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作・斯波


今年ももうすぐ5月21日が来る。
言わずと知れた、リキッドの誕生日である。



FOR YOU, FOR ME



「あの―――何すか、コレ」
「ロマネ・コンティだ」
「はあ~、これがかの有名な(どうしよ、俺知らない・・)」
「85年物はとりわけ出来が良い。今朝フランスから空輸で取り寄せた」
「えっわざわざ!? ありがとうございます・・・で、でも高価いんじゃないすか?」
「大したことは無い。たったの250万円だ」
「あっそうですか・・・(大したことは無いとか言った! たったとか言ったよこの人!)」
「もし口に合わなければ料理酒にでも使ってくれ」
「使えるかアァァ!! ―――ってすいませんほんっとすいません勘弁して下さい!」
「どうかしたのか?」
「そんな無駄遣いしたらシンタローさんに殺されちゃいますよ!」
「大丈夫、あいつは自分の懐さえ痛まなければ気にしない男だ」
「そっすよね・・・(見抜いてる!)」


「はいコレ♪美味しいんだよ~、ここのケーキ」
「うわあ~、ありがとうございます! 俺いっぺんここのケーキ食ってみたかったんすよ! こないだテレビで見たんすけど凄い行列でしたよ。グンマさん自分で並んだんすか?」
「んーん、僕そんな無駄なことしなぁい。キンちゃんに並ばせた~v」
「えっキンタローさんに?(さすがはコタローの兄ちゃん!)」
「せっかくメモ持たせたのにキンちゃんたら違うの買ってきちゃってさあ。キンちゃんてほんと使えないよね~」
「え―――それでどうしたんすか?」
「もっちろんもっかい並ばせたよ~♪」
「へ・・へえ・・(魔女の血筋だ!)」


「師匠からの伝言や。あんさんの為に酒作ったさかい取りに来い、言うてはったえ」
「酒~?(あからさまに胡散臭い・・・)」
「精力増強によう効くんやって。シンタローはんとのナイトライフの充実にどないどすか」
「何でおまえが持ってきてくんないの?」
「重いさかい無理」
「重い? どうせマムシ酒かハブ酒だろ、精力剤代わりなら」
「阿呆、うちの師匠をナメなや。―――ニシキヘビ酒じゃ」
「返せ! 今すぐアマゾンに返してこい!」


数日前からずっと悩んでた。
もうすぐリキッドの誕生日が来る。
何が欲しいなんて訊いたとこで、あいつはでっかい犬みたいに目を輝かせて言うに決まってる。

―――俺、シンタローさんが居てくれればそれでいいっす!!


(それは重々分かってんだけどさ)
そもそも俺は一緒に暮らしてんだから、それじゃプレゼントにならないんだよ。
だけど、あいつは何にも欲しがらない。
俺の職業も稼ぎも知ってるくせに。
俺、泣く子も黙るガンマ団総帥よ?
隠してるけど実はあいつが思ってる額の軽く三倍は年収あんのよ?
なのにあいつは、自営業は将来の保証ないですからとか言って、生活費の中からせっせと貯金して、年に一度でいいですから休み取れたら旅行、行きましょうねって笑う。


俺が側に居るだけで超幸せ。
そんな顔をしてる奴に、何をやればいいんだろうか。



数日前からシンタローさんが悩んでるのには気づいてた。
もうすぐ俺の誕生日が来る。
だけど、欲しいものなんて何も無いと思う。


(その気持ちはすっごく嬉しいんだよね)
だけど俺は全てを持ってる。
俺の奥さんは泣く子も黙るガンマ団総帥だ。
隠してるらしいけど給料が俺に渡す三倍以上あるのはこちとら百も承知の助で。
俺が出来ることって言えばシンタローさんのために老後に備えとくことと、シンタローさんが毎日笑って生きていけるようにすることくらいなんだ。


俺が側に居るだけで超幸せ。
いつかあの人にも、そんな顔をして貰いたいと思ってる。

(だって、ねえ・・シンタローさん)


―――俺、シンタローさんが側に居てくれればそれでいいんすよ?



風呂から上がるとシンタローはベッドに腹這いになって書類を読んでいた。
シンタローが自宅に仕事を持ち帰ることは滅多にないのだが、今日は特別忙しかったのだろう。
「まだ大分かかりそうですか?」
タオルで髪を拭きながら声をかけると、シンタローはいいやと言って書類を脇に押しやった。
「きりがないから、もう寝る」
「そっすか。じゃあ電気、消しますね?」
淡い照明のスタンドに伸ばした手をいきなり掴まれた。
吃驚して振り返ると、ちょっと怒ったような顔でシンタローがこっちを見ていた。
「シンタローさん? まだ消しちゃまずかったっすか?」
「・・・なんで何も言わねーんだよ」
「は?」
「今日はおまえの誕生日だろ」
リキッドはまじまじとシンタローを凝視めた。
その瞳から逃げるように、シンタローがついと視線を逸らす。

「―――プレゼントが何か、訊かねーの・・・?」

リキッドは大きく眼を見開いた。シンタローは相変わらず眼を逸らしている。
その頬が赤く染まっているのを見た瞬間、リキッドの中に暖かい想いが溢れた。
「誕生日おめでと、リキッド。―――」

そう言ってかすかに笑った愛しいひとを、リキッドは力の限り抱きしめたのだった。


「・・・おまえ、頑張りすぎ」
力尽きたように横たわるシンタローを、リキッドの腕はまだしっかりと抱いている。
「そっすか?」
「何燃えてんだよ・・もう飽きるほどヤッてるだろ・・・」
「飽きたりしませんよ!」
「ホントはこんなのプレゼントにならないよなあ」
小さな呟きに、リキッドは吃驚してシンタローの顔を覗きこんだ。
だがシンタローは顔を隠すかのようにリキッドの肩に額を押しあてている。
「何でですか!? 俺、めちゃくちゃ嬉しかったのに」
「だって俺はもう、おまえのもんだから」
「・・・・」
「今さら贈り物にしたって意味ないだ―――」
怒ったように尖らせるその唇をキスで塞ぎながら、リキッドは眼だけで微笑った。

(ワインよりケーキより酒より)

「俺は、貰えるなら何度だって貰いますよ、シンタローさん」

(欲しいものはたったひとつ)

―――あなたのその言葉こそが、何よりの贈り物。


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