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 シンタローは、机の上に置かれている書類を読み進めていたが、次の書類を束の中から取り上げると、不意に、1枚の薄っぺらな紙が間から滑り落ち、机の向こう側にそのまま落ちた。
 シンタローは、別にこのまま放っておいてもいいかと思ったが、どうもそのままにしておくのも気になったので、椅子から立ち上がると、屈んでその紙を拾った。
 シンタローが紙に書かれた数行の短い文を読んでいると、直後、 
 「失礼します」
 と言って、アラシヤマが総帥室に入ってきた。
 「珍しおすな」
 アラシヤマがそう言うので、シンタローが
 「何がだヨ?」
 と聞き返すと、
 「それって、団員の死亡報告書ですやろ。シンタローはんが総帥になりはってから、あまり見たことがおまへんえ?」
 シンタローは、無言で、アラシヤマにその用紙を渡した。
 アラシヤマは、それを眺めながら、
 「あァ、あのジイさん、ついにくたばったんどすな。殺しても死にそうに無いぐらい元気やったのに」
 と言うと、シンタローに紙を返した。
 「一応、恩師だろーが。仕官学校時代、お前が一番迷惑かけたんじゃねェのか?」
 「わては、品行方正な生徒どしたえ~。お世話になったんは、シンタローはんの方とちゃいますの?」
 「勝手に記憶を改竄してんじゃねェヨ!」
 「シンタローはんの方が怒られとったハズどす~。・・・真面目な話、わてらを特別扱いせん珍しいジイさんどしたな」
 「ああ」
 なんとなく、2人はそのまま黙ってしまい、部屋には沈黙が横たわった。


 「戦闘における通信は、最も重要なものの1つで・・・」
 ガンマ団士官学校の室内では、かなり年配の教官が話しながら黒板に、無線・伝令・音・視覚・有線などの通信手段について、項目ごとの説明をチョークで書いており、ほとんどの士官学校生たちは、真剣に話を聞きながらノートをとるのに必死であった。
 その中で、約1名、教官の話を聞かず、ノートを破って何かを書いている生徒が居た。
 その生徒とは、アラシヤマである。
 アラシヤマは、ノートに何やら書き終わると、紙を小さく折りたたみ、教官が黒板に説明を書いている隙に前の方に向かって投げた。

 シンタローは、教官の話が既に知っていたものであったので、退屈であり、少々眠かった。そんな折、頭に何か軽い物が当たり、机の上に落ちてきた。
 (何だコレ?)
 と思いつつも小さく折りたたまれた紙を開いてみると、そこには、
 “シエラ・インディア・ノヴェンバー・タンゴ・アルファ・・・(以下略)”
 と書かれてあった。
 (これって、音標文字だよナ。えーっと、アルファベットに直すと・・・“シンタローのアホ”!?こんなくっだんねェことしやがんのは、たぶんアイツしかいねぇし!!)
 シンタローが後ろを振り返ってアラシヤマの方を睨むと、アラシヤマは知らん顔をしていた。その態度にムカついたシンタローは、自分のノートを思いっきり破ると、すごい勢いでノートに文字を書き始めた。そして、教官が黒板に向かった瞬間、アラシヤマに向かってクシャクシャに丸めて小さくなった紙を投げつけた。
 アラシヤマは、空中でそれをキャッチし、紙を開くと、そこには音標文字でなにやら書かれてあった。
 (どれどれ、なんやて?・・・“アラシヤマのバーカ&変態野郎”!?なんどすか、コレ!失礼どす!!―――わても負けてられまへんナ!もっとすごいこと書いてやりますえー)
 アラシヤマは、ノートを千切りとり、それに何か書き始めたが、ふと、気配がするので顔を上げると、教壇にいたはずの教官がいつの間にか、腕組みをして机の横に立っていた。
 「アラシヤマ。そして、シンタローも、授業を真面目に受ける気が無いようじゃな。―――お前ら2人とも廊下に立っとけー!!」
 教室内に、老教官の怒声が響き渡った。教官は、アラシヤマとシンタローの制服の首根っこを引っ掴むと、2人を教室の外に放り出し、思いっきりドアを閉めた。

 「オマエのせいだゾ!!」
 シンタローが、アラシヤマに向かって少々声のトーンを抑えてがなりたてると、
 「俺は、気づかれるようなヘマは絶対してまへん!シンタローが投げ返した時にジイさんが気付きはったんやろ!あんさんのせいどす!!」
 と、アラシヤマも自分の非を認めようとしなかった。
 「んだと、コラ。やる気か、テメェ!!」
 シンタローがファイティングポーズをとると、アラシヤマも、
 「望むところどすえ」
 と構えをとった。

 授業を進めていた教官であったが、どうも廊下の方が騒がしいので授業を中断し、様子を見に行くと、シンタローとアラシヤマは取っ組み合いのケンカをしていた。
 2人は結局、教官から拳骨をくらい、さらにガミガミと叱られた。
 アラシヤマとシンタローは不貞腐れていたが、その様子を見て老教官は溜息を吐き、
 「お前達2人が、今回の授業内容を既に習得しているのは分かっているが、知っている知識だからと言って疎かにしていいものではないぞ。それに、戦闘は1人で勝手に行動するのではなく、常に仲間がいるということを忘れるな」
 と言ったが、返答は無かった。
 老教官は手を伸ばすと2人の頭をクシャクシャッと撫で、
 「戻るか?それとも、保健室に行って手当てを受けるか?」
 と2人に向かって言うと、
 「・・・こんな傷たいしたもんやおまへん。それに、あのドクターに会うくらいやったら、教室に戻って授業をきいたほうがマシですわ」
 「俺も同感」
 3人は教室に戻った。


 総帥室で、シンタローとアラシヤマは依然として黙ったままであったが、不意に、アラシヤマが沈黙を破り、
 「まぁ、大往生やったんと違いますか?あのジイさんには身寄りが無かったみたいやし、最後までガンマ団員でいられて幸せやったと思いますえ?わては、士官学校のガキどもはムカツキますが、ジイさんはどんなクソ生意気なガキでも面倒を見るのが楽しそうどしたわ」
 と、やけに饒舌に言った。
 「そうだな」
 シンタローは、短くそう答えた。
 アラシヤマはシンタローの手の内にある紙を眺めながら、
 「それにしても、死ぬと、こんな薄っぺらな紙一枚がシンタローはんの元に届くんどすなぁ」
 「オマエは、しぶとそうだから中々死にそうにねェけどナ!」
 シンタローは、そう言うと、一度もアラシヤマの方を見ずに総帥机の方に戻った。
 アラシヤマは一呼吸すると、
 「そうどすえ~。それに、シンタローはんのシャワーシーンをカメラに収めるまでは絶対死ねまへんナ!!かえすがえすも、師匠に燃やされたあの写真、残念どす~」
 と言い、机の方に向かって足を踏み出した。
 シンタローは、アラシヤマから受け取った書類を机の上に置くと、至近距離から、
 「―――眼魔砲ッツ!!」
 眼魔砲を撃った。
 アラシヤマは衝撃で吹き飛ばされながら、
 「あっ、シンタローはーん!今一瞬、ジイさんが川の向こうで手を振ってるのが見えましたわ」
 と言った。







士官学校ということで、“学校=先生”で書いてみましたが、またしても何やら外したような気も・・・。
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