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 シンタローは籠を背負ってジャングルの中を歩いていた。籠の中には色とりどりの果物や植物が入っていた。晩ご飯のおかずとデザートにするつもりであった。
 (雨の後だからか、ちょっと蒸すよナ)
 辺りの木々や草は久々に雨を受けたせいか、葉が強い太陽の日差しを弾くようにぴんと張り、濃い植物の香りが森中にたちこめていた。
 シンタローは、こめかみを伝わってきた汗を腕で拭った。
 しばらく歩くと、そこだけ木が無い開けた場所に出たが、いつも遊んでいるはずの小動物達は居なかった。
 かわりに、あまり会いたくない人物がレジャーシートを広げてその上に座っていたので、回れ右をして音を立てないように元来た道を引き返そうとすると、何やら作業中であった相手もシンタローに気づいたようであった。
 「シンタローはーん!あんさんから訪ねてくれはるやなんて、嬉しおす~!!やっぱりわてら、赤い糸で固ーく結ばれているんやって確信しましたえー!」
 と、大きく手を振りながらアラシヤマが駆け寄ってきたので、
 「眼魔砲」
 思わず眼魔砲を撃つと、アラシヤマは吹き飛ばされた。
 十数メートルほど先に倒れたアラシヤマは動かなかったので、シンタローが路の真ん中に倒れているアラシヤマを避けてそのまま横をすり抜けて行こうとすると、ガシリ、と足首を握られた。
 「うわっ!何すんだ!?離せッツ!!」
 思わずシンタローが叫ぶと、アラシヤマは彼の足から手を離して起き上がり、
 「・・・シンタローはん。わ、わてに、わてに!会いにきてくれはったんどすナvvv」
 と、ボロボロの姿でシンタローに抱きついた。
 「違うッ!何考えてやがんだテメェ!?今すぐ離れろッツ!!」
 「嫌どす~。だって、今あんさんを離したら、このまま帰ってしまいますやろ?」
 「あたりまえだッ」
 アラシヤマの行動と暑さに、シンタローはますます苛立ちながらもキッパリと答えた。
 (何だコイツ?もしかして、わざとやってんのか・・・!?)
 どうにかして、アラシヤマを引き離そうと試みるが、離れない。
 「パプワ達が待ってるから、離せッツ!」
 「―――じゃあ、やっぱり離しまへん。シンタローはん、可愛いらしおす~vvv」
 アラシヤマは、シンタローを離す気は爪の先程も無いようであり、ますます力を込めてシンタローを抱きしめ、首筋に顔を埋めた。
 (うわ、暑苦しい・・・)
 シンタローは気が遠くなりそうであったが、ここで倒れるとアラシヤマに一体何をされるかわかったものではなかったので、
 「とりあえず、すぐには帰んねぇから、離せ!」
 そう言うと、アラシヤマは疑い深げにシンタローを見た。
 「や、約束どすな・・・?」
 「ああ、約束だ」
 声音に嘘が含まれていない、と判断したのかアラシヤマはやっと離れた。
 離れた瞬間、シンタローはアラシヤマを右ストレートで殴った。


 (何で、こんなことになったんだ?今日は厄日か??)
 シンタローは、半分あきらめの気持ちでアラシヤマとレジャーシートの上に座っていた。
 「シンタローはんv、お茶はいかがどす??」
 「何が入ってるかわかんねーし、いらねぇ。ところでオマエ、さっきまで何やってたんだヨ?」
 シートの上に何やら紙の切れ端やらハサミやらが散らばっていたので、
 (どうせ、ろくなコトじゃねーだろーケド)
 とシンタローが思いながら聞くと、
 「あっ、コレどすか?これは、シンタローはん応援グッズの団扇作りどすv苦労の末、やっと9枚完成しましたえー!あと残り1枚なんどすが」
 アラシヤマはそう言って、表にシンタローの写真が貼られ、裏に“シンタローはんLOVEv”と文字が書かれた団扇の束を嬉しそうにシンタローに渡した。
 シンタローは、団扇を受け取るなり、
 「眼魔砲ッツ!!」
 団扇に向かって眼魔砲を撃った。紙と竹でできた団扇は粉々になった。
 「し、シンタローはんっ!あんさん、何てことしはりますの・・・!!」
 アラシヤマは、ショックをうけたような顔で呆然とシンタローを見た。
 「何だヨ?文句あっか!?テメェ、俺に無断でこんなキモイもん作ってんじゃねーよ!!」
 アラシヤマは、
 「わての団扇・・・」
 と、ブツブツ呟きながら膝を抱えて落ち込んでいた。
 (ウザイ、鬱陶しい。それにしても、あちーな・・・)
 シンタローは、アラシヤマに背を向けると、白い無地の団扇が目に留まった。傍に自分の写真が置かれていたので、それはすぐに破り捨てたが。
 団扇を手に取り扇ぐと、少し涼しい風が肌に当たった。
 「やっぱ、夏は団扇だよナ」
 そう呟くと、傍らのアラシヤマが、
 「ちょっと貸しておくんなはれ」
 と、シンタローの手から団扇を取り上げ、持っていたペンで何やら絵を描いた。
 「これ、朝顔か?」
 「そうどす、何も描かれてないのも無粋やと思いまして。日本の団扇いうたらこれがつきもんでっしゃろ?」
 アラシヤマはシンタローの手に団扇を返した。
 「ふーん。オマエ、割と器用だナ」
 シンタローが少し感心したように団扇の絵を眺めると、アラシヤマはそれほど嬉しそうでもなかったが、しばらくしてオズオズといった様子で口を開いた。
 「あの・・・、裏側に“シンタローはん、バーニング・ラブv”って書いてもよろしおますか?」
 「何ほざいてやがんだテメェ?モチロン嫌に決まってんじゃねーか!」
 「―――シンタローはんの、イケズ~」
 と言って、アラシヤマは頭の後ろで腕を組み、ごろんと仰向けに寝転がった。そして、シンタローが団扇を使う様子を眺めていた。
 長い間2人は無言でいたが、空が縹色から菫色に色を変え始めたころ、
 「そろそろ、帰んねーと」
 ふと、シンタローは立ち上がった。アラシヤマもつられたように身を起こした。
 シンタローは団扇を手に持ったままであることに気づいたが、アラシヤマを見て、
 「これ、貰ってもいいか?パプワに見せてやりてーんだ」
 と聞くと、アラシヤマは目を伏せて少し笑い、
 「ええですよ。持っていっておくんなはれ」
 座ったまま了承の意を告げた。
 「じゃーな!」
 シンタローが籠を背負って歩き出すと、
 「シンタローはーん、一番星が出てますえ!」
 後ろから、アラシヤマの声が追いかけてきた。
 立ち止まって上を見上げると、未だ紫がかった青みの残っている空に星が1つ、白々と輝いていた。









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