ある日の昼下がり、グンマ博士が、科学部隊第7研究室から「ぜひお貸し頂きたい」という要望のあった文献資料を小脇に抱え、ガンマ団内の廊下を鼻歌を歌いながら、スキップしていた。
「フンフフーン♪あっ、ここだー。第7けんきゅうしつ・・っと。こんにちはー?」
グンマがインターホン越しに呼びかけたが誰も出てこない。
「あれェ?変だなぁ。お邪魔しまーす」
ドアを押すと何故か開いていたので、グンマは勝手に研究室の中に入った。
「誰もいないよー。お昼ごはんかな?それじゃ、ホワイトボードに磁石で留めておこう。横に用件を書いておけばいいよね」
そう言って、グンマは作業を済ませると、机の上に目を向けた。そこには、『どうぞご自由にお取り下さい。もし、お菓子がなくなった場合は誰かが補充しておくこと!!』と書かれた大き目の菓子折り箱が何故か(男ばかりの研究室にもかかわらず)置かれていた。
「あっ、お菓子だ~。『ご自由に』って書いてあるから僕が貰ってもいいんだよね??えーっ、でもこれ、僕の嫌いなやつばっかりだよー。他にもなんかないかなァ」
グンマがキョロキョロと辺りを見回すと、机の端の方にカラフルな飴の絵が描かれたドロップの缶が置いてあった。
「あっ、ドロップだ!!僕ドロップ好きなんだよネ。これ貰っていこーっと!!」
グンマは、白衣のポケットにドロップの缶を入れ、その場を立ち去った。
「うーん。今から暇だなァ・・・。キンちゃんは今居ないし、高松の所には朝行ったばかりだし・・・。あっ、そーだ!シンちゃんの所に遊びに行こう♪」
ほんの少し悩んだあと、グンマは総帥室の方角へと向かった。
「ヤッホー♪シンちゃーん!遊びに来たよ~」
「おう、グンマか。入れよ。もうすぐ終わるから」
シンタローは、何やら難しそうな書類を読んでいた。時々、小さく咳をしているので、グンマは心配になった。
「シンちゃん、もしかして風邪気味?」
「んー。昨日からちょっと調子が悪いんだ」
「具合の悪いときは無理しちゃ駄目だよ!!そんな時は仕事なんか、おとーさまに押し付けちゃえ☆」
「ハハ。まァ、そういうわけにもいかんだろーが」
そう言って仕事を再開し始めたシンタローは、やっぱり具合が良くなさそうであり、グンマはもどかしい気持ちでそれを見ていた。
「あーっ!シンちゃん!!僕いいもの持ってるんだヨ♪ドロップなんだけど、一緒に食べようよ。少しは喉にいいかも」
そう言ってグンマがドロップの缶を開けると、中には糖衣でコーティングされた漢方薬の匂いのする黒い小さな飴が入っていた。
「えーっ、これって南○のど飴だよ~。僕これ嫌い。辛いもん!あっ、でもシンちゃんには丁度いいかも。シンちゃん食べる?」
「ああ、そんじゃ俺貰うわ」
「一個じゃなくて、たくさん食べなよ。その方が効きそうだし」
「うーん、じゃぁ、4粒貰うぜ」
そう言ってシンタローは飴を口に放り込み仕事を続けていたが、しばらくするとシンタローは急に苦しみだした。
慌てるグンマを他所に、シンタローは椅子から崩れるように倒れた。
「どーしたの!?シンちゃん??大丈夫??」
机の向こうに倒れたシンタローの姿は見えず、グンマは慌てて駆け寄り、シンタローの額に手を当てた。
「ううっ・・・・」
シンタローは苦しげに呼吸している。
「うわぁ、すごい熱!!どうしよう・・・。うわーん、高松~ゥ!!」
グンマは、慌てて壁の電話を取り、高松の研究室の番号をプッシュした。
「はい、第2研究室です。って、グンマ様♡えっ?泣いていては分かりませんよ。新総帥にいじめられたのですか?違う?ええっ?新総帥が倒れた??すぐに行きますから心配なさらず待っておいて下さいね!!」
高松が電話を切った後、グンマはシンタローの体を抱き起こして引きずり、なんとかソファ
に寝かした。
「早く来てよー。高松~!!」
グンマは待ちきれず、廊下に出て高松を待った。
時間にして数分後、走ってきた高松が総帥室前に到着した。
「遅いヨ~!!」
「グンマ様!私が来たからにはもう大丈夫ですよ。新総帥の容態はいかがですか?」
2人は扉を開け、部屋の中に入った。
「熱がすごいの。シンちゃん風邪みたいだったんだけど、急に苦しみだして倒れたんだよ!?」
2人が部屋に入ると、シンタローの頭がソファから少し見えた。
「シンちゃーん!高松が来たからもう大丈夫だヨ」
そう言ってグンマがシンタローの顔をのぞきこむと、シンタローは気を失っている様子であったが、先ほどよりはかなり楽になったようであった。
グンマは、ふと、違和感を覚えた。
「ねぇ、高松。なんかさ、シンちゃんいつもと違わない??ちょっと小さくなったような…」
「そうですねぇ。何故か骨格そのものが華奢になったような・・・。ちょっと失礼」
そう言って、高松は新総帥のジャケットの前を開いた。
――その途端、彼は鼻血を吹いて倒れた。
「わァ、高松~!?どうしちゃったの!?!?大丈夫??」
高松は、鼻血を拭きながらヨロヨロと立ち直った。
「だ、大丈夫ですよ、グンマ様。ただ、どうやら、シンタロー様は・・・女性になってしまわれたようです」
「ええッ?でも、シンちゃんは従兄弟だよ?女の子じゃないよ??」
「でも、現に今そうなっておられますので・・・。新総帥は何か変なものを食べてませんでしたか?」
「うーんと、僕が来る前は分からないけど・・・。あッ、そうだ!!シンちゃんと第7研究室からもらってきたドロップを一緒に食べようと思ったんだけど、南○のど飴みたいだったから、僕は食べなくてシンちゃんだけ食べたんだッツ!!」
「第7研究室ですか。不吉な・・・。あいつ等、漫画がどうとかいう同好会作っていつも変なものをつくってますからねぇ。グンマ様、その飴の缶どこにあります?私は奴らをちょっと締め上げて、急いで元に戻る薬を作りますので。グンマ様は、シンタロー様についておいてあげてくださいね。彼のことですし、気がつくと大暴れしそうですので・・・」
「う、うん。眼魔砲されたらちょっと嫌だけど、頑張る」
「それでは、くれぐれもお気をつけて」
そう言って、高松は部屋から出て行った。
グンマは頬杖をついて、シンタローの寝顔を眺めていた。
「シンちゃん、僕のせいで女の子になっちゃったんだ?本当にごめんね。あぁー、おとーさまがこのことを知ったら、大変そうだなァ・・・。他にも色々と大変そうな人達がいるけど、みんな留守で本当に良かった・・・」
「ん・・・」
「あっ!シンちゃん気がついた??よかったー」
グンマは、ホッとしたような泣き出しそうな顔をしてシンタローを見た。
「えっ?俺どうしたんだっけ?確か、仕事中に倒れて・・・」
シンタローは、ふと、自分自身の声の違和感に気がついた。低めの声ではあるが、男性の声とは明らかに違う。
「???」
「あのね、シンちゃん。驚かないで聞いてね。実は、シンちゃん・・・、のど飴のせいで女の子になっちゃったみたいなのッツ!!」
「へ?何言ってんだヨ??」
明らかに現状認識できていないシンタローに、
「もしよかったら、そっちの部屋で確かめてきて・・・?」
と、グンマが隣室を指差すと、フラフラと何かに操られるようにシンタローは隣の部屋に消えた。
(わぁ、シンちゃん、雑誌に出てくるモデルさんみたいだなぁ。背も20センチは縮んだみたいだけど、僕と同じぐらいあるし・・・。やっぱり、男の子でも女の子でもシンちゃんは綺麗だなぁ)
グンマが色々と感心していると、不意に扉が開き、グンマが一番厄介だと思っていた人物が顔を出した。
「シンちゃーん!もうお仕事終わった?パパだよ~♪」
「あッ、おとーさま・・・」
「あれ?グンちゃんもいたの?シンちゃんは??」
その時、隣の部屋から
「なッ、なんじゃこりゃァァァ~~~~!!!!」
という○田○作風の雄叫びが聞こえた。
「えッ!?グンちゃん、今のって何??何なの??」
グンマが答えようとすると、隣の部屋のドアがバンッツ!!と開いた。
「シンちゃーん!!会いたかったよ~~~!!」
マジック元総帥は、思わず駆け寄り、呆然としているシンタローをギュッ♡と抱きしめた。
「あれ?いつもとシンちゃんの触り心地が違う!?柔らかいし、なんか小さい…。ん――??」
ポフポフと、シンタローを確かめるように触るマジックに、しばらくジッとしていたシンタローであったが、急にスイッチが戻ったように・・・キレた。
「離さんか、ゴルルァ!!」
そう言って、シンタローはまず元総帥の顎に強烈なアッパーをかまし、続いて腹部目掛けて膝蹴りを放った。そしてさらに、
「眼魔砲!!!」
部屋の中を眼魔砲によって破壊し始めた。
「ぼ、僕しーらないッと。おとーさま、頑張って止めてね」
と、グンマはとりあえず部屋の外に避難した。
(シンちゃんって、女の子になっても戦闘能力高いなァ・・・)
――――30分後、グンマが部屋をソッとのぞきこむと、部屋の中は壊滅状態であり、中にはボロボロになった(でも、少し嬉しそうな)元総帥と、少しは落ち着いたらしい(でも、毛を逆立てた猫のような状態の)新総帥が立っていた。
「あのー・・・、シンちゃん、少しは落ち着いた?」
「・・・アァ。なんとかナ。でッ!どういうことか説明しろヨ!!」
「なんかね、さっきののど飴が原因みたい。高松に携帯で聞いたら、科学部隊の漫画マニアの人達がメ○モちゃんみたいに、子どもが大人に変身できる薬を作ったみたいだヨ。何故かシンちゃんは女の子になっちゃったけど・・・」
「ソイツら、全員クビ」
「ま、まぁまぁ。シンちゃん、彼らだって悪気があってやったわけでは無いし・・・」
そう、マジックがとりなそうとすると、
「悪気があろーが、なかろーが、関係ねんだヨ」
シンタローはにべも無い。
「本当にごめんなさいッツ!!間違えてシンちゃんに食べさせた僕が悪いんだ!!」
グンマは、誠心誠意を込め、シンタローに謝った。
「・・・何日ぐらいで戻るんだ?」
「さっき高松に聞いたら、元に戻る薬は作り方が難しいから4日ぐらいだって。ゴメンね。シンちゃん」
「ふーん。まァ、それぐらいで戻れるんだったらいいか。ずっと女ってわけでもねぇしな。ただし、誰にも言うなヨ。ソイツらにも高松にも口止めしとけ。親父もナ」
「「はーい」」
「僕、高松を手伝ってくるね。あと、科学部隊の人達クビにしないでね。一応、いろんな所から無理言ってスカウトしてきた人達だし。じゃあね、シンちゃん。それでは、おとーさま、失礼します」
グンマは、ホッとした様子で部屋から出て行った。
「・・・シンちゃーん。なんだか、グンちゃんに比べてパパの扱いがひどくないかい?パパ、とっても寂しいよ・・・」
「グンマは前よりも大人になったからナ。それに、アンタと違ってセクハラしてねぇし」
「セクハラじゃなくて、親子のスキンシップだよ~。それよりもシンちゃん。とりあえず女の子の服とかいるよね」
「あ゛?別に、このままでいんじゃねェの?総帥服は大きいけど、私服なら着れるだろ?」
「駄目だよ!!そんな可愛い格好でシンちゃんがガンマ団内を歩いていると襲われちゃうよ!パパは許しません!!」
「じゃぁ、どうしろっていうんだヨ!俺は、女の服とかわかんねぇぞ。それに4日間ずっとひきこもってるのも嫌だし・・・」
「じゃぁ、パパがシンちゃんの服を作ってあげるから、それ着てパパに見せてよ。4日間パパとモデルさんゴッコしよう♪うーん、シンちゃんは猫耳とかバニー耳が似合いそうだなぁ。あと、キャンギャル風とか、女子高生風とか、婦警さんとか、看護婦さんとか・・・。あッ、ビデオも撮らないと!!」
鼻血を垂らしながら、シンちゃん人形を抱きしめているマジックに、シンタローはなんとなく背筋が寒くなった。
「(親父・・・。それってモデルさんゴッコじゃなくってイメクラだろうが・・・)ぜってー、い・や・だ!!」
「ええっ!?すっごく楽しそうなのに・・・。それじゃ、シンちゃんは他に何か案がある?もし無かったら、4日間モデルさんゴッコだよ??」
シンタローは、悩んだ。4日間イメクラゴッコは絶対に、したくはなかった。
そして、しばらく悩んだ末、あることに気がついた。
「あっ!そうだ!!とりあえず、俺がガンマ団内に居なかったら俺が女になったってバレないんだよな!?そんじゃ、俺、久しぶりに任務にでるわ♪部屋の修理もその間にできるし。新総帥は、風邪で静養中ということにしといてくんねぇ?個人任務が一番いいんだけど、今要請が来ているやつはというと・・・」
シンタローは崩壊した部屋の中を通り、なんとか壊れずに形を保っている丈夫な総帥机の引き出しをあけ、少し楽しそうに任務予定表を取り出した。
「んー。なかなかねェな。ン?なんだコレ?急遽マッチョな男性求む?・・・無理だな。じゃぁ、しょうがねェから2人組みの任務はっと・・・。うーん、あまり階級が下のやつと組むと後が面倒そうだナ。えーっと、幹部級の奴らは・・・。みんな遠征中か。この近くは・・・おっ、あるじゃん。何々?『女性パートナー急遽必要。パーティーへの同伴及びマイクロチップをボスから奪う手助け。でも、他のプランも考えてますさかい、なるべく無しの方向で』??なんか、えらいネガティブだな。提出者は、っと。あっ、コイツ、アラシヤマじゃん!!」
それを、傍で見ていたマジックが、口を挟んだ。
「シンちゃーん・・・。アラシヤマと2人っきりなんて危険だよ!!そんな美味しい状況で奴が調子にのって、シンちゃんが襲われちゃったらどうするの!?アラシヤマと2人きりの任務なんてパパは許しませんよ!!やっぱり、パパと2人で4日間モデルさんゴッコしようよ~。もしそれが嫌なら、どこか旅行に出かけてもいいよ」
(うーん。アラシヤマと2人きりも大変そうだけど、親父と2人きりで旅行というのも嫌だなぁ・・・。イメクラゴッコは論外。総帥になってからここ最近ガンマ団内ばかりだし、任務といっても大勢ついてくるし、久々に個人任務に出てみるか)
どうやら、シンタローの中では(アラシヤマではなく)任務の方が勝ったらしい。
「親父。やっぱ俺、任務に出るわ。アラシヤマとどうにかなることなんてありえねェし。それに任務の内容自体たいしたこともなさそうだし、心配すんなって。ホラ、『かわいい子には旅をさせろ』ってよく言うダロ?とにかく俺、もう任務に行くって決めたからな!!」
「シンちゃーん・・・(泣)」
「泣いても無駄。パーティーへの同伴か・・・。女物を着るのは嫌だけど、まァ、任務だと思えば我慢できるか。親父、悪ィけどいろいろと手配してくれねぇ?」
「可愛いシンちゃんの頼みならしょうがないか・・・(やっぱり、アラシヤマと一緒の任務だってのが気に入らないけど。まぁ、女の子になってもあれだけ戦闘能力が高いシンちゃんなら大丈夫か)。それじゃ、シンちゃんがパーティーの会場で注目度ナンバーワンになれるように準備するから待っててね~。あっ、もちろんシンちゃんは何もしなくても今のままで十分綺麗だとパパは思うけど」
「は~~~~い、ハイハイ。じゃぁ、頼んだわ」
「フンフフーン♪あっ、ここだー。第7けんきゅうしつ・・っと。こんにちはー?」
グンマがインターホン越しに呼びかけたが誰も出てこない。
「あれェ?変だなぁ。お邪魔しまーす」
ドアを押すと何故か開いていたので、グンマは勝手に研究室の中に入った。
「誰もいないよー。お昼ごはんかな?それじゃ、ホワイトボードに磁石で留めておこう。横に用件を書いておけばいいよね」
そう言って、グンマは作業を済ませると、机の上に目を向けた。そこには、『どうぞご自由にお取り下さい。もし、お菓子がなくなった場合は誰かが補充しておくこと!!』と書かれた大き目の菓子折り箱が何故か(男ばかりの研究室にもかかわらず)置かれていた。
「あっ、お菓子だ~。『ご自由に』って書いてあるから僕が貰ってもいいんだよね??えーっ、でもこれ、僕の嫌いなやつばっかりだよー。他にもなんかないかなァ」
グンマがキョロキョロと辺りを見回すと、机の端の方にカラフルな飴の絵が描かれたドロップの缶が置いてあった。
「あっ、ドロップだ!!僕ドロップ好きなんだよネ。これ貰っていこーっと!!」
グンマは、白衣のポケットにドロップの缶を入れ、その場を立ち去った。
「うーん。今から暇だなァ・・・。キンちゃんは今居ないし、高松の所には朝行ったばかりだし・・・。あっ、そーだ!シンちゃんの所に遊びに行こう♪」
ほんの少し悩んだあと、グンマは総帥室の方角へと向かった。
「ヤッホー♪シンちゃーん!遊びに来たよ~」
「おう、グンマか。入れよ。もうすぐ終わるから」
シンタローは、何やら難しそうな書類を読んでいた。時々、小さく咳をしているので、グンマは心配になった。
「シンちゃん、もしかして風邪気味?」
「んー。昨日からちょっと調子が悪いんだ」
「具合の悪いときは無理しちゃ駄目だよ!!そんな時は仕事なんか、おとーさまに押し付けちゃえ☆」
「ハハ。まァ、そういうわけにもいかんだろーが」
そう言って仕事を再開し始めたシンタローは、やっぱり具合が良くなさそうであり、グンマはもどかしい気持ちでそれを見ていた。
「あーっ!シンちゃん!!僕いいもの持ってるんだヨ♪ドロップなんだけど、一緒に食べようよ。少しは喉にいいかも」
そう言ってグンマがドロップの缶を開けると、中には糖衣でコーティングされた漢方薬の匂いのする黒い小さな飴が入っていた。
「えーっ、これって南○のど飴だよ~。僕これ嫌い。辛いもん!あっ、でもシンちゃんには丁度いいかも。シンちゃん食べる?」
「ああ、そんじゃ俺貰うわ」
「一個じゃなくて、たくさん食べなよ。その方が効きそうだし」
「うーん、じゃぁ、4粒貰うぜ」
そう言ってシンタローは飴を口に放り込み仕事を続けていたが、しばらくするとシンタローは急に苦しみだした。
慌てるグンマを他所に、シンタローは椅子から崩れるように倒れた。
「どーしたの!?シンちゃん??大丈夫??」
机の向こうに倒れたシンタローの姿は見えず、グンマは慌てて駆け寄り、シンタローの額に手を当てた。
「ううっ・・・・」
シンタローは苦しげに呼吸している。
「うわぁ、すごい熱!!どうしよう・・・。うわーん、高松~ゥ!!」
グンマは、慌てて壁の電話を取り、高松の研究室の番号をプッシュした。
「はい、第2研究室です。って、グンマ様♡えっ?泣いていては分かりませんよ。新総帥にいじめられたのですか?違う?ええっ?新総帥が倒れた??すぐに行きますから心配なさらず待っておいて下さいね!!」
高松が電話を切った後、グンマはシンタローの体を抱き起こして引きずり、なんとかソファ
に寝かした。
「早く来てよー。高松~!!」
グンマは待ちきれず、廊下に出て高松を待った。
時間にして数分後、走ってきた高松が総帥室前に到着した。
「遅いヨ~!!」
「グンマ様!私が来たからにはもう大丈夫ですよ。新総帥の容態はいかがですか?」
2人は扉を開け、部屋の中に入った。
「熱がすごいの。シンちゃん風邪みたいだったんだけど、急に苦しみだして倒れたんだよ!?」
2人が部屋に入ると、シンタローの頭がソファから少し見えた。
「シンちゃーん!高松が来たからもう大丈夫だヨ」
そう言ってグンマがシンタローの顔をのぞきこむと、シンタローは気を失っている様子であったが、先ほどよりはかなり楽になったようであった。
グンマは、ふと、違和感を覚えた。
「ねぇ、高松。なんかさ、シンちゃんいつもと違わない??ちょっと小さくなったような…」
「そうですねぇ。何故か骨格そのものが華奢になったような・・・。ちょっと失礼」
そう言って、高松は新総帥のジャケットの前を開いた。
――その途端、彼は鼻血を吹いて倒れた。
「わァ、高松~!?どうしちゃったの!?!?大丈夫??」
高松は、鼻血を拭きながらヨロヨロと立ち直った。
「だ、大丈夫ですよ、グンマ様。ただ、どうやら、シンタロー様は・・・女性になってしまわれたようです」
「ええッ?でも、シンちゃんは従兄弟だよ?女の子じゃないよ??」
「でも、現に今そうなっておられますので・・・。新総帥は何か変なものを食べてませんでしたか?」
「うーんと、僕が来る前は分からないけど・・・。あッ、そうだ!!シンちゃんと第7研究室からもらってきたドロップを一緒に食べようと思ったんだけど、南○のど飴みたいだったから、僕は食べなくてシンちゃんだけ食べたんだッツ!!」
「第7研究室ですか。不吉な・・・。あいつ等、漫画がどうとかいう同好会作っていつも変なものをつくってますからねぇ。グンマ様、その飴の缶どこにあります?私は奴らをちょっと締め上げて、急いで元に戻る薬を作りますので。グンマ様は、シンタロー様についておいてあげてくださいね。彼のことですし、気がつくと大暴れしそうですので・・・」
「う、うん。眼魔砲されたらちょっと嫌だけど、頑張る」
「それでは、くれぐれもお気をつけて」
そう言って、高松は部屋から出て行った。
グンマは頬杖をついて、シンタローの寝顔を眺めていた。
「シンちゃん、僕のせいで女の子になっちゃったんだ?本当にごめんね。あぁー、おとーさまがこのことを知ったら、大変そうだなァ・・・。他にも色々と大変そうな人達がいるけど、みんな留守で本当に良かった・・・」
「ん・・・」
「あっ!シンちゃん気がついた??よかったー」
グンマは、ホッとしたような泣き出しそうな顔をしてシンタローを見た。
「えっ?俺どうしたんだっけ?確か、仕事中に倒れて・・・」
シンタローは、ふと、自分自身の声の違和感に気がついた。低めの声ではあるが、男性の声とは明らかに違う。
「???」
「あのね、シンちゃん。驚かないで聞いてね。実は、シンちゃん・・・、のど飴のせいで女の子になっちゃったみたいなのッツ!!」
「へ?何言ってんだヨ??」
明らかに現状認識できていないシンタローに、
「もしよかったら、そっちの部屋で確かめてきて・・・?」
と、グンマが隣室を指差すと、フラフラと何かに操られるようにシンタローは隣の部屋に消えた。
(わぁ、シンちゃん、雑誌に出てくるモデルさんみたいだなぁ。背も20センチは縮んだみたいだけど、僕と同じぐらいあるし・・・。やっぱり、男の子でも女の子でもシンちゃんは綺麗だなぁ)
グンマが色々と感心していると、不意に扉が開き、グンマが一番厄介だと思っていた人物が顔を出した。
「シンちゃーん!もうお仕事終わった?パパだよ~♪」
「あッ、おとーさま・・・」
「あれ?グンちゃんもいたの?シンちゃんは??」
その時、隣の部屋から
「なッ、なんじゃこりゃァァァ~~~~!!!!」
という○田○作風の雄叫びが聞こえた。
「えッ!?グンちゃん、今のって何??何なの??」
グンマが答えようとすると、隣の部屋のドアがバンッツ!!と開いた。
「シンちゃーん!!会いたかったよ~~~!!」
マジック元総帥は、思わず駆け寄り、呆然としているシンタローをギュッ♡と抱きしめた。
「あれ?いつもとシンちゃんの触り心地が違う!?柔らかいし、なんか小さい…。ん――??」
ポフポフと、シンタローを確かめるように触るマジックに、しばらくジッとしていたシンタローであったが、急にスイッチが戻ったように・・・キレた。
「離さんか、ゴルルァ!!」
そう言って、シンタローはまず元総帥の顎に強烈なアッパーをかまし、続いて腹部目掛けて膝蹴りを放った。そしてさらに、
「眼魔砲!!!」
部屋の中を眼魔砲によって破壊し始めた。
「ぼ、僕しーらないッと。おとーさま、頑張って止めてね」
と、グンマはとりあえず部屋の外に避難した。
(シンちゃんって、女の子になっても戦闘能力高いなァ・・・)
――――30分後、グンマが部屋をソッとのぞきこむと、部屋の中は壊滅状態であり、中にはボロボロになった(でも、少し嬉しそうな)元総帥と、少しは落ち着いたらしい(でも、毛を逆立てた猫のような状態の)新総帥が立っていた。
「あのー・・・、シンちゃん、少しは落ち着いた?」
「・・・アァ。なんとかナ。でッ!どういうことか説明しろヨ!!」
「なんかね、さっきののど飴が原因みたい。高松に携帯で聞いたら、科学部隊の漫画マニアの人達がメ○モちゃんみたいに、子どもが大人に変身できる薬を作ったみたいだヨ。何故かシンちゃんは女の子になっちゃったけど・・・」
「ソイツら、全員クビ」
「ま、まぁまぁ。シンちゃん、彼らだって悪気があってやったわけでは無いし・・・」
そう、マジックがとりなそうとすると、
「悪気があろーが、なかろーが、関係ねんだヨ」
シンタローはにべも無い。
「本当にごめんなさいッツ!!間違えてシンちゃんに食べさせた僕が悪いんだ!!」
グンマは、誠心誠意を込め、シンタローに謝った。
「・・・何日ぐらいで戻るんだ?」
「さっき高松に聞いたら、元に戻る薬は作り方が難しいから4日ぐらいだって。ゴメンね。シンちゃん」
「ふーん。まァ、それぐらいで戻れるんだったらいいか。ずっと女ってわけでもねぇしな。ただし、誰にも言うなヨ。ソイツらにも高松にも口止めしとけ。親父もナ」
「「はーい」」
「僕、高松を手伝ってくるね。あと、科学部隊の人達クビにしないでね。一応、いろんな所から無理言ってスカウトしてきた人達だし。じゃあね、シンちゃん。それでは、おとーさま、失礼します」
グンマは、ホッとした様子で部屋から出て行った。
「・・・シンちゃーん。なんだか、グンちゃんに比べてパパの扱いがひどくないかい?パパ、とっても寂しいよ・・・」
「グンマは前よりも大人になったからナ。それに、アンタと違ってセクハラしてねぇし」
「セクハラじゃなくて、親子のスキンシップだよ~。それよりもシンちゃん。とりあえず女の子の服とかいるよね」
「あ゛?別に、このままでいんじゃねェの?総帥服は大きいけど、私服なら着れるだろ?」
「駄目だよ!!そんな可愛い格好でシンちゃんがガンマ団内を歩いていると襲われちゃうよ!パパは許しません!!」
「じゃぁ、どうしろっていうんだヨ!俺は、女の服とかわかんねぇぞ。それに4日間ずっとひきこもってるのも嫌だし・・・」
「じゃぁ、パパがシンちゃんの服を作ってあげるから、それ着てパパに見せてよ。4日間パパとモデルさんゴッコしよう♪うーん、シンちゃんは猫耳とかバニー耳が似合いそうだなぁ。あと、キャンギャル風とか、女子高生風とか、婦警さんとか、看護婦さんとか・・・。あッ、ビデオも撮らないと!!」
鼻血を垂らしながら、シンちゃん人形を抱きしめているマジックに、シンタローはなんとなく背筋が寒くなった。
「(親父・・・。それってモデルさんゴッコじゃなくってイメクラだろうが・・・)ぜってー、い・や・だ!!」
「ええっ!?すっごく楽しそうなのに・・・。それじゃ、シンちゃんは他に何か案がある?もし無かったら、4日間モデルさんゴッコだよ??」
シンタローは、悩んだ。4日間イメクラゴッコは絶対に、したくはなかった。
そして、しばらく悩んだ末、あることに気がついた。
「あっ!そうだ!!とりあえず、俺がガンマ団内に居なかったら俺が女になったってバレないんだよな!?そんじゃ、俺、久しぶりに任務にでるわ♪部屋の修理もその間にできるし。新総帥は、風邪で静養中ということにしといてくんねぇ?個人任務が一番いいんだけど、今要請が来ているやつはというと・・・」
シンタローは崩壊した部屋の中を通り、なんとか壊れずに形を保っている丈夫な総帥机の引き出しをあけ、少し楽しそうに任務予定表を取り出した。
「んー。なかなかねェな。ン?なんだコレ?急遽マッチョな男性求む?・・・無理だな。じゃぁ、しょうがねェから2人組みの任務はっと・・・。うーん、あまり階級が下のやつと組むと後が面倒そうだナ。えーっと、幹部級の奴らは・・・。みんな遠征中か。この近くは・・・おっ、あるじゃん。何々?『女性パートナー急遽必要。パーティーへの同伴及びマイクロチップをボスから奪う手助け。でも、他のプランも考えてますさかい、なるべく無しの方向で』??なんか、えらいネガティブだな。提出者は、っと。あっ、コイツ、アラシヤマじゃん!!」
それを、傍で見ていたマジックが、口を挟んだ。
「シンちゃーん・・・。アラシヤマと2人っきりなんて危険だよ!!そんな美味しい状況で奴が調子にのって、シンちゃんが襲われちゃったらどうするの!?アラシヤマと2人きりの任務なんてパパは許しませんよ!!やっぱり、パパと2人で4日間モデルさんゴッコしようよ~。もしそれが嫌なら、どこか旅行に出かけてもいいよ」
(うーん。アラシヤマと2人きりも大変そうだけど、親父と2人きりで旅行というのも嫌だなぁ・・・。イメクラゴッコは論外。総帥になってからここ最近ガンマ団内ばかりだし、任務といっても大勢ついてくるし、久々に個人任務に出てみるか)
どうやら、シンタローの中では(アラシヤマではなく)任務の方が勝ったらしい。
「親父。やっぱ俺、任務に出るわ。アラシヤマとどうにかなることなんてありえねェし。それに任務の内容自体たいしたこともなさそうだし、心配すんなって。ホラ、『かわいい子には旅をさせろ』ってよく言うダロ?とにかく俺、もう任務に行くって決めたからな!!」
「シンちゃーん・・・(泣)」
「泣いても無駄。パーティーへの同伴か・・・。女物を着るのは嫌だけど、まァ、任務だと思えば我慢できるか。親父、悪ィけどいろいろと手配してくれねぇ?」
「可愛いシンちゃんの頼みならしょうがないか・・・(やっぱり、アラシヤマと一緒の任務だってのが気に入らないけど。まぁ、女の子になってもあれだけ戦闘能力が高いシンちゃんなら大丈夫か)。それじゃ、シンちゃんがパーティーの会場で注目度ナンバーワンになれるように準備するから待っててね~。あっ、もちろんシンちゃんは何もしなくても今のままで十分綺麗だとパパは思うけど」
「は~~~~い、ハイハイ。じゃぁ、頼んだわ」
PR