その甘やかに響く声に蕩け落ちる。
そのすべらかな指先に熱を奪われる。
触れて交わし合う度に体内に篭る筈の熱は全て奪われて、ただただ凍える冷たさだけが残る。
これは全て悪いことだから。
俺が悪いものだから。
だから、あの人の繊細な指は美しい身体は熱くなることがないのだ。
そして俺だけがどんどん熱を昂ぶらせて開放を求める。
なんて…。
なんて………。
こんなことを続けていい筈がない。
こんなことをしていていい筈がない。
あの人がこんなことをするのは俺が悪いから。
あの人が冷たいままなのは俺が熱くすることができないから。
きっと昔、あの人と熱を共にした人が居たというのに。
いくら外見が似ていても、違うものなのだと思い知らされる。
同じであればよかったのに。
同じであれば、あの人に熱を与えることができたのに。
実際には俺の熱はあの人に奪われるだけで。
あの人はずっと冷たく凍えたままなのだ。
あなたを温めたいのに。
あなたは望んでいないだろうけれど。
それでもあなたを温めたいんだ。
あなたの望みを叶えようとして、どんどん俺が冷たくなっていくのを感じる。
俺の望みを呑み込む度に、俺の熱があなたに伝わらないことを感じる。
もうやめよう。
そう言えたらどんなにいいか。
あなたの指や声に侵された自分に言えるはずもなく。
もうその指や声を失うことなど考えたくなくなるほどに、溺れて染められていく。
侵され、あなたと触れる肌の距離はこんなにも近い筈なのに、初めて会って見上げた時よりも遠く感じられて。
肌を重ねる度に苦しさは増していくけれども、離れられない。
苦痛は嫌悪ではないから。
こんな苦痛を誰にも悟られてはいけない、と抱え込む。
胃がぎりりと音を立てて軋む。
この音はあの人にも悟られないように。
そうして更に冷たさが増していく。
温もりを求めて触れ合う行為がどうしてここまで冷たい?
いつか温められたらいいのに。
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