お気に召すまま 3
「キンタロー様もグンマ様も行方がわかりません。御三方の携帯も、シンタロー様の部屋に残されていました」
チョコの報告を受けたマジックは、そうか、と言って紅茶を飲んだ。
前総帥の私室に強制連行されたオレたちは、とりあえず拘束具などはつけられずにソファに座らされているが、ティラミスに銃を構えて監視されていた。
マジックは静かにロイヤルコペンハーゲンのカップをソーサーに置くと、静かに語りかけてくる。
「君たちがどういう目的でここに来たのか、そして3人の行方を教えてもらおうか」
「オレたちはホンモノだって!起きたら3人とも女になってたんだ。オレたちだって困ってんじゃねえか」
「全く口が悪いね、君。どこまで嘘を突き通す気かな」
マジックの表情は冷ややかだった。
あくまでも噛み付くオレに、グンマははらはらしていたが、オレは止めることができなかった。
証拠を見せるチャンスもくれないなんて。
それどころか、危機だと言うのに息子を疑うなんて。
悔しくて悔しくて、涙さえ滲んだ。
威嚇してる子犬みたいにキャンキャン吠えていると、キンタローが落ち着け、とたしなめた。
やましいところは何もないのだから、と。
「ク・・・ッ」
ドカッと音を立ててソファに座ると、プイとマジックの方から目を逸らす。
助かる方法を考えなくてはいけないが、それよりも今はマジックの冷淡さへの怒りがどうしても収まらなかった。
「とりあえず、3人は別々の部屋で見張っていなさい」
「な・・・!ダメだッ!せめて一緒にいさせてくれ!」
ティラミスらに指示を出したマジックに、オレは思わずもう一度立ち上がって抗議した。
すっかり筋力も落ちてしまっているこの状態では、男ばかりのこの施設内にいることに恐怖を感じる。
恐らくガンマ砲も撃てないだろう。
もし1人のところを、理性のタガが外れた兵士が襲ってきたりしたら・・・。
特にグンマなどは元々戦闘の基礎もあまりできていないし、護身術も役に立ちそうにもない。
「キミたちを3人一緒にしておくメリットはこちら側にはないからね」
マジックは机の上に手を組んだまま、感情のこもらない声で静かに言う。
「じゃあ、せめて、グンマとキンタローは一緒の部屋にしてくれ」
その言葉に、キンタローとグンマは息を飲んだ。
「シンちゃん!ダメだよ!ボクは1人でもいいから・・・」
「いや、オレを1人にしろ」
「2人とも」
シンタローが2人を制した。
オレは大丈夫だ。
そう目で伝えるように、力強く頷いてみせる。
しかし、キンタローとグンマの不安そうな表情を変えることはできなかった。
「では黒髪のお嬢さんの言う通りにして、残りの2人は別の部屋にお連れしなさい」
「は」
マジックの指示に、オレは1人残された。
キンタローとグンマは、チョコに連れられて一族のプライベートスペースの空き室に閉じ込められた。
普段誰も使っていない部屋は、わずかながら黴臭い気がする。
「申し訳ありませんが、お2人にはここで待機していただきます」
チョコは、若干申し訳なさそうに言った。
その様子に、もしかしたらチョコは何か知っているのではないかとグンマは思った。
「ね。チョコレートロマンス!キミはボクたちがホンモノだって、わかってるんじゃない!?」
いつになく切迫した様子でグンマは詰め寄った。
「・・・」
チョコは答えない。
「どうなんだ?返答しだいでは、元に戻ったとき総帥権限で懲戒処分も考えられるぞ」
キンタローの目は本気だった。
普段の低い声とは違い、女性の声になってしまっているが、その硬質な響きは、威厳と迫力に満ちている。
「・・・あくまで私個人の見解ですが、御二人、いや御三方を見て、あまりにもご本人と似ていらっしゃるので、別人だと言うには、自信がありません。ですが、私はマジック様の意向に従うまでです。それで処分されるのでしたら構いません」
チョコのタレ目が、いつもより真剣だった。
グンマとキンタローは目配せをしあう。
「ただ、今のガンマ団は捕虜に対し、非人道的な扱いをすることを堅く禁じられています。捜査の関係上、この場所に拘束はさせていただきますが、部屋にあるものは自由に使って頂いて構いませんし、お食事もお好きなものをお持ちします」
「捜査とやらが進むとは思えんが、いいか、シンタローに手を出させるな。もし、シンタローに何かあったら、オマエから殺してやる」
最近の紳士的な彼にしては珍しく、殺意を隠さないキンタローの鬼気迫る様子に、チョコレートロマンスのみならず、グンマは背筋に冷たいものを感じた。
「・・・承知、いたしました・・・」
やっとそう言ったチョコは、部屋の外に出て行った。
「チョコはやっぱりなんかヘンだと思ってそうだね」
グンマは腕組みをしたキンタローを見上げる。
「そうだな・・・。しかしヤツの意思だけで動くには限界がある。やはり伯父貴をなんとか説得しないと・・・」
顎に手をあてて考えこむキンタローは、クールで、女性の姿ながら非常に格好良かった。
その様子をほれぼれと眺めていたグンマだが、やがて自分がずいぶん空腹であることに気がついた。
「ねえ、キンちゃん、ご飯もってきてもらわない?さっき言えばよかったんだけど・・・」
「ああ、そうだな。オレも腹が減った」
グンマは部屋の電話の受話器をとると、秘書室の内線をかける。
「あと10分くらいで持ってきてくれるって」
ティラミスがいたって普通に応対してくれた。
「そうか。オレは、その間にシャワーを浴びようと思うんだが・・・」
「あ、いいよ。昨日の夜酒盛りしてから、ずいぶん汗かいちゃったもんね・・・。ボクも汗臭いから、じゃあ食べた後浴びる。着替えももってきてもらっちゃおうか」
「ああ、よろしく頼む」
そう言ってキンタローはバスルームへ消えて行った。
グンマはいちおう備え付けの箪笥の中を見たが、案の定服は入っていなかったので、もう一度秘書室に電話をかける。
バスルームから、水音が聞こえてきた。
「あ、ティラミス?何回もゴメン。着替えが欲しいんだけど・・・。え?女物がいいかって?真面目な声でそんなこと聞かれるとなんか笑っちゃうね。ボクはいいけど、キンちゃんは卒倒するんじゃないかなー・・・」
などど、余裕ぶっていたとき。
「うわあああっ!!」
絹を裂くよな女の悲鳴、もとい、玄関マットでも裂くような、男の悲鳴があがった。
「・・・って、男物で大丈夫みたい。また後でかけるね」
そう言うと、グンマは受話器を置き、バスルームへ直行した。
「キンちゃん・・・!」
そこには、水に濡れそぼって呆然とたたずむ、キンタロー(男)が、いた。
「み、水を浴びていたら、突然、体が・・・」
余りに驚いたようで、固まっている。
「水?なんかのマンガじゃあるまいし・・・。でも、どうしてだろう」
全く検討がつかない。
キンタローはとりあえずバスルームの正面についている大きな鏡を見ようとして、入り口にいるグンマに背を向けた。
「あ!」
目に留まったあるものに、グンマは思わず足が濡れるのも厭わず、キンタローに近づく。
「なんだ?」
「ここ!キンちゃんには見えないかも・・・。ここを、鏡で見てみて!」
キンタローはもう一度向きを変え、グンマが差したところを鏡に映し、体を捻った。
「なんだ、これは・・・?」
グンマが差した肩甲骨の下には、水で消えかけた、墨汁の後があった。
何かの文字が書かれていたのだろうか。
今は消えかけていて判別が難しい。
「・・・読めた」
グンマは頷く。
「つまり、ここに、『女』って書いてあったんだ・・・!」
「すると・・・、あれでか?」
「そう、あれ」
数多くの特殊技術、能力を持つガンマ団の精鋭の中でも、かなり特殊にして珍奇な技術の持ち主、東北ミヤギ。
彼の武器は、対象に漢字を書き付けると、対象をその漢字が意味するものに変化させてしまうという特殊な筆であった。
「しかし・・・ミヤギがシンタローの部屋に侵入することは不可能だ」
「それはまたおいおい考えよう。それより、ボクの背中も見て。その字をお父様の目の前で消して見せよう」
キンタローは手早くタオルを腰に巻くと、2人は一度バスルームを出た。
グンマはパジャマの上着を脱ぎ捨てると、長い金髪を両手でかきあげた。
「どう?」
男性体に戻ったキンタローは、かがんでグンマの背を見る。
その白いすべすべの背中には、何の文字も書かれていない。
「いや・・・無いな・・・」
「じゃあ前かな?」
グンマがくるりとキンタローの正面を向くので、キンタローは思わず目を逸らした。
「前は自分で見てくれ」
キンタローは少し赤くなっている。
グンマは脇や乳房の下を見てみたが、文字はない。
それなら、とグンマはパジャマの下も勢いよく脱ぎ捨てる。
足の全面にはない。
「キンちゃん、後ろ見て!」
「あ、ああ・・・」
キンタローは膝を突くと、グンマの腿の後ろを見ようとした。
そのとき、ガチャリと音がして、朝食のトレーを載せたチョコが、ドアを開け、目の前の光景に慌ててドアを閉めた。
「も、申し訳ありません!」
「チョ、チョコレートロマンス!これはだな・・・」
慌てたキンタローが、ドアの方に駆け寄っていった。
「す、すみませんでした!ノックしたのですが・・・!」
「誤解するな!」
キンタローは急いでドアを開けると、必死の形相で弁明している。
「あ!あった!!」
とんでもないところを見てしまったというチョコの誤解を解こうとするキンタローの背中で、グンマの歓声があがった。
お気に召すまま 4
その頃、マジックの私室に1人残されたシンタローは、ティラミスが持ってきた朝食を食べていた。
その様子を、机に肘を突いて、手を顔の前で組みながら、マジックがじっと見るものだから、なぜだか恥ずかしくなってマジックに背を向ける。
「なんだよ・・・見んなよ」
わずかに赤くなってそっぽを向いたシンタローは、ティラミスにコーヒーのお代わりを要求した。
ティラミスは何も言わずポットからまだ湯気の立ち上る熱いコーヒーを注ぐ。
食べ終わった皿が下げられていくのを見送りながら、コーヒーをすすり、どうしたものかと考える。
監視されているため脱出は不可能だ。
何とかマジックに自分がシンタローであることを認めさせるしかない。
それにはどうすれば・・・。
さっき試したが、眼魔砲はでなかった。
筋力、体力ともに落ちた体では、シンタローが唯一持つ青の一族の証を見せることができない。
せめて秘石眼を持っていたら・・・。
「クッ・・・」
シンタローは思わず唇を噛んだ。
その時、廊下がざわざわと騒がしくなった。
「困ります!」
廊下を警備していた若い兵の声が響く。
「あーん?うっせえよ!」
ドカッと鈍い音がして、兵が壁に打ち付けられたのがわかった。
「よっ!兄貴~!」
シンタローは頭を抱えた。
にやにやとした笑みを浮かべてマジックの部屋の扉を開けたのは、毎度お騒がせの叔父、ハーレムであった。
よりによってぞろぞろと特選の連中を引き連れている。
「ハーレム。どうした?お前達は呼んでないぞ」
マジックは片方の眉を上げて冷ややかに言う。
ハーレムは、がにまたでどかどかと部屋に入ってきた。
無駄に長い足で、がにまたが良く目立つ。
「大切な甥っ子の危機だって言うから、駆けつけてやったんじゃーん」
そういうと、体を硬くしていたシンタローを見下ろした。
「うわっ。どんなスパイさんかと思ったら、すげーかわいいじゃないですかあ」
陽気で女好きのイタリアンが、隊長を押しのける勢いでソファに座ったシンタローにかぶりついた。
そのとき、無表情だがピクッとマジックの眉が動いたのを、ティラミスは見逃さなかった。
「シンタローだって名乗ってんだって?」
「・・・」
シンタローはその舐めるような視線から逃れるようにソファの上で後ずさる。
「でもホントにシンタローに似てんなあ」
ハーレムがよく見ようと顔を近づけるため、シンタローは嫌そうに顔を逸らした。
「ホントにシンタローだったりして」
ハーレムがそんなことを言うので、シンタローは思わず叔父の両腕を掴んだ。
「ホントだ!オレはシンタローなんだ!朝起きたら女になってた!」
そう言いたかった。
しかし、普段反目しあっている叔父にそんなことを言うのは屈辱以外の何ものでもなかった。
(キンタローと2人がかりではあるが)互角にやりあっている男同士だったのに。
ぱくぱくと口を動かすが、すぐに思い直して腕を下ろす。
項垂れたシンタローを見て、おめでたい頭の叔父は何を思ったのか、にやりと笑った。
「まあ、かわいいから、シンタローでもそうじゃなくても、どっちでもいいかな」
そして、少しかがんだかと思うと、ちゅっと音をたてて、シンタローの頬にキスをした。
「・・・!」
シンタローは驚いて、頬を押さえ、真っ赤になりながらハーレムを見上げる。
ハーレムは相変わらずニヤニヤ笑っていた。
こいつ・・・!
オレがシンタローだとわかっていて嫌がらせをしているのか?
タイミングの良い登場といい、こいつが犯人か?
「ハーレム!何か知ってるんだろ!?」
思わず立ちあがって、胸倉を掴んだ、つもりだったが、実際に掴んだのはシャツの腹のあたりだった。
く、屈辱的な身長差・・・!
普段は数センチしか違わないのに、今はハーレムの鎖骨のあたりまでしかない。
その事実にますます頭に血が昇った。
「何のことだ?」
とぼけているような物言いに、カッとなった。
思わず殴りかかろうとすると、目の前の男に、動きを封じるには優しい手つきで抱きしめられる。
「まあまあ。かわいいのに暴力はよくないよ、お譲ちゃん」
普段なら絶対にこんな状況になることはありえない。
キンタローならまだしも、この放蕩叔父に・・・!
失神しそうなほどの怒りに、我を忘れそうになっていて、背後の不穏な気配には気付かなかった。
「ハーレム・・・」
ゴゴゴゴゴ。
多分マンガだったら彼の背後にそういう擬音が入っていただろう。
両目を青く光らせた男が、ゆらりと立ち上がったことに気付いたときには、すでに遅かった。
「ギャーッッ!!」
次の瞬間には、長身の叔父は吹き飛んでいた。
お気に召すまま 5
ハーレムが眼魔砲になぎ倒されるのと、部屋の扉が開いたのは、ほぼ同時だった。
「おとーさま!」
突然現れたグンマの声に、マジックはハッと我に返ったようだった。
「おや・・・?」
まるで、自分がたった今眼魔砲を撃ったことが、自分自身が意外で仕方がないというようにつぶやく。
「おかしいな・・・。ハーレムがその子に絡むのを見てたら、つい撃ってしまった」
青ざめながらも、恨めしそうな顔をして鼻血を流す弟を見て、マジックは首を捻る。
「グンマ、どうした?」
シンタローはマジックが眼魔砲を撃ったことにも驚いたが、先ほど別れたグンマが突然マジックの部屋に戻ってきたことにも驚いた。
「おとーさま、無理もありません。その人は、シンちゃんなんですから」
グンマは、至極真面目な顔で言った。
しかし、それは先ほどから何回も言っていることだった。
「グンマ、一体・・・」
問いかけたシンタローを遮るように、グンマは目で制した。
「こちらを見てください」
そういうと、扉の外に待機していたらしい人物に声をかけた。
「キンタロー!!」
現れたのは、男性の姿に戻った、パジャマ姿のキンタローであった。
オレは思わず近寄った。
「キンタロー?ホントにキンタローなのか?」
必死で見上げるシンタローに、キンタローは安心させるように微笑んだ。
「ああ。紛れも無くオレだ」
ああ。
その声。
その微笑。
元に戻ったんだ!
もしかしたら一生このままかもしれないと、不安だった。
堪えていた不安が一気に溶解するようで、情けなくも思わず涙ぐんでしまったが、キンタローがその長い指で、そっとシンタローの目じりに溜まった涙を拭ってくれた。
シンタローは周囲の目さえなかったら、今にも男に戻った従兄弟に抱きつきたいくらいだった。
「この通り、キンちゃんは元に戻りました。今から、ボクたちが女の人になったからくりをご覧に入れます」
そう告げると、マジックも、ティラミスも、特選部隊も、まじまじとグンマを見た。
グンマは、ソファの上に膝立ちになった。
「ここを見てください」
右足のくるぶしを、グンマは指差す。
皆が集まって、身を乗り出して凝視する。
「何・・・だって・・・」
シンタローは衝撃のあまり、顔面蒼白になった。
まさか。
かけがえのない友人が犯人だというのか!
「なんだね、それは・・・」
マジックは怪訝そうにつぶやく。
そこには、墨汁らしきもので「女」と書かれていた。
「なるほどな」
とニヤリとしながら頷くチャイニーズ。
「えっ?ナニナニ?どういうこと?」
と好奇心旺盛なイタリアン。
「・・・」
クマ以外のことでは無口なドイツ人。
「そういうことです」
グンマは、真面目な面持ちで頷き、持ってきた濡れタオルで、ごしごしと文字を消し始めた。
すると。
ドロン。
まるでマンガのように、一瞬でグンマの体つきがやや筋肉質なものに変化していた。
「・・・!」
マジックとティラミス、ハーレムは声も出ないと言った様子で目を丸くした。
「お分かりになりましたね」
今まで高い声だった分、普段あまり低いとはいえないグンマの声が、やや低く聞こえるのは耳が慣れないせいだろうか。
「これは東北ミヤギくんが所有している、『生き字引の筆』を使った犯行です」
「畜生・・・!ミヤギかよ!」
シンタローは唸った。
まさかだろ!
信じていた仲間だったのに。
裏切られたのだろうか。
元に戻るという喜びとともに、ともに闘ってきた戦友といえる人物が、この女体化騒ぎの犯人かもしれないという疑惑に、シンタローは戸惑った。
「ううん。シンちゃん。それは違うと思う。さっきチョコレートロマンスに調べさせたんだけど、ミヤギくんは夕べから行方不明なんだ」
「え?」
「もしかしたら、誰かに筆を強奪された可能性があるな。顔を見られて、犯人はミヤギを拉致している可能性もある」
キンタローの言葉に、シンタローは青くなった。
「そんな・・・!」
「とにかく!シンちゃんにもどこかに書かれてるはずだから、探しにいこ?」
そういうと、グンマはシンタローの手をとった。
男の姿に戻ったグンマは、少し今のシンタローよりも背が高い。
グンマの指ってこんなごつごつしてたっけなあ、とシンタローは思った。
気がつくと、女のままなのはシンタロー1人だ。
「ここでいいぜ、別に」
と言ってシンタローはTシャツをめくろうとして、キンタローとグンマに止められる。
「別室でだ」
キンタローに目線で示されて後ろをちらりと振り向くと、マジックが鼻血の海に溺れていた。
「兄貴!?」
ハーレムが慌てる。
「ああ・・・」
シンタローは引きつった笑みを浮かべ、私室に戻ることになった。
その後、キンタローとグンマの指揮の下、犯人探しとミヤギ探しが行われることとなった。
親友の失踪に青くなったトットリをグンマがなぐさめながら、ガンマ団の施設内を徹底的に洗い出す。
ミヤギは研究棟の物置で見つかった。
その腹のところに墨汁で「人形」と書かれていたから、全く動けなくなって抵抗できなかったに違いない。
トットリとミヤギは抱き合って再会を喜び合った。
ミヤギの口から聞かされた犯人の名に、キンタローとグンマは頭を抱えたという。
また、捜索の過程で、犯人の部屋から、女性の体になったジャンが縛られているのが発見された。
ガムテープで口をふさがれたその姿は、まるで総帥が痛めつけられた後のようで、捜索隊は動揺したという。
しかし肝心の犯人は、学会という名の口実で既に国外に逃亡していたらしい。
戻ってきたらどうしてくれようとキンタローとグンマは怒りに燃えた。
シンタローは、ことあるごとにもう一回女の子になってくれというマジックをけり倒すのにもう疲れた。
犯人のお仕置きには、オレも加えてくれというシンタローに、当然反対するものはいなかった。
end
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