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o2

散歩道


「遅い!」
木々の隙間から漏れる光を浴びて、シンタロー自身が輝いているように見えた。
所々闇の濃い場所もあるというのに、なぜか一人切り取られたかのように見失うことはない。
キンタローよりも先へ進み、時折振り返っては笑いながらせかすのだ。
その足取りは軽やかで、全く体重を感じさせない。
「迷子になるぞ!」
追いかければムキになって、全力で走っていくことは理解しているこそ、少しだけ遅れてついていくが、キンタローも決して引けをとるつもりはない。
遅ければおいていかれるし、かといって隣を走ることもできない、中々難しいところである。
そして、気を抜けば、たがが散歩で道に迷うこともある。
実際、何度も迷ったこともあり、いろんな人に迷惑をかけたものだ。
兄として一応諌めたが、全く聞くつもりはないらしい。
一人、ずんずんと進むその後ろに仕方がなくついていった。


実際のところ、二人の歩いているところは屋敷の敷地内であり、巧妙にカメラが設置されていた。
それは彼らの安全のためであり、また父親のコレクションのためでもあった。
だからこそ、迷ったとしてもすぐに救出させるのである。
注意深く見れば、ところどころ手が加えられていることに気がついただろうが、駆け回ることに夢中で、子供たちが気がつく由もない。
しかし、今日は迷う心配は要らなかったらしい。
どこをどうきたのかはわからないが、いつの間にか庭園にたどり着いていたのだ。
段々と規則正しい木々の並びに最初に気がついたのはキンタローのほうだった。
走ることに夢中になっているシンタローに対し、今度こそはきちんと帰れるようにと気を配っていたからこそ気がつけたのである。
それから少ししてシンタローは足を止めた。
「…戻ってきちまったのかよ」
憮然とした顔に、かける言葉を少しだけ悩んだ。
ここで機嫌を損ねれば、また森の中へと突っ込んでいくことは間違いない。
ぐるりと周りを見渡すが、そこに広がるのは見慣れた庭。
早々に興味を持たせることができなければ、今来た道を戻ることになる。
キンタローはあせりながらも、シンタローの横に並んだ。
同じく何かを探しているようだったが、目新しいものは見つからなかったらしい。
シンタローが振り向き、キンタローに声をかけようとしたそのとき、キンタローの目にあるものが飛び込んできた。


病室という割には、温かみのあるその部屋は、病弱なグンマのために用意されたものだった。
一年の半分ほどをこの部屋で過ごすグンマだが、保護者が敏感になりすぎているともいえなくはない。
その日も例外なく、ベットに横になっていたのだが、思いも寄らない来客に驚き、かつ喜んだ。
「まったく、また風邪かよ」
開口一番、呆れたように言われたが、久しぶりに会うことができて思わず笑顔になった。
ここから屋敷まではそれほど遠いわけではない。
けれども子供だけで来れるほど近くもなければ、安全な場所ではない。
なんといっても、離れているとはいえガンマ団本部の一角なのだから。
とはいえ、グンマの関心は別のところにあった。
「シンちゃん、今日はスカートだ~」
そう、いつもは兄の服を借りているシンタローだが、今日は珍しく“女装”をしていたのである。
シンタローが持っている服は、父であるマジックの趣味で、可愛らしい服が多いのだが、動きにくいという理由で勝手にキンタローの服を拝借しては駆け回ってるのだ。
しかし、今日は先ほど着ていたキンタローの服を脱ぎ、わざわざ着替えたのである。
それは病室に向かうのに、汚れた格好じゃいけないとキンタローが諭したこともあり、朝、マジックを送り出したときに来ていた服に着替えただけなのだが、グンマにしてみればうれしい限りである。
しかもキンタローも一緒である。
シンタローに比べれば、会う機会も多いのだが、こうして三人そろうことは少ない。
何とか体を起こそうとしたが、キンタローによってとめられてしまった。
「無理をするな。治りが遅くなるぞ」
もう一度布団の中に戻され、むぅと膨れた顔をしたが、起き上がった瞬間に、シンタローが後ろに何かを隠しているのが見えた。
「何もってるの?」
体を乗り出そうにも、キンタローに押さえられてしまうのがわかっているので、精一杯首を伸ばしてシンタローの後ろのほうを見ようとする。
その言葉に対して得意げに、両手を前に突き出した。
「すごいだろ?」
そこには色とりどりの花が咲いていた。
庭でキンタローの目に飛び込んできたもの。
それは庭師によって手入れされている花だった。
いつもは当たり前のように見ているだけだったが、グンマが寝込んでいることを思い出し、お見舞いに行こうと提案したのだ。
グンマが屋敷に来るときは、よく庭で遊ぶので、持っていったら喜ぶのではないかと説得したところ、思いのほか簡単に通ったのだ。
シンタローも、最近顔を合わせていない従兄弟が心配だったし、何よりキンタローが考えていることがなんとなくわかってしまった。
「頼んでとってもらったんだ」
「けど、俺たちが選んだんだぜ」
庭師が丹精こめて作った作品を、無断でとるわけにも行かないと、一応断りを入れようとしたところ、花を切ってくれたのである。
「すっごいうれしいよ、ありがとう」


その後、二人だけで来たことがばれて、こってり怒られたりしたが、また訪れようと計画したとかしないとか。






<後書き>
もしもの第一弾です。
シンタローを女の子にした意味が、早くもないような作品に…

おかしいな、最初に思いついたときには、思いっきり萌えな話が出来上がったと思ったのに…

個人的には、本当に苦労性になってしまったキンタローさんがお気に入りです。
これで、大きくなったらなったで、悪い虫やらグンマの黒さに四苦八苦し始めるのですよ。
…キンタローさん苦労日記に変えたほうがいいかしら?
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