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 特にお互い示し合わせていたわけではなかったが、シンタローが「一人で食べるよりはマシ」ということでいつもアラシヤマと夕食を一緒に食べていたので、その夜、アラシヤマがいつものように台所に入るとテーブルの上には缶詰が1個置かれていた。そして、シンタローの姿は辺りには見当たらなかった。
 (もしかして、今日の晩ご飯はこれだけどすかぁ??)
 アラシヤマは手に取った缶詰をゴトンとテーブルに置くと、階段を上がっていった。そして、扉をドンドンと叩くと、
 「シンタローはーんッツ!開けておくれやす~!!晩ご飯、一緒に食べまへんか?」
 と言ったが、返事は無かった。


 シンタローは、扉の向こうでドアを叩きながらアラシヤマが叫ぶのを聞いていた。
 (よく分かんねーけど、今は会いたくねぇ。・・・まだ男に戻ってねぇし)
 そう思いながらシンタローはベッドの上で膝を抱えていると、いつの間にか扉の向こう側は静かになった。
 「・・・シンタローはん、怒ってはりますの?」
 困惑したような声が聞こえた。シンタローが返事をしないと、しばらくして、
 「―――わかりました。わて、今から仕事に行ってきますさかい。おやすみなさい」
 そして扉の前から気配が消え、石の階段を下っていく足音が聞こえた。シンタローは、ベッドに寝転んだ。
 
 
 翌日、目が覚めるといつもどおり女性の姿であったのでシンタローはガッカリした。下に降りていくと、どうやらアラシヤマはまだ戻ってはいない様子であった。朝食を一人食べながら、シンタローは考えた。
 (最近、男のままでいる時間がだんだん短くなってきてねーか・・・?)
 それまで気づかなかったが、ここ数日のことを思い返すと確かに思い当たる節があり、いてもたってもいられず、パンをテーブルに置き立ち上がった。
 (アイツはあてになんねーし、自分で何とかしねェとッツ!)
 シンタローは決心した。


 (何か、手掛かりになるもんとかねーかな?)
 アラシヤマの部屋に入ると、机の上には本が数冊積まれてあった。いずれも色褪せ古びており、かなりの年代物のようであった。
 (売ればたけぇか?・・・でもこんな悪趣味な本なんか買う奴いねーよナ!)
 本をパラパラとめくってみると、何やらわけのわからない文字がたくさん書かれてあったので一気に読む気が失せた。分厚い本が積み重なる中、下の方に一冊だけ薄い本があったので引っ張り出した。古語ではあったが何とか読めそうであったので、その本を手に取るとシンタローは部屋に戻った。

 シンタローはベッドに寝転がって本を読んでいたが、
 (魔女もムカつくけど、何だ?この女。髪がはしご代わりになんなら、自分で逃げたらいいじゃねーか?)
 どうやら本の内容には共感できなかったようである。途中で本を閉じるとベッドの上に投げ出し、窓辺に行って外を見た。
 (そういやアイツ、帰ってこねーな。いたらいたでウザいけど、暇だし)
 外を眺めていると、遠くの方に小さく人影が見えた。
 (あれ?2人か?じゃあアラシヤマじゃねーな!)
 そうシンタローは決め付けると、窓を開けた。そのまま見ていると人影はだんだん近づき、ついにはシンタローのいる窓の下まできて上を見上げた。
 「ヤッホー!シンちゃんッツ☆迎えに来たよ~♪」
 「シンタロー、なのか?それにしても何か感じが違うような気がするが・・・」







 




 




 




 







 



 「お前ら、どーしたんだヨ!?」
 外に出たシンタローが思わずそう聞くと、
 「わー、シンちゃん、よくわかんないけど女の子になっちゃったんだッツ!?カワイ~v」
 いきなり嬉しそうなグンマに抱きつかれた。
 「テメェ、離せッツ!」
 「わーん、ヒドイヨ~」
 シンタローがグンマを殴っていると、傍らではキンタローが何やら難しげな顔をしていた。
 「一体どういうことだ?俺の知っているシンタローは男だぞ!?」
 「―――わけのわかんねー呪いのせいでこうなっちまったんだ。ったく、ムカツクぜ!」
 シンタローが不機嫌そうにそう言うと、
 「キンちゃーん、どうしようか?」
 グンマはキンタローを見上げ、少し困ったように言った。
 「そうだな、もう誤魔化すのも限界だしな。どんな姿であれ、シンタローには城に戻ってもらおう」
 「誤魔化す?」
 「あぁ、シンタロー。王が、お前が狩りから帰ってこないことを不審に思っている。お前の供の者たちが血相を変えて来たので、とりあえず王には俺達の所に寄ってしばらく滞在していると伝えておいたが、それも時間の問題だ」
 「もう、いつシンちゃんが帰ってくるんだって大変だヨ~」
 「―――すまねぇ」
 シンタローがそう言うと、重い空気を断ち切るようにグンマが、
 「帰ろうよ、シンちゃん」
 と言った。
 「でも、俺こんなんだゼ?」
 キンタローは、突然シンタローの両手を取り握り締めると、
 「シンタロー、俺が科学の力でなんとかしてみせる!それに万一元に戻らなくても、イトコ同士は結婚できるぞ。だから、大丈夫だ」
 「あっ、キンちゃん、ズっルーい!シンちゃん、シンちゃんッ!僕もだからねッツ♪」
 「ハハ・・・」
 少々ひきつって笑いながら、シンタローは(・・・オメーら、最初はともかく最後らへんの言葉は嬉しくねーゾ?)と思っていた。
 「では、日も暮れてきたし早く発った方がいい。行くぞ」
 キンタローは2人を促し歩き出したが、シンタローがその場から動いていない事に気づき、足を止めた。
 「どうした?」
 「―――ちょっと、野暮用を思い出した。先に行っててくれねーか?」
 「ああ、恩人に挨拶もなしに帰るのは失礼だったな。・・・すまない、シンタロー。手土産を持ってくるのを忘れた。この俺としたことがッツ!」
 「落ち着いて、キンちゃんッツ!シンちゃんが誰かのところにいるかどうかなんて分からなかったし、しょーがないヨ☆」
 「そもそも、あんなヤツに手土産なんか全然いらねーし!・・・アイツがいつ戻ってくるか分かんねーから、帰るのは明日でもいいか?」
 「そうか・・・。それなら、俺たちは少し先の広場で待っているからな。明日の朝、会おう」
 キンタローは名残惜しげにそう言った。
 「じゃーねッツ☆シンちゃん!待ってるヨ~」
 シンタローは、キンタローと手をブンブンと振りながら遠ざかっていくグンマを見送り、2人の姿が見えなくなると塔に戻った。



 アラシヤマは中々帰ってはこなかった。シンタローは(そもそも、何で俺様があんなヤツを待たなきゃなんねーんだヨ!・・・朝も早いし、さっさと寝よう)とベッドに入って毛布にくるまったが、何故か眠くはならなかった。
 「アラシヤマの大馬鹿野郎!変態ッツ!!あと、根暗で味オンチで・・・」
 思いつく限りの悪態をついていると、あまりにもたくさんあったせいか、いつの間にかシンタローは眠ってしまった。
 
 (あれ?もしかして俺、寝ちまってたのか!?)
 シンタローが覚醒しかけてぼんやりと目を開けると、部屋の中は暗かった。
 ふと違和感を感じたが、
 (・・・何でッツ?朝になってないのに!!)
 どうやら一度元に戻っていた身体が再び女性に変化してしまっていたようである。
 外では強い風が吹いており、木々の葉の擦れる音や、どこか隙間から塔に吹き込む風の甲高い唸り声が聞こえてきた。それらの音に混じって、石段を上るような音がかすかに聞こえた。シンタローがじっと息を殺していると、足音は部屋の前でピタリと止まった。しばらくの間、どうしたものかためらっているように静かであったが、足音はまた階段を下りかけた。
 シンタローは思わずドアを開け、階段を下ろうとしているアラシヤマに駆け寄り、黒いマントを掴んだ。
 「ちょっと待て!俺は今日の朝帰るから!!・・・一応、世話になったナ」
 一気に言いきり、マントを離したが、手にベットリとついた液体を見てシンタローは顔をしかめた。
 「―――シンタローはん。あんさん、ここからいなくなるんどすか?」
 問いかけたアラシヤマの声は、少し掠れていた。シンタローはその質問には答えず、
 「オマエ、どこか怪我してんのかよ?」
 と言ってアラシヤマを見上げると、アラシヤマは感情を面に表さず、無表情であった。
 「わての血やありまへん。出て行くんなら、さっさと出て行っておくれやす」
 押し殺した声で言うと、一歩後退った。
 「てめぇに言われるまでもねーよ!でも、本当に怪我はしてねーんだろーな?」
 シンタローがアラシヤマの傍まで近づき、嘘をついていないか確かめるように睨みつけると、アラシヤマとシンタローの視線が一瞬合い、すぐにアラシヤマは目を伏せた。
 そして、躊躇いがちにシンタローの体を自分の方へと引き寄せ、
 「・・・あんさん、馬鹿でっしゃろ?わても、大馬鹿どすが」
 そう耳元で囁くと、キスをした。
 キスが終わってもアラシヤマはシンタローを抱きしめたまま離さなかったので、何とか腕から逃れようとしてもがくと、
 「あんさん以外の匂いがしますな」
 と、アラシヤマはポツリと言った。
 (あぁ、馬鹿グンマが抱きついてきた時にでも移ったか。それにしても、何でそんなのが分かんだ、コイツ?・・・犬みてぇ)
 シンタローが、アラシヤマを殴ろうと思ったことを一瞬忘れて、目を丸くしてアラシヤマを見ると、
 「―――何で否定せぇへんの?あんさん、その姿を嫌がってたはずどすが、他の男に抱かれたんやったら、わてにも抱かれてくれはるやろ?」
 押し殺したような声でそう言うと、(何言ってやがんだ?)と呆然としているシンタローを抱き上げ、部屋の扉を押した。
 今まで彼には開けられなかったはずであったが、何故か、扉は開いた。







 


 シンタローは、ベッドの上に投げ出された。すぐに身を起こし、逃げようとしたが両腕を一纏めに押さえつけられた。身動きが取れず、初めて自分に覆い被さっている男を怖いと思ったが、必死で睨みつけた。
 アラシヤマは、しばらく無言でシンタローの顔を眺めていたが、
 「・・・やっぱり、やめときますわ」
 迷った末にそう言って身を起こし、そして、膝の上にシンタローを抱き上げた。
 震える体を抱きしめ、あやすようにその背を撫でながら、
 「シンタローはん。さっきわては、あんさんが出て行くんなら出て行ったらええって言いましたが、あれ、嘘どす。ほんまは、何処にも行かんでわての傍にずっといてほしゅう思います。―――でも、それは無理なことも承知なんどす」
 と、小さな声で言った。
 シンタローは、一気に色々な感情が押し寄せてきたので整理がつかなかったが、とにかく自分が今非常に腹を立てているということだけは確かであった。
 アラシヤマから体を離そうと身じろぎすると、自分を抱きしめていた腕は簡単に外れたので、シンタローは、思いっきりアラシヤマを殴った。
 「あの、痛うおます・・・」
 「―――これぐらいですんで、有難く思えッツ!」
 「・・・ハイ。それにしても、口の端が切れてもうたわ」
 殴られてベッドの下に落ちたアラシヤマが立ち上がってそうぼやくと、シンタローはベッドの上から降りてアラシヤマの傍に近寄り、頭を引き寄せ、血の滲んでる箇所を舐めた。
 すぐにシンタローがアラシヤマから離れると、彼は今ひとつ状況が理解できていないようであった。
 「なっ、何が起こったんどすかぁ!?今ッツ!?」
 「何って、消毒」
 そうアッサリ言ったシンタローであったが、アラシヤマが、
 「シンタローはーんッツ!この程度じゃ全っ然!足りまへんえ~vvv」
 と、抱きつこうとすると、
 「眼魔砲ッツ!」
 アラシヤマは、部屋の外に吹き飛ばされた。
 その時、朝日が部屋の中へと差し込んできた。

 
 扉のすぐ傍に倒れていたアラシヤマが目を覚まし、部屋の中に入るとシンタローは男の姿に戻っていた。
 「シンタローはん、元に戻らはったんどすな!」
 「あぁ。それじゃ、俺は帰っから」
 シンタローが、アラシヤマの方を見ずに荷物を持って階段を下りていくと、アラシヤマは後からついてきた。塔の下に着くと、アラシヤマは
 「送りまひょか?」
 と聞いたが、シンタローは、
 「いい」
 と短く答えた。
 「じゃーナ!オマエとは二度と会うことはねぇと思うけど」
 「シンタローは~ん、わてら心友やのに、えらい薄情どすえー!・・・何しろ、あんさんはわてを本気にさせてしまいましたからナ」
 最後の方は小声で呟いたのでシンタローには聞こえなかったようである。
 「まっ、楽しみにしといておくれやす」
 「何をだヨ?」
 胡散臭げにアラシヤマを見ると、アラシヤマは
 「ヒ・ミ・ツどすvvv」
 と言ってどうやら笑顔のつもりらしい顔で誤魔化した。
 シンタローは、一度も振り返らずにその場を後にし、広場で心配しながら待っていたグンマやキンタローと合流すると城に戻った。王はシンタローの無事な姿を見てたいそう喜んだそうである。


 ある晩、シンタローが自室で本を読んでいると、「コン、コン」と、窓に何かが当たる音がした。
 「・・・何だ?」
 シンタローが窓を開けると、特に変わった様子は何も見られなかった。
 「?」
 と、窓を閉めて椅子に戻ろうとすると、
 「おばんどすv」
 いつの間にか、黒衣の男が部屋の中に立っていた。
 「テメェ、一体どっから入って来やがったッツ!?」
 「まぁ、細かいことはどうでもええですやん。シンタローはん、遅くなりましたが会いに来ましたえ~!シンタローはんがわての所で暮らすのが無理なら、わてがシンタローはんの近くに住めばええと気づいたんどす!というわけで、今日からこの城に魔法使いとして就職しましたさかい、末永うよろしゅうvvv」
 「・・・たぶん、悪い夢だナ。とっとと寝よう」
 「えっ?わても一緒にどすかぁ!?―――シンタローはん、えらい積極的どすなvvv」
 嬉しそうなアラシヤマが、パジャマ姿のシンタローを抱き寄せると、
 「眼魔・・・」
 シンタローは眼魔砲を撃とうとしたが、アラシヤマは素早くシンタローの手を握り込み、
 「やっとあんさんに会えて、嬉しおます」
 と言ってキスをした。
 何か言おうとしたシンタローは、諦めたのか目を閉じ、もう片方の手をアラシヤマの背に回した。




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