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作・渡井

リキシン好きに20のお題01「俺様」

梅干し




「んっ?」
いつもの朝食。
シンタローの皿を見ると、焼き魚を綺麗に食べ味噌汁の椀を空けているのに、白飯が残っている。ならば、と梅干しを出した。
すると梅干しを食べたシンタローが、箸を止めて考え込んでしまったのである。
何か不都合があったか、とおろおろするリキッドに、お姑はむしろ笑顔に近い表情を浮かべた。
「へえ。お前にしちゃ、上手いこと漬かってんじゃん」
「ほんとっすか!?」
思わずリキッドの声が弾む。
駄目を出されることはあっても誉められることは滅多にない。まあそれは鬼姑に限った話ではなく、彼の弟を含めたちみっ子たちもだが。
「へへっ、これ自信作なんすよ。今度、この梅干しでおにぎり作りますね」
話しているあいだにパプワとチャッピーは食べ終わったらしい。二人の皿を下げ、リキッドは自分用に梅干しを小皿に入れて席についた。
いや、そうしたはずだった。
「ちょっとシンタローさん!」
「ん? 何だよ」
「何じゃねえよ、俺の梅干し! 勝手に食わないでくださいよ」
正当な抗議だと思う。たとえガンマ団の新総帥だとしても、人の梅干しに手をつける権利はないだろう。
「うっせえな、いいじゃねえか1つや2つ」
でもこの人にそんな理屈は通用しない。
「おいヤンキー、俺の梅干しは誰のもんだ? あ?」
「し、シンタローさんのもんです」
「じゃあオメーの梅干しは誰のもんだ」
「……シンタローさんのです」
この人が俺様なのはガンマ団の総帥だからではなく、天然の体質だから。
パプワ島に来て軍服を脱ごうが、リキッドがすでにガンマ団を離れた身であろうが、そんなことは一切関係ない。
シンタローが権力を得たのではない。権力がシンタローを選んだのだ。
リキッドは密かにそう思っている。彼は人の上に立つべくして立った男だ、と。
「でも酷いっすよ、もう残り少ないのに」
朝食のささやかな楽しみまで奪わなくたって、と唇を尖らせるリキッドに、シンタローは口端を上げて笑った。
「また漬けりゃいいじゃねえか」
「人がすると思って好き勝手言うんだから」
そう文句を口の中で言いながら、梅の実をどこで確保するか考える。作り方を頭の中でおさらいする。

梅が漬かったとき、シンタローさんはこの島にいますか?

その質問は、思いつかなかったことにした。


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やる気がないときは梅干しだけで夕食にしてしまうリッちゃんは、
梅干し作りが上手なはず。

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