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 「総帥、そろそろご休息なされてはいかがですか?」
 書類をシンタローに手渡したティラミスは、時計に目をやった。
 「ん?そうだナ、そんじゃ、ちょっと休憩させてもらうわ」
 仕事の手を止めたシンタローが大きくひとつのびをすると、
 「コーヒーをお持ちします」
 すかさずティラミスがそういって背を向けたが、
 「あ、自分で缶コーヒーを買って飲んでくるからいい!」
 シンタローは急いで立ち上がった。
 振り向いたティラミスは、苦笑しながら、
 「わかりました」
 と答えた。


 まだ午後だというのに休憩室にはめずらしくひと気がなかった。
 (なんか、あいつらにまでちょっと子ども扱いされてる気がすんだよナ…)
 少しむくれながらシンタローは自動販売機のボタンを押し、取り出し口に手をやると、後ろのほうで
 「あっ、せっかくのシャッターチャンスやのに、フラッシュがッツ…!」
 という声がした。
 シンタローが振り向くと、仕切りの上に置かれた観葉植物が少し揺れていた。
 目をすがめ、一瞬の動作で取り出したナイフを投げつけると、向こう側でドサリ、と何か重いものが倒れる音がした。
 (眼魔砲を撃つまでもねーよなぁ)
 シンタローは確認する気にもなれず、そのまま休憩室を後にすると、
 「うわっ、何だこの血だまり!?」
 「おい、絶対関わり合いにならないほうがいいって!だってこの人って…」
 「そうだな。やっぱり見なかったことにして戻ろう」
 「…あんたはんらなぁ、今なんて言わはりました?怪我人を介抱するとかいう親切心はこれっぽっちもないんどすかッ?」
 「うぎゃーッツ!起き上がったー!!」
 と騒ぐ声がかすかに聞こえた。


 (ったく、落ち着いてコーヒーも飲めやしねぇ)
 階段に腰を下ろし、フタをあけた缶をあおると口中に渋みが広がった。
 (そういやアイツ、いつ遠征から帰ってきやがったんだ?)
 しばらく顔を見ていなかった男の顔を脳裏に思い浮かべた瞬間、渋みが苦味へと変わったような気がした。
 何やら視線を感じたので入り口へと目をやると、たった今思い浮かべていた人物と目があったのでシンタローは一瞬息をのんだ。
 「あああああのっ、ただいまどすえvシンタローはん」
 「―――なんだテメェ、生きてやがったのか」
 「ひどうおます~、『おかえりアラシヤマ。よく帰ってきたナ!さみしかったゼ俺の心友v』とか、言ってくれはりませんのー!?」
 「本気で死ぬか?オマエ…」
 「いやあの、さっき出血多量状態どしたし、ナイフも眼魔砲もちょっと今は堪忍しておくれやす…」
 「ッたく」
 シンタローが掌の中の光球を消すと、アラシヤマは嬉しげに階段を上がってきた。
 そして、シンタローの隣に腰を下ろした。
 「ひさしぶりに本物のシンタローはんどす~vvv」
 どうやら笑顔のつもりらしい表情を浮かべ、アラシヤマはしばらく黙って座っていたが、
 「き、緊張しすぎて何を話したらええのかわからへん…」
 と、情けなさそうにいった。
 シンタローも自分から何か話し出すというわけでもなかったので、並んだまま、ただ時間だけが過ぎた。
 「あの!今回任務の際ジャングルを通過したんどすが」
 突然のアラシヤマの声に少し驚いたシンタローが彼の方を見ると、
 「その時えらい大きい樹がありまして、シンタローはんみたいやなぁって思いました」
 気がつかなかったものか、そのままアラシヤマは前を向いたままであった。
 「根がしっかりとしていて天まで届くような背の高い大きい樹で、小動物やら小鳥やら小さい花やらがそこで暮らしてはるんや。いろんな小さい命を守って凛と立っていはる姿が、あんさんに似てる、と思うたんどす」
 アラシヤマは愛しそうに目を細めた。
 シンタローはアラシヤマから目線をそらし、下唇を噛んだ。
 「―――てめぇ、もっとマシな話をしやがれ。たまには、ウィットに富んだジョークとか言えヨ?」
 「ええっ?ウィットに富んだジョーク、どすかぁ!?」
 アラシヤマは悩みながらしばらく何事か考えていたが、
 「あの…」
 と口を開いた。
 「何だヨ?」
 「今あんさんが飲んでるコーヒーの缶、飲み終わったらわてにくれまへん?わ、わてのシンタローはんベストコレクションに加えようかと…」
 「―――それのどこがジョークだ?笑いどころが全くわかんねぇゾ…」
 「あっ、すみまへん間違えました!これって思わず本音どしたえー!わてって、超ウッカリ屋さんv」
 小首をかしげ、本人は可愛らしくごまかしたつもりらしかったが、シンタローはアラシヤマを見もせずに、
 「眼魔砲」
 至近距離から眼魔砲を撃った。壁に大穴を開け、アラシヤマの姿はシンタローの視界から消えた。
 「休憩終わり、と」
 シンタローは何事もなかったかのように立ち上がった。
 ふと、手に持った缶を見て眉をしかめ、
 「とんでもねぇバカだな、アイツ」
 と呟いた。









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