するなー。」
再び同じ質問を口にする。
「で、何でシンタローは女になっているんだ。」
ハーレムは俺とキンタローに交互に視線を向ける。
「何度もこんな事説明するの馬鹿らしいし虚しくなるんで、キンタロー、頼むわ。」
「わかった。」
と軽く頷く。
キンタローの説明を聞き終えたハーレムは一言吐き捨てる。
「・・・俺たちのこと何だと思っているんだ・・・」
「まぁ、今更アレのする事に文句言っても仕方ないしな。
どうやら元に戻す気もない様だしそれについてはもう諦めた。妙に喜んでいる奴らもいるし。」
と、隣に立つキンタローを見上げチロっと軽くねめつける。
キンタローは涼しい顔をして受け流す。
「まぁ、今は俺の性別の事はあっちに置いておくとして。」
さあ本題だ、と視線をハーレムに戻す。
「親父の代とは方針を変えた。」
ハーレムは知っていると、頷き口を開く。
「一度動けば、標的地は焦土と化す。それが特戦部隊だ。そんな甘い事には賛同できない。
女になって、心まで女々しくなっちまったのか?元々甘かったがな。」
余計な一言は黙殺する。
「わかっている。だが、その甘い事を実現したい。」
パプワにも約束したし、と心の中で呟く。
「アンタの様な人は、無理にとは思わない。頼んでも絶対に首を縦には振らないだろうからな。」
「よくわかってるじゃねーかよ。」
それに肩をすくめ応える。
「餞別にあの軍艦はくれてやるよ。部下もアンタ以外には従わないだろう。直属だしな。
連れて行ってやってくれ。」
「ハッ、言われなくとも。精々、犬死はしないこったな。」
ハーレムはそう言い捨て、踵を返す。
黙ってその後ろ姿を見送った。
「大丈夫かシンタロー?あれでもあの叔父はオマエの事を心配しているのだと思うぞ。」
「ああ。分かっている。平気だ。」
壁に開いた大穴から一陣の風が吹く。
俺の黒髪とキンタローの金髪が風になびく。
その風を受けてキンタローが一言呟く。
「・・・南風、かな。」
「ああ。」
鮮やかな青い空に真っ白い雲が風に乗って流れる。
小憎らしかった青い空が、今は勇気をくれる。
H16.4.30
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『新しい体をやろう』
『それは元赤の番人のですからね』
『赤と青の融合体であるお前には期待している』
『どうか、パプワ君の思いを・・・』
『ついでに付け加えると、その方が面白いってこともあるが。
じゃあ、色々頑張れよ~。あ、その体、身体能力が男に劣るけど、
身を守る分、眼魔砲の威力は青の一族最強にしといたから。安心しろよ。』
一面真っ暗な世界。
赤・青の秘石のバカな会話が終わったら現れた光。
あまりの眩しさに目を瞑る。
焼きついている。
もう一度目を開ける。
自室のしみ一つ無い、無機質な天井が見えた。
「あ゛ー、変な夢を見た・・・」
思わず声に出して呟く。
ん?なんだか違和感を覚える。
俺、こんな声だっけ?
直接自分の頭に響く声と、他人が聞く声は違うというが。
俺は今いつもどおりだぞ?
まあ、いいか。とベッドから起き上がり洗面台へと向かう。
鏡には知らない女が映っていた・・・
は?
今俺は鏡の前に立っている。
つまり、鏡に映っている女は俺ってことだ。
OK?うんOK。そんなのあたりまえじゃないか、と頭の中で
勝手に一人会話が進行していく。
間。
あ、無心ってなれるもんなんだなー。
どうしてもほかの事考えちゃうじゃん?普通はさ。
どうやら頭がこの状況を受け入れられないらしい。
うん。そりゃそーだヨ。
取り敢えず、鏡の前で動く。
右手をあごに持っていった。
当然鏡の中の女も同じ動きをした。
あ、髭がまったくないわ。
あんまり毛深くないから一日ぐらいほっといてもそんな目立たないんだけど、
やっぱ感触が気持ち悪いからさ。
今日は剃らなくていいみたいだ。うん。楽でイイワ。
どーしても現実から、それていく。
今度は、自分の胸を見てみた。
なんか、膨らみが出来てるわ。
・・・。やっぱまだ寝ぼけてるのかなー。
トイレにでも行って来よう
ドアを開き、中に入る。
ドアを閉じる。
スエットをおろす。
・・・・。
・・・・・・・・。
「あ゛ーーーーーーーーーっっ!!!」
ガンマ団本部とは違い、自宅は親子喧嘩で乱発する眼魔砲対策のため強度重視のため
防音処理は特にしていない。
そのため普通の住宅よりは、音は漏れにくくなっているが、アレだけの大声を出せば
家中に響いたであろう。
2つの物凄い足音が聞こえる。
「シンちゃん!」
「シンタロー、どうした!?」
シンタローの叫び声を聴き、駆けつけた父親と従兄弟。
父親といってもシンタロー自身は青の秘石から作られたので血のつながりは全く無い。
従兄弟もしかり。
パプワ島では色々あったが、元は同じ存在。愛憎は紙一重。
最近は何故かシンタローになついていた。
2人がシンタローの部屋で、見たのはシンタローの面影を残した、妙齢の美女だった
長く艶やかな黒髪。切れ長の眼。
「「・・・・・・・・」」
「シンちゃん?」
「シンタロー?」
「と、父さん・・・。キンタロー・・・・・。なんだか、俺、女になったみたいだわ。」
「シ、シンちゃーんvvv」
シンタローに突進するマジック。
我を失っているため、避けきれずにそのままマジックに抱きしめられる。
と、なるハズだったか、女の身ではマジックの勢いを受け止めきれずに後ろのベッドへと二人とも倒れこむ。
「ぐえっ」
潰れるシンタローには気づかず、
「シンちゃん、シンちゃんは女の子だっただね!パパ知らなかったよ!!
これで、パパと思う世間に堂々と存分に愛し合えるね!」
「叔父貴。シンタローが潰れている。それにいつも外聞関係なくシンタローに抱きついているじゃないか。」
どいてやれ。っとマジックの腕をつかみシンタローから離す。
「で、シンちゃん。なにがあったの?」
マジックに問われ、昨夜見た夢を話す。
アレしか原因がないと。
「秘石も粋な事してくれるねぇ。」
「人の一大事を『粋な事』で済ますなっ」
「でも、女になったからと言って困ることもあるまい。
弱くなった分、眼魔砲の威力は上げる、といったんだろう?
実際に女になっているわけだし、威力も大丈夫だろう。
女で総帥と舐められる事もあるまい。お前に適うヤツがいないんだからな。」
だから、そのままでいいじゃないか。
頼みの綱であるキンタローもマジックと同意見だ。
「いま慌てたところで事実が変わるわけではない。
とりあえず、今の服装を何とかした方がいいぞ。」
キンタローに言われ、ハタと自分を見下ろしてみる。
南国暮らしから愛用している、タンクトップとスエット。
もとの体と大きく異なる所為で、胸が丸見えだった。
「・・・。」
男だったら別に上半身裸、はよくあることだろう。
昨日まで、男だったシンタローにはなんのリアクションもなかった。
ただ、新たに出来た谷間を俯いて見ていただけだった。
「シ、シンちゃん。パパとしてはちょっとは恥らって欲しいかなぁ~なんて。」
ぴくっとシンタローの耳が反応する。
「親父とキンタロー相手に何を恥らうんだよ。てーか恥らうってなに?」
「恥らう、というのはだな・・・」
とキンタローが薀蓄を始める。
「よし、パパが買ってきてあげるよ。シンちゃんならきっと何でも可愛いよ。」
「キンちゃんはどんな服がシンちゃんに似合うと思う?」
「やはり、和服だと思うぞ。」
常人ならば絶対に起こりえない事態に対し、
二人は嬉々としてシンタローの服について語っている。
何故、こんなに嬉しそうなのだろうか、と思う。
なんか色々嫌な事が脳裏によぎる。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
そのあまりのリアルさに目の前が真っ暗になる。
「シンちゃん?」
「シンタロー?」
最後にマジックとキンタローの声が聞こえたような気がする。
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--------------------------------------------------------------------------------
バカ秘石共の所為でこんなになってしまってから、早数日。
あいつ等が夢に出てきたのはあれ一度きりだ。
どうやらもうこのままの性別でこれからの人生を過ごすことになりそうだ。
コタロー目ぇ覚ましたら吃驚するだろーナ。
俺だって未だに信じられない。
親父やキンタロー、グンマあたりはなんの違和感もなく
むしろ嬉々として受け入れてくれているがコタローはどうだろうか?
性別うんぬんより、俺の事を家族として受け入れてくれるのだろうか?
そんな不安が頭をもたげる。
つい先日ガンマ団の幹部を招集して今後の方針と親父の引退、俺が引き継ぐ事を発表したばかりだ。
そのすぐ後にこのザマだ。どうせ面白おかしく俺の体取り替えるんだったらもうちょっと
早くしろってんだよ。秘石共。
他の団員たちにも説明しないとな。泣く子も黙るガンマ団の総帥が女で大丈夫だろうか?
ああ、頭が痛くなるような事が山盛りだ。
『とりあえずシンちゃんのお披露目会を催さなくっちゃね。
まずは幹部に挨拶だね。その後しばらくしてから、全団員の前で挨拶にしようか。
それまでのお仕事はパパに任せてよ。行き成りその格好で歩いていたら皆ビックリしちゃうでしょ?
シンちゃんの就任がちょっと先送りになっただけだし、大丈夫、こう見えたってパパはまだまだ現役だよ。』
マジックの尤もな忠告に従い、暫くは休みを貰った。
自宅に居ても暇だし、体を慣らそうにもキンタローは親父の補佐というか
見学に行っているので相手が居ない。
この姿ではあまりうろうろ出来ない。場所は限られる。
自然、グンマの研究室へと足が向かう。
「ああ、いらっしゃいシンちゃん。ちょっと待っててね。いまお茶用意するから。」
とグンマが向かっていたディスプレイから目を離し、答える。
この個室の研究室は何日間も篭れるように、台所などの一通りのものは全て揃っている。
「まあ、そこに座って。」
グンマの趣味らしいガーデニングで庭に置くような愛らしい花柄の椅子の方を指差す。
程なく用意された2つのお茶。
「シンちゃんホントに女の人になっちゃったんだね~」
俺を見ながらシミジミと呟く。
「ああ、信じられあいことにな。」
そんな事をつらつらと話し合っていた。
グンマとのまったりと流れる時間に気を許し、つい先ほどの不安を口にしてしまう。
「心配ないよぉ。シンちゃんは影の異名が『男殺し』『女殺し』だもん。
きっと女性になっても異性・同性からモッテモテだよ!
特に男性からはすごいだろーね。只でさえここには女の人居ないしねー。
安心してね、僕らもちゃんとシンちゃんのこと守るよ!」
などとグンマが無責任かつ嬉しそうに励ましてくれた。
あまり励ましになってないよーな気がするが、グンマの無邪気な顔を見ていると幾分か和む。
そう思いつつ紅茶が入ったカップを傾ける。
「それにさ~、これでおとーさまと結婚できるじゃない?」
「ブハッ」
飲んでいた紅茶を噴出す。
「な、何を言い出すんだ!オマエはっ!」
「え~、だってシンちゃんブラコンだけど重度のファザコンでもあるでしょ?
今までこうして頑張ってきたのもおとーさまに認めてもらいたいからでしょ?」
サラサラとカールされた金髪を揺らし、可愛らしく小首を傾げながら俺に向かって聞いてきた。
疑問系を用いているがこれは確実に確認だ。
ぐっと言葉に詰まる。
畳み掛けるようにグンマが言葉を連ねる。
「シンちゃんはさ、おとーさまが本当のお父さまじゃないことがショックだったみたいだけど、
もうちょっと前向きにとりなよ。どうしてだか、おとーさまのことになると弱気になっちゃうみたいだけどさ。」
思わず目を見開く。あのぼんやりおっとりした、頭に鳩を飼っているグンマに見抜かれていたとは。
そんな俺の反応を見てか、
「コレでもずっとシンちゃんと一緒だったんだからね。バカにしないでよ。」
照れたような、拗ねたような口調で言う。
「だからさ。きっと女性になったのだって秘石からの贈り物だよ。
別に同性に偏見は無いけれど、異性の方が望ましいと思うし。」
それに、と言葉を続ける。
「シンちゃんの一番が僕じゃないのはちょっと悲しいけど、これからも仲の良い従兄弟でいてね。」
「グンマ・・・」
「あ、でもシンちゃんがおとーさまのお嫁さんになったら、僕のおかーさま?」
それは嫌かも、と冗談交じりに呟くグンマの頭を軽く小突く。
「もぅ、止めてよシンちゃん。」
とグンマが俺の手を払いのける。
「茶ぁ、ご馳走様。俺もう行くわ。」
そう言い立ち上がる。
「うん。また何時でも来てね~。シンちゃんなら大歓迎だよ。」
グンマがにこりと応じてくれた。
「サンキュ、グンマ。」
気恥ずかしいから、去り際に背を向けて小声で言う。
「どういたしまして。」
ドアが閉まる直前、グンマの声が聞こえた。
何だか吹っ切れたような気がする。
H16.4.21
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『新しい体をやろう』
『それは元赤の番人のですからね』
『赤と青の融合体であるお前には期待している』
『どうか、パプワ君の思いを・・・』
『ついでに付け加えると、その方が面白いってこともあるが。
じゃあ、色々頑張れよ~。あ、その体、身体能力が男に劣るけど、
身を守る分、眼魔砲の威力は青の一族最強にしといたから。安心しろよ。』
一面真っ暗な世界。
赤・青の秘石のバカな会話が終わったら現れた光。
あまりの眩しさに目を瞑る。
焼きついている。
もう一度目を開ける。
自室のしみ一つ無い、無機質な天井が見えた。
「あ゛ー、変な夢を見た・・・」
思わず声に出して呟く。
ん?なんだか違和感を覚える。
俺、こんな声だっけ?
直接自分の頭に響く声と、他人が聞く声は違うというが。
俺は今いつもどおりだぞ?
まあ、いいか。とベッドから起き上がり洗面台へと向かう。
鏡には知らない女が映っていた・・・
は?
今俺は鏡の前に立っている。
つまり、鏡に映っている女は俺ってことだ。
OK?うんOK。そんなのあたりまえじゃないか、と頭の中で
勝手に一人会話が進行していく。
間。
あ、無心ってなれるもんなんだなー。
どうしてもほかの事考えちゃうじゃん?普通はさ。
どうやら頭がこの状況を受け入れられないらしい。
うん。そりゃそーだヨ。
取り敢えず、鏡の前で動く。
右手をあごに持っていった。
当然鏡の中の女も同じ動きをした。
あ、髭がまったくないわ。
あんまり毛深くないから一日ぐらいほっといてもそんな目立たないんだけど、
やっぱ感触が気持ち悪いからさ。
今日は剃らなくていいみたいだ。うん。楽でイイワ。
どーしても現実から、それていく。
今度は、自分の胸を見てみた。
なんか、膨らみが出来てるわ。
・・・。やっぱまだ寝ぼけてるのかなー。
トイレにでも行って来よう
ドアを開き、中に入る。
ドアを閉じる。
スエットをおろす。
・・・・。
・・・・・・・・。
「あ゛ーーーーーーーーーっっ!!!」
ガンマ団本部とは違い、自宅は親子喧嘩で乱発する眼魔砲対策のため強度重視のため
防音処理は特にしていない。
そのため普通の住宅よりは、音は漏れにくくなっているが、アレだけの大声を出せば
家中に響いたであろう。
2つの物凄い足音が聞こえる。
「シンちゃん!」
「シンタロー、どうした!?」
シンタローの叫び声を聴き、駆けつけた父親と従兄弟。
父親といってもシンタロー自身は青の秘石から作られたので血のつながりは全く無い。
従兄弟もしかり。
パプワ島では色々あったが、元は同じ存在。愛憎は紙一重。
最近は何故かシンタローになついていた。
2人がシンタローの部屋で、見たのはシンタローの面影を残した、妙齢の美女だった
長く艶やかな黒髪。切れ長の眼。
「「・・・・・・・・」」
「シンちゃん?」
「シンタロー?」
「と、父さん・・・。キンタロー・・・・・。なんだか、俺、女になったみたいだわ。」
「シ、シンちゃーんvvv」
シンタローに突進するマジック。
我を失っているため、避けきれずにそのままマジックに抱きしめられる。
と、なるハズだったか、女の身ではマジックの勢いを受け止めきれずに後ろのベッドへと二人とも倒れこむ。
「ぐえっ」
潰れるシンタローには気づかず、
「シンちゃん、シンちゃんは女の子だっただね!パパ知らなかったよ!!
これで、パパと思う世間に堂々と存分に愛し合えるね!」
「叔父貴。シンタローが潰れている。それにいつも外聞関係なくシンタローに抱きついているじゃないか。」
どいてやれ。っとマジックの腕をつかみシンタローから離す。
「で、シンちゃん。なにがあったの?」
マジックに問われ、昨夜見た夢を話す。
アレしか原因がないと。
「秘石も粋な事してくれるねぇ。」
「人の一大事を『粋な事』で済ますなっ」
「でも、女になったからと言って困ることもあるまい。
弱くなった分、眼魔砲の威力は上げる、といったんだろう?
実際に女になっているわけだし、威力も大丈夫だろう。
女で総帥と舐められる事もあるまい。お前に適うヤツがいないんだからな。」
だから、そのままでいいじゃないか。
頼みの綱であるキンタローもマジックと同意見だ。
「いま慌てたところで事実が変わるわけではない。
とりあえず、今の服装を何とかした方がいいぞ。」
キンタローに言われ、ハタと自分を見下ろしてみる。
南国暮らしから愛用している、タンクトップとスエット。
もとの体と大きく異なる所為で、胸が丸見えだった。
「・・・。」
男だったら別に上半身裸、はよくあることだろう。
昨日まで、男だったシンタローにはなんのリアクションもなかった。
ただ、新たに出来た谷間を俯いて見ていただけだった。
「シ、シンちゃん。パパとしてはちょっとは恥らって欲しいかなぁ~なんて。」
ぴくっとシンタローの耳が反応する。
「親父とキンタロー相手に何を恥らうんだよ。てーか恥らうってなに?」
「恥らう、というのはだな・・・」
とキンタローが薀蓄を始める。
「よし、パパが買ってきてあげるよ。シンちゃんならきっと何でも可愛いよ。」
「キンちゃんはどんな服がシンちゃんに似合うと思う?」
「やはり、和服だと思うぞ。」
常人ならば絶対に起こりえない事態に対し、
二人は嬉々としてシンタローの服について語っている。
何故、こんなに嬉しそうなのだろうか、と思う。
なんか色々嫌な事が脳裏によぎる。
・・・・
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・・・・・・・・・・
そのあまりのリアルさに目の前が真っ暗になる。
「シンちゃん?」
「シンタロー?」
最後にマジックとキンタローの声が聞こえたような気がする。
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バカ秘石共の所為でこんなになってしまってから、早数日。
あいつ等が夢に出てきたのはあれ一度きりだ。
どうやらもうこのままの性別でこれからの人生を過ごすことになりそうだ。
コタロー目ぇ覚ましたら吃驚するだろーナ。
俺だって未だに信じられない。
親父やキンタロー、グンマあたりはなんの違和感もなく
むしろ嬉々として受け入れてくれているがコタローはどうだろうか?
性別うんぬんより、俺の事を家族として受け入れてくれるのだろうか?
そんな不安が頭をもたげる。
つい先日ガンマ団の幹部を招集して今後の方針と親父の引退、俺が引き継ぐ事を発表したばかりだ。
そのすぐ後にこのザマだ。どうせ面白おかしく俺の体取り替えるんだったらもうちょっと
早くしろってんだよ。秘石共。
他の団員たちにも説明しないとな。泣く子も黙るガンマ団の総帥が女で大丈夫だろうか?
ああ、頭が痛くなるような事が山盛りだ。
『とりあえずシンちゃんのお披露目会を催さなくっちゃね。
まずは幹部に挨拶だね。その後しばらくしてから、全団員の前で挨拶にしようか。
それまでのお仕事はパパに任せてよ。行き成りその格好で歩いていたら皆ビックリしちゃうでしょ?
シンちゃんの就任がちょっと先送りになっただけだし、大丈夫、こう見えたってパパはまだまだ現役だよ。』
マジックの尤もな忠告に従い、暫くは休みを貰った。
自宅に居ても暇だし、体を慣らそうにもキンタローは親父の補佐というか
見学に行っているので相手が居ない。
この姿ではあまりうろうろ出来ない。場所は限られる。
自然、グンマの研究室へと足が向かう。
「ああ、いらっしゃいシンちゃん。ちょっと待っててね。いまお茶用意するから。」
とグンマが向かっていたディスプレイから目を離し、答える。
この個室の研究室は何日間も篭れるように、台所などの一通りのものは全て揃っている。
「まあ、そこに座って。」
グンマの趣味らしいガーデニングで庭に置くような愛らしい花柄の椅子の方を指差す。
程なく用意された2つのお茶。
「シンちゃんホントに女の人になっちゃったんだね~」
俺を見ながらシミジミと呟く。
「ああ、信じられあいことにな。」
そんな事をつらつらと話し合っていた。
グンマとのまったりと流れる時間に気を許し、つい先ほどの不安を口にしてしまう。
「心配ないよぉ。シンちゃんは影の異名が『男殺し』『女殺し』だもん。
きっと女性になっても異性・同性からモッテモテだよ!
特に男性からはすごいだろーね。只でさえここには女の人居ないしねー。
安心してね、僕らもちゃんとシンちゃんのこと守るよ!」
などとグンマが無責任かつ嬉しそうに励ましてくれた。
あまり励ましになってないよーな気がするが、グンマの無邪気な顔を見ていると幾分か和む。
そう思いつつ紅茶が入ったカップを傾ける。
「それにさ~、これでおとーさまと結婚できるじゃない?」
「ブハッ」
飲んでいた紅茶を噴出す。
「な、何を言い出すんだ!オマエはっ!」
「え~、だってシンちゃんブラコンだけど重度のファザコンでもあるでしょ?
今までこうして頑張ってきたのもおとーさまに認めてもらいたいからでしょ?」
サラサラとカールされた金髪を揺らし、可愛らしく小首を傾げながら俺に向かって聞いてきた。
疑問系を用いているがこれは確実に確認だ。
ぐっと言葉に詰まる。
畳み掛けるようにグンマが言葉を連ねる。
「シンちゃんはさ、おとーさまが本当のお父さまじゃないことがショックだったみたいだけど、
もうちょっと前向きにとりなよ。どうしてだか、おとーさまのことになると弱気になっちゃうみたいだけどさ。」
思わず目を見開く。あのぼんやりおっとりした、頭に鳩を飼っているグンマに見抜かれていたとは。
そんな俺の反応を見てか、
「コレでもずっとシンちゃんと一緒だったんだからね。バカにしないでよ。」
照れたような、拗ねたような口調で言う。
「だからさ。きっと女性になったのだって秘石からの贈り物だよ。
別に同性に偏見は無いけれど、異性の方が望ましいと思うし。」
それに、と言葉を続ける。
「シンちゃんの一番が僕じゃないのはちょっと悲しいけど、これからも仲の良い従兄弟でいてね。」
「グンマ・・・」
「あ、でもシンちゃんがおとーさまのお嫁さんになったら、僕のおかーさま?」
それは嫌かも、と冗談交じりに呟くグンマの頭を軽く小突く。
「もぅ、止めてよシンちゃん。」
とグンマが俺の手を払いのける。
「茶ぁ、ご馳走様。俺もう行くわ。」
そう言い立ち上がる。
「うん。また何時でも来てね~。シンちゃんなら大歓迎だよ。」
グンマがにこりと応じてくれた。
「サンキュ、グンマ。」
気恥ずかしいから、去り際に背を向けて小声で言う。
「どういたしまして。」
ドアが閉まる直前、グンマの声が聞こえた。
何だか吹っ切れたような気がする。
H16.4.21
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