この人は結構世話好きだ。
何だかんだと言いつつも、パプワ達の世話をやいている。
家事に何かと口出しするのも、俺の世話をやいてくれてるんだ……と思いたい。
……それなら、
例えば、俺が小さかったら、もっと優しかったんだろうか……。
……なんて、とてつもなくくだらないことを考えていたら、
「……何でだよオイ……」
縮みました。
「……小さい……」
というか周りが大きい。
台所に立てないんだけど……。
……って! そうじゃなくて!
いやいやいや! おかしいだろって! おい!
夢だろ夢。
さっきちょっとうとうとしたのがいけないに違いないっ。
……あ、頬痛いや。
ああ、でも、頭のどこかで「まあこの島だしな」とか思ってる自分がいるよママ!
はっ! こんな時に万が一UMA子が来たら俺死ぬんじゃ……!
瞬間、ガチャリと音を立てて扉が開く。
ウマ子か、違う誰かか……。
まさに生きるか死ぬか。
「ったく、あのナマモノどもめ……」
……シ ン タ ロ ー さ ん で す 。
ありがとう神様!!
そして早く気付いてシンタローさん!
何だか機嫌悪そうに帰宅したその人は、俺を見るなり思い切り怪訝そうな顔をした。
「…………」
「ど、ども……」
いや、そんな見つめないで下さいよ。
照れますって。
「ついに人攫いにまで手を出したか、あのヤンキーは」
……酷っ! 俺はアナタみたいに美少年好きじゃないですから!!
……って言ったら殺されるよな。たぶん。
「……? なんかその髪色は見覚えが……」
気づかれてないんだ……?
「シンタローさん、その……わかりません?」
「…………リキッドか?」
遅いです。
「何小さくなってんだてめぇ」
すんません、気付いたとたんになんでそんな態度変わるんっスか。
「その、俺にもよくはなんて言うか……小さいけれど頭脳は大人?」
「てめぇは頭脳もガキだろ」
その通りといえばその通りなんですけどね。
「いつかの放電現象と同じで原因不明、か」
「はい……。ご迷惑かけます」
あの時は一晩で治ったけど。
今度はどうなることやら。
「なら、前みたいにほっときゃ治るだろ」
「で、でも家事が……!」
「お前、それで台所立つ気か?」
確かに、この姿じゃあ台所まで届かない。
「いいからその辺座ってろ」
昼飯の準備を初めながら、言い切られて、そうなると俺は座ってるしかないわけで……。
……気まずい。
「あ、あのっ、手伝……」
「いい」
何か怒っている様で、心臓が締めつけられる。
「怒ってるんすか……?」
番人として無防備過ぎる俺に。
「違ぇ」
ああ、やっぱ怒ってる。
「すんません」
「違ぇって言ってんだろ」
「だって声が怒ってるじゃないですか!」
「怒ってるんじゃねぇ!」
てっきり尖った目線を向けられると思っていたその顔は、意外なくらい赤くて、一瞬、とうとう俺の目が駄目になったのかと思った。
「シンタロー、さん?」
「っ……!」
直ぐに顔をそらしはしたものの、赤みが引くことはなくて、バツが悪そうに俯むいたまま黙り込んだ。
「どうしたんっすか?」
言いながら原因を辿る……。
一体何……あ。
「あの、もしかして、照れてます……?」
「ばっ……!違ぇよ!」
ビンゴ。
美少年好きだもんなぁ、この人。
え、俺美少年? ……あー金髪だから?
この金髪美少年好き!
普段がそうなら良いのに……。
こんな風な姿なんて、そうそう見れるもんじゃないから、今の内に見ておこう、うん。
可愛いなぁ、この人。
「シンタローさん」
「……ぁんだよ」
赤くなった顔を隠す様に顔をそらしたまま、機嫌悪そうに答える。
「キスしてもいいっすか?」
「ばっ、いっ……良いわけあるか!」
普段なら殴られかねないけど。特権はフルに活用して、ね?
「何でっすか?」
「な、んでって……」
あぁ、もぅ、誘ってる様にしか見えませんよ?
「キスだけですから」
「~っ、勝手にしろっ」
じゃ、遠慮なく。
この身長差だから、屈んでもらうしかないんだけど。
とても子供らしくとは言えないよな。俺も。
「んっ……」
すっかり小さくなってしまった手で、両頬を包む。
子供特有の体温がやたらに高い、弾力のある掌がくすぐったいのか、身じろぐ彼も可愛いだなんて……?
卑怯だなぁ俺。
「んだよ、早くしろ」
命令口調です。
全くこの人は……。
絶対素直になんかならないんだから。
「何笑ってんだ」
だって……ねぇ?
「……止める」
「うわっ、すんませんっ!」
しばらく見てたいとか言ったら絶対怒るだろうから、これ以上機嫌が悪くなる前にしてしまおうとか、俺も大分慣れてきた感じ。
不意をついて頬に置いた手ごと引き寄せ、深く交わす。
「んんっ……」
不意をついたからか、酸素が取り込めないらしく、苦しそうに眉を寄せる。
「っ……はぁっ」
いや、そういう顔はヤバイですって。
は、歯止めが……。
ぼんっ
やたらわざとらしい爆発(と呼ぶのも大袈裟な)音とともに、目の前がチカチカと点滅した。
「な、何だっ?」
まだはっきり見えない目で、正面にいた筈のシンタローさんを見る。
「……」
え……何その不機嫌そうな顔。
「戻ってんぞ、お前」
「へ……」
慌てて自分の手を見る。いつものごつい手だ…。
「ぅわっ! 戻ってる!」
ああ、あれですか?
姫のキスで魔法が解けたみたいな……?
メルヘンだよな。
「遅ぇよ。オラ、退け」
あ、あの……扱い違くありません?
「……退けよ」
いや、今更退けと言われても……。
「すんません、ちょっと、歯止めが……」
効きません。
いや、やっぱり無理でした。
「っおい!止……!」
何か言おうとする口を重ねて塞ぎ、押し戻して来た腕を重力任せに押し返す。
「っ……おいって!」
抵抗を示しつつも、本気じゃない彼が愛しくて、そのまま行為を進める。
とりあえず、眼魔砲が来ないことを祈っておこうと思います。
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