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「それ、収まるまで大人しくしとけよ、お前」
「はい……」
 いつもなら(意識しあわなければ)数センチほど離れたところにある顔が、今は五メートルは離れている。
 というか、この広くない室内でそんなに離れているってのは、つまり俺が壁際に追い詰められているってことで……。
 パパ、ママ、一人孤独な時間です。俺。
「泣くんじゃねぇよ鬱陶しい!」
「だって近づかせてすら貰えないなんてッ……!!」
 あんまりですシンタローさん!
「仕方ねぇだろ。お前が悪ィ」
「俺じゃなくて俺の体質ですッ!!」
 なんっすかその『俺自身に問題あり』みたいな言い方は!
「変わんねぇだろ」
 変わりますっ!!
「ともかく、その放電が収まるまでは近づくなっ!!」




「いってッ……!」
 俺が起きたのは、そんな短い叫びを聞いてだった。
「んっ……? へ? シンタローさん?」
 ああ、そういや寝過ごしてるじゃんか俺!
 ……とか、そんな事を思いながら。
「ばっ……起きるなお前ッ!!」

 ――――バリッ

「「ッ!!」」
飛び起きた俺と覗き込んでいたシンタローさんの間に、弱い電流が走った。
「こんのっ、馬鹿ヤンキーッ…!」
「えっ? えぇ?」
 ビリビリと残った電気に痛そうに腕を摩りながら睨み付けられる。
 何で俺が罵倒されてるかが、分からない。
「早くそれをどうにかしろ!」
「『それ』って何……って、うわっ!!」
 自分自身を見直して初めて気付く。
 ……身体を電磁波が取り巻いてた。
 何だコレ……。
「な、何っすかコレー?!」
「俺が知りてぇよ!」
 叫んだら殴られました。
 理不尽だ……。
 というか、殴ったシンタローさんも痛いんじゃないんだろうか、電磁波。
 ……いや、そうだよ! ヤバイって。
 状況が飲み込めてきた分、冷や汗が出てくる。
 体質から慣れてる俺はいいとしても、問題は放電された方。
「すっ、すんませっ……! 俺っ……!」
 触れられず、言葉でしか言えなくて、ただおろおろするばかり。
 はっ……!! や、火傷とかさせてたらどうしよう?!
 傷モノにした責任とるべきか?!
 いや、それならむしろ取らせて下さい!
「いいから離れてろっ! くっそ……っ痛ぇ……」
「すんません……」
 故意じゃないけど、たぶんシンタローさん分かってくれないだろうなぁ……。




 そんなこんなで今に至ってる。
 今回来た世界の影響かもしれないけど。
 詳しい事なんて分からないし、いつもの如く知ろうともしちゃいけない気がする……。
 ほら、それはまぁ、お約束ってヤツ。
 まぁ、そのうち収まるだろうっていう、楽観的考えで。
 それでも、辛いもんは辛い。
 特にシンタローさんに近づけないとことか、
 シンタローさんに触れられないとことか、
 シンタローさんに……。
「なぁに見てんだよ、お前はっ」
「いや、そのッ……!」
 だって近づけないんだし、見るくらいいいじゃないですか!
「……どうにかなんねぇのか、それ?」
「いや、その……わかんないっす……」
 どうしたらいいのかとか、わからないし。
 意識して電磁波を出すことは簡単だけど、(というか、いつもそうしていたし)どうやって抑えるかまでは分からない。
 いや、ほら、手加減とか苦手なんだよね、俺。
「どうにもなんねぇってか……」
「はい……」
 もうどのくらい経つんだろ?
 半日くらい?
 俺は平気だけど、周りに迷惑かかるしなぁ……。
 もう俺の友達はナカイJrくらいだよ。
 へこむな俺! 明日はあるさ!
 ……たぶん。
「……」
「……」
 ……沈黙、すげぇ痛いんすけど。
 もう顔とか見てらんないよ。
 ああ、涙が込み上げてくるよ。
「おら、リキッド」
 肩を落して俯いていた俺に、シンタローさんの声が降ってくる。
「へ……?」
 いつかしてくれたように、頭をくしゃりと撫でられる。
「え、ちょっ……シンタローさん?! 手!」
 か、感電とかっ……! 火傷するっすよ?!
「うるせぇな、そんなやわじゃねぇよ」
 そう言って、二、三度軽く頭を叩かれる。
 手、マジで大丈夫かな……。
 小さくバチッと、音がしてくるその度に、冷や汗が流れた。
「もう少し、表情に気をつけろ。お前は」
「え……顔?」
 俺、今どんな顔してた?
 それより手――――。
「シ、シンタローさんっ?! 一体何……」
「うっせぇ、答えねぇ」
 ふいっと顔を背けて、直ぐに離れていってしまう腕を掴むことも出来ずに、座り込んだまま考える。
 ……あ、慰められた? 俺?
 だって普通だったら『女々しい』とか言って怒るくせに。
 何だってこんな時だけ。
 ……あの、
 もしかして、
 ねぇ、シンタローさん?
 実は結構、
 俺のこと好きでいてくれてます?
 いや、自惚れならそれはそれでいいっす。
 ただ、
 まるで慰めることに照れてるみたいにして、顔を合わせようとしないのが、ひどく可愛く思えたんで。
 ね?

 ちなみに放電は翌日収まった。
 同時に、色々扱いが元に戻ってたけど。
 それはそれでいいかなーと。






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