「チェックメイト。」
コン、と軽く音を立ててシンタローはキングをとった。
勝負事は嫌いな方ではないから、マジックがチェス盤を持ってゲームを挑んで来た時は
文句を垂れながらも潔く申し込みを受けとったのだが言いだしっぺの割りに、先ほどから
全く手ごたえの無いプレイを見せる父親にシンタローはさも、不愉快だと言うように
元々愛想の無い顔をさらに無愛想にしてマジックを睨んだ。
ゲームを始めてからもう5回も敗北を決めているにも関わらず、
彼はそれが楽しくてしょうがないような笑顔で『また負けちゃったー!』だの
『シンちゃんってば強すぎ~』だのとノリノリではしゃいでいた。
「アンタ、本気出せよ。」
「ヤだなぁ、シンちゃん。その言い方だとパパがわざと負けてるみたいじゃない。」
「みたい、じゃなくて実際そうだろ。
自分からふっかけといて、舐めた真似すンじゃねーよ。」
「パパは勝負の結果よりも、こうしてシンちゃんと向かい合ってゲームをする時間を大切にしたいんだもの。」
何を、馬鹿な事を。シンタローは鼻で笑い飛ばした。
「あぁ、そうか。アンタ、本気を出してオレに負けるのが怖いんだろ?」
「そんな事はないよ。それにパパが本気を出したらもっと早く勝負がついちゃって詰まらないじゃないか。」
これは暗に、‘私が本気を出せばシンタローなんか直ぐに負かしちゃうよ’と言う意味で
勿論シンタローはそれを素早く読み取り、やはり頭に血が昇ったらしく
マジックに本気で自分に挑んでくるように命じた。
マジックは涼しい顔をしてにっこり微笑む。
「シンタロー。勝負って言うのはね、勝っても自分に何もメリットがない場合は
さっさと降参する方が賢いやり方なんだよ。」
「じゃあ、アンタが本気を出してオレが負けたら、
今日1日アンタの言うこと聞いてやろうじゃねぇか。」
自分ばかりが熱くなっているのがおもしろくないシンタローは、マジックの言葉に
つい我を忘れてとんでもない事を口走った。
しまった!と思うのも後の祭り。マジックの唇の端がそれはもういやらしくつり上がる。
良いよ、シンタロー。
本当のチェスを教えてあげる。
そう言って、彼はさっきまでのチェスがまるで児戯にも思えるような華麗なプレイを決めて
あっさりと勝敗をつけてしまった。
あまりに呆気ない敗北にシンタローが絶句していると、マジックは彼の唇に
すっと人差し指を当て、静かに微笑んだ。
「約束、守ってくれるよね?」
「~~~~~~~~・・・・ッ」
もう絶対、二度と、こいつとはチェスはしない。
シンタローは心の中で固く誓った。
「似合うよシンちゃん。」
ピンク色のフリフリエプロンをつけたシンタローにマジックは満足げにため息を漏らした。
シンタローの顔は真っ赤だ。
無理もない。何故なら逞しい身体に直にそれを纏っているのだから。
「何が似合うよ、だ!こンの・・・変態!」
「今さらだなぁ。それよりほら、何でも言うこと聞くんでしょう?
それともシンタローは自分から言い出した約束を
自分に都合が悪いからって簡単に破っちゃうような、そんなイケない子だったのかな。
大人しく約束を守るなら手荒な事はしないよ。・・・それとも」
お仕置きされたい?
耳元で熱っぽく囁かれて、シンタローの身体がぞくぞくと震えた。
フリルの裾をめくるように太腿を触られて、その刺激だけで
自分が興奮しているのが解かり、恥ずかしくなって赤く染まってしまった顔を
マジックの肩に押し付けて隠した。
「素肌にって言ったのになぁ・・・どうして下着穿いてるのかな?シンちゃん。」
顔を肩に押し付けたまま何も言わないシンタローに苦笑いしながら、
マジックは掌で、下着の上から熱くなり始めたそこを嬲った。
反抗的に、身体を捻って拒絶するがそれでも集中的に攻められれば
腰が勝手に泳ぎだすのは仕方の無い事だった。
直接指が触れているわけでもないのに、下着の上から擦り上げられる刺激に
身体は物足りなさを感じてしまってシンタローはしがみ付く手にさらに力を込めた。
震える項に欲情して、マジックは彼の耳朶を甘噛みする。
きつく歯を立てると、それさえも快感を感じてシンタローはさらに身体を震わせた。
「・・・・ぅ、ん・・・・ッあ・・・・」
前を弄っていた指は、もう、下着を引き摺り下ろして直接的なものに変わっていた。
マジックが長い指で扱いてやる度に、シンタローは甘い声を漏らした。
いつまで経っても前を触るばかりで、ちっとも後ろに指をやらない彼に痺れを切らしたのか
シンタローは顔を上げて、艶っぽい視線でマジックを見た。
キスをして催促しても、彼が指を挿れる気配はない。
これ以上されたら、もう、先に達してしまいそうだとシンタローは懇願した。
「先にイって良いよ。パパはシンちゃんがエプロン汚すところが見たいんだ。」
「何言って・・・・ッ・・・」
「ほら、見せてよ。エプロン、シンちゃんので汚してよ。」
後でパパも汚してあげるから。
最後に小さく付け加えられて、シンタローは顔がまた一層熱くなったのが解かった。
震える身体が悶える腰と相まって揺れている。
もう早く中を探って欲しいのに、こんな意地悪をされるなんて。
「ん、ん、んぅ・・・・――――――・・・・ッ!」
白濁した液体がピンクのエプロンにじわりと卑猥な染みを作る。
吐精した快楽に身をまかせているのも束の間、直ぐに指が中を侵入した。
弱いところを何度も引っかかれて、たまらなくて
指の抜き差しに合わせてシンタローも腰を振った。
「ンはぁ・・・・、ぁ・・・・ん・・・!」
「可愛いよ」
指を抜いて、自身で彼の奥を突いてやると
あまりの快感に耐え切れずシンタローはマジックの肩に縋り付いた。
両手をしっかりと彼の首に手を回して、駄々をこねる子供のようにキスを強請る。
父さん、父さん。
頭の中はそれだけだった。
断続的に突き上げられればそれに合わせて切ない嬌声がシンタローの口から零れる。
床に押し倒されて、さらに中を犯されて無我夢中でマジックの腰に足を絡ませた。
「は、あ、あぁッ、父さん・・・・ッ父さん!」
密着した身体と、エプロンの間でびゅく、と精液が弾ける。
マジックはシンタローの内部から自分のそれを引き抜き、ピンク色のエプロンを熱で汚した。
お互いの汗やら液やらでぐちゃぐちゃになったそれをシンタローから脱がすと
マジックは大事そうに抱えて立ち上がった。
開放の余韻で心身共にまだ回復していないのか、シンタローは床に寝そべったままマジックに
それをどうするつもりだ、と尋ねた。
「大切なパパとシンちゃんのメモリーとして、このままで大事に保管しておこうと思って」
引き止めたい気持ちでいっぱいなのに腰がだるくて立ち上がれないシンタローは
そそくさと部屋を出るマジックを半ば涙目で見送る事しかできなかった。
畜生――――――――――――――――――――ッツ!!!!
シンタローの声が部屋中に木霊したのだった。
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