久々に2人のみの任務(麻薬密輸組織の大ボスにおしおき)が終わり、アラシヤマと シンタローは密林の中で、一夜を過ごしていた。
とりあえず、もう戦闘は終わったので火を焚いても心配ないと判断し、2人はアラ シヤマの熾した焚き火を囲んでいた。この辺りは密林といっても、夜間はひどく寒い。
「シンタローはん、もう任務も終わったことですし、帰りは気が楽でんな」
「そうだな」
「・・・・」
しばらく、2人の間に沈黙が横たわった。
「わて、殺さん任務は、殺す任務よりも難しいと思いますわ」
ふと、アラシヤマがポツリと言った。
「・・・お前は、ガンマ団を辞めたいのか?」
「いえ、そういうことやないんどす。わてかて、人を殺すよりは殺さん方がええと思い ます。・・・ただ、最近考えることが多いんですわ。殺したら、その人のその後の人生 を気にすることなんてあらしまへんやろ。まぁ、そこでしまいですしな。殺さんかったら、 その人は、わてがしたことによって、一生何らかの不都合を抱えて生きていくわけですやろ。 後で、仕返しにくるかもしれまへんし」
それを聞いたシンタローは、何処か痛そうに顔を歪めた。
それに気づいたアラシヤマは、慌てて言った。
「すんまへん。わて、シンタローはんを責めるつもりやないんどす。ガンマ団は、本物の 悪人にしかおしおきしまへんからわては気が楽どす。それに、わては、どんな状況になっても 生きていたいと思いますえ?生きてさえいれば、あんさんの傍に迷惑や言われてもおられます しな」
「俺の考え方は、甘いのか・・・?」
「そうやおまへん。わて、ほんまを言うと、あんさん以外は生きようが死のうがどうでも ええんどす。殺す方がわては得意ですしな。今まで、殺してきた人のことなんぞ、考えたこと もおまへん。ただ、シンタローはんが新総帥になって、ガンマ団が変わってから、少し考える ようになりました。それは、わてにとっては少し苦しいけど、嬉しい変化なんどす。」
シンタローは、顔を伏せて焚き火の炎を無言でじっと見つめていた。
「シンタローはーん?シンタロー??・・・あまり、わてに弱みを見せると、つけこんで しまいますえ??わては、シンタローはんにバーニング・ラブvなんどすから」
「・・・調子にのってんじゃねぇよ」
弱々しく呟いたシンタローであるが、アラシヤマはそれでも声を聞けて、ホッとした顔をした。
気がつくと、東の空の方が白んできており、紫や赤など、色々と複雑な色の変化を見せていた。
「ほら、シンタローはん、夜が明けてきましたえ?わては、今まで暗闇の中におったように 思うんどすが、そこにあんさんが光を差し入れてくれたんどす。わてだけやのうて、コージはんも、 トットリはんも、ミヤギはんも、みんな同じや思います。他の兵士達ももちろん同じや思いますわ」
2人はしばらく、無言で暁を見ていた。
「綺麗どすな」
「・・・ああ、綺麗だな」
だんだんと、空が明るくなり、太陽が密林の木々の向こうから姿を見せ始めた。
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