14000HIT記念SS
聖夜の天使
「うわーん!!!!シンタローッッツ!!!」
「なんだ!どうした!!」
執務室に詰めていたシンタローは、突然の訪問者に慌てた。
「ミヤギくんを怒らせてしまったっちゃ!!!」
闖入者は部下のトットリだった。
警備の者は驚いたらしいが、シンタローが信頼する部下の1人であるトットリの一大事らしい様子に慌て、連絡を入れるヒマも無かったらしい。
士官学校時代からの仲間で、旧パプワ島でも行動を共にしたトットリは顔パスで執務室に通れるが、それでも普段は警備が事前に連絡を入れることにしている。
「おいおい、どうしたんだよ」
20代後半の男にあるまじき童顔のトットリは、今にも泣きそうな顔で訴える。
「だって・・・クリスマスイヴから遊びに行こうっていってたんっちゃが、一緒に休みがとれなかったんっちゃ。去年もだめだったから・・・」
「へ?だってお前のとこだと、今だと結構休みは申請通りになるんじゃね?」
シンタローはとりあえずトットリをソファに座らせる。
「それが・・・部下たちも休みたいって言うから・・・。そっちを優先して休ませたんっちゃ・・・。少し前か後にずらして欲しいって言ったら、ミヤギくんはだめだって」
それを聞いて、シンタローは目を細める。
全くこの男は優しすぎる。
「そっか・・・。お前は優しいよな。去年は部下に譲ったんだろ?だったら今年はお前がとればいいのに」
「でも・・・部下もいっぱいできたし・・・。去年出てもらった部下には休みをあげたいっちゃ」
シンタローはトットリの頭をよしよしと撫でた。
「全く。優しい上司を持ってお前の部下は幸せだよ」
「そう・・・?」
「ああ。でもミヤギは納得しねーよなー・・・」
「それが問題っちゃ」
トットリはため息をつき、シンタローは思案顔になる。
「よし、じゃあ仕事の後部屋でなんかやればいいじゃん。料理作ってさ。ダメかな」
その提案にトットリは慌てた。
「え?でもクリスマス用の料理なんて作れないっちゃ・・・」
「まかせておけって、オレが教えてやるよ!ちょっと部屋も改造しようぜ!」
「ホント!?」
トットリは感激でシンタローの手をとった。
「もちろん」
シンタローは笑顔で頷いた。
その後料理を教える日程を打ち合わせすると、トットリは上機嫌で帰っていった。
シンタローも優しい友人のために何かできると思うと嬉しい。
料理は得意中の得意である。
まずは材料を買いに行くところから始めよう。
で、部屋の演出も考えなければ。
他人のことなのに、なぜこううきうきしてしまうのだろうか。
シンタローはふと思いついて、キンタローに連絡を入れた。
キンタローにこのことを話すと驚いていたようだが、協力してくれるとのことだった。
クリスマスまで後2週間。
5日後。
トットリは部下に定時であがることをあらかじめ宣言しておき、時間通りすぐに上がって着替えると待ち合わせの場所に向かった。
駐車場に行くと、シンタローとキンタローが寒い中車の外で待っていてくれた。
2人とも私服に着替えており、背の高い2人はまるでモデルのようだった。
シンタローとキンタローはトットリの都合のいい日を聞くと、その日の仕事を早めに終わらせ、定時であがったのだった。
「よし、行くぜ」
シンタローは車の後部席にトットリを乗せると、自分も隣に乗り込んだ。
キンタローが運転し、出発する。
事前にトットリに聞いていたミヤギの最近の好みなどから、今日行く店は決めてある。
まずはインテリアショップに向かった。
「うわー・・・。オシャレな店ッちゃ」
トットリは呆然と店の外観を見上げる。
「お前の部屋こぎれいなのはいいけど、飾り気がないだろ。少し飾ったほうがいいんじゃないかと思って」
店に入ると、色鮮やかなソファや、クッション、食器類、ランプなど美しくレイアウトされている。
「ボクこういうの全然わかんないっちゃ」
見てはみるものの、何を買えば良いのかわからないトットリ。
「そーだよなー。とりあえず予算からいって、考えたんだが、ソファでもどうだ?」
「そうっちゃねー」
トットリはとりあえず気に入った形の2人用ソファに座ってみる。
「わー、いい座り心地っちゃ」
「どれどれ」
シンタローが隣に座ってみたので、トットリは少しだけどきどきした。
「お、2人座ってちょうどいいんじゃねーの」
トットリは色や座り心地が気に入り、値段も予算内だったので、これを購入することにした。
次に間接照明や置物、クリスマス用の飾りなどを選ぶと、他にスタイリッシュな食器類を買うことにする。
食器についてはシンタローもトットリも模様のついたものと真っ白なもの2種類でかなり悩んだが、キンタローに聞くと白いほうがいいと言ったので、そちらにすることにする。
シンタローは自分でも気に入った別の食器があったらしく、キンタローに手にとって見せていた。
ちょっとだけ2人から離れたところでトットリは見ていたが、間接照明に照らされた2人の様子はますます美しく、そして仲睦まじく、お似合いとしか言いようがなかった。
いつかミヤギとそういう風に見られるようになりたいなあと思うトットリであった。
次に3人は食材を買いに行き、チーズや肉類、パスタの材料、サラダの材料を買い込む。
最近ミヤギはパスタが好きだとのことだったので、イタリアンを中心にコースを作ることにしていた。
そしてトットリの部屋に行くと、シンタローが指導して料理を作ることになった。
キンタローはトットリの部屋まで食材などを運ぶのを手伝うと、部屋に戻った。
「キンタローって結構いいヤツっちゃね」
トットリがつぶやくと、「知らなかったの?」とシンタローは笑った。
戻った時には9時を回っていたが、とりあえず前菜用のパスタ、仔牛のカツレツ、サラダ、スープなどを作ることにする。
トットリは元々料理はしていることはあって、シンタローが教えればすぐにできた。
シンタローは盛り付けのコツなどを教え、レシピを書き残した。
結局2人で作った夕食を食べ、シンタローは後片付けも手伝い、11時前に帰った。
クリスマスイヴの3日前、ソファ類が届いたというので、シンタローとキンタローは2人でトットリの部屋を訪ねてみる。
「お、いいじゃねーの!」
こぎれいだが殺風景だった部屋に、落ち着いた色のソファが配置され、間接照明がいい雰囲気を出している。
「ちゃんとお前の部屋にも合ってるし、いい感じじゃん」
飾りも丁寧に飾られ、大人のクリスマスを演出するにはいい感じだった。
「ミヤギは大丈夫だったか?」
「うん。とびっきりの料理を作るからって言っておいたっちゃ。ちょっとまだ怒ってたけど、来てくれるって言ってたっちゃ」
「良かったな」
シンタローの笑顔に、トットリは嬉しそうに頷いた。
「じゃ、これオレたちから」
シンタローが言うと、キンタローが手に持っていた細長い紙袋を差し出した。
「?」
開けてみると、高級そうなシャンパンのフルボトルが入っていた。
「えっ。こんな高そうなシャンパン、もらっていいっちゃ・・・?」
「クリスマスプレゼントということで。ちゃんと報告しろよ」
「楽しみにしている」
2人の温かい笑顔に、トットリは涙ぐみそうになった。
「2人はどうするっちゃ?クリスマス」
「コタローの誕生日もあるから、オレたちは明日2人でディナーに行く予定」
シンタローは少し照れくさそうに笑った。
「誰にもいうなよ」と言い、2人は笑顔で部屋を出て行った。
トットリはまるでシンタローとキンタローは天使のようだ、とガラにもないことを思っていた。
シンタローは部屋に戻る途中、ずっと笑顔だった。
キンタローはそんな従兄弟の様子を見て、自然と自分も笑顔がこぼれるのがわかった。
明日のディナーはきっとトットリとミヤギの話題でもちきりだろう。
しかしキンタローは、そんな優しい従兄弟だから好きなのだろうと思った。
end
***
ひろこ様、14000HIT申告ありがとうございました!
これまで来てくださった皆様も、本当にありがとうございました!
初めてキリリクを頂いて、とても嬉しかったです。
珍しくイベントネタをいれ、クリスマスネタにしてみました。
トットリの方言に関してはもう大目に見てね!ミヤギならある程度予想がつくんですが(笑)
このSSはひろこ様のみお持ち帰りOKです!
ブラウザバックでお戻り下さい
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