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o4

トライアングル


18歳離れた子供。
ともすれば、親子といってもおかしくないような年齢に複雑な感情を抱いていた。
思春期なんぞ当に過ぎているが、否、だからこそ単純に喜べない。
「わ~、漸く起きたね~」
「泣かすんじゃねぞ」
「判ったよぅ。シンちゃんってばそればっかなんだから」
しかし、他の二人の様子を見て、悩んでいるのが自分だけであるということに馬鹿馬鹿さを覚えた。
士官学校を出てから、こうして三人が揃うことは珍しい。
唯一、本部にいることの多いグンマも研究室にこもることが多いし、シンタローも自分も戦場に身を置いている。
グンマとシンタローはメール等でやり取りをよくしているらしいが、キンタローは諜報部という難儀な部署のため、外部との連絡が取れないことが多い。
今回、特別に帰ってこれたのは、母の健康状態が芳しくないからだ。
他の団員だったなら、親が危篤であろうが亡くなろうが戦線を離脱することは出来ないだろうが、そこは総帥の息子。
小康状態であったことも起因して、直ぐに戻ることが出来たのだ。
一方、シンタローは元々休暇だったために、陣痛が始まってからずっと母の傍にいた。
連絡を受けてたグンマも研究室からすぐに向かったのだが、そのときに母体が危険であると聞き、シンタローと共に永遠とも思えるほどの長い時間廊下で待っていた。
そして、弟が生まれてから三日後の今日、キンタローも戻ってきた。
出産直後から、母の様態は芳しくない。
母が弟を抱いたのは一回だけ、それ以降は集中治療室に入ったきりだった。
キンタローが見る限り、シンタローたちの顔色は芳しくない。
けれども自分も似たようなものだと思い直す。
それはきっと、三人に共通の認識があったからだろう。
グンマの母親が亡くなった理由を、直接聞いたことは無かったと思う。
だがしかし青の一族の子を産むことにより母体が危険にさらされるということを知っている以上、もしかしたらという思いが心のどこかにはびこっている。
今も弟を可愛がっているこの雰囲気がどこかから回りしている。
「名前はまだ決まっていないのか?」
小さな手を指で突きながら聞くと、シンタローの顔が少しだけ歪んだ。
「どうか、したのか?」
何か不味いことを聞いてしまったのかと思い、不安に駆られていると不意にグンマが袖を引っ張った。
そこにはやはり僅かに歪んだ――呆れた表情を浮かべているグンマがいた。
「あのね、生まれたときにベットに貼ってあったんだけど…」
「――コタローだよ」
「ぐっ…」
別に悪い名前ではないだろう、きっと。
しかし、シンタロー、キンタロー、コタローとは一体どんなセンスをしているのだとつい問い詰めたくなる名前ではある。
「せめて統一性があればいいんだけどねぇ」
否、きっとタローで統一していると言い張るだろう、あの父親は。
不意打ちのブローにため息をついたが、この弟に罪は無い。
「よろしくな、コタロー」
声を識別できないはずなのに、確かに笑ったと思ったのはきっと欲目だろう。


それから数日後。
意識が戻ることも無く、母が逝った。
まだ40才にも達していなかったはずだ。
キンタローが最後に会ったとき、つわりが終わったと笑っていた。
丈夫ではなかったが、健康そのもので優しいかった母。
過去形であらわさなければならないことが、何よりもつらかった。
「コタローの面倒見てくれないか?」
居間でぼんやりとしていたところに声をかけられた。
振り返れば、シンタローが赤ん坊を抱っこしている。
「どうかしたのか?」
「…いや、ちょっと預かっていてくれないか?」
人見知りといっていいのか、コタローは知らない人が近づくと途端に泣き出す。
今のところ、シンタロー、グンマ、キンタロー、マジックまでは安全なのだが、交代でやってくるベビーシッターには懐いてくれない。
…医者であるから仕方が無いのだが、高松に懐いているのを見たときは末恐ろしかったが。
そんなわけで、二人で交代でコタローを見ている状態なのだ。
ちなみにグンマは除外されている。
コタローが懐いているのは確かだが、不安でおちおちほかのことが出来なくなってしまうからだ。
シンタローの手からコタローを預かるが、空色の瞳がじぃっとキンタローを見ていた。
まだこの頃は眼で識別できるわけではないというが、確かにキンタローを捕らえているみたいでなんだかおかしい。
「まだ懐かないのか?」
「ん~、なんとか近づいても泣かないくらいにはなったみたいだがな」
苦笑するシンタローに無言で頷く。
シンタローにせよ、キンタローにせよこの屋敷に帰ってくることはあまりない。
グンマに預けるなど恐ろしいことが出来ない以上、一刻も早くベビーシッターに懐いて欲しいというのがある。
だがしかし、二人ともコタローの傍にいてやりたいという思いもある。
否、いてやれないことを口惜しいとまで感じているのだ。
「…あ~、絶対ブラコンになる」
「…程ほどにしておけ、異常者は出したくない」
「お前も同じだろ?」
「まぁ、な」
互いに顔を見合わせて苦笑した。
「っと、そういえば何か用事でも出来たのか?」
「ああ、ちょっと辞令が下ったらしくってな」
シンタローは現在休暇扱いを受けていたが、そろそろそれも終わりらしい。
母が亡くなる前から付きっ切りであったことを考えれば、そろそろ復帰しろということなのだろう。
そういいつつも、キンタローも近日中に戻らなければならない。
元々休暇扱いだったシンタローだったが、そこに総帥の娘であるという要素があったからこそ今まで休むことが出来た。
ついでのようにキンタローも休めたのもその影響に過ぎない。
「…そういうわけだから、行って来るぜ」
「ああ、ちゃんと見ておく」
ため息を吐き、踵を返すシンタローの後姿を見送る。
現在、コタローの秘石眼の有無は不明とされている。
それは子供――赤ん坊であるため、力の使い方を知らないかららしい。
秘石眼を使いこなすには、それ相応の訓練をしなければ出来ないのは良く知っている。
それは蛇口を探しているに等しい。最初はどこを捻ればいいかわからないのだが、こつさえ知っていれば目を瞑ったって出来る。
故に、訓練を受けた後のほうが遥かに暴走しやすく、また未熟なままで暴走したとしても周囲にそれほどの影響を与えることは無い。
実際、キンタローが子供の頃に起こした時には、シンタローがよろける程度でしかなかった。
危惧する程ではないのだが、グンマからあることを聞いてしまった。
どこかからハックしたものらしく、公にしないでねと釘を刺されたもの。
…曰く、秘石眼が両目であるか否かが不明であるということだ。
そして、その解明を父であるマジックが急かしているという事も――
ふと、自分の腕の中にある存在に眼をむけた。
かまってもらえなかったのが不満なのか、今にもぐずりそうな顔をしている。
「ああ、悪かったな」
抱っこしている腕を軽く揺らしてやると、途端に笑顔になった。
とても脅威になるようには思えない、そんな笑顔だ。
不安に思わないといえば嘘になる。
キンタローにしても、片目をコントロールするのが手一杯なのだ。
暴走させることは無いだろうが、微調整が難しい。
それが両目ともなれば、想像を絶する力であるに違いない。
しかし、その点を引いても父親の行動は何か不審に感じられた。
確かに危険な存在かもしれないが、それを隠す必要が一体どこにあるのか。
考えるにはあまりにも少ない情報に、再度ため息を吐いた。
グンマは色々知っているようではあったが、まだまだ調査中だと言っていた。
滅多なことは無いと思うけどね、と笑っていたものの、その眼は厳しいものだった。
情報統制ゆえに、何かを嗅ぎ取ったのであろう。
文字通り、ガンマ団における大部分の情報網を握っているグンマが手こずっているのだ、一筋縄ではいかない秘密があるに違いない。
ふと、視線を下ろせば、コタローが大きな眼で見つめていた。
その瞳は鮮やかな青色で、一族の血が流れていることを如実に語っている。
つまりは自分の弟であるという確かな証拠。
「厄介なことになったな」
実質独り言のようだが、コタローに向けて話しかけるにはあまり向かない言葉だ。
それでもコタローは目の前にある顔――キンタローに向けてその手を一杯に伸ばして触れようとしていた。
パタパタと動くその腕があまりにも可愛らしく、微笑むと抱えなおしてその手が届くようにと調整してやる。
「大丈夫だ。例え何があろうと俺達はお前の兄なんだからな」
漸く触れた何かにご満悦なコタローに、諭すようにそっと誓った。






























<中書き>
このお話を書くにあたり、ちょっとだけ原作とかけ離れすぎた設定を作ってしまったことにどうしたものかと悩んでいました。
いろんな方に申し訳ないと思ったのですが、こうして発表した以上、最後まで駆け抜けていこうと思います!

原作と違う展開をするところも多々あるとは思いますが、それでも読んでくださる方がいることを願っております。

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